(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2金属層の厚みは、前記第1金属層を除く前記第2金属層以外の層の厚みの総和よりも大きい、請求項1乃至4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用の負極端子。
前記負極端子の側面において外部と接する前記第1金属層と前記反応抑制層との接合界面および前記第2金属層と前記反応抑制層との接合界面は、絶縁部により覆われている、請求項1乃至5のいずれかに記載のリチウムイオン電池用の負極端子。
請求項1乃至6のいずれかに記載の負極端子を備えたリチウムイオン電池用の蓋部材であって、該蓋部材は、穴部が設けられた金属材料からなる蓋材を有し、前記穴部において、前記負極端子は電気的に絶縁した状態で支持されている、リチウムイオン電池用の蓋部材。
請求項7または8に記載の蓋部材を用いたリチウムイオン電池であって、CuまたはCu合金からなる前記負極部と、AlまたはAl合金からなる正極部と、電解液とが少なくとも収納された収納部材を有し、該収納部材は前記蓋部材により密閉されており、前記負極部には前記負極端子が接続されている、リチウムイオン電池。
複数のリチウムイオン電池の正極側と前記負極端子とがAlまたはAl合金からなる前記バスバーにより電気的に直列に接続されている、請求項9に記載のリチウムイオン電池。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るリチウムイオン電池用の負極端子において、最も重要な技術的特徴は、Cu系材料とAl系材料との反応を抑制できる反応抑制層を介して、AlまたはAl合金からなる第1金属層と、CuまたはCu合金からなる第2金属層とを接合することにある。
【0028】
具体的には、本発明に係る負極端子は、少なくとも、AlまたはAl合金からなる第1金属層と、CuまたはCu合金からなる第2金属層と
、前記第2金属層における負極部と接続する側に接合され、Cuを含むろう材から構成された接合層とを有し、前記第1金属層と前記第2金属層とは反応を抑制する反応抑制層を介して接合されたクラッド材からなる。
【0029】
リチウムイオン電池において、CuまたはCu合金からなる負極部とAlまたはAl合金からなるバスバーとを、本発明に係る負極端子を使用して接続する。この場合、バスバーと、本発明に係る負極端子の第1金属層のいずれもがAlまたはAl合金という同類の材料からなることから、第1金属層に対してバスバーを例えば抵抗溶接やレーザー溶接などにより金属学的に接合した場合であっても、溶接時の熱に起因して、機械的強度が脆弱な金属間化合物が生成されることがなく、バスバーと本発明に係る負極端子との間に十分な接合強度を持たせることができる。
【0030】
同様に、リチウムイオン電池のCuまたはCu合金からなる負極部と、本発明に係る負極端子の第2金属層のいずれもがCuまたはCu合金という同類の材料からなることから、第2金属層に対して負極部を例えば抵抗溶接やレーザー溶接などにより金属学的に接合した場合であっても、溶接時の熱に起因して、機械的強度が脆弱な金属間化合物が生成されることがなく、負極部と本発明に係る負極端子との間に十分な接合強度を持たせることができる。
【0031】
また、上述のように本発明に係る負極端子を用いて負極部とバスバーとを例えば抵抗溶接やレーザー溶接などにより接続する場合、溶接時の熱が第1金属層側から第2金属層側へ、あるいは第2金属層側から第1金属層側へ伝搬する。このとき、この伝熱に起因して、例えば第1金属層を構成するAlまたはAl合金が第2金属層に向かって拡散しようとする。ところが、本発明に係る負極端子は、第1金属層と第2金属層とが反応抑制層を介して接合されているため、この反応抑制層が第1金属層を構成するAlまたはAl合金の拡散を食い止め、Al系材料とCu系材料との間の金属間化合物の生成を抑止する。よって、第1金属層を構成するAlまたはAl合金と第2金属層を構成するCuまたはCu合金との反応を生じ難くなり、機械的強度が脆弱な金属間化合物の生成が抑制され、本発明に係る負極端子内部では接合強度の低下防止を図ることができる。
【0032】
したがって、リチウムイオン電池において、CuまたはCu合金からなる負極部とAlまたはAl合金からなるバスバーとを接続する場合、例えば溶接などの発熱を伴う金属学的な接続方法を適用したとしても、本発明に係る負極端子を用いることにより、十分な接合強度をもって負極部とバスバーとを接続することができる。
【0033】
また、本発明に係る負極端子は、少なくとも第1金属層と第2金属層とが反応抑制層を介して接合されたクラッド材を適用している。クラッド材は、それぞれの層をクラッド圧延機などのよって接合するときの圧力により、それぞれの層間(接合界面)が十分な接合強度をもって接合される。よって、この点においてもクラッド材からなる本発明に係る負極端子は、負極部とバスバーとを十分な接合強度をもって接続するために好適である。
【0034】
よって、単体のリチウムイオン電池を複数連結する構成を得たい場合、本発明に係る負極端子によればAlまたはAl合金からなるバスバーが使用できるため、密度(比重)が大きいCu系材料からなるバスバーを用いるよりも十分な軽量化を図ることができる。さらには、負極部とバスバーとを、ねじなどの機械的な接続によらずに接続できるため、ボルト、ナット、ワッシャなどのねじ部品を削減できたり、より簡易で自動化しやすい溶接などにより生産効率を向上できたり、バスバーと負極部の締結構造をコンパクト化できたりといった効果も得られる。
【0035】
また、本発明に係る負極端子において、前記第2金属層の負極側には接合層を有することができる。接合層を有することにより、その分だけ負極端子の熱容量や放熱面積を増やすことができる。例えば、第2金属層に対して負極部を抵抗溶接やレーザー溶接などにより接続する場合を考えてみると、溶接時に、直に第2金属層に溶接するよりも上述した熱容量や放熱面積が増えた分だけ反応抑制層への伝熱を遅らせたり、温度上昇を抑制したりできる。また、接合層を設ける構成を選ぶ場合、例えば前記第2金属層よりも熱伝導率の低い材質を選定して溶接エネルギーの投入量を抑制し、溶接時の接合部近傍の温度上昇を抑制することも可能になる。上述したように温度が高い場合には、第2金属層と反応抑制層との間で、あるいは第1金属層と反応抑制との間で、熱に起因する反応が起こる可能性がある。したがって、本発明において、第2金属層に対してさらに接合層を設けることにより、上述した反応を生じ難くする作用効果を高めることができる。
【0036】
また、本発明に係る負極端子において、前記接合層は、Cuを含有するろう材である。Cuを含有するろう材は、負極部および第2金属層を構成するCuと同種の材料であるため、異種材料を用いるよりも電気的な抵抗(接触抵抗)が小さくなるとともに、接合が高い接合強度で容易にできる。
【0037】
以下、本発明に係る負極端子について、発明者らが好ましいと考える構成を説明する。
【0038】
本発明に係る負極端子において、反応抑制層は、融点がAl系材料よりも高い、例えばNiまたはNi合金、もしくはTiまたはTi合金のいずれかからなることが好ましい。異種の金属材料が反応を起こして金属間化合物を生成する温度という観点をもって、Al系材料とCu系材料の組合せと、Al系材料とNi系材料の組合せとを比較した場合、前者は後者よりも低い温度で金属間化合物を生成する。このため、その温度差分だけ、後者は金属間化合物が生成し難いといえる。つまり、融点が高い分だけ、後者では反応が起こり難くなるのである。また、後者の場合、反応により生成し得ると考えられる金属間化合物はNi−Al化合物であろうが、これが機械的強度に不満のない化合物であることもNiまたはNi合金が好ましいとする理由である。
【0039】
上述したことは、Cu系材料とAl系材料の組合せと、Cu系材料とNi系材料の組合せとを比較した場合についても、同様にいえる。したがって、Al系材料とCu系材料とを直に接合するよりも、Ni系材料すなわちNiまたはNi合金を介して接合すると、機械的強度が脆弱な金属間化合物が生成され難くなるため、接合強度の低下防止には有効である。なお、このNiまたはNi合金を用いる有効性は、TiまたはTi合金を用いても得ることができる。
【0040】
また、本発明に係る負極端子において、前記第1金属層および前記第2金属層は、表面が平面状に形成されていることが好ましい。一般に、バスバーは、容易かつ安価に加工できる平板形状のものが専ら使用されている。よって、平板形状のバスバーを本発明に係る負極端子に対して接続する場合、第1金属層の表面が平面状に形成されていると、両者の接続は互いの平面を密着させるようにして容易に接続することができる。同様に、リチウムイオン電池の負極部もまた、容易かつ安価に加工できる平板形状のものが専ら使用されているため、第2金属層の表面が平面状に形成されていると、平板形状の負極部を本発明に係る負極端子に対して容易に接続することができる。さらに、平面による接続であるため接触面積が大きくなり、接触面積に起因する電気的な抵抗(接触抵抗)を小さくすることができる。加えて、電池の劣化の度合いなどの状況を計測するためのワイヤなどを設置しやすくなる
。
【0041】
また、本発明に係る負極端子において、前記第1金属層の厚みは、前記第1金属層以外の層の厚みの総和よりも大きいことが好ましい。このように負極端子を構成することにより、反応抑制層と密度(比重)のより大きいCuまたはCu合金からなる第2金属層よりも、密度(比重)のより小さいAlまたはAl合金からなる第1金属層の占める割合を大きくできる。よって、本発明に係る負極端子の軽量化を図ることができる。
【0042】
また、本発明に係る負極端子において、前記第2金属層の厚みは、前記第1金属層を除く前記第2金属層以外の層の厚みの総和よりも大きいことが好ましい。このように負極端子を構成することにより、材料に起因する電気的な抵抗(電気抵抗)のより小さいCuまたはCu合金からなる第2金属層の占める割合を大きくできる。よって、軽量性を損ねることなく、本発明に係る負極端子の内部の電気抵抗の低減を図ることができる。さらに反応抑制層を薄くすることで抵抗溶接時の反応抑制層における発熱を抑制できる。
【0043】
また、本発明に係る負極端子において、前記負極端子
の側面において外部と接する前記第1金属層と前記反応抑制層との接合界面および前記第2金属層と前記反応抑制層との接合界面は
、絶縁部により覆われていることが好ましい。クラッド材からなる本発明に係る負極端子は、例えばプレス打抜きなどにより四角形の平板状に加工して使用することができる。この場合、平板の打抜き端面(側面)において、それぞれの層の接合界面が露出して外気に曝されることになる。このような使用形態において、露出してしまう接合界面を
絶縁部により覆うとよい
。これにより、本発明に係る負極端子をリチウムイオン電池に適用した場合、一般に正極性を有する電池の蓋材に対して負極性を有する負極端子が電気的に短絡するようなことがない。また、電池の電解液の漏れや浸潤に起因する接合界面の損壊を防止でき、接合強度の低下防止を図ることができる。
【0044】
上述した本発明に係るリチウムイオン電池用の負極端子を用いて、リチウムイオン電池用の蓋部材を構成することができる。
【0045】
具体的には、本発明に係る負極端子を備え、穴部が設けられた金属材料からなる蓋材を有し、前記穴部において、前記負極端子は電気的に絶縁した状態で支持されている、リチウムイオン電池用の蓋部材である。本発明に係る蓋部材は、上述した優れた機能や効果を有する本発明に係る負極端子を備えているため、従来の蓋部材よりも信頼性が高く、特に負極端子周りの構造が簡易かつコンパクトにできるので好適である。また、蓋部材において、前記負極端子は電気的に絶縁した状態で支持されているため、一般に正極性を有する蓋材が負極性を有する負極端子と電気的に短絡するようなことがない。
【0046】
また、本発明に係る蓋部材は、前記蓋材に設けた穴部において、前記負極端子を前記蓋材の表面よりも突出した状態で支持することが好ましい。より具体的には、負極端子の第1金属層の表面が蓋材の表面よりも突出する位置で、負極端子を支持するように構成するのである。このように構成すれば、負極端子の第1金属層に対するバスバーの接続が容易化できるとともに、バスバーを直に接続しても蓋材との間で電気的に短絡することがない。また、上述した接合界面に対して露出防止処理が施されている負極端子を用い、負極端子の露出防止処理部に電気的な絶縁性と機械的弾性をもたすことにより、前記蓋材に設けた穴部に対して負極端子を嵌め込むといった簡易な方法により、簡易な構造の本発明に係る蓋部材を容易に得ることができる。加えて、負極端子におけるそれぞれの層の接合界面に電池の電解液が浸潤するようなこともない。
【0047】
上述した本発明に係るリチウムイオン電池用の蓋部材を用いて、リチウムイオン電池を構成することができる。
【0048】
具体的には、本発明に係る蓋部材を用い、CuまたはCu合金からなる
前記負極部と、AlまたはAl合金からなる正極部と、電解液とが少なくとも収納された収納部材を有し、該収納部材は前記蓋部材により密閉されており、前記負極部には前記負極端子が接続されている、リチウムイオン電池である。また、正極部と負極部を隔てるための格別のセパレータを収納も可能である。本発明に係るリチウムイオン電池は、上述した優れた機能や効果を有する本発明に係る負極端子を備えた蓋部材を用いているため、従来のリチウムイオン電池よりも信頼性が高く、特に蓋部分の構造が簡易かつコンパクトにできるので好適である。
【0049】
また、本発明に係るリチウムイオン電池を用い、1つのリチウムイオン電池の正極側と、別のリチウムイオン電池の負極端子とを、AlまたはAl合金からなる
前記バスバーにより電気的に直列に接続することにより、複数のリチウムイオン電池を連結した構成のリチウムイオン電池(リチウムイオン電池接続体)を得ることができる。このような構成からなるリチウムイオン電池接続体は、従来のCu系バスバーを用いたリチウムイオン電池接続体よりも軽量かつコンパクトにできる。また、Cu系材料よりも安価なAl系材料の使用により、材料に起因する製造コストを低減でき、より安価なリチウムイオン電池接続体の提供が可能になる。なお、本発明に係る負極端子の適用により、リチウムイオン電池の構造に係る品質や信頼性は、従来よりも高まるといえる。
【0050】
以下、本発明の幾つかの実施形態について、適宜、図面を用いて詳細に説明する。
【0051】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図5を参照して、本発明の第1実施形態となる、リチウムイオン電池用の負極端子4、蓋部材2、リチウムイオン電池1、並びにリチウムイオン電池接続体100について、それぞれの構造を説明する。
【0052】
本発明の第1実施形態となるリチウムイオン電池接続体100は、電気自動車(EV、electric vehicle)や、ハイブリッド自動車(HEV、hybrid electric vehicle)、住宅蓄電システムなどに用いられる大型の電池システムに適用することができる。このリチウムイオン電池接続体100は、
図1に示すように、単体のリチウムイオン電池1同士を平板状のバスバー101により電気的に直列に接続し、リチウムイオン電池1の集合体として構成されている。なお、ここでいうリチウムイオン電池1は本発明に係る「リチウムイオン電池」の一例である。
【0053】
具体的には、リチウムイオン電池1は、
図2に示すように、略直方体形状を有しているとともに、上方(Z1側)に配置される蓋部材2と、該蓋部材2の下方(Z2側)に配置されて正極部5や負極部6やセパレータ102を収納する電池ケース本体3とを備えている。この電池ケース本体3はAlからなる。なお、ここでいう蓋部材2は本発明の「リチウムイオン電池用の蓋部材」の一例である。
【0054】
蓋部材2は、平面的に(上方から)見て長方形形状を有し、Alからなる板状の蓋材20と、蓋材20の長辺の延びる方向(X方向)の一方側(X1側)に配置された正極端子21と、蓋材20の長辺の延びる方向の他方側(X2側)に配置された負極端子4とを備えている。この蓋材20は、電池ケース本体3と同様にAlからなる。正極端子21は、蓋材20の上面20aから上方(Z1側)に突出するように、蓋材20をプレス加工することにより形成されている。負極端子4は、個別に形成されており、蓋材20の上面20aから上方(Z1側)に突出するように、蓋材20によって支持されている。なお、ここでいう負極端子4は本発明に係る「リチウムオン電池用の負極端子」の一例である。
【0055】
また、
図1に示すように、リチウムイオン電池接続体100では、平面的に見てリチウムイオン電池1の短辺つまり蓋材20の短辺の延びる方向(Y方向)に沿って、複数のリチウムイオン電池1が整列配置されている。また、リチウムイオン電池接続体100では、X方向の一方側(X1側)に正極端子21、他方側(X2側)に負極端子4が位置するリチウムイオン電池1と、X2側に正極端子21、X1側に負極端子4が位置するリチウムイオン電池1とが、Y方向に沿って交互に配置されている。
【0056】
また、所定のリチウムイオン電池1の正極端子21は、Y方向に延びるバスバー101のY方向の端部に対して抵抗溶接により溶接(接合)されている。また、同様に、所定のリチウムイオン電池1と隣接するリチウムイオン電池1の負極端子4は、バスバー101のY方向の端部に対して抵抗溶接により溶接されている。すなわち、所定のリチウムイオン電池1の正極端子21は、バスバー101を介して、隣接するリチウムイオン電池1の負極端子4と接続されている。このようにして、複数のリチウムイオン電池1がバスバー101により直列に接続されたリチウムイオン電池接続体100が構成されている。
【0057】
また、リチウムイオン電池1の正極端子21および負極端子4には、各々、ワイヤ102が超音波溶接により溶接されている。これらのワイヤ102は、正極端子21または負極端子4のバスバー101が接合されていない領域に接続されている。なお、ワイヤ102は、各々接続されたリチウムイオン電池1の発電状態などを計測するための図示しない計測機器、またはリチウムイオン電池に付属する計測部に接続されている。このようにして、リチウムイオン電池1の劣化の度合いなどの状況の計測および把握が可能になるので、各々のリチウムイオン電池1における充放電量のモニタリングが可能になる。
【0058】
また、リチウムイオン電池1は、
図3に示す正極部5と、負極部6と、両者を隔てるセパレータ103と、電解液(図示せず)とを備えている。正極部5は、Al箔からなり電解液と接触する正極50と、Alからなり正極50に電気的に接続されている集電部51とで構成されている。負極部6は、Cu箔からなり電解液と接触する負極60と、Cuからなり負極60に電気的に接続されている集電部61とで構成されている。この正極50と負極60とは、セパレータ103によって隔絶され、絶縁状態でロール状に積層されている。
【0059】
また、正極部5および負極部6と電解液とが電池ケース本体3の収納部3aに収納された状態で、電池ケース本体3の上端面3bと蓋材20の下面20bの外縁部とが溶接されている。これにより、蓋部材2と電池ケース本体3との間からの電解液の漏れが防止されるとともに、リチウムイオン電池1の収納部3aが密閉状態に構成される。
【0060】
また、
図4に示すように、蓋部材2の蓋材20は、厚み方向(Z方向)に約1mmの厚みt1を有している。また、正極端子21は、上述したようにプレス加工により、蓋材20のX1側の一部を蓋材20の上面20aよりも上方(Z1側)に突出させることによって形成されている。つまり、正極端子21は、蓋材20と一体的に形成されているとともに、Alからなるように構成されている。また、蓋材20のX2側には、厚み方向に貫通する穴部20cが形成されている。穴部20cは、
図3に示すように、平面的に見て四角形状に形成されている。また、穴部20cにおいては、穴部20cの対角線の交点(中心)と負極端子4の対角線の交点(中心)とを略一致させるようにして、負極端子4が絶縁部46を介して蓋材20により支持された構成になっている。
【0061】
ここで、第1実施形態では、負極端子4は、平面的に見て、蓋材20の穴部20cよりも小さな矩形の形状を有する。そして、
図5に示すように、負極端子4は、負極部6(
図4参照)側(下方(Z2側))から順次、ろう材層41(Cu−P)、Cu層42、Ni層43、およびAl層44の4層が、十分な接合強度をもって接合されたクラッド材からなる。この第1実施形態においては、本発明における第1金属層に対応する層はAl層44であり、第2金属層に対応する層はCu層42であり、反応抑制層に対応する層はNi層43である。加えて、本発明において設けると好ましい接合層に対応する層は、ろう材層41である。
【0062】
リチウムイオン電池1において、この負極端子4が負極側の端子部40の機能を有するものになる。この端子部40は、Al層44が端子部40の上方(Z1側)の表面44aに露出し、かつ、ろう材層41が端子部40の下方(Z2側)の表面41aに露出するように構成されている。そして、この端子部40のAl層44がバスバー101に対して十分な接合強度をもって溶接(接合)され、ろう材層41が負極部6の集電部61に対して十分な接合強度をもって溶接(接合)されている。
【0063】
上述したAl層44は、正極端子21およびバスバー101(
図1参照)と同様に、Cu系材料よりも密度(比重)の小さく、Al系材料の中でもより密度の小さいAlからなる。また、Cu層42は、Al系材料よりも電気的な抵抗(電気抵抗)が小さく、Cu系材料の中でもより電気抵抗の小さいCuからなる。また、Ni層43は、AlとCuの金属間化合物が生成される温度域では、AlやCuとの間で機械的強度が脆弱な金属間化合物を生成し難い、Niからなる。また、ろう材層41は、Cuと約3質量%のPとを含有するリン銅ろう材(Cu−P)からなり、約710℃の融点を有している。
【0064】
また、端子部40は、厚み方向(Z方向)に約2mmの厚みt2を有している。つまり、端子部40の厚みt2は、蓋材20の厚みt1(約1mm、
図4参照)よりも大きい。また、Al層44の厚みt3は、Cu層42の厚みt5、Ni層43の厚みt6、およびろう材層41の厚みt4を加算した厚みの総和よりも大きくなるように構成されている。また、Cu層42の厚みt5は、Ni層43の厚みt6とろう材層41の厚みt4を加算した厚みの総和よりも大きくなるように構成されている。
【0065】
また、露出するように配置されたAl層44のZ1側の表面44aと、ろう材層41のZ2側の表面41aは、両者ともに表面が平面状に形成されている。なお、この場合、Cu層42のZ2側の面が平面状の素材を用いてクラッド材に形成している。また、正極端子21のZ1側の表面は、Al層44の表面44aと同様に、表面が平面状に形成されている。
【0066】
また、負極端子4は、
図3および
図4に示すように、負極端子4の端子部40の側面の一部を厚み方向(Z方向)に覆うように形成された、枠状の絶縁部46を介して蓋材20に支持されている。具体的には、
図5に示すように、絶縁部46は、端子部40のZ1側に位置するAl層44の側面から、Ni層43の側面およびCu層42の側面を覆い、端子部40のZ2側に位置するろう材層41の側面に渡って覆っている。さらに、絶縁部46は、
図4に示すように、平面的に見て負極端子4の周囲を取り囲むように構成されている。これにより、絶縁部46は、
図5に示すように、Al層44とNi層43との接合界面45c、Ni層43とCu層42との接合界面45b、およびCu層42とろう材層41との接合界面45aを被覆し、負極端子4の側面において接合界面が露出しないように構成されている。
【0067】
上述した絶縁部46は、絶縁性および耐電解液性を有する樹脂からなる。また、
図4に示すように、絶縁部46は、蓋材20の厚みt1(約1mm)と略同一の厚みを有している。つまり、絶縁部46の厚みは、端子部40の厚みt2(約2mm)よりも小さい。これにより、負極端子4が蓋材20の穴部20cに配置された状態で、絶縁部46は、蓋材20の上面20aおよび下面20bと面一になるように構成されている。
【0068】
また、負極端子4が蓋材20の穴部20cに配置された状態で、絶縁部46の外側面と穴部20cの内周面とが互いに対向して当接するように構成されている。これにより、負極端子4を絶縁部46を介して蓋材20で支持できる。また、負極端子4が蓋材20の穴部20cに配置された状態で、負極端子4の端子部40におけるAl層44は、蓋材20の上面20aから上方(Z1側)に突出するように構成されているとともに、端子部40におけるろう材層41は、蓋材20の下面20bから下方(Z2側)に突出するように構成されている。
【0069】
また、
図4に示すように、蓋材20の下面20b側において、負極端子4のろう材層41と負極部6の集電部61とが、抵抗溶接により接合されている。これにより、溶接された領域に対応するろう材層41と集電部61との間には、接合部7aが形成される。この接合部7aは、主に、リン銅ろう材からなるろう材層41の一部が溶融することによって生成される。つまり、接合部7aは、Cuを含有する金属層として形成されるのである。また、正極端子21と正極部5の集電部51とが、抵抗溶接により接合されている。これにより、溶接された領域に対応する正極端子21と集電部51との間には、Alからなる金属層が接合部7bとして形成されるのである。
【0070】
また、蓋材20の上面20a側において、負極端子4のAl層44とバスバー101とが、抵抗溶接により接合されている。また、正極端子21とバスバー101とが、抵抗溶接により接合されている。これにより、溶接された領域に対応するAl層44とバスバー101との間、および正極端子21とバスバー101との間には、Alからなる金属層が接合部7cとして形成されるのである。
【0071】
次いで、
図1〜
図8を参照して、本発明の第1実施形態として上述した負極端子4、蓋部材2、リチウムイオン電池1、並びにリチウムイオン電池接続体100について、その製造プロセスの一例を詳細に説明する。
【0072】
まず、約1mmの厚みt1(
図4参照)を有し、AlからなるAl板(図示せず)を準備する。そして、
図6に示すように、プレス加工により、Al板のX1側をAl板の上面20aよりも上方(Z1側)に突出させて、正極端子21を形成する。また、Al板のX2側に、厚み方向(Z方向)に貫通する穴部20cを形成する。これにより、リチウムイオン電池1用の蓋材20が形成される。
【0073】
また、Al板、Ni板、Cu板、および板状のリン銅ろう材(いずれも図示せず)を準備する。この際、Al板の板厚を、Ni板の板厚、Cu板の板厚、および板状のリン銅ろう材の板厚を加算した板厚の総和よりも大きくする。かつ、Cu板の板厚を、Ni板の板厚と板状のリン銅ろう材の板厚を加算した板厚の総和よりも大きくする。そして、Al板、Ni板、Cu板、および板状のリン銅ろう材を順次積層し、クラッド圧延機やプレス装置などを用いて所定の圧力を加えて接合する。この場合、板状のリン銅ろう材からAl板へと順次積層してもよい。
【0074】
これにより、
図5に示すように、厚み方向(Z方向)に約2mmの厚みt2を有し、Al層44、Ni層43、Cu層42、およびろう材層41が積層されて接合された4層のクラッド材を形成することができる。このようにクラッド材にすることで、Al層44とNi層43とが接合界面45cで、Cu層42とNi層43とが接合界面45bで、Cu層42とろう材層41とが接合界面45aで、それぞれ十分な接合強度をもって接合された、負極端子4用の素材として構成される。
【0075】
このようにして形成されたクラッド材は、Al層44の厚みt3が、Cu層42の厚みt5、Ni層43の厚みt6、およびろう材層41の厚みt4を加算した層の厚みの総和よりも大きくなる。また、Cu層42の厚みt5が、Ni層43の厚みt6とろう材層41の厚みt4を加算した層の厚みの総和よりも大きくなる。
【0076】
こうして得たクラッド材を用い、平面的に見て、蓋材20の穴部20cよりも小さくなる(
図3参照)ように、プレス打抜きなどにより四角形状に加工することにより、負極端子4を形成することができる。
【0077】
得られた負極端子4(
図6に端子部40として示す)を用い、該負極端子4を蓋材20の穴部20c内に配置する。このとき、負極端子4の側面が穴部20cの内周面に接触しないように、穴部20cの対角線の交点(中心)と負極端子4の対角線の交点(中心)とが略一致するように、負極端子4を配置する。そして、蓋材20および負極端子4を金型(図示せず)などに固定した状態で、絶縁部46を形成するための樹脂を射出成形によって形成する。これにより、
図7に示すように、蓋材20の穴部20cと負極端子4との間に、蓋材20の厚みt1(約1mm)と略同一の厚みになるように絶縁部46が形成される。この際、絶縁部46は、
図5に示すように、Al層44とNi層43との接合界面45c、Cu層42とNi層43との接合界面45b、およびCu層42とろう材層41との接合界面45aに対応する負極端子4の側面を覆うように形成しておく。また、絶縁部46の外側面と穴部20cの内周面とが互いに当接するように絶縁部46を形成しておく。この結果、リチウムイオン電池1用の負極端子4を備えた蓋部材2が形成される。
【0078】
上述した製造プロセスで得た負極端子4を備えた蓋部材2と、別途準備した
図3に示すリチウムイオン電池1用の正極部5および負極部6とを用いて、リチウムイオン電池1を製造することができる。
【0079】
まず、蓋部材2における蓋材20の下面20b側において、負極端子4のろう材層41の表面41aと、負極部6の集電部61とを抵抗溶接により接続する。具体的には、
図8に示すように、ろう材層41の表面41aと集電部61とを接触させた状態で、下方(Z2側)から抵抗溶接用の電極104aを集電部61の下面に接触させるとともに、上方(Z1側)から抵抗溶接用の電極104bを負極端子4のAl層44の表面44aに接触させる。そうして、電極104aと電極104bの間に、所定時間、通電することにより接続することができる。
【0080】
この抵抗溶接においては、接合前には接触抵抗が大きいろう材層41と集電部61との間で、ろう材層41を溶融させる程度の熱(約710℃)が発生する。この結果、ろう材層41と集電部61とがCuを含有する金属層を生成する。そうして、冷却して凝固すると、この金属層がCuを含有する接合部7aとして形成され、接合部7aを介してろう材層41と集電部61とが接合される。このとき、発生した約710℃の熱に起因して、集電部61のCu、ろう材層41のCu、およびCu層42のCuが拡散する。これに加え、Al層44のAlも拡散する。しかしながら、負極端子4に内部では、Cu層42とAl層44との間に存在するNi層43により、CuのAl層44側(Z1側)への拡散が抑制される。同時に、Ni層43により、AlのCu層42側(Z2側)への拡散が抑制される。したがって、負極端子4の内部では、AlとCuとの反応が抑制されるため、接合強度が低下することはない。
【0081】
負極部6に次いで、
図4に示すように、蓋材20の下面20b側において、正極端子21に対応する蓋材20の下面20bと正極部5の集電部51とを、上述したろう材層41と負極部6の集電部61の場合と同様に、抵抗溶接する。これにより、正極端子21と集電部51とが、Alからなる金属層として形成された接合部7bを介して接合される。
【0082】
そして、
図3に示すように、正極部5および負極部6と電解液とを電池ケース本体3の収納部3aに収納した状態で、電池ケース本体3の上端面3bと蓋材20の下面20bの外縁部とを溶接して密閉する。これにより、
図2に示すリチウムイオン電池1を得ることができる。
【0083】
その後、
図1に示すように、Y方向に沿って複数のリチウムイオン電池1を配置する。そして、Y方向の一方側においては、所定のリチウムイオン電池1の端子部40のAl層44と、バスバー101のY方向の一方端とを抵抗溶接し、Y方向の他方側においては、所定のリチウムイオン電池1に隣接する別のリチウムイオン電池1の正極端子21と、バスバー101のY方向の他方端とを抵抗溶接する。これにより、
図4に示すように、負極端子4のAl層44とバスバー101とがAlからなる金属層として形成された接合部7cを介して接合され、正極端子21とバスバー101とがAlからなる金属層として形成された接合部7cを介して接合され、複数のリチウムイオン電池1が複数のバスバー101によって直列に接続された構成になる。最後に、各々のリチウムイオン電池1の正極端子21および負極端子4におけるバスバー101が接続されている領域以外の残りの領域に、ワイヤ102を超電波溶接により溶接する。これにより、リチウムイオン電池接続体100を得ることができる。
【0084】
(
第1参考例)
次に、
図9および
図10を参照して、本発明の
第1参考例となる、リチウムイオン電池用の負極端子204について、構造を説明する。この
第1参考例は、上述した第1実施形態とは異なり、負極端子204の端子部240において、第1実施形態において第2金属層として設けたCu層42に替えて、接合層として設けたろう材層41を第2金属層とした構成である。つまり、本発明に係る負極端子におけるCuまたはCu合金からなる第2金属層を、Cuを含有するろう材からなるろう材層41としたのである
。
【0085】
本発明の
第1参考例となる負極端子204の端子部240は、
図9および
図10に示すように、下方(Z2側)から順次、ろう材層41、Ni層43およびAl層44が積層された状態で接合された3層のクラッド材からなる。ここで用いたろう材層41は、第1実施形態で用いたものと同じ、Cuと約3質量%のPとを含有するリン銅ろう材(Cu−P)からなる。このクラッド材は、第1実施形態において第2金属層として設けたCu層42および接合層として設けたろう材層41の機能を、1つのろう材層41に持たせた構成になる。よって、
第1参考例によれば、第1実施形態として上述した負極端子4の構成を、より簡素化することができる。
【0086】
上述したろう材層41とNi層43とは、界面245d(
図9参照)において互いに接合(拡散接合)している。また、Ni層43は、Al層44を構成するAlおよび負極部6を構成するCuの拡散を食い止めて、AlとCuとの反応を抑制する機能を有する。なお、本発明の
第1参考例において、上述した事項を除く他の構成は、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0087】
本発明の
第1参考例として上述した負極端子204に係る製造プロセスについては、第1実施形態における負極端子4においてCu層42を設ける製造プロセスを除き、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0088】
(
第2参考例)
次に、
図11と
図12を参照して、本発明の
第2参考例となる、リチウムイオン電池用の負極端子304について、構造を説明する。この
第2参考例は、上述した第1実施形態とは異なり、負極端子304の端子部340において、第1実施形態において接合層として設けたろう材層41に替えて、Ni層341を接合層にした構成である
。
【0089】
本発明の
第2参考例の負極端子304の端子部340は、
図11に示すように、下方(Z2側)から順次、Ni層341、Cu層42、Ni層43およびAl層44が積層された状態で接合された4層のクラッド材からなる。そして、Ni層341とCu層42とは、接合界面345aにおいて接合(拡散接合)されている。また、Ni層341は、反応抑制層であるNi層43と同様に、Niからなる。また、Ni層341の厚みt7は、Al層44の厚みt3およびCu層42の厚みt5よりも小さくなるように構成されている。
【0090】
また、
図12に示すように、蓋材20の下面20b側において、負極端子304における端子部340のNi層341と負極部6の集電部61とが、抵抗溶接により接合されている。これにより、溶接された領域に対応するNi層341と集電部61との間には、接合部307aが形成される。この接合部307aは、Ni層341を構成するNiと、集電部61を構成するCuとが反応して形成されたNi−Cu合金からなる金属層である。なお、本発明の
第2参考例において、上述した事項を除く他の構成は、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0091】
次いで、
図11と
図12を参照して、本発明の
第2参考例として上述した負極端子304と、これを備えた蓋部材302に係る製造プロセスについて説明する。
【0092】
まず、板状の第1Ni板、Cu板、第2Ni板、およびAl板(図示せず)を準備する。このとき、Al板の板厚を、第1Ni板の板厚と、Cu板の板厚と、第2Ni板の板厚とを加算した板厚の総和よりも大きくする。また、Cu板の板厚を、第1Ni板の板厚と第2Ni板の板厚とを加算した板厚の総和よりも大きくする。そして、第1Ni板、Cu板、第2Ni板、およびAl板を順次積層し、クラッド圧延機やプレス装置などを用いて所定の圧力を加えて接合する。これにより、Ni層341、Cu層42、Ni層43、およびAl層44が積層されて接合された4層のクラッド材を形成できる。このとき、Ni層341とCu層42とが、接合界面345aにおいて接合(拡散接合)されている。また、Ni層341の厚みt7が、Al層44の厚みt3とCu層42の厚みt5とを加算した層の厚みの総和よりも小さくなる。そして、形成された4層に構成されたクラッド材を、プレス加工などによって所定の大きさの四角形状に打ち抜くことにより、
図11に示す負極端子304(端子部340)を得ることができる。
【0093】
そして、第1実施形態と同様の製造プロセスによって、
図12に示すように、正極端子21と負極端子304とが設けられた蓋部材302が形成される。そして、蓋材20の下面20b側において、負極端子304におけるNi層341の表面341aと負極部6の集電部61とを抵抗溶接により接続する。このとき、接合前は接触抵抗が大きいNi層341と集電部61との間で、かつ、電気抵抗の大きいNi層341側で、集電部61を溶融させる程度の熱(約1100℃)が発生する。これにより、融解した集電部61のCuと、Ni層341のNiとが反応し、負極端子304のNi層341と集電部61とがNi−Cu合金からなる金属層として形成された接合部307aを介して接合される。なお、本発明の
第2参考例のその他の製造プロセスは、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0094】
(
第3参考例)
次に、
図13〜
図15を参照して、本発明の
第3参考例となる、リチウムイオン電池用の負極端子404について、構造を説明する。この
第3参考例は、上述した第1実施形態とは異なり、負極端子404の端子部440において、第1実施形態において接合層として設けたろう材層41を設けない構成である
。
【0095】
本発明の
第3参考例の負極端子404の端子部440は、
図13に示すように、下方(Z2側)から順次、Cu層42、Ni層43およびAl層44が積層された状態で接合された3層のクラッド材からなる。つまり、上述した第1実施形態とは異なり、
第3参考例の端子部440にはろう材層41が形成されていない。
【0096】
また、
図14に示すように、蓋材20の下面20b側において、負極端子404における端子部440のCu層42と負極部6の集電部61とが、レーザー溶接により接合されている。これにより、溶接された領域に対応するCu層42と集電部61との間には、接合部407eが形成されている。この接合部407eは、溶接された領域の集電部61が溶融して形成されたCuからなる金属層である。なお、本発明の
第3参考例のその他の構造は、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0097】
次いで、
図13〜
図15を参照して、本発明の
第3参考例として上述した負極端子404と、これを備えた蓋部材402に係る製造プロセスについて説明する。
【0098】
まず、板状のCu板、Ni板、およびAl板(図示せず)を準備する。そして、Cu板、Ni板、およびAl板を順次積層し、クラッド圧延機やプレス装置などを用いて所定の圧力を加えて接合する。これにより、Cu層42、Ni層43、およびAl層44が積層されて接合された3層のクラッド材が形成される。そして、形成されたクラッド材をプレス加工などにより所定の大きさの四角形状に打ち抜くことにより、
図13に示す負極端子404(端子部440)を得ることができる。
【0099】
そして、上述した第1実施形態と同様の製造プロセスによって、
図15に示すように、正極端子21と負極端子404とが設けられた蓋部材402が形成される。そして、蓋材20の下面20b側において、レーザー溶接機105を用いて、負極端子404におけるCu層42と負極部6の集電部61とをレーザー溶接する。具体的には、負極端子404における端子部440のCu層42の表面442aと負極部6の集電部61とを接触させた状態で、レーザー溶接機105を用いて下方(Z2側)からレーザー光を照射する。これにより、
図14に示すように、レーザー光が照射された部分の集電部61が溶融することによって、負極端子404のCu層42と集電部61とがCuからなる金属層として形成された接合部407eを介して接合される。なお、本発明の
第3参考例のその他の製造プロセスは、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0100】
(第
2実施形態)
次に、本発明の第
2実施形態となる、リチウムイオン電池501、これを用いたリチウムイオン電池接続体500に係る構成について、
図3、
図4および
図16を参照して説明する。この第
2実施形態においては、上述した第1実施形態とは異なり、リチウムイオン電池501における蓋部材502の蓋材520に、上面20aから突出する正極端子を形成していない。また、負極端子としては第1実施形態における負極端子4を、蓋部材としては同様に蓋部材2を用いている。なお、リチウムイオン電池501は本発明の「リチウムイオン電池」の一例であり、蓋部材502は本発明の「リチウムイオン電池用の蓋部材」の一例である。
【0101】
本発明の第
2実施形態では、リチウムイオン電池接続体500のリチウムイオン電池501において、蓋部材502は、
図16に示すように、蓋材520のX方向の略中央に穴部520cを設けた蓋材520と、この穴部520cに配置された負極端子4とを有している。つまり、第1実施形態とは異なり、蓋部材502の蓋材520には、上面20aから上方(Z1側)に突出する正極端子が形成されていない。一方、正極部5の集電部51(
図3参照)は、Alからなる電池ケース本体503またはAlからなる蓋材520に対して接続される構成である。
【0102】
また、リチウムイオン電池接続体500は、複数のリチウムイオン電池501がY方向に沿って交互に配置されており、蓋部材502が上方(Z1側)に位置するリチウムイオン電池501と、蓋部材502が下方(Z2側)に位置するリチウムイオン電池501とがある。また、Y方向の一方側において、所定のリチウムイオン電池501の負極端子4が、バスバー101のY方向の一方端に抵抗溶接により溶接(接合)されている。また、Y方向の他方側において、所定のリチウムイオン電池501と隣接する別のリチウムイオン電池501の電池ケース本体503の底面3cに対して、バスバー101のY方向の他方端が抵抗溶接により溶接されている。これにより、所定のリチウムイオン電池501の負極端子4が、バスバー101を介して、隣接する別のリチウムイオン電池501の電池ケース本体503の底面3cと接続された構成になる。
【0103】
このようにして、複数のリチウムイオン電池501が直列に接続されたリチウムイオン電池接続体500が構成される。ここで、第
2実施形態においては、バスバー101の他方側(正極端子側)を電池ケース本体503の底面3cに溶接する構成に限らず、電池ケース本体503の側面や蓋材520に溶接する構成であってもよい。これにより、第1〜第4実施形態のように特定の位置(蓋材20のX1側)に正極端子21を設け、設けられた正極端子21の位置でバスバー101の他方側を溶接する構成と比較して、バスバー101を接合する位置の自由度を向上させることができる。なお、本発明の第
2実施形態のその他の構造は、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0104】
次いで、
図3と
図16を参照して、本発明の第
2実施形態として上述したリチウムイオン電池501、これを用いたリチウムイオン電池接続体500に係る製造プロセスについて説明する。
【0105】
まず、AlからなるAl板(図示せず)を準備する。そして、Al板のX方向の略中央に、厚み方向(Z方向)に貫通する穴部520cを形成する。これにより、
図16に示す蓋材520が形成される。そして、第1実施形態と同様の製造プロセスによって、リチウムイオン電池501が製造される。このとき、正極部5の集電部51(
図3参照)は、電池ケース本体503または蓋材520の任意の位置に溶接される。
【0106】
その後、隣接するリチウムイオン電池501の上下方向が逆になるように、Y方向に沿って複数のリチウムイオン電池501を配置する。そして、Y方向の一方側のZ1側において、所定のリチウムイオン電池501の負極端子4と、バスバー101のY方向の一方端とを抵抗溶接する。また、Y方向の他方側において、所定のリチウムイオン電池501と隣接するリチウムイオン電池501の電池ケース本体503の底面3cと、バスバー101のY方向の他方端とを抵抗溶接する。同様にして、Z2側において、所定のリチウムイオン電池501の電池ケース本体503の底面3cと、バスバー101のY方向の他方端とを抵抗溶接し、Y方向の一方側で隣接するリチウムイオン電池501の負極端子4と、バスバー101のY方向の一方端とを抵抗溶接する。このようにして、第1実施形態と同様の製造プロセスによって、
図16に示すリチウムイオン電池接続体500を得ることができる。
【0107】
(第
3実施形態)
次に、本発明の第
3実施形態となる、リチウムイオン電池601に係る構成について、
図4と
図17を参照して説明する。この第
3実施形態は、上述した第1実施形態とは異なり、蓋部材602の蓋材620と電池ケース本体603とが、いずれもNiめっき鋼板(NiめっきFe合金)からなる構成である。なお、リチウムイオン電池601は本発明の「リチウムイオン電池」の一例であり、蓋部材602は本発明の「リチウムイオン電池用の蓋部材」の一例である。
【0108】
本発明の第
3実施形態となるリチウムイオン電池601は、
図17に示すように、蓋部材602の蓋材620と電池ケース本体603とが、いずれも機械的強度を有して変形し難いNiめっき鋼板からなる。また、蓋材620の上面20aのX1側には、Alの板材からなる正極端子621が溶接されている。なお、本発明の第
3実施形態のその他の構造は、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0109】
次いでに、
図17を参照して、本発明の第
3実施形態として上述したリチウムイオン電池601に係る製造プロセスについて説明する。
【0110】
まず、上述したNiめっき鋼板からなる板材を準備する。そして、板材のX1側に、Alの板材からなる正極端子621を溶接するとともに、板材のX2側に穴部20cを形成する。これにより、蓋材620が形成される。なお、本発明の第
3実施形態のその他の製造プロセスは、Niめっき鋼板からなる電池ケース本体603を用いる点を除いて、第1実施形態と同様であるので、説明を略す。
【0111】
以上、第1実施形態〜第
3実施形態として上述した本発明に係る実施例は、すべての点で本発明に係る技術的構成を例示したものに過ぎず、本発明に係る範囲を制限するものではないと解するべきである。すなわち、本発明の範囲は、上述した実施形態や実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0112】
例えば、上述した実施形態では、負極端子
4のAl層44(第1金属層)がAlからなり、Cu層42(第2金属層)がCuからなり、Ni層43(反応抑制層)がNiからなる具体例を示したが、本発明はこれに限られることがない。本発明では、負極端子の第1金属層がAl−Mn合金などのAl合金からなり、第2金属層がCu−Ni合金などのCu合金からなるように構成してもよい。同様に、蓋材や電池ケース本体などの材質についても、上述した実施形態に限ることなく、必要に応じて適宜選定することができる。
【0113】
また、上述した実施形態では、絶縁部46が、蓋材20(520、620)の厚みt1(約1mm)と略同一の厚みを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁部の厚みt1は特に限定されない。なお、端子部と蓋材の内周面とが接触することを抑制するために、絶縁部の厚みは蓋材の厚みt1(約1mm)以上である方が好ましい。一方、端子部のAl層とバスバーとを溶接する際、および、端子部のろう材層(Ni層およびCu層)と負極部の集電体とを溶接する際に、蓋材と絶縁体とが接触することを抑制するために、絶縁部の厚みは端子部の厚みt2(約2mm)以下である方が好ましい。
【0114】
また、上述した実施形態では、Niめっき鋼板からなる蓋材620の上面20aに、Alの板材からなる正極端子621を溶接した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、Niめっき鋼板からなる蓋材620の所定の位置にAlをメッキすることによって、蓋材620に正極端子621を形成してもよいし、電池ケース本体603の所定の位置にAlをメッキすることによって、電池ケース本体603に正極端子621を形成してもよい。また、蓋材620と電池ケース本体603とが、共にNiめっき鋼板(NiめっきFe)合金からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、蓋材620と電池ケース本体603とが、共にFe−Ni合金からなるように構成してもよい。
【0115】
また、上述した実施形態では、負極端子
4の端子部4
0が約2mmの厚みt2を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、負極端子の厚みt2は特に限定されない。なお、負極端子の端子部の厚みt2は、約1mm以上約3mm未満であるのが好ましい。さらに、蓋材とバスバーとが接触しない状態で負極端子とバスバーとを接合するために、端子部の厚みt2は、蓋材の厚みt1以上である方が好ましい。
【0116】
また、上述した実施形態では、負極端子4のろう材層41がCuと約3質量%のPとを含有するリン銅ろう材(Cu−P)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では
、負極端子4のろう材層41は、Cuが含有されている方が電気抵抗を減少させるとともに、同種金属間の接合を形成することが可能な点から好ましい。具体的には、Agろう(Ag−Cu−Zn合金)やCu−Sn合金をろう材層として用いてもよい。