特許第6015044号(P6015044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

<>
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000002
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000003
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000004
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000005
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000006
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000007
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000008
  • 特許6015044-測距装置及び眼鏡 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015044
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】測距装置及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 11/00 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G02C11/00
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-61782(P2012-61782)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195628(P2013-195628A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】種市 禎二
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−133741(JP,A)
【文献】 特開2002−031685(JP,A)
【文献】 特開平05−172515(JP,A)
【文献】 特開2005−128225(JP,A)
【文献】 特開平09−304531(JP,A)
【文献】 特開2004−170835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 11/00
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡に着脱可能な測距装置であって、
前記眼鏡をかけたユーザの視線の向きを検出し、前記視線上の測距対象物を特定する視線検出部と、
前記視線検出部により特定された前記測距対象物までの距離を算出する測距部と、
測定光を発光する発光部材と、
前記測定光の発光の方向を前記視線検出部により特定された前記測距対象物に向ける発光駆動部と、
前記測距対象物によって反射された前記測定光を受光する受光部材と、
前記測距部により測距された距離を通知する通知部と
を備え、
前記測距部は、前記受光部材により受光された前記測定光により前記測距対象物までの距離を算出し、
前記視線検出部は、前記測距対象物に視線が固定されたことを判定するための対象判定時間以上、前記視線が固定された固定状態となったと判定した場合に、前記測距部に測距指示を出力し、
前記視線検出部は、前記視線が前記固定状態から変化したと判定した場合に、前記測距部に測距停止指示を出力する測距装置。
【請求項2】
前記測距部は、算出された前記距離を通知するか否かを判定する判定距離未満の場合、前記通知部に前記距離を通知させない
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記視線検出部はユーザの利き眼の視線を検出して、前記利き眼の前記視線上の前記測距対象物を特定する
請求項1または2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記発光部材は、前記測定光として、偏光したレーザ光を発光し、
前記眼鏡のレンズは、前記偏光である前記レーザ光を遮光する
請求項1から3のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項5】
前記発光部材は、前記測定光として、パルス光を発光する
請求項1から4のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項6】
前記測距部は、前記パルス光のパルス数が、前記パルス光の停止を判定するパルス判定数以上になったと判定した場合に、前記発光部材の発光を停止させる
請求項5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記眼鏡のレンズは、前記測定光の波長帯域の光を遮光する請求項1から6のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項8】
予め定められた目標物の位置及び方向を検出する目標物検出部と、
測距された前記距離とともに、前記目標物の方向を通知する通知部とを更に備える
請求項1から7のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項9】
測距された前記距離とともに、前記測距対象物の途中の距離を通知する通知部を更に備える請求項1から8のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項10】
レンズと、
前記レンズの前方に向けられたユーザの視線の向きを検出し、前記視線上の測距対象物を特定する視線検出部と、
前記視線検出部により特定された前記測距対象物までの距離を算出する測距部と、
測定光を発光する発光部材と、
前記測定光の発光の方向を前記視線検出部により特定された前記測距対象物に向ける発光駆動部と、
前記測距対象物によって反射された前記測定光を受光する受光部材と
前記測距部により測距された距離を通知する通知部と
を備え、
前記測距部は、前記受光部材により受光された前記測定光により前記測距対象物までの距離を算出し、
前記視線検出部は、前記測距対象物に視線が固定されたことを判定するための対象判定時間以上、前記視線が固定された固定状態となったと判定した場合に、前記測距部に測距指示を出力し、
前記視線検出部は、前記視線が固定状態から変化したと判定した場合に、前記測距部に測距停止指示を出力する眼鏡。
【請求項11】
前記測距部は、算出された前記距離を通知するか否かを判定する判定距離未満の場合、前記通知部に前記距離を通知させない
請求項10に記載の眼鏡。
【請求項12】
前記視線検出部はユーザの利き眼の視線を検出して、前記利き眼の前記視線上の前記測距対象物を特定する
請求項10または11に記載の眼鏡。
【請求項13】
前記発光部材は、前記測定光として、偏光したレーザ光を発光し、
前記レンズは、前記偏光である前記レーザ光を遮光する
請求項12に記載の眼鏡。
【請求項14】
前記発光部材は、前記測定光として、パルス光を発光する
請求項13に記載の眼鏡。
【請求項15】
前記測距部は、前記レーザ光のパルス数が、前記レーザ光の停止を判定するパルス判定数以上になったと判定した場合に、前記発光部材の発光を停止させる
請求項14に記載の眼鏡。
【請求項16】
前記レンズは、前記測定光の波長帯域の光を遮光する請求項10から15のいずれか1項に記載の眼鏡。
【請求項17】
予め定められた目標物の位置及び方向を検出する目標物検出部と、
測距された前記距離とともに、前記目標物の方向を通知する通知部とを更に備える
請求項10から16のいずれか1項に記載の眼鏡。
【請求項18】
測距された前記距離とともに、前記測距対象物の途中の距離を通知する通知部を更に備える請求項10から17のいずれか1項に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置及び眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
測距が可能な測距装置及び眼鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。この眼鏡は、視力の検査等において、眼鏡の前方の予め定められた領域に光を照射して、その反射光を受光することにより距離を算出する。
[特許文献1] 特表2004−518167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、測距対象物が遠方にある場合等において、眼鏡の前方の予め定められた領域に、ユーザの希望する測距対象物が含まれないことがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、眼鏡に着脱可能な測距装置であって、前記眼鏡をかけたユーザの視線の向きを検出し、前記視線上の測距対象物を特定する視線検出部と、前記視線検出部により特定された前記測距対象物までの距離を算出する測距部とを備える測距装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、レンズと、レンズの前方に向けられたユーザの視線の向きを検出し、前記視線上の測距対象物を特定する視線検出部と、前記視線検出部により特定された前記測距対象物までの距離を算出する測距部とを備える眼鏡を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】前方から見た眼鏡10の全体斜視図である。
図2】後方から見た眼鏡10の斜視図である。
図3】眼鏡10の制御部28を説明するブロック図である。
図4】眼鏡10による測距処理のフローチャートである。
図5】表示部26の表示情報の変更例である。
図6】表示部26の表示情報の変更例である。
図7】前方から見た測距システム100の全体斜視図である。
図8】後方から見た測距システム100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、前方から見た眼鏡10の全体斜視図である。図2は、後方から見た眼鏡10の斜視図である。眼鏡10をかけるユーザの視線の向きを眼鏡10の前方とする。眼鏡10をかけるユーザから見て左右上下を、眼鏡10の左右上下方向とする。眼鏡10は、眼鏡10から測距対象物までの距離を測距する。測距対象物は特に限定されないが、例えば野外に配された物体である、ゴルフ場のピン等である。
【0010】
図1及び図2に示すように、眼鏡10は、フレーム12と、一対のレンズ14及びレンズ16と、発光部18と、受光部20と、一対の撮像部22及び撮像部24と、表示部26と、制御部28とを備える。
【0011】
フレーム12は、リム部32と、一対の枝部34及び枝部36とを有する。リム部32は、一対のレンズ14及びレンズ16の上部を保持する。枝部34は、リム部32の右端部から後方に延びる。枝部36は、リム部32の左端部から後方に延びる。枝部34、36の後端部は、ユーザの耳にかけられる。
【0012】
一対のレンズ14、16は、左右方向に間隔を開けて、リム部32によって保持されている。レンズ14、16は、度付き及び度なしの何れであってもよい。レンズ14、16は、赤外線の波長帯域を遮光するカラーフィルタにより形成される。レンズ14、16は、さらに、少なくとも赤外線の波長領域において特定の偏光方向の偏光を遮光する偏光板であってもよい。この場合に、レンズ14、16は可視光の波長領域においても偏光板として機能することがより好ましい。
【0013】
発光部18は、リム部32の右端部の前面に設けられている。発光部18は、発光部材の一例であるレーザ40と、発光駆動部42とを有する。
【0014】
レーザ40の一例は、直線偏光の赤外線を発光する半導体レーザである。レーザ40は、制御部28からの発光指示によって前方に、測定光の一例であるレーザ光のパルス光を発光する。レンズ14、16は、赤外線の波長帯域を遮光するカラーフィルタなので、レーザ40から発光されたレーザ光を遮光する。レーザ光の偏光方向は、レンズ14、16が透過する偏光方向と直交する方向に設定される。これにより、レンズ14、16は偏光板なので、発光部18から発光された偏光であるレーザ光をより確実に遮光する。
【0015】
発光駆動部42は、圧電部材を含む。発光駆動部42は、リム部32に固定されている。発光駆動部42は、レーザ40を保持する。発光駆動部42は、圧電部材の変形によって、レーザ40を傾斜させる。これにより、発光駆動部42は、レーザ40のレーザ光の発光方向を変更する。
【0016】
受光部20は、リム部32の左端部の前面に設けられている。
【0017】
受光部20は、受光部材の一例である受光素子44と、受光駆動部46とを有する。受光素子44は、フォトダイオードまたはフォトトランジスタ等の光電変換素子からなる。受光素子44は、発光部18から発光されて、測距対象物によって反射された光を受光する。受光素子44は、受光した光を電気信号へと光電変換して、制御部28へと出力する。
【0018】
受光駆動部46は、圧電部材を含む。受光駆動部46は、リム部32に固定されている。受光駆動部46は、受光素子44を保持する。受光駆動部46は、圧電部材の変形によって、受光素子44を傾斜させる。これにより、受光素子44の受光面の方向を変更する。
【0019】
撮像部22、24の一例は、CCD(charge-coupled device)カメラである。撮像部22は、リム部32の右半部の中央の後面に設けられている。撮像部24は、リム部32の左半部の中央の後面に設けられている。撮像部22、24は、レンズ14、16の後方のそれぞれユーザの右眼及び左眼を撮像して制御部28へと出力する。
【0020】
表示部26の一例は、液晶表示装置、有機EL表示装置である。表示部26は、レンズ14の後面に積層されている。表示部26は、測距された測距対象物までの距離を表示する。よって、表示部26は、通知部の一例である。尚、表示部26は、測距対象物に重ねて図2に「×」で示すターゲットマークを表示してもよい。
【0021】
制御部28は、眼鏡10の制御全般を司る。例えば、制御部28は、撮像部22、24から入力される画像に基づく視線検出、受光部20から入力される電気信号に基づく測距、及び、測距された距離を表示部26に表示する。
【0022】
図3は、眼鏡10の制御部28を説明するブロック図である。図3に示すように、制御部28は、視線検出部50と、測距部52と、記憶部54とを備える。
【0023】
視線検出部50は、撮像部22、24から出力されたユーザの両眼の画像データを取得する。視線検出部50は、取得した両眼の画像データから瞳孔の位置を抽出して、眼鏡をかけたレンズ14、16の後方から前方に向けられたユーザの視線の向きを検出する。視線検出部50は、対象判定時間以上、視線が固定されると、視線上の測距対象物を特定して、視線が測距対象物に固定された固定状態と判定する。視線検出部50は、固定状態と判定すると、発光駆動部42を制御して、レーザ40から発光されるレーザ光の方向を、視線検出部50により特定された視線上の測距対象物に向ける。視線検出部50は、さらに、発光駆動部42に連動させて受光駆動部46を制御する。具体的には、視線検出部50は、受光素子44の受光面がレーザ40から発光された後、測距対象物によって反射されたレーザ光に対して垂直になるように、受光駆動部46を制御する。また、視線検出部50は、固定状態と判定すると、測距部52に測距指示を出力する。
【0024】
測距部52は、受光素子44によって受光されたレーザ光により、視線検出部により特定された測距対象物までの距離を算出する。具体的には、測距部52は、視線検出部50から測距指示が入力されると、測距処理を開始する。測距部52は、測距処理において、レーザ40を制御して、レーザ光を発光させる。ここで、測距部52は、レーザ光が発光及び消光が周期的に繰り返されるパルスとなるようにレーザ40を制御する。測距部52は、レーザ光を受光した受光素子44から出力された受光信号を取得する。測距部52は、受光信号を取得するとレーザ40の発光を停止する。尚、測距部52は、受信信号を取得する前に、レーザ40から発光されたレーザ光のパルス数がパルス判定数以上になったと判定すると、レーザ40の発光を停止する。測距部52は、レーザ40からレーザ光が発光された発光時刻と、受光信号を取得した受光時刻との時間差から眼鏡10と測距対象物と間の距離を算出して測距する。測距部52は、複数のパルスに基づいて算出した複数の距離の平均を算出して、その平均を測距対象物までの距離としてもよい。これにより、測距部52は、測距の精度を向上できる。測距部52は、算出した距離が判定距離以上の場合、当該距離を表示部26へと出力して、表示部26に距離を表示させる。測距部52は、算出した距離が判定距離未満の場合、当該距離を表示部26に表示させない。
【0025】
記憶部54は、種々の情報を記憶する。記憶部54は、視線が測距対象物に固定されたか否かを判定する対象判定時間を記憶する。対象判定時間の一例は、1秒から3秒である。記憶部54は、レーザ光の停止を判定するパルス判定数を記憶する。パルス判定数の一例は、20個である。記憶部54は、測距部52が算出した距離を表示部26に表示させるか否かを判定する判定距離を記憶する。判定距離の一例は、数十cmから数mである。対象判定時間、パルス判定数及び判定距離は、ユーザが設定及び変更できるようにしてもよい。
【0026】
図4は、眼鏡10による測距処理のフローチャートである。図4に示すように、測距処理が開始されると、視線検出部50が視線を検出する(S10)。次に、視線検出部50は、対象判定時間に基づいて、視線が固定された固定状態か否かを判定する(S12)。視線検出部50は、視線が固定されたと判定するまで(S12:No)、ステップS10、S12を繰り返す。
【0027】
視線検出部50は、視線が固定された固定状態と判定すると(S12:Yes)、発光駆動部42及び受光駆動部46を駆動する(S14)。これにより、発光駆動部42は、レーザ40のレーザ光の発光の方向を視線検出部50により特定された測距対象物に向ける。この結果、レーザ40は、視線上の測距対象物に向けてレーザ光を発光可能な状態となる。また、受光素子44は、測距対象物によって反射されたレーザ光を受光可能な状態となる。視線の固定状態が判定された場合に、表示部26は、視線検出部50により検出された視線の位置に、「×」で示すターゲットマークを表示してもよい。
【0028】
次に、視線検出部50は、測距部52に測距指示を出力する(S16)。測距部52は、測距指示が入力されると、発光指示をレーザ40に出力して、パルス状態のレーザ光を発光させる(S18)。
【0029】
測距部52は、発光されたレーザ光のパルス数がパルス判定数以上か否かを判定する(S20)。測距部52は、パルス数がパルス判定数以上と判定すると(S20:Yes)、レーザ40を停止して(S22)、測距処理を終了する。
【0030】
一方、測距部52は、パルス数がパルス判定数未満と判定すると(S20:No)、レーザ光を受光したか否かを判定する(S24)。測距部52は、受光素子44から受光信号が入力されていないと、レーザ光を受光していないと判定して(S24:No)、ステップS20を繰り返し実行する。
【0031】
一方、測距部52は、受光素子44から受光信号が入力されていると、レーザ光を受光したと判定して(S24:Yes)、レーザ40の発光を停止するとともに、測距対象物までの距離を算出する(S26)。
【0032】
測距部52は、算出された距離が判定距離以上か否かを判定する(S28)。測距部52は、算出された距離が判定距離未満であると判定すると(S28:No)、算出した距離を表示部26に表示させることなく、ステップS10以下を再度繰り返す。
【0033】
一方、測距部52は、算出された距離が判定距離以上と判定すると(S28:Yes)、距離を表示部26へと出力して、表示部26に距離を表示させる(S30)。これにより、制御部28は、測距処理を終了する。尚、ステップS30の後、再度、測距処理を開始してもよい。
【0034】
上述したように、眼鏡10は、視線を検出して、視線上の測距対象物に発光部18から発光するレーザ光を向ける視線検出部50を有する。これにより、眼鏡10は、測距対象物に発光部18のレーザ40から発光されたレーザ光を到達させることができる。この結果、眼鏡10は、ユーザが測距を希望する測距対象物をより確実に特定してその距離を算出することができる。
【0035】
眼鏡10では、視線検出部50が、視線の固定状態になったと判定すると、測距部52が測距対象物までの距離を算出する。従って、ユーザが一瞥しただけの、測距離を希望しない対象物の距離を算出することがないので、不要な測距処理を低減できる。また、視線の固定状態になったときにはその直前に不要な測距処理をしていないので、測距部52は、迅速に距離の算出を開始できる。
【0036】
眼鏡10では、測距部52は、算出した距離が判定距離未満の場合、その距離を表示部26に出力しない。これにより、表示部26は、当該距離を表示しない。従って、ユーザが不要な距離表示に煩わされることを低減できる。例えば、ユーザがゴルフ場等でピンの距離を知るために眼鏡10を使用している場合において、ユーザがすぐ近くの友人等と会話している状態で、友人までの距離が表示されることがない。
【0037】
眼鏡10では、レンズ14、16が発光部18から発光される偏光であるレーザ光を遮光する偏光板として機能する。従って、眼鏡10は、ユーザがレーザ光によって眩しさを感じることを抑制できる。更に、眼鏡10では、レンズ14、16が、発光部18から発光される赤外線であるレーザ光を遮光するカラーフィルタとして機能する。従って、眼鏡10は、ユーザがレーザ光によって眩しさを感じることを、より抑制できる。
【0038】
上述した実施形態の一部を変更した例について説明する。
【0039】
上述した実施形態では、両眼の視線上の対象物を測距対象物として距離を算出したが、利き眼を検出して、利き眼の視線上の対象物を測距対象物としてもよい。この場合、視線検出部50は、例えば、視線が固定された状態で、撮像部22、24から入力された画像に基づいて、瞳孔が略中心に配置されている方の眼を効き眼として検出する。視線検出部50は、検出した利き眼の視線上の測距対象物にレーザ40のレーザ光及び受光素子44の受光面を向ける。
【0040】
上述した実施形態では、視線が固定状態となると距離を算出したが、視線が固定状態から変化したと判定すると、距離の算出を停止してもよい。この場合、視線検出部50は、視線が固定状態から変化したと判定すると、測距部52に測距停止指示を出力する。測距部52は、測距停止指示が入力されると、算出中であっても距離の算出を停止する。これにより、ユーザが不要となった距離を算出することを低減することができるとともに、不要な距離の表示によってユーザを煩わすことを低減できる。
【0041】
上述の実施形態では、表示部26が測距対象物までの距離を表示したが、表示部26はその他の表示情報を表示してもよい。
【0042】
図5は、表示部26の表示情報の変更例である。例えば、図5に示すように、ユーザがゴルフ場にいる場合であって、ユーザからピンの位置が見えない場合、表示部26はピンの方向を示す矢印60を表示してもよい。この場合、眼鏡10は、目標物検出部の一例であるGPS(Global Positioning System)端末を更に備え、記憶部54はゴルフ場のピンの位置情報を記憶する。これにより、眼鏡10では、GPS端末が、ユーザの位置及び目標物の一例であるピンの位置を検出して、記憶部54に記憶されたピンの位置情報に含まれるピンの位置からピンの方向を検出する。そして、表示部26は、測距した距離とともに、ピンの方向を示す矢印60を表示する。
【0043】
図6は、表示部26の表示情報の変更例である。図6に示すように、表示部26は、測距された測距対象物までの距離とともに、測距対象物までの途中の距離を示す等距離線62を表示してもよい。図6においては、測距対象物までの距離が150yardであって、途中の100yard及び50yardが点線で示す等距離線62によって表示されている。
【0044】
図7は、前方から見た測距システム100の全体斜視図である。図8は、後方から見た測距システム100の斜視図である。図7及び図8に示すように、測距システム100は、眼鏡70と、測距装置72とを備える。眼鏡70は、フレーム12と、一対のレンズ14及びレンズ16とを備える。
【0045】
測距装置72は、眼鏡70に着脱可能に設けられている。測距装置72は、発光部18と、受光部20と、一対の撮像部22及び撮像部24と、表示部126と、制御部28と、保持部材74とを備える。保持部材74は、測距装置72を保持する。保持部材74は、眼鏡70のリム部32の上端に着脱可能に設けられる。発光部18及び受光部20は、保持部材74の前面に設けられている。発光部18及び受光部20は、互いに間隔をあけて配置されている。撮像部22、24は、保持部材74の後面に設けられている。撮像部22、24は、互いに間隔をあけて配置されている。表示部126は、保持部材74の後面の下端に設けられている。表示部126は、光を透過するとともに、測距した距離等の画像を表示する。制御部28は、保持部材74の内部に埋め込まれている。表示部126の機能は、表示部26の機能と同様である。本実施形態による測距システム100においても、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
その他の表示する情報は、ピン等の測距対象物周辺の風向き、木及びバンカー等の障害物までの距離、他の人及び他のグループまでの距離である。更に、GPS端末及びゴルフ場のコース情報を連携させて、ゴルフ場のフェアウエイの見えない障害物を表示させてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、画像によって距離等を表示する例を示したが、音声等によって距離等をユーザに通知してもよい。
【0048】
ユーザがゴルフ場にいる場合であって、眼鏡10が、ゴルフボールの到達位置を予測するように構成してもよい。例えば、眼鏡10は、発光部18からのレーザ光をゴルフボールに向けて発光させる。眼鏡10は、受光部20によってゴルフボールにより反射されたレーザ光を受光することによりゴルフボールの速度を算出する。また、眼鏡10は、ゴルフボールを追うユーザの瞳孔の動きからゴルフボールが飛ぶ方向を検出する。これにより、眼鏡10は、ゴルフボールの速度及び飛ぶ方向からゴルフボールの到達位置を予測して、表示部26に表示する。尚、眼鏡10の前面に撮像部を別に設けて、撮像部が撮像したゴルフボールの画像によって、ゴルフボールの速度及び飛ぶ方向を検出してもよい。更に、ユーザがゴルフボールの到達位置の近傍に移動した場合、眼鏡10は、ゴルフボールの位置を再度表示部26に表示させてもよい。これにより、ユーザは容易にゴルフボールを見つけることができる。
【0049】
上述した実施形態における各部材の形状、個数、表示情報等は適宜変更してよい。また、各実施形態を組み合わせてもよい。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0051】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0052】
10 眼鏡、 12 フレーム、 14 レンズ、 16 レンズ、 18 発光部、 20 受光部、 22 撮像部、 24 撮像部、 26 表示部、 28 制御部、 32 リム部、 34 枝部、 36 枝部、 40 レーザ、 42 発光駆動部、 44 受光素子、 46 受光駆動部、 50 視線検出部、 52 測距部、 54 記憶部、 60 矢印、 62 等距離線、 70 眼鏡、 72 測距装置、 74 保持部材、 100 測距システム、 126 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8