特許第6015114号(P6015114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧 ▶ インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの特許一覧

特許6015114近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜
<>
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000059
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000060
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000061
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000062
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000063
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000064
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000065
  • 特許6015114-近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜 図000066
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015114
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】近赤外光吸収膜形成材料及び近赤外光吸収膜を有する積層膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20161013BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20161013BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/11 502
   G02B5/22
   H01L21/30 574
【請求項の数】11
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2012-110215(P2012-110215)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2012-247777(P2012-247777A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2015年4月6日
(31)【優先権主張番号】13/118,013
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 和美
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
(72)【発明者】
【氏名】ウ ソン ホワン
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ ゴールドファーブ
(72)【発明者】
【氏名】ワイ キン リー
(72)【発明者】
【氏名】マーチン グローデ
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−098656(JP,A)
【文献】 特開2004−029680(JP,A)
【文献】 特開2010−139822(JP,A)
【文献】 特開2009−098639(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/031396(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/022221(WO,A1)
【文献】 特開2006−293207(JP,A)
【文献】 特開平01−245523(JP,A)
【文献】 特開2012−117030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
G02B 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1種、及びオキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有する熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を含有する高分子化合物1種以上と、(B)芳香環を含有する高分子化合物(但し上記(A)成分を除く)1種以上と、(C)波長500〜1,200nmの光を吸収するシアニン色素であって、下記一般式(14)で示される陰イオンを有するものである近赤外光吸収色素1種以上と、(D)溶剤1種以上とを含有し、上記(A)成分の高分子化合物の添加量が、全高分子化合物の2質量%以上であることを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
【化1】
(式中、R1、R7、R9、R14はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基である。R2〜R6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、−C(CF32OR16、又は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を示し、R2〜R6の1つ以上がフッ素原子あるいはフッ素を含有する基である。R16、R8、R13はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基を示す。L1は単結合又は−C(=O)O−を示す。mは0又は1を示す。L2は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価又は3価の炭化水素基を示す。nは1又は2を示す。R10〜R12はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基を示す。R10〜R12は任意の組み合わせで少なくともそのうちの2つが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R15は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜15の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【請求項2】
上記(A)成分の高分子化合物の添加量が、全高分子化合物の60質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項3】
上記(B)成分の高分子化合物が、更に熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を1種以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項4】
上記熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位が、オキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有することを特徴とする請求項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項5】
上記(B)成分の高分子化合物が、アセナフチレンに由来する繰り返し単位を含有する高分子化合物、又は芳香環を有する化合物の重縮合体である高分子化合物である請求項1乃至4のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項6】
上記(C)近赤外光吸収色素が、下記式(5)で示されるシアニン色素である請求項1乃至5のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【化3】
(式中、X-は上記一般式(14)で示される陰イオンである。RC01は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。RC02及びRC03はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、RC02及びRC03は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。RC04及びRC05はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。式中の部分構造
【化4】
及び
【化5】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15の酸素原子、硫黄原子といったヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【請求項7】
更に、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有し、更に、フォトレジスト材料を塗布し成膜することにより形成されるフォトレジスト膜を有することを特徴とする積層膜。
【請求項9】
上記積層膜が、フォトレジスト膜の直下に珪素を含有する膜を有し、更にその下に近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有することを特徴とする請求項8記載の積層膜。
【請求項10】
上記近赤外光吸収膜が、光オートフォーカスに使用される近赤外光の吸収膜として機能することを特徴とする請求項8又は9記載の積層膜。
【請求項11】
上記近赤外光吸収膜が、レジストパターンの形成に用いられる露光光の反射防止膜として機能することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の積層膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収膜形成材料に関し、特に、ArFエキシマレーザー光(193nm)での露光に好適な近赤外光吸収膜形成材料に関する。更に本発明は、この近赤外光吸収膜形成材料を用いて形成された近赤外光吸収膜を有する積層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、光リソグラフィーによる微細加工が利用されている。光リソグラフィーとは、露光装置によってレチクル又はマスクと呼ばれる原版の像をシリコンウエハ上のフォトレジスト膜内に形成し、フォトレジスト膜を現像し、フォトレジストパターン下のシリコン又は他の金属等をエッチングして、シリコンウエハ上に電子回路を形成する技術である。パターンを微細化して半導体素子を集積化するため、光リソグラフィーに用いる露光光の短波長化が進んでおり、例えば、64MビットDRAMの量産プロセスにおいては、加工にKrFエキシマレーザー(248nm)が利用され、更に微細な加工技術を必要とする、例えば、加工寸法が0.13μm以下を必要とするDRAMの製造にはArFエキシマレーザー(193nm)が利用されている。更に、開口数(NA)を0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの製造が検討されている。次世代の45nmノードデバイスの製造においては波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がったが、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることでスキャナーがコストアップすること、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためにハードペリクルを採用することとなり光学系に変更を伴うこと、フォトレジスト膜のエッチング耐性が低いこと等の問題により、F2リソグラフィーの開発は中止され、現在はArF液浸リソグラフィーが検討されている。
【0003】
これら光リソグラフィーにおいてレチクルを介しフォトレジスト膜を露光する際、ウエハ表面が投影光学系の最良像面と合致するように、即ちフォーカス合わせが行われるように、露光装置中でウエハを載せた移動ステージが投影光軸方向に微動している。そのフォーカス合わせのためのセンサーとして、例えば、特開昭58−113706号公報(特許文献1)に開示されているように、ウエハの表面に斜めに結像光束(非露光波長)を投射して、その反射光を検出する斜入射光式の光フォーカス検出系が使われる。ここで用いられる結像光束としては、特開平2−54103号公報(特許文献2)、特開平6−29186号公報(特許文献3)、特開平7−146551号公報(特許文献4)、米国特許出願公開第2009/0208865号明細書(特許文献5)に記載されているように、赤外光、特に近赤外光が挙げられる。
【0004】
しかし、このように赤外光をフォーカス検出系に使用している露光装置では、フォトレジスト膜中を赤外光が透過してしまうために正確にフォーカスを検出できないという問題があった。即ち、フォーカス検出用の赤外光の一部がフォトレジスト膜を透過し、その透過光が基板表面で反射してウエハ上面で反射した光とともに検出系に入射することとなり、フォーカス検出の精度が劣化するという問題があった。
【0005】
上記した光オートフォーカスは、赤外光をウエハ上面で反射させ、この反射光を検出することでウエハの上面位置を検知し、これを投影レンズ像面に合致させるように駆動させるものである。ウエハ上面で反射した光のほかに、レジスト膜を透過して基板表面で反射した光が存在し、幅をもった光強度分布を有する検出光が検出系に入射すると、位置測定値はこの光強度分布の重心を示すこととなり、フォーカス検出の精度が劣化してしまう。一般に、基板はパターン形成された金属、誘電性材料、絶縁性材料、セラミック材料等を含む多層構造からなるものであり、パターン化基板では赤外光の反射が複雑となりフォーカス検出が難しくなる。フォーカス検出の精度が劣化すると投影像が不明瞭となりコントラストが低下するため、良好なフォトレジストパターンを形成することができない。
【0006】
近赤外光を用いた光オートフォーカスの精度を上げるため、近赤外光吸収色素を含むフォトレジスト膜を用いる方法が提案されている(特許文献4:特開平7−146551号公報)。この場合、近赤外光はフォトレジスト膜を透過せず、ウエハ上面で反射した光以外の反射光はフォーカス検出系に入射しないため、フォーカス検出の精度が向上する。しかし、ここで用いる近赤外光吸収色素は、露光光を吸収したりフォトレジスト膜の解像性を劣化させたりするものであってはならないため、ArFエキシマレーザーを用いた光リソグラフィーにおいては適用が難しい。また、近赤外光吸収色素を含む膜をフォトレジスト膜下へ導入する手法が提案されており、この手法であればレジスト膜の解像性の劣化を防ぐことができる(特許文献5:米国特許出願公開第2009/0208865号明細書)。
【0007】
光オートフォーカスに代わる手法として、ウエハ表面に空気を吐出する圧力を検知する原理からなるAir Gauge Improved Leveling (AGILETM)と呼ばれる手法も提案されている(非特許文献1:Proc. of SPIE Vol.5754,p.681 (2005))。しかし、この手法は、位置測定の精度に優れる一方で測定に長時間を要するため、スループットの向上を求める半導体の量産現場で許容される手法となっていない。
【0008】
以上の通り、光リソグラフィーにおけるオートフォーカスを精度よく、かつ短時間で行う手法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−113706号公報
【特許文献2】特開平2−54103号公報
【特許文献3】特開平6−29186号公報
【特許文献4】特開平7−146551号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0208865号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Proc. of SPIE Vol.5754,p.681 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、半導体製造工程に用いられる光リソグラフィーに際するオートフォーカスを精度よく行うため、光オートフォーカスに用いられる近赤外光を吸収する膜を形成するための材料を提供することを目的とする。また、上記近赤外光吸収膜形成材料によって形成された近赤外光吸収膜及びフォトレジスト膜を含む積層膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、光オートフォーカスを精度よく行うため、近赤外光を吸収する膜をフォトレジスト膜下に導入する手法を検討した。近赤外光吸収膜を導入すればフォトレジスト膜を透過した近赤外光が基板で反射してフォーカス検出系に入射することがなくなり、フォーカス検出の精度が向上すると考えられた。また、この手法であれば、現在半導体の製造現場で一般的に用いられている光フォーカス検出系をそのまま使用することができるため、フォーカス検出に要する時間は従来と同等であり十分実用に適うと考えられた。
【0013】
本発明者らは近赤外光吸収膜の導入にあたり、現在実用されているウエハ積層プロセスをそのまま使うことができるよう、既存の露光光の反射防止膜に近赤外光吸収の機能を併せ持たせる手法を考えた。現在、レジスト膜の下層に珪素含有膜、その下に炭素密度が高くエッチング耐性が高い下層膜(Organic Planarization Layer、以下OPLと略す)、その下に被加工基板を積層する3層プロセスを用い、各層のエッチング選択比を利用して基板を加工し、更に各層の光学特性を調整して露光光の反射を防止する検討が行われている(特開2005−250434号公報、特開2007−171895号公報、特開2008−65303号公報参照。)。本発明者らは、このOPLに近赤外光吸収色素を導入し、近赤外光を吸収する機能を持たせることを検討した。
【0014】
OPLのベース樹脂は、露光光の反射防止を実現する光学特性に加え、高いエッチング耐性を有する必要がある。また、上記の珪素含有膜などを積層する際にOPLが損なわれてはならず、OPLが十分に硬化するよう熱又は酸で架橋反応が起こる樹脂を用いる必要がある。例えば、近赤外光吸収色素含有OPLの上にスピンコートで膜を積層する際、OPLの膜厚が減少したり、膜中の近赤外光吸収色素が溶出したりすると、露光光の反射及び近赤外光の反射を制御できなくなる。また、エッチング加工にも不具合が生じる。従って、積層膜形成時に用いられる溶剤に対し難溶となるよう、OPLは十分に硬化されていなければならない。
【0015】
反射防止膜、下層膜用のエッチング耐性を向上させるため、芳香環を含有する高分子化合物が用いられている。一方、膜が十分に硬化し溶剤への耐性を発揮するためには、高分子化合物に酸や熱で架橋反応を起こす構造を含有する必要もある(特開平6−84789号公報、特開2005−15532号公報、特開2005−250434号公報参照)。ここで、高い架橋反応性を有する構造とは一般にヘテロ原子を含有するものであり、エッチング耐性は低いものである。エッチング耐性を追及し芳香環の導入比率を上げると、必然的に架橋反応を起こす構造の導入比率は減少し、膜の溶剤耐性が損なわれてしまう。つまり、エッチング耐性と膜の溶剤耐性という2つの性能の間で二律背反に陥る。
【0016】
そこで、本発明者らは、エッチング耐性の高いベース樹脂で構成されるOPLを形成しつつ、その膜表面に高い溶剤耐性を有する薄いバリアー層を導入することでエッチング耐性と膜の溶剤耐性とを両立させることを考えた。
【0017】
フォトレジスト材料にフッ素を含有する高分子化合物を添加すると、スピンコートによる成膜時に該フッ素含有高分子化合物がフォトレジスト膜表面に配向し、液浸露光時の水に対する良好なバリアー性能を有するフォトレジスト膜となることが報告されている(特開2007−297590号公報参照)。また、反射防止膜において、成膜時に光学特性の異なる複数の高分子化合物を膜の垂直方向に分離させ、高い反射防止能を実現する方法が報告されている(米国特許出願公開第2008/0008955号明細書参照)。
これらの報告を参考に、本発明者らは、近赤外光吸膜形成材料にフッ素を含有する高分子化合物を添加し、成膜時に該フッ素含有高分子化合物を膜表面に偏在させ、溶剤へのバリアー層として機能させることを考えた。この方法であれば、工程を追加することなく従来の成膜プロセスをもってバリアー層を導入することが可能である。
【0018】
以上の検討に基づき、本発明者らは、(A)下記一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1種を含有する高分子化合物と、(B)芳香環を含有する高分子化合物と、(C)近赤外光吸収色素と、(D)溶剤とを含有する近赤外光吸収膜形成材料を調製し、これをウエハ上に成膜した。本発明者らは、こうして形成された近赤外光吸収膜の表面に(A)高分子化合物の偏在が起こり、優れた溶剤耐性を有する膜が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0019】
従って、本発明は、下記の近赤外光吸収膜形成材料、及びそれにより形成される近赤外光吸収膜、積層膜を提供する。
本発明の一態様によれば、(A)下記一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1種、及びオキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有する熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を含有する高分子化合物1種以上と、(B)芳香環を含有する高分子化合物(但し上記(A)成分を除く)1種以上と、(C)波長500〜1,200nmの光を吸収するシアニン色素であって、下記一般式(14)で示される陰イオンを有するものである近赤外光吸収色素1種以上と、(D)溶剤1種以上とを含有し、上記(A)成分の高分子化合物の添加量が、全高分子化合物の2質量%以上であることを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料が提供される。
【化1】
(式中、R1、R7、R9、R14はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基である。R2〜R6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、−C(CF32OR16、又は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を示し、R2〜R6の1つ以上がフッ素原子あるいはフッ素を含有する基である。R16、R8、R13はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基を示す。L1は単結合又は−C(=O)O−を示す。mは0又は1を示す。L2は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価又は3価の炭化水素基を示す。nは1又は2を示す。R10〜R12はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基を示す。R10〜R12は任意の組み合わせで少なくともそのうちの2つが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R15は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜15の炭化水素基を示す。)
【化48】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
この場合、上記(B)成分の高分子化合物が更に熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を1種以上含有することが好ましい。好ましくは上記熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位はオキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有する。近赤外光吸収膜形成材料は、更に、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することができる。
【0020】
本発明の他の態様によれば、上記近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有し、更に、フォトレジスト材料を塗布し成膜することにより形成されるフォトレジスト膜を有することを特徴とする積層膜が提供される。好ましくは、上記積層膜が、フォトレジスト膜の直下に珪素を含有する膜を有し、更にその下に近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有する。
好ましい態様によれば、上記近赤外光吸収膜が、光オートフォーカスに使用される近赤外光の吸収膜として機能する。また上記近赤外光吸収膜が、レジストパターンの形成に用いられる露光光の反射防止膜として機能する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより、溶剤耐性の高い近赤外光吸収膜を形成することができる。この近赤外光吸収膜とフォトレジスト膜とを含む積層膜を光リソグラフィーに用いることにより、光オートフォーカスの検出精度が向上し、これにより光リソグラフィーの投影像が明瞭となり、コントラストが向上するため、良好なフォトレジストパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】合成例12で合成した近赤外光吸収色素C2の1H−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図2】合成例12で合成した近赤外光吸収色素C2の19F−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図3】実験例4で得られた近赤外光吸収膜について、溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を示す。
図4】実験例5で得られた近赤外光吸収膜について、溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を示す。
図5】実施例15で得られた近赤外光吸収膜について、溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を示す。
図6】実施例16で得られた近赤外光吸収膜について、溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を示す。
図7】実施例17で得られた近赤外光吸収膜について、溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を示す。
図8】比較例9で得られた近赤外光吸収膜について、溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、(A)上記一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1種を含有する高分子化合物1種以上と、(B)芳香環を含有する高分子化合物(但し上記(A)成分を除く)1種以上と、(C)近赤外光吸収色素1種以上と、(D)溶剤1種以上とを含有することを特徴とする。この近赤外光吸収膜形成材料をウエハ上に成膜すると、(A)高分子化合物が膜表面に偏在しバリアー層を形成する。このバリアー層が膜構成成分の有機溶剤への溶出を防ぎ、結果として溶剤耐性が優れた膜となる。
【0024】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料に含まれる(A)一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位のうち1種以上を含有する高分子化合物、(B)芳香環を含有する高分子化合物、(C)近赤外光吸収色素、(D)溶剤について、以下に説明する。
(A)高分子化合物
(A)高分子化合物は、上記一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【化2】
【0025】
式中、R1、R7、R9、R14はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基である。R2〜R6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、−C(CF32OR16、又は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を示し、R2〜R6の1つ以上がフッ素原子あるいはフッ素を含有する基である。R2〜R6が1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルコキシ基である場合のアルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基を挙げることができ、これら基の一部あるいは全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0026】
16、R8、R13はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基を示す。1価有機基としては水酸基の保護基を種々用いることができ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、イコサニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の1価炭化水素基を挙げられる。また、これら1価炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。
【0027】
また、下記一般式(R1−1)、(R1−2)で示される基、炭素数4〜20、特に炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜5のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20、特に炭素数4〜15のオキソアルキル基、炭素数1〜10のアシル基等を挙げることができる。
【0028】
【化3】
【0029】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。式中、RL01、RL02は水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0030】
【化4】
【0031】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0032】
L04は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(R1−1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示でき、アシル基としては、具体的にはフォルミル、アセチル、エチルカルボニル、ピバロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル等を例示できる。yは0〜6の整数である。
【0033】
上記式(R1−1)で示される保護基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【0034】
【化5】
【0035】
上記式(R1−1)で示される保護基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0036】
上記式(R1−2)の保護基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0037】
1は単結合又は−C(=O)O−を示す。mは0又は1を示す。
【0038】
2は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価又は3価の炭化水素基を示す。L2としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−メチルヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、1−メチルアダマンタン、2−メチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、2−エチルアダマンタン等の炭化水素から水素原子2つ又は3つを除いたものを挙げることができる。
nは1又は2を示す。
【0039】
10〜R12はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基を示す。R10〜R12は任意の組み合わせで少なくともそのうちの2つが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0040】
炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルブチル基、メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、アダマンチルブチル基、メチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルブチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基等の1価の炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基を挙げることができ、これらの基中の水素原子の一部がハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アルコキシアルキル基、アシロキシ基、アシロキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基等に置換されていてもよい。
【0041】
10〜R12は、任意の組み合せで少なくともそのうち2個が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。環を形成する組み合わせの典型的な例としては、R10とR11、R10とR12、R11とR12が挙げられる。この場合、形成される環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等の炭素数3〜12の脂環式炭化水素が例示でき、これらを含む縮合環でもよい。また、これらの脂環式炭化水素の水素原子の一部が水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アルコキシアルキル基、アシロキシ基、アシロキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基等に置換されていてもよい。
【0042】
15は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜15の炭化水素基を示す。R15としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、アダマンチル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基を挙げることができる。
【0043】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化6】
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
(式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基である。)
【0046】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化9】
(式中、R7は水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示す。Meはメチル基を示す。)
【0047】
上記一般式(3)で示される繰り返し単位の具体例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化10】
(式中、R9は水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示す。Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。)
【0048】
上記一般式(4)で示される繰り返し単位の具体例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化11】
(式中、R14は水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示す。)
【0050】
上記(A)高分子化合物は、更に熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はオキシラン、オキセタン等の環状エーテル構造を含有する繰り返し単位を1種以上含有することが好ましい。これにより該高分子化合物の硬化性が向上し、近赤外光吸収膜の表面に形成されるバリアー層が硬く緻密なものとなるため、高い溶剤耐性が得られる。架橋反応を起こす繰り返し単位としては、オキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有するものが特に好ましい。これらの構造は熱又は酸による架橋反応性が高いため、特に硬く緻密なバリアー層を形成することが可能になるためである。
【0051】
熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位として以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化12】
(式中、R01は水素原子、メチル基、フッ素原子、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Meはメチル基を示す。)
【0053】
上記(A)高分子化合物には、エッチング耐性を付与するため、あるいは近赤外光吸収膜形成材料の溶剤(D)への溶解性を付与するため、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体に基づく繰り返し単位、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸1−ナフチル、(メタ)アクリル酸2−ナフチル、(メタ)アクリル酸9−アントラニルメチル等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−ビニルアニソール、4−ビニルアニソール、4−t−ブトキシスチレン、4−t−アミルオキシスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−アセチルオキシスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、9−ビニルカルバゾール、9−ビニルアントラセン、インデン、インドール、メチレンインダン、アセナフチレン等の含芳香環単量体に由来する繰り返し単位を導入してもよい。
【0054】
上記(A)高分子化合物における各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば、下記<1>〜<3>に示す範囲とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。
<1>上記一般式(1)〜(4)で示される繰り返し単位を合計で8〜90モル%、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは10〜85モル%、更に好ましくは15〜85モル%、特に好ましくは15〜80モル%。
<2>熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を合計で8〜90モル%、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは10〜85モル%、更に好ましくは15〜85モル%、特に好ましくは15〜80モル%。
<3>その他の繰り返し単位を合計で0〜40モル%、好ましくは0〜35モル%、より好ましくは1〜35モル%、更に好ましくは3〜30モル%。
なお、これら<1>〜<3>の合計は100モル%である。
【0055】
上記一般式(1)〜(4)で示される繰り返し単位のもととなる単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。特に、上記一般式(2)で示される繰り返し単位のもととなる単量体の一部は特開2007−204385号公報に記載の方法で、上記一般式(3)で示される繰り返し単位のもととなる単量体は特開2006−152255号公報に記載の方法で製造できる。
【0056】
熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位、その他の繰り返し単位のもととなる単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0057】
上記(A)高分子化合物を製造する場合、公知の重合反応を用いてよいが、好ましくはラジカル重合である。
【0058】
ラジカル重合反応の反応条件は、(a)溶剤としてベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を1種以上用い、(b)重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を1種以上用い、(c)分子量調整の必要に応じてラジカル連鎖移動剤、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、1−チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸等のチオール化合物を1種以上用い、(d)反応温度を0〜140℃程度に保ち、(e)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、これらの範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0059】
なお、上記一般式(1)乃至(4)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜150,000である。分子量が大きすぎる場合には、溶剤にポリマーが溶けない、あるいは溶剤に溶けた場合でも成膜性が悪く、スピンコートでウエハ全面に均一な厚さの膜を形成することができないことがある。一方、分子量が小さすぎる場合は、バリアー層を十分に形成できず溶剤耐性を付与することができないことがある。
【0060】
上記(A)高分子化合物は、全高分子化合物の2質量%以上、好ましくは5質量%以上含有するものであることが好ましい。(A)高分子化合物の添加量が少ない場合はバリアー層が形成されず、十分な溶剤耐性を得ることができない。その上限は、通常60質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
【0061】
(B)芳香環を含有する高分子化合物
本発明の近赤外光吸収膜形成材料に含まれる上記(B)芳香環を含有する高分子化合物は、本発明の近赤外光吸収膜形成材料、及びそれにより形成される近赤外光吸収膜の主構成成分である。なお、芳香環を含有していても、上記(A)成分に含まれるものは(B)成分から除かれる。エッチング耐性の高い膜を得るため、(B)高分子化合物に芳香環を導入する。
(B)芳香環を含有する高分子化合物としては、芳香環を含有する高分子化合物であればいずれを用いてもよく、例えばフォトレジスト下層膜のベース樹脂として用いられている高分子化合物が挙げられる。具体的には、スチレン又はその誘導体、芳香環を有する(メタ)アクリル酸誘導体、ビニルナフタレン又はその誘導体、ビニルアントラセン又はその誘導体、ビニルカルバゾール等の重合性不飽和結合を有する単量体を重付加してなる繰り返し単位を含有する高分子化合物、あるいは、芳香環を有する化合物、例えばフェノール誘導体、ナフトール誘導体等を重縮合してなる高分子化合物が挙げられる。
【0062】
上記(B)高分子化合物のうち重付加で得られるものの具体例として、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸1−ナフチル、(メタ)アクリル酸2−ナフチル、(メタ)アクリル酸9−アントラニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−1−ナフチル、N−(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、3−カルボキシスチレン、4−カルボキシスチレン、3−ビニルアニソール、4−ビニルアニソール、4−t−ブトキシスチレン、4−t−アミルオキシスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−アセチルオキシスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、9−ビニルカルバゾール、9−ビニルアントラセン、インデン、インドール、メチレンインダン、アセナフチレン等の含芳香環単量体を(共)重合してなる繰り返し単位を有する高分子化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
上記(B)高分子化合物のうち重付加で得られるものは、上記した芳香環を有する繰り返し単位の他に、エッチング耐性の劣化が許容される範囲で、熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を1種以上含有することが好ましい。架橋反応を起こす繰り返し単位としては、上記(A)成分の高分子化合物と同様に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はオキシラン、オキセタン等の環状エーテル構造を含有する繰り返し単位を例示することができる。これにより該高分子化合物の硬化性が向上し、更に高い溶剤耐性を得ることができる。架橋反応を起こす繰り返し単位としては、オキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有するものが特に好ましい。
【0064】
熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位としては、上記した(A)高分子化合物に用いられる繰り返し単位と同様のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
上記(B)高分子化合物のうち重付加で得られるものには、近赤外光吸収膜形成材料の溶剤(D)への溶解性を付与するため、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体に基づく繰り返し単位、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル等の単量体に由来する繰り返し単位を導入してもよい。
【0066】
上記(B)高分子化合物のうち重付加で得られるものにおける各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば、下記<1>〜<3>に示す範囲とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。
<1>芳香環を含有する繰り返し単位を合計で20〜100モル%、好ましくは20〜95モル%、より好ましくは25〜95モル%、更に好ましくは30〜90モル%、特に好ましくは40〜90モル%。
<2>熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を合計で0〜80モル%、好ましくは5〜80モル%、より好ましくは5〜75モル%、更に好ましくは10〜70モル%、特に好ましくは10〜60モル%。
<3>その他の繰り返し単位を合計で0〜40モル%、好ましくは0〜35モル%、より好ましくは1〜35モル%、更に好ましくは3〜30モル%。
なお、これら<1>〜<3>の合計は100モル%である。
【0067】
芳香環を含有する繰り返し単位を与える単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0068】
熱又は酸で架橋反応を起こす繰り返し単位、その他の繰り返し単位を与える単量体についても、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0069】
上記(B)高分子化合物のうち重付加で得られるものを製造する場合、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等、公知の重合反応を用いてよいが、好ましくはラジカル重合である。
【0070】
ラジカル重合反応の反応条件は、(a)溶剤としてベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を1種以上用い、(b)重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を1種以上用い、(c)分子量調整の必要に応じてラジカル連鎖移動剤、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、1−チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸等のチオール化合物を1種以上用い、(d)反応温度を0〜140℃程度に保ち、(e)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、これらの範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0071】
なお、(B)高分子化合物のうち重付加で得られるものの重量平均分子量(Mw)は、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜150,000である。分子量が大きすぎる場合には、溶剤にポリマーが溶けない、あるいは溶剤に溶けた場合でも成膜性が悪く、スピンコートでウエハ全面に均一な厚さの膜を形成することができないことがある。一方、分子量が小さすぎる場合は、膜の溶剤耐性が得られない場合がある。
【0072】
(B)高分子化合物のうち重縮合で得られるものの例としては、例えばノボラック樹脂を挙げられる。具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、グリシジル−2−メチルフェニルエーテル、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、イソチモール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリスチレン、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、あるいは上記(B)高分子化合物のうち重付加で得られる高分子化合物を、アルデヒド類と重縮合させたノボラック樹脂が挙げられる。
【0073】
ここで用いられるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、1−ナフタアルデヒド、2−ナフタアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。特に好ましいのは、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、2−ナフチルアルデヒドである。
【0074】
これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。また、これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アルデヒド類の使用量は、上記ノボラック樹脂を形成するための芳香環含有化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0075】
ホルムアルデヒドの供給形態としては、一般的に使用されるホルムアルデヒド水溶液の他に、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアルデヒドジメチルアセタール等のアセタール類など、重縮合反応中にホルムアルデヒドと同じ反応性を示すものであれば、どのような化合物であっても使用することができる。
【0076】
また、上記(B)高分子化合物のうち重縮合で得られるノボラック樹脂は、芳香環を含有する化合物とアルデヒド類とを酸触媒で縮合して得られるが、ここで、酸触媒は、具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。これらの酸触媒の使用量は、芳香環含有化合物1モルに対して1×10-5〜5×10-1モルが好ましい。
【0077】
重縮合における反応溶剤として水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン又はこれらの混合溶剤等を用いることができる。これらの溶剤は、反応原料100部(質量部、以下同じ)に対して0〜2,000部の範囲であることが好ましい。
【0078】
反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、通常10〜200℃の範囲である。
【0079】
重縮合の方法としては、芳香環を含有する化合物、アルデヒド類、酸触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下に芳香環を含有する化合物、アルデヒド類を滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、酸触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去することができる。
【0080】
芳香環を含有する化合物は単独で重合してもよいが、他の芳香環を含有する化合物と組み合わせて2種類以上を用いることもできる。
【0081】
芳香環を含有する化合物とアルデヒド類で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる(B)高分子化合物のGPCによるポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜30,000、特に1,500〜20,000であることが好ましい。分子量が大きすぎる場合には、溶剤にポリマーが溶けない、あるいは溶剤に溶けた場合でも成膜性が悪く、スピンコートでウエハ全面に均一な厚さの膜を形成することができないことがある。一方、分子量が小さすぎる場合は、膜の硬化性が低いために溶剤耐性が得られない場合がある。
【0082】
(C)近赤外光吸収色素
上記(C)近赤外光吸収色素は、波長500〜1,200nmの光を吸収するものであればいずれのものでもよい。かかる近赤外光吸収色素として下記一般式(5)〜(8)で示される構造のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
【化13】
【0084】
上記一般式(5)中、RC01は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。RC02及びRC03はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、RC02及びRC03は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。RC04及びRC05はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。式中の部分構造
【化14】
及び
【化15】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15の酸素原子、硫黄原子といったヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0085】
上記一般式(5)中、RC01は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。
【0086】
C01として具体的には、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられ、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ヘテロ原子が含まれる炭化水素基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、あるいはこれらのアルコキシ基やアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、水酸基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルオキシカルボニル基、あるいはこれらのエステル結合含有置換基を有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有する上記炭化水素基、フェニルスルホニル基、あるいはこれを置換基として有する上記炭化水素基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアルキルアミノ基、アリールアミノ基、あるいはこれらを置換基として有する上記炭化水素基、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオフェノキシ基、あるいはこれらのチオアルコキシ基やチオアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、更には、前記例示のうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0087】
C02及びRC03はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、RC02及びRC03は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環、特に非芳香環を形成してもよい。
【0088】
C02及びRC03として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、RC02及びRC03が相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成する場合には、5員環あるいは6員環を形成する場合が特に好ましい。また、その際に形成された環構造中の水素原子の一部が直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基で置換されていてもよい。
【0089】
C04及びRC05はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。
【0090】
C04及びRC05として具体的には、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ヘテロ原子が含まれる炭化水素基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基やアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、水酸基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルオキシカルボニル基等のエステル結合含有置換基を有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有する上記炭化水素基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基を置換基として有する上記炭化水素基、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオフェノキシ基等のチオアルコキシ基やチオアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、更には、前記例示のうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0091】
a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。これらが変わる、即ち共役系の長さが変わることで、近赤外光吸収色素化合物の吸収波長に影響する。本発明の用途に好適な波長及び原料入手容易性の観点から、好ましいa1及びa2としては0〜2、より好ましくは1あるいは2が特に望ましい。
【0092】
上記一般式(5)中の部分構造
【化16】
は、炭素数4〜15の酸素原子、硫黄原子といったヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0093】
上記部分構造は、具体的には下記一般式(9)〜(13)のいずれか1種の部分構造で示される。
【化17】
(式中、RC17はハロゲン原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。pは0〜4の整数を示す。Zは酸素原子、硫黄原子、又は−C(RZ2−を示し、RZは水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。)
【0094】
C17として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ニトロ基、炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0095】
pは0〜4の整数を示す。原料入手性からpは0〜2、より好ましくは0あるいは1である。
【0096】
Zとして具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0097】
上記一般式(5)中の部分構造
【化18】
は、炭素数4〜15の酸素原子、硫黄原子といったヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0098】
上記部分構造は、具体的には下記一般式(9’)〜(13’)のいずれか1種の部分構造で示される。
【化19】
(式中、RC17、p、Zは上記と同様である。)
【0099】
上記一般式(6)中、RC06、RC07及びRC08はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−RC18、−ORC18、−SRC18、−SO2C18、−O2CRC18、−CO2C18、又は−N(RC182を示す。RC18はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基やフッ素原子,シアノ基又は水酸基置換アルキル基等の1価有機基である。これらの中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基、ビス(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノ基、ビス(4−ヒドロキシブチル)アミノ基が好ましい。b1、b2及びb3はそれぞれ独立に0〜5の整数である。
【0100】
上記一般式(7)中、RC09、RC10、RC11及びRC12はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−RC18、−ORC18、−SRC18、−SO2C18、−O2CRC18、−CO2C18、又は−N(RC182を示す。RC18は上記の通りである。これらの中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基、ビス(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノ基、ビス(4−ヒドロキシブチル)アミノ基が好ましい。c1、c2、c3及びc4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。eは1又は2である。
【0101】
上記一般式(8)中、RC13、RC14、RC15及びRC16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−RC18、−ORC18、−SRC18、−SO2C18、−O2CRC18、−CO2C18、又は−N(RC182を示す。RC18は上記の通りである。これらの中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基、ビス(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノ基、ビス(4−ヒドロキシブチル)アミノ基が好ましい。d1、d2、d3及びd4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。
【0102】
上記一般式(5)〜(8)中、X-は陰イオンである。上記陰イオンとして、具体的には、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロプロピルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基等が例示される。好ましいX-としては、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸の共役塩基、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド酸の共役塩基が挙げられる。
【0103】
また、特願2010−253448には、下記一般式(14)で示される陰イオンX-を有する近赤外光吸収色素が開示されている。
【化20】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0104】
上記一般式(14)で示される陰イオンX-を有する近赤外光吸収色素は光学特性及び耐熱性に優れているほか、特に溶剤溶解性に優れているので、成膜工程において塗布性及び加工性に優れる。また、構造中に重金属を含まないため半導体素子の製造プロセスに好適である。従って、本発明の近赤外光吸収膜形成材料に用いる近赤外光吸収色素として好ましい。
【0105】
なお、(C)の近赤外光吸収色素は両性イオンであってもよく、この場合にはX-を必要としない。
【0106】
これらの近赤外光吸収色素のうち、上記一般式(5)で示される、波長500〜1,200nmの光を吸収するシアニン色素は熱耐性と溶剤溶解性に優れるため、特に好適に用いられる。
【0107】
また、これらの近赤外光吸収色素は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の色素を組み合わせて用いる場合は、上記一般式(5)〜(8)で示される構造の陽イオンを複数種用いることもできる。近赤外光の吸収波長域が異なる2種以上の色素を組み合わせることにより、色素1種では実現できない吸収波長域を実現できる。これにより光オートフォーカスに用いられる近赤外光が効果的に吸収されるようになり、フォーカス合わせの精度が向上する場合がある。
【0108】
上記一般式(5)で示される近赤外光吸収色素の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
【化21】
【0110】
【化22】
【0111】
【化23】
【0112】
【化24】
【0113】
【化25】
【0114】
上記一般式(6)で示される近赤外光吸収色素の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
【化26】
【0116】
上記一般式(7)で示される近赤外光吸収色素の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
【化27】
【0118】
上記一般式(8)で示される近赤外光吸収色素の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
【化28】
【0120】
両性イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
【化29】
【0122】
近赤外光吸収色素は、市販のものをそのまま使用したり、それらを前駆体とした誘導体を用いることができるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
特に、陽イオン構造として上記一般式(5)で示される構造を有し、かつ上記一般式(14)で示される陰イオンX-を有する近赤外光吸収色素については、特願2010−253448の記載の方法で製造できる。
【0123】
即ち、例えば下記Scheme1及び2に従って合成できる。
【化30】
(式中、RC01、RC02、RC03、RC04、A1、R0は前記と同様である。X-は無機あるいは有機アニオンを示す。M+はカチオンを示す。部分構造
【化31】
及び
【化32】
は、上記と同様である。)
【0124】
上記Scheme1における一段階目の工程は、カチオン部を合成する方法の一例である。これは、例えばJournal of Organic Chemistry 1995,60,2391を参考にすることができる。RC01については、市販の原料を使用することもできるし、あるいはRC01がクロライド等のハロゲン原子であれば、Scheme1の工程後に種々の有機化学的手法、例えば求核置換反応や、カップリング反応等を駆使して別の置換基に変換することもできる。
【0125】
-として具体的には塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、メシレート、トシレート等のスルホン酸の共役塩基、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基が例示される。
【0126】
本発明の近赤外光吸収色素前駆体は、Scheme1に従って調製することも可能であるが、市販品として入手することも可能である。
【0127】
次に、上記Scheme2に従って、本発明の近赤外光吸収色素前駆体をCompound Aと反応させることでアニオンを交換し、本発明のアニオン構造を有する近赤外光吸収色素化合物へと導くことができる。イオン交換反応に当たって、M+はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである方が合成上好ましい。イオン交換反応については、例えば特開2007−145797号公報などに詳しい。Compound Aの合成法については、例えば特開2007−145797号公報や特開2009−258695号公報を参考にすることができる。例えば、A1がトリフルオロメチル基の場合には、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールといった比較的安価な材料を用いて、簡便な有機化学的手法により合成することができるため、実用的である。
【0128】
近赤外光吸収色素の配合量は、全高分子化合物100部に対して20〜500部が好ましく、特に30〜400部とすることが好ましい。
【0129】
(D)溶剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料に用いられる(D)溶剤としては、本発明の近赤外光吸収膜形成材料に用いられる高分子化合物、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。
その具体例を列挙すると、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0131】
有機溶剤の配合量は、全高分子化合物100部に対して900〜20,000部が好ましく、特に1,000〜15,000部とすることが好ましい。
【0132】
ここで、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、
(A)上記一般式(1)〜(4)で示される繰り返し単位を1種以上含有する高分子化合物、
(B)芳香環を含有する高分子化合物、
(C)近赤外光吸収色素、
(D)溶剤
のほか、更に
(E)酸発生剤、
(F)架橋剤
をそれぞれ1種以上含有することが好ましい。
【0133】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料が酸発生剤、架橋剤を含有する場合、スピンコート後の加熱において上記(A)、(B)高分子化合物の架橋反応が促進され、より硬く緻密な膜を形成することができる。その結果、近赤外光吸収膜の直上に膜を積層させる際、用いられる溶剤によって近赤外光吸収膜の膜厚が減少したり、該膜内の近赤外光吸収色素が溶出したりすることを防ぐことができる。
【0134】
また、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、更に
(G)界面活性剤
を1種以上含有することが好ましい。
【0135】
本発明の近赤外光吸収膜をスピンコートにより成膜する場合、用いる高分子化合物や近赤外光吸収色素の組み合わせによっては成膜不良が発生し、ウエハ全面を均一な膜厚で覆うことができない場合がある。本発明の近赤外光吸収膜形成材料に界面活性剤を添加することにより、塗布性が向上して成膜不良が改善される。
【0136】
(E)酸発生剤
上記(E)酸発生剤は、成膜時の架橋反応を促進させる働きを有する。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0137】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料で使用される酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾメタン類などが挙げられるが、種々用いることができる。これらの酸発生剤については、例えば特開2008−83668号公報などに詳しい。
【0138】
特に、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−メトキシフェニルメチル)ジメチルフェニルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等、α位がフルオロ置換されたスルホネートを陰イオンとするオニウム塩が好ましく用いられる。
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
酸発生剤の添加量は、近赤外光吸収膜形成材料固形分の合計[(A)、(B)及び(C)成分の合計]を100部として好ましくは0.1〜50部、より好ましくは0.5〜40部である。0.1部以上であれば酸発生量が十分で、十分な架橋反応が起こり、50部以下であれば膜外への酸が溶出するおそれが少ない。
【0140】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、熱又は酸で起こる架橋反応によって硬化膜を形成するが、その際に、より架橋能を向上させるために酸発生剤の陰イオンには強酸の共役塩基が好ましく用いられる。従って近赤外光吸収色素化合物の陰イオンが弱酸の共役塩基、例えば塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、トシレート等であった場合には、酸発生剤の陰イオンと交換反応を起こしてしまい、酸発生剤が所望の機能を発現しない可能性がある。これは、強酸の共役塩基がオニウム陽イオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。ゆえに近赤外光吸収色素化合物の陰イオンは、使用する酸発生剤と同程度かあるいはそれ以上となる強酸の共役塩基であることが好ましい。
【0141】
(F)架橋剤
上記(F)架橋剤は、成膜時の架橋反応を促進させる働きを有する。本発明で使用可能な添加型の架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物等を挙げることができる。また、酸無水物、オキサゾリン化合物、複数のヒドロキシル基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。具体的には、特開2009−098639号公報で挙げられている架橋剤等を挙げることができる。
【0142】
特に、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0143】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料における架橋剤の配合量は、(A)、(B)及び(C)成分の合計100部に対して0〜50部が好ましく、特に1〜40部が好ましい。架橋剤は膜の硬化に有効ではあるが、50部を超えると成膜時に膜外にアウトガスとして放出されて露光装置を汚染するおそれがある。なお、上記架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
(G)界面活性剤
上記(G)界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30、R90、R94(DIC(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,S−386,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子(株)製)、サーフィノールE1004(日信化学工業(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社化学(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、下記構造の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【0145】
【化33】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは上述の界面活性剤以外の記載に拘らず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価の基としてエチレン基、1,4−ブチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,5−ペンチレン基等が挙げられ、3価又は4価の基としては下記式のものが挙げられる。
【化34】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン基又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基である。
【0146】
Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、nとmの和は2〜4の整数であり、これはRの価数を示す。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくは、Bは4〜20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位は、その並びを規定したものではなく、ブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書等に詳しい。
【0147】
これらの中でもFC−4430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004、KH−20、KH−30、及び上記構造式にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料中の界面活性剤の添加量は、(A)、(B)及び(C)成分の合計100部に対して2部以下、好ましくは1部以下である。また、0.001部以上、特に0.01部以上であることが好ましい。
【0149】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布することにより形成される膜は、波長500〜1,200nmの光を吸収する色素を含有し、光オートフォーカスに使用される近赤外光を吸収する膜として機能する。
【0150】
本発明は、上記近赤外光吸収膜と、フォトレジスト材料を塗布することにより形成されるレジスト膜とを有する積層膜を提供する。本発明の積層膜を用いることにより、光オートフォーカスの際にレジスト膜を透過した近赤外光が基板で反射してフォーカス検出系に入射することがなくなり、光オートフォーカスの精度が向上する。また、現在半導体の製造現場で用いられている光オートフォーカスがそのまま適用可能であるため、半導体を製造するのに要する時間は実用に適うものとなる。
【0151】
本発明の近赤外光吸収膜は、光リソグラフィーに用いられる露光光の反射防止膜として用いることが好ましい。これにより、現在実用されているウエハ積層プロセスをそのまま使用することが可能となる。
【0152】
レジスト膜の薄膜化と共に被加工基板のエッチング選択比の関係から加工が難しくなっており、レジスト膜の下に珪素含有膜、その下に炭素密度が高くエッチング耐性が高い下層膜(OPL)、その下に被加工基板を積層する3層プロセスが検討されている。酸素ガスや水素ガス、アンモニアガス等を用いる珪素含有膜と下層膜とのエッチング選択比は高く、珪素含有膜は薄膜化が可能である。単層レジスト膜と珪素含有膜のエッチング選択比も比較的高く、単層レジスト膜の薄膜化が可能となる。また、この3層の光学特性を適宜調整することにより、露光光の反射を効果的に防止することが可能となる。
【0153】
本発明の近赤外光吸収膜を反射防止膜として用いる場合、上記下層膜として用いることが特に好ましい。本発明の積層膜では、上記の通り、本発明の近赤外光吸収膜では(A)高分子化合物が膜表面にバリアー層が形成されるため、膜を積層する際の膜厚減少、及び膜からの近赤外光吸収色素の溶出が少ない。従ってフォトレジストの露光に用いる露光光及び露光時のフォーカス合わせに用いる近赤外光を設計通りに制御することができ、また、膜厚減少に由来するエッチング加工の不具合を生じることがない。また、(B)高分子化合物が芳香環を有することにより、本発明の近赤外光吸収膜は実用に適うエッチング耐性を有する。
【0154】
本発明の近赤外光吸収膜の形成方法について説明する。本発明の近赤外光吸収膜は、通常のフォトレジスト膜の形成法と同様にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法で基板上に形成することが可能である。近赤外光吸収膜形成材料を塗布した後、有機溶剤を蒸発させ、更に、直上に形成される膜とのミキシングを防止するためにベークをかけて架橋反応を促進することが好ましい。ベーク温度は100〜350℃の範囲内で、10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。なお、この反射防止膜の厚さは近赤外光吸収効果を高めるように適宜選定されるが、10〜300nmが好ましく、特に20〜250nmとすることが好ましい。
【0155】
本発明の積層膜を構成する珪素含有膜の形成方法としては、CVDによるケイ素含有無機膜、例えばSiO2膜(特開平7−183194号公報)やSiON膜(特開平7−181688号公報)、回転塗布により膜を得られるものとしては、SOG(スピンオンガラス)膜(特開平5−291208号公報)や架橋性シルセスキオキサン膜(特表2005−520354号公報)等が使用される。また、ポリシラン膜(特開平11−60735号公報)を使用してもよい。これらの中で、SiO2膜やSiON膜は下層膜をエッチングする際のエッチングマスクとしての高い性能を持つものの、成膜に特別の装置を必要とする。それに対し、SOG膜や架橋性シルセスキオキサン膜、ポリシラン膜は、回転塗布と加熱のみで成膜でき、プロセス効率が高いと考えられている。
【0156】
本発明の積層膜を構成する珪素含有膜の形成方法としては、塗布とベークによる方法とCVDによる方法とが挙げられる。塗布法により形成される膜としては架橋性シルセスキオキサン膜(特表2005−520354号公報)が、CVD法により形成される膜としてはケイ素含有無機膜、例えばSiO2膜(特開平7−183194号公報)やSiON膜(特開平7−181688号公報)が挙げられる。
特に、このような3層プロセスの珪素含有中間層膜として、ポリシロキサンベースの中間層が好ましく用いられる。具体的には特開2004−310019号公報、特開2007−302873号公報、特開2009−126940号公報などに示される組成物から得られるケイ素含有レジスト中間層膜を挙げることができる。
なお、珪素含有中間膜とレジスト膜の間に有機膜を形成してもよく、この場合の有機膜は有機反射防止膜であってもよい。珪素含有膜の厚さは特に制限されないが、10〜100nmが好ましく、特に20〜80nmが好ましい。
【0157】
本発明の積層膜は、フォトレジスト材料を塗布し成膜することにより形成されるレジスト膜を有する。このレジスト膜を形成するためのフォトレジスト組成物としては、例えば、特開平9−73173号公報、特開2000−336121号公報、特開2007−297590号公報等に示される公知の材料を使用することができる。
【0158】
本発明の積層膜を構成するレジスト膜は、フォトレジスト材料をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01〜2.0μmとなるように塗布し、ホットプレート上で好ましくは50〜150℃、1〜10分間、より好ましくは60〜140℃、1〜5分間プリベークして形成する。
【0159】
本発明の実施に用いるレジスト材料には、水を用いた液浸露光において、特にはレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤は高分子型の界面活性剤であり、水に溶解せずアルカリ現像液に溶解する性質を有し、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤としては、例えば、下記に示すものを挙げることができる。
【0160】
【化35】
(上記式中、LS01はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−LS07−C(=O)−O−を示し、LS07は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。RS01はそれぞれ同一でも異なってもよく水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。RS02はそれぞれ同一でも異なってもよく水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を示し、同一繰り返し単位内のRS02がそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。RS03はフッ素原子又は水素原子を示し、同一繰り返し単位内のLS02と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。LS02は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示し、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。RS04は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、LS02とRS04が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合、該環は炭素数の総和が2〜12の3価の有機基を示す。LS03は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を示し、LS04は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CRS01S01−を示す。LS05は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、同一繰り返し単位内のRS02と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜10の非芳香環を形成してもよい。LS06はメチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示し、Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。(a−1)〜(a−3)、b及びcは、0≦(a−1)<1、0≦(a−2)<1、0≦(a−3)<1、0<(a−1)+(a−2)+(a−3)<1、0≦b<1、0≦c<1であり、0<(a−1)+(a−2)+(a−3)+b+c≦1を満たす正数である。)
【0161】
高分子型の界面活性剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100部に対して好ましくは0.001〜20部、より好ましくは0.01〜10部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0162】
本発明の積層膜は、水を用いた液浸露光に適用するためのレジスト保護膜を有していてもよい。これにより、レジストからの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げることができる。保護膜のベース樹脂としては、水に溶解せず、アルカリ現像液に溶解する特性を有するものが好ましく、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物のように、β位が複数のフッ素原子で置換されたアルコール構造を有する高分子化合物がよい。このベース樹脂を炭素数4以上の高級アルコールや炭素数8〜12のエーテル化合物に溶解したものが保護膜形成材料として用いられる。保護膜の形成方法としては、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜形成材料をスピンコートし、プリベークによって形成する。保護膜の膜厚としては10〜200nmの範囲が好ましく用いられる。
【実施例】
【0163】
以下、合成例、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)は溶剤としてテトラヒドロフランを用いたGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0164】
[合成例1]
[高分子化合物A1]
窒素雰囲気としたフラスコに、12.48gのメタクリル酸=1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル、7.52gのメタクリル酸=グリシジル、0.731gのMAIB(ジメチル=2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液A1を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液A1を4時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち4時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した64gの水/256gのメタノールの混合溶剤に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を24gの水/96gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物A1)を16.86g得た。収率は84%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で16,800、分散度(Mw/Mn)は1.99であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル由来の単位/メタクリル酸=グリシジル由来の単位=48/52モル%であった。
【0165】
【化36】
【0166】
[合成例2]
[高分子化合物A2]
窒素雰囲気としたフラスコに、12.67gのメタクリル酸=2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、7.33gのメタクリル酸=グリシジル、0.648gのMAIB、20.00gのPGMEAをとり、モノマー溶液A2を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液A2を4時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち2時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した64gの水/256gのメタノールの混合溶剤に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を24gの水/96gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物A2)を18.31g得た。収率は92%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で20,900、分散度(Mw/Mn)は1.97であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル由来の単位/メタクリル酸=グリシジル由来の単位=47/53モル%であった。
【0167】
【化37】
【0168】
[合成例3]
[高分子化合物A3]
窒素雰囲気としたフラスコに、67.19gの2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、32.81gのメタクリル酸=グリシジル、0.947gのAIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、7.50gのMEK(メチルエチルケトン)、67.50gのトルエンをとり、モノマー溶液A3を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに7.50gのMEK(メチルエチルケトン)、67.50gのトルエンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液A3を4時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち4時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液を撹拌した1,000gのn−ヘキサンに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を600gのn−ヘキサンで2回洗浄し、60℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物A3)を76.45g得た。収率は77%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で22,200、分散度(Mw/Mn)は1.71であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン由来の単位/メタクリル酸=グリシジル由来の単位=58/42モル%であった。
【0169】
【化38】
【0170】
[合成例4]
[高分子化合物A4の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、8.12gのメタクリル酸=2,4−ジフルオロベンジル、6.44gのメタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−(トリフルオロメチル)ヘプタン−4−イル、5.44gのメタクリル酸=グリシジル、0.157gのAIBN、1.50gのMEK、13.50gのトルエンをとり、モノマー溶液A4を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに1.50gのMEK、13.50gのトルエンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液A4を4時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち4時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液を撹拌した200gのn−ヘキサンに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのn−ヘキサンで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物A4)を16.74g得た。収率は84%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で30,800、分散度(Mw/Mn)は2.14であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=2,4−ジフルオロベンジル由来の単位/メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−(トリフルオロメチル)ヘプタン−4−イル由来の単位/メタクリル酸=グリシジル由来の単位=40/19/41モル%であった。
【0171】
【化39】
【0172】
[合成例5]
[高分子化合物A5の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、12.62gのメタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−イソプロピルカルボニルオキシ−3−メチル−2−トリフルオロメチルブタン−3−イル、7.38gのメタクリル酸=グリシジル、0.598gのMAIB、20.00gのPGMEAをとり、モノマー溶液A5を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液A5を4時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち4時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した64gの水/256gのメタノールの混合溶剤に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を24gの水/96gのメタノールの混合溶剤で2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物A5)を18.35g得た。収率は92%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で18,300、分散度(Mw/Mn)は1.94であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−イソプロピルカルボニルオキシ−3−メチル−2−トリフルオロメチルブタン−3−イル由来の単位/メタクリル酸=グリシジル由来の単位=38/62モル%であった。
【0173】
【化40】
【0174】
[合成例6]
[高分子化合物B1]
窒素雰囲気としたフラスコに、56.32gのメタクリル酸=3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、43.68gのアセナフチレン、3.965gのMAIB、100.00gのPGMEAをとり、モノマー溶液B1を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに50.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液B1を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA150.00gで希釈し、この溶液を撹拌した1,600gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を600gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物B1)を94.90g得た。収率は95%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で12,100、分散度(Mw/Mn)は1.97であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=3,4−エポキシシクロヘキシルメチル由来の単位/アセナフチレン由来の単位=48/52モル%であった。
【0175】
【化41】
【0176】
[合成例7]
[高分子化合物B2]
窒素雰囲気としたフラスコに、46.23gのメタクリル酸=3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、53.77gのアセナフチレン、4.068gのMAIB、100.00gのPGMEAをとり、モノマー溶液B2を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに50.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液B2を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA150.00gで希釈し、この溶液を撹拌した1,600gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を600gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物B2)を91.04g得た。収率は91%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で12,100、分散度(Mw/Mn)は2.03であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=3,4−エポキシシクロヘキシルメチル由来の単位/アセナフチレン由来の単位=36/64モル%であった。
【0177】
【化42】
【0178】
[合成例8]
[高分子化合物B3]
窒素雰囲気としたフラスコに、35.59gのメタクリル酸=3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、64.41gのアセナフチレン、4.176gのMAIB、100.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液B3を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに50.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液B3を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA150.00gで希釈し、この溶液を撹拌した1,600gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を600gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物B3)を88.11g得た。収率は88%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で10,800、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は、メタクリル酸=3,4−エポキシシクロヘキシルメチル由来の単位/アセナフチレン由来の単位=26/74モル%であった。
【0179】
【化43】
【0180】
[合成例9]
[高分子化合物B4]
1Lのフラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを95g、37%ホルマリン水溶液7g、パラトルエンスルホン酸5g、ジオキサン200gを加え、100℃で24時間加熱撹拌した。メチルイソブチルケトン500mlを加え、水洗により触媒と金属不純物を除去した。溶剤を減圧除去し、高分子化合物B4を得た。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で9,500、分散度(Mw/Mn)は3.90であった。
【0181】
【化44】
【0182】
[合成例10]
[高分子化合物B5]
高分子化合物B5として、シグマアルドリッチ製ポリ(4−ヒドロキシスチレン)Mw11,000を用いた。
【0183】
【化45】
【0184】
[合成例11]
[近赤外光吸収色素C1]
市販の3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを近赤外光吸収色素C1として用いた。構造を以下に示す。
【0185】
【化46】
【0186】
[合成例12]
[近赤外光吸収色素C2の調製]
近赤外光吸収色素C2として、3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを下記方法によって調製した。
【0187】
【化47】
【0188】
3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム p−トルエンスルホネート2.87g(3ミリモル)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1.31g(4.5ミリモル)、水40g、メチルイソブチルケトン40gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.43g(1.5ミリモル)、水40gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで目的物である3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを得た[茶色結晶2.9g(収率87%)]。
【0189】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、19F−NMR/DMSO−d6)を図1及び図2に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。また、アニオン/カチオン比を算出するために内部標準として1,2,4,5−テトラフルオロ−3,6−ジメチルベンゼンが使用され、1H−NMR及び19F−NMRにおいて観測された(アニオン/カチオン比=1.00/0.99)。
[赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)]
3432、2961、2933、2873、1624、1599、1584、1536、1503、1460、1441、1432、1416、1387、1352、1280、1228、1182、1166、1137、1102、1061、1013、958、922、897、864、832、808、786、748、725、680、651、616、588、569、553、534、525、511cm-1
[飛行時間型質量分析(TOF−MS;MALDI)]
POSITIVE M+759(C515522S相当)
NEGATIVE M-279(C264NS2相当)
【0190】
[実験例1〜3]
[耐ドライエッチング性評価]
上記高分子化合物B1〜B3、近赤外光吸収色素C1、下記AG1で示される酸発生剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を、表1に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、耐ドライエッチング性評価用塗布液を調製した。調製した塗布液(実験例1〜3)をSi基板上に塗布して195℃で60秒間ベークし、それぞれの塗布膜を形成した。
これらの塗布膜を東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置TE−8500Pを用いてCHF3/CF4系ガスでエッチングし、エッチング前後の膜厚差を求めた。得られた結果を表1に示した。
なお、エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 300mTorr
RFパワー 1,000W
ギャップ 9mm
CHF3ガス流量 50mL/min
CF4ガス流量 50mL/min
Heガス流量 200mL/min
2ガス流量 7mL/min
時間 60秒
【表1】
【0191】
表1中の略称は以下を意味する。
酸発生剤:AG1(トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート)
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0192】
[実験例4,5]
[耐溶剤性評価]
上記高分子化合物B1、B3、近赤外光吸収色素C1、下記AG1で示される酸発生剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を、表2に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、塗布液を調製した。調製した塗布液(実験例4,5)をSi基板上に塗布して、195℃で60秒間ベークして耐溶剤性評価用塗布膜を形成した。
これらの塗布膜上に、酢酸=n−ブチル:γ−ブチロラクトンの混合溶剤(質量比30:70)をスピンコートした後、100℃で30秒間ベークし、処理前後の膜厚差を求めた。その結果を表2に示す。また、それぞれの膜について、上記溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を図3及び図4として示す。なお、図3は実験例4の塗布膜形成後/溶剤処理後の結果、図4は実験例5の塗布膜形成後/溶剤処理後の結果である。
【0193】
【表2】
【0194】
表2中の略称は以下を意味する。
酸発生剤:AG1(トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート)
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0195】
表1,2及び図3,4に示される通り、高エッチング耐性を有する繰り返し単位と架橋反応を起こす構造を有する繰り返し単位を導入した高分子化合物を用いる場合、エッチング耐性を追及すると架橋反応を起こす構造の導入比率が減少することとなり、膜の溶剤耐性が低くなってしまう。即ち、膜を積層する際の溶剤処理によって、膜厚が減少したり(表2)、膜内の近赤外光吸収色素が溶出してしまったりする(図3,4)。つまり、エッチング耐性と膜の溶剤耐性という2つの性能の間で二律背反に陥ってしまう。
【0196】
[実施例1〜14、比較例1〜8]
[高分子化合物膜の接触角測定]
上記高分子化合物A1〜A5、高分子化合物B3〜B5、下記AG1で示される酸発生剤、下記CR1で示される架橋剤、及び溶剤を、表3に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、接触角測定用塗布液を調製した。この塗布液(実施例1〜14)をSi基板上にスピンコートして比較例1,2,5,7、実施例1〜14では195℃で60秒間ベークし、比較例3,4では180℃で60秒間ベークし、比較例6では200℃で60秒間ベークし、比較例8では130℃で60秒間ベーク後引き続き220℃で120秒間ベークして塗布膜を形成した。塗布膜の形成後、協和界面科学(株)製DropMaster 500を用いて塗布膜上に5μLの水を滴下し、接触角を測定した。その結果を表3に示す。
【0197】
【表3】
【0198】
表3中の略称は以下を意味する。
酸発生剤:AG1(トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート)
架橋剤 :CR1(テトラメトキシメチルグリコールウリル)
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0199】
表3に示される通り、上記一般式(1)〜(4)で示される繰り返し単位を1種以上含有する高分子化合物A1〜A5から得られる膜の接触角(比較例1〜5)は、高分子化合物B3〜B5のもの(比較例6〜8)に比べ高い値になっている。そして、高分子化合物A1〜A5から選ばれる高分子化合物と、高分子化合物B3〜B5から選ばれる高分子化合物との混合により得られた膜の接触角は、添加した高分子化合物A1〜A5と同等の高接触角となっている(実施例1〜14)。これらの結果は、高分子化合物A1〜A5が表面に偏在した膜が得られていることを示す。
【0200】
[実施例15〜17、比較例9]
[耐溶剤性評価]
上記高分子化合物A1、近赤外光吸収色素C1、下記AG1で示される酸発生剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を、表4に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、塗布液を調製した。調製した塗布液(実施例15、比較例9)をSi基板上に塗布して、195℃で60秒間ベークして近赤外光吸収膜を形成した。
これらの塗布膜上に、酢酸=n−ブチル:γ−ブチロラクトンの混合溶剤(質量比30:70)をスピンコートした後、100℃で30秒間ベークし、処理前後の膜厚差を求めた。その結果を表4に示す。また、それぞれの膜について、上記溶剤処理の前後で近赤外光(400〜1,200nm)の消光係数(k値)を測定した結果を図5〜8として示す。なお、図5は実施例15の塗布膜形成後/溶剤処理後、図6は実施例16の塗布膜形成後/溶剤処理後、図7は実施例17の塗布膜形成後/溶剤処理後、図8は比較例9の塗布膜形成後/溶剤処理後の結果である。
【0201】
【表4】
【0202】
表4中の略称は以下を意味する。
酸発生剤:AG1(トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート)
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0203】
表4及び図5〜8に示される通り、溶剤耐性は低いがエッチング耐性に優れる膜(比較例9、前述実験例3参照)に高分子化合物A1を添加することにより、溶剤耐性を付与することができる(実施例15〜17)。これにより、溶剤耐性とエッチング耐性を両立することができる。
【0204】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8