特許第6015412号(P6015412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015412
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/00 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H02P8/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-274726(P2012-274726)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-121173(P2014-121173A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 秀知佳
(72)【発明者】
【氏名】谷川 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】石村 想
(72)【発明者】
【氏名】生垣 哲郎
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−179299(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/041708(WO,A1)
【文献】 米国特許第04100471(US,A)
【文献】 特開2011−150849(JP,A)
【文献】 特開平11−191324(JP,A)
【文献】 特開平07−274591(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0097023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/00− 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A相コイルとAB相コイルの対およびB相コイルとBB相コイルの対を有したユニポーラ型2相ステッピングモータと、前記モータ駆動用モータドライバと、前記2対のコイルの両端と前記ドライバとを接続するケーブルと、を設けた、ステッピングモータ駆動ユニットにおいて、前記ケーブルがそれぞれ扁平な導体であり、かつ
(1)A相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、A相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(2)AB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、AB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(3)B相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、B相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、および
(4)BB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、BB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
が互いに隣接している、前記モータ駆動ユニット。
【請求項2】
A相コイルの一方の端とAB相コイルの一方の端、およびB相コイルの一方の端とBB相コイルの一方の端が、それぞれモータ内で接続されている、請求項1に記載のモータ駆動ユニット。
【請求項3】
モータドライバがパルス幅変調(PWM)方式モータドライバである、請求項1または2に記載のモータ駆動ユニット。
【請求項4】
モータドライバ中のスイッチング素子がパワーMOSFETである、請求項3に記載のモータ駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータを駆動させるユニットに関する。特に本発明は、ユニポーラ型2相ステッピングモータと、前記モータ駆動用モータドライバと、両者を接続するケーブルとを設けた、ステッピングモータ駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータのうち、ユニポーラ型2相ステッピングモータの多くは、図1図2に示すように、それぞれバイファイラ巻きされた2対のコイル(A相コイル33とAB相コイル34、B相コイル35とBB相コイル36)を有しており、各対のコイルは電磁的に強く結合している。ユニポーラ型2相ステッピングモータには、2対のコイルの巻線の一端が、対となるコイルとは逆方向に回生電流が流れるように内部で接続され、コモン線としてモータ外部に引き出されている6線式のモータ31(図1)と、2対のコイルの巻線の両端が、それぞれモータ外部に引き出されている8線式のモータ32(図2)がある。なお8線式のモータは、各対のコイルの巻線の一端から引き出されたリード線同士をモータの外部で接続すれば6線式モータと見なすことができる。直接リード線を引き出す代わりに、リード線またはケーブルを接続するためのコネクタが付く仕様のモータもあるが、基本構成は同じである。図1に示す6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ31のリード線またはコネクタの端子を識別するために、各線または端子を、以下、A相101、A相コモン102、AB相(あるいはAバー相)103、B相111、B相コモン112、BB相(あるいはBバー相)113と呼ぶ。同様に図2に示す8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ32のリード線またはコネクタの端子についても、以下、A相101、A相リターン104、AB相103、AB相リターン105、B相111、B相リターン114、BB相113、BB相リターン115と呼ぶ。
【0003】
ユニポーラ型2相ステッピングモータは、定電圧または定電流で制御するモータドライバとを組み合わせて用いられ、定電流で制御する場合はPWM方式(パルス幅変調方式)による制御が多く用いられる。ユニポーラ型2相ステッピングモータとモータドライバとの間はケーブルにより接続される。
【0004】
従来から用いられている、6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータとモータドライバとを接続するケーブルの一例を図3から図5に示す。図3に示すケーブルは、モータドライバとモータとのA相101同士、A相コモン102同士、AB相103同士、B相111同士、B相コモン112同士、BB相113同士がそれぞれ被覆電線で接続され、当該6本の電線が撚られて1本の束となった態様となっている。図4に示すケーブルは、1枚のフレキシブルな絶縁板121の上に、モータドライバとモータとのA相101同士、A相コモン102同士、AB相103同士、B相111同士、B相コモン112同士、BB相113同士を接続するための6本の導体パターンが形成された態様となっている。図5に示すケーブルは、フレキシブルな絶縁板121を2枚用意し、一方の絶縁板にはモータドライバとモータとのA相101同士、A相コモン102同士、AB相103同士を接続するための3本の導体パターンが、他方の絶縁板にはモータドライバとモータとのB相111同士、B相コモン112同士、BB相113同士を接続するための3本の導体パターンが、それぞれ形成された態様となっている。なお図4および図5の態様は、製法によりフレキシブルフラットケーブル(FFC)またはフレキシブルプリント基板(FPC)と呼ばれる。
【0005】
ユニポーラ型2相ステッピングモータが6線式(図1)の場合、PWM方式モータドライバの多くは、前記モータのA相コモン102とB相コモン112に所定の直流電圧(図1の場合24V)を印加した上で、A相を励磁する時はA相のスイッチング素子を以下の(A)から(D)に示すようにON/OFFさせる。
(A)A相のスイッチング素子をONにすることで、励磁電流がA相コイル33を流れる。(B)前記電流が時間と共に増加して所定の電流値に達した時点で、A相のスイッチング素子をONからOFFに切り替えると、電流がA相のスイッチング素子を流れることができなくなるため、ほぼ等しい大きさの回生電流がAB相コイル34に流れる。
(C)AB相コイル34を流れる回生電流が徐々に減少する。
(D)所定の時間またはON/OFF周期の残りの時間が経過した時点で、再び前記スイッチング素子をONに切り替える。
代表的なPWM方式モータドライバではON/OFFが数十μ秒の周期でくりかえされる。加速時には、励磁電流によって電源からステッピングモータに供給されるエネルギーを回生電流によって回収されるエネルギーより大きくするため、ON時間がOFF時間より長くなる。一方、減速時には、回収されるエネルギーを供給されるエネルギーより大きくするため、OFF時間がON時間より長くなる。
【0006】
ここで、ステッピングモータ31とモータドライバ11とを接続するケーブル21が長くなると、ケーブル21に由来するインダクタンスが増加するが、ケーブルのインダクタンスは他のケーブルのインダクタンスと逆方向の電磁結合をもたない。したがってケーブルのインダクタンスに蓄えられた磁気エネルギーはスイッチング素子がOFFとなった時に他のケーブルに回生されない、漏れインダクタンスとなり、スイッチング素子に高い電圧がかかる。スイッチング素子としてバイポーラトランジスタを用いた場合は、C−E間電圧が過度に上がると、接合温度が上昇し、一次降伏に続いて二次降伏を起こし、破壊に至る。スイッチング素子としてパワーMOSFETを用いた場合は、二次降伏は起こさず、安定性に優れているものの、ブレークダウン電圧より高い電圧が加わると、アバランシェ現象が生じることが知られている。アバランシェ現象は大きな電圧がスイッチング素子にかかった間だけに発生するので、持続時間は短いが、電圧×電流×時間に等しい熱が生じ、局所的にパワーMOSFETのセル温度が上昇する。パワーMOSFETでは通常アバランシェ耐量が大きなMOSFETが使われるが、脆弱な設計のMOSFETを使用した場合、アバランシェ動作による損失が繰り返されると、半導体結晶の劣化が蓄積されてアバランシェ耐量が低下し、最終的には、寄生トランジスタがONになり、スイッチング素子の破壊に至ることがある。一方、スイッチング素子のON/OFFは数十kHzの頻度で繰り返し起こるので、単位時間あたりの全発熱量も無視できない。そのため、発熱量に対して、ドライバの冷却が十分でないと温度が過剰に上昇し、劣化が早まったり、破壊に至るという問題がある。
【0007】
なお、非特許文献1によると、モータの相コイルの結合(A相コイルとAB相コイルとの電磁結合、またはB相コイルとBB相コイルとの電磁結合)の悪さだけでなく、プリント回路板における回路パターンや、ステッピングモータから出るハーネスのリードインダクタンスの増加も、アバランシェ損失の発生要因になるとされている。
【0008】
アバランシェ損失によるモータドライバ温度の上昇を防ぐため、従来は、ユニポーラ型2相ステッピングモータとモータドライバとを接続するケーブルの長さを短くしたり、駆動電流を抑えたり、ヒートシンクを付けたり、風通しをよくする等の対策を行なってきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】三洋半導体 STK672−640C−E データシート
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ユニポーラ型2相ステッピングモータと、前記モータ駆動用モータドライバと、両者を接続するケーブルとを設けた、ステッピングモータ駆動ユニットにおいて、前記ステッピングモータを駆動させる電流の大きさが前記モータドライバの許容電流の上限に近い場合、または前記モータドライバ中のバイポーラトランジスタの二次降伏に対する余裕やMOSFETのアバランシェ破壊に対する余裕が小さい場合、前記モータドライバーを安定に動作させるためには、駆動電流を下げたり、電圧を抑えたり、ケーブルを短くしたり、ヒートシンク等により前記モータドライバを十分に冷却する必要があった。
【0011】
そこで本発明の目的は、ユニポーラ型2相ステッピングモータと前記モータ駆動用モータドライバと両者を接続するケーブルとを設けたステッピングモータ駆動ユニットにおいて、モータドライバを定格の上限に近い条件で使ったり、ケーブルの長さが長い場合においても、モータドライバの発熱を抑えた、高い信頼性を有したユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0013】
すなわち本発明の第一の態様は、
A相コイルとAB相コイルの対およびB相コイルとBB相コイルの対を有したユニポーラ型2相ステッピングモータと、前記モータ駆動用モータドライバと、前記2対のコイルの両端と前記ドライバとを接続するケーブルと、を設けた、ステッピングモータ駆動ユニットにおいて、前記ケーブルがそれぞれ扁平な導体であり、かつ
(1)A相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、A相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(2)AB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、AB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(3)B相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、B相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、および
(4)BB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、BB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
が互いに隣接している、前記モータ駆動ユニットである。
【0014】
また本発明の第二の態様は、A相コイルの一方の端とAB相コイルの一方の端、およびB相コイルの一方の端とBB相コイルの一方の端が、それぞれモータ内で接続されている、前記第一の態様に記載のモータ駆動ユニットである。
【0015】
また本発明の第三の態様は、モータドライバがパルス幅変調(PWM)方式モータドライバである、前記第一または第二の態様に記載のモータ駆動ユニットである。
【0016】
また本発明の第四の態様は、モータドライバ中のスイッチング素子がパワーMOSFETである、前記第三の態様に記載のモータ駆動ユニットである。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明における、ユニポーラ型2相ステッピングモータが有する2対のコイル(A相コイルとAB相コイルの対、およびB相コイルとBB相コイルの対)の両端とモータドライバとをそれぞれ接続するケーブル(以下、単に本発明のケーブルとする)は、それぞれ扁平な導体であり、かつ
(1)A相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、A相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(2)AB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、AB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(3)B相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、B相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、および
(4)BB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、BB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
が互いに隣接していることを特徴としている。
【0019】
具体的には、ユニポーラ型2相ステッピングモータが8線式32(図2)の場合、
(1)モータのA相101とドライバのA相101とを接続する導体の扁平面と、モータのA相リターン104とドライバのA相リターン104とを接続する導体の扁平面、
(2)モータのAB相103とドライバのAB相103とを接続する導体の扁平面と、モータのAB相リターン105とドライバのAB相リターン105とを接続する導体の扁平面、
(3)モータのB相111とドライバのB相111とを接続する導体の扁平面と、モータのB相リターン114とドライバのB相リターン114とを接続する導体の扁平面、および
(4)モータのBB相113とドライバのBB相113とを接続する導体の扁平面と、モータのBB相リターン115とドライバのBB相リターン115とを接続する導体の扁平面、
が互いに隣接するよう、導体を配置すればよい。一例を図9に示す。
【0020】
なお図9では、(I)A相コイルの両端とモータドライバとをそれぞれ接続する2本のケーブル(導体)と、(II)AB相コイルの両端とモータドライバとをそれぞれ接続する2本のケーブル(導体)と、(III)B相コイルの両端とモータドライバとをそれぞれ接続する2本のケーブル(導体)と、(IV)BB相コイルの両端とモータドライバとをそれぞれ接続する2本のケーブル(導体)とを、それぞれの導体の扁平面が互いに縦方向に隣接するよう配置し、前記(I)のケーブル(導体)群、前記(II)のケーブル(導体)群、前記(III)のケーブル(導体)群、および前記(IV)のケーブル(導体)群をそれぞれ一定の間隔を開けて横方向に配置した、2層フレキシブルフラットケーブル(FFC)の態様となっているが、図10に示すように、前記(I)から(IV)のケーブル(導体)群がそれぞれ分離した態様としてもよい。さらに図11および12に示すように、前記(I)のケーブル(導体)群および前記(II)のケーブル(導体)群、ならびに前記(III)のケーブル(導体)群および前記(IV)のケーブル(導体)群が、それぞれの導体の扁平面を互いに縦方向に隣接するよう配置した、4層FFCの態様としてもよく、図13に示すように、前記(I)から(IV)のケーブル(導体)群が、それぞれの導体の扁平面を互いに縦方向に隣接するよう配置した8層FFCの態様としてもよい。
【0021】
一方ユニポーラ型2相ステッピングモータが6線式31(図1)の場合、A相コイルの一方の端とAB相コイルの一方の端とがモータ内で接続され(A相コモン)、B相コイルの一方の端とBB相コイルの一方の端とがモータ内で接続され(B相コモン)ていることから、
(1)モータのA相101とドライバのA相101とを接続する導体の扁平面と、モータのA相コモン102とドライバのA相コモン102とを接続する導体の扁平面、
(2)モータのAB相103とドライバのAB相103とを接続する導体の扁平面と、モータのA相コモン102とドライバのA相コモン102とを接続する導体の扁平面、
(3)モータのB相111とドライバのB相111とを接続する導体の扁平面と、モータのB相コモン112とドライバのB相コモン112とを接続する導体の扁平面、および
(4)モータのBB相113とドライバのBB相113とを接続する導体の扁平面と、モータのB相コモン112とドライバのB相コモン112とを接続する導体の扁平面、
が互いに隣接するよう、導体を配置すればよい。一例を図6に示す。
【0022】
なお図6では、(i)A相コイルまたはAB相コイルの両端とモータドライバとをそれぞれ接続する3本のケーブル(導体)と、(ii)B相コイルまたはBB相コイルの両端とモータドライバとをそれぞれ接続する3本のケーブル(導体)とを、それぞれの導体の扁平面が互いに縦方向に隣接するよう配置し、前記(i)のケーブル(導体)群と前記(ii)のケーブル(導体)群とを一定の間隔を開けて横方向に配置した、3層FFCの態様となっているが、図7に示すように、前記(i)のケーブル(導体)群と前記(ii)のケーブル(導体)群とがそれぞれ分離した態様としてもよい。さらに図8に示すように、前記(i)のケーブル(導体)群と前記(ii)のケーブル(導体)群とが、それぞれの導体の扁平面を互いに縦方向に隣接するよう配置した6層FFCの態様としてもよい。
【0023】
前述した態様のうち、ケーブルを屈曲させる必要がある箇所や曲率が小さな箇所では、縦方向の積層数が少なく済む、図6図7図9または図10に示す態様が好ましい。また図6から図13では、フレキシブルな絶縁板121上に多数の扁平上の導体122を貼り付けて作製するフレキシブルフラットケーブル(FFC)の態様を示したが、エッチング等によって絶縁板上に多数の導体パターンを形成させて作製する多層フレキシブルプリント基板(FPC)の態様であっても、本発明のケーブルに含まれる。
【0024】
本発明のケーブルを構成する導体の幅およびケーブル(導体)同士の間隔(縦方向および横方向)は、モータ駆動電流とアバランシェ現象を低減させる効果を勘案して決めればよい。例えば、本発明のケーブルを構成する導体として厚さ35μm、幅5mmの銅箔を用いる場合は、導体1本あたり5A程度の電流を流すことができる。ただし導体を積層する場合には放熱を考慮して電流を減らしたほうが好ましい。特定のケーブルを使う場合のアバランシェ損失は、ドライバの出力電圧とケーブルに流れる電流を測定したり、ドライバの温度を測定することによって評価できる。なおケーブルは、直接ドライバーまたはモータ(コイル)と接続してもよく、コネクターを経由して接続してもよい。
【0025】
本発明のモータ駆動ユニットに設けるモータドライバとして、パルス幅変調(PWM)方式モータドライバを用いると、ユニポーラ型2相ステッピングモータを高い電力効率で駆動可能なため好ましい。PWM方式モータドライバは、三洋半導体株式会社製STK672−640C−Eや、サンケン株式会社製SLA7080Mシリーズ等、複数のメーカから、さまざまな仕様のモータドライバが市販されている。モータドライバのスイッチング素子としては、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT)等のパワー半導体が使用できるが、中でもオン抵抗が低くスイッチング時間も短いパワーMOSFETが好ましく、特に垂直ドレイン形MOSFET(DMOSFET)が好ましい。
【0026】
本発明のモータ駆動ユニットにおいて、ステッピングモータが有するコイルの両端から外部に引き出されたリード線は、多くの場合、ばらけることがないようにバンド等で束ねられたり、撚られた態様で使われるが、余分な部分を切り落とされてもよい。また、束ねたリード線もしくは撚られたリード線の間に隙間が開かないよう、スパイラルチューブまたはテープを巻きつけることで束ねてもよい。リード線を撚り合わせる場合は、A相コイルの両端またはAB相コイルの両端から引き出されたリード線と、B相コイルの両端またはBB相コイルの両端から引き出されたリード線とを、別個に撚り合わせてもよいし、前記リード線全てをまとめて撚り合わせてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、A相コイルとAB相コイルの対およびB相コイルとBB相コイルの対を有したユニポーラ型2相ステッピングモータと、前記モータ駆動用モータドライバと、前記2対のコイルの両端と前記ドライバとをそれぞれ接続するケーブルを設けた、ステッピングモータ駆動ユニットにおいて、前記ケーブルがそれぞれ扁平な導体であり、かつ
(1)A相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、A相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(2)AB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、AB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
(3)B相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、B相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、および
(4)BB相コイルの一方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面と、BB相コイルの他方の端と前記ドライバとを接続する導体の扁平面、
が互いに隣接していることを特徴としている。本発明により、モータドライバ中のスイッチング素子の損失が減少するため、ヒートシンクを小型化しても温度上昇を抑えることが可能となり、場合によってはヒートシンクを外すことも可能となる。その結果、ステッピングモータ駆動ユニットの信頼性と耐久性を向上させながら、モータドライバの小型化が可能となる。また本発明は、ケーブルの長さを長くしてもモータドライバの温度上昇を抑えることができる。そのため、モータドライバをステッピングモータから離して設置することができ、設計の自由度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータと前記モータ駆動用モータドライバとを設けたモータ駆動ユニットの模式図。
図2】8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータと前記モータ駆動用モータドライバとを設けたモータ駆動ユニットの模式図。
図3】モータ駆動ユニットに設ける従来のケーブルの一例を示した図(6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図4】モータ駆動ユニットに設ける従来のケーブルの一例を示した図(6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図5】モータ駆動ユニットに設ける従来のケーブルの一例を示した図(6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図6】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図7】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図8】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(6線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図9】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図10】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図11】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図12】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
図13】本発明のモータ駆動ユニットに設けるケーブルの一例を示した図(8線式ユニポーラ型2相ステッピングモータ用)。
【実施例】
【0029】
以下、生化学分析装置で用いる分注装置を移動させるためのステッピングモータ駆動ユニットを用いた比較例および実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらの例は本発明を限定するものではない。
【0030】
比較例1
ユニポーラ型2相ステッピングモータとして6線式ステッピングモータであるオリエンタルモータ株式会社製PK266−03Aと、モータドライバとして三洋半導体株式会社製STK672−640C−Eとを、図3に示すようなAWG20規格の被覆ワイヤを6本束ねた1.95mのケーブルを用いて、前記モータのリード線(0.3m)と前記ドライバのA相同士、A相コモン同士、AB相同士、B相同士、B相コモン同士、BB相同士をそれぞれ接続することで、モータ駆動ユニットを作製した。
【0031】
PK266−03Aを駆動電流3A、ハーフステップ、最大4000PPSで分注装置を往復運動させて評価した。モータドライバにはヒートシンクをつけず、モータドライバのケース温度はモータドライバの金属面に白金測温体を貼り付けて測定した。電圧プローブと電流プローブを用いてオシロスコープによりA相の出力電圧とA相の電流を測定した結果、アバランシェ現象の継続時間は171ns、アバランシェ電流は1.36Aであった。またモータドライバのケース温度は105℃を超えた。
【0032】
比較例2
ステッピングモータとモータドライバとを接続するケーブルとして、図5に示すような、幅25mm、長さ1.97mのポリイミドテープの上に、導体として厚さ35μm、幅5mm、長さ1.95mの銅箔3枚をそれぞれ3mmの間隔を開けて貼り付けて作製した、フレキシブルフラットケーブル(FFC)を2枚用意し、1枚には前記モータと前記ドライバのA相同士、A相コモン同士およびAB相同士を、もう1枚には前記モータと前記ドライバのB相同士、B相コモン同士およびBB相同士を、それぞれコネクターを介し接続した他は、比較例1と同様に評価した。
【0033】
結果、アバランシェ現象の継続時間は176ns、アバランシェ電流は1.26Aであった。またモータドライバのケース温度は101.5℃であった。
【0034】
比較例3
ユニポーラ型2相ステッピングモータを外してドライバの近くに置き、図3に示すようなAWG20規格の被覆ワイヤを6本束ねた0.11mのケーブルを用いてモータのリード線とドライバを接続した他は、比較例1と同様に評価した。
【0035】
結果、アバランシェ現象の継続時間は92ns、アバランシェ電流は1.18Aであった。またモータドライバのケース温度は97℃であった。
【0036】
実施例1
ステッピングモータとモータドライバとを接続するケーブルとして、図6に示すような、幅25mm、長さ1.97mのポリイミドテープの上に、導体として厚さ35μm、幅10mm、長さ1.95mの銅箔2枚を3mmの間隔を開けて貼り付けたものを3層重ね、その両端にコネクターを取り付けることで作製した、フレキシブルフラットケーブル(FFC)を用いた他は、比較例1と同様に評価した。なお本実施例で作製したFFCの上層にはモータのA相101とドライバのA相101とを接続する導体およびモータのB相111とドライバのB相111とを接続する導体を、中間層にはモータのA相コモン102とドライバのA相コモン102とを接続する導体およびモータのB相コモン112とドライバのB相コモン112とを接続する導体を、下層にはモータのAB相103とドライバのAB相103とを接続する導体およびモータのBB相113とドライバのBB相113とを接続する導体を、それぞれ設けており、各層間で隣接する銅箔(導体)の間隔は約0.17mmである。
【0037】
結果、アバランシェ現象およびアバランシェ電流は発生しなかった。またドライバのケース温度も80℃と、比較例1および2よりも低下していた。さらに、短いケーブルを使った比較例3よりも温度が低下していた。
【0038】
実施例2
ステッピングモータとモータドライバとを接続するケーブルとして、図6に示すような、幅20mm、長さ1.27mのポリイミドテープの上に、導体として厚さ35μm、幅5mm、長さ1.25mの銅箔2枚を3mmの間隔を開けて貼り付けたものを3層重ね、その両端にコネクターを取り付けることで作製した、フレキシブルフラットケーブル(FFC)を用いた他は、比較例1と同様に評価した。
【0039】
結果、アバランシェ現象の継続時間は88ns、アバランシェ電流も0.58Aと、比較例1および2よりも減少していた。またドライバのケース温度も88.5℃と、比較例1および2よりも低下していた。さらに、短いケーブルを使った比較例3よりも温度が低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、ドライバの発熱が低く、信頼性の高いステッピングモータ駆動ユニットを提供することができる。このため、高い信頼性が要求され、多数の駆動ユニットが搭載される、生化学分析装置等の自動分析装置に設置するモータ駆動ユニットとして特に好ましいといえる。さらに本発明により、ケーブルを長くしてもドライバの発熱を抑えることができるため、ドライバをステッピングモータから離して設置することができる。このため、設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
11:2相ステッピングモータドライバ
12:相励磁制御回路
13:パワーMOSFET
14:電流検出抵抗
21:ケーブル
31:6線仕様の2相ユニポーラステッピングモータ
32:8線仕様の2相ユニポーラステッピングモータ
33:A相コイル
34:AB相コイル
35:B相コイル
36:BB相コイル
101:A相
102:A相コモン
103:AB相
104:A相リターン
105:AB相リターン
111:B相
112:B相コモン
113:BB相
114:B相リターン
115:BB相リターン
121:フレキシブル絶縁板
122:導体
123:絶縁膜
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