特許第6015435号(P6015435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015435半導体ウェーハの強度の評価方法及び評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015435
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの強度の評価方法及び評価装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H01L21/66 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-285593(P2012-285593)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-127685(P2014-127685A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−018242(JP,A)
【文献】 特開平09−321105(JP,A)
【文献】 特開平10−189674(JP,A)
【文献】 特開平08−330317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型炉に投入されて加熱された半導体ウェーハの強度を評価する方法であって、
前記半導体ウェーハの主面を、鉛直方向に平行に、かつ、前記横型炉に投入する方向と平行にして、前記半導体ウェーハを前記横型炉に投入する工程と、
前記横型炉に投入した半導体ウェーハの変形量を定量的に、前記横型炉の炉口部から計測する工程と、
前記変形量から前記半導体ウェーハの強度を評価する工程と
を備え
前記横型炉に投入する際の前記半導体ウェーハの投入速度を所定の値に設定し、
前記横型炉に投入する際の前記半導体ウェーハの面内の温度分布を計測し、
前記面内の温度分布と前記半導体ウェーハの変形量との関係から、前記半導体ウェーハの強度を評価することを特徴とする半導体ウェーハの強度の評価方法。
【請求項2】
前記半導体ウェーハの変形量を定量的に計測する際に、前記半導体ウェーハの変形後の写真を撮影し、画像上のピクセル数から変形量の値を求めることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの強度の評価方法。
【請求項3】
横型炉に投入されて加熱された半導体ウェーハの強度を評価する装置であって、
前記横型炉と、
前記半導体ウェーハの主面が、鉛直方向に平行に、かつ、前記横型炉に投入する方向と平行になるように前記半導体ウェーハを保持して前記横型炉に投入する治具と、
前記横型炉に投入された前記半導体ウェーハの変形量を定量的に、前記横型炉の炉口部から計測する手段と
前記半導体ウェーハの横型炉への投入速度を変化させる手段と、
前記投入する前記半導体ウェーハの面内の温度分布を計測する手段と
を具備することを特徴とする半導体ウェーハの強度の評価装置。
【請求項4】
前記半導体ウェーハの変形量を定量的に計測する手段は、前記半導体ウェーハの変形後の写真を撮影し、画像上のピクセル数から変形量の値を求めるものであることを特徴とする請求項3に記載の半導体ウェーハの強度の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの強度の評価方法及び評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスにおいて、材料のシリコンウェーハ等の半導体ウェーハに割れが発生すると、大きな損失が発生する。このことから、デバイス製造時に割れにくい半導体ウェーハの要望が高い。言い換えると、ウェーハ強度に関して関心が払われている状況である。
【0003】
半導体や液晶の製造プロセス、特にイオン注入後の熱処理などは急速加熱及び急速冷却が進んでおり、さらに、真空下やドライ環境下で行われる製造工程も増加している。また、基板としてのシリコンウェーハやガラス基板等はその大直径化が進み、ウェーハ強度が益々重視されるようになっている。
【0004】
このようなデバイス製造プロセスでは、ウェーハに加わる熱応力の影響が大きく、これらの条件下での破壊強度の解析手法の開発が強く望まれているのが現状である。
【0005】
このウェーハ強度を評価する手法として、従来から「選択エッチング法」が一般的に使用されている。これは、シリコンウェーハを「フッ酸+硝酸+酢酸+水」や「クロム酸+フッ酸+硝酸+酢酸+水」などにひたして、エッチングの状況を見る手法である。しかし、この測定法は、酸の温度、作業者の手順など個人的な測定のバラツキが大きい。また、この手法で問題が無いウェーハでも、デバイス工程で割れるケースがあり、評価能力が劣っているという問題がある。
【0006】
また、X線を利用したX線トポグラフ(XRT)が使用されている。しかしながら、この手法には、高価な機器が必要で、危険なX線の使用が必要であり、一般的な評価は困難である。その上、この手法で問題が無いウェーハでも、デバイス工程で割れるケースがあり、万能である訳ではない。
【0007】
さらに、半導体ウェーハは結晶性の脆性材料のため、一般的な材料の評価技術では測定値のバラツキが大きい。
【0008】
そもそも、室温において半導体ウェーハの割れ易さを評価し検査する標準的機器が市販されておらず、例えば、特許文献1−5に開示されているような装置・方法が考案されてきた。
【0009】
特許文献1は、ガラス球をガラス製の投入管をガイドとして落下させて、半導体ウェーハが割れを生じ始めるのに必要な最小落下高さHで破壊強度を表す方法を開示している。しかし、この方法では、評価材料を加熱する機構が組み込まれておらず、評価温度の検討を行うことはできないという問題がある。
【0010】
特許文献2は、ウェーハに熱衝撃(室温〜740(〜1100)℃)を繰り返し与えて、ワレや地滑り変形などの発生を評価する方法を開示している。しかしながら、この方法の場合は、製品レベルの良好なウェーハにおいてはワレの発生率が1%弱程度であり、品種の差異などを比較するには多量のサンプルと長いテスト時間が必要になり、非常に高コストであるとの問題がある。そして、簡略法として熱衝撃による地滑り変形数で評価したり、あらかじめ衝撃のダメージを与えたウェーハに熱衝撃を加えて、ワレの発生率を比較する方法があるが、これらは定性的な評価法であり、統計的な評価は困難である。
【0011】
特許文献3は、4点曲げ試験機を開示しているが、この場合、評価機にヒーターを組み込む必要があるので、急速加熱及び急速冷却の環境の強度評価は困難であるという欠点を有している。
【0012】
特許文献4は、加熱機構を備えたチャンバー内にウェーハを保持し、これに衝撃を与えて熱衝撃耐性を評価する方法を開示している。この方法では、衝撃に対しての評価は可能であるが、熱処理中のウェーハ挙動をモニタリングし、評価することは不可能である。
【0013】
特許文献5は、炉内のウェーハ出し入れ時のそりを評価するため、格子状の光を用いて、この反射光の投影される像からそりを評価するものを開示している。この方法では、格子状の光を準備することや、高温でウェーハ自体が加熱されている状態において十分な反射光を得づらいという問題がある。
【0014】
さらに、熱処理炉の中でのウェーハの向きを90゜ずらして、炉口からウェーハの変形を直接観察できるようにした構成が、非特許文献1にて提案されているが、データ取得法に困難があり、ウェーハ強度の評価という面では、利用できていなかった。
【0015】
このように、半導体ウェーハ等の熱処理中の挙動を安定して評価し、半導体ウェーハの強度として定量的に評価できる方法や、その方法を行うことができる装置が無く、その開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−122700号公報
【特許文献2】特開2007−48923号公報
【特許文献3】特開平9−229838号公報
【特許文献4】特開2012−4438号公報
【特許文献5】特開平6−18242号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】杉田吉充、半導体研究16超LSI技術半導体プロセスp.322(1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、加熱された半導体ウェーハの強度を、実際の熱処理条件に即して、従来より安定かつ正確に評価することができる評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、横型炉に投入されて加熱された半導体ウェーハの強度を評価する方法であって、前記半導体ウェーハの主面を、鉛直方向に平行に、かつ、前記横型炉に投入する方向と平行にして、前記半導体ウェーハを前記横型炉に投入する工程と、前記横型炉に投入した半導体ウェーハの変形量を定量的に、前記横型炉の炉口部から計測する工程と、前記変形量から前記半導体ウェーハの強度を評価する工程とを備えることを特徴とする半導体ウェーハの強度の評価方法を提供する。
【0020】
このような工程を備え、半導体ウェーハを通常とは90°回転させた状態で横型炉に入炉し、半導体ウェーハの強度を評価する方法により、半導体ウェーハの強度を、実際の熱処理条件に即して、安定かつ正確に評価することができる。
【0021】
この場合、前記横型炉に投入する際の前記半導体ウェーハの投入速度を所定の値に設定し、前記横型炉に投入する際の前記半導体ウェーハの面内の温度分布を計測し、前記面内の温度分布と前記半導体ウェーハの変形量との関係から、前記半導体ウェーハの強度を評価することができる。
【0022】
このように、半導体ウェーハの投入速度を変化させることで、半導体ウェーハにかかる熱ストレスを変化させることができる。このときの半導体ウェーハの面内の温度分布を計測し、半導体ウェーハの変形量と比較することで、半導体ウェーハの面内の温度勾配の影響を評価することができる。
【0023】
また、本発明は、横型炉に投入されて加熱された半導体ウェーハの強度を評価する装置であって、前記横型炉と、前記半導体ウェーハの主面が、鉛直方向に平行に、かつ、前記横型炉に投入する方向と平行になるように前記半導体ウェーハを保持して前記横型炉に投入する治具と、前記横型炉に投入された前記半導体ウェーハの変形量を定量的に、前記横型炉の炉口部から計測する手段とを具備することを特徴とする半導体ウェーハの強度の評価装置を提供する。
【0024】
このような構成を有する半導体ウェーハの強度の評価装置は、半導体ウェーハを通常とは90°回転させた状態で横型炉に入炉させることができ、半導体ウェーハの強度を、実際の熱処理条件に即して、安定かつ正確に評価することができる装置となる。
【0025】
この場合、本発明の半導体ウェーハの強度の評価装置は、前記半導体ウェーハの横型炉への投入速度を変化させる手段と、前記投入する前記半導体ウェーハの面内の温度分布を計測する手段とをさらに具備することができる。
【0026】
このような評価装置であれば、半導体ウェーハの横型炉への投入速度を変化させる手段により、半導体ウェーハにかかる熱ストレスのかかり方を変えることができるとともに、その際の半導体ウェーハの面内の温度分布を計測することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価方法及び評価装置により、加熱された半導体ウェーハの強度を、実際の熱処理条件に即して、従来より安定かつ正確に定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価装置をほぼ側面から見た概略図である。
図2】本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価装置をほぼ上面から見た概略図である。
図3】実施例1の結果(変形量)を示すグラフである。
図4】実施例1の結果(スリップ長さ/変形量)を示すグラフである。
図5】実施例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
図1及び図2に、本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価装置の概略図を示した。図1は本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価装置をほぼ側面から見た図であり、図2は、ほぼ上面から見た図である。
【0031】
本発明に係る評価装置10は、熱処理炉内で加熱された半導体ウェーハWの強度を評価する装置である。評価に用いる熱処理炉として、評価装置10は、横型炉11を具備する。評価装置10は、さらに、半導体ウェーハWを保持して横型炉に投入するための治具(すなわち、ボート)13を具備する。本発明の評価装置10に用いる治具13は、半導体ウェーハWの主面が、鉛直方向に平行に、かつ、横型炉11に投入する方向と平行になるように保持するものである。このとき、治具13は半導体ウェーハWが傾かないような構成とし、例えば、半導体ウェーハWの厚さに応じた溝を有するものとする。
【0032】
評価装置10は、さらに、横型炉11に投入された半導体ウェーハWの変形量を定量的に計測する手段(変形量計測手段)14を具備する。変形量計測手段14は、横型炉11の炉口部12から半導体ウェーハWの変形量を計測する。変形量計測手段14は、例えば、半導体ウェーハWの変形後の写真を撮影し、画像上のピクセル数から変形量の値として反映することができるものを採用することができる。
【0033】
評価装置10は、半導体ウェーハWの横型炉11への投入速度を変化させる手段(投入速度変化手段)15を具備していてもよい。投入速度変化手段15は、治具13に接続されるなどして、半導体ウェーハWの投入速度を変更することができる。また、評価装置10は、横型炉11に投入する半導体ウェーハWの面内の温度分布を計測する手段(温度分布計測手段)16を具備していてもよい。温度分布計測手段16は、例えば通常のサーモグラフィを用いることができる。温度分布計測手段16は、図2に示したように、半導体ウェーハWの側面からウェーハ面内の温度分布を計測する。
【0034】
本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価方法は、加熱された半導体ウェーハの強度を評価する方法であり、図1及び図2に示したような評価装置10を用いて行うことができる。評価する半導体ウェーハは、例えば、単結晶シリコンウェーハとすることができるが、これに限定されない。
【0035】
本発明の評価方法では、まず、治具13を用いて、半導体ウェーハWを横型炉11に投入する。このとき、半導体ウェーハWの主面を、鉛直方向に平行に、かつ、横型炉11に投入する方向(入炉方向)と平行にして、半導体ウェーハWを横型炉11に投入する。すなわち、半導体ウェーハWは、通常とは90°回転させた状態で横型炉11に投入される。横型炉11は、所定の温度(ウェーハ強度の評価を行いたい温度)に設定し、半導体ウェーハWを一定速度で入炉させる。
【0036】
半導体ウェーハWを完全に入炉した後、横型炉11に投入した半導体ウェーハWの変形量を定量的に計測する。この変形量の計測は、横型炉11の炉口部12から、変形量計測手段14により行う。変形量計測手段14は、上記のように、写真撮影した画像上のピクセル数から変形量を求めるものを採用できる。このように計測した半導体ウェーハWの変形量に基づいて、半導体ウェーハWの強度を評価することができる。また、入炉後に、炉の温度を変化させて、そのときの変形量からウェーハ強度を検討することも可能である。
【0037】
このような評価方法により、半導体ウェーハWの強度を、実際の熱処理条件に即して、安定かつ正確に評価することができる。例えば、半導体ウェーハWの種類の違い(ドーパントの種類や濃度の違い、ウェーハの厚さの違い等)によるウェーハ強度の違いの測定を行うことができる。
【0038】
さらに、本発明に係る半導体ウェーハの強度の評価方法では、以下のように、横型炉11に投入する際の半導体ウェーハWの面内の温度分布が半導体ウェーハWの変形量に与える影響を加味して行うこともできる。
【0039】
まず、横型炉11に投入する際の半導体ウェーハWの投入速度を、投入速度変化手段15により、所定の値に設定する。これにより、測定ごとに投入速度を変え、半導体ウェーハにかかる熱ストレスのかかり方を変えることができる。半導体ウェーハWの横型炉11への投入は、投入速度以外については上記と同様に行うことができる。さらに、横型炉11に投入する際の半導体ウェーハWの面内の温度分布を、サーモグラフィ等の温度分布計測手段16で計測し、半導体ウェーハWの面内温度分布(勾配)を確認する。半導体ウェーハWの変形量の定量的な計測は、上記と同様に行うことができる。また、この場合も、入炉後に、炉の温度を変化させて、そのときの変形量からウェーハ強度を検討することも可能である。
【0040】
このように、半導体ウェーハWの面内温度分布(勾配)と変形量の関係を評価することができ、すなわち、熱ストレスに対するウェーハ強度を評価することが可能になる。この方法によれば、半導体ウェーハの強度の評価に、温度分布が半導体ウェーハの変形量に与える影響をも反映させることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0042】
(実施例1)
図1及び図2に示した評価装置10を用いて、本発明の評価方法に従って半導体ウェーハの強度を評価した。
【0043】
まず、材料の半導体ウェーハWとして、抵抗率10Ω・cm、ボロンドープ、直径150mm、厚さ625μmのシリコンウェーハを準備した。このシリコンウェーハを、ボート溝の幅が800μmであるボート(治具13)に搭載した。このボートに搭載した半導体ウェーハWを、1000℃酸素雰囲気下で、横型炉11に、1分間に10cmの速度で投入した。入炉方向と半導体ウェーハWの主面は平行とした。次に、横型炉11内でのシリコンウェーハの変形量を測定した。変形量の測定では、変形量計測手段14による撮像映像のピクセル数を長さに換算することで数値を得た。
【0044】
次に、上記と同様の測定を、半導体ウェーハWの種類を変えて行った。具体的には、半導体ウェーハWとして、抵抗率10Ω・cm、ボロンドープ、窒素1×1014atoms/cmドープ、直径150mm、厚さ625μmのシリコンウェーハを準備した。このシリコンウェーハを、上記と同様に、ボート溝の幅が800μmであるボート(治具13)に搭載し、1000℃酸素雰囲気下で、横型炉11に、1分間に10cmの速度で投入した。その後、横型炉11内でのシリコンウェーハの変形量を測定した。
【0045】
このそれぞれのシリコンウェーハの変形量の違いを図3に示した。図3からわかるように、シリコンウェーハへの窒素のドープの有無による変形量の違いが明確に数値として得られた。
【0046】
この実施例のそれぞれのシリコンウェーハにおいて、1200℃、1時間の熱処理を行った後のスリップ長さと、変形量の違いを図4に示した。なお、このときのスリップ長さは、ウェーハ中のスリップをX線トポグラフ像より算出し一番長いものを代表値として選んだ。ウェーハ変形量が大きいものは、スリップ長さが大きくなる傾向がある。すなわち、ウェーハ変形量が大きいものは、ウェーハ強度が小さいという関係がある。この結果より、本発明の方法により、加熱された半導体ウェーハのウェーハ強度を評価することが可能であることがわかる。
【0047】
(実施例2)
他の実施例として、図1及び図2に示した評価装置10を用いて、本発明の評価方法に従って半導体ウェーハの強度を評価した。
【0048】
まず、材料の半導体ウェーハWとして、抵抗率10Ω・cm、ボロンドープ、直径150mm、厚さ625μmのシリコンウェーハを準備した。このシリコンウェーハを、ボート溝の幅が800μmであるボート(治具13)に搭載した。このボートに搭載した半導体ウェーハWを、1000℃酸素雰囲気下で、横型炉11に、1分間に10cmの速度で投入した。入炉方向と半導体ウェーハWの主面は平行とした。投入中のシリコンウェーハの面内の温度分布をサーモグラフィ(温度分布計測手段16)で測定し、ウェーハ面内の温度差とそのときのシリコンウェーハの変形量を変形量計測手段14で測定した。変形量の測定では、撮像映像のピクセル数を長さに換算することで数値を得た。
【0049】
この実験によりシリコンウェーハ面内の温度差と、シリコンウェーハの変形量のデータを得ることが可能になる。この場合の温度差は53℃であり、変形量は7.45mmであった。
【0050】
次に、上記と同様の測定を、半導体ウェーハWの種類を変えて行った。具体的には、半導体ウェーハWとして、抵抗率10Ω・cm、ボロンドープ、窒素1×1014atoms/cmドープ、直径150mm、厚さ625μmのシリコンウェーハを準備した。このシリコンウェーハを、上記と同様に、ボート溝の幅が800μmであるボート(治具13)に搭載し、データを得た。この場合の温度差は、49℃で変形量は、0.92mmであった。
【0051】
図5に、横軸に1200℃、1時間の熱処理を行ったときのスリップ長さと、縦軸に変形量を温度差で割ったものを示した。なおこのときのスリップ長さは、ウェーハ中のスリップをX線トポグラフ像より算出し一番長いものを代表値として選んだ。単位温度あたりのウェーハ変形量が大きいものは、スリップ長さが大きくなる傾向がある。すなわち、ウェーハ変形量を温度差で割ったものが大きいものは、ウェーハ強度が小さいという関係がある。この結果より、本発明の方法により、加熱された半導体ウェーハのウェーハ強度を評価することが可能であることがわかる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
10…評価装置、 11…横型炉、 12…炉口部、 13…治具、
14…変形量計測手段、 15…投入速度変化手段、 16…温度分布計測手段、
W…半導体ウェーハ。
図1
図2
図3
図4
図5