特許第6015441号(P6015441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015441非水二次電池正極用バインダ樹脂、非水二次電池用正極、および非水二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015441
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】非水二次電池正極用バインダ樹脂、非水二次電池用正極、および非水二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20161013BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20161013BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-288089(P2012-288089)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130751(P2014-130751A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】藤江 史子
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 扶実乃
(72)【発明者】
【氏名】野殿 光史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 春樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃和
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽
(72)【発明者】
【氏名】石井 明宏
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/016563(WO,A1)
【文献】 特開2010−182548(JP,A)
【文献】 特開2006−260782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N−ジメチルアクリルアミドである単量体単位(a)と、
N−ビニルホルムアミド、アクリルアミドから選択される少なくとも1種の単量体に由来する単量体単位(b)とを含む共重合体を含有する非水二次電池正極用バインダ樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載のバインダ樹脂、導電助剤、及び正極活物質を含有する正極合剤層ならびに集電体から構成される非水二次電池用正極。
【請求項3】
請求項2に記載の非水二次電池用正極を備える、非水二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水二次電池正極用バインダ樹脂、非水二次電池用正極、および非水二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ノート型パソコンや携帯電話等の弱電の民生機器用途、ハイブリッド車や電気自動車等の蓄電池として使用されている。二次電池の中では、リチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ということがある。)が多用されている。一般に、リチウムイオン二次電池用電極としては、電極活物質がバインダ樹脂によって集電体に保持されたものが一般的に用いられている。
【0003】
従来、電池電極用のバインダ樹脂には、例えば正極用としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂が用いられている。
電極を作製するに際しては、電極活物質やバインダ樹脂等の混合物を電極スラリーとするための溶媒として、N―メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶剤が用いられている。
しかし、NMP等の有機溶剤は、乾燥時の溶剤回収コスト、環境に対して負荷が高いなどの問題があった。
そのため、最近では、有機溶剤を水へ置き換える試みがなされており、例えば負極用のバインダ樹脂としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックス等の水分散系バインダ樹脂や、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられている。
【0004】
ところで、水分散系バインダ樹脂は、水を含む状態で流通されるため、輸送費が増大するという問題がある。さらに、水分散系バインダ樹脂には、通常、カビ発生抑制を目的として防カビ剤が添加されるため、電池性能が低下するといった問題も懸念されている。
そこで、水分散系バインダ樹脂を粉末状で提供することが望まれているが、ラテックス系の樹脂は低ガラス転移温度の組成であることが多く、一旦粉末化すると高分子鎖が絡み、再度水に分散しにくくなるという問題があった。
そのため、PVDF粉をNMPに溶解して使用できるように、電極作製時に水に溶解または分散して使用することができる粉末状のバインダ樹脂が求められている。
【0005】
一方、CMCは水溶性の高分子であるため、電極作製時には水に溶解させて用いることができる。しかし、CMCは天然物由来であるため、供給ロット毎の品質が安定しにくく、その結果、得られる電極の品質も安定しにくい等の問題がある。
そのため、安定品質で供給可能な非天然物で水溶性のバインダ樹脂が望まれている。
加えて、バインダ樹脂を含む電池には、高い電池性能を発揮することも要求されている。
【0006】
こうした問題に対して、水溶性バインダ樹脂として様々な重合体が提案されている。
例えば、特許文献1では、増粘剤と水分散性バインダ樹脂との水分散体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−256129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の正極電極では、正極用電極スラリーの分散安定性、正極電極の可とう性、及び正極合剤層と集電体との密着性が十分であるとは言えない。
また、特許文献1で用いられている増粘剤と水分散性バインダ樹脂とを含む水分散体は、粘性を付与する成分と、結着性を付与する成分とを別々に組み合わせて用いる必要があるため、バインダ樹脂を粉末状にして簡便に用いることができず、上述のような要求を満たすことができなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電池性能の向上を図ることができる非水二次電池正極用バインダ樹脂、特に、CMC、ラテックス系バインダ樹脂、添加剤等を用いずとも、正極用電極スラリーの分散安定性、正極電極の可とう性、及び正極合剤層と集電体との密着性の向上を図ることができ、かつ、粉末状にして簡便に用いることができる非水二次電池正極用バインダ樹脂、該バインダ樹脂を備えた非水二次電池用正極、及び該非水二次電池用正極を備えた非水二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、CMC、ラテックス系バインダ樹脂、添加剤等を用いなくても、非水二次電池正極用バインダ樹脂(以下、単に「バインダ樹脂」ということがある)として下記一般式(1)で表される単量体単位を有する(共)重合体を含有することで、電極スラリーの分散安定性、正極電極の可とう性、及び正極合剤層と集電体との密着性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、RおよびRは、RおよびRの一方が水素原子または炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であり、他方が炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。nは1〜30000000の整数である。)
【0012】
すなわち、本発明は以下の様態を有する。
〔1〕下記一般式(1)で表される単量体単位(a)を含む(共)重合体を含有する非水二次電池正極用バインダ樹脂。
【0013】
【化2】
【0014】
(式(1)中、RおよびRは、RおよびRの一方が水素原子または炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であり、他方が炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。nは1〜30000000の整数である。)
〔2〕〔1〕に記載のバインダ樹脂、導電助剤、及び正極活物質を含有する正極合剤層ならびに集電体から構成される非水二次電池用正極。
〔3〕〔2〕に記載の電極を備える、非水二次電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバインダ樹脂によれば、正極用電極スラリーの分散安定性の向上を図ることができる。さらには、正極電極の可とう性の向上、及び正極合剤層と集電体との密着性を向上することができる。その結果、これらを備えた非水二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、高い電池性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る非水二次電池正極用バインダ樹脂について説明する。
本発明の非水二次電池正極用バインダ樹脂は、下記一般式(1)で表される単量体単位(a)を含む(共)重合体を含有することを特徴とする。
【0017】
【化3】
【0018】
式(1)中、RおよびRは、RおよびRの一方が水素原子または炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であり、他方が炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。RおよびRの少なくともいずれかが炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であることで、最終的に得られる電極の可とう性が向上する。
【0019】
炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。このような構造を有する単量体単位(a)としては、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。なお、これらを単独で用いても、2種類以上の複数を組み合わせて用いてもよい。さらにこの中でも、水への溶解性がよく、正極電極の可とう性改善、及び正極合剤層と集電体との密着性向上効果がよい点で、N,N−ジメチルアクリルアミドを含むことが好ましい。
【0020】
式(1)中、nは1〜30000000の整数であり、2以上が好ましく、10以上がさらに好ましい。nが大きくなることで、一般式(1)で表される単量体単位(a)由来の好ましい特性が発現しやすくなる。
【0021】
本発明の非水二次電池正極用バインダ樹脂は、一般式(1)で表される単量体単位(a)を必須成分とし、好ましくは、単独重合体が非水電解液に不溶である単量体単位(b)を含む(共)重合体(I)を含む。この(共)重合体(I)から構成されるバインダをバインダ樹脂(I)とする。
単独重合体が非水電解液に不溶である単量体単位とは、その構造単位となる単量体単位(b)を重合して単独重合体としたときに、その重合体が非水電解液に不溶であるものをいう。このような条件を満たす単量体単位(b)としては、例えば、N−ビニルアセトアミド(PNVA)、N−ビニルホルムアミド(PNVF)、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル類、またはそれらの変性物等が挙げられ、特にPNVF、アクリル酸、アクリルアミドが電気化学特性に優れるため好ましい。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
一般式(1)で表される単量体単位(a)の量としては、(共)重合体(I)中の5〜100質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、15〜80%がさらに好ましく、30〜70%が最も好ましい。5質量%以上含めば、正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性が改善する。
【0023】
また、非水電解液に不溶である単量体単位(b)の量としては、(共)重合体(I)中の0〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、20〜85%がさらに好ましく、30〜70%が最も好ましい。この単量体単位を含めば、非水電解液に不溶となり、安定的にバインダ樹脂(I)として使用できる。
【0024】
また、(共)重合体(I)は、その他の水溶性単量体単位(c)を含んでいてもよい。その他の水溶性単量体単位(c)としては、例えば、ビニルアルコール、エチレングリコール、ビニルピロリドン、またはそれらの変性物等が挙げられ、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
その他の水溶性単量体単位(c)の好ましい量としては、(共)重合体(I)中の0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜10%が最も好ましい。40質量%以下であれば、単量体単位(a)および単量体単位(b)由来の性能を発揮しやすい。
【0026】
(共)重合体(I)は、必須成分である一般式(1)で表される単量体単位(a)を重合させることにより、あるいは、単量体単位(a)と、好ましくは非水電解液に不溶である単量体単位(b)、さらに場合によっては水溶性単量体(c)を共重合することにより得られる。重合方法としては、特に限定されず、一般的なラジカル重合、制御ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられる。この中でも、ラジカル重合が最も簡便に利用でき、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合で任意の単独重合体が得られる。中でも、特に、塊状重合、溶液重合は、乳化剤等を使用せず純度の高い重合体を得やすいため好ましい。また、断熱重合、熱重合、光重合等の方法を用いることができる。
【0027】
重合に用いる開始剤は、特に限定されず、水に溶解できればよいが、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクトライド、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕ハイドレート、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}等の一般的な水溶性アゾ化合物、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の水溶性無機過酸化物等が挙げられる。なお、過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、硫酸鉄等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。
【0028】
また、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等の一般的な光重合開始剤等のラジカル重合開始剤も好ましく用いられる。
【0029】
また、重合には、分子量調整等の目的でメルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤、分散剤等を用いてもよい。
【0030】
一般式(1)で表される単量体単位(a)を必須成分とした(共)重合体(I)の質量平均分子量は、1万〜2000万であることが好ましく、50万〜1500万であることがより好ましく、100万〜1000万であることがさらに好ましく、300万〜600万であることが最も好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であれば、バインダ樹脂の粘度が適当で、電極スラリーの分散性も安定的となる。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、測定することができる。
【0031】
一般式(1)で表される単量体単位(a)を必須成分とした(共)重合体(I)の量は、バインダ樹脂(I)の総量100質量%のうち、5〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましく、30〜98質量%がさらに好ましく、50〜95質量%が最も好ましい。一般式(1)で表される単量体単位(a)を必須成分とした(共)重合体(I)が30質量%以上含まれれば、電極スラリーの分散性がよくなり、電極の可とう性改善効果と、正極合剤層と集電体との密着性改善効果が得られる。100質量%でもよい効果が得られるが、電極スラリー安定性の改善、耐酸化性向上のためにその他の水溶性樹脂(II)をバインダ樹脂の総量の1〜5質量%を加えることが好ましい場合もある。
【0032】
その他の水溶性バインダ樹脂(II)とは、前記単量体単位(b)や、水溶性単量体(c)として列挙したものの少なくとも1つ以上を(共)重合したものである。
【0033】
上述の通り、本発明の非水二次電池正極用バインダ樹脂には、バインダ樹脂(I)のみを含む場合と、バインダ樹脂(I)とバインダ樹脂(II)とをブレンドしたものを含む場合とがある。
【0034】
本発明のバインダ樹脂は、一般式(1)で表される単量体単位(a)を必須成分として含有する(共)重合体(I)を必須成分として含有し、例えば、リチウムイオン二次電池の正極に好適に用いることができる。
【0035】
本発明の非水二次電池用正極は、非水二次電池正極用バインダ樹脂と、正極活物質と、導電助剤とを含有する正極合剤層、および集電体とを備えるものである。
集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、チタン箔等が挙げられるが、価格と安定性の観点から、アルミニウム箔が好ましい。
【0036】
正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に脱挿入できるものであればよく、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる少なくとも一種類以上の金属と、リチウムを含有する金属複合酸化物が挙げられ、代表的なものに、LiCoO、LiMnが挙げられる。また、リン酸鉄リチウムやリン酸マンガンリチウム等のオリビン構造を有する化合物を用いてもよい。これらは、一種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
正極活物質は導電助剤と組み合わせて用いる。導電助剤は、電気を通しやすいものがよく、例えば、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック、フラーレン、導電性高分子等が挙げられる。これらは、一種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
導電助剤の添加量は、正極活物質100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。導電助剤の含有量が1質量部より少ない場合、電極抵抗が充分に低減できない恐れがある。また、20質量部以上であると、正極活物質の量が少なくなるため容量を確保しにくくなる。
【0039】
バインダ樹脂の添加量は、正極活物質100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が最も好ましい。バインダ樹脂の含有量が0.1質量部より少ない場合、正極用電極スラリーが安定しないことや、電極合剤層と集電体との密着性が充分に得られないことが懸念される。また、10質量部を超えると、正極活物質の量が少なくなるため容量を確保しにくくなる。
【0040】
バインダ樹脂は、乾燥後の粉体や顆粒を用いてもよく、あらかじめ任意の濃度の水溶液として溶解させてから用いてもよい。複数を混合する場合は、順次加えても、あらかじめ混ぜ合わせておいてもよい。
【0041】
正極用電極スラリー調製工程に用いる溶媒としては、人体や環境に無害であり、回収設備の省略や乾燥エネルギーの軽減による低コスト化が可能であるため、水が好ましい。また、影響のない範囲で水に対して少量の有機溶剤を含んでいてもよい。
【0042】
正極用電極スラリーは、溶媒中、正極活物質と、導電助剤と、本発明のバインダ樹脂を混練、分散させて得られる。正極用電極スラリー調製工程は、均一に分散可能な方法であれば特に限定しないが、例えば、スターラー、自公転攪拌機、ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル等の各種分散機で混練する方法、またその組み合わせが挙げられる。
【0043】
正極用電極スラリーの固形分は、良好に分散していれば特に限定しないが、正極活物質の種類、導電助剤の量、バインダ樹脂の種類、量毎の粘度に応じて、50〜70質量%程度で調整することが好ましい。
【0044】
電極は、正極用電極スラリーを集電体に塗工、乾燥して得られる。塗工方法は特に限定されず、例えばバーコート法、ドクターブレード法、ナイフ法、ディップ法、転写法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、カーテン法、はけ塗り法等によって電極層の厚みが0.1〜500μmとなるように塗工する。
【0045】
乾燥は、集電体に塗工した電極スラリー中の溶媒を除去することができればよく、自然乾燥、低温風乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、赤外線乾燥、遠赤外線乾燥、電子線乾燥等が単独、もしくは複数を組み合わせて用いられる。
【0046】
塗工直後の乾燥温度は、正極用電極スラリー中の含有物が流動しにくい温度であることが好ましく、20〜80度が好ましく、30〜60度がより好ましい。20度以上であれば、乾燥時間が短くなり、60度以下であれば、バインダ樹脂が偏在化による正極合剤層と集電体との密着性低下を抑制できる。
【0047】
一度乾燥した後の乾燥温度は、正極用電極スラリー中の含有物が変質しない温度であればよく、40〜120度が好ましく、60〜100度がより好ましい。40度以上であれば乾燥時間を短縮でき、120度以下であれば、正極用電極スラリー中の含有物が分解、変質するのを抑制できる。
【0048】
乾燥後、必要に応じて電極をプレスしてもよい。プレスにより、電極層の面積を広げ、かつ任意の厚みに調整可能である。また、電極表面の平滑性や電極密度を高めることが可能である。プレス方法としては、金型プレス、ロールプレス等が挙げられる。なお、プレスは常温で行っても、加熱して行ってもよく、乾燥と同時に行ってもよい。
【0049】
また、電極は必要に応じて任意の寸法に切断してもよい。切断方法としては、スリット加工、打ち抜き、押し切り等の方法が挙げられる。
【0050】
最終的な電極の水分量は、2000ppm以下が好ましく、1000ppmがより好ましい。2000ppm以下であれば、電池にした際に水分が原因となる劣化を抑制できる。
【0051】
本発明の非水二次電池は、本発明の正極を備える。
以上のようにして作製された正極と、負極を、透液性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して、配置し、これに非水系の電解液を含浸させることにより非水二次電池(積層型、ラミネート型)が形成される。また、両面に活性層が形成された正極/セパレータ/両面に活性層が形成された負極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回して得られる構造体を有底の金属ケーシングに収容し、負極を負極端子に、正極を正極端子に接続し、電解液を含浸させた後、ケーシングを封止することにより筒状の非水二次電池が得られる。
本発明の非水二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池が好ましい。
【0052】
本発明の非水二次電池に用いられる負極は、一般的に用いられる負極を好適に用いることができる。負極は、負極活物質と、必要に応じて導電助剤と、負極用バインダ樹脂とを含有する負極合剤層、および負極集電体とを備える。負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、チタン箔等が挙げられるが、価格と安定性の観点から、銅箔が好ましい。
【0053】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に脱挿入できるであればよく、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料、シリコン、すず、銀等の金属またはこれらの酸化物が好ましく用いられる。これらは、一種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
負極活物質は導電助剤と組み合わせて用いることもできる。導電助剤は、電気を通しやすいものがよく、例えば、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック、フラーレン、導電性高分子等が挙げられる。これらは、一種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
導電助剤を添加する場合の添加量は、負極活物質100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。導電助剤の含有量が0.1質量部より少ない場合、電極抵抗の低減効果が充分に得られない恐れがある。また、20質量部以上であると、負極活物質の量が少なくなるため容量を確保しにくくなる。
【0056】
負極用バインダ樹脂は、水系であることが好ましく、例えば、CMCやSBR等の一般的なものや、その他の水溶性バインダ樹脂(II)として挙げたような水溶性バインダを用いることができる。これらは、単独で、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。
【0057】
負極用バインダ樹脂の添加量は、活物質100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が最も好ましい。負極用バインダ樹脂の含有量が0.1質量部より少ない場合、負極用電極スラリーが安定しないことや、電極合剤層と集電体との密着性が充分に得られないことが懸念される。また、10質量部を超えると、負極活物質の量が少なくなるため容量を確保しにくくなる。
【0058】
負極用電極スラリー調製工程に用いる溶媒としては、人体や環境に無害であり、回収設備の省略や乾燥エネルギーの軽減による低コスト化が可能であるため、水が好ましい。また、影響のない範囲で水に対して少量の有機溶剤を含んでいてもよい。
【0059】
負極用電極スラリーは、溶媒中、負極活物質と、導電助剤と、負極用バインダ樹脂を混練、分散させて得られる。負極用電極スラリー調製工程は、均一に分散可能な方法であれば特に限定しないが、例えば、スターラー、自公転攪拌機、ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル等の各種分散機で混練する方法、またその組み合わせが挙げられる。
【0060】
負極用電極スラリーの固形分は、良好に分散していれば特に限定しないが、負極活物質の種類、導電助剤の量、負極用バインダ樹脂の種類、量毎の粘度に応じて、45〜70質量%程度で調製することが好ましい。
【0061】
前記電解液としては、例えば、リチウムイオン二次電池の場合、電解質としてのリチウム塩を1M程度の濃度で非水系有機溶剤に溶解したものが用いられる。
前記リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiI、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、Li〔(COBが挙げられる。
【0062】
前記、非水系有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類が挙げられる。前記電解液は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
尚、下記実施例1〜15、30〜33は参考例である。
【0064】
[バインダ樹脂の製造]
<製造例1:N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)>
脱イオン水40質量部に対し、単量体単位(a)として、N,−ジメチルアクリルアミド(興人株式会社製、以下同様)60質量部を混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。得られた重合体の周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてN,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)(PDMA)を得た。
【0065】
<製造例2:N−イソプロピルアクリルアミド重合体(I−2)>
脱イオン水74質量部、エタノール4質量部に対し、単量体単位(a)として、N−イソプロピルアクリルアミド(東京化成株式会社製)22質量部を混合した単量体溶液を作製した。これに、0.007質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで3時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてN−イソプロピルアクリルアミド重合体(I−2)(PNIPAM)を得た。
【0066】
<製造例3:N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)>
脱イオン水70質量部に対し、N−ビニルホルムアミド30質量部を混合した単量体水溶液を、リン酸によりpH=6.3となるよう調節し、単量体調節液を得た。この単量体調節液を5℃まで冷却した後、温度計を取り付けた断熱反応容器に入れ、15分間窒素曝気を行った。その後、4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)12質量%水溶液を0.4質量部添加し、次いで、t−ブチルハイドロパーオキサイド10質量%水溶液および亜硫酸水素ナトリウム10質量%水溶液をそれぞれ0.1質量部添加して重合を行った。内温がピークを超えた後さらに1時間熟成し、ゲルを取り出しミートチョッパーで粉砕した後、60℃で10時間乾燥し、得られた固体を粉砕し、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)(PNVF)を得た。
【0067】
<製造例4:アクリルアミド重合体(II−2)>
脱イオン水33.7質量部に対し、アクリルアミド(和光株式会社製、以下同様)33.3質量部を混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.01質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてアクリルアミド重合体(II−2)(PAAm)を得た。
【0068】
<製造例5:DMA−NVF共重合体(I−3)>
N,−ジメチルアクリルアミド70質量%、N−ビニルホルムアミド30質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−NVF重合体(I−3)を得た。
【0069】
<製造例6:DMA−NVF共重合体(I−4)>
N,−ジメチルアクリルアミド50質量%、N−ビニルホルムアミド50質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−NVF重合体(I−4)を得た。
【0070】
<製造例7:DMA−NVF共重合体(I−5)>
N,−ジメチルアクリルアミド50質量%、N−ビニルホルムアミド50質量%を合わせて100質量部とし、混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.03質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−NVF重合体(I−5)を得た。
【0071】
<製造例8:DMA−NVF共重合体(I−6)>
N,−ジメチルアクリルアミド30質量%、N−ビニルホルムアミド70質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−NVF重合体(I−6)を得た。
【0072】
<製造例9:DMA−NVF共重合体(I−7)>
N,−ジメチルアクリルアミド10質量%、N−ビニルホルムアミド90質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−NVF重合体(I−7)を得た。
【0073】
<製造例10:DMA−NVF共重合体(I−8)>
N,−ジメチルアクリルアミド5質量%、N−ビニルホルムアミド95質量%を合わせて100質量部とし、単量体水溶液を作製した。これに、0.1質量部の開始剤(パーヘキシルPV)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ポリエチレンフィルムを貼ったガラス板で作製した1mm厚さのセルに流しいれ、60度の湯浴で1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−NVF重合体(I−8)を得た。
【0074】
<製造例11:DMA−AAm共重合体(I−9)>
N,−ジメチルアクリルアミド70質量%、アクリルアミド30質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−AAm重合体(I−9)を得た。
【0075】
<製造例12:DMA−AAm共重合体(I−10)>
N,−ジメチルアクリルアミド50質量%、アクリルアミド50質量%を合わせて10質量部とし、脱イオン水100質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.01質量部の開始剤(パーヘキシルPV)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ポリエチレンフィルムを貼ったガラス板で作製した1mm厚さのセルに流しいれ、60度の湯浴で1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−AAm重合体(I−10)を得た。
【0076】
<製造例13:DMA−AA共重合体(I−11)>
四つ口丸底フラスコに、N,−ジメチルアクリルアミド58質量%、アクリル酸42質量%を合わせて10質量部とし、脱イオン水90質量部に混合した単量体水溶液を作製し、攪拌翼、冷却管を接続した。これに、0.4質量部のギ酸ナトリウムを溶解し、攪拌しながら30分窒素バブリングした。50度に昇温し、0.8質量部の10%開始剤(V−50、和光製薬株式会社製)水溶液を添加して3時間重合し、再度、0.8質量部の10%開始剤(V−50)水溶液を添加して3時間重合した。得られた重合溶液は冷却し、大量のメチルエチルケトンに沈殿させた。これを、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−AAm重合体(I−11)を得た。
【0077】
<製造例14:DMA−AA共重合体(I−12)>
四つ口丸底フラスコに、N,−ジメチルアクリルアミド26質量%、アクリル酸74質量%を合わせて10質量部とし、脱イオン水90質量部に混合した単量体水溶液を作製し、攪拌翼、冷却管を接続した。これに、0.4質量部のギ酸ナトリウムを溶解し、攪拌しながら30分窒素バブリングした。50度に昇温し、0.8質量部の10%開始剤(V−50、和光製薬株式会社製)水溶液を添加して3時間重合し、再度、0.8質量部の10%開始剤(V−50)水溶液を添加して3時間重合した。得られた重合溶液は冷却し、大量のメチルエチルケトンに沈殿させた。これを、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDMA−AAm重合体(I−12)を得た。
【0078】
<製造例15:DEA−NVF共重合体(I−13)>
N,−ジエチルアクリルアミド30質量%、N−ビニルホルムアミド70質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDEA−NVF重合体(I−13)を得た。
【0079】
<製造例16:DEA−NVF共重合体(I−14)>
N,−ジエチルアクリルアミド70質量%、N−ビニルホルムアミド30質量%を合わせて60質量部とし、脱イオン水40質量部に混合した単量体水溶液を作製した。これに、0.018質量部の開始剤(ダロキュア4265、チバ・ジャパン株式会社製)を溶解し、30分窒素バブリングした。これを、ペットフィルムにシリコンゴムで作製した1mm厚さのセルに流しいれ、1mW/cmのケミカルランプで1時間重合した。これを、周囲を切り除き、細かく裁断して室温で乾燥後、40度真空乾燥機で一晩乾燥させてDEA−NVF重合体(I−14)を得た。
【0080】
(重合体の分子量測定)
作製した(共)重合体の分子量は、以下の方法で測定した。
Waters社製GPC、カラムにShodex OHpac SB−807HQを使用し、溶媒としてアセトニトリル/水=10/90(0.1N硝酸ナトリウム含有)、流速0.5ml/分、40度で測定。IR検出器にて検出し、粘度換算分子量で基準化したポリN−ビニルホルムアミド換算の分子量を算出した。
【0081】
[実施例1]
<正極電極用の電極スラリーの調製>
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.2gと、3.56gの水とを自公転ミキサー(Thinky社製、「泡とり練太郎」、以下同様)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練し溶解した。これに、コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」、以下同様)10.0g、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、以下同様)0.5gをさらに加え混練した後、塗工可能な粘度まで水を加えて混練することにより、正極用電極スラリーを得た。
【0082】
<正極電極の作製>
得られた正極用電極スラリーを集電体(アルミニウム箔、厚さ20μm)にドクターブレード法によって均一に塗布し、室温で2時間乾燥した。さらに真空乾燥機にて0.6kPa、60℃で12時間減圧乾燥して、膜厚80μmの合剤層が集電体(アルミニウム箔)上に形成された正極電極を得た。
得られた電極は以下の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0083】
(電極密着性評価)
正極合剤層と集電体との密着性(電極密着性)は、以下の条件にて行う剥離試験により測定される剥離強度により評価した。
電極を20mm幅の試験片にし、ニップロールを通して粘着剤付きポリカーボネート板と貼り合せた。テンシロン引張強度試験にて、10Nロードセルを用い、引張速度1cm/分で180度剥離試験を行った。
電極と集電体の剥離強度を5つの試験片で測定し、剥離し始める部分を除いた後半の剥離強度の平均を求め、これより180度剥離強度(N/cm)を算出した。
【0084】
(正極電極の可とう性評価)
正極電極の可とう性は、JIS K−5600−5−1(塗料一般試験方法耐屈曲性(円筒形マンドレル法))を参考にして、以下の条件にて行う耐屈曲性(プレス後の可とう性)により評価した。
電極を3cm×5cmに切り出し、プレスロールでプレスして電極密度を3g/cmに合わせて試験片とした。試験片のアルミ箔面をマンドレル側になるように、設置し、試験片の片側をテープで固定して、折り曲げて、塗膜の状態を目視で観察した。マンドレルの直径を以下の通り小さくしながら評価した。
マンドレルの直径:32mm、25mm、16mm、10mm、8mm、6mm、5mm、3mm、2mm
○:折り曲げ面にて、電極の変化が見られない
△:折り曲げ面にて、電極に横筋がみられた
×:折り曲げ面にて、電極のワレ、欠け等が見られた
試験片3つについて試験し、○を2、△を1、×を0として、結果の合計値が4以上となるマンドレルの最小径を可とう性(mm)とした。
【0085】
[実施例2]
容器に、コバルト酸リチウム10.0g、アセチレンブラック0.5gを計量し、自公転ミキサーで攪拌した。これに、バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を脱イオン水に溶解して作製した3質量%の水溶液6.67gを数回に分けて加えながら自公転ミキサーで攪拌した。さらに、塗工可能な粘度まで水を加えて混練することにより、正極用電極スラリーを得た。塗布直後の乾燥条件を40℃、30分とした以外は実施例1と同様にして、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0086】
[実施例3]
塗布直後の乾燥条件を80℃、30分とした以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0087】
[実施例4]
バインダ樹脂の量を0.15gとした以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0088】
[実施例5]
バインダ樹脂の量を0.15gとし、塗布直後の乾燥条件を40℃、30分とした以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0089】
[実施例6]
バインダ樹脂の量を0.1gとした以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0090】
[実施例7]
バインダ樹脂の量を0.1gとし、塗布直後の乾燥条件を40℃、30分とした以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0091】
[実施例8]
バインダ樹脂として、N−イソプロピルアクリルアミド重合体(I−2)の3質量%水溶液を6.67g用い、塗布直後の乾燥条件を室温2時間とした以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0092】
[実施例9]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.18g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)を0.02g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0093】
[実施例10]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.15g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)を0.05g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0094】
[実施例11]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.1g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)を0.1g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0095】
[実施例12]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.05g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)を0.15g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0096】
[実施例13]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.02g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)を0.18g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0097】
[実施例14]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)を0.01g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−1)を0.19g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0098】
[実施例15]
バインダ樹脂として、N,−ジメチルアクリルアミド重合体(I−1)の3質量%水溶液を4.67g、N−ビニルホルムアミド重合体(II−2)の3質量%水溶液を2.0g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0099】
[実施例16]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−3)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0100】
[実施例17]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−3)の3質量%水溶液を5.0g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0101】
[実施例18]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−3)の3質量%水溶液を3.33g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0102】
[実施例19]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−4)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0103】
[実施例20]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−4)の3質量%水溶液を5.0g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0104】
[実施例21]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−4)の3質量%水溶液を3.33g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0105】
[実施例22]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−5)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0106】
[実施例23]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−5)の3質量%水溶液を5.0g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0107】
[実施例24]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−5)の3質量%水溶液を3.33g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0108】
[実施例25]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−6)を0.2g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0109】
[実施例26]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−7)を0.2g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0110】
[実施例27]
バインダ樹脂として、DMA−NVF共重合体(I−8)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0111】
[実施例28]
バインダ樹脂として、DMA−AAm共重合体(I−9)を0.2g用いた以外は実施例1と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0112】
[実施例29]
バインダ樹脂として、DMA−AAm共重合体(I−10)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0113】
[実施例30]
バインダ樹脂として、DMA−AA共重合体(I−11)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0114】
[実施例31]
バインダ樹脂として、DMA−AA共重合体(I−12)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0115】
[実施例32]
バインダ樹脂として、DEA−NVF共重合体(I−13)の3質量%水溶液を6.67g用いた以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0116】
[実施例33]
バインダ樹脂として、DEA−NVF共重合体(I−14)の3質量%水溶液を6.67g用い、塗布直後の乾燥条件を80℃、30分とした以外は実施例2と同様にして、正極用電極スラリー、正極電極を得た。
得られた電極は実施例1と同様の方法により正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0117】
【表1】
【0118】
表1中の略号は、以下を意味する。
LCO:コバルト酸リチウム
AB:アセチレンブラック
BP:バインダ樹脂
【0119】
表1から明らかなように、上記一般式(1)で表される単量体単位(a)を有する重合体を含有するバインダ樹脂(I−1〜2)を用いると、正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性に優れた正極電極が得られた(実施例1〜15)。特に、上記一般式(1)で表される単量体単位(a)を有する重合体を含むバインダ樹脂(I−1〜2)を、バインダ樹脂中の10質量%以上用いた実施例1〜13、15は、正極合剤層と集電体との密着性を保ちつつ、正極電極の可とう性が優れていた。
中でも、バインダ樹脂(I−1)を用いた実施例1〜7、9〜15で得られた正極電極は、正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性に特に優れていた。
また、上記一般式(1)で表される単量体単位(a)を有する(共)重合体を含有するバインダ樹脂(I−3〜14)を用いると、正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性に優れた正極電極が得られた。さらに、正極用電極スラリーの分散安定性もよく、正極合剤層と集電体との密着性が高いため、正極電極中のバインダ樹脂の量を削減することができた(実施例4、5、6、7、17、18、20、21、23、24)。これにより、正極活物質の密度を高めることができた。
また、本発明のバインダ樹脂を使用することで、品質安定性に不安のあるCMCや、保存・運搬に不利で耐酸化性が低いラテックス系バインダ樹脂を使用することなく、密着性・可とう性に優れる正極電極を作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、環境、人体に無害である水のみを用いて、正極合剤層と集電体との密着性、正極電極の可とう性共に優れた正極電極を作製することのできるバインダ樹脂であって、少量の利用で正極合剤層と集電体との密着性を発現でき、さらに正極電極の可とう性にも優れているため、高容量の正極を作製する際にも非常に有用である。また、作製された正極電極は、非水二次電池、特に、リチウムイオン二次電池に好適に用いることができ、工業的に極めて有用である。