(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記界面活性剤が、脂肪酸グリセリンエステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタングリコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、カルボン酸誘導体塩及びスルホン酸誘導体塩から選ばれる請求項1又は2記載のセルロースエーテル粉粒体の製造方法。
水溶性セルロースエーテル100質量部に対して、0.2〜0.9質量部のタンニンを添加する請求項1〜4のいずれか1項記載のセルロースエーテル粉粒体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
飲料やシャンプー、リンス、塗料等は、容器からの取り出しや使用時の操作を容易にするため、粘性を持たせる必要がある。そのため増粘剤として、アルキルセルロースやヒドロキシアルキルアルキルセルロース等の水溶性セルロースエーテルが添加されている。また、顆粒の調製や製剤の苦みの隠蔽のための表面コーティング又は食品にとろ味を付与するためセルロースエーテルの水溶液を調製する必要がある。
【0003】
しかし、冷水にセルロースエーテルを粉末状のまま投入すると、すぐに粉末表面が溶けて粘稠な状態となり、粉末同士が引き寄せ合って接着し、米粒からあずき粒の大きさで、通常「ママコ」又は「ダマ」と呼ばれる塊状物となってしまう。この「ママコ」又は「ダマ」の表面は高粘性の皮膜となっているため、内部に水が浸透せず、完全に溶解するには一昼夜以上かかるという問題があった。
【0004】
特許文献1(特開平11−322801号公報)には、セルロースエーテル100重量部に、グリコール類及び/又はHLBが3〜17である非イオン界面活性剤2〜20重量部を添加又は噴霧することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2(特開平8−154643号公報)には、食品添加物として安全なタンニンをセルロースエーテルに付着させて水に不溶な状態とした後、別な食品添加物である炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムを添加して水に溶解する状態とした食品の保温パック剤が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1では、2質量%以上の高濃度の水溶液を調製しようとする場合、「ママコ」又は「ダマ」が発生しやすくなる。これを改善するため多量の界面活性剤の溶液処理を行うと、セルロースエーテルの粉体表面が溶解しやすくなり、粉体同士が付着して大きな粒状物が形成され、冷水への溶解速度が極めて遅くなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、溶解性改善のためには、更にタンニンを多く付着させる必要があるが、糊剤、粘結剤、増粘剤としてセルロースエーテルを増量使用した時、タンニンの多量使用による苦みの増大が問題であった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のセルロースエーテル粉粒体の製造方法は、水溶性セルロースエーテルの表面に、界面活性剤溶液を添加した後、更にタンニン溶液を添加することを特徴とする。
【0015】
本発明の水溶性セルロースエーテルは、特に限定されるものではなく、セルロースをエーテル化することで水溶性となる全てのセルロースエーテルを用いることができる。これらの中でも、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースステアロキシエーテルが好ましい。これらの中でもメチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)が好ましい。
【0016】
具体的には、メトキシル基が10〜40質量%の水溶性メチルセルロース(MC)のごときアルキルセルロース、ヒドロキシプロポキシル基が40〜70質量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエトキシル基が30〜70質量%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)のごときヒドロキシアルキルセルロース、メトキシル基が10〜40質量%で、溶解性向上のためヒドロキシアルキル基が3〜30質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ないしはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エトキシル基が5〜20質量%で、ヒドロキシエトキシル基が10〜45質量%のヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)のごときヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ステアリルオキシヒドロキシプロポキシル基が0.2〜0.6質量%のヒドロキシアルキルアルキルセルロースステアロキシエーテル等が挙げられる。
【0017】
また、水溶性セルロースエーテルの重量平均分子量は、好ましくは1千〜200万、更に好ましくは1万〜150万、特に好ましくは2万〜100万である。重量平均分子量が1千未満だと本発明の課題である「ママコ」又は「ダマ」がそもそも発生せずに溶解してしまう場合がある一方、200万を超えると水溶性セルロースエーテルの粘性が高くなりすぎて「ママコ」又は「ダマ」が生じてしまう場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−光散乱法(GPC−LS)を用いたポリスチレン換算による測定値である。
【0018】
水溶性セルロースエーテルの平均粒径は、好ましくは50〜400μm、更に好ましくは60〜250μm、特に好ましくは60〜200μmである。平均粒径が50μm未満だと得られるセルロースエーテル粉粒体を冷水に投入した時「ママコ」又は「ダマ」が発生してしまう場合がある。一方、平均粒径が400μmを超えると得られるセルロースエーテル粉粒体の溶解に時間がかかってしまう場合がある。
【0019】
水溶性セルロースエーテルの平均粒径は、これら水溶性セルロースエーテルをJIS Z8801−1982「標準ふるい」で規定される目開きの目の粗さの異なるふるいにかけ、ふるい上に残った質量の累積%とふるい目の目開きをRosin−Rammler線図にプロットした時、累積%が50%となる粒径として求められる。
【0020】
なお、用いられる水溶性セルロースエーテルは、乾燥、粉砕工程を経て水分を5質量%未満の低水分量としたものの他、これらの工程を経ないである程度水分を含むものでもよい。この場合の水溶性セルロースエーテルに含まれる水分量は、好ましくは5〜90質量%、更に好ましくは10〜70質量%である。水分量が90質量%より多いと、流動化時に水溶性セルロースエーテルが早く付着して粒が大きくなってしまう場合がある。
【0021】
次に、界面活性剤は、非イオン性のものが好ましく、具体的にはHLBが好ましくは14〜19、更に好ましくは15を超えて17以下である。HLBが14より低いと得られるセルロースエーテル粉粒体を冷水に投入した場合に、「ママコ」又は「ダマ」の発生を抑制する効果が少なくなる場合がある。特に、本発明のセルロースエーテル粉粒体を用いて2質量%以上の水溶液を調製しようとする場合に「ママコ」又は「ダマ」の発生を完全に抑制することが困難な場合がある。これは、添加される界面活性剤のHLB値が水溶性セルロースエーテルのHLB値である11より低く親油性側にあると濡れ性が悪くなって冷水溶解性が低下してしまうものの、14〜19の範囲であると濡れ性が改善されて冷水溶解性を低下させないためと考えられる。
【0022】
界面活性剤として、具体的には、例えば、モノラウリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリン等の脂肪酸グリセリンエステル、蔗糖ラウリン酸エステル等の蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタンエステル等のソルビタングリコールエステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等のカルボン酸誘導体塩、テトラジフェニルスチレンスルホン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸誘導体塩から選ばれるものが挙げられる。これらの中でもモノラウリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリン、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタンエステル、カルボン酸誘導体塩及びスルホン酸誘導体塩から選ばれるものであることが好ましい。
【0023】
界面活性剤の添加量は、水溶性セルロースエーテル100質量部に対して、好ましくは0.4〜3.0質量部、更に好ましくは0.6〜2.0質量部である。界面活性剤の添加量が0.4質量部未満であると得られるセルロースエーテル粉粒体を冷水に投入した場合に、「ママコ」又は「ダマ」の発生を抑制する効果が少なくなる場合がある。特に、本発明のセルロースエーテル粉粒体を用いて2質量%以上の水溶液を調製しようとする場合に「ママコ」又は「ダマ」の発生を完全に抑制することが困難な場合がある。一方、3.0質量部を超えると添加された水溶性セルロースエーテルの表面が溶け出して処理中に大きな粒子となって冷水に投入した場合に溶解が遅くなる場合がある。
【0024】
次に、タンニンの具体例としては、例えば、没食子酸やエラグ酸等の芳香族化合物とグルコース等の糖がエステル結合し、酸、アルカリ、酵素で多価フェノール酸と多価アルコール(糖等)に加水分解される加水分解型タンニンと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニンが挙げられる。少ない添加量で冷水溶解が達成できる点で、加水分解型タンニンが好ましい。
【0025】
タンニンの添加量は、水溶性セルロースエーテル100質量部に対して、好ましくは0.2〜0.9質量部、更に好ましくは0.3〜0.7質量部である。タンニンの添加量が0.2質量部より少ないと得られるセルロースエーテル粉粒体を冷水に投入した場合に、「ママコ」又は「ダマ」の発生を抑制する効果が低くなる場合がある。特に、本発明のセルロースエーテル粉粒体を用いて4質量%以上の水溶液を調製しようとする場合に、「ママコ」又は「ダマ」の発生を完全に抑制することが困難な場合がある。一方、0.9質量部を超えると冷水に溶解した場合にタンニンの苦みが発生して食品や飲料用に使いにくくなると共に製品のコストが高くなる場合がある。特に4質量%以上の水溶液調製時にタンニンの苦みの発生を完全に抑制することが困難な場合がある。
【0026】
本発明のセルロースエーテル粉粒体の製造方法は、まず、水溶性セルロースエーテルに、界面活性剤溶液を添加する。
界面活性剤溶液の添加にあたっては、そのまま又は水に溶解して用いることができる。
水溶液とする場合の界面活性剤濃度は、均一添加の観点から好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは1〜30質量%である。
【0027】
界面活性剤溶液を添加する際の装置としては、ダルトン(株)のスパルタンリューザー噴霧混合装置、流動層装置の他、ホソカワミクロン(株)のフレキソミックスの他、ドイツ国のレデイゲ社や太平洋機工(株)のプロシェアー型混合装置、ハイブレンダー等のナウター型ミキサー、コーン型ブレンダー、V型ブレンダー等が挙げられ、中でも、水溶性セルロースエーテルを均一に分散した状態で界面活性剤溶液を均一に添加させる点で、噴霧混合装置が好ましい。
【0028】
界面活性剤溶液の供給速度は、1〜500g/min、特に2〜20g/minとすることが好ましく、供給速度が遅すぎると、目的物を得るのに時間がかかり、生産性が悪くなる場合がある。一方、早すぎると、均一に界面活性剤溶液が水溶性セルロースエーテルに付着しない場合がある。
【0029】
ここで、本発明の実施例に好適な撹拌装置としては、
図1に示す如き装置(ダルトン(株)のスパルタンリューザー)が例示される。この撹拌装置1は処理槽2を有し、この処理槽2の一側部の高さ方向ほぼ中央部より第1回転軸3が水平方向に沿って処理槽2の内部に回転可能に挿入されており、この第1回転軸3の外周部には多数の撹拌回転翼4が突設され、図示していないモーター等の駆動装置によって第1回転軸3が回転し、これと一体に撹拌回転翼4が同方向に回転するようになっている。また、上記第1回転軸3の処理槽2内突出方向と対向する処理槽2の他側部には、同様にモーター等の駆動装置(図示せず)によって上記第1回転軸3と反対方向に回転する第2回転軸5が配設され、この第2回転軸5の処理槽2内への突出先部には、上記処理槽2の他側部内壁及び上部内壁、底部内壁に沿うようにリボン状又はカゴ状の撹拌翼6が取り付けられ、第2回転軸5が回転すると、これと一体に上記第1回転軸3の撹拌回転翼4の回転方向と反対方向に回転するようになっているものである。なお、図中7は、圧縮空気と界面活性剤溶液又はタンニン溶液を供給する2流体ノズルである。また、水溶性セルロースエーテルは処理槽2上部に形成された投入口8より供給される。
【0030】
この場合、上記水溶性セルロースエーテルの流動速度は、例えば、
図1に示したようなダルトン(株)のスパルタンリューザーの如く、1本の撹拌回転翼が処理槽の中心部分に水平に設置され、直径250mmの2L容器中に水溶性セルロースエーテル及び/又は水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの水溶性高分子粉粒物を0.5kg入れた場合の回転翼の速度にして、1,500〜10,000rpmが好ましく、特に2,000〜7,000rpmが好ましい。この速度が遅すぎると、界面活性剤溶液が均一に付着しない場合がある。一方、早すぎると、回転翼の摩耗が激しく、装置の損傷が起こる場合がある。
【0031】
図1に示すように、撹拌回転翼に対して反対に回るリボン状又はカゴ状の撹拌翼が撹拌回転翼の外部に水平に設置され、回転する機構を有する構造の撹拌装置を使用するのが望ましい。即ち、高速で撹拌する回転翼により発生する粉粒物の流動に対して、反対方向の流れを作ることで、流体が撹拌槽内で滞留することなく、均一に撹拌させるために、この撹拌回転翼に対して反対に回るリボン状又はカゴ状の撹拌翼を設置することが好ましい。この撹拌翼の回転速度としては、好ましくは10〜1,000rpm、特に好ましくは20〜100rpmである。この速度を遅くしすぎるとこの粉粒物の滞留が抑制されない場合があり、早すぎると粉粒物同士の衝突が早すぎて、粉砕作用が発生してしまうので好ましくない場合がある。
【0032】
また、水溶性セルロースエーテルに界面活性剤溶液を添加する方法としては、
図1に示すような2流体ノズルが用いられ、この2流体ノズルの構造について説明すると、中心ノズルから界面活性剤溶液を、中心ノズルを囲むようにした空気用ノズルから圧縮空気をそれぞれ導入するものであり、界面活性剤溶液は圧縮空気を同伴して、水溶性セルロースエーテルの表面に添加される。
該2流体ノズルの噴射角度は、好ましくは30〜110°、更に好ましくは45〜100°、特に好ましくは50〜80°である。2流体ノズルの角度が上記30〜110°の範囲を外れると、界面活性剤溶液が目的とする水溶性セルロースエーテルに付着せず、撹拌装置の内壁面又は撹拌翼部分に付着する場合がある。
界面活性剤溶液の供給速度は、好ましくは5〜30g/min、更に好ましくは10〜20g/minである。
【0033】
水溶性セルロースエーテルに対して界面活性剤溶液を供給する場合の温度は、5〜50℃が好ましく、低すぎると界面活性剤溶液の粘性が高くなり、均一に付着できない場合があり、高すぎると界面活性剤溶液を含む水溶液が蒸発して、均一に付着できない場合がある。
【0034】
界面活性剤溶液の平均噴霧液滴径は、添加対象の水溶性セルロースエーテルの平均粒径より小さくして噴霧するのが望ましい。好ましくは水溶性セルロースエーテルの1/10以下、更に好ましくは1/50以下である。界面活性剤溶液の平均噴霧液滴径が大きすぎると、撹拌流動している水溶性セルロースエーテル粉末すべてに均一に添加することが困難になる場合がある。なお、平均噴霧液滴径は、レーザー回折式の粒度測定装置で測定できる。
【0035】
次に、界面活性剤溶液が添加された水溶性セルロースエーテルの粉体表面に、タンニン溶液を添加する。タンニン溶液は、タンニンを水、メタノール、エタノール、アセトン等の有機溶剤に溶解して用いる。タンニン溶液中のタンニンの濃度は、均一添加の観点から、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは2〜20質量%である。
【0036】
タンニン溶液の添加方法は、界面活性剤溶液が添加された水溶性セルロースエーテルの粉体表面に均一にタンニン溶液が添加されればいずれの方法でもよい。タンニン溶液を添加する際の装置としては、界面活性剤溶液を添加する際の装置として例示したものと同様のものを例示することができるが、界面活性剤溶液が添加された水溶性セルロースエーテルを均一に分散した状態で、タンニン溶液を均一に添加させる点から、噴霧混合装置を用いた噴霧が好ましい。該噴霧混合装置は、界面活性剤溶液で用いた噴霧混合装置と同様のものを用いることが好適であり、タンニン溶液の供給速度、供給温度、平均噴霧液滴径は、いずれも上記界面活性剤溶液と同様の条件で行うことができる。
【0037】
本発明においては、水溶性セルロースエーテルに界面活性剤溶液を添加した後に、更にタンニン溶液を添加することが必要である。これは、界面活性剤溶液は界面張力が低く、溶液として水溶性セルロースエーテルの表面に皮膜として浸透して展延して付着するのに対して、タンニン溶液は界面張力が高く、水溶性セルロースエーテルへの表面への浸透による展延ができないからである。即ち、先に水溶性セルロースエーテル表面に界面活性剤溶液を添加後にタンニン溶液を添加すると、水溶性セルロースエーテルの表面に展延された界面活性剤溶液とタンニン溶液との間の界面張力は低くなり、タンニン溶液は一様に展延し、界面活性剤の官能基とタンニンの官能基により弱い結合が均一に生じ、界面活性剤とタンニンによる薄い耐水性の架橋膜が生じる。これを冷水に投入すると、この架橋膜が水溶性セルロースエーテルの表面への水の浸透速度を遅延し、水溶性セルロースエーテルの表面の溶解によって生じる粉末同士の引き寄せによる「ママコ」又は「ダマ」の発生を抑制できる。逆に、先にタンニン溶液を水溶性セルロースエーテルに付着させた後に界面活性剤溶液を添加すると、タンニンには界面張力の低下能がなく、水溶性セルロースエーテル及び/又は水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと比較的強固な架橋構造を局所的に形成してしまう。その後、界面活性剤溶液を添加すると、界面活性剤による界面張力低下能によってタンニンと水溶性セルロースエーテルからなる強固な架橋部分と非架橋部分に展延する。これを冷水に投入すると、非架橋部分からの水の浸透速度を抑えることができず、水溶性セルロースエーテルの表面が早く溶解して「ママコ」又は「ダマ」の発生が生じる。
【0038】
本発明においては、タンニン溶液を添加して得られたセルロースエーテル粉粒体を更に60〜150℃、特に80〜120℃で0.1〜24時間、特に0.2〜6時間乾燥させることが好ましい。これによりセルロースエーテル粉粒体の水溶液の調製濃度、特に1〜2質量%での粘性発現が可能となり、水分を含んでない粉粒体は粉粒体の保存中にカビ等による分解がなく、製品の安定性が増す。また、必要に応じて乾燥後に粉砕してもよい。粉砕方法としては、例えば、ナイフミル、ローラーミル、ボールミル等が使用できる。
【0039】
得られた粉粒体の平均粒径は、好ましくは50〜8,000μm、更に好ましくは60〜5,000μm、特に好ましくは70〜500μmである。得られた粉粒体の平均粒径が50μm未満だと、「ママコ」又は「ダマ」が発生してしまう場合がある一方、8,000μmを超えると溶解に時間がかかってしまう場合がある。なお、平均粒径は、上記水溶性セルロースエーテルの平均粒径と同様に測定することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
[実施例1〜6]
図1に示すように、撹拌槽の中心部に水平回転する第1回転軸につけられた撹拌回転翼とその回転翼の周囲に反対方向に回転するリボン状の撹拌翼が設置されたダルトン(株)製、RMO−4H(有効容積2L)スパルタンリューザー混合造粒装置(撹拌装置)に、表1に示す水溶性セルロースエーテルを0.5kg投入し、毎分4,700回転で回転翼を回転させ、この回転翼の周囲を毎分25回転でリボン状の撹拌翼を逆方向に回転させ、水溶性セルロースエーテルの粉体を流動させた。
次に、予め表1に示すように調製した界面活性剤溶液及びタンニン溶液を0.03MPaにて装置に挿入しつつ、供給速度15g/minにて2流体ノズルにより圧縮空気を同伴しながら界面活性剤溶液、タンニン溶液の順に表1に示す添加量となるよう水溶性セルロースエーテル表面へ噴霧した。
【0042】
噴霧処理されたセルロースエーテル粉粒体(未乾燥品)及びこれを更に105℃で4時間乾燥したセルロースエーテル粉粒体(乾燥品)を得た。得られた粉粒体について、JIS Z8801−1982「標準ふるい」に規定されている目開きの目の粗さの異なるふるいにかけ、ふるい上に残った質量の累積%とふるい目の目開きをRosin−Rammler線図にプロットした時に、累積%が50%となる粒径を粉粒体の平均粒径として求めた結果を表1に示す。得られた粉粒体を5℃の水に2質量%水溶液となるようにセルロースエーテル粉粒体を投入して、700rpmで7分間撹拌した。その後、得られた水溶液中の「ママコ」又は「ダマ」の有無、5℃における2質量%水溶液のブルックフィールド粘度計による粘度及び苦みの有無を「ママコ」又は「ダマ」がなかった例について確認した。その結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1〜8]
比較例として、比較例1〜6については、先にタンニン溶液を噴霧後、界面活性剤溶液を噴霧する以外は実施例と同様に行い、比較例7及び8については、それぞれ界面活性剤溶液、タンニン溶液のいずれかのみ噴霧する以外は、実施例と同様に行った。配合組成及び評価結果を表2に示す。
【0044】
<水溶性セルロースエーテル>
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
メトキシ基置換度:25質量%、ヒドロキシプロピル基置換度:7質量%
平均粒径:70μm、重量平均分子量:64万(信越化学工業(株)製)
メチルセルロース(MC)
メトキシ基置換度:30質量%
平均粒径:120μm、重量平均分子量:91万(信越化学工業(株)製)
ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)
メトキシ基置換度:24質量%、ヒドロキシエチル基置換度:9質量%
平均粒径:65μm、重量平均分子量:24万(信越化学工業(株)製)
ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)
エトキシ基置換度:43質量%、ヒドロキシエチル基置換度:15質量%
平均粒径:50μm、重量平均分子量:2万(信越化学工業(株)製)
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)
ヒドロキシエチル基置換度:54質量%
平均粒径:90μm、重量平均分子量:10万(信越化学工業(株)製)
【0045】
<評価>
ママコ又はダマの有無
2質量%水溶液となるようにセルロースエーテル粉粒体を5℃の水中へ投入した場合に、ママコ又はダマが発生した場合には「有」、発生しない場合には「無」とした。
【0046】
苦みの有無
未乾燥品については1質量%、乾燥品については2質量%水溶液となるように、セルロースエーテル粉粒体を5℃の水中に投入して水溶液を調整し、得られた水溶液5mlを口に含んだ場合に、苦みを感じた場合は「有」、感じなかった場合は「無」とした。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】