(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015666
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】プロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法、その製造方法で得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた成形体及びその成形体を用いた部品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20161013BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20161013BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L67/04
!C08L101/16
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-545879(P2013-545879)
(86)(22)【出願日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2012079267
(87)【国際公開番号】WO2013077210
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-256387(P2011-256387)
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100149412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】永井 晃
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 稔
(72)【発明者】
【氏名】稲田 禎一
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
【審査官】
渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−171508(JP,A)
【文献】
特開2008−174759(JP,A)
【文献】
特開2005−307128(JP,A)
【文献】
特開2009−127004(JP,A)
【文献】
特公昭38−004493(JP,B1)
【文献】
特開平06−145267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08G81
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法であって、均一に混合されたプロピレン系ポリマー(成分A)、乳酸系ポリマー(成分B)、過酸化物(成分C)並びにカルボン酸無水物(成分D1)及び/又はグリシジル基、オキサゾリン基、酸無水物基、イソシアネート基、アミノ基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性化合物(成分D2)を溶融混錬する工程を含むプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記成分Aのメルトフローレシオ(230℃)が0.5〜70gである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記成分Bのメルトフローレシオ(190℃)が0.5〜50gである、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記成分Aと前記成分Bの配合重量比(A/B)が90/10〜10/90である、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶融混錬する工程が、
前記成分A〜C並びにD1及び/又はD2を、シリンダー及びダイを有する二軸押出し機に供給する工程1と、
前記二軸押出し機に供給された前記成分A〜C並びにD1及び/又はD2を、前記シリンダー及び前記ダイの温度130〜290℃の下で、前記二軸押出し機内で溶融混練する工程2を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程2において、前記二軸押出し機内を真空脱気装置により真空脱気しながら溶融混練する、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記プロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物のメルトフローレシオ(230℃)が10〜300gである、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレンのホモポリマーあるいはプロピレンとエチレンとのコポリマーである、請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記乳酸系ポリマーが、L−乳酸由来の単位からなるポリL−乳酸である、請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記乳酸系ポリマーと反応可能な官能基を有する熱可塑性樹脂が、グリシジル基を有する熱可塑性樹脂である、請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法、その製造方法で得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた成形体及びその成形体を用いた部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年地球環境負荷低減を目的に植物度の高く、燃焼時に発生する二酸化炭素量が少ない材料が様々な分野で注目を受け、各種用途への検討が進められている。このような植物度の高い成形材料としてポリ乳酸が注目され、各種材料開発が検討されている。しかしポリ乳酸単独では耐熱性が低く、適用される分野が限定される。また靭性が低く、衝撃のかかる用途には改良が必要である。
【0003】
このような観点からポリ乳酸成形材料は今までに様々な改良が検討されている。その中でも一番多い事例としてはポリプロピレンとのポリマアロイ化の検討が挙げられる。
【0004】
ポリプロピレンは耐熱性、成形加工性、機械的性質、耐薬品性などに優れ、しかも安価であることから電気・電子部品、家庭電化製品、ハウジング、包装材料、自動車部品など、工業的に幅広く用いられている。さらに近年、自動車軽量化の要望から、ポリプロピレンは、バンパー、内外装部品など自動車用途にも幅広く用いられている。
【0005】
しかしながらポリプロピレンとポリ乳酸は化学構造が大きく異なるため、相溶性が悪く、何らかの特殊な相溶化技術を使用しなければ実用に十分な特性が得られない。
【0006】
相溶化技術の例として、相溶化剤を介してポリプロピレンとポリ乳酸をポリマアロイ化する技術が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0007】
相溶化技術の他の例として、ポリプロピレンを前もって過酸化物と無水マレイン酸の存在下で溶融混錬して変性させて得た変性ポリプロピレンと、ポリ乳酸とを溶融混錬してポリマアロイ化する技術が挙げられる(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−256487号公報
【特許文献2】特開2004−175909号公報
【特許文献3】特開2005−307128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようの様々な相溶化技術の検討が進められているが、相溶化剤自体が高価であり、製造工程が非常に煩雑になり、作業性も悪く、実用化には大きな障害になっていると考えられる。
【0010】
本発明は、プロピレン系ポリマーと乳酸系ポリマーとを、簡易かつ安価な方法で相溶的に混合でき、流動性に優れ、実用上十分な耐熱性及び靭性を有し、燃焼時に発生する二酸化炭素量を抑制できるプロピレン系ポリマー及び乳酸系ポリマーを含む樹脂組成物(以下、プロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物又は樹脂組成物ともいう)の製造方法、その製造方法で得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた成形体及びその成形体を用いた部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、プロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法であって、プロピレン系ポリマー(成分A)及び乳酸系ポリマー(成分B)を、過酸化物(成分C)並びにカルボン酸無水物(成分D1)及び/又はグリシジル基、オキサゾリン基、酸無水物基、イソシアネート基、アミノ基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性化合物(成分D2)の存在下で、溶融混錬する工程を含むプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法である。
本発明(2)は、本発明(1)記載のプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法によって得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物である。
本発明(3)は、本発明(2)記載のプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物を用いた成形体である。
本発明(4)は、本発明(3)記載の成形体を用いた、電気・電子機器部品、家電部品又は自動車内外装部品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プロピレン系ポリマーと乳酸系ポリマーとを、簡易かつ安価な方法で相溶的に混合でき、流動性に優れ、実用上十分な耐熱性及び靭性を有し、燃焼時に発生する二酸化炭素量を抑制できるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物の製造方法、その製造方法で得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた成形体及びその成形体を用いた部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔成分A〕
本発明におけるプロピレン系ポリマーである成分Aは、プロピレンのホモポリマー及び/又はプロピレンと他のモノマーとのコポリマーである。プロピレンと他のモノマーとのコポリマーとしては、例えば、プロピレンとエチレンとのブロックコポリマー、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマー、プロピレン、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンとのブロックコポリマー、並びにプロピレン、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダムコポリマーが挙げられる。
【0014】
成分Aは、これらのホモポリマー及びコポリマーから選らばれる1種あるいは2種以上を使用することが好ましい。
【0015】
成分Aを構成する単位の由来となる炭素数4〜10のα−オレフィンは、耐熱性およびポリ乳酸系ポリマーとの相溶性の観点から、1−ブテン、1−ペンテン、イソブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン及び3−メチル−1−ヘキセンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン系化合物が好ましい。
【0016】
成分Aを構成するプロピレン由来の単位の含有量は、全モノマー単位中、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0017】
成分Aを構成するエチレン由来の単位の含有量は、全モノマー単位中、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜4質量%、更に好ましくは0〜2質量%である。
【0018】
成分Aに用いられる炭素数4〜10のα−オレフィン由来の単位の含有量は、全モノマー単位中、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜10質量%である。
【0019】
成分Aがコポリマーの場合は、プロピレンとエチレンとのコポリマー及び/又はプロピレンと1−ブテンとのコポリマーであることが好ましく、プロピレンとエチレンとのコポリマーがより好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物の高流動性による成形性、高耐熱性、高靭性をより安定に確保する観点から、成分Aのメルトフローレシオ(MFR)(230℃、2.16kg、10分間)は、好ましくは0.05〜70gであり、より好ましくは1〜50gであり、更に好ましくは1.5〜10gであり、特に好ましくは1.5〜5gである。
【0021】
〔成分B〕
本発明における乳酸系ポリマーである成分Bは植物や植物資源から合成された材料であり、大気中の二酸化炭素量を増大させることなく燃焼処理可能である。そのため環境負荷の低減に有用である。
【0022】
成分Bとしては、例えば、D−乳酸由来の単位からなるポリD−乳酸、L−乳酸由来の単位からなるポリL−乳酸、D−乳酸とL−乳酸由来の単位からなるポリDL−乳酸、及びその混合物が挙げられる。乳酸由来の単位以外の他のモノマー由来の単位が含まれたコポリマーでもよいが、その場合、生分解性をより安定に確保する観点から、乳酸由来の単位は50〜100モル%であることが好ましく、75〜100モル%であることがより好ましい。
【0023】
乳酸と共重合可能なモノマーとしては、燃焼時に発生する二酸化炭素量を安定に抑制する観点から、ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、3−ヒドロキシプロピオン酸など)、脂肪族多価アルコール(ブタンジオール、エチレングリコールなど)、及び脂肪族多価カルボン酸(コハク酸、アジピン酸など)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが好ましい。コポリマーの構造としてはランダム、交互、ブロック、グラフトのいずれの形態でもよい。
【0024】
本発明の樹脂組成物の高流動性による成形性、高耐熱性、高靭性をより安定に確保する観点から、成分BのMFR(190℃、2.16kg、10分間)は、好ましくは0.05〜50gであり、より好ましくは0.05〜40gであり、更に好ましくは0.1〜30gであり、更に好ましくは1〜20gである。
【0025】
本発明における成分Aと成分Bの配合重量比(A/B)は、本発明の樹脂組成物及び成形体の高流動性による成形性、高耐熱性、高靭性及び燃焼時に発生する二酸化炭素量の抑制をより安定に確保する観点から、90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましく、70/30〜30/70であることが更に好ましい。A/Bが上記の好適範囲にあると、ポリプロピレン系ポリマーとの共存よりポリ乳酸系ポリマーの吸湿性を低減でき、吸湿劣化、不要な生分解性を抑制することができる。
【0026】
〔成分C〕
本発明における過酸化物である成分Cは、溶融混練温度である130〜290℃の範囲で活性を有するという観点から、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−i−プロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパ−オキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシi−プロピルカーボネート等のパーオキシエステル類が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましく、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3からなる群から選ばれる少なくとも1種の過酸化物が更に好ましく、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド及びジクミルパーオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の過酸化物が特に好ましい。
【0027】
〔成分D1〕
本発明におけるカルボン酸無水物である成分D1は、ラジカン発生存在下で開環反応を起こす観点から、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、2−ブテン−1−イルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、(2−メチル−2−プロペニル)コハク酸無水物、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、3又は4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3又は4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチル−3,6エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水コハク酸、3又は4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3又は4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチル−3,6エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が更に好ましい。
【0028】
〔成分D2〕
本発明における乳酸系ポリマーと反応可能な官能基を有する熱可塑性樹脂である成分D2は、乳酸系ポリマーの末端に存在するカルボン酸基や水酸基と反応可能な観点から、グリシジル基、オキサゾリン基、酸無水物基、イソシアネート基、アミノ基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、官能基ともいう)を有する熱可塑性化合物が好ましく、グリシジル基を有する熱可塑性化合物がより好ましい。
【0029】
成分D2は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、エチレン共重合体、ポリアミド、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を変性して得られる。また、成分D2はオレフィンモノマー、スチレンモノマー、アクリル酸モノマー等の重合性モノマーと、官能基を有する重合性モノマーとの共重合からも得られる。成分D2としては、オレフィンモノマーまたはエチレンと、官能基を有する重合性モノマーとを共重合させたものが好ましく、エチレンとエチレン性不飽和基を有するモノマーとを共重合させたものがより好ましい。
【0030】
エチレンと官能基を有する重合性モノマーの共重合体としては、エチレン60〜99質量%と、不飽和カルボン酸グリシジルエステル又は不飽和グリシジルエーテル化合物40〜1質量%とを共重合して得られるグリシジル基含有エチレン共重合体が好適である。
【0031】
不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びイタコン酸グリシジルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0032】
不飽和グリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル及びスチレン−p−グリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0033】
グリシジル基含有エチレン共重合体には、さらにエチレン系不飽和エステル化合物を共重合した三元以上の多元共重合体を用いることができる。エチレン系不飽和エステル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル及びα、β−不飽和カルボン酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、酢酸ビニル、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。三元共重合体の場合、エチレン由来の単位1、不飽和カルボン酸グリシジルエステル又は不飽和グリシジルエーテル化合物由来の単位2及びエチレン系不飽和エステル化合物由来の単位3の質量比(単位1/単位2/単位3)は35〜94/30〜1/35〜5とすることが好ましい。
【0034】
成分D2としては、エチレンとグリシジルメタクリレートからなる二元系グリシジル基含有エチレン共重合体、エチレンとグリシジルメタクリレートとメチルアクリレートからなる三元系グリシジル基含有エチレン共重合体、エチレンとグリシジルメタクリレートとエチルアクリレートからなる三元系グリシジル基含有エチレン共重合体、及びエチレンとグリシジルメタクリレートと酢酸ビニルからなる三元系グリシジル基含有エチレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0035】
〔本発明の製造方法及び樹脂組成物〕
本発明の製造方法について説明する。本発明の樹脂組成物は各成分を配合することにより得られる。配合方法としては溶融混練、溶媒中での混錬など様々な方法があり、発明の効果を損なわない範囲で任意の製造法を適用することができる。この中で特に二軸押出し機を用いた溶融混錬による製造方法が好ましい。以下その製法について一例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、連続的に一定量の原料を供給して一定時間溶融混練する観点から、供給機により各種成分を二軸押出し機に供給する工程、二軸押出し機のシリンダー及びダイ温度を130〜290℃に設定して溶融混練する工程を経て製造することが望ましい。またこのとき、揮発成分除去の観点から、二軸押出し機内を真空脱気装置で真空脱気しながら溶融混練することが好ましい。
【0037】
各成分は予めタンブラーもしくはヘンシルミキサーのような装置で均一混合してもよいし、必要がない場合は混合を省き、供給機に供給される。供給機とは二軸押出し機(以下「混練装置」という)に一定量の原料を供給しうる装置であり、混練装置に装備される。供給機の例としては定量フィーダー、一軸押出し機、または混練装置とは別個の二軸押出し機などがある。
【0038】
溶融混練においては、混練装置のシリンダー及びダイの設定温度は、ポリプロピレン系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマーの溶融温度および過酸化物の反応温度の観点から、130〜290℃とすることが好ましく、170〜260℃がより好ましい。溶融混練時間は、各成分の配合割合、溶融混練温度などにより異なり、一概に限定されるものではないが、1〜30分程度であることが好ましい。
【0039】
混練はすべての成分を一カ所に設けられた供給機から一緒に混練装置に供給してもよいし、あるいは混練装置の上流側と下流側に別個に供給機を配置し、各成分を別々に供給して混練することも可能である。また、いくつかの成分をあらかじめ混練してマスターバッチを作成し、次にこのマスターバッチを用いて他の成分との混練を実施することも可能である。
【0040】
本工程の溶融混練時においては、混練装置に真空脱気装置を設置し、真空脱気を行いながら溶融混練する場合もある。各成分を溶融混練する際に、真空脱気することにより、混練装置内での揮発成分、未反応成分などを除去すると本発明の樹脂組成物及び成形体の物性(流動性、耐熱性、靭性)を一層向上させられる。また揮発成分を除去することにより臭気のない樹脂組成物を得ることができる。特に、過酸化物や官能基を有する熱可塑性樹脂から発生する低分子物質のうち、反応しなかったものは組成物中に比較的低分子量の物質として残留することがある。従って、本発明の樹脂組成物及び成形体の物性をより安定に確保する観点から、真空脱気をすることにより、混練装置内での揮発成分、未反応成分などをできるだけ除去することが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法には、必要に応じてさらに、成分A〜C並びにD1及び/又はD2の他に、配合成分として無機充填剤を添加してもよい。無機充填剤としては、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ、石膏、ガラスフレーク、ホウ酸アルミニウムウィスカなどが挙げられる。本発明の製造方法には、必要に応じてさらに、成分A〜C並びにD1及び/又はD2の他に、配合成分として有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの添加剤を配合させてもよい。
【0042】
本発明の製造方法によって得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物のMFR(230℃、2.16kg、10分間)は、好ましくは10〜300g、より好ましくは20〜250g、更に好ましくは30〜200gであるため、成形性に優れた材料を提供できる。このように、本発明の製造方法によれば、実施例で示すように、プロピレン系ポリマーのMFRが1.5〜5g程度であっても、得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物のMFRは30〜200g程度となり、高い流動性を確保し、成形性が良好である。
【0043】
本発明の製造方法によって得られうるプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物のMFRの挙動が、どのような機構によっているかは定かではないが、成分A及びBを成分C並びにD1及び/又はD2の存在下で溶融混練することで、成分Bの周囲に成分D1及び/又はD2が存在し、成分Cで変性された成分Aが成分D1及び/又はD2と何らかの反応が起き、反応後に樹脂組成物の構成成分間で何らかの相互作用を引き起こしていると考えられる。詳細は現時点では明確に分かっていない。
【0044】
成分Cと成分A及びBとの反応としては、成分C(過酸化物)によって生じたラジカルが成分A(プロピレン系ポリマー)及びB(乳酸系ポリマー)のメチン基の水素原子を引抜き、ポリマー上に炭素ラジカルが発生することが考えられる。成分D1及び/又はD2はもともと成分Bと反応性を有するため、成分Bの周囲に成分D1及び/又はD2が存在する確率が高いことが予想され、その周囲に成分Cによって変性された成分Aが何らかの反応で成分D1及び/又はD2と相互作用が強くなり、その結果成分D1及び/又はD2を介して成分Aと成分Bとの相溶性が向上し、得られる樹脂組成物の特性が大幅に改良されると考えられる。
【0045】
本発明における成分Cの配合量は、流動性、実用上十分な耐熱性及び靭性のバランスを重視する観点から、成分A及びBの合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜1重量部、更に好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0046】
本発明における成分D1及びD2の配合量は、流動性、実用上十分な耐熱性及び靭性のバランスを重視する観点から、成分A及びBの合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.15〜2.5重量部、更に好ましくは0.2〜1重量部、特に好ましくは0.2〜0.5重量部である。
【0047】
本発明における成分D2の配合量は、実用上十分な靭性及び耐衝撃性を重視する場合は、成分A及びBの合計100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは2〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは10〜20重量部である。成分D2はガラス転移温度が低く低弾性率であると、相対的に耐熱性を低下させる場合があるが、実施例9〜11のような高い配合量の下において、一定の耐熱性を確保しつつ、破断伸びを大きく(10%以上)、衝撃強度を高く(10以上)することができる。
【0048】
〔本発明の成形体〕
本発明の樹脂組成物は射出成形、押出し成形、ブロー成形、中空成形、回転成形、トランスファー成形、熱プレス成形、チューブ成形等の周知の加工方法により、射出成形体、押出し成形体、ブロー成形体、中空成形体、回転成形体、トランスファー成形体、プレス成形体、チューブ成形体等に成形することができる。また、本発明の樹脂組成物を例えば、Tダイから溶融樹脂を押出し巻き取るTダイ法、環状ダイスを設置した押出し機から溶融樹脂を円筒状に押出し、冷却し巻き取るインフレーション成膜法、あるいは、熱プレス法や溶媒キャスト法により、フィルムまたはシートとして成形品を得ることもできる。
【0049】
本発明の樹脂組成物は高流動性、実用上十分な耐熱性及び靭性を有し、かつ安価であることから、産業界で幅広く適用することができる。例えば、電気・電子機器部品、通信機器部品、家電部品、自動車内外装部品として好適である。
【0050】
自動車内外装部品の例としては自動車外板、ドア、ドアトリム、クォータートリム、バンパー、インスツルメンツパネル、フロントエンドモジュール、エアバッグ周辺部品、コックピット、ファンシュラウド、ラジエータークーリングファン、リザーブタンク、自動車用ホイールカバー、カウジング、ウインドウオッシャー液タンク、スポイラー、インスツルメントパネル、ボンネット、燃料ポンプハウジング、エアクリーナー、スロットボディ、インテークマニフィールド、ヒーターハウジング、ボンネット、ピラー、安全ベルト部品などの自動車部品が含まれる。
【0051】
その他にも、本発明の樹脂組成物は、家電部品、包装材、建築用内装材、コンテナ、フィルム、シート、ボトル、ハウジング、機械部品、繊維などへ幅広く適用することができる。
【実施例】
【0052】
(配合原料)
(1)成分A(プロピレン系ポリマー)
(1−1)成分A1:
プロピレンのホモポリマー(ノーブレンH501、住友化学株式会社製)
MFR(230℃、2.16kg荷重)=3.3g/10min
(1−2)成分A2:
ブロックコポリマー(AH561、住友化学株式会社製)
MFR(230℃、2.16kg荷重)=3.0g/10min
【0053】
(2)成分B(乳酸系ポリマー)
(2−1)成分B1:
PLA4032D(NatureWorks製)
MFR(190℃、2.16kg荷重)=2.8g/10min
(2−2)成分B2:
PLA3251D(NatureWorks製)
MFR(190℃、2.16kg荷重)=35g/10min
(2−3)成分B3:
REVODE101(Zhejiang Hisum Biomaterials製)
MFR(190℃、2.16kg荷重)=22g/10min
【0054】
(3)成分C(過酸化物)
成分C1:パークミルD(日油株式会社製)
【0055】
(4)成分D1(無水カルボン酸)
成分D1−1:無水マレイン酸(日油株式会社)
【0056】
(5)成分D2(官能基を有する熱可塑性樹脂)
成分D2−1:ボンドファスト 7L(住友化学株式会社製)
組成は、エチレン由来の単位1/グリシジルメタクリレート由来の単位2/アクリル酸メチル由来の単位3=70/27/3(質量比)。
【0057】
(実施例1)
成分A1(4kg)、成分B1(1kg)、成分C1(10g)及び成分D1−1(12.5g)をあらかじめ均一混合したものを定量フィーダーにより二軸押出し機(パーカー製HK25D、25mm径、L/D=40、同方向回転)で溶融混練した。シリンダー温度は200℃、スクリュー回転数200rpm、押出し量5kg/時間とした。得られたストランド状押出し物を定法により切断しペレット形状を得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1の成分C1と成分D1−1をアセトン50gに溶解し、スプレーを用いて溶液を成分A1に拭きつけ、均一に分散後、アセトンを乾燥除去した。その後成分B1を加え、ドライブレンドで均一に混合したものを実施例1と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例2と同様な方法で成分B1を成分B2に置き換えて混合したものを実施例2と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0060】
(実施例4)
実施例2と同様な方法で成分B1を成分B3に置き換えて混合したものを実施例2と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0061】
(実施例5)
実施例2と同様な方法で成分A2を用いて混合したものを、実施例2と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0062】
(実施例6)
実施例2と同様な方法で成分C1を20g、成分D1−1を25g用いて混合したものを実施例2と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1と同様な方法で成分A1を3.5kg、成分B1を1.5kg混合したものを実施例1と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1と同様な方法で成分A1を3kg、成分B1を2kg混合したものを実施例1と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0065】
(実施例9)
成分A1(2.5kg)、成分B1(2kg)、成分C1(5g)及び成分D2−1(0.5kg)をあらかじめ均一混合したものを定量フィーダーにより二軸押出し機(日本製鋼所株式会社製 TEX30α、30mm径、L/D=40、同方向回転)で溶融混練した。シリンダー温度は200℃、スクリュー回転数200rpm、押出し量5kg/時間とした。得られたストランド状押出し物を定法により切断しペレット形状を得た。
【0066】
(実施例10)
成分A1(2kg)、成分B1(2.5kg)、成分C1(5g)及び成分D2−1(0.5kg)をあらかじめ均一混合したものを実施例1と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0067】
(実施例11)
成分A1(2.25kg)、成分B1(2kg)、成分C1(5g)及び成分D2−1(0.75kg)をあらかじめ均一混合したものを実施例1と同様に定量フィーダーを用いて押出し混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0068】
(比較例1)
ノーブレンH501(2kg)、パークミルD(5g)及び無水マレイン酸(6.2g)をあらかじめ均一混合したものを定量フィーダーにより二軸押出し機(パーカー製HK25D、25mm径、L/D=40、同方向回転)で溶融混練した。シリンダー温度は200℃、スクリュー回転数200rpm、押出し量5kg/時間とした。得られたストランド状押出し物を定法により切断しペレット形状のマレイン酸変性ポリプロピレンを得た。次に、成分A1(3.5kg)、マレイン酸変性ポリプロピレン(0.5kg)、成分B1(1kg)をあらかじめ均一混合したものを定量フィーダーにより二軸押出し機(パーカー製HK25D、25mm径、L/D=40、同方向回転)で溶融混練した。シリンダー温度は200℃、スクリュー回転数200rpm、押出し量5kg/時間とした。得られたストランド状押出し物を定法により切断しペレット形状のポリプロピレン/マレイン酸変性ポリプロピレン/乳酸系ポリマー樹脂組成物を得た。
【0069】
実施例1〜11及び比較例1で得られたペレットを射出成形により成形体(試験片)を作成した。射出成形には、実施例1〜8では、日本精工株式会社製FNX140を使用し、実施例9〜11では、射出成形には東洋機械金属工業株式会社製PLASTER Si-130IIを使用し、射出時間30秒、冷却時間20秒、金型温度40〜50℃、シリンダー設定温度150〜180℃とした。試験片の特性評価として、以下を行った。
【0070】
(1)荷重たわみ温度(HDT)
東洋精機製作所株式会社製HDTテスターS−3Mを用いて、射出成形した短冊状樹脂試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm)を、荷重0.45MPa、昇温速度120℃/時間でISO75に準拠して測定した。
【0071】
(2)引張強度及び破断伸び
射出成形したダンベル形状試験片(長さ170mm、厚さ4mm、くびれ部の幅10mm)を、インストロン製5566試験機を用いて、ISO527に準拠して、引張速度50mm/min、試験温度23℃、チャック間距離115mmの条件で試験した。
【0072】
(3)MFR
東洋精機製作所株式会社製メルトインデックサF−F01を用いて、予熱時間4分、試験温度230℃、荷重2.16kgの条件でペレット形状のままのサンプルを測定した。
【0073】
(4)シャルピー衝撃試験
東京衡機製作所株式会社製の竪型を用いて、JIS K7111 フラットワイズB法の条件で測定した。試験片は、厚み10mm×幅3.9mm×長さ80mm、成形ノッチ2.0mm、先端0.25R、試験片支持台間距離60mm、持上げ角度150°、秤量3.0Jとした。
【0074】
(5)吸湿劣化試験
50℃/相対湿度95%の恒温槽に48時間吸湿処理後、引張強度及び伸びを上記と同じ条件で測定した。
【0075】
得られた結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物はMFRが高く流動性に優れるため、成形性に優れているのが特徴である。また、本発明の製造方法により得られた樹脂組成物は、実用上十分な耐熱性及び靭性を有しているのが特徴である。さらに、乳酸系ポリマーをプロピレン系ポリマーと同量にまで配合できるため、燃焼時に発生する二酸化炭素量を抑制性も良好であると考えられる。乳酸系ポリマーをプロピレンポリマーとほぼ同量まで配合しても吸湿後の機械特性がほとんど変化しないのが本発明の特徴である。一方、比較例1のポリプロピレン/マレイン酸変性ポリプロピレン/乳酸系ポリマー樹脂組成物は、二段階で樹脂組成物を作製するため、製造工程が煩雑になり、作業性が低下し、得られたポリプロピレン/マレイン酸変性ポリプロピレン/乳酸系ポリマー樹脂組成物のMFRが低く流動性が低いため、成形性が十分ではない。また乳酸系ポリマーは少ないにもかかわらず吸湿後の破断伸びが低下する現象がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のプロピレン系ポリマー/乳酸系ポリマー樹脂組成物はポリプロピレン系ポリマー本来の成形性、特性を損なわずに、流動性、実用上十分な耐熱性及び靭性など様々な特性に優れ、かつ乳酸系ポリマーを用いることにより植物度の高い燃焼時に発生する二酸化炭素量を抑制できる材料を提供でき、軽量で安価な材料として環境負荷低減に貢献できる。従って本発明の樹脂組成物は、自動車内外装部品をはじめとして多くの産業分野に幅広く、大きく貢献することができる。