【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギーイノベーションプログラム・革新的ガラス溶融プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から9の何れか一項に記載のガラス溶融炉と、前記ガラス溶融炉により製造された溶融ガラスを成形する成形手段と、前記成形後のガラス製品を冷却する冷却手段とを備えるガラス製品の製造装置。
請求項10から14の何れか一項に記載の溶融ガラスの製造方法を用いて前記ガラス原料粒子を焼結後に溶融ガラスを製造する工程と、前記溶融ガラスを成形する工程と、前記成形後のガラス製品を冷却する工程とを含むガラス製品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
以下、本発明のガラス溶融炉を中心として、溶融ガラスの製造方法、ガラス製品の製造装置およびガラス製品の製造方法の第一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のガラス溶融炉10は、いわゆる気中溶融法により溶融ガラスGを製造する。ガラス溶融炉10は、例えば目的とするガラスの組成に合わせてガラスの各成分の原料粉末を混合して集合させたガラス原料粒子(造粒体)GMを、炉体1内の高温の気相雰囲気中に投入して溶融させることで溶融ガラス粒子Uとする。溶融ガラス粒子Uは、炉体1の底部に集積して液相の溶融ガラスGを形成する。ガラス溶融炉10は、成形装置20を含むガラス製品の製造装置30の一部を構成する。
「気相雰囲気」とは、気中溶融法において燃焼バーナーなどの加熱装置によって炉内に形成される高温の雰囲気であって、炉内のその他の領域の雰囲気とは区別されるものである。例えば、加熱装置が燃焼バーナーの場合には、火炎を含む高温の領域をいう。加熱装置が熱プラズマの場合には、プラズマが発生している高温の領域をいう。
【0014】
ガラス溶融炉10は、例えば直方体形状の中空箱型の炉体1と、炉体1の後述する上方突出部1cの上端部(底部1d)に設置された原料粒子投入装置5(以下、本明細書において、「原料粒子投入装置」を「原料粒子投入部」とも称する。)と、上方突出部1cの下端部の周囲に設置された複数(
図1では二基)の燃焼バーナー7(加熱装置)とを備える。
【0015】
炉体1は、耐火レンガ等の耐火材で壁部を構成するもので、その内部に高温の気相雰囲気を収容すると共に、下部内に高温の溶融ガラスGを貯留する。
炉体1の下部における溶融ガラスGを貯留する貯留部1bは、燃焼バーナー7からの加熱や、必要に応じて不図示の加熱ヒータにより、貯留した溶融ガラスGを所定温度(例えば1400℃程度)の溶融状態に維持する。
【0016】
炉体1の図中左側の側壁部には、排気口2および排気管2aを介して排ガス処理装置3が接続される。炉体1(貯留部1b)の図中右側の側壁部には、導出口4及び導出路4aを介して成形装置20が接続される。
貯留部1b内の溶融ガラスGは、導出口4から炉外に導出され、導出路4aを経て成形装置20に送られる。ガラス製品の製造装置30および製造方法については後述する。
【0017】
炉体1は、上壁部1aの一部(例えば平面方向の中央部)を上方に変位させるように形成された上方突出部1cを有する。上方突出部1cは、鉛直方向に沿う中心軸線(以下、単に軸線という。)C1を有する有底筒状をなし、底部1dを上側にして下方(炉内)に開放するように設けられる。上方突出部1cの軸線C1は、第一実施形態では炉体1の中心軸線(以下、単に軸線という。)C2と同軸である。
【0018】
上方突出部1cは、水平方向の幅よりも上下長さが長く形成される。上方突出部1cの底部1d(上端部)には、上方突出部1c内(炉内)に向けて鉛直方向下向きに原料投入口5aを開口させる筒状の原料粒子投入装置5が設けられる。
【0019】
原料粒子投入装置5は、例えば金属またはセラミック等からなる単管構造をなし、その中心軸線(以下、単に軸線という。)C1’を上方突出部1cの軸線C1と同軸にして配置される。原料粒子投入装置5の下端には原料投入口5aが開口する。原料粒子投入装置5の下端部は上方突出部1cの底部1dを貫通し、上方突出部1c内に向けて原料投入口5aを開口させる。原料投入口5aからは、上方突出部1c内へ軸線C1,C1’に沿ってガラス原料粒子GMが噴出される。軸線C1,C1’はガラス原料粒子GMの投入方向に沿う直線でもある。上方突出部1cの上端部に原料投入口5aが配置されることで、縦長の上方突出部1c内のガラス原料粒子GMの通過時間を長くすることができる。
【0020】
上方突出部1cは、その内部の雰囲気K’(気相雰囲気以外の雰囲気。すなわち、この雰囲気K’はガラス原料粒子GMの焼結化を進行させる雰囲気であり、「焼結処理雰囲気」とも称する。)中でガラス原料粒子GMを焼結処理する焼結部60を構成する。焼結部60は、上壁部1aの下方で燃焼バーナー7による気相雰囲気Kを収容する溶融部50よりも小さい水平断面を有する。原料投入口5aから焼結部60に投入されたガラス原料粒子GMは、雰囲気K’中を通過しつつ焼結処理がなされた後、続けて溶融部50内の気相雰囲気K中に投入される。
焼結部60は、溶融部50よりも上方に位置し、溶融部50よりも水平断面が小さく、かつその溶融部と連通することで、気相雰囲気の熱の一部を用いてガラス原料粒子を焼結する雰囲気が形成されるように、原料投入口5aを臨む位置に、すなわち原料投入口5aと面し、かつ原料投入口5a連通するように、設けられている。
【0021】
溶融部50よりも水平断面が小さい焼結部60を用いることで、ガラス原料粒子GMの拡散が抑えられて効率よく焼結処理が行われる。
ガラス原料粒子GMは、溶融部50で燃焼バーナー7の噴射方向に形成された気相雰囲気Kによって溶融して溶融ガラス粒子Uとなり、炉体1の貯留部1bに集積されて溶融ガラスGとなる。
【0022】
原料粒子投入装置5の上部側(すなわち、軸方向で原料投入口5aと反対側)には、供給管9を介して原料供給器8が接続される。原料供給器8は、ガラス原料粒子GMを収容したホッパを有する。供給管9には、例えば不図示のキャリアガス供給源からキャリアガスが供給される。このキャリアガスによって、ガラス原料粒子GMがホッパ側から原料粒子投入装置5側へ搬送される。
【0023】
原料粒子投入装置5は、キャリアガスと共にガラス原料粒子GMを上方突出部1c内へ噴出する。なお、キャリアガスによらず原料粒子投入装置5から自由落下によりガラス原料粒子GMを投入する構成でもよい。原料粒子投入装置5を燃焼バーナー7と別に設けることで、燃焼バーナー7の燃焼条件によらず種々のガスを利用でき、炉内雰囲気の成分調整が容易である。原料粒子投入装置5は水冷構造を備えてもよい。
【0024】
燃焼バーナー7は、例えば燃料供給ノズルおよび酸素供給ノズルが適切に配置された既存の酸素燃焼バーナーであり、上方突出部1cの周囲で炉体1の上壁部1aに設けられる。燃焼バーナー7は筒状をなし、その中心軸線(以下、単に軸線という。)C3を下側ほど原料粒子投入装置5の軸線C1に近付けるように鉛直方向に対して傾斜して配置される。燃焼バーナー7の下端には火炎噴射口7a(すなわち、エネルギー放出部)が開口する。エネルギー放出部とは、加熱装置において気相雰囲気を形成するためにエネルギーである熱やプラズマなどを放出する出口をいう。軸線C3は燃焼炎Fの噴射方向に沿う直線でもある。燃焼バーナー7の下端部は上壁部1aを貫通し、上壁部1a下方の炉内に向けて斜め下向きに火炎噴射口7aを開口させ、軸線C3に沿って燃焼炎Fを噴射する。
【0025】
各燃焼バーナー7は、例えば炉体1の軸線C2に関して回転対称に配置される。各燃焼バーナー7は、例えば互いの軸線C3が炉体1の軸線C2及び原料粒子投入装置5の軸線C1’上で交差するように配置される。なお、各燃焼バーナー7は、
図1の側面視での傾斜のみならず、軸線C2を中心とした回転方向でも傾斜してよい。燃焼バーナー7の設置数は二基に限定されず、三基以上であることも好ましい。燃焼バーナー7は、気相雰囲気の温度の対称性(すなわち、均一性)を向上させる観点から、軸線C2を中心とした回転方向で等間隔に複数配置することが好ましい。燃焼バーナー7に加え、気相雰囲気を形成する加熱装置として、熱プラズマを発生させる一対以上の電極で構成される多相アークプラズマ発生装置をさらに備えてもよい。
【0026】
各燃焼バーナー7の火炎噴射口7aは、原料粒子投入装置5の原料導入口とは離隔して配置される。各燃焼バーナー7の火炎噴射口7aと原料粒子投入装置5の原料導入口との距離の詳細は後述する。
【0027】
燃焼バーナー7の火炎噴射口7aと原料粒子投入装置5の原料導入口とが離隔することで、燃焼バーナー7の火炎噴射口7aへのガラス原料粒子GMの付着が抑えられ、燃焼バーナー7の燃焼炎Fが不安定になったり火炎噴射口7aが閉塞したりすることがない。また、火炎噴射口7aへの付着物が炉内の溶融ガラスGに落下することもなく、付着物とガラス融液との組成差によるガラスの不均質化が抑えられ、高品質の溶融ガラスGが得られる。
【0028】
また、原料粒子投入装置5が燃焼バーナー7とは別の単管構造をなすことで、ガラス原料粒子GMの粒子径の制約が小さく、所定の粒子径以上のガラス原料粒子GMを用いることが可能となり、ガラス溶融炉10内での煤塵(粉塵)の発生が抑制される。ガラス原料粒子GMの煤塵が少ないと排ガスと共に排出され難く、原料の回収率も高くなる。
【0029】
燃焼バーナー7は、燃焼炎Fの噴射方向先端側(
図1では下方側)に気相雰囲気Kを形成する。気相雰囲気Kは、燃焼バーナー7が噴射する燃焼炎Fおよび燃焼炎F近傍の高温部からなる。燃焼バーナー7の火炎噴射口7aは、ガラス溶融炉10の上壁部1aの下面近傍に配置される。ガラス溶融炉10内における火炎噴射口7aおよび上壁部1aよりも上方の上方突出部1c内(すなわち、焼結部60内)には、燃焼炎Fの熱の対流や輻射を受けて、ガラス原料粒子GMの焼結化を進行させる雰囲気K’が形成される。
【0030】
燃焼バーナー7の燃焼炎Fの温度は、ガラス原料粒子GMに含まれる気体成分を迅速にガス化散逸させてガラス化反応を進行させるために、珪砂の溶融温度以上である1600℃以上に設定することが好ましい。
燃焼バーナー7から噴射される燃焼炎Fが形成する気相雰囲気Kの中心部の温度は、燃焼炎Fが例えば酸素燃焼炎の場合、約2000℃であり、熱プラズマの場合には5000〜20000℃に達する。一方、上方突出部1c内に形成される雰囲気K’の中心部の温度は、約1000〜1300℃である。
【0031】
原料粒子投入装置5の上方突出部1cの軸線C1と燃焼バーナー7の軸線C3とが形成する、側面視で上方に向けて開放する角度αは、10〜50°の範囲の角度、例えば45°程度の角度とされる。これにより、焼結部60から気相雰囲気K中に投下されたガラス原料粒子GMは、各燃焼バーナー7から斜め下向きに噴射された燃焼炎F内を比較的長時間に渡って通過し、効率よく溶融ガラス粒子Uとなる。
【0032】
本実施形態のガラス溶融炉10を用いて製造する溶融ガラスGは、気中溶融法により製造されるガラスである限り、組成的には特に制限されない。
【0033】
建築用または車両用の板ガラスに使用されるソーダライムガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:65〜75%、Al
2O
3:0〜3%、CaO:5〜15%、MgO:0〜15%、Na
2O:10〜20%、K
2O:0〜3%、Li
2O:0〜5%、Fe
2O
3:0〜3%、TiO
2:0〜5%、CeO
2:0〜3%、BaO:0〜5%、SrO:0〜5%、B
2O
3:0〜5%、ZnO:0〜5%、ZrO
2:0〜5%、SnO
2:0〜3%、SO
3:0〜0.5%、という組成を有することが好ましい。
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
【0034】
液晶ディスプレイ用または有機ELディスプレイ用の基板に使用される無アルカリガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:39〜75%、Al
2O
3:3〜27%、B
2O
3:0〜20%、MgO:0〜13%、CaO:0〜17%、SrO:0〜20%、BaO:0〜30%、という組成を有することが好ましい。
【0035】
プラズマディスプレイ用の基板に使用される混合アルカリ系ガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:50〜75%、Al
2O
3:0〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:6〜24%、Na
2O+K
2O:6〜24%、という組成を有することが好ましい。
【0036】
その他の用途として、耐熱容器または理化学用器具等に使用されるホウケイ酸ガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:60〜85%、Al
2O
3:0〜5%、B
2O
3:5〜20%、Na
2O+K
2O:2〜10%、という組成を有することが好ましい。
その他のガラス組成としては、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2の含有量が5〜75%、Al
2O
3の含有量が7〜60%、CaOの含有量が7〜60%を含み、これらの総和が90%以上で構成されてもよい。この組成のガラスにおいては、造粒体の製造において、原料粉末粒子から造粒体を形成する際の結合剤のような働きをする成分が少なくなりやすいが、本実施形態の方法によれば、ガラス溶融炉内の焼結部で造粒体が焼結するため、前記組成のガラスを造粒体として使用して溶融ガラスの製造ができる。
【0037】
ガラス原料粒子GMが造粒体である場合で、その一例として無アルカリガラスを適用する場合には、珪砂、アルミナ(Al
2O
3)、ホウ酸(H
3BO
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3)、炭酸バリウム(BaCO
3)などの原料粉末粒子を目的のガラスの組成比に合致するように調合し、例えばスプレードライ造粒法により集合することにより30〜1000μm程度の造粒体として、ガラス原料粒子GMを得る。
また、この造粒体は目的とするガラスの成分組成に対応する混合比の原料のみで構成してもよいが、その造粒体に更に同一組成のガラスカレット微粉を混合して、これをガラス原料粒子GMとして用いることもできる。
【0038】
スプレードライ造粒によりガラス原料粒子GMを得るための一例方法として、上述の各成分のガラス原料粉末粒子として2〜500μmの範囲のガラス原料粉末粒子と蒸留水などの溶媒とをボールミルなどの攪拌装置で所定時間攪拌し、混合し、粉砕してスリラーにしたのちにスプレードライ造粒することで、上述の各成分のガラス原料粉末粒子がほぼ均一に分散されたガラス原料粒子GMが得られる。
【0039】
なお、前述のスラリーを攪拌装置で攪拌する際、原料粉末粒子の均一分散の目的で2−アミノエタノールなどの分散剤を、造粒原料の強度を向上させる目的で、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダーを混合してから攪拌してもよい。
本実施形態において用いるガラス原料粒子GMは、上述のスプレードライ造粒法の他に、転動造粒法、攪拌造粒法などの乾式造粒法により形成することもできる。
【0040】
ガラス原料粒子GMの平均粒径(重量平均)は、30〜1000μmの範囲が好ましい。より好ましくは、平均粒径(重量平均)が50〜500μmの範囲内のガラス原料粒子GMが使用され、さらに70〜300μmの範囲内のガラス原料粒子GMが好ましい。このガラス原料粒子GMの一例を拡大して
図1に示すが、1つのガラス原料粒子GMにおいて最終目的とするガラスの組成比にほぼ合致するか近似した組成比となっていることが好ましい。
【0041】
ガラス原料粒子GMが溶融した溶融ガラス粒子Uの平均粒径(重量平均)は、通常ガラス原料粒子GMの平均粒径の80%程度となることが多い。ガラス原料粒子GMの粒径は、短時間で加熱でき、発生ガスの放散が容易である点、および粒子間の組成変動の低減の点から、前述の範囲を選択することが好ましい。
【0042】
また、これらのガラス原料粒子GMは、必要に応じて、副原料として清澄剤、着色剤、溶融助剤、乳白剤等を含むことができる。また、これらのガラス原料粒子GM中のホウ酸などは、高温時の蒸気圧が比較的高いため加熱により蒸発しやすいことから、最終製品であるガラスの組成よりも余分に混合しておくことができる。
【0043】
本実施形態において、副原料として清澄剤を含有する場合、塩素(Cl)、硫黄(S)、フッ素(F)の中から1種または2種以上の元素を選択して含む清澄剤を必要量添加することができる。その他の清澄剤として、酸化スズ(SnO
2)を用いることができる。
また、従来から用いられているSb、As酸化物などの清澄剤は、泡削減効果が生じたとしても、これら清澄剤の元素は環境負荷低減の面で望ましくない元素であり、それらの利用は環境負荷低減の方向性から見て削減することが好ましい。
【0044】
図1に示すように、本実施形態のガラス溶融炉10を備えたガラス製品の製造装置30は、ガラス溶融炉10で製造した溶融ガラスGを所定の速度で導出口4から導出し、必要に応じ不図示の脱泡装置に導入してさらに脱泡した後、成形装置20に移送して目的の形状に成形する。成形後のワーク(成形品)は、冷却後に切断等の機械加工を経て、所定のガラス製品となる。このガラス製品は、ガラス溶融炉10で製造した高品質の溶融ガラスGにより形成されるため、均質で高い品質が得られる。
【0045】
前述した本発明のガラス溶融炉を用い、炉内の高温雰囲気中でガラス原料粒子を溶融した後にこれを集積して溶融ガラスとする第1の実施形態の溶融ガラスの製造方法は、以下の各ステップを有する。
(1−1)ガラス溶融炉の炉体内にガラス原料粒子を溶融する気相雰囲気を形成し、その気相雰囲気を収める溶融部でガラス原料粒子を溶融する溶融ステップ。
(2−1)溶融ステップ前に、溶融部よりも上方に位置すると共にその溶融部よりも水平断面が小さくかつその溶融部と連通する焼結部にて、気相雰囲気の熱の一部を用いて形成される焼結処理雰囲気でガラス原料粒子を焼結する焼結ステップ。
(3−1)焼結ステップ前に、焼結部に臨む原料投入口からその焼結部にガラス原料粒子を投入する投入ステップ。
【0046】
また、前述した本発明のガラス溶融炉を用い、炉内の高温雰囲気中でガラス原料粒子を溶融した後にこれを集積して溶融ガラスとする第2の実施形態の溶融ガラスの製造方法は、以下の各ステップを有する。
(1−2)ガラス溶融炉内にガラス原料粒子を投入する投入ステップ。
(2−2)ガラス原料粒子を炉内の気相雰囲気を通過させて溶融する溶融ステップ。
(3−2)投入ステップ後から溶融ステップ前のガラス原料粒子を気相雰囲気による熱の一部によって形成された焼結処理雰囲気によって焼結させる焼結ステップ。
(4−2)溶融ステップで溶融したガラス原料粒子をガラス溶融炉の底部に集積して溶融ガラスとする集積ステップ。
上記した第1の実施形態および第2の実施態様に係る溶融ガラスの製造方法においては、投入ステップは、焼結ステップが行われる空間領域の上方で行われることが好ましい。
また、溶融ステップは、焼結ステップが行われる空間領域の下方で行われることが好ましい。
【0047】
図5は、本実施形態の溶融ガラスの製造方法を用いたガラス製品の製造方法の一実施形態を示すフロー図である。
本実施形態のガラス製品の製造方法は、ガラス溶融炉10を用いた溶融ガラスの製造方法によるガラス溶融工程S1を経た後、ガラス溶融工程S1で得た溶融ガラスGを成形装置20に送って目的の形状に成形する成形工程S2を実施する。成形工程S2で得た成形品は、例えば空冷の徐冷装置21による徐冷工程S3で冷却した後、切断工程S4で必要な長さに切断することで、所定のガラス製品G5となる。
【0048】
なお、前述したガラス製品の製造方法(およびガラス製品の製造装置30)は、必要に応じて、成形工程S2で得た成形品、徐冷工程S3で得た徐冷品、あるいは切断工程S3で得た切断品を、研磨する研磨工程(および研磨装置)を有してもよい。また、ガラス製品G5の泡品質に応じて、例えば導出路4aで溶融ガラスGの脱泡を行う脱泡工程(および脱泡装置)を有してもよい。
【0049】
ここで、ガラス原料粒子GMが造粒体からなる場合、その一粒一粒が溶融して溶融ガラス粒子Uとなるが、燃焼バーナー7の燃焼炎F(フレーム)中に造粒体が直接投入されると、火炎噴射流の勢いや原料の急速な熱分解によるガス放出により溶融ガラス粒子Uになる前に造粒体が崩壊することがある。造粒体の崩壊は、ガラス製品の均質化および煤塵(粉塵)の低減に影響を及ぼす。ガラス原料粒子GMの煤塵が多いと、この煤塵が排ガスと共に排出され易く、原料の回収率も低くなる。
【0050】
そこで本実施形態では、造粒体が燃焼バーナー7の燃焼炎Fに至る前に、造粒体を、炉内の上方突出部1c内の焼結部60の雰囲気K’中に投入し、造粒体の焼結による高強度化を図った上で、燃焼バーナー7の火炎噴射方向に形成された気相雰囲気K中に投入する。これにより、燃焼バーナー7の燃焼炎F(フレーム)中に造粒体が投入されてもその崩壊が抑えられ、ガラス製品の均質化および煤塵の低減が図られる。ガラス原料粒子GMの煤塵も少なくなり、原料が排ガスと共に排出され難くなって原料の回収率も高くなる。
【0051】
雰囲気K’は、ガラス溶融炉10の炉体1内で燃焼炎Fの熱の対流や輻射を利用して形成される。このため、別途加熱源を有する場合や、炉体1の外で焼結する場合と比べて、消費エネルギーの増加が抑えられる。
なお、ガラス原料粒子GMの焼結化のために、炉体1の外で造粒体を静置して造粒体の焼結温度にとって好ましい1000℃程度の温度に加熱し焼結させる方法も考えられるが、この場合、複数の造粒体が結合した塊が生じ易いため、回転キルンや高温雰囲気中に噴霧して焼結させる必要があり、手間もかかる。また、ガラス溶融炉の排ガスを利用する方法で1000℃程度の温度の焼結の雰囲気を形成するには、温度的に困難である。また、別途加熱源を設定すると、エネルギー負荷が増加して気中溶融法のメリットが相対的には薄れる。
【0052】
そこで本実施形態では、燃焼バーナー7の下向きの火炎噴射流が至らない炉体1の上端部内(すなわち、上方突出部1c内の焼結部60内)に、炉内の比較的高温の気相雰囲気Kのエネルギーを利用した雰囲気K’を形成する。炉内に投入された造粒体は、上方突出部1c内を飛翔中に焼結処理がなされた後、燃焼バーナー7が形成する気相雰囲気K中に至る。造粒体は、酸素燃料バーナー7のフレームに至るまでの間に、炉内の雰囲気K’に可及的に長時間さらされることで、焼結による高強度化が図られる。上方突出部1cの外部は、断熱をすることが好ましい。
【0053】
これにより、焼結がなされない造粒体が燃焼バーナー7の火炎噴射流に直接投入される場合と比べて、造粒体の崩壊が抑えられる。炉内のエネルギーを利用して雰囲気K’を形成することで、別途加熱源を設定する場合と比べて消費エネルギーの増加が抑えられる。造粒体がその形態を保つことで、ガラス化反応が促進されてガラス製品が良好に均質化される。雰囲気K’を形成する上方突出部1cが炉体1の上壁部1aから部分的に突出することで、炉体1の上壁部1aの高さが抑えられる。
なお、雰囲気K’の温度が不足する場合のために、焼結部60での焼結を補助するための加熱源を設けてもよい。例えば、高周波誘導加熱装置の一例である高周波誘導コイルを利用できる。この場合には、この加熱源によって消費エネルギーが増加するものの、少なくとも炉体1の外で造粒体を焼結する場合に比べて消費エネルギーが低くメリットがある。
【0054】
本発明者らは、CaO−Al
2O
3−SiO
2系組成(CAS系ガラスという)の造粒体を前述のスプレードライ造粒法により造粒し、未熱処理のものと1000℃で5時間の熱処理(焼結処理)を施したものとで、気中溶融法によってガラス化させた粒子の比較を行った。なお、焼結時間を長くしているのは、比較を行った造粒体の量が多かったため、造粒体を十分に焼結させるためであり、焼結部で造粒体の焼結のために必要な時間とは無関係である。
その結果、未熱処理の造粒体を用いた場合には、前記した無アルカリ系ガラスの造粒体に比べて原料粉末粒子同士をつなぐ結合剤のような働きをする成分が少ないため溶融後のガラスの回収率は50〜60%と低く、煤塵として排出された割合が多かった。一方、焼結処理後の造粒体を用いた場合には、原料粉末粒子同士をつなぐ結合剤のような働きをする成分が少ないにも関わらず回収率は80〜90%と高く、煤塵として排出された割合が少なかった。
【0055】
表1は、前記CAS系ガラスの組成を示す。以下、CAS系ガラスのベースとなる表1の組成の造粒体を本実施形態の装置及び方法に使用した際の検討を行った。
【0057】
図6は、例えば焼結前の造粒体の嵩密度1g/cm
3で直径1mmの造粒体を熱処理した際の造粒体の直径及び嵩密度の変化を示すグラフである。本図より、嵩密度1g/cm
3で大きさ1mmの造粒体を焼結させると、嵩密度約2g/cm
3で直径約0.8mmの造粒体に変化することがわかる。但し、焼結した造粒体の嵩密度は目的のガラスの密度を超えることはない。
【0058】
図7は、造粒体が1300℃の雰囲気中(Tg)を通過する際に1000℃に加熱(Tp)されて焼結するまでに必要な造粒体の移動距離を示すグラフである。造粒体の移動距離は、各燃焼バーナー7の火炎噴射口7aの中心と原料粒子投入装置5の原料導入口の中心との間を造粒体が飛翔する距離に相当する。図中、実線は嵩密度1g/cm
3の造粒体の特性を、図中、点線は嵩密度1.5g/cm
3の造粒体の特性を、図中、一点鎖線は嵩密度2.0g/cm
3の造粒体の特性をそれぞれ示す。例えば、
図7の実線上の点Pは、嵩密度1g/cm
3で直径1mmの造粒体が1300℃の雰囲気中を0.8m進むと1000℃になることを示す。
以下、前記移動距離を求めた式を数1に、数1に用いるパラメータを表2にそれぞれ示す。具体的には、火炎中の粒子速度vを時間tについて所定時間積分して移動距離を求め、粒子の温度はTpのtに所定時間を代入して求めた。
【0061】
以上の結果を参照して、ガラス原料粒子GMの直径と雰囲気K’の移動距離とを設定することで、造粒体の焼結により高強度化を図った上で、造粒体を燃焼バーナー7の燃焼炎Fによる気相雰囲気K中に投入可能となり、造粒体の崩壊を抑えることができる。
【0062】
以上説明したように、上記実施形態におけるガラス溶融炉10は、炉内の高温雰囲気中でガラス原料粒子GMを溶融した後にこれを集積して溶融ガラスGとするものにおいて、中空の炉体1と、前記炉体1内に火炎を噴射して前記ガラス原料粒子GMを溶融する気相雰囲気Kを形成する燃焼バーナー7と、前記燃焼バーナー7の火炎噴射口7aよりも上方に位置する原料投入口5aから前記炉体1内に前記ガラス原料粒子GMを投入する原料粒子投入装置5とを備え、前記炉体1が、前記気相雰囲気Kを収める溶融部50よりも上方に焼結部60を有し、前記焼結部60が、前記溶融部50よりも水平断面が小さく、かつ前記溶融部50と連通することで、前記気相雰囲気Kの熱の一部を用いて前記ガラス原料粒子GMを焼結する雰囲気K’を形成し、前記原料粒子投入装置5が、前記焼結部60に前記ガラス原料粒子GMを投入し、前記雰囲気K’を経て前記気相雰囲気Kに前記ガラス原料粒子GMを至らしめるものである。
【0063】
この構成によれば、ガラス原料粒子GMに造粒体を用いる場合でも、炉体1内に投入されて飛翔中のガラス原料粒子GM(造粒体)を雰囲気K’で焼結した後に、気相雰囲気Kに至らしめることができる。このため、燃焼バーナー7の火炎及びその周辺の高温部からなる気相雰囲気K中に達したガラス原料粒子GM(造粒体)の崩壊が抑えられ、ガラス製品の均質化および煤塵の低減に対する影響を抑制できる。
また、溶融部50よりも上方に溶融部50と連通する焼結部60を設けることで、焼結部60内に気相雰囲気Kの熱の一部を用いた雰囲気K’を容易に形成でき、消費エネルギーの増加を抑えた上でガラス原料粒子GMを焼結できる。しかも、溶融部50よりも水平断面が小さい焼結部60にガラス原料粒子GMを投入することで、ガラス原料粒子GMの水平方向の広がりを抑えて効率よく焼結できる。
【0064】
<第二実施形態>
次に、本発明のガラス溶融炉を中心として、溶融ガラスの製造方法、ガラス製品の製造装置およびガラス製品の製造方法の第二実施形態について、
図1を援用し
図2を参照して説明する。
第二実施形態は、第一実施形態に対して異なるガラス溶融炉110を備えるもので、その他の第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0065】
図2に示すガラス溶融炉110も、気中溶融法により溶融ガラスGを形成するもので、例えば直方体形状の中空箱型の炉体1と、炉体1の上壁部1aの中央部に設置された一基の燃焼バーナー7と、炉体1の一対の上方突出部1cの上端部(底部1d)にそれぞれ設置された原料粒子投入装置5とを備える。ガラス溶融炉110は、前記成形装置20を含むガラス製品の製造装置130の一部を構成する。
【0066】
各上方突出部1cは、例えば燃焼バーナー7を挟んだ両側に設けられ、それぞれの軸線1Cを鉛直方向に沿わせて配置される。各上方突出部1cの底部1dには、各上方突出部1c内(炉内)に向けて鉛直方向下向きに原料投入口5aを開口させる筒状の原料粒子投入装置5がそれぞれ設けられる。
各原料粒子投入装置5は、それぞれの軸線C1’を対応する上方突出部1cの軸線C1と同軸にして配置され、原料投入口5aから軸線C1,C1’に沿ってガラス原料粒子GMを噴出する。
【0067】
各原料粒子投入装置5は、例えば炉体1の軸線C2に関して回転対称に配置される。なお、各原料粒子投入装置5の設置数は一対に限らず三つ以上としてもよい。各原料粒子投入装置5は、ガラス原料粒子GMの投入の対称性(均一性)を向上させる観点から、軸線C2を中心とした回転方向で等間隔に複数配置することが好ましい。
【0068】
燃焼バーナー7は、鉛直方向に沿う軸線C3を有し、各上方突出部1c間で上壁部1aに設けられ、火炎噴射口7aから軸線C3に沿って燃焼炎Fを噴射する。
燃焼バーナー7の火炎噴射口7aは、各原料粒子投入装置5の原料投入口5aとは離隔して配置される。燃焼バーナー7の火炎噴射口7aと各原料粒子投入装置5の原料投入口5aとの距離の詳細は第一実施形態に準ずる。
【0069】
原料粒子投入装置5から炉体1内(各上方突出部1c内)に投下されたガラス原料粒子GMは、各上方突出部1c内の焼結部60に形成された雰囲気K’よって焼結処理がなされた後、燃焼バーナー7の火炎噴射方向に形成された気相雰囲気Kによって溶融して溶融ガラス粒子Uとなり、炉体1の貯留部1bに集積されて溶融ガラスGとなる。
ガラス原料粒子GMは、燃焼バーナー7の燃焼炎Fに沿うように投下されることで、火炎周辺の高温雰囲気内を比較的長時間に渡って通過し、効率よく溶融ガラス粒子Uとなる。燃焼バーナー7の燃焼炎Fの両側にガラス原料粒子GMを投下することで、単一の燃焼バーナー7で一対の原料粒子投入装置5からのガラス原料粒子GMを効率よく溶融できる。
【0070】
<第三実施形態>
次に、本発明のガラス溶融炉を中心として、溶融ガラスの製造方法、ガラス製品の製造装置およびガラス製品の製造方法の第三実施形態について、
図1を援用し
図3を参照して説明する。
第三実施形態は、第一実施形態に対して異なるガラス溶融炉210を備えるもので、その他の第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0071】
図3に示すガラス溶融炉210も、気中溶融法により溶融ガラスGを形成するもので、例えば直方体形状の中空箱型の炉体1と、炉体1の上方膨出部1eの中央部に設置された一基の燃焼バーナー7と、炉体1の上方膨出部1eの上端部1fに鉛直方向に沿って設置された一対の原料粒子投入装置5とを備える。ガラス溶融炉210は、前記成形装置20を含むガラス製品の製造装置230の一部を構成する。
【0072】
炉体1は、前記上壁部1a(
図3では鎖線で示す)の一部または全部を上方に膨出させるように形成された上方膨出部1eを有する。上方膨出部1eは、例えば炉体1と同軸の角錐台形状をなし、その上端部1fの中央部には、下方(炉内)に延びる下方延出部1hが設けられる。下方延出部1hは鉛直方向に沿う筒状をなし、炉体1と同軸に配置される。下方延出部1h内には、炉内に向けて鉛直方向下向きに火炎噴射口7aを開口させる筒状の燃焼バーナー7が保持される。
【0073】
上方膨出部1eは、その内部に形成された雰囲気K’中でガラス原料粒子GMを焼結処理する焼結部60を構成する。焼結部60の水平断面は、その下端部で最大となり、上壁部1a下方の溶融部50の水平断面と同等の大きさとなる。焼結部60の水平断面は上側ほど小さくなるように変化する。
燃焼バーナー7は、鉛直方向に沿う軸線C3を有して下方延出部1h内に同軸に保持され、火炎噴射口7aから軸線C3に沿って燃焼炎を噴射する。
【0074】
各原料粒子投入装置5は、例えば燃焼バーナー7を挟んだ両側に設けられ、それぞれの軸線C1’を鉛直方向に沿わせて配置される。各原料粒子投入装置5は、上方膨出部1eの上端部1fに、炉内に向けて鉛直下向きに原料投入口5aを開口させるように設けられる。各原料粒子投入装置5は、それぞれ原料投入口5aから軸線C1’に沿ってガラス原料粒子GMを噴出する。
【0075】
各原料粒子投入装置5は、例えば炉体1の軸線C2に関して回転対称に配置される。なお、各原料粒子投入装置5の設置数は一対に限らず三つ以上としてもよい。各原料粒子投入装置5は、ガラス原料粒子GMの投入の対称性(均一性)を向上させる観点から、軸線C2を中心とした回転方向で等間隔に複数配置することが好ましい。
【0076】
燃焼バーナー7の火炎噴射口7aは、各原料粒子投入装置5の原料投入口5aとは離隔して配置される。燃焼バーナー7の火炎噴射口7aと各原料粒子投入装置5の原料投入口5aとの距離の詳細は第一実施形態に準ずる。
【0077】
原料粒子投入装置5から炉体1内(上方膨出部1e内)に投下されたガラス原料粒子GMは、上方膨出部1e内の焼結部60に形成された雰囲気K’によって焼結処理がなされた後、燃焼バーナー7の火炎噴射方向に形成された気相雰囲気Kによって溶融して溶融ガラス粒子Uとなり、炉体1の貯留部1bに集積されて溶融ガラスGとなる。
【0078】
ガラス原料粒子GMは、燃焼バーナー7の燃焼炎Fに沿うように投下されることで、火炎周辺の高温雰囲気内を比較的長時間に渡って通過し、効率よく溶融ガラス粒子Uとなる。燃焼バーナー7の燃焼炎Fの両側にガラス原料粒子GMを投下することで、単一の燃焼バーナー7で一対の原料粒子投入装置5からのガラス原料粒子GMを効率よく溶融できる。上方膨出部1eが下側ほど広い水平断面を形成することで、溶融部50の熱を効率よく利用できる。
【0079】
なお、本実施形態では、上方膨出部1eが下方延出部1hで仕切られた一対の焼結部を形成するともいえる。すなわち、各原料粒子投入装置5に対応して一対の焼結部が設けられる。この場合も、各焼結部の水平断面は下側ほど広がっており、溶融部50の熱を効率よく利用できる。
【0080】
<第四実施形態>
次に、本発明のガラス溶融炉を中心として、溶融ガラスの製造方法、ガラス製品の製造装置およびガラス製品の製造方法の第四実施形態について、
図1を援用し
図4を参照して説明する。
第四実施形態は、第一及び第三実施形態に対して異なるガラス溶融炉310を備えるもので、その他の第一及び第三実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0081】
図4に示すガラス溶融炉310も、気中溶融法により溶融ガラスを形成するもので、例えば直方体形状の中空箱型の炉体1と、炉体1の上方膨出部1eの中央部に設置された一基の燃焼バーナー7と、炉体1の上方膨出部1eの上部に鉛直方向に対して傾斜して設置された一対の原料粒子投入装置5とを備える。ガラス溶融炉310は、前記成形装置20を含むガラス製品の製造装置330の一部を構成する。
【0082】
各原料粒子投入装置5は、例えば燃焼バーナー7を挟んだ両側に設けられ、それぞれの軸線C1’を下側ほど燃焼バーナー7の軸線C3に近付けるように鉛直方向に対して傾斜して配置される。原料粒子投入装置5の下端には原料投入口5aが開口する。軸線C1’はガラス原料粒子GMの投入方向に沿う直線でもある。原料粒子投入装置5の下端部は上方膨出部1eの傾斜部1gを貫通し、上方膨出部1e内(すなわち、焼結部60内)に向けて斜め下向きに原料投入口5aを開口させ、軸線C1’に沿ってガラス原料粒子GMを噴出する。
【0083】
各原料粒子投入装置5は、例えば炉体1の軸線C2に関して回転対称に配置される。各原料粒子投入装置5は、例えば互いの軸線C1’が炉体1及び燃焼バーナー7の軸線C2,C3上で交差するように配置される。なお、各原料粒子投入装置5は、
図4の側面視での傾斜のみならず、軸線C2を中心とした回転方向でも傾斜してよい。各原料粒子投入装置5の設置数は一対に限らず三つ以上としてもよい。各原料粒子投入装置5は、ガラス原料粒子GMの投入の対称性(すなわち、均一性)を向上させる観点から、軸線C2を中心とした回転方向で等間隔に複数配置することが好ましい。
【0084】
燃焼バーナー7の火炎噴射口7aは、各原料粒子投入装置5の原料投入口5aとは離隔して配置される。燃焼バーナー7の火炎噴射口7aと各原料粒子投入装置5の原料投入口5aとの距離の詳細は第一実施形態に準ずる。
【0085】
原料粒子投入装置5から炉体1内(上方膨出部1e内)に投下されたガラス原料粒子GMは、上方膨出部1e内の焼結部60に形成された雰囲気K’によって焼結処理がなされた後、燃焼バーナー7の火炎噴射方向に形成された気相雰囲気Kによって溶融して溶融ガラス粒子Uとなり、炉体1の貯留部1bに集積されて溶融ガラスGとなる。
【0086】
原料粒子投入装置5の軸線C1’と燃焼バーナー7の軸線C3とが形成する、側面視で上方に向けて開放する角度α’は、10〜50°の範囲の角度、例えば、45°程度の角度とされる。これにより、気相雰囲気K中に投下されたガラス原料粒子GMは、各燃焼バーナー7から噴射された燃焼炎内を比較的長時間に渡って通過し、効率よく溶融ガラス粒子Uとなる。燃焼バーナー7の燃焼炎Fの両側にガラス原料粒子GMを投下することで、単一の燃焼バーナー7で一対の原料粒子投入装置5からのガラス原料粒子GMを効率よく溶融できる。上方膨出部1eが下側ほど広い水平断面を形成することで、溶融部50の熱を効率よく利用できる。
【0087】
なお、本実施形態では、上方膨出部1eが下方延出部1hで仕切られた一対の焼結部を形成するともいえる。すなわち、各原料粒子投入装置5に対応して一対の焼結部が設けられる。この場合も、各焼結部の水平断面は下側ほど広がっており、溶融部50の熱を効率よく利用できる。
【0088】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば第一実施形態で燃焼バーナー7が単一の構成も有り得る。例えば第二乃至第三実施形態で原料粒子投入装置5が単一の構成も有り得る。ガラス溶融炉10の炉体1は直方体形状に限らず例えば円筒形状でもよい。焼結部60内を加熱する補助ヒータを備えてもよい。
【0089】
本発明は造粒体を用いた気中溶融法に好適であるが、使用するガラス原料粒子GMとして、目的とする用途のガラスの原料の各成分の粒子状の原料粉末と造粒体とを混合したものや、さらにガラスカレット片を含むものでもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本発明のガラス製品の製造装置は、前記した第1〜4実施態様に係るガラス溶融炉と、ガラス溶融炉により製造された溶融ガラスを成形する成形手段と、成形後のガラス製品を冷却する冷却手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明のガラス製品の製造方法は、前記した第1及び第2の溶融ガラスの製造方法を用いてガラス原料粒子を焼結後に溶融ガラスを製造する工程と、溶融ガラスを成形する工程と、成形後のガラス製品を冷却する工程とを含むことを特徴とする。