特許第6015893号(P6015893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015893
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20161013BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20161013BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H01L21/302 104C
   H01L21/302 105A
   H01L21/302 301Z
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 627C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-41371(P2012-41371)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-179127(P2013-179127A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴思
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−162443(JP,A)
【文献】 特開平06−326062(JP,A)
【文献】 特開平07−134312(JP,A)
【文献】 Y.SHIMURA et al.,"Specific contact resistances between amorphous oxide semiconductorIn-Ga-Zn-O and metallic electrodes",Thin Solid Films,Elsevier,2007年10月16日,Vol.516,pp.5899-5902
【文献】 M.TAKABATAKE et al.,"Indium Tin Oxide Dry Etching Using HBr Gas forThin-Film Transistor Liquid Crystal Displays",J. Electrochem. Soc.,米国,The Electrochemical Society, Inc,1995年 7月,Vol. 142, No. 7,,pp.2470-2473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム及びガリウムを含むアモルファス酸化物半導体上にインジウム又はスズを含む酸化物からなる多結晶透明導電膜が直接成膜された積層構造を備える薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記多結晶透明導電膜を、ハロゲンを含まない炭化水素と水素を含む混合ガスを用いて反応性イオンエッチングをして、前記アモルファス酸化物半導体に達するエッチング溝を形成することにより、エッチングされた前記アモルファス酸化物半導体の最表面組成はガリウムが最も多く、前記エッチング溝により分離された前記多結晶透明導電膜からなる複数の電極と、該電極間の前記アモルファス酸化物半導体のチャネルとを備えることを特徴とする、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲンを含まない炭化水素と水素を含む混合ガスは、炭化水素ガスの濃度が2%以上16%以下で、圧力5Pa以上30Pa以下で行うことを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、電子ペーパー、ディスプレイ、イメージスキャナ、イメージセンサアレイ、太陽電池、透明アンテナ、フレキシブルデバイス等の透明導電膜を有する電子デバイスの製造方法、及び該製造方法により製造された薄膜トランジスタに関する。特に複数枚のマスクを用いて複数回の露光工程を経て透明導電膜を加工して作製される透明薄膜トランジスタの製造に適する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電膜を有する電子デバイスには、一般に電気伝導率が大きい結晶性透明導電膜が用いられる。電子デバイスの作製において、透明導電膜を加工する方法として、リフトオフする方法とエッチングする方法とがある。
【0003】
リフトオフ方法には、エッチング工程が排除される長所があるが、透明導電膜を形成するまでに比較的多数の工程が必要であるという短所がある。また、1μm以下の透明導電膜のパターンを形成するのに限界がある。
【0004】
透明導電膜をエッチングする方法として、ウェットエッチングとドライエッチングがある。
【0005】
ウェットエッチングでは終点が時間管理されるため、エッチング残りやオーバーエッチの不良が頻発する。またエッチングが等方的に進むためサイドエッチング量が大きく、凹凸形状に加工する際には所望の形状へ加工する加工精度が劣化する。またナノスケールの微細パターン形成が容易ではない。
【0006】
フォトレジストパターンと透明導電膜との相互間の接着力が弱くなるため、エッチング工程中に、フォトレジストパターンの剥離現象が発生し、剥離されたフォトレジストパターンが、エッチング槽を汚染させるという短所もある。
【0007】
また、ウェットエッチングにおけるエッチング速度は結晶性に顕著に依存する。結晶化温度付近では非晶質と結晶質の混在した膜質になり、エッチング特性がきわめて不安定となる。
【0008】
更に、アモルファス酸化物薄膜は結晶性酸化物薄膜よりもエッチング速度が大きいため、アモルファス酸化物薄膜上に堆積された結晶性酸化物薄膜をウェットエッチングによってエッチングして分離加工しようとすると、結晶性酸化物薄膜がエッチングされて下地のアモルファス酸化物薄膜が露出したとたんに下地アモルファス酸化物が大きくエッチングされてしまい、最悪の場合、下地アモルファス酸化物薄膜が完全に消失してしまうという問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1には、酸を用いたウェットエッチングの場合、アモルファスIn−Ga−ZnO4(IGZOともいう。)のエッチング速度が、透明導電膜のスズ添加酸化インジウム(ITOともいう。)よりもはるかに大きいことを示している。このような酸を用いてアモルファスIGZO上に堆積した結晶性ITOを実用的な時間内にエッチングする場合、下地アモルファスIGZOを大きくエッチングすることなく加工することはできない。
【0010】
ドライエッチングでは、希ガスなどのイオンにより物理的なエッチング機構によってミリングする方法と、ハロゲン系ガスや有機系ガス等を用いた物理的エッチング機構と化学的エッチング機構の双方の効果によってエッチングする方法がある。
【0011】
希ガスなどのイオンによる物理的なエッチング機構によってミリングする方法では、一般的にエッチング速度が遅く、またエッチングされた不揮発性物質が側壁などに再付着するという問題があり、量産性に適していないという問題がある。
【0012】
ハロゲン系ガスを用いたドライエッチング法では、以下のような問題がある。
【0013】
すなわちインジウムや亜鉛を含む透明導電膜の場合にフッ素系ガスではインジウムや亜鉛のフッ素化合物の蒸気圧が低いためにほとんど化学エッチングが起こらない。また、物理的エッチングによってエッチングが進んだとしても、多くの不揮発性物質が生成してしまうという問題点を生じる。
【0014】
同様にインジウムや亜鉛を含む透明導電膜の場合には、インジウムや亜鉛の塩素化合物の蒸気圧が低いために、塩素系ガスによるエッチングも困難である。多くの不揮発性物質が生成してしまうという問題点を生じる他、マスクとして用いる有機レジストの極めて大きいエッチング速度、有機レジストに起因する有機生成物のチャンバー内汚染、腐食性塩素ガスによる装置の腐食といった様々な問題が生じる。
【0015】
有機系ガスを用いたドライエッチング法について、研究開発がなされ、先行文献調査をしたところ、特許文献2、3のような技術が知られている。特許文献2には、基板上に成膜されたIn−Ga−Zn−Oから構成される酸化物半導体膜のドライエッチングの際に不揮発性物質を発生させることなく安定なドライエッチング方法として、炭化水素を含むエッチングガスを利用する技術が記載されている。また、特許文献3には、透明導電膜をパターニングするためのエッチング方法において、エッチングを、透明導電膜を加熱しながら(下地を50℃〜200℃に加熱)、水素及び一般式CnHmで表される炭化水素の混合ガスを用いた反応性ドライエッチングにより行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−041695号公報
【特許文献2】特開2007−335505号公報
【特許文献3】特開平3−77209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の有機系ガスを用いたドライエッチングでは、物理的なエッチングのみならず蒸気圧が高い有機化合物の生成によって化学的エッチングが可能であるが、しばしばエッチング中に不揮発性有機金属化合物が生成し、エッチング速度の低下と不揮発性物質の再付着の問題を誘発する。そのため例えば特許文献2では、酸化物半導体膜を有機系ガスでドライエッチングを行う際に不揮発性有機金属化合物の付着を防ぐため、0.1W/cm2以上20W/cm2以下の高いパワー密度や0.6Pa以上3.5Pa以下の反応圧力の条件が記載され、特に2W/cm2以上が最も好ましいと記載され、高パワー密度や反応圧力の条件が必要とされている。
【0018】
また、従来の有機系ガスを用いて透明導電膜をドライエッチングする特許文献3の技術においては、基板を50℃〜200℃に加熱しなければならず、加熱しない場合は、エッチングができないと記載されている。
【0019】
これらの理由から、アモルファス酸化物半導体上に透明導電膜を堆積して電子デバイスを作製することは通常困難であった。そのため前述のリフトオフを用いたり、アモルファス酸化物半導体上にまず保護膜を形成してその保護膜に穴を開けてから透明導電膜を堆積し、保護膜の中にウェットエッチング液がしみこまないように細心の注意を払いながらウェットエッチングを行ったりという方法しかなかった。
【0020】
保護膜を堆積してから透明導電膜を堆積し、保護膜上の透明導電膜をエッチングするという方法はドライエッチングでもしばしば行われている。
【0021】
これらアモルファス酸化物半導体上に保護膜を堆積してから保護膜に穴を開け、その上に透明導電膜を堆積する方法では、保護膜の穴あけ加工などに露光工程が必要となるために、マスク枚数が多くなってコストが増大する上、露光工程の増大によってゴミなどによる歩留まりの低下を引き起こす原因となる。
【0022】
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、アモルファス酸化物半導体上に保護膜を堆積・加工することなく直接透明導電膜を堆積・加工することが可能な方法を実現することを目的とするものである。また、本発明は、低コストで電気特性の優れた薄膜トランジスタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、鋭意研究を進めた結果、以下のような事実を見出した。すなわち、水素ガスによって希釈された2〜16モル%という希薄な有機ガスでも0.33ワット毎平方センチメートル程度のパワー密度でアモルファス酸化物半導体、及び結晶性透明導電膜を100〜250オングストローム毎分のエッチング速度でエッチングができる。すなわち1ワット毎平方センチメートルあたり、300〜750オングストローム毎分のエッチング速度でエッチングできる。その際、希薄有機ガスは圧力を上げないとプラズマが発たず、プラズマ発生のためには5パスカル以上の圧力を要する。X線光電子分光測定(XPS測定)によれば、水素希釈希薄有機ガスでエッチングした透明導電膜の表面の炭素元素はわずかしか存在せず、エッチング表面上の不揮発性有機物の堆積は極めて少ないかほとんどない。また、有機ガス(メタンガスなど)濃度が低いほど、物理的エッチングの効果が少なくなるため有機ガス濃度が低いほどエッチング速度は低下するが、レジスト上やシリコン酸化膜上に厚く強固な不揮発性有機物が生成されにくいため、結晶性透明導電膜のエッチング後にレジスト上やシリコン酸化膜上に堆積した不揮発性有機物を低減するためのクリーニング時間や、装置内に付着している不揮発性有機物をクリーニングするために要する時間を短縮することができる。
【0024】
炭化水素を16%以下含む炭化水素/水素混合ガスを用いたドライエッチングにおける結晶性透明導電膜とアモルファス酸化物半導体とのエッチング速度は、ウェットエッチングとは異なり大きな差がない。そのため結晶性透明導電膜をエッチングして分離加工する際に、下地のアモルファス酸化物薄膜が大きくエッチングされて完全に消失してしまうというウェットエッチングのような問題はない。そのため、保護膜を用いることなく時間制御だけで、アモルファス酸化物半導体の性能を維持したまま上部の結晶性透明導電膜を分離加工することができる。
【0025】
なお、不揮発性有機物をクリーニングするためには、酸素ガス又は水素ガスを用いることができる。有機ガスを含有しない純粋な水素ガスでは希薄有機ガスに比べてさらにプラズマが発ちにくいが、圧力を高くすることによって、純粋な水素ガスでもプラズマを発たせることができる。特に、純粋な水素ガスは不揮発性有機物のエッチング作用を有し、クリーニングなどに有効である。
【0026】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
【0027】
本発明の方法は、インジウム及びガリウムを含むアモルファス酸化物半導体上にインジウム又はスズを含む酸化物からなる多結晶透明導電膜が直接成膜された積層構造を備える電子デバイスの製造方法であって、前記多結晶透明導電膜をドライエッチングして、前記アモルファス酸化物半導体に達するエッチング溝を形成することを特徴とする。前記電子デバイスは、前記エッチング溝により分離された前記多結晶透明導電膜からなる複数の電極と、該電極間の前記アモルファス酸化物半導体のチャネルとを備える薄膜トランジスタである。本発明のドライエッチングは、ハロゲンを含まない炭化水素と水素を含む混合ガスを用いることが好ましい。本発明のドライエッチングは、反応性イオンエッチングであることが好ましい。また、本発明は、これらの製造方法により製造されたボトムゲート薄膜トランジスタであることを特徴とする。
【0028】
本発明のインジウム及びガリウムを含むアモルファス酸化物半導体は、インジウム、ガリウムに加え、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、銅、鉄、亜鉛のうちのいずれか1以上の元素を含んでもよい。例えば、In−Ga−Zn−O系、In−Ga−O系等がある。
【0029】
本発明のIn又はSnを含む酸化物からなる多結晶透明導電膜は、ITO、酸化錫、酸化インジウムのいずれかであり、ガリウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、銅、鉄、亜鉛のうちのいずれか1以上の元素を含んでもよい。
【0030】
本発明では、結晶性透明導電膜をドライエッチングすることによって、結晶性透明導電膜を2つ以上の島状の構造に分離して、各島状の構造を電極として用いる。
【0031】
本発明のドライエッチングに用いる炭化水素ガス及び水素ガスからなる混合ガスにおいて、炭素水素ガスとして、メタンガスのほか、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン等を用いることができる。
【0032】
本発明のドライエッチングは、1ワット毎平方センチメートルあたり、300〜750オングストローム毎分のエッチング速度が好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、アモルファス酸化物半導体上に保護膜を堆積・加工することなく直接透明導電膜を堆積・加工することができるため、マスク枚数を削減し、作製コスト低減することができる。本発明により、電子デバイスの製造工程をオールドライプロセスで行うことが可能となる。
【0034】
本発明によれば、露光工程を削減することができるため、ゴミなどによる歩留まりの低下を抑制することができる。
【0035】
また、本発明の製造方法により得られる薄膜トランジスタは、低コストで、電界移動度等の電気特性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明のボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタを示す概念図。
図2】本発明のボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタの作製工程を説明する図。
図3】メタン−水素混合ガスのメタン濃度とプラズマ放電が開始する圧力の関係を示す図。
図4】多結晶ITO透明導電膜のエッチング速度のメタン濃度依存性を示す図。
図5】アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜のエッチング速度のメタン濃度依存性を示す図。
図6】多結晶ITO透明導電膜とアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜のドライエッチングにおける、圧力とエッチング速度の関係を示す図。
図7】酸素プラズマが白色から淡黄色に回復するまでの回復時間の、メタン濃度依存性を説明する図。
図8】本実施例のチャネルエッチ型ボトムゲート透明薄膜トランジスタの電気特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態について、図を参照して以下説明する。本発明は、インジウム及びガリウムを含むアモルファス酸化物半導体上にインジウム又はスズを含む酸化物からなる多結晶透明導電膜が成膜された積層構造を備える電子デバイスにおいて、前記透明導電膜に凹部を形成する必要がある電子デバイス構造に有効な方法である。多結晶透明導電膜に、凹部、溝、孔を形成することにより、多結晶透明導電膜が分離され複数の電極を形成することができる。
【0038】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態として、ボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタを例に説明する。図1は、ボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタである。図1に示すように、ボトムゲート薄膜トランジスタは、基板(例えばガラス基板)100上に、ゲート電極101、絶縁膜102、アモルファス酸化物半導体薄膜103、透明導電膜104及び透明導電膜105が順に積層された構造を備える。本実施の形態では、エッチングにより形成されたエッチング溝により、透明導電膜104、105が分離されて、複数の電極が形成され、電極間のアモルファス酸化物半導体103がボトムゲート薄膜トランジスタにおけるチャネル領域として機能するので、ボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタと呼ぶことができる。
【0039】
次に、本実施の形態のボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタの作製方法について図2を参照して説明する。
【0040】
基板100(例えばガラス基板)を用意する(図2(a))。ガラス基板は、透光性を有する基板であれば良く、石英ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスを用いることができる。その他に、プラスチック基板等の透光性基板を使用することもできる。
【0041】
図2(b)に示すように、ガラス基板100上に透明導電膜101をスパッタリング法により堆積する。透明導電材料として、例えば、ITO(スズ添加酸化インジウム)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛又はそれらの化合物を用いることができる。図2(c)に示すように、第1のフォトマスクを用いて所望のフォトレジスト110を形成する。図2(d)に示すように、フォトレジスト110を用いて、透明導電膜101のエッチングを行い、ゲート電極101、ゲート配線を形成する。ゲート電極101、ゲート配線は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの低抵抗金属導電材料で形成することもできる。金属導電材料を用いると、ゲート電極やゲート配線部の透光性が失われるが、透明導電膜よりも薄い厚みで所望の抵抗が得られ、電気的動作性能の優れた電子デバイスが得られる。金属導電材料を用いる場合、耐熱性や腐蝕性を考慮して複数金属材料と組み合わせて形成したり、合金を用いたりしてもよい。その後フォトレジストを剥離除去する。
【0042】
図2(e)に示すように、ゲート電極101上に、絶縁膜102、アモルファス酸化物半導体薄膜103および透明導電膜104を順に成膜する。透明導電材料として例えば、ITO、酸化錫、酸化インジウムを用いることができる。絶縁膜102はゲート絶縁膜であり、例えば酸化珪素膜、アルミナ膜などの単層又はこれらの積層構造により形成する。勿論、ゲート絶縁膜はこのような材料に限定されるものではなく、酸化タンタル膜やハフニア膜等の他の絶縁膜を用い、これら材料から成る単層又は積層構造として形成しても良い。絶縁膜102はCVD法により形成する。ALDで堆積してもよい。ALDで堆積すると、低温で緻密で高絶縁性の薄膜を堆積することができるので、プラスチック等耐熱性に劣る基板上にも堆積することができる。アモルファス酸化物半導体薄膜103および透明導電膜104は、それぞれチャネル領域、ソース領域およびドレイン領域を形成するものである。アモルファス酸化物薄膜103はキャリア濃度の少ない高抵抗な薄膜であり、透明導電膜104は導電性を付与する不純物元素を高濃度に有する結晶性の低抵抗率の薄膜である。アモルファス酸化物薄膜、結晶性透明導電膜は、スパッタリング法により形成する。マルチチャンバ型の装置を用いることで、絶縁膜、アモルファス酸化物半導体薄膜、結晶性透明導電膜を連続して成膜することも可能である。大気に曝さないことで不純物の混入を防止することができる。本実施の形態では、アモルファス酸化物半導体や結晶性透明導電膜をスパッタリング法により形成したが、蒸着法、PLD法、CVD法、ALD法等も用いることができる。
【0043】
図2(f)に示すように、チャネル領域のアモルファス酸化物半導体を島状に素子分離するため、第2のフォトマスクを用いて所望のフォトレジスト111を形成する。図2(g)に示すように、フォトレジスト111を用いて、絶縁膜102で覆われたゲート電極101上のアモルファス酸化物半導体及び結晶性透明導電膜のドライエッチングを行い、島状型アモルファス酸化物半導体103および島状結晶性透明導電膜104を得る。なお、金属導電材料を用いたゲート電極101、ゲート配線の場合、それら金属膜をフォトマスクとして、基板裏面からの裏面露光より、アモルファス酸化物半導体及び結晶性透明導電膜上に形成したフォトレジストを選択的に露光し、所望のパターンのフォトレジストを形成することができる。この場合、裏面露光により光が薄膜を通過してフォトレジストが露光するため、ゲート配線以外のアモルファス酸化物半導体及び結晶性透明導電膜は、フォトレジストの露光波長において透明であることが望ましい。裏面露光によって形成されたフォトレジストパターンを用いると、セルフアラインであるためゲート電極領域とチャネル領域のフォトマスクの位置あわせが不要となり、自己整合的にドライエッチングを行うことができる。フォトレジストの露光波長において、上記アモルファス酸化物半導体及び結晶性透明導電膜に吸収がある場合には、フォトレジストが感光可能な程度に上記アモルファス酸化物半導体及び結晶性透明導電膜が薄いことが必要である。その後フォトレジストを剥離除去する。
【0044】
図2(h)に示すように、基板全面に透明導電膜105を成膜する。透明導電材料として例えば、ITO、酸化錫、酸化インジウムを用いることができる。この透明導電膜105はソース電極、ドレイン電極およびソース配線になるものである。図2(i)に示すように、第3のフォトマスクを用いてフォトレジスト121を形成する。図2(j)に示すように、フォトレジスト121を用いてドライエッチングを行い、配線を形成するとともに、ソース領域とドレイン領域の分離が行われる。なお、上記裏面露光を行った場合、ハーフトーン露光技術を用いて異なる厚みを有するフォトレジストを形成してもよい。その場合、配線部分のドライエッチングを行った後に薄いレジスト部分をアッシング処理によって取り除き、ソース領域とドレイン領域の分離のためのドライエッチングを行う。その後フォトレジスト121を剥離除去する。
【0045】
図2(k)に示すように、基板全面に絶縁膜を成膜し、保護膜106とする。この保護膜106とする絶縁膜は、酸化珪素膜、アルミナ膜、酸化ガリウム膜、又はそれらの積層膜でも良い。
【0046】
その後さらに保護膜106に電気的接触用の穴を開け、画素電極などの透明導電材料を堆積したり、配線用の透明導電材料を堆積したりしてもよい。透明導電材料として例えば、ITO、酸化錫、酸化インジウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛又はそれらの化合物を用いても良い。
【0047】
アモルファス酸化物半導体及び多結晶透明導電体のドライエッチングについて、次に詳しく説明する。
【0048】
アモルファス酸化物半導体としてアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物を、多結晶透明導電体としてITOを用いて、ドライエッチングを行った。図3は、ドライエッチング装置(サムコ社製RIE−200L)を用いた場合の、メタン−水素混合ガスのメタン濃度とプラズマ放電が開始する圧力の関係を示すものである。×印はプラズマが発生しなかったことを示し、○印はプラズマが発生したことを示す。図3からわかるように、メタン濃度が減少するとともにプラズマ放電が開始する圧力が上昇するために、16%以下、特に10%以下のメタン濃度では5パスカル以下の圧力では反応性イオンエッチング(RIE)を行えないことがわかる。
【0049】
図4は、圧力11パスカル、パワー密度0.33ワット毎平方センチメートル(パワー150ワット)で行った多結晶ITO透明導電膜のエッチング速度のメタン濃度依存性を示す図である。図5は、圧力11パスカル、パワー密度0.33ワット毎平方センチメートルで行ったアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜のエッチング速度のメタン濃度依存性を示す図である。16%以下の低メタン濃度でも、多結晶ITO透明導電膜とアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜の双方とも100オングストローム毎分以上250オングストローム以下のエッチング速度を0.33ワット毎平方センチメートルという低パワー密度で実現できることが判明した。すなわち、1ワット毎平方センチメートルあたり、300〜750オングストローム毎分のエッチング速度でエッチングできる。10%以下の低メタン濃度でも150オングストローム毎分以上のエッチング速度が0.33ワット毎平方センチメートルという低パワー密度で得られている。これは、メタンを水素で希釈したこと、及び圧力を5パスカル以上で行ったことによる結果である。
【0050】
本発明は、多結晶ITO透明導電膜とアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜とを同一条件でドライエッチングすることに着目したものである。上述のように、特許文献1におけるウェットエッチングのように多結晶ITOの方がアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物よりも桁違いにエッチング速度が速いというようなことはなく、ほぼ同じ程度のエッチング速度であることが判明した。その結果、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物上に堆積した多結晶ITOを、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物が過剰にエッチングされた消失してしまうことなく分離加工できる。
【0051】
図6は、多結晶ITO透明導電膜とアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜とについての、圧力とエッチング速度の関係を示す図である。いずれも混合ガスのメタン濃度を2パーセントとした場合である。圧力がおよそ18Paで、IGZOとITOのエッチング速度は同じ程度であり、圧力がそれより低いときはITOのエッチング速度がIGZOのエッチング速度より大きい。
【0052】
なお、X線光電子分光法(XPS)で、エッチングされたアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物の表面組成を調べた結果、メタン濃度が2〜16%までは最表面組成はガリウムが最も多く、16%より大であると亜鉛が最も多くなることが明らかになった。アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物半導体では、亜鉛が多いほど水分に弱く劣化しやすく、また、亜鉛が多いほどリーク電流が流れやすい傾向があり、ガリウムが多いほど化学的に安定で、リーク電流が流れにくい傾向がある。
【0053】
本実施の形態の低有機系ガス濃度でのドライエッチングを行うと、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物半導体を用いた電子デバイスの電気特性にも好適であることが判明した。
【0054】
本実施の形態では、有機系ガスを希釈するのに炭化水素を用い、かつ、有機系ガスの濃度を16%以下の低濃度にしてあるために、不揮発性有機物の生成がほとんどない。XPS測定によれば、水素希釈希薄有機ガスでエッチングした透明導電膜の表面の炭素元素はわずかしか存在せず、試料表面がエッチング後に大気中のカーボンで汚染された可能性も含めて、エッチング表面上の不揮発性有機物の堆積は極めて少ないかほとんどないことが明らかになった。不揮発性有機物は、むしろエッチングされている酸化物表面上ではなく、有機系ガスを用いたRIEでほとんどドライエッチングされない、レジスト材料表面や酸化シリコンなどの材料表面上に、堆積されることがわかった。
【0055】
本実施の形態では、物理的エッチングの効果が少なくなるため有機ガス濃度が低いほどエッチング速度は低下するが、低濃度であるほどレジスト上やシリコン酸化膜上に厚く強固な不揮発性有機物が生成されにくいため、結晶性透明導電膜のエッチング後にレジスト上やシリコン酸化膜上に堆積した不揮発性有機物を低減するためのクリーニング時間や、装置内に付着している不揮発性有機物をクリーニングするために要する時間を短縮することができる。
【0056】
図7は、ドライエッチング装置(サムコ社製RIE−200L)内で8インチウェハ用の酸化シリコン製ホルダーを用いて5分間メタン−水素混合ガスを用いてドライエッチング実験を行った後に、ホルダー上に堆積した不揮発性有機物を、酸素100%、圧力5パスカル、パワー密度0.22ワット毎平方センチメートル(100ワット)のRIEによってクリーニングを行い、その際に酸素プラズマが白色から淡黄色に回復するまでの時間を調べた結果である。図7に示すように、メタン濃度が2〜16モル%において、メタン濃度が低いほど、ホルダー上の不揮発性有機物の堆積は抑制されることがわかった。なお、図7のクリーニングには酸素プラズマを用いたが、水素プラズマでもよい。
【0057】
多結晶酸化物やアモルファス酸化物を有機系ガス−水素混合ガスを用いてドライエッチングを行う場合には、クリーニングの時間まで考慮したトータルなプロセス時間の最適化をすることができる。
【0058】
本発明のドライエッチングは、炭化水素と水素の混合ガスで炭化水素ガスの濃度が2〜16%、圧力5Pa〜30Paで行うことが望ましい。本実施の形態では、加熱源により加熱することなくドライエッチングを行っている。なお、反応性を高めるために室温を超えて200℃程度以下までの範囲で加熱源により加熱してもよいし、レジストのダメージを抑制するために冷却源により冷却をしてもよい。
【0059】
(実施例)
チャネルエッチ型ボトムゲート薄膜トランジスタを本実施の形態のドライエッチング法を用いて製造した。
【0060】
石英ガラス基板上に277℃の基板温度で多結晶ITO薄膜をDCスパッタリング法によって400オングストローム堆積した。第1のフォトマスクを用いて所望のフォトレジストを形成し多結晶ITO薄膜のドライエッチングを行いゲート電極及びゲート配線を形成した。ドライエッチングは、サムコ社製RIE−200Lドライエッチング装置を用い、メタン濃度2%−水素98%混合ガス、圧力11パスカル、パワー150Wで4分間行った。その後、水素100%、圧力15パスカル、パワー150Wで4分間のクリーニング処理を行った後、ドライエッチング装置から取り出し、300Wの酸素アッシングを10分行った。その後、有機溶媒(東京応化工業ハクリ104、イソプロピルアルコール)によってフォトレジストを剥離除去した。
【0061】
ゲート電極及びゲート配線上に、絶縁膜として、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いたCVD法で酸化シリコン膜を、400℃で1230オングストローム成膜し、その上に、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜を、DCスパッタ法を用いて室温で520オングストローム成膜した。なお、絶縁膜としてTEOSを用いたCVD法で酸化シリコン膜を350℃で堆積してもよいこと、トリメチルアルミニウム(TMA)を用いてALD法でアルミナ薄膜を堆積してもよいことを確認した。
【0062】
次にチャネル領域のアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜を島状に素子分離するため、第2のフォトマスクを用いて所望のフォトレジストを形成し、酸化シリコン絶縁膜で覆われたITOゲート電極上のアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜のドライエッチングを行った。ドライエッチングは、サムコ社製RIE−200Lドライエッチング装置を用い、メタン濃度2%−水素98%混合ガス、圧力11パスカル、パワー150Wで6分間行った。その後、水素100%、圧力15パスカル、パワー150Wで4分間のクリーニング処理を行った後、ドライエッチング装置から取り出し、300Wの酸素アッシングを10分行った。その後、有機溶媒(東京応化工業ハクリ104、イソプロピルアルコール)によってフォトレジストを剥離除去した。
【0063】
次に基板全面に多結晶ITO透明導電膜を277℃で700オングストローム成膜した。第3のフォトマスクを用いてフォトレジストを形成し、ドライエッチングを行うことによって配線を形成するとともに、ソース領域とドレイン領域の分離を行った。ドライエッチングは、サムコ社製RIE−200Lドライエッチング装置を用い、メタン濃度2%−水素98%混合ガス、圧力11パスカル、パワー150Wで6分20秒間行った。その後アッシングなどを行い、フォトレジストを剥離除去した。
【0064】
次に、基板全面に保護膜として酸化シリコン薄膜を、TEOSを用いたCVD法により400℃で700オングストローム堆積した。最後にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極に電圧を印加するための電極パッド部分の絶縁膜を、サムコ社製RIE−200Lドライエッチング装置を用い、CHFを用いた反応性イオンエッチングで除去した後、酸素雰囲気中400℃でアニールしてチャネルエッチ型ボトムゲート薄膜トランジスタを作製した。
【0065】
作製した薄膜トランジスタは可視光領域で透明であった。図8に作製したチャネルエッチ型ボトムゲート透明薄膜トランジスタの電気特性の一例を示す。図8は、チャネル長20ミクロン、チャネル幅20ミクロンのチャネルエッチ型ボトムゲート透明薄膜トランジスタのドレイン電流のゲート電圧依存性であり、ソース・ドレイン間の電圧を10ボルトとしている。ゲート電圧が−12ボルトで10のマイナス13乗アンペア台、ゲート電圧が23ボルトで10のマイナス6乗アンペア台と、7桁以上のオン・オフ比が得られている。電界移動度3平方センチメートル毎ボルト毎秒という優れたボトムゲート薄膜トランジスタが得られた。
【0066】
なお、上記酸素雰囲気中400℃のアニールはオゾン含有ガスを用いてもよい。オゾンを用いるとアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物薄膜中の水素濃度を効率よく低減することができ、低温のアニール処理で電気特性の優れた薄膜トランジスタを得ることができる。また必要に応じて、高純度オゾン処理、純オゾン処理、酸素プラズマ処理、UV処理などを用いることにより、酸素アニール処理よりも低温で電気特性の優れた薄膜トランジスタを得ることができる。
【0067】
ボトムゲートチャネルエッチ型薄膜トランジスタについて説明したが、その他、整流ダイオードや発光ダイオードや光検出素子等の電子デバイスでも、同様に本発明の製造方法を使用できる。
【0068】
なお、上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
100 基板
101 ゲート電極
102 絶縁膜
103 アモルファス酸化物半導体薄膜
104、105 透明導電膜
110、111、121 フォトレジスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8