(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
選別対象となる粉体原料が投入される粉体投入部と、投入された前記粉体原料を水平方向成分の運動ベクトルが付与されるように一の方向に送出可能な粉体送出部とを有する粉体導入部と、
内部の気密性が保持され、その内部に前記粉体送出部から送出される前記粉体原料の送出方向に空間を有する容器と、
前記粉体送出部から前記容器内に送出された前記粉体原料中の各粉体の最高到達点よりも高さ位置が低い前記容器内の空間位置に配され、前記容器内に送出された前記粉体がその粒子径又は比重ごとに変化して落下する位置に応じて画成される複数の回収領域を有する粉体回収部と、
前記容器に接続され、前記容器内の気圧を調整する気圧調整ポンプを有する気圧調整機構と、を有し、
前記粉体原料中の前記各粉体のうち、前記粉体送出部から略同等の初速度で送出された前記粉体を、前記容器内の気圧を調整して前記粉体回収部上に落下させるように設定され、
前記容器内の気圧が該容器外の気圧よりも減圧状態で保持され、前記容器内外の気圧差により前記粉体原料が前記粉体送出部から前記容器内に吸引されて送出されることを特徴とする慣性セパレータ装置。
【背景技術】
【0002】
粒子の分級装置としては、サイクロン機構による慣性力を応用した湿式又は乾式のサイクロン分級装置が代表的であり、近年においても、その具体的な装置構成が検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、遠心力を応用した湿式又は乾式の分級装置も、粒子の分級に用いられている(例えば、特許文献3及び4参照)。
更に、湿式では、比重が比較的軽い物質と比較的重い物質を選別するジグ機構(例えば、特許文献5参照)なども提案され、乾式では、コアンダ効果を応用した分級装置(例えば、特許文献6参照)、吸引力を応用した分級装置なども提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0003】
このように、粒子の分級装置としては、種々存在するが、分級対象となる粒子が水中に分散させるのに適しないものである場合には、乾式の分級装置が用いられ、乾式の分級装置の多くは、気流による粒子の等速的運動と、これに重力や遠心力等の第2の力を作用させて分級させる機構を有する。この種の乾式分級装置では、気流によって原料を容器内に供給するとともに、原料中に含まれる比較的小さな粒子側の微粒子を気流によって排出し、これをバグフィルタ等の固気分離機構により回収するようにしている。
【0004】
しかしながら、こうした固気分離機構による微粒子の回収には、粒子が細かくなるに従って目詰まりや捕集漏れが生じやすいという問題がある。また、さらに粒子が小さくなると、フィルタの開口径の制約を受け、選別回収自体が困難となる問題がある。更に、前記固気分離装置の仕様により、固気分離を粒子サイズごとに多段に行うための装置設計に制約が生じる問題がある。
そのため、よりシンプルな構造で安価に粒子を分級できる分級装置の開発が求められている。
【0005】
比較的シンプルな構造で粒子を分級する分級装置としては、走行するゴムベルト上に載せた粉粒体を慣性力によって前記ゴムベルトの走行方向に放出し、その飛距離の違いを利用して分級を行う慣性分級方法が提案されている(特許文献8参照)。
しかしながら、この慣性分級方法では、粒子径が小さい側の微粉については、飛距離の違いを生じさせづらいため、気流を用いて除去している。
即ち、不規則な空気(気体)の流れ等の外乱により飛行方向が影響される微粉を飛距離の違いで分級する場合、該外乱の影響を制限しない特許文献8に記載の条件では、該微粉の飛距離を一定のものと想定して取扱うことが困難となる問題がある。また、気体分子の運動エネルギーによるブラウン運動(不規則運動)により飛行方向が影響されるようなミクロンオーダー以下のより粒子径が小さい微粉についても、取扱うことができないという問題がある。
よって、微粉については、気流を用いて除去させることとなるが、この気流に従って移動する微粉間では、分級を行うことができないという問題がある。
したがって、シンプルな構造で安価に構成することができ、微粉についても効率良く分離することができ、更に、選別対象の粒子径及び比重に応じて要求される選別設定を一つの装置で自由度高く設定することができる慣性セパレータ装置としては、満足できるものが存在しないというのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る慣性セパレータ装置1の概要を示す説明図である。
該慣性セパレータ装置1は、粉体原料2を投入する粉体投入部3と投入された粉体原料2を水平方向成分の運動ベクトルが付与されるように一の方向に送出可能な粉体送出部4とを有する粉体導入部5と、粉体送出部4と一部が連通可能とされるとともに、内部の気密性が保持され、その内部に粉体送出部4から送出される粉体原料2の送出方向に空間を有する容器6と、粉体送出部4から前記容器内に送出された前記粉体原料中の各粉体の最高到達点よりも高さ位置が低い容器6内の空間位置(底部)に配され、粉体送出部4から容器6内に送出された粉体原料2中の粉体がその粒子径又は比重ごとに変化して落下する位置に応じて画成される複数の回収領域7a〜7hを有する粉体回収部7と、容器6に接続され、容器6内の気圧を調整する気圧調整ポンプ8を有する。
【0012】
粉体投入部3は、漏斗状に形成され、拡開された投入口から粉体原料2が投入される。粉体投入部3の絞口された下部は、粉体送出部4に接続されており、投入された粉体原料2が集粉されて粉体送出部4に流入される。
【0013】
粉体送出部4は、管状部材からなり、一端側が粉体投入部3の下部と接続され、他端側が開閉弁(不図示)を介して容器6と接続される。この粉体送出部4は、管の軸心方向が水平方向に位置決めされて配され、前記開閉弁の操作に基づき、管内に保持される粉体原料2を容器6内に向けて略水平方向に送出可能とされる。
ただし、粉体送出部4としては、図示の例に限らず、投入された粉体原料2を容器6内に向けて水平方向成分の運動ベクトルが付与されるように一の方向に送出可能であればよく、必ずしも管の軸心方向が水平方向に位置決めされて配されている必要はない。
なお、粉体送出部4としては、粉体原料2の送出速度調整、及び粉体原料2中の粉体の粒径に合わせたサイズ調整を行う観点から、その管径及び管長を可変に調節する調節機構を有していてもよい。
【0014】
容器6は、その一部が粉体導入部5の粉体送出部4と、粉体送出部4の前記開閉弁を介して連通可能とされる。容器6全体としては、その内部が粉体原料2の送出方向に空間を有する構造であればよく、例えば、図示のように、粉体送出部4との連通点を頂点としてみたときに該頂点から粉体原料2の送出方向に向けて拡開する断面傘状の傘状体部と、粉体原料2の送出方向に向けて十分な奥行を有する断面コ字状の函状体部とを前記傘状体部を前記函状体部の蓋として連結させた構造を有する。
【0015】
容器6内の空間位置に配される粉体回収部7は、仕切りで多段に間仕切りされた枡状部材として形成され、前記仕切りにより水平方向にかけて一定距離ごとに画成された回収領域7a〜7hを有する。
前記仕切りの位置は、可変とされ、回収領域の数及び大きさを可変とすることができる。
ただし、粉体回収部7としては、図示の例に限らず、粉体原料2中の前記粉体がその粒子径又は比重ごとに変化して落下する位置に応じて画成される複数の回収領域を有するものであればよく、例えば、粉体回収部7において、仕切りの高さが粉体送出部4に近い側から遠くなる側にかけて階段状に高くなるか又は低くなるように形成されていてもよい。
【0016】
容器6に接続される気圧調整ポンプ8としては、真空ポンプ等の公知の気圧調整ポンプが適用でき、容器6内の気圧を調整する機能を有する。なお、気圧調整ポンプ8は、容器6に直接接続されている必要はなく、バッファ室などを介して容器6に間接的に気圧調整ポンプ8を接続し、容器6内の気圧を調整する気圧調整機構として構成されていてもよい。
【0017】
この他、容器6には、気圧計9が配設され、容器6の外部から容器6内の気圧を確認することができる。また、容器6には、該容器6内をベンチレーションして気圧を調節する気圧調節機構10が配設され、該気圧調節機構10を操作することで容器6内の気圧を調節することができる。ただし、この気圧調節機構10は、容器6内の気圧、引いては容器6内の気流を制御が可能である一方で、容器6内に不規則な気流を発生させること等により粉体原料2の選別に悪影響を与えることがないように設計される。例えば、容器6内の気体を移動させて気圧を調整する際、気体の移動方向に物理的な障害を設けないことや、意図しない気圧勾配を発生させないこと等の配慮が必要である。
【0018】
なお、容器6内外の気圧差により粉体原料2が粉体送出部4から容器6内に吸引される場合には、粉体送出部4の通気抵抗が容器6内に吸引される気体量を制限し、更に容器6内の気圧勾配による拡散効果で該容器6内に有意な気流が発生しない条件となるように、前記気圧差に応じて粉体送出部4の管径や管長、及び容器6の形状や容積を決める必要がある。
【0019】
このような構成からなる慣性セパレータ1を用いた粉体原料2の選別回収方法について、以下に説明する。
先ず、気圧調整ポンプ8により、容器6内を大気圧より減圧状態にさせる。減圧状態で、粉体送出部4の前記開閉弁を開放すると、粉体投入部3に投入された粉体原料2が、容器6内に吸引されて送出される。
【0020】
粉体送出部4から容器6内に送出された粉体原料2中の前記各粉体は、重力の作用により、粉体回収部7上に落下する。
この際、粉体原料2が同じ初速度で粉体送出部4から送出される条件では、その落下位置が前記各粉体の粒子径又は比重に支配されて調整可能となる。即ち、粒子径が大きい粉体及び比重が高い粉体ほど、粉体送出部4から遠い位置に落下し(
図1中の軌跡11参照)、一方、粒子径が小さい粉体及び比重が低い粉体ほど、粉体送出部4から近い位置に落下する(
図1中の軌跡12参照)。
即ち、以下の水平方向成分に関する運動方程式(A)及び鉛直方向成分に関する運動方程式(B)から、等しい初速で放出された粉体原料2中の粉体は、(1)粒子径(半径)一定で比重(粒子密度)が高くなれば、重力の作用する鉛直方向成分に比較して抗力以外の作用力ない水平方向成分の加速度dv
x/dt(減速量)が相対的に小さくなり、結果的に落下位置が遠くなる。また、(2)比重(粒子密度)が一定で、粒子径(半径)が大きくなった場合も、抗力の項だけが大きさ(半径)の二乗に比例して、他の作用力に比較して変化量が小さく、同様に水平方向の加速度dv
x/dt(減速量)が相対的に小さくなり、結果的に落下位置が遠くなる。
【0022】
ただし、前記式(A)及び(B)中の各記号は、それぞれ以下の概念を示す。
ρ
p:粉体の粒子密度
r:粉体の粒子半径
v
x:粉体粒子の水平方向速度
v
y:粉体粒子の鉛直下向き方向速度
t:時間
(dv
x/dt):粉体粒子の水平方向加速度(マイナス)
(dv
y/dt):粉体粒子の鉛直方向加速度(マイナス)
C
D:抵抗係数
ρ
f:気体密度
v:粒子の速度
θ:粒子運動の仰俯角
g:重力加速度
【0023】
したがって、例えば、比重が同じ粉体については、粒子径ごとに異なる落下位置で粉体回収部7上に落下し、粒子径が揃った粉体については、比重ごとに異なる落下位置で粉体回収部7上に落下することとなる。
【0024】
しかしながら、粉体原料2中の前記各粉体の粒子径又は比重がまちまちであると、例えば、粉体原料2中に小さな粒子径の粉体と大きな粉体が存在すると、大きな粉体ほど大きな運動量を持って送出されるため、粉体回収部7が配された位置を超えて落下し、この大粒子径の粉体を回収することができないことがある。
また、例えば、小さな粉体ほど、小さな運動量を持って送出されるため、粉体回収部7が配された位置よりも手前に落下し、この小粒子径の粉体を回収することができないことがある。
そのため、粒子径又は比重がまちまちの粉体原料2から利便性よく、粒子径又は比重が揃った粉体を選別回収するためには、容器6内の気圧調整が必要となる。
【0025】
今、粉体原料2中の一部に粉体回収部7が配された位置を超えて落下する大きな粒子径の粉体が含まれるとすると、容器6内の気圧をより高く設定すれば、送出された粉体原料2の運動に大きな空気抵抗を与えて粉体送出部4に近い位置で落下させることができ、この大きな粒子径の粉体を含む粉体原料2を粉体回収部7上に落下させることができる。
一方、粉体原料2中の一部に粉体回収部7が配された位置よりも手前に落下する小さな粒子径の粉体が含まれるとすると、容器6内の気圧をより低く設定すれば、送出された粉体原料2の運動に働く空気抵抗が小さくなり、粉体送出部4から遠い位置で落下させることができ、この小さな粒子径の粉体を含む粉体原料2を粉体回収部7上に落下させることができる。
【0026】
このように、本発明に係る慣性セパレータ装置及び粉体原料選別回収方法では、容器6内の気圧を調整することで、略同等の初速度で送出された粉体原料2を、その落下位置を調整しつつ粉体回収部7上に落下させ、該粉体回収部7の回収領域7a〜7hにて、粉体原料2中の粉体群をその粒子径又は比重ごとに選別回収させることを特徴の一つとする。
そして、本発明に係る慣性セパレータ装置及び粉体原料選別回収方法によれば、容器6内の気圧を調整するだけで、バグフィルタ等の固気分離機構を用いることなく、種々の粒子径及び比重からなる粉体原料2をその粒子径又は比重ごとに選別して回収することができる。
なお、本実施形態のように、容器6内の内外気圧差を利用する場合、粉体送出部4から粉体原料2が送出される際、気体の拡散に伴う粉体の分散効果が生じ、各粉体間の選別性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、粉体原料2中の各粉体の大きさ及び比重が所定の範囲であると、粉体原料2の送出運動が容器6内外の気圧差による吸引力に支配され、前記各粉体が略同等の初速度で送出されることとなる。この際、前記各粉体が略同等の初速度で送出されない場合、例えば、粒子径が大きく比重が高い粉体が、容器6内外の気圧差による吸引力に支配されず、該粉体が吸引力に支配される粒子径が小さく比重が低い粉体で略同等の初速度で送出されない場合には、容器6内の気圧を低く(真空度を高く)することで容器6内外の気圧差を大きく調整し、これらの粉体が略同等の初速度で送出されるように調整することができる。
したがって、本実施形態に係る慣性セパレータ装置1では、容器6内の気圧(真空度)を調整するだけで、送出される粉体原料2の初速度を調整することが可能であると同時に、前述した粉体回収部7上の落下位置を調整することができる。
【0028】
特に、本実施形態に係る慣性セパレータ装置1では、半径が1mm以下の微粉についても、粉体送出部4から送出された粉体原料2が一定の下降曲線を描く軌跡で落下するものである限り、選別回収の対象とすることができ、微粉の選別回収に対して極めて高い利便性を付与する。
なお、ここで一定の下降曲線を描く軌跡とは、送出後の粉体原料2が容器6内の気中に浮遊せず、重力の作用及び空気抵抗の作用により規則的な下降曲線を描いて落下する軌跡を意味する。
【0029】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る慣性セパレータ装置30の概要を示す説明図である。
該慣性セパレータ30は、前記第1の実施形態に係る慣性セパレータ1の装置構成に対し、更に、粉体導入部5を内包し、内部の気密性が保持される導入室31と、該導入室31に接続され、導入室31内の気圧を容器6内の気圧よりも高い気圧に調整する気圧調整ポンプ32とを有する。
この他、導入室31には、気圧計33が配設され、導入室31の外部から該導入室31内の気圧を確認することができる。また、導入室31には、該容器31内をベンチレーションして気圧を調節する気圧調節機構34が配設され、該気圧調節機構を操作することで導入室31内の気圧を調節することができる。ただし、この気圧調節機構34は、導入室31内の気圧、引いては導入室31内の気流を制御が可能である一方で、導入室31内に不規則な気流を発生させること等により粉体原料2の選別に悪影響を与えることがないように設計される。例えば、導入室31内の気体を移動させて気圧を調整する際、気体の移動方向に物理的な障害を設けない等の配慮が必要である。
【0030】
導入室31は、断面逆コ字状の函状体として形成され、粉体導入部5を内包するように容器6の前記コ字状の函状体部と端部同士を連接させて全体略一つのハウジングをなすように配設される。
ただし、導入室31としては、気密状態で粉体導入部5を内包するものであればよく、図示の例に限られない。例えば、導入室31と容器6とは、別体として配されていてもよい。
また、気圧調整ポンプ32としては、公知の気圧調整ポンプを用いることができる。なお、気圧調整ポンプ32は、導入室31に直接接続されている必要はなく、バッファ室などを介して導入室31に間接的に気圧調整ポンプ32を接続し、導入室31内の気圧を調整する気圧調整機構として構成されていてもよい。
【0031】
本実施形態に係る慣性セパレータ30では、粉体送出部4から粉体原料2を略同等の初速度で送出するために必要な容器6内外の気圧差を、気圧調整ポンプ8による容器6内の気圧調整に加え、気圧調整ポンプ32により導入室31内の気圧を容器6内の気圧より高く調整することで得ることができる。
したがって、粉体原料2中の粉体の粒子径又は比重に応じて、より細かな選別回収のための設定が可能となる。
【0032】
即ち、個々の粉体の粒子径又は比重が大きく異なる粉体群で構成される粉体原料2を選別回収する場合、前記大粒子径又は高比重の粉体は、前記小粒子径又は低比重の粉体に対して、大きな運動量を持って送出されることから、容器6内の気圧が低い状態であると、その運動に対する抗力としての空気抵抗が減り、容器6の空間容量により制約を受ける粉体回収部7の大きさによっては、粉体送出部4から粉体回収部7を超えて落下することがある。そのため、容器6内の気圧を高くする必要が生ずるが、第1の実施形態における慣性セパレータ1では、容器6内の気圧が大気圧よりも高くなると、粉体原料2を容器6内に送出させるための吸引力が得られない。
また、容器6内の気圧が大気圧未満の場合でも、前記大粒子径又は高比重の粉体を小粒子径又は低比重の粉体と略同等の初速度を送出させるのに十分な容器6内外の気圧差が得られないことがある。
これに対し、第2の実施形態に係る慣性セパレータ30では、気圧調整ポンプ32による導入室31内の気圧を容器6内の気圧よりも高くすることで、前記大粒子径又は高比重の粉体を小粒子径又は低比重の粉体と略同等の初速度を送出させるのに十分な容器6内外の気圧差が得られると同時に、容器6内の気圧を大気圧の制約を受けず、大気圧未満の場合でも比較的高く設定することができるため、選別回収対象となる粉体原料2中の粉体の粒子径又は比重に対応したより高レンジの選別回収を実施するための設定が可能となる。
なお、こうした観点から、本実施形態における第1の気圧調整ポンプとしての気圧調整ポンプ8には、加圧式及び減圧式のポンプを適宜選択して採用することができ、第2の気圧調整ポンプとしての気圧調整ポンプ32には、導入室31内の気圧を容器6内の気圧より高くすることができる限り、加圧式及び減圧式のポンプを適宜選択して採用することができる。
特に、小粒径及び低比重の粉体を粉体原料2として選別対象とする場合には、気圧調整ポンプ32を減圧式として、導入室31内の気圧を減圧するとともに、気圧調整ポンプ8を減圧式として、容器6内の気圧を減圧する態様とすることが好ましい。この際、導入室31内の気圧と容器6内の気圧の気圧差を大粒径及び高比重の粉体を粉体原料2として選別対象とする場合よりも小さくし、かつ、容器6内の気圧よりも導入室31内の気圧が高くなるように調整すれば、略同等の初速度で粉体原料2を容器6内に吸引するのに十分な吸引力が働くとともに、容器6内に送出された粉体原料2を選別するのに十分な抗力(空気抵抗)が働き、粉体原料2を粒径又は比重ごとに選別して回収することができる。
【0033】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態について
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る慣性セパレータ装置50の概要を示す説明図である。
該慣性セパレータ装置50は、前記第1の実施形態に係る慣性セパレータ1において、粉体導入部5に代えて、粉体導入部53が配設されて構成される。
【0034】
粉体導入部53は、粉体投入部51と粉体送出部52とで構成される。
粉体投入部51は、漏斗状の形状を有し、拡開された投入口から投入された粉体原料2を集粉して絞り口側から粉体送出部52に移送する。前記絞り口には、開閉式のシャッター(不図示)が配され、開状態で粉体原料2を粉体送出部52に一定量移送した後、閉状態となるように制御可能とされる。
【0035】
粉体送出部52は、機械的動力を粉体原料2に伝達させて送出する動力部を有する。
図4にその構造の一例を示す。
動力部60は、簡単な押出器の構造を有し、モータで駆動する回転ローラ61と、粉体原料2を押出して送出する送出ヘッド62と、基端側が回転ローラ61に軸支され、先端側が送出ヘッド62に軸支されるアーム部63とを有する。
粉体送出部52は、該動力部60を有し、送出ヘッド62が押出される方向に延在される管状部材65を有する。管状部材65の一部には、粉体投入部51の前記絞り口と連通される連通口64が形成される。
該管状部材65は、粉体原料2の水平投射が可能となるように、その軸心方向が水平方向と平行となるように配設されることが好ましい。
なお、前記動力部は、機械的動力を粉体原料2に伝達させて出力するものであればよく、図示の例に限らず、同様の機能を有する投擲器、ベルトコンベアなどの従来公知の構成を適宜採用することができる。
【0036】
連通口を介して粉体投入部51から送出された粉体原料2は、一定量が管状部材65内に保持される。保持された状態の粉体原料2は、回転ローラ61の駆動に基づき、送出ヘッド62により押出され、容器6内に送出される。
【0037】
このように構成される慣性セパレータ50では、第1の実施形態に係る慣性セパレータ1と異なり、粉体原料2を容器6内に略同等の初速度で送出する機能を動力部60が担う。
したがって、本実施形態においては、第1の実施形態と異なり、粉体回収位置を調整するための容器6内の気圧が調整されていればよく、容器6内外の気圧差に制約を受けることなく、粉体原料2を選別回収することができる。
なお、本実施形態の選別回収は、容器6内を減圧及び加圧のいずれの環境下でも実施することができる。
【0038】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第4の実施形態に係る慣性セパレータ装置70の概要を示す説明図である。
該慣性セパレータ装置70は、前記第3の実施形態に係る慣性セパレータ50において、容器6に代えて、容器71が配設されて構成される。
【0039】
容器71は、内部の気密性が保持可能で、内部に容器6と同様の傘状体部を有する全体略筒状部材としてなる。粉体導入部53は、容器71内に内包され、前記傘状体部の頂点位置に配される。
ただし、前記傘状体部の上部には、開口部分が形成され、容器71内の全体が同じ気圧で調整可能とされる。
【0040】
即ち、動力部60の機械的動力を用いて粉体原料2を略同等の初速度で送出する場合、容器内外の気圧差を形成する必要がないため、粉体導入部53が配設される空間と、粉体導入部53の粉体送出部52から粉体原料が送出される空間とは、同じ気圧で調整されてよい。
したがって、本発明の慣性セパレータ装置における容器としては、第3の実施形態に係る容器6、第4の実施形態における容器71のように、内部の気密性が保持され、その内部に粉体送出部52から送出される粉体原料2の送出方向に空間を有する構造であれば、特に制限はなく、種々の構造をとることができる。
【実施例】
【0041】
本発明の有用性を確認するために、前記第1の実施形態に係る慣性セパレータ装置1と略同様の構成からなる実施例に係る慣性セパレータ装置を作製した。
具体的には、所定の容量を有する真空チャンバーを容器6とし、市販の油回転真空ポンプ((株)ULVAC製、PKS−016)を気圧調整ポンプ8とし、容器6には、所定の口径のサンプル導入管を取り付けて粉体導入部5とし、容器6の底部に、サンプルを選別回収するための枡状の回収ケースを配して粉体回収部7とした。粉体回収部7の回収領域は、回収ケースを7cm間隔で間仕切りして形成した。
【0042】
サンプルとなる粉体原料としては、市販の低アルカリガラス製のマイクロガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製、EMB−10)を用いた。このマイクロガラスビーズの仕様は、平均粒子径5μm、粒子径範囲2〜10μm、嵩比重0.6g/cm
3である。
【0043】
この実施例に係る慣性セパレータ装置に対し、先ず、前記真空チャンバー内を所定の真空度に脱気させた後、サンプル導入管の開閉弁を開放して、再度真空度が安定するまで待機させた。
次いで、前記サンプル導入管の導入口に前記サンプルを導入し、前記真空チャンバー内に前記サンプルが水平投射されるように吸引させた。
前記サンプルの吸引後は、前記真空チャンバーの気圧を徐々に大気圧までに戻し、その後、前記回収ケース内の回収領域ごとに前記サンプルを回収した。
以上により、サンプル回収試験を行い、回収した前記サンプルを走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JSM−5410)により観察し、その撮影像の画像解析により、粒度等を算出した。
【0044】
前記実施例に係る慣性セパレータ装置に関し、粒子径が1μmの粒子と、粒子径が2μmの粒子と、粒子径が5μmの粒子とを水平投射した場合の軌跡を算出したグラフを
図6に示す。なお、算出に際しては、飛行中の詳細な係数変化等を考慮せず、前記真空チャンバー内の気圧を1,000Pa、送出の際の初速度を10m/sとして算出した。
該
図6に示すように、粒子の大きさによって落下位置が異なることが示唆される。
【0045】
前記サンプル回収試験の結果を
図7に示す。
該
図7に示すように、もとの前記サンプル(Original)に対し、回収位置1(前記サンプル導入管に近い側の回収領域)と回収位置4(前記サンプル導入管から遠い側の回収領域)とは、異なる粒子径−積算分布特性を示した。また、回収位置1では、回収位置4よりも小さな粒子径からなる粉体が多く分布しており、粒子径ごとに選別回収が可能であることが確認できる。
【0046】
また、もとの前記サンプル、前記回収位置1における前記サンプル、前記回収位置4における前記サンプルのSEM像を
図8(a)〜(c)に示す。
ここで、前記回収位置1における前記サンプルの平均粒子径は、2.8μmと確認され、前記回収位置4における前記サンプルの平均粒子径は、6.2μmと確認された。
このように前記回収位置1における前記サンプルのSEM像に対して、前記回収位置4における前記サンプルのSEM像では、粒子径が大きなものが多く回収されており、粒子径ごとに選別回収が可能であることが確認できる。