特許第6015962号(P6015962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015962レジスト下層膜形成組成物用添加剤及びそれを含むレジスト下層膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015962
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物用添加剤及びそれを含むレジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-539625(P2013-539625)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2012076458
(87)【国際公開番号】WO2013058189
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-230735(P2011-230735)
(32)【優先日】2011年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 徳昌
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/074075(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/074433(WO,A1)
【文献】 特開2012−036385(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/062888(WO,A1)
【文献】 特開2011−209667(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/074336(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/074335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11,
C08F 20/36,220/36,
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する重合体から成るレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは二価の連結基を表し、Xはtert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有するアシルオキシ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基を表す。)
【請求項2】
下記式(1´)で表される構造単位と下記式(2)で表される構造単位を有する共重合体から成るレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化2】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数2乃至4のアルキレン基を表し、前記アルキレン基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されてもよく、Xはtert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有するアシルオキシ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基を表し、Mは直接結合又は“−C(=O)−”、“−CH−”及び“−O−”からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む連結基を表し、Yは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数2乃至6のアルキル基を表し、また、p及びqは前記共重合体に含まれる構造単位のモル比を表し、該p及びqはそれぞれ0.1乃至0.9の範囲(但しp+q=1を満たす。)である。)
【請求項3】
式(1´)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位にさらに下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体から成るレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化3】
(式中、及びR及びそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、は炭素原子数2乃至4のアルキレン基を表し、前記アルキレン基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されてもよく、Xはtert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有するアシルオキシ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基を表し、M及びそれぞれ独立に直接結合又は“−C(=O)−”、“−CH−”及び“−O−”からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む連結基を表し、Yは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数2乃至6のアルキル基を表し、Zはヒドロキシ基、アルコキシ基又はカルボキシル基を少なくとも1つ有する、炭素原子数1乃至6のアルキル基、アリール基若しくはアリールアルキル基を表し、又は前記Mが直接結合を表す場合前記Zはカルボキシル基を表し、また、p、q及びrは前記重合体に含まれる構造単位のモル比を示し、該p、q及びrはそれぞれ0.1乃至0.9の範囲(但しp+q+r=1を満たす。)である。)
【請求項4】
樹脂バインダー、有機溶剤及び請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物用添加剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
さらに架橋剤及び架橋触媒を含む、請求項4に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
転写パターンを形成する加工対象膜を有する基板上に、請求項4又は請求項5に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上にレジストを被覆し、前記レジストを被覆した基板にKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線及び電子線からなる群から選択される放射線を照射し、その後現像してレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとしてドライエッチングにより前記基板上にパターンを転写して半導体素子を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成組成物に添加される添加剤に関する。特に、形成されるレジスト下層膜の表層を改質し、レジストとの密着性を向上させ、当該レジスト下層膜上に所望の形状のパターンが形成されることを目的とした添加剤(改質剤)に関する。更に、当該添加剤(改質剤)を含むレジスト下層膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ArF液浸リソグラフィーや極端紫外線(EUV)リソグラフィーにおいてはレジスト線幅の加工寸法の微細化が求められている。このような微細なレジストパターンの形成においては、レジストパターンと下地基板との接触面積が小さくなることによって、レジストパターンのアスペクト比(レジストパターンの高さ/レジストパターンの線幅)が大きくなり、レジストパターンの倒壊が生じやすくなることが懸念される。そのため、レジストと接触するレジスト下層膜(反射防止膜)においては、レジストパターンの倒壊が生じないようなレジストとの高い密着性が要求されている。
【0003】
レジスト下層膜においては、レジストとの高い密着性を発現するために、ラクトン構造をレジスト下層膜形成組成物の構成成分として用いることにより、得られるレジストパターンに対して密着性が向上することが報告されている(特許文献1)。すなわち、ラクトン構造のような極性部位を含む構造をレジスト下層膜形成組成物の構成成分として用いることにより、レジストパターンへの密着性が向上し、微細なレジストパターンにおいてもレジストパターンの倒壊を防止することが期待される。
【0004】
しかしながら、ArF液浸リソグラフィー、極端紫外線(EUV)リソグラフィーのような、より微細なレジストパターンの作成が要求されるリソグラフィープロセスにおいては、レジスト下層膜形成組成物の構成成分としてラクトン構造を含むだけでは、レジストパターンの倒壊を防止するためには十分と言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/017002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、レジストとの高い密着性を発現する手法として、レジストとレジスト下層膜との界面の化学状態をコントロールする方法が挙げられる。すなわち、ポジ型レジストにおいては、レジストとレジスト下層膜の界面の化学状態が酸性状態の場合、得られるレジストパターン形状がアンダーカット形状となり、レジストパターンの接触面積が極度に低下することでレジストパターンの倒壊を生じやすくなる。一方、レジストとレジスト下層膜の界面の化学状態を塩基性状態とすることで、レジストパターン形状のアンダーカット形状を抑制することができ、ラクトン構造のような極性部位を導入することによって得られるレジストとの密着性よりも強固な密着性を発現することが期待される。
【0007】
そこで本発明では、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンの当該レジスト下層膜との密着性を増大させ、さらには当該レジストパターンのアンダーカット形状を抑制するために、レジスト下層膜表面状態を塩基性状態に改質させるレジスト下層膜形成組成物用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表される構造単位を有する重合体から成るレジスト下層膜形成組成物用添加剤である。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは二価の連結基を表し、Xはtert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基を表す。)
【0009】
本発明の第二の態様は、下記式(1´)で表される構造単位と下記式(2)で表される構造単位を有する共重合体から成るレジスト下層膜形成組成物用添加剤である。
【化2】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数2乃至4のアルキレン基を表し、前記アルキレン基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されてもよく、Xはtert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基を表し、Mは直接結合又は“−C(=O)−”、“−CH−”及び“−O−”からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む連結基を表し、Yは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数2乃至6のアルキル基を表し、また、p及びqは前記共重合体に含まれる構造単位のモル比を表し、該p及びqはそれぞれ0.1乃至0.9の範囲(但しp+q=1を満たす。)である。)
【0010】
本発明の第三の態様は、樹脂バインダー、有機溶剤及び前記第一の態様又は第二の態様のレジスト下層膜形成組成物用添加剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。前記レジスト下層膜形成組成物は、架橋剤及び架橋触媒をさらに含有してもよい。
【0011】
本発明の第四の態様は、転写パターンを形成する加工対象膜を有する基板上に、前記第三の態様のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上にレジストを被覆し、前記レジストを被覆した基板にKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線及び電子線からなる群から選択される放射線を照射し、その後現像してレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとしてドライエッチングにより前記基板上にパターンを転写して半導体素子を作製する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る添加剤が添加されたレジスト下層膜形成組成物をリソグラフィープロセスに適用することによって、微細な線幅のレジストパターンの形成においても形成されたレジストパターンの倒壊を抑制することに有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一の態様に係る添加剤は、前記式(1)で表される構造単位を有する重合体から成る。前記重合体は、ホモポリマー及び共重合体いずれでもよい。前記式(1)においてLで表される二価の連結基としては特に限定されないが、例えば、−C(=O)OR−基、フェニレン基が挙げられ、当該−C(=O)OR−基のRは前記式(1´)で表される構造単位のRと同義である。
【0014】
さらに、前記式(1)においてXで表される、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基は、例えば、下記式(a)乃至(j)で表される。ここで、前記アシルオキシ基は、“−OC(=O)−R”(Rは、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有する有機基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有する有機基を表す。)で表され、前記tert−ブトキシカルボニル基は、“t−Boc”又は“Boc”と略記されることがある。
【化3】
【0015】
前記式(1)で表される構造単位を有する重合体は、例えば、末端にエポキシ基を有する重合体と当該エポキシ基に反応するモノマーとを反応させて得られる。このようなモノマーとして、例えば、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)バリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)ロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)イソロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)メチオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)セリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)トレオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)プロリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−ヒスチジン、N−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)チロシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)トリプトファン、O−ベンジル−N−(tert−ブトキシカルボニル)セリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸4−ベンジル、N−(tert−ブトキシカルボニル)グルタミン酸5−ベンジル、N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−S−ベンジルシステイン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジルトレオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジルチロシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−tert−ブチルチロシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N−カルボベンゾキシリジン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,4−ジフルオロフェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−フルオロフェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N1−ホルミルトリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)グルタミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシプロリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ニトロフェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−(パラトルエンスルホニルヒスチジンを例示することができる。これらの中で好ましくはN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)ロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)メチオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)セリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)プロリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシプロリンであり、特に好ましくはN−(tert−ブトキシカルボニル)プロリンである。
【0016】
本発明の第二の態様に係る添加剤は、前記式(1´)で表される構造単位と前記式(2)で表される構造単位を有する共重合体から成る。前記式(1´)において、Rで表される炭素原子数2乃至4のアルキレン基(当該アルキレン基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されてもよい。)としては、例えば、エチレン基、−CH−CH(OH)−CH−基が挙げられる。さらに、前記式(1´)において、Xで表されるtert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基又はtert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有するアシルオキシ基は、前記式(1)で表される構造単位のXと同義である。
【0017】
前記式(2)において、Mで表される“−C(=O)−”、“−CH−”及び“−O−”からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む連結基としては、例えば、−C(=O)O−基、−C(=O)O−CH−基が挙げられる。前記Mが直接結合を表す場合、Yで表される、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数2乃至6のアルキル基は、主鎖と直接結合する。前記式(2)で表される構造単位を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸モノフルオロエチル、メタクリル酸モノフルオロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、アクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、アクリル酸ヘキサフルオロプロピル、メタクリル酸ヘキサフルオロプロピル、アクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、メタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、アクリル酸ヘキサフルオロブチル、メタクリル酸ヘキサフルオロブチル、アクリル酸ヘプタフルオロブチル、メタクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸オクタフルオロペンチルが挙げられる。これらの例のうち好ましくは、メタクリル酸トリフルオロエチルである。前記式(1´)で表される構造単位と前記式(2)で表される構造単位を有する共重合体は、例えば、末端にエポキシ基を有するアクリル系共重合体と当該エポキシ基に反応する前述のモノマーとを反応させて得られる。
【0018】
さらに、レジストパターンの倒壊を抑制し、前記式(2)で表される構造単位を導入することでレジスト下層膜の機能性を向上させるためには、前記式(1)において、pは通常0.05乃至0.95であり、qは通常0.05乃至0.95である。好ましくは、pは0.2乃至0.8であり、qは0.2乃至0.8である。
【0019】
本発明の第二の態様に係る添加剤の共重合体は、さらに下記式(3)で表される構造単位を有することができる。
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Mは直接結合又は“−C(=O)−”、“−CH−”及び“−O−”からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む連結基を表し、Zはヒドロキシ基、アルコキシ基又はカルボキシル基を少なくとも1つ有する、炭素原子数1乃至6のアルキル基、アリール基若しくはアリールアルキル基を表し、又は前記Mが直接結合を表す場合前記Zはカルボキシル基を表し、また、p、q及びrは前記重合体に含まれる構造単位のモル比を示し、該p、q及びrはそれぞれ0.1乃至0.9の範囲(但しp+q+r=1を満たす。)である。)
【0020】
前記式(3)において、Mで表される“−C(=O)−”、“−CH−”及び“−O−”からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む連結基としては、例えば、−C(=O)O−基、−C(=O)O−CH−基が挙げられる。前記Mが直接結合を表す場合、Zで表される、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はカルボキシル基を少なくとも1つ有する、炭素原子数1乃至6のアルキル基、アリール基若しくはアリールアルキル基、又はカルボキシル基は、主鎖と直接結合する。ここで、前記アルコキシ基としては例えばメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられ、前記アリール基としては例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられ、前記アリールアルキル基としては例えばベンジル基、フェネチル基が挙げられる。前記式(3)で表される構造単位を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシペンチル、メタクリル酸ヒドロキシペンチル、ヒドロキシスチレン、4−tert−ブトキシスチレン、アクリル酸ヒドロキシフェニル、メタクリル酸ヒドロキシフェニル、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシスチレンが挙げられる。
【0021】
さらに、レジストパターンの倒壊を抑制し、前記式(3)で表される構造単位を導入することでレジスト下層膜の機能性を向上させるためには、pは通常0.05乃至0.95であり、qは通常0.05乃至0.95であり、rは通常0.05乃至0.95である。好ましくは、pは0.2乃至0.8であり、qは0.2乃至0.8であり、rは0.2乃至0.8である。
【0022】
本発明のレジスト下層膜形成組成物用添加剤が、樹脂バインダーと共に有機溶剤中に含まれることによって、本発明の第三の態様に係るレジスト下層膜形成組成物が構成される。前記レジスト下層膜形成組成物の、前記式(1)で表される構造単位を有する重合体又は前記式(1´)及び式(2)で表される構造単位を有する共重合体の含有割合は、例えば0.5質量%乃至30質量%であり、当該重合体又は共重合体の重量平均分子量は、例えば5000乃至50000、好ましくは10000乃至30000である。
【0023】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、及びこれらの有機溶剤から選択された2種以上の混合物が挙げられる。そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物に対する前記有機溶剤の割合は、例えば50質量%乃至99.5質量%である。
【0024】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる樹脂バインダーとしては、例えば、後述する合成例1によって得られるポリマーを適用することができる。また、当該樹脂バインダーとして、公知の反射防止膜形成用組成物又は公知のレジスト下層膜形成組成物に含まれるベースポリマーを、樹脂バインダーとして適用することができる。本発明のレジスト下層膜形成組成物から前記有機溶剤を除いた固形分に対し、樹脂バインダーの割合は、例えば50質量%乃至99.5質量%、好ましくは60質量%乃至90質量%である。
【0025】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、添加剤として前述の重合体又は共重合体を含むが、その割合は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の固形分に対し、例えば0.1質量%乃至30質量%、好ましくは1質量%乃至15質量%である。
【0026】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、架橋剤を任意成分として含むことができる。そのような架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(POWDERLINK〔登録商標〕1174)、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。上記架橋剤が使用される場合、当該架橋剤の含有割合は、前記樹脂バインダーに対し、例えば1質量%乃至30質量%である。
【0027】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、架橋反応を促進する架橋触媒を任意成分として含むことができる。そのような架橋触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホネート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等のスルホン酸化合物及びカルボン酸化合物が挙げられる。上記架橋触媒が使用される場合、当該架橋触媒の含有割合は、前記架橋剤に対し、例えば0.1質量%乃至10質量%である。前記架橋剤及び架橋触媒は、前記樹脂バインダーが自己架橋型ポリマーである場合は、本発明のレジスト下層膜形成組成物に必要ない成分である。
【0028】
本発明の第四の態様に係る半導体素子を作製する方法において用いられる基板は、代表的にはシリコンウエハーであるが、SOI(Silicon on Insulator)基板、又は砒化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)などの化合物半導体ウエハーを用いてもよい。前記基板上には、加工対象膜として、例えば、酸化珪素膜、窒素含有酸化珪素膜(SiON膜)、炭素含有酸化珪素膜(SiOC膜)、フッ素含有酸化珪素膜(SiOF膜)などの絶縁膜が形成されている。この場合、レジスト下層膜は加工対象膜上に形成される。
【0029】
本発明に係る方法において、レジストを被覆するために用いられるレジスト溶液は、ポジ型、ネガ型いずれでもよく、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線及び電子線からなる群から選択される放射線に感光する化学増幅型レジストを用いることができる。
【0030】
本発明に係る方法において、上記放射線の照射後に行われる現像に用いられる現像液として、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)水溶液のようなアルカリ現像液を用いることができる。
【0031】
以下、本発明について合成例及び実施例によって具体的に説明する。ただし、本発明は下記合成例及び実施例の記載に限定されるものではない。
【0032】
本明細書の下記合成例1乃至合成例12に示すポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次の通りである。
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
流量:0.6ml/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株))
また、下記合成例2及び合成例3に示すエポキシ価は、三菱化学(株)製の自動滴定装置(製品名:GT−100)による測定結果であり、滴定液には0.1M過塩素酸−酢酸溶液を用いた。
【実施例】
【0033】
<合成例1>
1,4−テレフタル酸ジグリシジル(製品名:EX−711〔登録商標〕、ナガセケムテックス(株))14.00g、イソフタル酸8.08g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.90g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル91.94gを混合し、撹拌しながら4時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。この溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))23g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))23gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量25000であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる樹脂バインダーに相当する。
【0034】
<合成例2>
アゾビスイソブチロニトリル2.67gにプロピレングリコールモノメチルエーテル152.44gを加え、80℃に昇温した。この加熱溶液中に、メタクリル酸グリシジル37.00g、メタクリル酸トリフルオロエチル10.94g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル50.00gの混合溶液を少しずつ滴下し、80℃で17時間反応させることで、ポリマー溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量6200であり、このポリマー溶液のエポキシ価は1.04eq/kgであった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体を合成するための中間体に相当する。
【0035】
<合成例3>
アゾビスイソブチロニトリル2.89gにプロピレングリコールモノメチルエーテル168.86gを加え、80℃に昇温した。この加熱溶液中に、メタクリル酸グリシジル40.00g、メタクリル酸トリフルオロエチル11.83g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル50.00gの混合溶液を少しずつ滴下し、80℃で14時間反応させることで、ポリマー溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量7000であり、このポリマー溶液のエポキシ価は0.88eq/kgであった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体を合成するための中間体に相当する。
【0036】
<合成例4>
上記合成例3で得られたポリマー溶液17.00g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−グリシン2.63g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.09g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル7.36gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量13600であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有する。
【0037】
<合成例5>
上記合成例3で得られたポリマー溶液16.50g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニン2.76g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.08g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル7.97gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量13200であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有する。
【0038】
<合成例6>
上記合成例3で得られたポリマー溶液15.00g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシン3.07g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.08g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル9.48gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量13900であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有する。
【0039】
<合成例7>
上記合成例3で得られたポリマー溶液14.50g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−メチオニン3.20g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.07g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル10.09gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量20600であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有する。
【0040】
<合成例8>
上記合成例3で得られたポリマー溶液16.00g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリン2.91g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.08g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル8.63gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量15400であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基を有する。
【0041】
<合成例9>
上記合成例2で得られたポリマー溶液15.00g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン3.37g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.09g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル12.70gを混合し、撹拌しながら15時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量12300であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有する。
【0042】
<合成例10>
上記合成例3で得られたポリマー溶液15.00g、trans−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシ−L−プロリン3.07g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.08g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル9.47gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量15200であった。本合成例で得られたポリマーは、本発明に係る添加剤の共重合体に相当し、tert−ブトキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有する。
【0043】
<合成例11>
上記合成例3で得られたポリマー溶液14.50g、N−カルボベンゾキシ−L−プロリン3.20g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.07g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル10.08gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量12700であった。本合成例で得られたポリマーは、共重合体であって、ベンジルオキシカルボニル基で保護された含窒素複素環を有する。
【0044】
<合成例12>
上記合成例3で得られたポリマー溶液19.50g、L−ピログルタミン酸2.23g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.10g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル5.27gを混合し、撹拌しながら14時間加熱還流することで、ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量13600であった。本合成例で得られたポリマーは、共重合体であって、保護基で保護されていない含窒素複素環を有する。
【0045】
<実施例1>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例4で得られたポリマー溶液(添加剤)0.17g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.85g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0046】
<実施例2>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例5で得られたポリマー溶液(添加剤)0.14g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.88g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0047】
<実施例3>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例6で得られたポリマー溶液(添加剤)0.17g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.85g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0048】
<実施例4>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例7で得られたポリマー溶液(添加剤)0.19g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.83g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0049】
<実施例5>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例8で得られたポリマー溶液(添加剤)0.18g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.84g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0050】
<実施例6>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)2.00g、上記合成例9で得られたポリマー溶液(添加剤)0.24g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.09g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル39.79g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル4.63gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0051】
<実施例7>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例10で得られたポリマー溶液(添加剤)0.17g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.85g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、本発明のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0052】
<比較例1>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)2.00g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.09g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル36.96g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル4.29gを混合して溶解させることで、レジスト下層膜形成組成物を調製した。本比較例は、本発明に係る添加剤を含まない例である。
【0053】
<比較例2>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例11で得られたポリマー溶液(添加剤)0.16g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.86g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、レジスト下層膜形成組成物を調製した。本比較例は、本発明に該当しない添加剤を含む例である。
【0054】
<比較例3>
上記合成例1で得られたポリマー溶液(樹脂バインダー)1.50g、上記合成例12で得られたポリマー溶液(添加剤)0.18g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.06g、5−スルホサリチル酸0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル29.84g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル3.47gを混合して溶解させることで、レジスト下層膜形成組成物を調製した。本比較例は、本発明に該当しない添加剤を含む例である。
【0055】
(レジストパターンの形成及び評価)
窒素含有酸化珪素膜(SiON)が蒸着された(膜厚31.5nm)シリコンウエハー上に、本明細書の実施例1乃至実施例7、及び比較例1乃至比較例3で調製された各レジスト下層膜形成組成物を、膜厚10nmとなるようにスピンコートし、205℃で60秒間ベークすることにより、レジスト下層膜を形成した。そのレジスト下層膜上に、ArFエキシマレーザー用レジスト溶液(JSR(株)製、製品名:AR2772JN)をスピンコートし、110℃で90秒間ベークを行い、ArFエキシマレーザー用露光装置((株)ニコン製、NSR−S307E)を用い、所定の条件で露光した。露光後、110℃で90秒間ベーク(PEB)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、現像及びリンス処理をし、レジストパターンを形成した。
【0056】
目的の線幅を80nmラインアンドスペースとし、最適フォーカス時における露光量変化とレジストパターン倒壊の関係について検討するために、レジストパターンが倒壊しない最高露光量(限界露光量)におけるレジストパターン寸法(パターン倒れ限界寸法)を測長SEMより確認した。これにより、本発明に係る添加剤を用いることで、高露光量領域でのレジストパターンの倒壊を防止し、微細なレジストパターンを形成することができるか否かを確認することができる。また、目的線幅である80nmラインアンドスペースにおけるレジストパターンの断面形状を、断面SEMにより確認した。これにより、本発明に係る添加剤を用いることで、レジストパターンの倒壊の原因となるレジスト形状を判断することができる。
【0057】
得られたレジストパターンの、パターン倒れ限界寸法と、その時の露光量(限界露光量)、及びレジストパターンの断面形状の結果を、下記表1に示す。このパターン倒れ限界寸法は、小さいほど好ましい。
【0058】
表1より、本発明に係る添加剤を含む実施例1乃至実施例7のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成した場合は、比較例1乃至比較例3のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成した場合よりも限界露光量が高く、且つパターン倒れ限界寸法が小さいことから、微細なレジストパターンを形成する際にレジストパターンの倒壊を防止することができる。また、実施例1乃至実施例7のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成した場合は、得られたレジストパターンの断面形状がテーパー形状(台形形状)であったのに対し、比較例1乃至比較例3のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成した場合ではアンダーカット形状であった。レジストパターンとレジスト下層膜との接触面積が増大するテーパー形状は、レジストパターンの倒壊を防止することができる。すなわち、実施例1乃至実施例7のレジスト下層膜形成組成物に含まれる本発明に係る添加剤は、レジストパターンの倒壊を防止するために有用な効果を示すことが確認された。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載された範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。