(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(1.本発明によるマンネンタケ子実体)
本発明は、マンネンタケ属に属する菌類が形成する、新規のマンネンタケ子実体を提供する。
【0020】
本発明によるマンネンタケ子実体の形状について、以下に説明する。
【0021】
本発明によるマンネンタケ子実体は、
図3(A)に示されるように、“柄”の部分と“傘”の部分とを有する。本発明によるマンネンタケ子実体の“柄”は、収穫された子実体の基部から1/2〜3/4程度の部分を指し、枝分かれした部位も含む。一方、本発明によるマンネンタケ子実体の“傘”は、子実体の先端部分から1/5〜1/4程度の部分を指す。
【0022】
本発明によるマンネンタケ子実体は、
図3(B)に示されるように、“下部”、“中間部”、及び“先端部”の各部位に分類される。本発明によるマンネンタケ子実体の“下部”は、柄のうち枝分かれしていない最下部の部位を指す。“中間部”は、下部より上方に存在する部位であり、柄のうち枝分かれしている部分を含む。“先端部”は、中間部より上方に存在する部位であり、子実体の先端部分を指す。
【0023】
本発明によるマンネンタケ子実体の柄の殻皮の厚さは、80μm以下である。本明細書において殻皮とは、マンネンタケ子実体の最も外側に存在する褐色又は茶色の部分であり、マンネンタケ子実体による分泌物により形成されたものである(
図4及び
図5参照)。
【0024】
マンネンタケ子実体の柄の殻皮の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定され得る。本発明の効果を奏する測定方法であれば、適宜選択され得る。
【0025】
マンネンタケ子実体の殻皮には後述する有効成分を含まないため、マンネンタケ子実体を、例えば、乾燥後、破砕又は粉末化して加工物とした場合、殻皮は不純物として扱われる。本発明によるマンネンタケ子実体の殻皮の厚さは薄いため、マンネンタケ子実体全体の容積に対する殻皮の占める割合は低く、前述の不純物の含有量を低減することができる。
【0026】
本発明によるマンネンタケ子実体の柄の殻皮の厚さは、80μm以下であるが、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。マンネンタケ子実体の殻皮の厚さが薄いほど、前述の不純物の含有量を低減することができる。
【0027】
本発明によるマンネンタケ子実体は、ガノデリン酸を、子実体の乾燥重量100g中120mg以上含有する。また、ガノデリン酸は、子実体の乾燥重量100g中、好ましくは150mg以上、より好ましくは200mg以上、さらにより好ましくは230mg以上含まれる。ガノデリン酸としては、ガノデリン酸A、ガノデリン酸F、ガノデリン酸B等が例示されるが、例えば、ガノデリン酸Aを高濃度含有することで、高い抗HIV作用、血圧降下作用、腫瘍細胞毒性作用、抗アレルギー作用、コレステロール低下作用、肝障害改善作用等が期待される。
【0028】
本明細書において“乾燥重量”とは、子実体中の水分含有量が0〜10質量%の状態における子実体の重量をいう。該水分含有量は、例えば、第十五改正日本薬局方 一般試験法 2.物理的試験法 その他の物理的試験法 41.乾燥減量試験法に従い測定された値である。
【0029】
本発明によるマンネンタケ子実体のガノデリン酸の含有量は、例えば、子実体の部位により異なる。本発明によるマンネンタケ子実体の先端部では、柄に比してガノデリン酸が多く含まれ、例えば、子実体の乾燥重量100g中240mg以上、好ましくは260mg以上、より好ましくは280mg以上含まれる。
【0030】
マンネンタケ子実体中のガノデリン酸A含量は、乾燥したマンネンタケ子実体を用いて測定される。子実体の乾燥は、例えば、食品用熱風乾燥機により行われる。
【0031】
マンネンタケ子実体中のガノデリン酸A含量は、逆相HPLCを用いてガノデリン酸Aの標準物質のリテンションタイムと本発明によるマンネンタケ子実体のそれとを比較することで測定される。具体的には、以下のように測定される。マンネンタケ子実体の試料にメタノール及び水の混液(1:1)を加え、加熱環流による抽出を3回行い、得られた抽出液を適宜希釈して定量用試料とする。定量用試料中のガノデリン酸Aについて、高速液体クロマトグラフィー(例えば、カラム:Inertsil ODS−2、φ4.6mm×25cm、5μm、移動相:水、アセトニトリル、メタノール及び酢酸の混液、測定波長:254nm、流量:2.0mL/min、カラム温度:40℃)、又は液体クロマトグラフィー質量分析法(例えば、カラム:Inertsil ODS−2、φ4.6mm×25cm、5μm、移動相:水、アセトニトリル、及び酢酸の混液、流量:1.0mL/min、カラム温度:40℃、イオン化法:エレクトロスプレー(負イオン検出モード)、設定イオン数:m/z 515.2)にて定量する。
【0032】
本発明によるマンネンタケ子実体の柄断面を観察すると、傘状マンネンタケ子実体及び鹿角状マンネンタケ子実体で観察されるような暗褐色部分(
図4(A))は見られず、中心部に薄褐色の斑点が見られるのみである(
図4(B))。該暗褐色部分及び薄褐色の斑点は、後述の実施例の通り、殻皮と同様の菌糸以外の物質(殻皮様物質)により構成される。殻皮様物質は、殻皮と同様に、ガノデリン酸及びβ−グルカンといった有効成分を含まないため、マンネンタケ子実体を加工物とした場合、不純物として扱われる。本発明によるマンネンタケ子実体は、傘状マンネンタケ子実体及び鹿角状マンネンタケ子実体に比して、殻皮様物質の含量が少ない(
図4(B))ため、前述の不純物の含有量を低減することができる。
【0033】
本発明によるマンネンタケ子実体の柄は、下部から先端部に向かって肥大し、また、既存の傘状マンネンタケ子実体(
図1)とは異なり、柄と傘とは連続して連なっていてもよい(
図3参照)。本発明によるマンネンタケ子実体は、形状上、既存の傘状マンネンタケ子実体(
図1)及び鹿角状マンネンタケ子実体(
図2)とは明確に区別され得る。本発明によるマンネンタケ子実体は、形状上、傘と柄との明確な差が見られない。また、既存の鹿角状マンネンタケ子実体と比較すると、柄が太く、先端部が上部に向かって徐々に拡張している。
【0034】
本明細書において“傘状マンネンタケ子実体”とは、
図1に例示される形状を有するものであり、赤霊芝、玉来(中国名)、三香(中国名)、赤芝、黒芝、青芝、白芝、黄芝、紫芝(以上(赤芝〜紫芝)を称して六芝)、千草、瑞草、万年芝、万年菌、吉祥菌、幸菌、首途(かどいで)菌、不死草、神芝、山神乃杓子(やまのかみのしゃくし)、猫乃杓子、孫杓子等とも称され、傘の部分と柄の部分とが明確に区別され得るものである。また、本明細書において“鹿角状マンネンタケ子実体”とは、
図2に例示される形状を有するものであり、鹿角芝等とも称され、先端部に傘を有さず、細い柄を有するものである。
【0035】
本発明によるマンネンタケ子実体は、特殊な銀杏状の形状を有する“銀杏状マンネンタケ子実体”であってもよい。本明細書において“銀杏状マンネンタケ子実体”とは、子実体の先端部が銀杏の葉の形に類似した特殊な形状を有し(
図3)、柄の殻皮の厚さが80μm以下であり、かつガノデリン酸をマンネンタケ子実体の乾燥重量100g中120mg以上含有するマンネンタケ子実体をいう。銀杏状マンネンタケ子実体は、既存の傘状マンネンタケ子実体、鹿角状マンネンタケ子実体、及び“中間型”マンネンタケ子実体(金子周平,石川景子:マンネンタケ(霊芝)の栽培技術開発と育種,福岡県森林林業技術センター研究報告,第9号,1−7,2008)とは全く異なる、新規のマンネンタケ子実体である。
【0036】
本発明によるマンネンタケ子実体は、有効成分として、ガノデリン酸の他にさらに、例えばβ−グルカンを、マンネンタケ子実体の乾燥重量100g中50g以上含有していてもよい。β−グルカンは、子実体の乾燥重量100g中、好ましくは52g以上、より好ましくは54g以上含まれる。本発明によるマンネンタケ子実体は、β−グルカンを高濃度含有することで、高い抗癌作用、免疫増強作用等が期待される。
【0037】
本発明によるマンネンタケ子実体のβ−グルカンの含有量は、例えば、子実体の部位により異なる。本発明によるマンネンタケ子実体の柄中間部では、先端部及び柄下部に比してβ−グルカンが多く含まれ、例えば、子実体の乾燥重量100g中58g以上、好ましくは60g以上含まれる。
【0038】
マンネンタケ子実体中のβ−グルカン含量は、乾燥したマンネンタケ子実体を用いて測定される。子実体の乾燥は、例えば、食品用熱風乾燥機により行われる。
【0039】
本発明によるマンネンタケ子実体中のβ−グルカン含量は、以下のように測定される。マンネンタケ子実体の試料に0.08mol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)を加え、α−アミラーゼを加えてインキュベートする。その後放冷し、0.275mol/L水酸化ナトリウム溶液でpH7.5±0.1に調整し、プロテアーゼ溶液(50mg/mLリン酸緩衝液)を加えてインキュベートする。その後放冷し、0.325mol/L塩酸でpH4.3±0.1に調整し、アミログルコシダーゼを加えてインキュベートする。95%エタノールを加え、室温で1時間以上放置する。ガラスフィルター(あらかじめセライトでろ過層を形成してあるもの)で吸引ろ過し、得られた残留物を、フェノール硫酸法で糖の反応を示さなくなるまで、80%エタノールで洗浄する。その後、アセトンで洗浄し、72%硫酸を加えて分解反応を行う。水を加え、沸騰水浴中で加水分解反応を行う。その後、冷却、中和、及びろ過し、ろ液を用いてグルコースオキシダーゼ法によりブドウ糖を定量する。β−グルカン含有量については、β−グルカン(g/100g)=ブドウ糖(g/100g)×0.9として算出する。
【0040】
本発明によるマンネンタケ子実体は、例えば、後述の栽培方法により得られる。
【0041】
(2.本発明によるマンネンタケ子実体の栽培方法)
本発明によるマンネンタケ子実体の栽培方法について、以下に詳細に説明する。
【0042】
本発明によるマンネンタケ子実体の栽培に用いる菌株は、一般的にマンネンタケ子実体を形成し得る菌株であれば制限されることなく用いることができ、例えば、担子菌門ハラタケ亜門ハラタケ綱サルノコシカケ目マンネンタケ科マンネンタケ属の菌類(例えばマンネンタケ、ガノデルマ・ルシドゥム(学名:
Ganoderma lucidum)等)が挙げられる。市販のガノデルマ・ルシドゥム菌株を用いてもよい。本発明の効果を奏する菌株であれば、適宜選択され得る。
【0043】
はじめに、上述の菌株を原木又は培地にて培養することで、原木又は培地に菌株を植えつける(以下、この過程を「培養段階」という)。
【0044】
培養段階において用いられる原木としては、例えば、シラカバ、ブナ、クヌギ、コナラ、ミズナラ、アベマキ、サクラ、ウメ、ニセアカシア等の広葉樹、又はマツ、モミ、ツガ等の針葉樹が挙げられる。このような原木を、通常、切断(玉切り)し、公知の方法により加熱滅菌してから培養段階に用いる。植菌方法については、特に制限されず、木口面平塗り法、木口面穿孔法等が例示される。本発明の効果を奏する原木及び植菌方法であれば、適宜選択され得る。
【0045】
培養段階において用いられる培地としては、菌株が資化し得るのに必要な炭素源、窒素源、無機物、及びその他必要な栄養素を適宜含有する培地であれば用いることができ、例えば、オガ粉(例えば、シラカバ、クヌギ、コナラ、カエデ等の広葉樹、又はマツ、モミ、ツガ等の針葉樹から作られる)、米糠、フスマ、コーンブラン、水等を適宜混合させたものが用いられる。このような培地を、通常、公知の方法により加熱滅菌してから培養段階に用いる。該培地は、例えば、広口瓶、養袋等の容器に充填して用いられる。本発明の効果を奏する培地であれば、適宜選択され得る。
【0046】
培養段階は、暗所にて行われる。培養温度は、培養効率の観点から、例えば、8〜38℃が好ましく、15〜30℃がさらに好ましい。また、湿度は、培養効率の観点から、例えば、45〜75%が好ましく、60%がさらに好ましい。さらに培養期間は、例えば、60〜120日が好ましく、通常、原木又は培地の全体が菌糸により白く覆われた時点で培養段階を完了させる。本発明の効果を奏する培養温度、湿度、及び培養期間であれば、適宜選択され得る。
【0047】
培養段階により、菌株由来の菌糸が原木又は培地中に蔓延し,原木又は培地に菌株が植えつけられた状態となる。
【0048】
以上で培養段階は終了となる。次に、前述の通り菌株が植えつけられた原木又は菌床を用いて、所定の条件下でマンネンタケ子実体に生育させる(以下、この過程を「栽培段階」という)。
【0049】
栽培段階は、明条件及び暗条件のサイクルを繰り返すことにより白色光を間欠照射する工程を含む。本明細書において、明条件とは、栽培段階において栽培中のマンネンタケ子実体に光を照射することをいい、暗条件とは、栽培段階において栽培中のマンネンタケ子実体を光を照射することなく暗所に置くことをいう。
【0050】
栽培段階における明条件の時間は、暗条件のそれよりも長く設定される。具体的には、明条件は、15〜240分で設定され、一方、暗条件は、すでに設定された明条件よりも短時間でありかつ少なくとも5分間以上で設定される。より確実に本発明によるマンネンタケ子実体を生育させるために、明条件の時間は、20〜180分が好ましく、20〜50分がさらに好ましい。暗条件の時間は、明条件が180分の場合には例えば10〜90分、明条件が120分の場合には例えば10〜60分、明条件が60分の場合には例えば10〜30分、明条件が30分の場合には例えば10〜20分、明条件が20分の場合には例えば10分と設定され得る。なお、明条件と暗条件とを同じ長さの時間、例えば、明条件12時間及び暗条件12時間に設定して栽培を行っても、本発明によるマンネンタケ子実体を得ることはできない。本発明の効果を奏する明条件及び暗条件の設定時間であれば、適宜選択され得る。
【0051】
栽培段階において、上述のように明条件及び暗条件のサイクルを繰り返すことにより、栽培中のマンネンタケ子実体に白色光を間欠照射する。
【0052】
間欠照射に用いられる白色光の照度は、より確実に本発明によるマンネンタケ子実体を生育させるために、例えば、5〜2000ルクスとされ、好ましくは10〜500ルクスとされる。白色光の光源として、例えば、発光ダイオード(LED)電球、光ファイバー、白色蛍光灯等を用いることができるが、発光波長が太陽光に近く、省電力であり、寿命が長いという観点から、LED電球が好適に用いられる。本発明の効果を奏する白色光の照度及び光源であれば、適宜選択され得る。
【0053】
栽培段階における間欠照射は、マンネンタケ子実体が十分に生育するまで(例えば、子実体の高さが20〜30cmになるまで)継続して行われ、例えば、30〜40日間継続して行われる。本発明の効果を奏する間欠照射の期間であれば、適宜選択され得る。
【0054】
栽培段階は、例えば、温度24〜28℃、湿度75〜85%の条件下で行われる。本発明の効果を奏する栽培条件であれば、適宜選択され得る。
【0055】
上述の栽培方法により、本発明によるマンネンタケ子実体が得られる。本発明による栽培方法においては、特殊又は高価な菌株、原木又は菌床、光源、設備等を要することなく、明条件及び暗条件のサイクルを繰り返して白色光による間欠照射を制御することで、簡便かつ安価にマンネンタケ子実体を栽培することが可能である。
【0056】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明によるマンネンタケ子実体の栽培方法において、明条件下でマンネンタケ子実体は傘を開こうとするが、暗条件が途中で入ることでその過程が中断されるため、本発明による銀杏状マンネンタケ子実体は、特殊な形状に生育すると考えられる。明条件の時間は暗条件のそれより長く設定されるが、両者間のバランスにより、本発明によるマンネンタケ子実体が形成されると考えられる。
【0057】
(3.本発明によるマンネンタケ子実体加工物)
収穫された本発明によるマンネンタケ子実体は、例えば、乾燥後、破砕又は粉末化されて加工される。このように得られたマンネンタケ子実体加工物は、例えば、健康補助食品、漢方薬原料等として用いられ得る。該マンネンタケ子実体加工物には、健康補助食品、漢方薬原料等に通常用いられる賦形剤、保存剤等の添加剤を適宜含有させることができる。
【0058】
本発明によるマンネンタケ子実体は、子実体全体として、有効成分であるガノデリン酸及びβ−グルカンを高濃度含有する場合、傘、柄等の部位別に分離することなく、子実体全体を乾燥及び破砕してマンネンタケ子実体加工物とすることができる。また、本発明によるマンネンタケ子実体においては、前述の通り、殻皮の厚さが薄く、殻皮様物質の含量が少ないため、マンネンタケ子実体加工物中の不純物(有効成分を含まない)の含有量を低減することができる。このため、本発明によれば、簡便かつ安価に、有効成分を高濃度含有し、不純物含量の少ない高品質のマンネンタケ子実体加工物を得ることが可能である。
【実施例1】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(マンネンタケ子実体の栽培)
ナラ原木を直径約12cm及び高さ約12cmの大きさに切断し、側面を新聞紙で覆った後、ポリプロピレン製の袋に入れた。活着促進用培地としてオガ粉と米糠とを容量比4:1に混合したものを該ナラ原木の上部にのせ、蒸気による加熱殺菌を行い、清浄空間にて常温まで放冷した。その後、市販のガノデルマ・ルシドゥム種菌(製品名:まんねんたけ種菌 日農A50 早生種、日本農林菌種社製)50mLを接種した。接種後、袋の口を留め、温度15〜30℃、湿度45〜75%にて暗所で培養した。該培養を、60〜120日間、該原木の全体が菌糸により白く覆われるまで行った。
【0061】
その後、該原木を、温度24〜28℃、湿度75〜85%で、以下の照射条件A、B及びCにて30日間、マンネンタケ子実体を生育させた。照射には、発光波長が太陽光近似の白色LED電球を用い、照度は照度10〜500ルクス(原木の置かれた位置がLED電球から遠い場合、原木近傍の照度は10ルクス程度であった)であった。
【0062】
照射条件Aにおいては、明条件12時間及び暗条件12時間のサイクルを繰り返す間欠照射を行った。照射条件Bにおいては、明条件10分及び暗条件20分のサイクルを繰り返す間欠照射を行った。照射条件Cにおいては、明条件20分及び暗条件10分のサイクルを繰り返す間欠照射を行った。
【0063】
照射条件Aでの栽培により得られたマンネンタケ子実体を
図1に示す。該マンネンタケ子実体は、一般的なガノデルマ・ルシドゥムの子実体形状である傘状であった。以下、照射条件Aでの栽培により得られたマンネンタケ子実体を「傘状」という。
【0064】
照射条件Bでの栽培により得られたマンネンタケ子実体を
図2に示す。該マンネンタケ子実体は、既存の鹿角状マンネンタケ子実体の形状であった。以下、照射条件Bでの栽培により得られたマンネンタケ子実体を「鹿角状」という。
【0065】
照射条件Cでの栽培により得られたマンネンタケ子実体を
図3に示す。該マンネンタケ子実体は、柄が下部から先端部に向かって肥大し、柄と傘とが連続して連なり、先端部が銀杏状の特殊な形状であった。以下、照射条件Cでの栽培により得られたマンネンタケ子実体を「銀杏状」という。
【0066】
前述の傘状、鹿角状、及び銀杏状の収量及び固形分比率を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
以上より、照射条件を変えることにより、形状が大きく異なるマンネンタケ子実体が得られることが明らかとなった。また、明条件20分及び暗条件10分のサイクルを繰り返す間欠照射により、既存の傘状及び鹿角状とは大きく異なる、銀杏状の形状を有するマンネンタケ子実体が得られることが明らかとなった。
【実施例2】
【0069】
(マンネンタケ子実体のβ−グルカン及びガノデリン酸A含量の測定)
実施例1で得られた傘状、鹿角状、及び銀杏状を、熱風乾燥機(製品名:リーダー食品・椎茸乾燥機 循環式 ST−30A、黒田工業社製)を用いて、熱風設定温度50〜60℃、合計加熱時間19時間にて乾燥させた後、粉末とし、β−グルカン及びガノデリン酸Aの含有量を測定した。傘状については、傘、及び柄、鹿角状については、先端部、及び下部、銀杏状については、先端部、柄の中間部、及び柄の下部の各部位に分けて定量した。子実体全体における上記成分の含有量については、各部位の重量を計測して各部位の乾燥重量割合(%)を求め、それに各部位の上記成分の含有量を乗じた値を合算することで算出した。
【0070】
β−グルカン含有量を以下のように測定した。マンネンタケ子実体の試料0.15〜0.30gを300mL容トールビーカーに採取し、0.08mol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)を加え25mLとした。α−アミラーゼ(製品番号:A−3306、シグマアルドリッチ社)0.1mLを加え、沸騰水浴中で30分間、振とうしながらインキュベートした。その後放冷し、0.275mol/L水酸化ナトリウム溶液5mLでpH7.5±0.1に調整し、プロテアーゼ(製品番号:P−5380、シグマアルドリッチ社)溶液(50mg/mLリン酸緩衝液)0.1mLを加え、60℃で30分間、振とうしながらインキュベートした。その後放冷し、0.325mol/L塩酸3mLでpH4.3±0.1に調整し、アミログルコシダーゼ(製品番号:A−9913、シグマアルドリッチ社)0.1mLを加え、60℃で30分間、振とうしながらインキュベートした。その後、95%エタノール(60℃)4倍容を加え、室温で1時間以上放置した。1G3ガラスフィルター(あらかじめ約1gのセライトでろ過層を形成してあるもの)で吸引ろ過し、得られた残留物を、フェノール硫酸法で糖の反応を示さなくなるまで、80%エタノールで洗浄した。その後、アセトンで洗浄し、72%硫酸5mLを加えて、20℃で4時間、分解反応を行った。水70mLを加え、沸騰水浴中で2時間、加水分解反応を行った。その後、冷却、中和し、水200mLで定容した。その後、ろ紙(製品番号:5B、アドバンテック社)を用いてろ過し、ろ液を用いてグルコースオキシダーゼ法(和光純薬工業社製Glucose CII−Test Wakoを使用)によりブドウ糖を定量した。β−グルカン含有量については、β−グルカン(g/100g)=ブドウ糖(g/100g)×0.9として算出した。
【0071】
ガノデリン酸A含有量を以下のように測定した。マンネンタケ子実体の試料1.5gにメタノール及び水の混液(1:1)150mLを加え、加熱環流(80℃、1時間)による抽出を3回行った。その後500mLに定容し、定量用試料とした(銀杏状の柄については、分取1mL、定容25mLのものを定量用試料とした)。定量にあたって、ガノデリン酸Aの標準品(常盤植物科学研究所、ガノデリン酸A)を用いて、標準溶液(50μg〜0.02μg/mL)を調製した。
【0072】
銀杏状の先端部については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて、標準品による検量線(50〜0.2μg/mL)を用いて定量した。HPLC条件を以下に示す。
HPLC装置:島津製作所 LC−20AD又はLC−10ADvp
検出器:島津製作所 SPD−20Av又はSPD−10Avp
カラム:Inertsil ODS−2、φ4.6mm×25cm、5μm
移動相:水、アセトニトリル、メタノール及び酢酸の混液
測定波長:254nm
流量:2.0mL/min
カラム温度:40℃
【0073】
傘状の傘及び柄については、HPLCにて、標準品による検量線(傘状の傘:50〜0.2μg/mL、傘状の柄:20〜0.2μg/mL)を用いて定量した。HPLC条件を以下に示す。
HPLC装置:島津製作所 LC−20AD又はLC−10ADvp
検出器:島津製作所 SPD−20Av又はSPD−10Avp
カラム:Unison UK−C18、φ4.6mm×25cm、3μm
移動相:水、アセトニトリル、メタノール及びリン酸の混液
測定波長:254nm
流量:0.8mL/min
カラム温度:40℃
【0074】
銀杏状の柄、鹿角状の先端部及び下部については、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)にて、標準品による検量線(0.5〜0.02μg/mL)を用いて定量した。LC−MS条件を以下に示す。
LC−MS装置:日本ウォーターズ社 alliance2695
MS部:日本ウォーターズ社 ZQ
カラム:Inertsil ODS−2、φ4.6mm×25cm、5μm
移動相:水、アセトニトリル、及び酢酸の混液
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
イオン化法:エレクトロスプレー(負イオン検出モード)
設定イオン数:m/z 515.2
【0075】
結果を表2に示す。表2においては、マンネンタケ子実体の乾燥重量100gあたりのβ−グルカン及びガノデリン酸Aの含量を示す。検体数は、傘状1、鹿角状2、銀杏状2であり、検体数が複数の場合は、β−グルカン及びガノデリン酸Aの含量を平均値で表している。
【0076】
【表2】
【0077】
子実体全体のβ−グルカン含量については、傘状(48.4g/100g)及び鹿角状(49.7g/100g)に比して、銀杏状において著しく高かった(55.6g/100g)。部位別に検討すると、傘状では傘(47.2g/100g)よりも柄(52.8g/100g)において、鹿角状では先端部(46.6g/100g)よりも下部(54.1g/100g)において、β−グルカン含量が高かった。銀杏状では先端部(53.9g/100g)及び柄下部(54.9g/100g)に比して、柄中間部においてβ−グルカン含量が高かった(60.6g/100g)。
【0078】
子実体全体のガノデリン酸A含量についても、傘状(110mg/100g)及び鹿角状(検出限界以下−0.7mg/100g)に比して、銀杏状において著しく高かった(233mg/100g)。部位別に検討すると、銀杏状では柄中間部(220mg/100g)及び柄下部(220mg/100g)に比して、先端部において特にガノデリン酸A含量が高かった(280mg/100g)。
【0079】
以上より、本発明の実施例による銀杏状マンネンタケ子実体は、有効成分であるβ−グルカン及びガノデリン酸Aの両方を高濃度で含有することが明らかとなった。
【実施例3】
【0080】
(マンネンタケ子実体の内部構造観察)
実施例2により、本発明の実施例による銀杏状マンネンタケ子実体は、既存の傘状マンネンタケ子実体に比べて、有効成分であるβ−グルカン及びガノデリン酸Aの両方を高濃度で含有することが明らかとなったが、銀杏状マンネンタケ子実体がこれらの有効成分を高濃度で含有する理由ついて検証するために、以下の通り、マンネンタケ子実体の内部構造を観察した。
【0081】
最初に、比較対象である傘状マンネンタケ子実体の内部構造とβ−グルカン及びガノデリン酸Aとの関係について検討した。実施例1で得られた傘状の柄をさらに、殻皮を含む最外部(以下、最外部という)、中心より外側の肉の部分(以下、帯白色部という)、及び中心部の肉の部分(以下、中心部という)の3つの部位に分けて、β−グルカン及びガノデリン酸Aの含有量を測定した。β−グルカン及びガノデリン酸Aの含有量測定については、傘状の柄の最外部、帯白色部、及び中心部を各々乾燥させて粉末としたものを用い、実施例2と同様に行った。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
傘状では、β−グルカンの含有量は帯白色部において最も高く、ガノデリン酸Aの含有量は最外部において最も高いことが示された。
【0084】
以上より、銀杏状においては、傘状の帯白色部に該当する部分が肥大することに起因してβ−グルカンの含有量が高く、及び傘状の最外部に該当する部分の割合が増えることに起因してガノデリン酸Aの含有量が高くなっていることが考えられた。このことを検証するために、以下の実験を行った。
【0085】
まず、各子実体の柄断面の内部構造を比較した。自然乾燥を行った傘状、鹿角状、及び銀杏状のほぼ同じ径の柄の部位を切断し、スライサーで高さ1cm以下の柄断面試料を調製した。各子実体の柄断面を肉眼で観察した。
【0086】
結果を
図4に示す。傘状の柄断面(図示せず)及び鹿角状の柄断面(
図4(A))は、同様であり、最外部、帯白色部、中心部、及び帯白色部と中心部を隔てる暗褐色の帯状の部位が観察された。また、中心部には、暗褐色の斑点が多数確認された。一方、銀杏状の柄断面(
図4(B))は、傘状及び鹿角状の柄断面とは異なり、中心部の肉の色が薄く、帯白色部と中心部を隔てる暗褐色の帯状の部位は見られず、中心部に薄褐色の斑点が観察された。また、鹿角状の柄断面と比べると、銀杏状においては、殻皮の厚さが薄く、帯白色部に相当する部分が肥大していた。
【0087】
以上より、傘状及び鹿角状の柄の内部構造は同様である一方で、銀杏状の柄の内部構造は傘状及び鹿角状のそれとは異なることが示唆された。
【0088】
さらに、傘状と同様である鹿角状と、銀杏状と、の柄の内部構造(最外部及び帯白色部)の違いをより明らかにするために、鹿角状及び銀杏状の柄を試料として走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行った。試料をカーボンテープにてSEM用試料台に固定し、イオンスパッター(製品名:HITACHI E101、日立計測器サービス社)を用いて金パラジウムにてコーティングを行い、SEM観察用試料を調製した。この試料を用いて低真空走査型電子顕微鏡(製品名:JSM−5310LV、日本電子社製、加速電圧:15kV)にて観察を行った。
【0089】
結果を
図5−7に示す。殻皮を含む最外部(
図5)を観察したところ、銀杏状(
図5(B))の殻皮は、鹿角状(
図5(A))のそれと同様に、菌糸以外の物質(子実体の自己分泌物等)により構成されていた。また、銀杏状の殻皮は、鹿角状のそれの2分の1程度の厚さ(約50μm)であった。また、帯白色部の菌糸(
図6)を観察したところ、鹿角状(
図6(A))及び銀杏状(
図6(B))に明確な差異がみられなかった。さらに銀杏状の中心部の薄褐色の斑点(
図7(C))及び鹿角状の中心部の周りの暗褐色部分(
図7(A))を詳細に観察すると、銀杏状の中心部の薄褐色の斑点は、鹿角状の中心部の周りの暗褐色部分と同様に、菌糸以外の物質(殻皮様物質)により構成されていることが示された。
【0090】
以上より、銀杏状においては傘状と同様の菌糸からなる帯白色部が存在し、それは傘状に比べて肥大していることが観察された。また、銀杏状は傘状と同様の殻皮を含む最外部を有するが、銀杏状の殻皮の厚さは傘状のそれに比べて2分の1程度であるため、マンネンタケ子実体全体の容積に対する、最外部中の殻皮以外の部分の割合が傘状に比べて増えていることが示唆された。
【0091】
これらの結果から、本発明の実施例による銀杏状マンネンタケ子実体においては、帯白色部が肥大することに起因してβ−グルカンの含有量が高くなり、及び最外部中の殻皮以外の部分の割合が増えることに起因してガノデリン酸Aの含有量が高くなることが示唆された。また、銀杏状においては、その形状に起因して、ガノデリン酸Aの含有量が高くなっていることも考えられた。すなわち、傘状では、傘と柄とが明確に分かれている一方で、銀杏状では、柄が下部から先端部に向かって肥大し、かつ柄と傘とは連続して連なっており、傘状の“傘”に相当する部分(先端部)の表面積が大きくなっているといえる。表2において、傘状では“傘”の部位で、銀杏状では“先端部”でガノデリン酸Aの含有量が高いことが示されたが、銀杏状では、前述の通り“先端部”の表面積が大きくなっており、子実体全体の容積に対して、ガノデリン酸Aをより多く含み得る先端部の割合が増えているため、相対的にガノデリン酸A含有量が高くなっていると考えられた。
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、有効成分であるガノデリン酸を高濃度含有する、不純物含量の少ないマンネンタケ子実体及びマンネンタケ子実体加工物、並びにマンネンタケ子実体の簡便かつ安価な栽培方法を提供することができる。