【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年11月26日に、http://www.spsj.or.jp/IPC2012.htmlを通じて、公益社団法人高分子学会発行の第9回国際高分子会議 IPC2012の講演予稿集において発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マイナスイオン帯電無機微粉末は、鉄粉との摩擦帯電量で−30μC/g〜−200μC/gの値を示す帯電無機微粉末であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【背景技術】
【0002】
シリコーン組成物の硬化物は、優れた耐熱性、機械的強度、電気絶縁性などの電気特性、高透明性、耐薬品性、耐水性を有する。特に、近年シリコーン樹脂が耐熱性、耐紫外線性などに優れることから青色、白色の高輝度LEDなどの発光半導体装置の封止材として幅広く応用されるようになってきた。
【0003】
しかし、シリコーン樹脂はガス透過性が良い、透過しやすいという性質がある。また、LEDなど光学用途として応用する場合、更なる高屈折率特性が要求される。従って、これら欠点を解消したシリコーン樹脂の開発が求められてきた。
【0004】
本発明に関連する先行技術としては下記のものが挙げられる。
特開2009−120437号公報(特許文献1)には、シリカの表面を特定のシロキサンで表面処理したシリカを高充填することで高透明性を有し、膨張係数や腐食係数や腐食性ガスの透過性が小さい硬化物が形成できるとの記載がある。
特開平3−93605号公報(特許文献2)は、金属酸化物微粉末の流動法の改善に関するもので、シリカやアルミナ、チタニアなどの金属酸化物をパーフルオロ基含有有機ケイ素化合物で処理するとの記載がある。
特開平6−23262号公報(特許文献3)には、特定のパーフルオロ基含有シロキサンで処理した無機粉体からなる疎水性粉体及び化粧料の記載がある。
特表2005−524737号公報(特許文献4)には、「無機蛍光体とチキソトロープ剤からなる反応性樹脂材料」の組み合わせが例示され、チキソトロープ剤として二酸化チタン、酸化ジルコニウム、SiO
2などが、反応性樹脂としてシリコーン樹脂の記載がある。
【0005】
しかし、上記先行技術には「無機微粉末にパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物で処理してマイナスイオン帯電微粉末を製作し、マイナスイオン反発により分散性を向上」との記載はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物処理無機微粉末からなるマイナスイオン帯電微粉末
を含有する透明に優れた付加硬化型シリコーン組成物
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、無機微粉末の表面をパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物でグラフト化処理することで、無機微粉末がマイナス帯電し、このマイナスイオン同士の反発により高分散することを知見した。
【0009】
表面を下記一般式(1)で示されるパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物でグラフト化処理した無機微粉末を、付加硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計(即ち、後述する(i)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計)100質量部に対し、5〜400質量部、特に10〜200質量部、更に好ましくは20〜100質量部添加することにより、高透明性を有し、膨張係数や腐食性ガスの透過が小さい硬化物が形成でき、この硬化物で封止することで耐衝撃性、耐温度サイクル性に優れ、例えば腐食性ガスの透過による光反射板の銀表面の腐食が防止された高信頼性のLED等の発光半導体装置が得られることを知見した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、マイナスイオン帯電無機微粉末を多量に充填することにより、透明性を維持しながら高屈折率特性の付与、酸素などのガス透過特性の低下などの機能が付与された硬化物が形成されることから、高屈折率無機微粉末の高分散化と高充填化による高屈折率・高透明シリコーン組成物は、ガス透過性が改良され、ガス透過性の小さな硬化物を与え、そしてこの硬化物で封止することにより、耐衝撃性、耐温度サイクル性に優れ、かつ腐食性ガス透過により封止保護されたLEDチップなどの被封止部品の腐食が防止され、信頼性に優れたLEDなどの発光半導体装置を提供することができる。
【0011】
従って、本発明は、下記パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物処理無機微粉末からなるマイナスイオン帯電微粉末
を含有する透明付加硬化型シリコーン組成物
を提供する。
【0012】
〔1〕
付加硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計100質量部に対して、マイナスイオン帯電無機微粉末を5〜400質量部含有する付加硬化型シリコーン組成物であり、上記マイナスイオン帯電無機微粉末は、下記一般式(1)で示されるパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物
により無機微粉末の表面がグラフト化
され、マイナスイオン反発の効果で分散させてなる
ものであり、且つ、上記パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物の添加量が無機微粉末100質量部に対して1〜60質量部
であることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基、R
2は炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Qは炭素原子数2〜10の二価の有機基であり、aは0又は1、pは1〜20の整数である。)
〔2〕パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物が、下記一般式(1’)で示され、その添加量が無機微粉体100質量部に対して3〜50質量部であることを特徴とする〔1〕記載の
付加硬化型シリコーン組成物。
【化2】
(式中、R
1は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基、R
2は炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Q’は炭素原子数2〜4の二価の有機基であり、aは0又は1、p’は5〜12の整数である。)
〔3〕無機微粉末が、酸化ジルコニウム、二酸化チタン及び酸化アルミニウムから選択される無機微粉末である〔1〕又は〔2〕記載の
付加硬化型シリコーン組成物。
〔4〕無機微粉末が、酸化ジルコニウムである〔3〕記載の
付加硬化型シリコーン組成物。
〔5〕マイナスイオン帯電無機微粉末は、ゼータ電位で−60mV〜−150mVの値を示す帯電無機微粉末であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の
付加硬化型シリコーン組成物。
〔6〕マイナスイオン帯電無機微粉末は、鉄粉との摩擦帯電量で−30μC/g〜−200μC/gの値を示す帯電無機微粉末であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の
付加硬化型シリコーン組成物。
〔
7〕付加硬化型シリコーン組成物が、
(i)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(iii)白金族金属系触媒
を含有することを特徴とする
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の付加硬化型シリコーン組成物。
〔
8〕更に蛍光体を含有することを特徴とする
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の付加硬化型シリコーン組成物。
〔9〕
発光半導体装置の封止材料として用いられる〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物処理無機微粉末からなるマイナスイオン帯電微粉末を含有することで、シリコーンゴム本来の優れた耐熱性、電気絶縁性、機械的強度、光学的特性などの諸特性を保持しながら、シリコーンゴムの欠点である気体透過性を改良し、高屈折率性の付与など優れた特性を有する。
更に高透明性を有し、膨張係数や腐食性ガスの透過が小さい硬化物が形成でき、この硬化物で封止することで耐衝撃性、耐温度サイクル性に優れ、例えば腐食性ガスの透過による光反射板の銀表面の腐食が防止された高信頼性のLED等の発光半導体装置が得られる。
また、その作業性や成型加工性は、従来の付加硬化型シリコーン組成物同様の加工性を有し、成型装置など従来の加工機械がそのまま転用できる。
本発明の付加硬化型シリコーン組成物から得られる用途としては、その光学的特性を生かし、レンズや透明封止材料など発光半導体装置などの用途に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、マイナスイオン反発により分散するマイナスイオン帯電無機微粉末及び透明に優れた付加硬化型シリコーン組成物並びに該組成物で封止した発光半導体装置に関する。
本発明に係るマイナスイオン帯電無機微粉末は、無機微粉末をパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物にて表面処理したものである。従って、パーフロロアルキル基含有有機化合物は、無機微粉末の表面に処理してグラフト化し、マイナスイオン反発の効果で無機微粉末を分散させる本発明のキーマテリアルであり、下記一般式(1)で示され、1分子中にフロロアルキル基とアルコキシ基又はアシロキシ基を有するパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物である。
【化3】
(式中、R
1は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基、R
2は炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Qは炭素原子数2〜10の二価の有機基であり、aは0又は1、pは1〜20の整数である。)
【0015】
より好ましくは、パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物は、下記一般式(1’)で示される。
【化4】
(式中、R
1は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基、R
2は炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Q’は炭素原子数2〜4の二価の有機基であり、aは0又は1、p’は5〜12の整数である。)
【0016】
ここで、R
1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基が挙げられ、R
2としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソプロペノキシ基、n−ブトキシ基、アセトキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0017】
また、Q、Q’はパーフロロアルキル基とケイ素原子を結合する基であり、Qは炭素原子数2〜10、Q’は炭素原子数2〜4の二価の有機基で、二価炭化水素基又は分子中に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含む二価炭化水素基が挙げられ、具体的には、−CH
2CH
2−、−CH
2OCH
2CH
2CH
2−、−CONHCH
2CH
2CH
2−、−CONHCH
2CH
2NHCH
2CH
2CH
2−、−SO
2NHCH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2OCONHCH
2CH
2CH
2−等の基が例示される。
【0018】
更に、pはパーフロロアルキル基の炭素原子数を示すもので1〜20、好ましくは5〜12である。pが20を超えると有機溶媒への溶解性が悪くなり、またパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物も高価となる。
aは0又は1であり、0が好ましい。
【0019】
上記式(1)、(1’)のパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物として具体的には、下記化合物を例示でき、これら化合物の1種類を単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。
CF
3CH
2CH
2Si(OCH
3)
3,C
4F
9CH
2CH
2Si(OCH
3)
3,
C
6F
13CH
2CH
2Si(OCH
3)
3,C
4F
9CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2,
C
8F
17CH
2CH
2Si(OCH
3)
3,C
8F
17CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3,
C
8F
17CH
2CH
2Si(OCOH
3)
3,
(CF
3)
2CF(CF
2)
8CH
2CH
2Si(OCH
3)
3,
C
7F
15CONHCH
2CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3,
C
8F
17SO
2NHCH
2CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3,
C
7F
15CONHCH
2CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3,
C
8F
17CH
2CH
2OCONHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3
【0020】
パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物の添加量は、無機微粉末100質量部に対して、1〜60質量部である。1質量部未満ではグラフト化処理の効率が低く、パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物によるマイナスイオン反発性の効果が得られない。一方、60質量部を超えて添加しても有機溶媒との溶解性が低下して反応性が低下し、グラフト化効率が低下する。またコスト高となる。好ましくは3〜50質量部である。
【0021】
また、その時のグラフト化率は3質量%以上、特に5質量%以上が好ましい。その上限は特に制限されないが、通常30質量%以下である。
上記パーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物と無機微粉末とのグラフト化反応は、一般的に溶剤中で50〜200℃の温度で1〜50時間環流させることにより行うことができる。
【0022】
この場合、無機微粉末としては、具体的には酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化アルミニウムから選択される無機微粉末が好ましく、本発明の付加硬化型シリコーン組成物に高充填することでシリコーンゴムの欠点である気体透過性を改良し、高屈折率性の付与など優れた特性を付与することができる。無機微粉末としてはより好ましくは酸化ジルコニウムである。
【0023】
なお、無機微粉末の平均粒径は、レーザ回折・散乱法による測定法で5〜1,000nmであることが好ましい。
【0024】
本発明のマイナスイオン帯電無機微粉末は、表面に上記一般式(1)で示されるパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物を無機微粉末100質量部に対して、1〜60質量部、好ましくは3〜50質量部添加処理してグラフト化し、マイナスイオン反発の効果で分散させたマイナスイオン帯電無機微粉末である。
【0025】
上記のマイナスイオン帯電無機微粉末は、ゼータ電位で−60mV〜−150mVの値を示すマイナスイオン帯電無機微粉末であることが好ましく、−60mV未満ではマイナスイオン反発の効果が少なく、マイナスイオン帯電無機微粉末の分散性が不十分な場合が生じる。一方、−150mVを超えるとマイナスイオン反発性が強すぎて、逆にシリコーン樹脂中への配合が困難となる場合が生じる。好ましくは−80mV〜−140mVの値を示すマイナスイオン帯電無機微粉末である。
【0026】
また、マイナスイオン帯電無機微粉末は、鉄粉との摩擦帯電量で−30μC/g〜−200μC/gの値を示す帯電無機微粉末であることが好ましい。−30μC/g未満の摩擦帯電量ではイオン反発の効果が少なく、マイナスイオン帯電無機微粉末の分散性が不十分な場合が生じる。一方、−200μC/gを超えるとイオン反発性が強すぎて、逆にシリコーン樹脂中への配合が困難となる場合が生じる。好ましくは−70μC/g〜−150μC/gの値を示すマイナスイオン帯電無機微粉末である。
上記ゼータ電位、鉄粉との摩擦帯電量を示すマイナスイオン帯電無機微粉末は、上記の通り、上記一般式(1)で示されるパーフロロアルキル基含有有機ケイ素化合物を無機微粉末100質量部に対して1〜60質量部添加処理してグラフト化することにより得ることができる。
【0027】
本発明のマイナスイオン帯電無機微粉末は、付加硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計100質量部に対して、マイナスイオン帯電無機微粉末を5〜400質量部配合することで透明性に優れた硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物となる。その添加量が5質量部未満では高屈折率特性が得られず、また400質量部を超えると配合が困難であり、分散不良による透明性の低下や配合物の高粘度化やペースト化による作業性の低下をもたらす。好ましくは20〜200質量部、更に好ましくは50〜100質量部添加することにより、作業性、高屈折率特性に優れた透明性シリコーン組成物となる。
【0028】
更に詳述すると、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、下記シリコーン組成物に上記のマイナスイオン帯電無機微粉末を配合した透明性に優れる硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物で、
(i)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(iii)白金族金属系触媒
を必須成分として含有する。
【0029】
ここで、(i)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンが用いられ、これは付加硬化型シリコーン組成物のベースポリマーとして使用されている公知のオルガノポリシロキサンであり、GPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算重量平均分子量が、通常3,000〜300,000程度で、オストワルド粘度計による常温(25℃)で100〜1,000,000mm
2/s、特に200〜100,000mm
2/s程度の粘度を有するものが好ましく、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。
【0030】
R
3bSiO
(4-b)/2 (2)
(式中、R
3は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の一価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子より選ばれ、bは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0031】
上記R
3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等;また、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0032】
オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有することから、ビニル基、アリル基等のアルケニル基を必ず含有する。中でも合成のしやすさ、耐熱性からビニル基が好ましい。その他の有機基としてはメチル基及びフェニル基が好ましい。特に付加硬化型シリコーン組成物の硬化特性や光学特性、耐熱性等から、R
3の50モル%以上はメチル基であることが好ましい。例えば分子鎖両末端ジメチルビニル基停止ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニル基停止ポリジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が好ましい。
【0033】
(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(iii)成分の白金族系金属触媒の触媒作用により、上記(i)成分のオルガノポリシロキサンと付加反応して架橋結合を形成し、3次元網状構造のゴム弾性体を与える架橋剤である。
(ii)成分はケイ素原子に結合した水素原子を1分子中2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンで、下記平均組成式(3)で表される。
【0034】
R
4cH
dSiO
(4-c-d)/2 (3)
(式中、R
4は独立に炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、水素原子、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子より選ばれ、c及びdは、好ましくは0.7≦c≦2.1、0.001≦d≦1.0、かつ0.8≦c+d≦3.0、より好ましくは1.0≦c≦2.0、0.01≦d≦1.0、かつ1.5≦c+d≦2.5を満足する正数である。)
【0035】
(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個(通常、2〜200個)、好ましくは3個以上(通常、3〜100個)含有する。(ii)成分は、(i)成分と反応し、架橋剤として作用する。
【0036】
(ii)成分の分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等の、いずれの分子構造でも(ii)成分として使用することができる。(ii)成分が線状構造を有する場合、SiH基は、分子鎖末端及び分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。また、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)が、通常、2〜200個、好ましくは3〜100個程度であり、室温(25℃)において液状であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましく使用できる。
【0037】
上記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0038】
(ii)成分の添加量は、オルガノポリシロキサン付加硬化組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、(ii)成分中のSiH基の量が0.1〜5.0モル、好ましくは0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなる量である。(ii)成分の添加量が、(i)成分のオルガノポリシロキサン含有アルケニル基1モル当たり、SiH基の量が0.1モルより少なくなる量であると、本発明の組成物から得られる硬化物の架橋密度が低くなりすぎ、機械強度が不足する。また、耐熱性が悪影響を受ける。一方、(ii)成分の添加量が5.0モル(SiH基量)より多くなると、硬化物中に脱水素反応による発泡が生じる。また、金型からの離型性の低下や更に残存SiH基による物性の経時変化の発現や硬化物の耐熱性の低下など悪影響を受ける。
【0039】
(iii)成分の白金族金属系触媒は、(i)成分の主剤と(ii)成分の架橋剤との付加硬化反応(ヒドロシリル化)を促進させるための触媒として使用される。(iii)成分としては、公知の白金族金属系触媒を用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。
(iii)成分の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体が挙げられる。
【0040】
(iii)成分の添加量は、触媒としての有効量であり、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、(i)成分の主剤100質量%に対して、白金族金属に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1,000ppm、より好ましくは1〜200ppmの範囲である。
【0041】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、LED素子封止用、特に青色や白色LEDや紫外LEDの素子封止用として有用なものである。青色LEDを用いる白色化するために各種公知の蛍光体粉末を添加することができる。代表的な黄色蛍光体として一般式E
3F
50O
12:M(式中成分Eは、Y、Gd、Tb、La、Lu、Se及びSmからなるグループからなる少なくとも1つの元素を有し、成分Fは、Al、Ga及びInからなるグループからなる少なくとも1つの元素を有し、成分Mは、Ce、Pr、Eu、Cr、Nd及びErからなるグループから少なくとも1つの元素を有する)のガーネットのグループからなる蛍光体粒子を含有するのが特に有利である。青色光を放射する発光ダイオードチップを備えた白色光を放射する発光ダイオード素子用に蛍光体として、Y
3Al
5O
12:Ce蛍光体及び/又は(Y、Gd、Tb)
3(Al、Ga)
5O
12:Ce蛍光体が適している。
【0042】
その他の蛍光体として、例えばCaGa
2S
4:Ce
3+及びSrGa
2S
4:Ce
3+、YAlO
3:Ce
3+、YGaO
3:Ce
3+、Y(Al、Ga)O
3:Ce
3+、Y
2SiO
5:Ce
3+等が挙げられる。また、混合色光を作製するためには、これらの蛍光体の他に希土類でドープされたアルミン酸塩や希土類でドープされたオルトケイ酸塩などが適している。
【0043】
本発明の組成物に、上記公知蛍光体を樹脂層の厚みにより組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計(即ち、(i)、(ii)成分の合計)100質量部に対して0.5〜200質量部配合することで青色を白色に変換することができる。蛍光体は一般的に比重が重いためシリコーン組成物が硬化する過程で沈降してしまい、目的とする均一分散をさせることが非常に困難である。しかし、本発明の組成物を使用することでこの種の不具合を解消することができる。
【0044】
本発明の組成物は上記(i)〜(iii)成分及び/又は蛍光体に加えて、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、補強性充填剤、熱安定剤、接着性付与剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤など各種機能性添加剤を配合してもよい。例えば、煙霧質シリカ、沈澱法シリカなどの補強性充填剤、離型剤としてのポリジメチルシロキサンなどを添加することができる。
【0045】
本発明の組成物でLED等の発光半導体装置を封止する場合は、熱可塑性樹脂からなるプレモールドパッケージに搭載されたLED素子に該組成物を塗布することにより、該LED素子を該硬化物で封止することができる。また、該組成物をトルエンやキシレン等の有機溶媒に溶解して生成したワニスの状態で、該LED素子に塗布することができる。
【0046】
本発明の組成物は、その他にも、その優れた耐熱性、耐紫外線性、透明性等の特性から、ディスプレイの基板材料、接着剤、保護フィルム等の材料として、光記録媒体材料のディスク基板材料、保護フィルム、封止材、接着剤等として、光学機器材料のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等として、光部品材料としては光通信システム、光コネクタ周辺、光電子集積回路周辺の用途が挙げられる。具体的な用途は光学機器材料と同様の部品、用途例がある。
【0047】
その他の用途としてファイバー材料、光・電子機能有機材料、光半導体集積回路材料等があり、例えばLSIや超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用レジスト材料等の半導体集積回路周辺材料等の用途にも用いることができる。
【0048】
本発明材料は、各種用途において接着剤として、光学素子の封止材として、フィルムとして、またレンズ材料として好適な素材である。
【実施例】
【0049】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部を示す。
【0050】
[合成例1]
・ナノ酸化ジルコニウム(ナノジルコニア)のグラフト化
リフラックスコンデンサーを備えたフラスコにナノジルコニア(平均粒径15±3nm、西ドイツ製)10.0部に下記構造を有するカップリング剤(1)4.0部、脱水トルエン100部を加えて窒素置換後、110℃で16時間反応させることでグラフト反応を行った。反応終了後、遠心分離装置を用い、グラフト化したジルコニアとトルエンと未反応カップリング剤を分離し、更に100部のトルエンを加え、撹拌する操作を2回行い、次いで遠心分離を繰り返して未反応のカップリング剤を除去した。その後、分離したジルコニアを120℃で4時間乾燥することで、グラフト化ナノジルコニア(1)を得た。
得られたナノジルコニア(1)のグラフト化率はTGAで測定した結果、11.0%であった。また、FT−IRによる分析でもグラフト化を確認した。
同様な方法で下記構造を有するカップリング剤(2)〜(3)を用いて2種類のグラフト化ナノジルコニアを作成した。得られたナノジルコニア(2)及び(3)のグラフト化率はTGAで測定し、また、FT−IRによる分析でもグラフト化を確認した。
【0051】
・カップリング剤(1)
C
6F
13(CH
2)
2Si(OCH
3)
3(KBM−7603;信越化学工業(株)製)
・カップリング剤(2)
CF
3(CH
2)
2Si(OCH
3)
3(KBM−7103;信越化学工業(株)製)
・カップリング剤(3)
CH
3Si(OCH
3)
3(KBM−13;信越化学工業(株)製)
【0052】
[実施例1〜2、比較例1〜2]
得られたグラフト化ナノジルコニア(1)[実施例1]、グラフトナノジルコニア(2)[実施例2]、グラフト化ナノジルコニア(3)[比較例1]及び未処理ナノジルコニア[比較例2]1部をシリコーンオイル(KF−96−100cs、信越化学工業(株)製)10部に添加混合して分散させ、24時間放置後の分散性を表1に示す。
また、上記グラフト化ナノジルコニア(1)〜(3)及び未処理ナノジルコニアのゼータ電位及び鉄粉との摩擦帯電による帯電量を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
「ゼータ電位の測定方法」
ゼータ電位の測定は、大塚電子株式会社ELSZ−2Nで測定。
グラフト化ナノジルコニア(1)〜(3)及び未処理のナノジルコニアをそれぞれ0.010g量り取り、メタノールを30mL加えて分散させた。その分散溶媒を適量測定用セルに移し、積算回数10回でそれぞれ5回測定。温度は25℃で測定した。
(溶媒屈折率1.3312、溶媒粘度0.5440(cP)、溶媒の誘電率33.6)
【0055】
「摩擦帯電量の測定方法」
測定方法は「日本画像学会のトナー帯電測定法」に準拠して測定した。
ナノジルコニアを、濃度が1質量%となるようにキャリアであるフェライト(パウダーテック社製、商品名:FL100)に添加し、振とう基により、10分間混合して、摩擦帯電を行った。この試料0.2gを用いて、帯電量をブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製、商品名:TB−200型、窒素ブロー圧力:0.05mPa、窒素ブロー時間:60秒)で測定した。
【0056】
「分散性」
◎:極めて良好 ○:良好 ×:一部沈降 ×××:全て沈降
【0057】
[合成例2]
・ナノジルコニアのグラフト化
合成例1と同様にして、ナノジルコニア10.0部にカップリング剤(1)を0.4部から2.0部に変量してグラフト反応を行った。その後も同様な処理を行い、グラフト化したグラフト化ナノジルコニア(表2)を得た。
得られたグラフト化ナノジルコニアのグラフト化率はTGAにより測定した。結果を表2に示す。また、FT−IRによる分析でもグラフト化を確認した。
【0058】
[実施例3〜7]
合成例2で得られたグラフト化ナノジルコニア(4)〜(8)1部をシリコーンオイル(KF−96−100cs、信越化学工業(株)製)10部に添加混合して分散させ、24時間放置後の分散性を表2に示す。また、グラフト化率も表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例8〜10、比較例3〜4]
下記式(4)
【化5】
(但し、L=450)
で示される両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン75部に、(H
2C=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位7.5モル%と(CH
3)
3SiO
1/2単位42.5モル%とSiO
4/2単位50モル%とからなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)25部、下記式(5)
【化6】
(但し、M=10、N=8)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5.3部(即ち、上記ビニル基含有で示されるジメチルポリシロキサン(4)及びVMQ中のビニル基に対するSiH基のモル比が1.5となる量に相当する)、及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金濃度1質量%)を0.05部加え、良く撹拌して得たシリコーン組成物100部に、合成例1で得たグラフト化ナノジルコニア(1)をそれぞれ20部、50部、100部、0部、500部をプラネタリーミキサー中で添加混合して配合し、液状シリコーン組成物1〜5を調製した。シリコーン組成物5は高粘度のペースト状となり、作業性が悪く、良好な物性測定用の試験片が作製できなかった。シリコーン組成物5以外の組成物を用い、150℃×4時間の条件で硬化させた。
得られた硬化物の物性をJIS K6301に従い、測定した。また、屈折率と厚さ1mmの硬化膜で波長400〜800nmにおける光透過率を測定した。結果を表3に示す。また、ガラス基板上に銅に銀メッキを施した基板を置き、その上から前記組成物を厚さ0.3mmに塗布し、70℃、1時間で硬化させ、評価サンプルを作製した。この評価サンプルを体積2リットルの密閉容器に入れると共に、この密閉容器に(NH
4)
2S 20gと水10gを入れ、H
2Sガスを発生させた密閉状態で23℃において表3に示す時間で放置し、銅に銀メッキを施した基板の腐食の発生を評価した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
○:腐食なし △:一部腐食 ×:黒色に変色(完全腐食)
【0062】
[実施例11〜12、比較例5]
凹部の開口部を有するLED用プレモールドパッケージ(厚さ1mm、1辺が3mmで開口部、直径2.6mm、底辺部が銀メッキ)にInGaN系青色発光素子を銀ペーストを用いて固定させた。次に外部電極と発光素子を金ワイヤーにて外部電極と接続した。その後、下記表に示した実施例及び比較例のシリコーン組成物をパッケージ開口部内に注入し、60℃で1時間、更に150℃で2時間硬化させることで発光半導体素子を形成した。
作製した発光半導体装置を用い、下記方法により温度サイクル試験と初期の輝度を測定した。結果を表4に示す。
『温度サイクル試験』:−40℃/30分〜125℃/30分の冷熱サイクル試験において、1000サイクル後のパッケージに剥離のないものを「不良無」とした。
『初期の輝度』:LEDに10mAの電流を印加し、LEDを発光させて大塚電子製(LP−3400)により輝度を測定し、輝度が15mlm(ミリルーメン)以上のものを「良好」、輝度が15mlm(ミリルーメン)未満のものを「低下」とした。
【0063】
【表4】