(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波形整形手段は、前記変換パルス光の位相が、前記変換パルス光のパルスエネルギーの大部分が含まれる時間領域で略一定になるように、前記第1のパルス光のパルス波形および前記第2のパルス光のパルス波形を調整設定することを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自己位相変調(SPM)は、多くの場合、光ファイバ内を伝播するレーザ光のスペクトル幅を拡げる方向に作用するため、光ファイバから出射するレーザ光(出力光)のスペクトル幅が、光ファイバに入射するレーザ光(入射光)のスペクトル幅よりも広くなるスペクトル拡がりが発生する。特に、コア直径が数μm〜十数μm程度と小径なシングルモードファイバでは、伝播するレーザ光のパワー密度が極めて高くなるため、SPM(自己位相変調)によるスペクトル拡がりが大きくなる。スペクトル幅の拡大は、単色性が高い狭帯域の光源が求められる場合に障害となる。
【0006】
ここで、光ファイバ中で発生したSPMによるスペクトル広がりを抑制するために、光ファイバの出射(もしくは入射)端部近傍にEO位相変調器を設け、このEO位相変調器によりSPMと逆の位相変調をかけて、SPMを相殺する方法が考えられる。しかし、一つのEO位相変調器により変調可能な位相変調量は〜5rad程度である。一方、光ファイバ内で発生するSPMは、レーザ光のピークパワーが高くなると20〜30rad程度にもなることがある。そのため、ピークパワーが高いレーザ装置については、簡明な構成でSPMを補償することが難しい、という課題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光ファイバ内で生じるSPMが比較的大きい場合でも狭帯域のパルス光を出力可能なパルスレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
解決手段の説明に先立ち、まず、本発明の原理について
図1を参照して説明する。
図1はモデルとなるパルスレーザ装置の概略図である。パルスレーザ装置は、第1のパルス光を出力する第1レーザ光源11と、第2のパルス光を出力する第2レーザ光源12と、第1レーザ光源11から出力された第1のパルス光を増幅する第1ファイバ増幅器21と、第2レーザ光源12から出力された第2のパルス光を増幅する第2ファイバ増幅器22と、第1ファイバ増幅器21から出射した第1のパルス光が伝播する第1系列I、第2ファイバ増幅器22から出射した第2のパルス光が伝播する第2系列II、および第1系列Iを伝播した第1のパルス光と第2系列IIを伝播した第2のパルス光とがダイクロックミラー41により重ね合わされて入射する第3系列IIIからなる波長変換光学系とを備える。波長変換光学系の第3系列IIIには第1系列Iを伝播した第1のパルス光と第2系列IIを伝播した第2のパルス光とに基づいて、和周波発生により変換パルス光を発生させる波長変換光学素子36が設けられる。
【0009】
説明簡明化のため、ファイバ増幅器21,22における増幅用の光ファイバで発生するSPMを、利得の無い長さLの光ファイバ中をピークパワーPのパルス光が伝播したときに発生するSPMに置き換えて考える。また、光ファイバに入射する以前のパルス光は、チャープ(周波数拡がり)が無いフーリエ限界(Transform Limit)のレーザ光とする。パルス波形がp(t)のパルス光の振幅A(t)は、A(t)∝{p(t)}
1/2である。
【0010】
いま、光ファイバ内でのパルス光の分散や、反転分布の枯渇による時間波形の歪みは無いとする。すなわち、パルス光が光ファイバ内を伝播する過程でパルス波形は変化しないものとする。このとき、第1ファイバ増幅器21で増幅された後の第1のパルス光の振幅A
1(t)、および位相φ
1(t)は、次式で与えられる。
【数1】
【0011】
ここで、p
1は第1のパルス光のパワーで、φ
1が光ファイバで生じるSPMを表す。L
1は第1ファイバ増幅器21のファイバ長である。γは非線形光学効果を表す量であり、次式で与えられる。
【数2】
上記式中のn
2は非線形屈折率であり、n
2≒3×10
-20[m
2/W]、λはパルス光の波長、A
effは光ファイバの導波モードの実効断面積である。
【0012】
第2ファイバ増幅器22によって増幅された後の第2のパルス光の振幅A
2(t)、および位相φ
2(t)についても同様であり、次式で与えられる。
【数3】
【0013】
説明簡明化のため、第1系列Iおよび第2系列IIには波長変換光学素子が設けられておらず、第1ファイバ増幅器21から出射した第1のパルス光および第2ファイバ増幅器22から出射した第2のパルス光が波長変換光学素子36に入射するものとする。換言すれば、第1系列Iを伝播した後の第1のパルス光の位相をφ
1(t)、第2系列IIを伝播した後の第2のパルス光の位相をφ
2(t)とする。このとき、波長変換光学素子36において、第1のパルス光と第2のパルス光の和周波を発生させる場合に、和周波光の振幅B(t)は、近似的に第1のパルス光の振幅A
1(t)と第2のパルス光の振幅A
2(t)との積として、次式で与えられる。
【数4】
この(6)式に、既述した(1)式および(4)式を適用することにより、次式が導かれる。
【数5】
【0014】
(7)式から、波長変換光学素子36において発生する和周波光のエネルギーの大部分が存在する時間領域において、第1のパルス光の位相φ
1(t)と第2のパルス光の位相φ
2(t)の和であるφ
1(t)+φ
2(t)を一定にすることによって、和周波光の位相変化を無くす、すなわち、スペクトルの拡大を抑止できることがわかる。
【0015】
以上の原理説明を基礎として、本発明の解決手段を説明する。本発明を例示する態様はパルスレーザ装置である。このパルスレーザ装置は、第1のパルス光を出力する第1レーザ光源と、第2のパルス光を出力する第2レーザ光源と、第1レーザ光源から出力された第1のパルス光を増幅または伝送する第1光ファイバ(例えば、実施形態における第1ファイバ増幅器21の増幅用ファイバ)と、第2レーザ光源から出力された第2のパルス光を増幅または伝送する第2光ファイバ(例えば、実施形態における第2ファイバ増幅器22の増幅用ファイバ)と、第1光ファイバから出射した第1のパルス光が伝播する第1系列、第2光ファイバから出射した第2のパルス光が伝播する第2系列、および、第1系列を伝播した第1のパルス光と第2系列を伝播した第2のパルス光とが重ね合わされて入射する第3系列を有する波長変換光学系とを備える。
【0016】
第1レーザ光源および第2レーザ光源には、レーザ光を発生する光源と、光源により発生されたレーザ光のパルス波形(強度変化の時間軸波形)を調整して出力可能に構成された波形整形手段(例えば、実施形態における第1強度変調器112、第2強度変調器122、第1強度変調器駆動電源113、第2強度変調器駆動電源123および制御部80等)とを有する。第3系列には、第1系列を伝播した第1のパルス光と第2系列を伝播した第2のパルス光とに基づいて、和周波発生により変換パルス光を発生させる波長変換光学素子(例えば、実施形態における波長変換光学素子36)を有する。そして、波形整形手段が、波長変換光学素子において発生する変換パルス光の位相が略一定になるように、第1のパルス光のパルス波形および第2のパルス光のパルス波形を調整設定するように構成される。
【0017】
なお、前記波形整形手段は、変換パルス光の位相が、変換パルス光のパルスエネルギーの大部分が含まれる時間領域で略一定になるように、第1のパルス光のパルス波形および前記第2のパルス光のパルス波形を調整設定するように構成することができる。
【0018】
また、前記第1系列を伝播して波長変換光学素子に入射する第1のパルス光に生じる位相変調をψ
1(t)、前記第2系列を伝播して波長変換光学素子に入射する第2のパルス光に生じる位相変調をψ
2(t)としたときに、前記波形整形手段は、変換パルス光のパルスエネルギーの大部分が含まれる時間領域でψ
1(t)とψ
2(t)の和(ψ
1(t)+ψ
2(t))が略一定になるように、第1のパルス光のパルス波形および第2のパルス光のパルス波形を調整設定するように構成することができる。
【0019】
また、前記第1光ファイバにおいて生じる自己位相変調をφ
1(t)、前記第2光ファイバにおいて生じる自己位相変調をφ
2(t)とする。また、第1光ファイバから出射した第1のパルス光は第1系列を伝播する過程で第m次高調波に波長変換されて波長変換光学素子に入射し、第2光ファイバから出射した第2のパルス光は第2系列を伝播する過程で第n次高調波に波長変換されて波長変換光学素子に入射して、波長変換光学素子において第m次高調波と第n次高調波との和周波発生により前記変換パルス光が発生されるとする。このとき、前記波形整形手段は、変換パルス光のパルスエネルギーの大部分が含まれる時間領域でm×φ
1(t)とn×φ
2(t)との和(mφ
1(t)+nφ
2(t))が略一定になるように、第1のパルス光のパルス波形および第2のパルス光のパルス波形を調整設定するように構成することができる。
【0020】
後に説明するように、自己位相変調φ
1(t)の第1のパルス光が第1系列を伝播する過程で第m次高調波に波長変換されるとき、第1系列を伝播した第1のパルス光に生じる位相変調ψ
1(t)はm×φ
1(t)となる。同様に、自己位相変調φ
2(t)の第2のパルス光が第2系列を伝播する過程で第n次高調波に波長変換されるとき、第2系列を伝播した第2のパルス光に生じる位相変調ψ
2(t)はn×φ
2(t)となる。また、ここで述べたことは、第1のパルス光の周波数をω
1、第2のパルス光の周波数をω
2とするとき、変換パルス光の周波数がm×ω
1+n×ω
2に等しい場合に一般的に適用できる。すなわち、変換パルス光へ至る波長変換過程の詳細にはよらず、例えば、周波数がm×ω
1+(n−1)×ω
2のパルス光と周波数がω
2のパルス光との和周波によって変換パルス光を得る場合においても同様に適用できる。このことは、高調波あるいは和周波の振幅は近似的には基本波振幅の積で表される事、従って位相に関しては基本波の位相の和である事から理解できる(後述する式(8)〜式(11)を参照)。
【0021】
また、前記第1レーザ光源および前記第2レーザ光源は、CW光またはオン時間が充分に長いパルス光を発生する光源を有し、前記波形整形手段は、光源により発生されたCW光またはオン時間が充分に長いパルス光の一部を切り出して第1のパルス光を出力する第1強度変調器と、光源により発生されたCW光またはオン時間が充分に長いパルス光の一部を切り出して第2のパルス光を出力する第2強度変調器とを備え、第1強度変調器および第2強度変調器が、波長変換光学素子において発生する変換パルス光の位相が略一定になるように、第1のパルス光および第2のパルス光を切り出すように構成することができる。
【0022】
なお、強度変調器は強度変調型の電気光学変調器とすることができる。また、増幅用または伝送用の光ファイバはシングルモードファイバとすることができる。
【0023】
本発明を例示する他の態様は露光装置である。この露光装置は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパルスレーザ装置と、所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、露光対象物を保持する露光対象物支持部と、パルスレーザ装置から出力されたレーザ光をマスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系とを備えて構成される。
【0024】
本発明を例示するさらに他の態様は検査装置である。この検査装置は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパルスレーザ装置と、被検物を保持する被検物支持部と、パルスレーザ装置から出力されたレーザ光を被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、被検物からの光を検出器に投影する投影光学系とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明を例示する態様のパルスレーザ装置においては、第1レーザ光源および第2レーザ光源に波形整形手段が設けられ、この波形整形手段が、波長変換光学素子において発生する変換パルス光の位相が略一定になるように、第1のパルス光のパルス波形および第2のパルス光のパルス波形を調整設定するように構成される。そのため、光ファイバ内で生じるSPMが比較的大きい場合でも狭帯域のパルス光を出力可能なパルスレーザ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明を適用したパルスレーザ装置の一例として、
図2に、赤外波長のパルス光を増幅し紫外波長のパルス光に波長変換して出力するパルスレーザ装置1の全体図を示す。パルスレーザ装置1は、赤外波長のパルス光を出力するレーザ光源部10、レーザ光源部10から出力されたパルス光を増幅する増幅部20、増幅部20により増幅された赤外波長のパルス光を紫外波長のパルス光に波長変換する波長変換部30、および、これら各部の作動を制御する制御部80などから構成される。
【0028】
レーザ光源部10は、第1のパルス光L
1を出力する第1レーザ光源11と、第2のパルス光L
2を出力する第2レーザ光源12とを有して構成される。レーザ光源部10の構成例を
図3に示す。本構成例においては、第1レーザ光源11は、レーザ光を発生する光源111と、光源111で発生したレーザ光の一部を切り出す第1強度変調器112と、第1強度変調器111を駆動する第1強度変調器変調器駆動電源113とを備えて構成される。同様に、第2レーザ光源12は、レーザ光を発生する光源121と、光源121で発生したレーザ光の一部を切り出す第2強度変調器122と、第2強度変調器122を駆動する第2強度変調器変調器駆動電源123とを備えて構成される。第1強度変調器駆動電源113および第2強度変調器変調器駆動電源123には、共通のクロックパルスが入力されており、各強度変調器駆動電源がクロックパルスを基準として強度変調器の駆動信号を生成し、各強度変調器を駆動する。
【0029】
レーザ光源部10の他の構成例を
図4に示す。本構成例においては、第1レーザ光源11および第2レーザ光源12は、上述した個別の光源111,121に換えて、両者に共通の光源110と、光源110により発生されたレーザ光を2分割する分岐カプラ115とを有して構成される。そして分岐カプラ115により分岐された一方の光路に第1強度変調器112を設けることにより第1レーザ光源11が形成され、他方の光路に第2強度変調器122を設けることにより第2レーザ光源12が形成される。
【0030】
本実施形態では、第1レーザ光源11および第2レーザ光源12から、ともに波長が1547nmの第1のパルス光L
1および第2のパルス光L
2を出力し、増幅部20で増幅された第1のパルス光L
p1および第2のパルス光L
p2を波長変換部30において波長193nmに波長変換する場合について説明する。そのため、レーザ光源部10は、
図3に示した構成および
図4に示した構成のいずれを用いても良い。以下では、レーザ光源部10として
図4に示した構成を用いた場合を主体として説明する。
【0031】
波長が1547nmのレーザ光を発生する光源110(111,121)として、発振波長が1.5μm帯のDFB半導体レーザ(DFB−LD:Distributed Feedback Laser Diode)を好適に用いることができる。DFB半導体レーザは、ペルチェ素子等を利用した温度調整器により温度制御した状態で発振させることにより、波長1547nmの単一波長のシード光を発生させることができる。DFB半導体レーザは、励起電流を波形制御することによりCW(Continuous Wave)発振またはパルス発振させることができる。また、光源110で発生したレーザ光の一部を切り出す第1強度変調器112および第2強度変調器122として、強度変調型の電気光学変調器(EOM:Electro Optic Modulator)であるEO強度変調器を好適に用いることができる。
【0032】
パルスレーザ装置1においては、光源110をCWで発振させる。そして、第1レーザ光源11において第1強度変調器112によりCW光の一部を切り出して第1のパルス光L
1を出力させ、第2レーザ光源12において第2強度変調器122によりCW光の一部を切り出して第2のパルス光L
2を出力させる。このように、DFB半導体レーザからCW光を出力し、その一部を第1,第2強度変調器112,122によって切り出すように構成すると、光源110(DFB半導体レーザ)を直接パルス変調したときに発生するチャープを伴うことがなく、フーリエ限界に近い極めて狭帯域のパルス光を発生させることができる。なお、第1,第2のパルス光L
1,L
2のスペクトル幅は多少拡がるが、光源110からオン時間が充分に長いパルス光を出力し、第1,第2強度変調器112,122によって各々その一部を切り出すように構成しても良い。
【0033】
増幅部20は、第1レーザ光源11から出力された第1のパルス光L
1を増幅する第1ファイバ増幅器21と、第2レーザ光源12から出力された第2のパルス光L
2を増幅する第2ファイバ増幅器22とを有して構成される。波長1547nmの赤外光を増幅する第1ファイバ増幅器21および第2ファイバ光増幅器22として、増幅用ファイバのコアにエルビウム(Er)がドープされたエルビウム・ドープ・ファイバ増幅器(EDFA)を好適に用いることができる。
【0034】
これらのファイバ増幅器の増幅用ファイバは、シングルモードファイバおよびマルチモードファイバのいずれを用いることもできるが、モード径が小さく自己位相変調の影響を受けやすいシングルモードファイバの場合に、より大きな効果を得ることができる。換言すれば、以降詳細に説明するパルスレーザ装置1によれば、光ファイバ内で生じる自己位相変調の影響を排除して、シングルモードファイバを用いることができる。
【0035】
第1ファイバ増幅器21により増幅された第1のパルス光L
p1と、第2ファイバ増幅器22により増幅された第2のパルス光L
p2は、増幅部20から出射し、波長変換部30に入射する。波長変換部30の構成を主体として示すブロック図を
図5に示す。光路上に楕円形ないし短冊形で示すものはビームを集光入射させるためのレンズであり、詳細説明を省略する。
【0036】
波長変換部30は、第1ファイバ増幅器21から出射した第1のパルス光L
p1が伝播する第1系列Iと、第2ファイバ増幅器22から出射した第2のパルス光L
p2が伝播する第2系列IIと、第1系列を伝播した第1のパルス光と第2系列を伝播した第2のパルス光とが重ね合わされて入射する第3系列IIIとからなる波長変換光学系を有して構成される。
【0037】
第1系列Iには3つの波長変換光学素子31,32,33が設けられており、第1系列Iに入射した波長が1547nmで角周波数がωの第1のパルス光L
p1は、この第1系列Iを伝播する過程で順次2ω→3ω→5ωに波長変換され、発生した第5高調波5ωが第3系列IIIに入射する。第2系列IIには波長変換光学素子34が設けられており、第2系列IIに入射した波長が1547nmで角周波数がωの第2のパルス光L
p2は、この系列を伝播する過程で2ωに波長変換され、発生した第2高調波2ωと波長変換されずに透過した基本波ωが第3系列IIIに入射する。第3系列IIIには2つの波長変換光学素子35,36が設けられており、第3系列IIIに重ね合わされて入射した第1のパルス光の第5高調波5ωと、第2のパルス光の第2高調波2ωおよび基本波ωとが、この系列を伝播する過程で7ω→8ωに波長変換される。
【0038】
第1系列Iに設けられた波長変換光学素子31は、角周波数がωの第1のパルス光の第2高調波を発生する非線形光学結晶であり、例えば、PPLN(Periodically Poled LiNbO
3)結晶やPPLT(Periodically Poled LiTaO
3)結晶等を好適に用いることができる。波長変換光学素子32は、波長変換光学素子31で発生した第2高調波2ωと波長変換光学素子31を透過した基本波ωとから、和周波発生により第3高調波3ωを発生させる非線形光学結晶であり、例えば、LBO(LiB
3O
5)結晶を好適に用いることができる。波長変換光学素子33は、波長変換光学素子31で発生した第2高調波2ωと波長変換光学素子32で発生した第3高調波3ωとから、和周波発生により第5高調波5ωを発生させる非線形光学結晶であり、例えばBBO(β-BaB
2O
4)結晶やLBO結晶等を好適に用いることができる。
【0039】
第1系列Iを伝播し、波長変換光学素子31,32,33を透過することにより波長が309nmに波長変換された第1のパルス光の第5高調波5ωは、ダイクロイックミラー41により反射され、第3系列IIIに入射する。
【0040】
第2系列IIに設けられた波長変換光学素子34は、角周波数がωの第2のパルス光の第2高調波を発生する非線形光学結晶であり、波長変換光学素子31と同様に、PPLN結晶やPPLT結晶等を好適に用いることができる。第2系列IIを伝播し、波長変換光学素子34で波長が774nmに波長変換された第2のパルス光の第2高調波2ω、および波長変換光学素子34を透過した波長が1547nmの第2のパルス光の基本波ωは、ダイクロイックミラー41を透過し、第1のパルス光の第5高調波5ωと重ね合わされて、第3系列IIIに入射する。
【0041】
第3系列IIIに設けられた波長変換光学素子35は、第1系列Iで発生した第1のパルス光の第5高調波5ωと、第2系列IIで発生した第2のパルス光の第2高調波2ωとから、和周波発生により第7高調波7ωを発生させる非線形光学結晶である。波長変換光学素子35として、CLBO(CsLiB
6O
10)結晶を好適に用いることができる。波長変換光学素子36は、波長変換光学素子35で発生した第7高調波7ωと、波長変換光学素子35を透過した第2のパルス光の基本波ωとから、和周波発生により波長が193nmの第8高調波8ω(変換パルス光Lv)を発生させる非線形光学結晶である。波長変換光学素子36として、CLBO結晶を好適に用いることができる。
【0042】
そして、波長変換光学素子36で発生した波長が193nmの変換パルス光Lvが、波長変換部30から出射し、パルスレーザ装置1から出力される。
【0043】
以上のように概要構成されるパルスレーザ装置1において、第1強度変調器112および第2強度変調器122は、波長変換光学素子36で発生する変換パルス光Lvの位相が略一定になるように、第1のパルス光のパルス波形(強度変化の時間軸波形)および第2のパルス光のパルス波形(同上)を調整設定する。具体的には、制御部80が、第1強度変調器112を駆動する第1強度変調器駆動電源113の作動、および第2強度変調器122を駆動する第2強度変調器駆動電源123の作動を制御して、これらの強度変調器112,122によって切り出されるパルス光のパルス波形を調整設定する。
【0044】
ここで、波長変換光学素子36で発生する変換パルス光Lvは、第1ファイバ増幅器21により増幅された第1のパルス光を基礎とする第5高調波5ωと、第2ファイバ増幅器22により増幅された第2のパルス光を基礎とする第2高調波2ωおよび基本波ωとに基づいて発生される。そのため、変換パルス光Lvの「位相」という観点からは、第1ファイバ増幅器21により増幅された第1のパルス光を基礎とする第5高調波5ωと、第2ファイバ増幅器22により増幅された第2のパルス光を基礎とする第3高調波3ωとの和周波発生によって、基本波ωの第8高調波8ωを発生させる過程と等価になる。
図6は、このように第8高調波8ωの「位相」という観点で、
図5に示した波長変換光学系を整理したブロック図である。
【0045】
このとき、基本波ωの第8高調波8ωである変換パルス光Lvの振幅A
8ω(t)は、近似的に、次の(8)式で与えられる(既述した(6)式を参照)。
【数6】
で与えられる。ここで、A
3ω(t)およびA
5ω(t)は、それぞれ、第3高調波3ω、第5高調波5ωの振幅であり、近似的に以下のように表記できる。
【数7】
【0046】
(9)式におけるA
1(t)および(10)式におけるA
2(t)は、それぞれ既述した(1)式および(4)式により与えられる。従って、A
8ω(t)は次式のように書き表される。
【数8】
【0047】
より具体的に考えるために、第5高調波5ω発生用の基本波である第1のパルス光L
p1のパルス波形(時間軸波形)p
1(t)=|A
1(t)|
2を次記(12)式とし、第3高調波3ω発生用の基本波である第2のパルス光L
p2のパルス波形(時間軸波形)p
2(t)=|A
2(t)|
2を、仮に次記(13)式のようにおくこととする。
【数9】
ここで、t
0はパルス波形p
1(t)において、強度がピーク値の1/e以上になってから、強度が再びピーク値の1/eになるまでの時間幅(1/e全幅)、t
1はパルス波形p
2(t)において、強度がピーク値の1/e以上になってから、強度が再びピーク値の1/eになるまでの時間幅(1/e全幅)である。p
2(t)のexpの部分は、いわゆるスーパーガウシアン(super gaussian)であってフラットトップに近く、t
1>t
0ならば、このexpの部分はp
1(t)のパルス波形の大部分でほぼ一定となる。
【0048】
(13)式中のdp(t)は、次の(14)式で与えられる波長変換後の第8高調波8ωの位相φ
8ω(t)が、第8高調波(変換パルス光)のパルスエネルギーの大部分(例えば90%以上)が含まれる時間領域でほぼ一定になるように設定する。
【数10】
すなわち、
【数11】
【0049】
(15)式を(13)式に適用することにより、第2のパルス光のパルス波形p
2(t)は、次の(16)式で求められる。
【数12】
【0050】
以上から、第5高調波5ω発生用の第1のパルス光L
p1を(12)式で表されるようなパルス波形とし、第3高調波3ω発生用の第2のパルス光L
p2を(16)式で表されるようなパルス波形とすることにより、変換パルス光である第8高調波8ωの位相をほぼ一定に保つこと、すなわちSPMの影響を排除することができる。
【0051】
具体的には、制御部80は、第1強度変調器駆動電源113に対し、第1強度変調器112によって切り出される第1のパルス光L
1が(12)式で表されるパルス波形となるような駆動信号を出力させる。同様に、制御部80は、第2強度変調器駆動電源123に対し、第2強度変調器122によって切り出される第2のパルス光L
2が(16)式で表されるパルス波形となるような駆動信号を出力させる。これにより、SPMの影響を排除し、フーリエ限界に近い極めて狭帯域のパルス光を出力することができる。
【0052】
以下、具体的な実施例として、第1ファイバ増幅器21のファイバ長L
1=1m、第2ファイバ増幅器22のファイバ長L
2=3m、両光ファイバの導波モードの実効断面積A
eff=1.8×10
-6cm
2、第5高調波発生用の第1のパルス光および第3高調波発生用の第2のパルス光のピークパワーをp
10=p
20=10kWとした場合のシミュレーション結果を例示する。
【0053】
図7は、第5高調波発生用の第1のパルス光L
p1のパルス波形と、第3高調波発生用の第2のパルス光L
p2のパルス波形とを示すグラフである。
図7における縦軸はピーク値を1に規格化したパワー、横軸は時間(nsec)であり、図中に、実線で第5高調波発生用の第1のパルス光L
p1のパルス波形p
1(t)を、点線で第3高調波発生用の第2のパルス光L
p2のパルス波形p
2(t)をプロットしている。この図から、(12)式で表される第1のパルス光L
p1のパルス波形p
1(t)=|A
1(t)|
2は、t=0に単一の極大値を有する山形の波形である一方、(16)式で表される第2のパルス光L
p2のパルス波形p
2(t)=|A
2(t)|
2は、t=0の極小値を挟んで前後に2つの極大値を有する波形となることがわかる。
【0054】
図8は、第1のパルス光L
p1の第5高調波5ωと第2のパルス光L
p2の第3高調波3ωとの和周波で発生する第8高調波8ω(変換パルス光)Lvのパルス波形と位相変化とを示すグラフである。
図8における縦軸はピーク値を1に規格化したパワーまたは位相、横軸は時間(nsec)であり、図中に、実線で第8高調波8ωのパルス波形|A
8(t)|
2を、点線で第8高調波8ωの位相変化φ
8ω(t)をプロットしている。この図から、第8高調波(変換パルス光Lv)のパルスエネルギーの殆どが存在する時間領域で、位相が一定に保持されていることが理解される。
【0055】
図9は、従来の方法、すなわち、第5高調波発生用の第1のパルス光L
p1と第3高調波発生用の第2のパルス光L
p2とを同じパルス波形とした場合の、第8高調波8ω(変換パルス光Lv)のパルス波形と位相変化とを示すグラフである。
図9における縦軸および横軸は
図8と同様であり、第8高調波8ωのパルス波形を実線、位相変化φ
8ω(t)を点線でプロットしている。
図8と対比して明らかなように、従来の手法では、第8高調波(変換パルス光Lv)のパルスエネルギーが存在する時間領域で、位相が大きく変化していることがわかる。
【0056】
図10は、本発明を適用したパルスレーザ装置1で発生させた第8高調波のスペクトルと、従来のパルスレーザ装置で発生させた第8高調波のスペクトルとを比較したグラフである。
図10における縦軸は規格化したスペクトル強度、横軸は波長(pm)である。そして、図中に点線で示すものが従来パルスレーザ装置で発生させた第8高調波のスペクトル、実線で示すものが本発明を適用したパルスレーザ装置1で発生させた第8高調波8ωのスペクトルである。この図からわかる通り、本発明を適用したパルスレーザ装置1によれば、ほぼフーリエ限界(Transform limit)の狭帯域のスペクトルが得られる。一方、従来の方法では、SPMによる基本波のスペクトル拡大を反映して、第8高調波8ωのスペクトルも顕著に太くなっていることがわかる。
【0057】
以上では、第1のパルス光L
1を出力する第1レーザ光源11および第2のパルス光L
2を出力する第2レーザ光源12として、CW光(またはオン時間が充分に長いパルス光)を発生する光源110(111,121)と、光源110により発生されたCW光の一部を切り出して第1のパルス光を出力する第1強度変調器112および第2のパルス光を出力する第2強度変調器122とを設け、これらの強度変調器112,122の作動を制御することによって、第1のパルス光および第2のパルス光を上記のようなパルス波形のパルス光にする構成を例示した(
図3、
図4、および関連する説明部分を参照)。
【0058】
しかし、第1のパルス光L
1および第2のパルス光L
2は、上記のようにCW光(またはオン時間が充分に長いパルス光)の一部を強度変調器により切り出して形成する方法の他、狭帯域のパルス光を分割しおよび合成することによって形成することも可能である。
図11に、狭帯域のパルス光を分割しおよび合成することによって第1のパルス光L
1と第2のパルス光L
2とを形成するレーザ光源部15(第1レーザ光源16および第2レーザ光源17)の構成例を示す。
【0059】
本構成のレーザ光源部15において、第1レーザ光源16および第2レーザ光源17は、共通の光源150を有する。光源150は狭帯域のパルス光を発生するレーザ光源であり、例えばモードロックレーザが好適に用いられる。光源150により発生された原パルス光は、分岐カプラ151により2分割され、一方が第5高調波発生用の第1レーザ光源16に入射し、他方が第3高調波発生用の第2レーザ光源17に入射する。第1レーザ光源16には第1遅延構造165が設けられる。第2レーザ光源17には、分岐・合成される第1導波路172と第2導波路173との光路長差を利用した第2遅延構造175が設けられる。
【0060】
分岐し合成される第1導波路172および第2導波路173は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO
3:LN)結晶に一体的に形成される。第2遅延構造175は、例示するような非対称な導波路構成により、第1導波路172と第2導波路173とに光路長差を設け、第1導波路172を通るパルス光に対して第2導波路173を通るパルス光に遅延を与える。第1導波路172と第2導波路173との光路長差は、合成された後のパルス波形が、
図7に点線で示した第3高調波発生用の第2のパルス光L
p2のパルス波形p
2(t)と同様になるように、すなわち、第1導波路172を通ったパルス光に対する第2導波路173を通ったパルス光の遅延時間が、パルス波形p
2(t)における2つの極大値の時間間隔となるように設定される。第2導波路173には、この光路の屈折率を変化させる電極174が設けられており、電極174に印可する電圧(EO強度変調器におけるバイアス電圧に相当する)を調整することにより、第1導波路172を通ったパルス光と第2導波路173を通ったパルス光との位相差を、精密に(<λ/10〜0.1μm)制御することができる。これにより、第1導波路172を通ったパルス光と第2導波路173を通ったパルス光とが高効率で結合される。
【0061】
第1レーザ光源16に設けられた第1遅延構造165は、第8高調波発生用の波長変換光学素子(波長変換光学素子36)において、
図7に点線で示した第3高調波発生用の第2のパルス光L
p2のパルス波形p
2(t)に対して、実線で示した第5高調波発生用の第1のパルス光L
p1のパルス波形p
1(t)と同様の関係になるように遅延時間が設定される。すなわち、第2のパルス光L
p2のパルス波形p
2(t)における極小値と第1のパルス光L
p1のパルス波形p
1(t)の極大値とが一致するように遅延時間が設定される。第1遅延構造165として、光路長を調整設定可能な光遅延回路や、ファイバ長を調整した遅延ファイバ(Delay Line)等を用いることができる。
【0062】
このような構成によれば、本来的に狭帯域のパルス光が得られるモードロックレーザを用い、ファイバカプラと第1,第2遅延構造を用いた簡明な構成で、狭帯域のパルス光を出力可能なパルスレーザ装置を構成することができる。
【0063】
以上説明したように、本発明のパルスレーザ装置1においては、第1レーザ光源が出力する第1のパルス光L
1および第2レーザ光源が出力する第2のパルス光L
2は、第3系列に設けられた波長変換光学素子において発生する変換パルス光の位相が略一定になるように、パルス波形が調整設定される。そのため、光ファイバ内で生じるSPMが比較的大きく、単段の位相変調器では補償が難しいような場合でも、狭帯域のパルス光を出力可能なパルスレーザ装置を提供することができる。
【0064】
なお、以上では、第5高調波発生用の基本波パルス光をパルス波形がp
1(t)の第1のパルス光とし、第3高調波発生用の基本波パルス光をパルス波形がp
2(t)の第2のパルス光としたが、これらは逆であっても良い。また、レーザ光源部10で発生し増幅部20で増幅する基本波ωの波長を1547nmとし、波長変換部30の終段で和周波発生により波長193nmの第8高調波8ωを発生させる場合について説明したが、基本波ωの波長や和周波発生により発生させる高次高調波の波長等は適宜に設定することができる。例えば、基本波ωの波長を1064nmとし、波長変換部30で基本波ωと第2高調波2ωとの和周波発生により波長355nmの第3高調波を発生させるような場合でも同様に適用し、同様の効果を得ることができる。さらに、第1のパルス光L
1の波長(第1基本波の波長)と第2のパルス光L
2の波長(第2基本波の波長)とが異なる場合においても、同様に適用し同様の効果を得ることができる。
【0065】
以上説明したようなパルスレーザ装置1は、小型軽量であるとともに取り扱いが容易であり、露光装置や光造形装置等の光加工装置、フォトマスクやウェハ等の検査装置、顕微鏡や望遠鏡等の観察装置、測長器や形状測定器等の測定装置、光治療装置などのシステムに好適に適用することができる。
【0066】
パルスレーザ装置1を備えたシステムの第1の適用例として、半導体製造や液晶パネル製造のフォトリソグラフィ工程で用いられる露光装置について、その概要構成を示す
図12を参照して説明する。露光装置500は、原理的には写真製版と同じであり、石英ガラス製のフォトマスク513に精密に描かれたデバイスパターンを、フォトレジストを塗布した半導体ウェハやガラス基板などの露光対象物515に光学的に投影して転写する。
【0067】
露光装置500は、上述したパルスレーザ装置1と、照明光学系502と、フォトマスク513を保持するマスク支持台503と、投影光学系504と、露光対象物515を保持する露光対象物支持テーブル505と、露光対象物支持テーブル505を水平面内で移動させる駆動機構506とを備えて構成される。照明光学系502は複数のレンズ群からなり、パルスレーザ装置1から出力された変換パルス光Lvを、マスク支持台503に保持されたフォトマスク513に照射する。投影光学系504も複数のレンズ群により構成され、フォトマスク513を透過した光を露光対象物支持テーブル上の露光対象物515に投影する。
【0068】
このような構成の露光装置500においては、パルスレーザ装置1から出力された変換パルス光Lvが照明光学系502に入力され、所定光束に調整されたレーザ光がマスク支持台503に保持されたフォトマスク513に照射される。フォトマスク513を通過した光はフォトマスク513に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系504を介して露光対象物支持テーブル505に保持された露光対象物515の所定位置に照射される。これにより、フォトマスク513のデバイスパターンの像が、半導体ウェハや液晶パネル等の露光対象物515の上に所定倍率で結像露光される。
【0069】
次に、パルスレーザ装置1を備えたシステムの第2の適用例として、フォトマスクや液晶パネル、ウェハ等(被検物)の検査工程で使用される検査装置について、その概要構成を示す
図13を参照して説明する。
図13に例示する検査装置600は、フォトマスク等の光透過性を有する被検物613に描かれた微細なデバイスパターンの検査に好適に使用される。
【0070】
検査装置600は、前述したパルスレーザ装置1と、照明光学系602と、被検物613を保持する被検物支持台603と、投影光学系604と、被検物613からの光を検出するTDI(Time Delay Integration)センサ615と、被検物支持台603を水平面内で移動させる駆動機構606とを備えて構成される。照明光学系602は複数のレンズ群からなり、パルスレーザ装置1から出力された変換パルス光Lvを、所定光束に調整して被検物支持台603に保持された被検物613に照射する。投影光学系604も複数のレンズ群により構成され、被検物613を透過した光をTDIセンサ615に投影する。
【0071】
このような構成の検査装置600においては、パルスレーザ装置1から出力された変換パルス光Lvが照明光学系602に入力され、所定光束に調整されたレーザ光が被検物支持台603に保持されたフォトマスク等の被検物613に照射される。被検物613からの光(本構成例においては透過光)は、被検物613に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系604を介してTDIセンサ615に投影され結像する。このとき、駆動機構606による被検物支持台603の水平移動速度と、TDIセンサ615の転送クロックとは同期して制御される。
【0072】
そのため、被検物613のデバイスパターンの像がTDIセンサ615により検出され、このようにして検出された被検物613の検出画像と、予め設定された所定の参照画像とを比較することにより、被検物に描かれた微細パターンの欠陥が抽出される。なお、被検物613がウェハ等のように光透過性を有さない場合には、被検物からの反射光を投影光学系604に入射してTDIセンサ615に導くことにより、同様に構成することができる。