(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の要素に形成された階調は、カラー画像、要素の大小、要素の濃淡又は要素の粗密から選択される少なくとも一つの方法により形成されたことを特徴とする請求項1記載の印刷物。
前記第3の要素は、要素の大小、要素の濃淡又は要素の粗密から選択される一つの方法によって連続階調を有する可視画像が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷物。
前記第4の要素に形成された階調は、カラー画像、要素の大小、要素の濃淡又は要素の粗密から選択される少なくとも一つの方法により形成されたことを特徴とする請求項5記載の印刷物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の印刷物は、不可視画像を形成する一対の画線を、同一色及び同一面積の画線で形成することとし、各々のユニットにおいて、いずれか一方の画線を選択して配置するという、ネガポジの関係により画線を形成することで、不可視画像を形成していることから、一対の不可視画像を形成する画線の濃度を部分的に変更することができない。そのため、連続階調を有する不可視画像を形成することができないものであった。
【0012】
また、特許文献3の発明は、連続階調を有する不可視画像を形成することはできるものの、不可視画像を形成する画線を任意のずらし量によって形成するのみの発明であることから、可視画像から不可視画像にスイッチするような効果を有しておらず、印刷物のデザイン性に制限を受けるとともに、不可視画像を形成する画線のみが配置されていることから、画線構成を容易に解読されるおそれがあるという問題があった。
【0013】
本発明は、前述した課題にかんがみなされたものであり、不可視画像の基となる画像データを不可視画像の画像部を形成する要素によってくり抜き、不可視画像をネガ反転させた画像データを不可視画像の背景部を形成する要素でくり抜き、各々の要素を一対の要素として各々のユニットに形成することで、各々のユニット内の限られたスペースを用いて連続階調を有する不可視画像を付与することができるとともに、各々のユニットに可視画像を形成する要素を配置することで、可視画像と写真画像等の連続階調を有する不可視画像を付与することができる印刷物及びその作製方法に関する発明である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の印刷物は、基材の少なくとも一部に第1の要素、第2の要素及び第3の要素を有するユニットが規則的に所定のピッチで複数マトリクス状に形成された印刷領域を有し、第1の要素は、第1の方向に沿う同一線上に形成され、第2の要素及び第3の要素は、第1の方向に沿う同一線上からずれた位置に形成され、各々の第1の要素は階調を有し、各々の第2の要素は、同一ユニット内における第1の要素の階調を反転させた階調を有し、第1の要素によって第1の不可視画像が形成され、第2の要素によって第1の不可視画像のネガ画像が形成され、第3の要素によって可視画像が形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0015】
また、本発明の印刷物における第1の要素に形成された階調は、カラー画像、要素の大小、要素の濃淡又は要素の粗密から選択される少なくとも一つの方法により形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0016】
また、本発明の印刷物における第3の要素は、要素の大小、要素の濃淡又は要素の粗密から選択される一つの方法によって連続階調を有する可視画像が形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0017】
また、本発明の印刷物は、ユニットにおける長辺の長さが1mm以下であることを特徴とする印刷物である。
【0018】
また、本発明の印刷物におけるユニットは、更に第4の要素及び第5の要素を備え、第4の要素は、第1の方向と直交する第2の方向に沿う同一線上に形成され、第5の要素は、第1の方向に沿う同一線上及び第2の方向に沿う同一線上からずれた位置に形成され、各々の第4の要素は階調を有し、各々の第5の要素は、同一ユニット内の第4の要素に形成された階調を反転させた階調を有し、第4の要素によって第2の不可視画像が形成され、第5の要素によって第2の不可視画像のネガ画像が形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0019】
また、本発明の印刷物における第4の要素に形成された階調は、カラー画像、要素の大小、要素の濃淡又は要素の粗密から選択される少なくとも一つの方法により形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0020】
また、本発明の印刷物は、基材を折りたたむことで印刷領域上に重畳される判別領域を更に有し、判別領域は、透明性の基材に印刷領域に形成された複数のユニットが形成されたピッチと同一ピッチの万線が形成されたフィルタ又はレンチキュラーレンズが基材に形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0021】
また、本発明の印刷領域を有する冊子型の印刷物であって、前述の冊子型の印刷物は、印刷領域が形成された頁と隣接する頁に、判別領域が形成された判別頁を有し、判別頁は、印刷領域が形成された頁上に判別頁を重ねた際に印刷領域上に重なる位置に判別領域が形成され、判別領域は、透明性を有する基材に印刷領域に形成された複数のユニットが形成されたピッチと同一ピッチの万線が形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズが配置されたことを特徴とする冊子型の印刷物である。
【0022】
また、本発明の印刷物の作製方法であって、可視画像の基となる可視画像データと第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データを入力するステップと、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置するステップと、第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作製するステップと、ユニットと第1の不可視画像データを合成し、ユニットに配置された第1の要素によって第1の不可視画像データをくり抜き処理するステップと、ユニットと第1の不可視画像のネガ画像を合成し、ユニットに配置された第2の要素によって第1の不可視画像のネガ画像をくり抜き処理するステップと、可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理するステップと、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を有する複数のユニットを基材に出力するステップから成ることを特徴とする印刷物の作製方法である。
【0023】
また、本発明の印刷物の作製方法は、第1の要素及び第2の要素の色を各々のユニットにおいて等色とするため、第2の要素の色を補正するステップを更に有し、第2の要素の色を補正するステップは、各々のユニットに形成された第1の要素及び第2の要素の色を合算した色が全てのユニットにおいて等色として視認される状態か否かを確認するステップと、各々のユニットにおいて、第1の要素及び第2の要素を合算した色が等色とならないユニットにおいて配置された第2の要素を削除するステップと、各々のユニットに形成された第1の要素のRGB値の合計値を算出するステップと、第1の要素の面積中に形成可能なRGB値から各々のユニットに形成された第1の要素のRGB値を引き、第2の要素の面積で割った値を各々の第2の要素に配置する濃度とするステップとを有することを特徴とする印刷物の作製方法である。
【0024】
また、本発明の印刷物の作製方法は、可視画像の基となる可視画像データ、第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データを入力するステップと、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置するステップと、第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作製するステップと、第2の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作製するステップと、ユニットと第1の不可視画像データを合成し、ユニットに配置された第1の要素によって第1の不可視画像データをくり抜き処理するステップと、ユニットと第1の不可視画像のネガ画像を合成し、ユニットに配置された第2の要素によって第1の不可視画像のネガ画像をくり抜き処理するステップと、ユニットと第2の不可視画像データを合成し、ユニットに配置された第4の要素によって第2の不可視画像データをくり抜き処理するステップと、ユニットと第2の不可視画像のネガ画像を合成し、ユニットに配置された第5の要素によって第2の不可視画像のネガ画像をくり抜き処理するステップと、可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理するステップと、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を有する複数の前記ユニットを基材に出力するステップから成ることを特徴とする印刷物の作製方法である。
【0025】
また、本発明の印刷物の作製方法は、各々のユニットに配置された第1の要素及び第2の要素を合算した色と、第4の要素及び第5の要素を合算した色を全てのユニットにおいて等色とするため、第2の要素及び/又は第5の要素の色を補正するステップを更に有し、第2の要素の色を補正するステップとして各々のユニットに形成された第1の要素及び第2の要素の色を合算した色が全てのユニットにおいて等色として視認される状態か否かを確認するステップと、各々のユニットにおいて、第1の要素及び第2の要素を合算した色が等色とならないユニットにおいて配置された第2の要素を削除するステップと、各々のユニットに形成された第1の要素のRGB値の合計値を算出するステップと、第1の要素の面積中に形成可能なRGB値から各々のユニットに形成された第1の要素のRGB値を引き、第2の要素の面積で割った値を各々の第2の要素に配置する濃度とするステップと、第5の要素の色を補正するステップとして各々のユニットに形成された第4の要素及び第5の要素の色を合算した色が全てのユニットにおいて等色として視認される状態か否かを確認するステップと、各々のユニットにおいて、第4の要素及び第5の要素を合算した色が等色とならないユニットにおいて配置された第5の要素を削除するステップと、各々のユニットに形成された第4の要素のRGB値の合計値を算出するステップと、第4の要素の面積中に形成可能なRGB値から各々のユニットに形成された第4の要素のRGB値を引き、第5の要素の面積で割った値を各々の第5の要素に配置する濃度とするステップとを有することを特徴とする印刷物の作製方法である。
【0026】
また、本発明の印刷物の作製方法は、可視画像の基となる可視画像データと第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データを入力するステップと、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置するステップと、第1の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた画像データに解像度を変換するステップと、第1の要素に形成可能な最大面積を算出するステップと、解像度が変換された第1の不可視画像データとユニットを合成し、各々のユニットが対応する第1の不可視画像データの濃度により、第1の要素に形成する面積を算出するステップと、各々のユニットに形成された第1の要素の面積を第1の要素に形成可能な最大面積から引いた面積を第2の要素として算出するステップと、可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理するステップと、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を有する複数のユニットを基材に出力するステップから成ることを特徴とする印刷物の作製方法である。
【0027】
また、本発明の印刷物の作製方法は、可視画像の基となる可視画像データ、第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データを入力するステップと、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置するステップと、第1の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた画像データに解像度を変換するステップと、第1の要素に形成可能な最大面積を算出するステップと、解像度が変換された第1の不可視画像データとユニットを合成し、各々のユニットが対応する第1の不可視画像データの濃度により、第1の要素に形成する面積を算出するステップと、各々のユニットに形成された第1の要素の面積を第1の要素に形成可能な最大面積から引いた面積を第2の要素として算出するステップと、第2の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた画像データに解像度を変換するステップと、第4の要素に形成可能な最大面積を算出するステップと、解像度が変換された第2の不可視画像データとユニットを合成し、各々のユニットが対応する第2の不可視画像データの濃度により、第4の要素に形成する面積を算出するステップと、各々のユニットに形成された第4の要素の面積を第4の要素に形成可能な最大面積から引いた面積を第5の要素として算出するステップと、可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理するステップと、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を有する複数のユニットを基材に出力するステップから成ることを特徴とする印刷物の作製方法である。
【0028】
また、本発明の印刷物の作製システムは、可視画像の基となる可視画像データと第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データを入力する画像入力手段と、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置した複数のユニットを作成するユニット作製手段と、画像入力手段により入力された第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作製するネガ画像作製手段と、ユニットと第1の不可視画像データを合成し、ユニットに配置された第1の要素によって第1の不可視画像データをくり抜き処理するポジ画像くり抜き手段と、ユニットと第1の不可視画像のネガ画像を合成し、ユニットに配置された第2の要素によって第1の不可視画像のネガ画像をくり抜き処理するネガ画像くり抜き手段と、画像入力手段によって入力された可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理する可視画像くり抜き手段と、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を有するユニットを基材に印刷する印刷手段を有することを特徴とする印刷物の作製システムである。
【0029】
また、本発明の印刷物の作製システムは、第1の要素及び第2の要素の色を各々のユニットにおいて等色とするため、第2の要素の色を補正する色補正手段を更に有し、第2の要素の色を補正する色補正手段は、各々のユニットに形成された第1の要素及び第2の要素の色を合算した色が全てのユニットにおいて等色として視認されるか否かを判定する判定手段と、判定手段により第1の要素及び第2の要素を合算した色が等色とならないと判定されたユニットに配置された第2の要素を削除する第2の要素削除手段と、各々のユニットに形成された第1の要素のRGB値の合計値を算出する第1の要素RGB値算出手段と、第1の要素の面積中に形成可能なRGB値から第1の要素RGB値算出手段によって算出された各々のユニットにおける第1の要素のRGB値を引き、第2の要素の面積で割った値を各々の第2の要素に配置する濃度とする第2の要素補正値算出手段とを有することを特徴とする印刷物の作製システムである。
【0030】
また、本発明の印刷物の作製システムは、可視画像の基となる可視画像データ、第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データを入力する画像入力手段と、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置した複数のユニットを作成するユニット作製手段と、画像入力手段により入力された第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像と、第2の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作製するネガ画像作製手段と、ユニットと第1の不可視画像データを合成し、ユニットに配置された第1の要素によって第1の不可視画像データをくり抜き処理する第1の不可視画像のポジ画像くり抜き手段と、ユニットと第1の不可視画像のネガ画像を合成し、ユニットに配置された第2の要素によって第1の不可視画像のネガ画像をくり抜き処理する第1の不可視画像のネガ画像くり抜き手段と、ユニットと第2の不可視画像データを合成し、ユニットに配置された第4の要素によって第2の不可視画像データをくり抜き処理する第2の不可視画像のポジ画像くり抜き手段と、ユニットと第2の不可視画像のネガ画像を合成し、ユニットに配置された第5の要素によって第2の不可視画像のネガ画像をくり抜き処理する第2の不可視画像のネガ画像くり抜き手段と、画像入力手段によって入力された可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理する可視画像くり抜き手段と、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を有する複数のユニットを基材に印刷する印刷手段を有することを特徴とする印刷物の作製システム。
【0031】
また、本発明の印刷物の作製システムは、各々のユニットに配置された第1の要素及び前記第2の要素を合算した色と、第4の要素及び第5の要素を合算した色を全てのユニットにおいて等色とするため、第2の要素及び/又は第5の要素の色を補正する色補正手段を更に有し、第2の要素の色を補正する色補正手段として各々のユニットに形成された第1の要素及び第2の要素の色を合算した色が全てのユニットにおいて等色として視認されるか否かの判定と、各々のユニットに形成された第4の要素及び第5の要素の色を合算した色が全てのユニットにおいて等色として視認されるか否かを判定する判定手段と、判定手段により第1の要素及び第2の要素を合算した色が等色とならないと判定されたユニットに配置された第2の要素を削除する第2の要素削除手段と、判定手段により第4の要素及び第5の要素を合算した色が等色とならないと判定されたユニットに配置された第5の要素を削除する第5の要素削除手段と、各々のユニットに形成された第1の要素のRGB値の合計値を算出する第1の要素RGB値算出手段と、第1の要素の面積中に形成可能なRGB値から第1の要素RGB値算出手段によって算出された各々のユニットにおける第1の要素のRGB値を引き、第2の要素の面積で割った値を各々の第2の要素に配置する濃度とする第2の要素補正値算出手段と、各々のユニットに形成された第4の要素のRGB値の合計値を算出する第4の要素RGB値算出手段と、第4の要素の面積中に形成可能なRGB値から第4の要素RGB値算出手段によって算出された各々のユニットにおける第4の要素のRGB値を引き、第5の要素の面積で割った値を各々の第5の要素に配置する濃度とする第5の要素補正値算出手段とを有することを特徴とする印刷物の作製システムである。
【0032】
また、本発明の印刷物の作製システムは、可視画像の基となる可視画像データと第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データを入力する画像入力手段と、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置した複数のユニットを作成するユニット作製手段と、画像入力手段により入力された第1の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた画像データに解像度を変換する第1の不可視画像の解像度変換手段と、第1の要素に形成可能な最大面積を第1の要素の基準面積値として算出する第1の要素基準面積算出手段と、第1の不可視画像の解像度変換手段により変換された第1の不可視画像データとユニットを合成し、各々のユニットが対応する第1の不可視画像データの濃度により、第1の要素に形成する面積を算出する第1の要素面積算出手段と、第1の要素面積算出手段によって算出された各々のユニットごとの第1の要素の面積を、第1の要素の基準面積値から引いた面積を第2の面積として算出する第2の要素面積算出手段と、画像入力手段によって入力された可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理する可視画像くり抜き手段と、第1の要素、第2の要素及び第3の要素を有する複数のユニットを基材に印刷する印刷手段を有することを特徴とする印刷物の作製システムである。
【0033】
さらに、本発明の印刷物の作製方法は、可視画像の基となる可視画像データ、第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データを入力する画像入力手段と、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を含む最小単位のユニットを規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置した複数のユニットを作成するユニット作製手段と、画像入力手段により入力された第1の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた画像データに解像度を変換する第1の不可視画像の解像度変換手段と、第1の要素に形成可能な最大面積を第1の要素の基準面積値として算出する第1の要素基準面積算出手段と、第1の不可視画像の解像度変換手段により変換された第1の不可視画像データとユニットを合成し、各々のユニットが対応する第1の不可視画像データの濃度により、第1の要素に形成する面積を算出する第1の要素面積算出手段と、第1の要素面積算出手段によって算出された各々のユニットごとの第1の要素の面積を、第1の要素の基準面積値から引いた面積を第2の要素の面積として算出する第2の要素面積算出手段と、画像入力手段により入力された第2の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた画像データに解像度を変換する第2の不可視画像の解像度変換手段と、第4の要素に形成可能な最大面積を第4の要素の基準面積値として算出する第4の要素基準面積算出手段と、第2の不可視画像の解像度変換手段により変換された第2の不可視画像データとユニットを合成し、各々のユニットが対応する第2の不可視画像データの濃度により、第4の要素に形成する面積を算出する第4の要素面積算出手段と、第4の要素面積算出手段によって算出された各々のユニットごとの第4の要素の面積を、第4の要素の基準面積値から引いた面積を第5の要素の面積として算出する第5の要素面積算出手段と、画像入力手段によって入力された可視画像データを、第3の要素によってくり抜き処理する可視画像くり抜き手段と、第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素及び第5の要素を有する複数のユニットを基材に印刷する印刷手段を有することを特徴とする印刷物の作製システムである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の印刷物は、顔画像等の連続階調を有する不可視画像を印刷物上に付与することができることから、身分証明書等の偽造防止技術として極めてレベルの高い技術として活用することが可能である。これは、顔画像を含む身分証明書等を偽造する場合、顔写真の張り替えや可視光下で観察される印刷模様を偽造して新たな顔写真を張る行為に対して有効であり、顔写真を貼り変える偽造に対しては、不可視画像が形成された領域に判別具を重ねることで偽造者が貼った顔写真と不可視画像が一致しないことで偽造品と判断することができる。また、印刷模様から偽造した場合には、不可視画像が形成される領域に判別具を重ねても不可視画像が出現しないことから、偽造品と判断することができる。以上のように、顔写真を含む身分証明書を偽造する行為に対して極めて高い抑止力を有するものである。
【0035】
また、本発明の印刷物は、各々のユニットにおいて可視画像を形成する要素と不可視画像を形成する要素を重複しない状態で配置することができることから、連続階調を有する可視画像内に、連続階調を有する不可視画像を形成することができることから、ユーザーの要望に合わせた画線設計が可能となり、デザイン性の自由度が高い印刷物を作製することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明の印刷物は、判別方法が万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具を重ねる方法のみで真偽判別することができることから、例えば、冊子形態で形成された場合には、隣接する頁に判別具を含む状態で形成し、商品券のような一枚の用紙に形成された場合、印刷物を折りたたむことで不可視画像領域に判別具が重なるように同一用紙上に判別具を形成することで、独立した判別具を用いることなく、自己認証可能な一体型の冊子とすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0039】
本発明の印刷物は、
図1に示されたように、印刷物1に判別具2を重ねて観察することで、顔画像等の連続階調を有する不可視画像を発現させて真意性を判別することができるものである。
【0040】
判別具2は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等である。印刷物1の印刷模様3を通常の可視条件において目視により観察すると、
図2に示されたように、任意の図形等からなる可視画像4が視認される。そして、印刷物1上に判別具2を所定の角度を持って重ね合わせると、
図3に示されたような第1の不可視画像5が発現する。
【0041】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の第1の実施の形態における印刷物1について説明する。
図4は、第1の実施の形態における印刷物1を構成する最小単位の要素構成(以下「ユニット」という。)を示すものであり、各々のユニットには、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aと、第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´と、可視画像4を形成する第3の要素Cを有する。
【0042】
ユニットの縦横の寸法Sはそれぞれ等しく、例えば、340μmというように、1mm以下の大きさである。これらの最小単位のユニットをマトリクス状に配置することで、任意の可視画像4と第1の不可視画像5が形成される。なお、第1の実施の形態における印刷物1は、コート紙を基材とし、インクジェット印刷によりユニットの寸法Sを340μmとした印刷模様3を形成したが、ユニットの寸法S、基材、印刷方法、印刷材料及び印刷装置等について何ら限定するものではない。
【0043】
第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aと第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´は一対の関係にあり、全てのユニットにおいて、第1の要素Aによって第1の不可視画像5の画像部を形成し、第2の要素A´によって第1の不可視画像5をネガ反転させた背景部が形成される。これにより、各々のユニットにおいて第1の要素A及び第2の要素A´を合計した色が等色として観察されることから、印刷模様3を観察した際に、第1の要素Aと第2の要素A´は、一定濃度のフラットな状態(例えば、グレーの背景)として観察され、
図2のような第3の要素Cによって形成された可視画像4のみが観察される。なお、第1の要素A及び第2の要素A´の形成方法については、後述により詳細に説明する。
【0044】
本発明は、前述したように、各々のユニットにおける第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色が、全てのユニットにおいて等色として視認されるように形成する必要がある。しかしながら、全てのユニットに配置される第1の要素Aの色及び第2の要素A´の色を等色として形成する必要はなく、
図5のように、各々のユニットにおいて形成された第1の要素Aに合わせた第2の要素A´を形成することで、任意の色を配置することができる。
【0045】
また、第1の不可視画像5を視認するために、印刷物1上に判別具2を重ねて観察した状態を示すのが
図6である。なお、印刷物1上に判別具2を重ねて観察する際の印刷物1と判別具2の位置関係については、
図4に示すユニットにおける線L1の位置に判別具2の中心線7(万線パターンを有するフィルタの場合は、非要素部の中心、レンチキュラーレンズの場合は、レンズを構成する凸部の中心)を、各々のユニットにおける線L1と一致するように判別具2を重ねて観察することで、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aのみが拡大され、判別具2の中心線7上に存在しない第2の要素A´及び第3の要素Cは観察されない状態となることから、可視画像4が消失し、第1の不可視画像5が出現する。
【0046】
また、第3の要素Cは、第1の不可視画像5を観察する際に判別具2によって強調されない位置、すなわち、各々のユニットにおける線L1上からずれた位置に形成されれば、大きさ及び色等を任意に設定することができることから、写真画像等の連続階調を有する可視画像4として形成することができる。なお、本発明でいう可視画像4とは、印刷物1を通常の光源下で目視により観察した場合に視認される画像であり、不可視画像とは、通常の光源下で目視により観察した場合に視認されない又はほとんど視認されない画像のことである。
【0047】
このような構成を有する複数のユニットを印刷物1上にマトリクス状に隙間なく、連続的、かつ、規則的に配置した状態を
図7に示す。
図7(a)は、複数のユニットが形成された印刷物1と判別具2の関係を示すものであり、各々のユニットにおける線L1上に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察した状態を示すものである。この場合に観察される要素は、判別具2であるレンチキュラーレンズの中心線7が重なっている第1の不可視画像5の画像部を形成している第1の要素Aのみであることから、
図7(b)に示すように、第1の要素Aのみが拡大されて観察されることで、
図3に示す第1の不可視画像5が出現する。このとき、第1の不可視画像5の背景部を形成している第2の要素A´及び可視画像4を形成している第3の要素Cは、レンチキュラーレンズの中心線7からずれた位置に形成されていることから、観察されることはない。
【0048】
また、第1の実施の形態の印刷物1を構成するユニットについては、
図8(a)示すユニットを例に説明したが、各々のユニットにおける線L1上に第1の要素Aを配置し、第2の要素A´及び第3の要素Cを線L1上に配置しない構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、
図8(b)に示すように第1の要素A、第2の要素A´及び第3の要素Cによりユニットの全てを埋める配置や、
図8(C)のように第1の要素Aをユニットの中心部分に配置し、第2の要素A´をユニットの角部分に円形状の中心がくるように、それぞれ1/4の円形状として配置し、第3の要素Cを第2の要素A´と隣接する位置に配置する構成や、
図8(d)に示すように、第1の要素A、第2の要素A´及び第3の要素Cをユニットの横方向に分割するように配置する構成等、様々な配置とすることが可能であり、本発明の効果が得られる配置であればいかなる配置であっても良い。
【0049】
次に、第1の実施の形態による印刷物1の作製に用いられる装置の一例について、その構成を示した
図9を用いて説明する。この作製装置は、入力部401、処理部402、記憶部403及び出力部404を備えている。入力部401は、第1の実施の形態の印刷物1の作製に必要なデータを入力し、処理部402に与える。処理部402は、与えられたデータを記憶部403に格納するとともに、印刷物1の作製に必要な演算処理及び画像処理等を行い、得られた結果を出力部404に与える。出力部404は、処理部402から与えられたデータを、外部の、例えば、図示されてない印刷機等に出力する。なお、後述する第2〜第5の実施の形態における印刷物についても、本装置を用いることで作製することができる。
【0050】
次に、第1の実施の形態における印刷物1の作製工程について、
図10のフローチャートを用いて説明する。まず、f1として、第1の不可視画像5の基となるターゲット画像を用意する。このときのターゲット画像は、顔写真等を撮影してターゲット画像とする方法や、あらかじめ入力された画像情報等を活用することができる。
【0051】
次に、f2において入力したターゲット画像を複製し、入力画像をネガ反転させたネガ画像を作製する。このネガ画像は、第2の要素A´に形成する画像である。次に、f3にて判別具2の線数に合わせてマトリクス状に配置された各々のユニットにおける第1の要素Aによってターゲット画像のくり抜き処理を行い、f4において、マトリクス状に配置された複数のユニットにおける第2の要素A´でネガ画像のくり抜き処理を行う。
【0052】
次に、f5として、f3の工程でくり抜いたターゲット画像(ポジ画像)と、f4の工程でくり抜いたターゲット画像のネガ画像を各々のユニットにおいて合成する処理を行う。このとき、各々のユニットに形成された第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色及び濃度を、印刷模様3において一定の状態とする必要があるため、f6により各々のユニットに形成された第1の要素と第2の要素A´を合計したRGB値を算出し、全てのユニットにおいて第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色が等色として観察されるか否かを判定する処理を行う。
【0053】
このとき、各々のユニットにおける第1の要素A及び第2の要素A´を合計した色が等色であると判断された場合、f11に移行し、第1の不可視画像5を形成する要素の作製を終了する。一方、第1の要素A及び第2の要素A´の色が等色ではないと判断された場合、f7へと移行し、各々のユニットにおける第2の要素A´の色を補正する処理を行う。
【0054】
f7では、f4でくり抜いた第2の要素A´を消去する処理を行い、f8で、各々のユニットに形成された第1の要素AのRGB値の合計値(以下「A total」という。)を算出し、f9で、各々のユニットに配置される第2の要素A´のRGB値を算出するため、以下の式により、第1の要素Aの面積中に形成することのできる最大のRGB値(各255)の合計値から、「Atotal」を引いた値を第2の要素A´の面積で割ったものが各々の第2の要素A´に形成される要素の濃度となる。
【0056】
前述の式1により、各々のユニットにおいて配置される第2の要素A´のRGB値が決定することから、f10にて全てのユニットに配置される第2の要素A´が配置される。これにより、全てのユニットにおける第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色を等色として観察される状態とすることができる。
【0057】
f6までの処理又はf7〜f10までの処理により、第1の不可視画像5を形成する第1の要素A及び第2の要素A´を等色として観察される状態とすることができることから、f11の処理により、可視画像4のターゲットとなる画像を入力し、各々のユニットに形成される第3の要素Cでくり抜くことで第1の不可視画像5を形成する第1の要素A及び第2の要素A´と、可視画像4を形成する第3の要素Cを合成することができる。
【0058】
以上の作製方法に従い、
図9の作製装置を用いた印刷物の作製システムとすることで、オンデマンド印刷により、各種証明書等の貴重印刷物として写真階調を有する不可視画像を付与することができる。まず、デジタルカメラやスキャナ等により可視画像4と第1の不可視画像5の基画像を入力する入力部401と、入力画像、第1の要素A、第2の要素A´及び第3の要素Cを有するユニットの配置や入力部401によって入力された画像データを記憶する記憶部403と、第1の不可視画像5のネガ画像の作製、可視画像4、第1の不可視画像5のポジ画像及びネガ画像を各々のユニットにおける要素でくり抜き処理、第2の要素B´の色補正等の処理を行う処理部402と、インクジェットプリンタ及びレーザプリンタ等の出力機により印刷模様3を印刷する出力部404を備えた印刷物の作製システムとすることで、第1の実施の形態における印刷物1を容易に得ることができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における印刷物1について、図面を用いて説明する。第2の実施の形態における印刷物1は、第1の実施の形態における印刷物1とは異なり、印刷物1上に所定の角度で判別具2を重ねた際に第1の不可視画像5が観察され、更には所定の角度と異なる角度で判別具2を重ねた際に第1の不可視画像5と異なる第2の不可視画像6が観察されるものである。
【0060】
図11は、第2の実施の形態における印刷物1を構成する最小単位のユニットを示すものであり、各々のユニットには、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素A(a)と、第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´(b)と、第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素B(c)と、第2の不可視画像6の背景部を形成する第5の要素B´(d)と、可視画像4を形成する第3の要素Cを有する。
【0061】
ユニットの縦横の寸法Sはそれぞれ等しく、例えば、340μmというように、1mm以下の大きさである。これらの最小単位のユニットをマトリクス状に配置することで、任意の可視画像4、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6が形成される。なお、第2の実施の形態における印刷物1は、コート紙を基材とし、インクジェット印刷によりユニットの寸法Sを340μmとした印刷模様3を形成したが、ユニットの寸法S、基材、印刷方法、印刷材料及び印刷装置等について何ら限定するものではない。
【0062】
第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aと第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´は一対の関係にあり、全てのユニットにおいて、第1の要素Aによって第1の不可視画像5の画像部を形成し、第2の要素A´によって第1の不可視画像5をネガ反転させた背景部が形成される。また、第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素Bと第2の不可視画像6の背景部を形成する第5の要素B´は一対の関係にあり、全てのユニットにおいて、第4の要素Bによって第2の不可視画像6の画像部を形成し、第5の要素B´によって第2の不可視画像6をネガ反転させた背景部が形成される。これにより、各々のユニットにおいて第1の要素A及び第2の要素A´を合計した色が等色として観察され、更には第4の要素B及び第5の要素B´を合計した色が等色として観察されることから、印刷模様3を観察した際に、第1の要素A、第2の要素A´、第4の要素B及び第5の要素B´を合計した色は、一定濃度のフラットな状態(例えば、グレーの背景)として観察され、
図2のような第3の要素Cによって形成された可視画像4のみが観察される。
【0063】
一方、印刷物1上に所定の角度に沿って判別具を重ねて観察すると、
図12(a)に示す第1の不可視画像5が観察され、判別具2を前述した所定の角度と異なる方向に沿って重ねて観察した場合、
図12(b)に示す第2の不可視画像6が観察される。
【0064】
前述したように、各々のユニットにおける第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色及び第4の要素Bと第5の要素B´を合計した色が、全てのユニットにおいて等色として視認されるように形成する必要がある。しかしながら、全てのユニットに配置される第1の要素Aの色及び第2の要素A´の色、第4の要素Bの色及び第5の要素B´の色を等色として形成する必要はなく、
図13のように、各々のユニットにおいて形成された第1の要素Aが有する階調を反転させた階調を有する第2の要素A´、第4の要素Bが有する階調を反転させた階調を有する第5の要素B´を形成することで、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6を不可視とした状態で任意の色(要素)を配置することができる。
【0065】
また、第1の不可視画像5を視認するために、印刷物1上に判別具2を所定の角度に沿って重ねて観察した状態を示すのが
図14である。なお、印刷物1上に判別具2を重ねて観察する際の印刷物1と判別具2の位置関係については、第1の不可視画像5を観察する際の所定の角度が、
図11に示すユニットの線L1の位置に判別具2の中心線7を合わせた位置であり、各々のユニットにおける線L1に中心線7が一致するように判別具2を重ねて観察することで、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aのみが拡大され、判別具2の中心線7にない第2の要素A´、第3の要素C、第4の要素B及び第5の要素B´は観察されない状態となることから、可視画像4が消失し、第1の不可視画像5が出現する。また、第2の不可視画像6を観察する際の所定の角度が、
図11に示すユニットの線L3の位置に判別具2の中心線7を合わせた位置であり、各々のユニットにおける線L3に中心線7が一致するように判別具2を重ねて観察することで、第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素Bのみが拡大され、判別具2の中心線7にない第1の要素A、第2の要素A´、第3の要素C及び第5の要素B´は観察されない状態となることから、可視画像4が消失し、第2の不可視画像6が出現する。
【0066】
また、第3の要素Cは、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6を観察する際に判別具の中心線7に対応しない位置、すなわち、各々のユニットにおける線L1及び線L3からずれた位置に形成されれば、大きさ及び色等を任意に設定することができることから、写真画像等の連続階調を有する可視画像4として形成することができる。
【0067】
このような構成を有する複数のユニットを印刷物1上にマトリクス状に隙間なく、連続的、かつ、規則的に配置した状態を
図15及び
図16に示す。
図15(a)は、複数のユニットが形成された印刷物1と判別具2の関係を示すものであり、各々のユニットにおける線L1上に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察した状態を示すものである。この場合に観察される要素は、レンチキュラーレンズの中心線7が重なっている第1の不可視画像5の画像部を形成している第1の要素Aであることから、
図15(b)に示すように、第1の要素Aのみが拡大されて観察されることで、
図12(a)に示す第1の不可視画像5が観察される。このとき、第1の不可視画像5の背景部を形成している第2の要素A´と、第2の不可視画像6を形成している第4の要素B及び第5の要素B´と、可視画像4を形成している第3の要素Cは、レンチキュラーレンズの中心線7からずれた位置に形成されていることから、観察されることはない。
【0068】
また、各々のユニットにおける線L3上に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察した状態を示すものが
図16である。この場合に観察される要素は、レンチキュラーレンズの中心線7が重なっている第2の不可視画像6の画像部を形成している第4の要素Bであることから、
図16(b)に示すように、第4の要素Bのみが拡大されて観察されることで、
図12(b)に示す第2の不可視画像6が観察される。このとき、第2の不可視画像6の背景部を形成している第5の要素B´と、第1の不可視画像5を形成している第1の要素A及び第2の要素A´と、可視画像4を形成している第3の要素Cは、レンチキュラーレンズの中心線7からずれた位置に形成されていることから、観察されることはない。
【0069】
また、第2の実施の形態の印刷物1を構成するユニットについては、
図11に示すユニットを例に説明したが、各々のユニットにおける線L1上に第1の要素Aのみを配置し、各々のユニットにおける線L3上に第4の要素Bのみを配置する構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、
図17(a)に示すように第1の要素A、第2の要素A´、第3の要素C、第4の要素B及び第5の要素B´によりユニットの全てを埋める配置や、
図17(b)のように第1の要素Aをユニットの中心部分を除く線L1上に配置し、第2の要素A´をユニットの上下部分に分割して配置し、第4の要素Bをユニットの中心部分を除く線L3上に配置し、第5の要素をユニットの左右方向の端部に分割して配置し、第3の要素Cをユニットの中心を除く第1の要素A、第2の要素A´、第4の要素B及び第5の要素B´が配置されない領域に形成される構成であっても良い。
【0070】
次に、第2の実施の形態における印刷物1の作製工程について、
図18のフローチャートを用いて説明する。まず、f12として、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6の基となるターゲット画像を用意する。このときのターゲット画像は、顔写真等を撮影してターゲット画像とする方法や、あらかじめ入力された画像情報等を活用することができる。
【0071】
次に、f12において入力した第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6のターゲット画像の各々を複製し、入力画像をネガ反転させたネガ画像を作製する。ここで作製した第1の不可視画像5のネガ画像は、第2の要素A´に形成する画像であり、第2の不可視画像6のネガ画像は、第5の要素B´を形成する画像である。次に、f14以降の工程として、第1の不可視画像5を形成する第1の要素A及び第2の要素A´を作製する。f14では、判別具2の線数に合わせてマトリクス状に配置された各々のユニットにおける第1の要素Aによってターゲット画像(ポジ画像)のくり抜き処理を行い、f15において、マトリクス状に配置された複数のユニットにおける第2の要素A´でターゲット画像(ネガ画像)のくり抜き処理を行う。
【0072】
次に、f16において、f14の工程でくり抜いたターゲット画像(ポジ画像)と、f15の工程でくり抜いたターゲット画像(ネガ画像)を各々のユニットにおいて形成する処理を行う。このとき、各々のユニットに形成された第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色を、印刷模様3において一定の状態とする必要があるため、f17により各々のユニットに形成された第1の要素と第2の要素A´を合計したRGB値を算出し、全てのユニットにおいて第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色が等色として観察されるか否かを判定する処理を行う。
【0073】
このとき、各々のユニットにおける第1の要素A及び第2の要素A´を合計した色が等色であると判断された場合、f22に移行し、第2の不可視画像6を形成する第4の要素B及び第5の要素B´を形成する工程へと移行する。一方、第1の要素A及び第2の要素A´の色が等色ではないと判断された場合、f18へと移行し、各々のユニットにおける第2の要素A´の色を補正する処理を行う。
【0074】
f18では、f16で形成した第2の要素A´を消去する処理を行い、f19で、各々のユニットに形成された第1の要素AのRGB値の合計値(以下「A total」という。)を算出し、f20で、各々のユニットに配置される第2の要素A´のRGB値を算出するため、以下の式により、第1の要素Aの面積中に形成することのできる最大のRGB値(各255)の合計値から、「Atotal」を引いた値を第2の要素A´の面積で割ったものが各々の第2の要素A´に形成される要素の濃度となる。
【0076】
前述の式2により、各々のユニットにおいて配置される第2の要素A´のRGB値が決定することから、f21にて全てのユニットに配置される第2の要素A´が形成される。これにより、全てのユニットにおける第1の要素Aと第2の要素A´を合計した色を等色として観察される状態とすることができる。
【0077】
f17までの処理又はf18〜f21までの処理により、第1の不可視画像5を形成する第1の要素A及び第2の要素A´を配置する全ての工程を終了し、f22以降の第2の不可視画像6及び可視画像4を形成する工程に移行する。
【0078】
f22では、判別具2の線数に合わせてマトリクス状に配置された各々のユニットにおける第4の要素Bによってターゲット画像(ポジ画像)のくり抜き処理を行い、f23において、マトリクス状に配置された複数のユニットにおける第5の要素B´でターゲット画像(ネガ画像)のくり抜き処理を行う。
【0079】
次に、f24において、f22の工程でくり抜いたターゲット画像(ポジ画像)と、f23の工程でくり抜いたターゲット画像(ネガ画像)を各々のユニットにおいて形成する処理を行う。このとき、各々のユニットに形成された第4の要素Bと第5の要素B´を合計した色を、印刷模様3において一定の状態とする必要があるため、f25により各々のユニットに形成された第4の要素Bと第5の要素B´を合計したRGB値を算出し、全てのユニットにおいて第4の要素Bと第5の要素B´を合計した色が等色として観察されるか否かを判定する処理を行う。
【0080】
このとき、各々のユニットにおける第4の要素B及び第5の要素B´を合計した色が等色であると判断された場合、f30に移行し、第2の不可視画像6を形成する第4の要素B及び第5の要素B´の作製工程を終了する。一方、第4の要素B及び第5の要素B´の色が等色ではないと判断された場合、f26へと移行し、各々のユニットにおける第5の要素B´の色を補正する処理を行う。
【0081】
f26では、f24で形成した第5の要素B´を消去する処理を行い、f27で、各々のユニットに形成された第4の要素BのRGB値の合計値(以下「B total」という。)を算出し、f28で、各々のユニットに配置される第5の要素B´のRGB値を算出するため、以下の式により、第4の要素Bの面積中に形成することのできる最大のRGB値(各255)の合計値から、「Atotal」を引いた値を第5の要素B´の面積で割ったものが各々の第5の要素B´に形成される要素の濃度となる。
【0083】
前述の式3により、各々のユニットにおいて配置される第5の要素B´のRGB値が決定されることから、f29にて全てのユニットに配置される第5の要素B´が形成される。これにより、全てのユニットにおける第4の要素Bと第5の要素B´を合計した色を等色として観察される状態とすることができる。
【0084】
以上の工程により、第1の不可視画像5を形成する第1の要素A及び第2の要素A´と、第2の不可視画像6を形成する第4の要素B及び第5の要素B´を有するユニットの濃度を全て一定に保つことができることから、f30の処理により、可視画像4のターゲットとなる画像を入力し、各々のユニットに形成される第3の要素Cでくり抜くことで第1の不可視画像5、第2の不可視画像6を形成する各々の要素と、可視画像4を形成する第3の要素Cを合成することができる。
【0085】
また、第2の実施の形態では、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1要素Aを配置する方向を基準に第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素Bを直交する方向に沿って形成することで2つの不可視画像を形成した例で説明したが、判別具の中心線7を重ねる方向、すなわち、不可視画像の画像部を形成する方向を3方向以上とすることで3つ以上の不可視画像を形成することも可能である。
【0086】
以上の作製方法に従い、
図9の作製装置を用いた印刷物の作製システムとすることで、オンデマンド印刷により、各種証明書等の貴重印刷物として写真階調を有する不可視画像を付与することができる。まず、デジタルカメラやスキャナ等により可視画像4、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6の基画像を入力する入力部401と、入力画像と、第1の要素A、第2の要素A´、第3の要素C、第4の要素B及び第5の要素B´を有するユニットの配置と、入力部401によって入力された画像データを記憶する記憶部403と、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6のネガ画像の作製、可視画像4、第1の不可視画像5のポジ画像及びネガ画像、第2の不可視画像6のポジ画像及びネガ画像を各々のユニットにおける要素でくり抜き処理し、第2の要素B´及び/又は第5の要素B´の色補正等の処理を行う処理部402と、インクジェットプリンタ及びレーザプリンタ等の出力機により印刷模様3を印刷する出力部404を備えた印刷物の作製システムとすることで、第2の実施の形態における印刷物1を容易に得ることができる。
【0087】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態における印刷物1について図面を用いて説明する。第3の実施の形態における印刷物1は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のようなフルカラーの写真階調画像を不可視画像に形成する例とは異なり、少なくとも1色のインキの濃度(要素面積率)を段階的に変更させることで連続階調画像を形成する固定印刷向けの形態である。
図19は、第3の実施の形態における印刷物1を構成する最小単位のユニットを示すものであり、各々のユニットには、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aと、第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´と、可視画像4を形成する第3の要素Cを有する。
【0088】
ユニットの縦横の寸法Sはそれぞれ等しく、例えば、340μmというように、1mm以下の大きさである。これらの最小単位のユニットをマトリクス状に配置することで、任意の可視画像4と第1の不可視画像5が形成される。なお、第3の実施の形態における印刷物1は、上質紙を基材とし、オフセット印刷によりユニットの寸法Sを340μmとした印刷模様3を形成したが、ユニットの寸法S、基材、印刷方法、印刷材料及び印刷装置等について何ら限定するものではない。
【0089】
第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aと第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´は一対の関係にあり、規則的に複数形成された各々のユニットにおいて第1の要素A及び第2の要素A´を合計した濃度を一定に保つ必要があることから、
図20のように、第1の要素Aを淡い色とする場合(a)、第2の要素A´は濃い色で再現され、第1の要素Aが濃い色で再現された場合(d)、第2の要素A´は淡い色で再現される。これにより、各々のユニットにおいて第1の要素A及び第2の要素A´を合計した色を等色とすることができることから、印刷模様3を観察した際に、第1の要素Aと第2の要素A´は、一定濃度のフラットな状態として観察される。なお、第3の実施の形態における印刷物1は、固定印刷によって形成されることから、第1の要素Aと第2の要素A´を等色の色材により形成する必要がある。これにより、各々のユニットにおいて形成される第1の要素A及び第2の要素A´を合計した要素面積を全てのユニットにおいて等しい組合せとして形成すれば、全てのユニットの濃度を一定に保つことができるとともに、第1の要素Aの面積を任意に設定することで、第1の不可視画像5を階調画像とすることができる。
【0090】
また、第1の不可視画像5を視認するために、印刷物1上に判別具2を重ねて観察した状態を示すのが
図21である。なお、印刷物1上に判別具2を重ねて観察する際の印刷物1と判別具2の位置関係については、
図19に示すユニットにおける線L1の位置に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察することで、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aのみが拡大され、判別具2の中心線7上にない第2の要素A´及び第3の要素Cは観察されない状態となることから、可視画像4が消失し、第1の不可視画像5が出現する。
【0091】
また、第3の要素Cは、第1の不可視画像5を観察する際に観察されない位置、すなわち、各々のユニットにおける線L1の位置からずれた位置に形成されれば、大きさ及び色等を任意に設定することができることから、写真画像等の連続階調を有する可視画像4として形成することができる。
【0092】
このような構成を有する複数のユニットを印刷物1上にマトリクス状に隙間なく、連続的、かつ、規則的に配置した状態を
図22に示す。
図22(a)は、複数のユニットが形成された印刷物1と判別具2の関係を示すものであり、各々のユニットにおける線L1上に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察した状態を示すものである。この場合に観察される要素は、レンチキュラーレンズの中心線7が重なっている第1の不可視画像5の画像部を形成している第1の要素Aであることから、
図22(b)に示すように、第1の要素Aのみが拡大されて観察されることで、
図3に示す第1の不可視画像5が観察される。このとき、第1の不可視画像5の背景部を形成している第2の要素A´及び可視画像4を形成している第3の要素Cは、レンチキュラーレンズの中心線7からずれた位置に形成されていることから、観察されることはない。
【0093】
また、第3の実施の形態の印刷物1を構成するユニットについては、
図19に示すユニットを例に説明したが、各々のユニットにおける線L1上に第1の要素Aを配置し、第2の要素A´及び第3の要素Cを線L1上に配置しない構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、
図23(a)に示すように、第1の要素Aをユニットの中心を除く線L1上に形成し、第2の要素をユニットの中心を除く線L1と直交する方向の端部に分割して配置し、第3の要素Cをユニットの4角に配置する構成や、
図23(b)に示すように、第1の要素A、第2の要素A´及び第3の要素Cによりユニットの全てを埋める構成等、様々な配置とすることが可能であり、本発明の効果が得られる配置であればいかなる配置であっても良い。
【0094】
次に、第3の実施の形態における印刷物1の作製工程について、
図24のフローチャートを用いて説明する。まず、f31として、第1の不可視画像5のターゲット画像を用意する。このときのターゲット画像は、顔写真等を撮影してターゲット画像とする方法や、あらかじめ入力された画像情報等を活用することができる。
【0095】
次に、f32において入力したターゲット画像を、判別具2に形成された線数の幅と各々のユニットにおける1辺の長さが等しくなるように、ターゲット画像の解像度を変換する。次に、f33において各々のユニットに形成される第1の要素A及び第2の要素A´が形成される領域を作製し、第1の要素Aが形成される領域で第1の不可視画像5のくり抜き処理を行う。
【0096】
次に、f34において各々のユニットに形成された第1の要素Aを形成可能な最大の面積値を基準値として算出し、f35にて第1の不可視画像の濃度に合わせて各々のユニットに第1の要素Aを形成し、f36で各々のユニットにおいて形成された第1の要素Aの面積を、基準値から差し引いた面積により第2の要素A´を形成する。
【0097】
次に、f37において可視画像4の基となるターゲット画像を入力し、各々のユニットにおいて形成される第3の要素Cで可視画像4のターゲット画像をくり抜き処理し、第3の要素Cを形成する。ここまでの工程により、第3の実施の形態における印刷物を作製することができる。
【0098】
この第3の実施の形態における印刷物1は、前述した工程により版面データを作製することで、オフセット印刷等の固定印刷方式により、少なくとも1色のインキを用いた印刷物1を作製することができることから、各種証明書用の台紙や商品券等の同一図柄の印刷物を大量に製造する際に活用されるものであり、一般的な基材、インキ及び印刷機を用いることで容易に製造可能であることから、幅広い用途に活用することができる。なお、第3の実施の形態においては、上質紙を基材として用い、オフセット印刷方式によって印刷物を製造した例で説明したが、基材、色材及び印刷方式等、様々な方法を用いることが可能であり、これらの作製方法に限定されるものではない。
【0099】
また、第3の実施の形態における印刷物1は、オフセット印刷等の固定印刷方式向けの構成であるが、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のように、
図9の作製装置を用いたオンデマンド印刷用の技術として活用することも可能である。その場合、まず、デジタルカメラやスキャナ等により可視画像4と第1の不可視画像5の基画像を入力する入力部401と、入力画像と、第1の要素A、第2の要素A´及び第3の要素Cを有するユニットの配置と、第1の要素Aの最大面積となる基準面積と、入力部401によって入力された画像データを記憶する記憶部403と、第1の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた解像度へ変換する処理と、各々のユニットに対応する第1の不可視画像5の濃度を第1の要素Aの濃度として算出し、各々のユニットにおける第1の要素Aの面積を基準面積から引いて第2の要素A´の面積の算出する処理を行う処理部402と、インクジェットプリンタ及びレーザプリンタ等の出力機により印刷模様3を印刷する出力部404を備えた印刷物の作製システムとすることで、第3の実施の形態における印刷物1を容易に得ることができる。
【0100】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態における印刷物1について、図面を用いて説明する。第4の実施の形態における印刷物1は、第3の実施の形態と同様に固定印刷向けの形態であるが、可視画像4及び第1の不可視画像5の他に、第2の不可視画像6が形成された印刷物1である。
図25は、第4の実施の形態における印刷物1を構成する最小単位のユニットを示すものであり、各々のユニットには、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素A及び背景部を形成する第2の要素A´と、第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素B及び背景部を形成する第5の要素B´と、可視画像4を形成する第3の要素Cを有する。
【0101】
ユニットの縦横の寸法Sはそれぞれ等しく、例えば、340μmというように、1mm以下の大きさである。これらの最小単位のユニットをマトリクス状に配置することで、任意の可視画像4、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6が形成される。なお、第4の実施の形態における印刷物1は、上質紙を基材とし、オフセット印刷によりユニットの寸法Sを340μmとした印刷模様3を形成したが、ユニットの寸法S、基材、印刷方法、印刷材料及び印刷装置等について何ら限定するものではない。
【0102】
第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aと第1の不可視画像5の背景部を形成する第2の要素A´は一対の関係にあり、各々の要素を形成することができる最大の面積を同一の面積とし、規則的に複数形成された各々のユニットにおいて第1の要素A及び第2の要素A´を合計した濃度を一定に保つ必要があることから、
図26のように、第1の要素Aを淡い色とする場合(a)、第2の要素A´は濃い色で再現され、第1の要素Aが濃い色で再現された場合(d)、第2の要素A´は淡い色で再現される。また、第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素Bと第2の不可視画像6の背景部を形成する第5の要素B´は一対の関係にあり、各々の要素を形成することができる最大面積を同一の面積とし、規則的に複数形成された各々のユニットにおいて第4の要素B及び第5の要素B´を合計した濃度を一定に保つ必要があることから、
図26のように、第4要素Bを淡い色とする場合(a)、第5の要素B´は濃い色で再現され、第4の要素Bが濃い色で再現された場合(d)、第5の要素B´は淡い色で再現される。これにより、各々のユニットにおいて第1の要素A、第2の要素A´、第4の要素B及び第5の要素B´を合計した色を等色とすることができる(要素面積が同一)ことから、印刷模様3を観察した際に、第1の要素A、第2の要素A´、第4の要素B及び第5の要素B´を有するユニットは、一定濃度のフラットな状態として観察される。
【0103】
第4の実施の形態における印刷物1は、固定印刷によって形成されることから、第1の要素Aと第2の要素A´を等色の色材により形成し、第4の要素B及び第5の要素B´を等色とする必要がある。これにより、各々のユニットにおいて形成される第1の要素A及び第2の要素A´を合計した面積と、第4の要素B及び第5の要素B´を合計した面積を、全てのユニットにおいて等しい組合せとして形成すれば、全てのユニットの濃度(色)を一定に保つことができるとともに、第1の要素Aの面積を任意に設定することで、第1の不可視画像5及び/又は第2の不可視画像6を階調画像とすることができる。
【0104】
また、第1の不可視画像5を視認するために、印刷物1上に判別具2を重ねて観察した状態を示すのが
図27である。なお、印刷物1上に判別具2を重ねて観察する際の印刷物1と判別具2の位置関係については、
図25に示すユニットにおける線L1の位置に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察することで、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1の要素Aのみが拡大され、判別具2の中心線7にない第2の要素A´及び第3の要素Cは観察されない状態となることから、可視画像4が消失し、第1の不可視画像5が出現する。一方、
図25に示すユニットにおける線L3の位置に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察することで、第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素Bのみが拡大され、判別具2の中心線7にない第5の要素A´及び第3の要素Cは観察されない状態となることから、可視画像4が消失し、第2の不可視画像6が出現する。
【0105】
また、第3の要素Cは、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6を観察する際に観察されない位置、すなわち、各々のユニットにおける線L1及びL3上からずれた位置に形成されれば、大きさ及び色等を任意に設定することができることから、写真画像等の連続階調を有する可視画像4として形成することができる。
【0106】
このような構成を有する複数のユニットを印刷物1上にマトリクス状に隙間なく、連続的、かつ、規則的に配置した状態を
図28及び
図29に示す。
図28(a)は、複数のユニットが形成された印刷物1と判別具2の関係を示すものであり、各々のユニットにおける線L1上に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察した状態を示すものである。この場合に観察される要素は、レンチキュラーレンズの中心線7が重なっている第1の不可視画像5の画像部を形成している第1の要素Aであることから、
図28(b)に示すように、第1の要素Aのみが拡大されて観察されることで、
図12(a)に示す第1の不可視画像5が観察される。このとき、第1の不可視画像5の背景部を形成している第2の要素A´及び可視画像4を形成している第3の要素Cは、レンチキュラーレンズの中心線7からずれた位置に形成されていることから、観察されることはない。
【0107】
また、
図29(a)は、複数のユニットが形成された印刷物1と判別具2の関係を示すものであり、各々のユニットにおける線L3上に判別具2の中心線7が一致するように重ねて観察した状態を示すものである。この場合に観察される要素は、レンチキュラーレンズの中心線7が重なっている第2の不可視画像6の画像部を形成している第4の要素Bであることから、
図29(b)に示すように、第4の要素Bのみが拡大されて観察されることで、
図12(b)に示す第2の不可視画像6が観察される。このとき、第2の不可視画像6の背景部を形成している第5の要素B´及び可視画像4を形成している第3の要素Cは、レンチキュラーレンズの中心線7からずれた位置に形成されていることから、観察されることはない。
【0108】
また、第4の実施の形態の印刷物1を構成するユニットについては、
図25に示すユニットを例に説明したが、各々のユニットにおける線L1上に第1の要素Aを配置し、第2の要素A´第3の要素C、第4の要素B及び第5の要素B´を線L1上に配置しない構成とし、更には各々のユニットにおける線L3上に第4の要素Bを配置し、第1の要素A、第2の要素A´、第3の要素C及び第5の要素B´を線L3上に配置しない構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、
図30(a)に示すように、第1の要素A、第2の要素A´、第3の要素C、第4の要素B及び第5の要素B´により、ユニットの全てを埋める構成や、
図30(b)に示すように、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6が重複する各々のユニットの中心を除く領域に、全ての要素を形成する構成等、様々な配置とすることが可能であり、本発明の効果が得られる配置であればいかなる配置であっても良い。
【0109】
次に、第4の実施の形態における印刷物1の作製工程について、
図31のフローチャートを用いて説明する。まず、f38として、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6のターゲット画像を用意する。このときのターゲット画像は、顔写真等を撮影してターゲット画像とする方法や、あらかじめ入力された画像情報等を活用することができる。
【0110】
次に、f39において入力したターゲット画像を、判別具2に形成された線数の幅と各々のユニットにおける1辺の長さが等しくなるように、ターゲット画像の解像度を変換する。次に、f40にて各々のユニットにおける第1の要素A及び第2の要素A´が形成される領域を作製し、第1の要素Aが形成される領域で第1の不可視画像5のくり抜き処理を行う。
【0111】
次に、f41において各々のユニットに形成された第1の要素Aを形成可能な最大の面積値を基準値として算出し、f42にて第1の不可視画像5の濃度に合わせて各々のユニットに第1の要素Aを形成し、f43で各々のユニットにおいて形成された第1の要素Aの面積を、基準値から差し引いた面積により第2の要素A´を形成する。
【0112】
次に、f44において各々のユニットにおける第4の要素B及び第5の要素B´が形成される領域を作製し、第4の要素Bが形成される領域で第2の不可視画像6のくり抜き処理を行い、f45において各々のユニットに形成された第4の要素Bを形成可能な最大の面積値を基準値として算出し、f46にて第2の不可視画像6の濃度に合わせて各々のユニットに第4の要素Bを形成し、f47で各々のユニットにおいて形成された第4の要素Bの面積を、基準値から差し引いた面積により第5の要素B´を形成する。
【0113】
次に、f48において可視画像4の基となるターゲット画像を入力し、各々のユニットにおいて形成される第3の要素Cで可視画像4のターゲット画像をくり抜き処理し、第3の要素Cを形成する。ここまでの工程により、第4の実施の形態における印刷物を作製することができる。
【0114】
この第4の実施の形態における印刷物1は、前述した工程により版面データを作製することで、オフセット印刷等の固定印刷方式により、少なくとも1色のインキを用いて印刷物1を作製することができることから、各種証明書用の台紙や商品券等の同一図柄の印刷物を大量に製造する際に活用されるものであり、一般的な基材、インキ及び印刷機を用いることで容易に製造可能であることから、幅広い用途に活用することができる。なお、第4の実施の形態においては、上質紙を基材として用い、オフセット印刷方式によって印刷物を製造した例で説明したが、基材、色材及び印刷方式等、様々な方法を用いることが可能であり、これらの作製方法に限定されるものではない。
【0115】
また、第4の実施の形態では、第1の不可視画像5の画像部を形成する第1要素Aを配置する方向を基準に第2の不可視画像6の画像部を形成する第4の要素Bを直交する方向に沿って形成することで2つの不可視画像を形成した例で説明したが、判別具の中心線7を重ねる方向、すなわち、不可視画像の画像部を形成する方向を3方向以上とすることで3つ以上の不可視画像を形成することも可能である。
【0116】
また、第4の実施の形態における印刷物1は、オフセット印刷等の固定印刷方式向けの構成であるが、第3の実施の形態のように、
図9の作製装置を用いたオンデマンド印刷用の技術として活用することも可能である。その場合、まず、デジタルカメラやスキャナ等により可視画像4、第1の不可視画像5及び第2の不可視画像6の基画像を入力する入力部401と、入力画像と、第1の要素A、第2の要素A´、第3の要素C、第4の要素B及び第5の要素B´を有するユニットの配置と、第1の要素A及び第4の要素Bの最大面積となる基準面積と、入力部401によって入力された画像データを記憶する記憶部403と、第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像データをユニットのピッチに合わせた解像度への変換処理と、各々のユニットに対応する第1の不可視画像5の濃度を第1の要素Aの濃度としての算出と、各々のユニットにおける第1の要素Aの面積を基準面積から引いた第2の要素A´の面積の算出と、各々のユニットに対応する第2の不可視画像6の濃度を第4の要素Aの濃度として算出、各々のユニットにおける第4の要素Aの面積を基準面積から引いて第5の要素A´の面積を算出する処理を行う処理部402と、インクジェットプリンタ及びレーザプリンタ等の出力機により印刷模様3を印刷する出力部404を備えた印刷物の作製システムとすることで、第4の実施の形態における印刷物1を容易に得ることができる。
【0117】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態における印刷物1について、
図32を用いて説明する。第5の実施の形態における印刷物1は、第1の実施の形態で説明した印刷模様3を備えた印刷物1を冊子の一部の頁に形成し、印刷模様3を備えた頁と接する頁に判別具2を備えた頁を形成することで、印刷物1と独立した判別具2を用意することなく、冊子形態の印刷物1そのものによって真偽判別が可能な印刷物1である。
【0118】
図32(a)は、第5の実施の形態における印刷物1であり、冊子形態により形成された印刷物1の一部の頁に印刷模様3を備え、印刷模様3を備えた頁と隣接する頁の一部にレンチキュラーレンズから成る判別具2を備えたものである。
【0119】
判別具2は、印刷模様3が形成された頁と判別具2が形成された頁を重ねて観察した際に、印刷模様3を形成するユニットの線L1上に判別具の中心線7が重なる位置に形成されていることから、印刷模様3が形成された頁上に判別具2が形成された頁を重ねた時点で
図32(b)に示すような第1の不可視画像5を観察することができる。
【0120】
また、判別具2を冊子形態の頁に形成する方法としては、多層構造の基材を用い、判別具を形成する領域を窓空き状として形成する方法等、様々な方法が可能であるが、本発明の印刷模様3と隣接する頁に判別具2を形成可能な方法であれば、特に限定されるものではない。また、レンチキュラーレンズ等の所定の厚みを有する判別具2を用いる場合は、ICシート等の電子機器を内蔵する基材等、冊子内において他の理由により厚みを有する基材を活用することが好ましい。