【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明により、この目的は、瞳平面と、照明されるマスクを配置することができるマスク平面と、光学インテグレーターとを含む照明系によって達成される。光学インテグレーターは、瞳平面に位置する複数の2次光源を生成するように構成される。光学インテグレーターは、各々が、2次光源のうちの1つに関連付けられた複数の光入射ファセットを有する。更に、照明系は、反射性又は透過性のビーム偏向要素のビーム偏向アレイを含むビーム偏向デバイスを含む。各ビーム偏向要素は、ビーム偏向要素によって生成される偏向角を変更することによって可変である位置にスポットを光入射ファセット上で照明するように構成される。ビーム偏向要素によって照明されるスポットは、光入射ファセットのうちの少なくとも1つの最大合計面積よりも少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍小さい合計面積を有する。本発明により、光入射ファセットのうちの少なくとも1つの上のスポットから組み立てられる光パターンが、マスク平面上の角度的照度分布の視野依存性を修正すべきであるという入力指令に応答して変更されるように、ビーム偏向要素を制御するように構成された制御ユニットが設けられる。
【0017】
一般的にそのような入力指令は、異なる特徴部パターンを含む新しいマスクが投影される場合、又は角度的照度分布の視野依存性の微調節を実施することにより、既存のマスクを用いて結像品質を改善しようと試みられる場合に、投影露光装置全体の作動を調整する全体系制御器によって出されることになる。
【0018】
本発明は、光入射ファセット上に異なる光パターンを生成する機能を異なる幾何学形状の照明視野を生成するのに使用するだけでなく、角度的照度分布の異なる視野依存性を生成するのに使用することができるという概念に基づいている。上述のWO 2010/006687 A1に説明されているように、角度的照度分布に対する効果を無視することができるように、異なる光パターンが生成される光入射ファセットを空間的に「混合」する代わりに、本発明は、同じく照明される光入射ファセットが望ましい照明設定に対応する構成で配置されるように、異なって照明される光入射ファセットを選択的に配置することを提案する。例えば、この構成は、同一部分が照明される光入射ファセットが、環状、いくつかの極、又は光軸を中心とする円盤の形態で配置されるようなものとすることができる。こうして、マスク上で異なる角度的照度分布を有するいくつかの部分を照明することができる。
【0019】
例えば、制御ユニットは、照明系によってマスク平面に照明される照明視野の第1の部分に第1の角度的照度分布が生成され、照明視野の第2の部分に第1の角度的照度分布とは異なる第2の角度的照度分布が生成されるようにビーム偏向要素を制御するように構成することができる。
【0020】
第1の部分は、第1の角度的照度分布が均一である2次元区域とすることができ、同じく第2の部分は、第2の角度的照度分布が均一である2次元区域とすることができる。
【0021】
角度的照度分布のそのような視野依存性は、異なって構造化される部分、例えば、中心部分及び周囲部分が、異なる照明設定を必要とするダイを生成するのにこれらの部分を感光面上に最適な結像品質を伴って結像される場合に有利とすることができる。
【0022】
2つの異なる角度的照度分布の間の移行が不連続(すなわち、階段状)であるように、第1の部分と第2の部分は重ならない場合がある。しかし、異なる角度的照度分布の間の(疑似)連続移行も、本発明による照明系を用いて容易に得ることができる。
【0023】
照明視野は、X方向に沿って長い寸法を有し、X方向に対して垂直であって投影露光装置の走査方向と平行なY方向に沿って短い寸法を有することができる。この場合、第1の部分は、第2の部分と共通の少なくとも1つのY座標を有することができるが、第2の部分と共通のX座標を有することができない。言い換えれば、これらの部分は、走査方向に対して垂直なX方向に沿って互いに隣に配置される。
【0024】
第1及び第2の角度的照度分布は、従来照明設定、角度照明設定、二重極照明設定、n≧3であるn極照明設定の群から採用される照明設定に関連付けることができる。
【0025】
一実施形態において、照明系は、ビーム偏向デバイスと光学インテグレーターの間の光伝播経路に配置されて入射光を空間分解方式で透過又は反射するように構成された空間光変調器を含む。そのような光変調器は、マスクレベルで異なる角度的照度分布の間の非常に急な移行を提供することができるように、光入射ファセットの光パターンをより鮮明に定義するのに有利とすることができる。
【0026】
この目的のために、空間光変調器は、反射性又は透過性のビーム偏向要素の更に別のビーム偏向アレイを含むことができる。更に別のビーム偏向アレイの各ビーム偏向要素は、入射光を光学インテグレーターの向きに誘導する「オン」状態と、入射光をあらゆる他の場所に誘導する「オフ」状態とにすることができる場合がある。デジタル切り換え特性を有するそのようなビーム偏向アレイは、デジタルミラーデバイス(DMD)として達成することができ、数十万個又は更に数百万個の個別マイクロミラーを含むことができる。
【0027】
ビーム偏向アレイを含む空間光変調器が使用される場合には、照明系は、ビーム偏向アレイを光学インテグレーターの光入射ファセット上に結像する対物系を含むことができる。この場合、この対物系により、ビーム偏向要素の鮮明な縁部が、光学インテグレーターの光入射ファセット上に鮮明に結像される。
【0028】
制御ユニットは、異なる非ゼロ照度を有する少なくとも2つの区域を含む光パターンが少なくとも1つの光入射ファセット上に生成されるようにビーム偏向要素を制御するように構成することができる。異なる照明設定において瞳平面内で照明される区域が重なり、かつ異なる合計サイズを有する場合には、2つ又はそれよりも多くの異なる照明設定が同時に生成される場合に段階的照度分布を有するそのような光パターンが余儀なく発生する。
【0029】
一部の実施形態において、光学インテグレーターは、反射性又は回折性のマイクロレンズのアレイを含む。各マイクロ要素は、1つの光入射ファセットに関連付けられる。マイクロ要素は、例えば、マイクロレンズ又は回折光学要素として達成することができる。
【0030】
ビーム偏向デバイスのビーム偏向要素は、ある一定の角度をその間に形成する2つの傾斜軸によって傾斜させることができるミラーとして構成することができる。別の実施形態において、ビーム偏向要素は、電気光学要素又は音響光学要素である。
【0031】
上述した目的は、複数の光入射ファセットを有する光学インテグレーターと反射性又は透過性のビーム偏向要素のビーム偏向アレイとを含む照明系によっても達成される。各ビーム偏向要素は、ビーム偏向要素によって生成される偏向角を変更することによって可変である位置で光学インテグレーター上のスポットを照明するように構成される。制御ユニットは、光入射ファセットのうちの少なくとも1つの上のスポットから組み立てられる光パターンが、マスク平面内の角度的照度分布の視野依存性を修正することになる出力指令に応答して変更されるように、ビーム偏向要素を制御するように構成される。
【0032】
本発明の第2の態様により、上述した目的は、瞳平面と、照明されるマスクを配置することができるマスク平面と、光学インテグレーターとを含む照明系によって本発明により達成される。光学インテグレーターは、瞳平面に位置する複数の2次光源を生成するように構成される。光学インテグレーターは、各々が2次光源のうちの1つに関連付けられた複数の光入射ファセットを有する。更に、照明系は、反射性又は透過性のビーム偏向要素のビーム偏向アレイを含むビーム偏向デバイスを含む。各ビーム偏向要素は、ビーム偏向要素によって生成される偏向角を変更することによって可変である位置で光入射ファセット上のスポットを照明するように構成される。ビーム偏向要素によって照明されるスポットは、光入射ファセットのうちの少なくとも1つの最大合計面積よりも少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍小さい合計面積を有する。本発明により、異なる非ゼロ照度を有する少なくとも2つの区域を含む光パターンが少なくとも1つの光入射ファセット上に生成されるようにビーム偏向要素を制御するように構成された制御ユニットが設けられる。
【0033】
オペレータが、照明視野の幾何学形状を変更することだけでなく、マスク平面において角度的光分布の異なる視野依存性を生成することも可能にするマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系を作動させる方法を提供することも本発明の目的である。
【0034】
本発明によるとこの目的は、a)複数の光入射ファセットを有する光学インテグレーターを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系を準備する段階と、b)光学インテグレーターの光入射ファセット上に個々のスポットから組み立てられる光パターンを生成する段階と、c)マスク平面内の角度的照度分布の視野依存性を変更すべきであることを決定する段階と、d)光入射ファセット上の光パターンをスポットを再配列及び/又は除去及び/又は追加することによって変更する段階とを含む方法によって達成される。
【0035】
本発明による照明系に関して上記に行った陳述は、変更すべきは変更して本方法にも適用される。
【0036】
光パターンは、段階d)において、照明系によってマスク平面に照明される照明視野の第1の部分に第1の角度的照度分布が生成されるように変更することができる。照明視野の第2の部分には、第1の角度的照度分布とは異なる第2の角度的照度分布が生成される。
【0037】
第1の部分は、第1の角度的照度分布が均一である2次元区域とすることができる。同じく第2の部分は、第2の角度的照度分布が均一である2次元区域とすることができる。
【0038】
照明視野は、X方向に沿って長い寸法を有し、X方向に対して垂直であって投影露光装置の走査方向と平行なY方向に沿って短い寸法を有することができる。第1の部分は、第2の部分と共通の少なくとも1つのY座標を有することができるが、第2の部分と共通のX座標を有することができない。
【0039】
段階a)において準備される照明系は、反射性又は透過性のビーム偏向要素のビーム偏向アレイを含むビーム偏向デバイスを含むことができる。
【0040】
この場合、光パターンは、ビーム偏向要素によって生成される偏向角を変更することによって変更される。
【0041】
スポットは、光入射ファセットのうちのいずれの最大合計面積よりも少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍小さい合計面積を有することができる。
【0042】
光パターンは、段階d)において、異なる非ゼロ照度を有する少なくとも2つの区域を含む光パターンが少なくとも1つの光入射ファセット上に生成されるように変更することができる。
【0043】
定義
本明細書では「光」という用語をあらゆる電磁放射線、特に、可視光、UV光、DUV光、VUV光、及びEUV光、並びにX線を表す上に使用する。
【0044】
本明細書では「光線」という用語を線によって表すことができる伝播経路を有する光を表す上に使用する。
【0045】
本明細書では「光束」という用語を視野平面に共通の起点を有する複数の光線を表す上に使用する。
【0046】
本明細書では「光ビーム」という用語を特定のレンズ又は別の光学要素を通過する光を表す上に使用する。
【0047】
本明細書では「位置」という用語を3次元空間内での物体の基準点の場所を表す上に使用する。通常は位置を3つの直交座標の組によって示している。従って、向き及び位置は、3次元空間内での物体の配置を完全に表している。
【0048】
本明細書では「面」という用語を3次元空間内でのあらゆる平面又は曲面を表す上に使用する。面は、物体の一部とすることができ、又は通常は視野又は瞳平面においてそうであるように物体とは完全に別々のものとすることができる。
【0049】
本明細書では「視野平面」という用語をマスク平面と光学的に共役な平面を表す上に使用する。
【0050】
本明細書では「瞳平面」という用語をマスク平面内の異なる点を通過する周辺光線が交わる平面を表す上に使用する。当業技術で通例であるように、瞳平面が数学的な意味では実際には平面ではなく、厳密な意味では瞳面と呼ぶべき場合であっても、「瞳平面」という用語を使用する。
【0051】
本明細書では「均一」という用語を位置に依存しない特性を表す上に使用する。
【0052】
本明細書では「光学ラスター要素」という用語を各光学ラスター要素が複数の隣接する光学チャンネルのうちの1つに関連付けられるように他の同一又は類似の光学ラスター要素と共に配置されたあらゆる光学要素、例えば、レンズ、プリズム、又は回折光学要素を表す上に使用する。
【0053】
本明細書では「光学インテグレーター」という用語をNAが開口数であり、aが照明視野面積である時に積NA・aを増大させる光学系を表す上に使用する。
【0054】
本明細書では「コンデンサー」という用語を2つの平面、例えば、視野平面と瞳平面の間にフーリエ関係を確立する(少なくとも近似的に)光学要素又は光学系を表す上に使用する。
【0055】
本明細書では「共役平面」という用語を結像関係がその間に確立される平面を表す上に使用する。共役平面の概念に関するより多くの情報は、「1次設計及びy,y図(First−order Design and the y,y Diagram)」という名称のE.Delanoの論文、応用光学、1963年、第2巻第12号、1251〜1256ページに説明されている。
【0056】
本明細書では「視野依存性」という用語を物理量の視野平面内の位置に対するあらゆる関数的依存性を表す上に使用する。
【0057】
本明細書では「空間照度分布」という用語を光が入射する実面又は虚面にわたって合計照度が如何に変化するかを表す上に使用する。通常、空間照度分布は、x,yが面内の点の空間座標である時に、関数I
s(x,y)によって表すことができる。視野平面に適用された場合には、空間照度分布は、複数の光束によって生成される照度を必然的に積分する。
【0058】
本明細書では「角度的照度分布」という用語を光束の照度が光束を構成する光線の角度に依存して如何に変化するかを表す上に使用する。通常、角度的照度分布は、α、βが光線の方向を表す角度座標である時に、関数I
a(α,β)によって表すことができる。角度的照度分布が視野依存性を有する場合には、I
aは、視野座標の関数にもなり、すなわち、I
a=I
a(α,β,x,y)である。
【0059】
本発明の様々な特徴及び利点は、添付図面と併せて以下の詳細説明を参照することによってより容易に理解することができるであろう。