特許第6016183号(P6016183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016183中空糸膜モジュールの欠陥検査装置および欠陥検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016183
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュールの欠陥検査装置および欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/10 20060101AFI20161013BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20161013BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B01D65/10
   B01D63/02
   G01N15/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-22140(P2012-22140)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158693(P2013-158693A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】板倉 正則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正則
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−220710(JP,A)
【文献】 特開2004−305998(JP,A)
【文献】 特開2009−291787(JP,A)
【文献】 実開昭58−078104(JP,U)
【文献】 特開平05−157679(JP,A)
【文献】 特開平02−298320(JP,A)
【文献】 米国特許第05417101(US,A)
【文献】 特開2006−247540(JP,A)
【文献】 実開平04−078926(JP,U)
【文献】 特開昭62−112952(JP,A)
【文献】 実開昭62−136203(JP,U)
【文献】 特開2004−237281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 65/10
B01D 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した中空糸膜の束が固定樹脂によって筒状ケーシング内に固定されている中空糸膜モジュールの欠陥検査装置であって、
前記筒状ケーシングの一端側部分が差し込み可能な凹部を備えているホルダと、
一端が前記凹部の底面に開口し該凹部を吸引装置に連通させる排気管路と、
前記吸引装置によって、前記凹部内から吸引された気体中の微粒子数を計測する測定手段と、
前記凹部の底面で前記排気管路の開口を囲み、且つ該凹部に差し込まれた中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの端面と当接するように配置された軟質樹脂の環状のパッキンと、を備え、
前記環状のパッキンは、サイズの異なるものに交換可能である、
ことを特徴とする中空糸膜モジュールの欠陥検査装置。
【請求項2】
前記軟質樹脂が、シリコンゴムである、
請求項1に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置。
【請求項3】
前記凹部に前記筒状ケーシングの一端側部分が差し込まれた中空糸膜モジュールを、前記凹部の底面に向けて押圧する押圧手段を、さらに、備えている、
請求項1または2に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置。
【請求項4】
前記ホルダが複数台、設けられ、
前記複数台のホルダからの吸引が同時に行われる、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置。
【請求項5】
一端が開口した中空糸膜の束が固定樹脂によって筒状ケーシング内に固定されている中空糸膜モジュールの欠陥検査方法であって、
前記中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの一端側部分を、ホルダの凹部に差し込むステップと、
前記中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの端面を前記凹部の底部に配置され、サイズの異なるものに交換可能である軟質樹脂の環状パッキンと当接させた状態で、前記中空糸膜モジュールの一端と前記凹部の底面との間の空間の気体を吸引するステップと、
前記吸引した気体中の微粒子数を計測するステップと、を備えている、
ことを特徴とする中空糸膜モジュールの欠陥検査方法。
【請求項6】
前記軟質樹脂が、シリコンゴムであり、
前記吸引ステップが、凹部に前記筒状ケーシングの一端側部分が差し込まれた中空糸膜モジュールを、前記凹部の底面に向けて押圧しながら行われる、
請求項5に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法。
【請求項7】
前記ホルダが複数台、設けられ、
前記複数台のホルダからの吸引が同時に行われる、
請求項5または6に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、中空糸膜モジュールの欠陥検査装置および欠陥検査方法に関し、詳細には、筒状ケーシング内に中空糸膜の円柱体が配置された浄水器用の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭などにおいて、水道水を浄化する浄水器の使用が一般的になってきている。このような浄水器では、例えば、円筒状ケーシング10内で、中空糸膜12の円柱体14の一端14aが接着剤16で固定されている中空糸膜モジュール18(図1)が濾過材として使用されている。
【0003】
このような中空糸膜モジュール18を製造する場合には、まず、中空糸膜12を多数回一定の長さで折返しシート状とした後、その両端の近傍をポリエステルフィラメント糸などのかがり糸20で編んで長尺状編地22(図2)とする。
次いで、この長尺状編地22を、所定長に切断し、中空糸膜12の長さ方向に直交する方向に巻き込んで円柱体14(図3)とする。
【0004】
そして、この円柱体14を、一端が底板で閉鎖された円筒状ケーシングの底部に収容し、液状樹脂を、円筒状ケーシング10の底部に充填して、円筒状ケーシングの底部に接着剤(硬化樹脂)層16を形成する。
【0005】
そして、円筒状ケーシングの底部を、切断することによって、一端側で中空糸膜が開口した中空糸膜モジュール18(図1)を得ている。
【0006】
この中空糸膜モジュール18では、中空糸膜の円柱体を固定する樹脂固定部である接着剤(硬化樹脂)層16は、中空糸膜を通過する前の原水と中空糸膜を通過した後の浄水とを分離するものであるため、この部分で洩れ(リーク)が発生すると中空糸膜モジュールが所望の浄化性能を発揮できなくなる。
【0007】
中空糸膜自体にピンホールなどの欠陥を有している場合には、そこでリークが発生し、中空糸膜モジュールが所望の浄化性能を発揮できなくなる。
【0008】
したがって、リークが発生している中空糸膜モジュールを排除すべく、上述したような中空糸膜モジュールの製造過程が終了した後、中空糸膜モジュールの樹脂固定部、および中空糸膜におけるリークの有無を調べる欠陥検査(リーク検査)が行われている。
【0009】
このようなリーク検査として、中空糸膜の一次側に微粒子や濁質を含有する気体または液体を導入し、中空糸膜の二次側に透過した透過気体または透過液の微粒子数や濁度を、パーティクルカウンタや濁度計を用いて測定することによって、リークの有無を判別する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−291787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようなリーク検査では、図4に概略構成が示されている欠陥検査装置100が使用されている。
【0012】
この欠陥検査装置100は、検査対象の中空糸膜モジュール18の下端部分が差し込まれる複数(本例では3台)の集気ホルダ30−1、30−2、30−3を備えている。各集気ホルダ30−1、30−2、30−3は、上端に向かって開口した円筒状の内部空間Sを有している。各集気ホルダ30−1、30−2、30−3の内部空間Sは、中空糸膜モジュール18の下端部分が差し込まれる空間であり、開閉弁32a、32bが取付けられた排気通路34を介して排気用の真空ポンプP、微粒子計測器36に連通されている。微粒子計測器36は、制御部35、判定部40に接続されている。
【0013】
この欠陥検査装置100では、内部空間Sに中空糸膜モジュール18の下端部分を差し込み、微粒子計測器36のポンプで集気ホルダ30の内部空間S内の空気を、微粒子計測器36に吸引し、中空糸膜モジュール18の開口端から矢印Aで示されるように微粒子を含んだ空気(通常の空気)を中空糸膜モジュール18に流入させる。そして、微粒子計測器36で中空糸膜モジュールを通過した空気中の微粒子数を測定することにより、中空糸膜モジュール18におけるリークの有無を判定する。
この判定は、集気ホルダ30−1、30−2、30−3毎に、順次、行われる。
【0014】
まず、第1の集気ホルダ30−1に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリークが判定(検査)される。
この第1の集気ホルダ30−1に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリーク判定(検査)は、第2および第3の集気ホルダ30−2、30−3に接続された排気通路34の開閉弁32a、32bを閉鎖した状態で行われる。
【0015】
第1の集気ホルダ30−1に中空糸膜モジュール18を差し込む。次いで、第1の集気ホルダ30−1と真空ポンプPを接続する排気通路34に設けられた開閉弁32aを開け、且つ第1の集気ホルダ30−1と微粒子計測器36を接続する排気通路34に設けられた開閉弁32bを閉じた状態で、真空ポンプPを所定時間、作動させ、排気通路34、および内部空間S内の残存気体を排気する。
【0016】
次いで、第1の集気ホルダ30−1と真空ポンプPを接続する排気通路34に設けられた開閉弁32aを閉鎖し、第1の集気ホルダ30−1と微粒子計測器36を接続する排気通路34に設けられた開閉弁32bを開いて、微粒子計測器36のポンプを作動させ、内部空間Sを減圧し、中空糸膜モジュール18の開口端から矢印Aで示されるように微粒子を含んだ空気(通常の空気)を中空糸膜モジュール18に流入させる。
【0017】
そして、第1の集気ホルダ30−1に差し込まれた中空糸膜モジュール18を通過した空気中の微粒子数を、微粒子計測器36で測定することにより、第1の集気ホルダ30−1に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリークの有無を検査する。
【0018】
また、第2の集気ホルダ30−2に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリーク判定(検査)は、第1および第3の集気ホルダ30−1、30−3に接続された排気通路34の開閉弁32a、32bを閉鎖した状態で、第2の集気ホルダ30−2に差し込まれた中空糸膜モジュール18に対し、上記第1の集気ホルダ30−1に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリーク判定(検査)と同様の操作が行われる。
【0019】
さらに、第3の集気ホルダ30−3に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリーク判定(検査)は、第1および第2の集気ホルダ30−1、30−2に接続された排気通路34の開閉弁32a、32bを閉鎖した状態で、第2の集気ホルダ30−3に差し込まれた中空糸膜モジュール18に対し、上記第1の集気ホルダ30−1に差し込まれた中空糸膜モジュール18のリーク判定(検査)と同様の操作が行われる。
【0020】
このリーク検査では、検査中、内部空間Sを密閉する必要があるため、各集気ホルダ30−1、30−2、30−3の内壁にOリング38が取付けられ、検査対象の中空糸膜モジュール18が差し込まれたとき、中空糸膜モジュール18の外周面と集気ホルダ30−1、30−2、30−3の内周面との間をシールするように構成されている。
【0021】
しかしながら、このような欠陥検査装置では、Oリング38は、中空糸膜モジュール18を各集気ホルダ30−1、30−2、30−3に対して着脱するたびに中空糸膜モジュール18の外周面と擦れるため、早期に摩耗し、頻繁な交換が必要になるという問題があった。
【0022】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、密閉部材の頻繁な交換が不要となる中空糸膜モジュール欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、
一端が開口した中空糸膜の束が固定樹脂によって筒状ケーシング内に固定されている中空糸膜モジュールの欠陥検査装置であって、
前記筒状ケーシングの一端側部分が差し込み可能な凹部を備えているホルダと、
一端が前記凹部の底面に開口し該凹部を吸引装置に連通させる排気管路と、
前記吸引装置によって、前記凹部内から吸引された気体中の微粒子数を計測する測定手段と、
前記凹部の底面で前記排気管路の開口を囲み、且つ該凹部に差し込まれた中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの端面と当接するように配置された軟質樹脂の環状のパッキンと、を備え、
前記環状のパッキンは、サイズの異なるものに交換可能である、
ことを特徴とする中空糸膜モジュールの欠陥検査装置が提供される。
【0024】
このような構成によれば、欠陥検査装置のホルダと中空糸膜モジュールとの間をシールするパッキンが、筒状ケーシングの端面と当接する寸法形状を有し、ホルダの凹部に設けられているので、ホルダに中空糸膜モジュールを着脱する度に、パッキンが中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの側壁と擦れあって、早期に摩耗することが回避される。
【0025】
また、パッキンをサイズの異なるものに交換するだけで、異なるサイズの中空糸膜モジュールの検査を行うことができる。
【0026】
さらに、中空糸膜モジュールを脱着する際に、必要な力も小さくて済む。
【0027】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記軟質樹脂が、シリコンゴムである。
【0028】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記凹部に前記筒状ケーシングの一端側部分が差し込まれた中空糸膜モジュールを、前記凹部の底面に向けて押圧する押圧手段を、さらに、備えている。
【0029】
このような構成によれば、比較的、弾性が高いシリコンパッキンと筒状ケーシングとの間を確実にシールすることができる。
【0030】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記ホルダが複数台、設けられ、
前記複数台のホルダからの吸引が同時に行われる。
【0031】
このような構成によれば、短時間に大量の中空糸膜モジュールの欠陥検査を行うことができる。
【0032】
本発明の他の態様によれば、
一端が開口した中空糸膜の束が固定樹脂によって筒状ケーシング内に固定されている中空糸膜モジュールの欠陥検査方法であって、
前記中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの一端側部分を、ホルダの凹部に差し込むステップと、
前記中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの端面を前記凹部の底部に配置され、サイズの異なるものに交換可能である軟質樹脂の環状パッキンと当接させた状態で、前記中空糸膜モジュールの一端と前記凹部の底面との間の空間の気体を吸引するステップと、
前記吸引した気体中の微粒子数を計測するステップと、を備えている、
ことを特徴とする中空糸膜モジュールの欠陥検査方法が提供される。
【0033】
このような構成によれば、欠陥検査装置のホルダと中空糸膜モジュールとの間をシールするパッキンが、筒状ケーシングの端面と当接する寸法形状を有し、ホルダの凹部に設けられているので、ホルダに中空糸膜モジュールを着脱する度に、パッキンが中空糸膜モジュールの筒状ケーシングの側壁と擦れあって、早期に摩耗することが回避される。
【0034】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記軟質樹脂が、シリコンゴムであり、
前記吸引ステップが、凹部に前記筒状ケーシングの一端側部分が差し込まれた中空糸膜モジュールを、前記凹部の底面に向けて押圧しながら行われる。
【0035】
このような構成によれば、比較的、弾性が高いシリコンパッキンと筒状ケーシングとの間を確実にシールすることができる。
【0036】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記ホルダが複数台、設けられ、
前記複数台のホルダからの吸引が同時に行われる。
【0037】
このような構成によれば、短時間に大量の中空糸膜モジュールの欠陥検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、密閉部材の頻繁な交換が不要となる中空糸膜モジュール欠陥検査装置および欠陥検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の好ましい態様の欠陥検査装置で検査される中空糸膜モジュールの一例の断面図である。
図2図1の中空糸膜モジュールに使用される中空糸膜の長尺状編地の平面図である。
図3図1の中空糸膜モジュールに組み込まれる中空糸膜の円柱体の斜視図である。
図4】従来技術の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置の構成を示す概略図である。
図5】本発明の好ましい実施形態の欠陥検査装置の構成を示す概略図である。
図6図5の欠陥検査装置で使用される集気ホルダの構成を説明する概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置について説明する。
【0041】
図5は、本発明の好ましい実施形態の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置50の構成を示す概略図である。
図5から明らかなように、欠陥検査装置50は、図1に示されているような中空糸膜モジュール18を3本、同時に検査することもできる欠陥検査装置である。欠陥検査装置50は、中空糸膜モジュール18の樹脂固定部である接着剤(硬化樹脂)層16側の端部(一端)が差し込まれる3つの集気ホルダ52を備えている。
【0042】
欠陥検査装置50は、気体中の微粒子の数を測定する微粒子計測器54と、排気用の真空ポンプPと、各集気ホルダ52と微粒子計測器54とを接続する複数の通気流路56と、各通気流路56の途中から分岐し、真空ポンプに接続された排気流路58と、通気流路56と排気流路58との分岐点よりも下流の通気流路56に設けられた通気側開閉弁60と、通気流路56と排気流路58との分岐点よりも下流の排気流路58に設けられた排気側開閉弁62と、微粒子計測器54と、真空ポンプPと、通気側開閉弁60および排気側開閉弁62に電気的に接続され、これらを制御する制御部64と、微粒子計測器54に電気的に接続し、微粒子計測器54で測定された気体中の微粒子の数に基づいて中空糸膜モジュール18の良否を判定する判定部66とを備えている。
【0043】
図6は、集気ホルダ52の構成を説明する概略的な断面図である。図6に示されているように、集気ホルダ52は、上方に向かって開口した有底円筒状の部材であり、環状の周壁52aによって、円柱状の凹部68が規定されている。この円柱状の凹部68は、中空糸膜モジュール18の一端18a側部分を差し込み可能な寸法を有している。
【0044】
円柱状の凹部68の底面68aには、環状の軟質樹脂製のパッキン70が、取付けられている。シリコンパッキン70は、図6等に示されているように、円柱状の凹部68に差し込まれた中空糸膜モジュール18の一端18a側部分の筒状ケーシング10の環状の先端面10aと当接する寸法形状とされている。
【0045】
パッキン70に用いられる軟質樹脂としては、シリコンゴム、ニトリルゴム、スチロールゴム、フッ素ゴム、軟質塩化ビニル樹脂、ABS、軟質アクリル樹脂等が挙げられるが、本実施形態では、シリコンゴムがパッキン70に使用されている。
【0046】
凹部68の底面68aには、排気通路56と連通する通気孔68bが環状のシリコンパッキン70で囲まれた領域に形成されている。
【0047】
さらに、欠陥検査装置50は、一端側部分が集気ホルダ52の凹部68に差し込まれた中空糸膜モジュール18の環状の開口端に当接し、中空糸膜モジュール18を凹部68の底面68aに向けて押圧する環状の押圧手段72を備えている。
【0048】
また、微粒子計測器54は、内部に吸引ポンプを備え、気体中の微粒子の大きさと数を測定できるパーティクルカウンタ等の微粒子計測器である。パーティクルカウンタとしては、例えば、微粒子を浮遊状態のまま光散乱方式により連続的に大きさと数を測定するものが挙げられる。微粒子を検出するための感度の観点から、最大定格粒子濃度10000個/リットル以上のものが好ましい。
【0049】
通気流路56は、始端が集気ホルダ52の通気孔に接続され、途中で他の通気流路56と合流して、終端が微粒子計測器54に接続されている。配管は、内面平滑性、耐圧性、および耐久性に優れた材質で形成されたチューブであることが好ましい。配管の長さ(集気ホルダ52から微粒子計測器54までの流路長)は、被測定気体の滞留容積の軽減、被測定対象物の切り替えにおける応答性、およびパーティクルカウンタの吸引抵抗(圧力損失)の軽減の点で、2m以下が好ましく、0.5m以下がより好ましい。
【0050】
排気流路58は、通気流路56から分岐し、途中で他の排気流路58と合流して、真空ポンプPで終端している。
【0051】
通気側開閉弁60および排気側開閉弁62としては、弁を閉じた際の封止性に優れ、かつ開閉動作時において低発塵性の構造を有するものが好ましく、例えば、ピンチバルブが挙げられる。
【0052】
制御部64は、処理部とインタフェース部とを備え、微粒子計測器54の吸引ポンプの運転の開始・停止、真空ポンプPの運転開始・停止、通気側開閉弁60および排気側開閉弁62の開閉等を制御する。
【0053】
制御部64によって、複数の通気側開閉弁60のうち、1つ通気側開閉弁60のみを開き、他の通気側開閉弁60を閉じることにより、特定の通気流路56を選択することができる。すなわち、複数の通気側開閉弁60と制御部64との組み合わせが、流路切り換え手段として機能する。
【0054】
制御部64のインタフェイス部は、各流路に設けられた開閉弁および各ポンプと、処理部との間を電気的に接続する。処理部は、処理部に入力された操作信号に基づいて、各流路に設けられた開閉弁の開閉およびポンプの運転の開始、停止を制御する。
【0055】
判定部66は、処理部と、インターフェース部とを有して概略構成され、微粒子計測器54で計測された気体中の微粒子の数に基づいて、中空糸膜モジュール18の良否を判定する。
【0056】
判定部66のインタフェイス部は、微粒子計測器54と判定部66の処理部との間を電気的に接続する。処理部は、微粒子計測器54から送られたデータ(気体中の微粒子の数)が、所定値よりも多いか、少ないかによって、中空糸膜モジュール18の良否を判定し、表示装置(図示せず)に判定結果を表示させる。
【0057】
なお、これら処理部は専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、また、これら処理部はメモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0058】
また、制御部64、判定部66には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されるものとする。ここで、入力装置とは、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスのことをいい、表示装置とは、CRTや液晶表示装置のことをいう。
【0059】
次に、この欠陥検査装置を用いた中空糸膜モジュールの欠陥検査方法について説明する。
この方法では、3つの集気ホルダ52のそれぞれの差し込まれた3つの中空糸膜モジュール18の欠陥が同時に検査される。
【0060】
まず、3本の中空糸膜モジュール18の接着剤(硬化樹脂)層側の端部18aを、3台の集気ホルダ52の凹部68に、それぞれ、差し込む。このとき、中空糸膜モジュール18の円筒状ケーシング10の環状の先端面を、凹部68の底面68aに取付けられている環状のシリコンパッキン70に当接させる。
【0061】
次いで、押圧手段72を作動させ、各中空糸膜モジュール18を、凹部68の底面68a、詳細にはシリコンパッキン70に向けて押圧する。この結果、各中空糸膜モジュール18の一端面と凹部68の底面68aとの間の空間が気密状態とされる。
【0062】
制御部64の制御によって、各集気ホルダ52から微粒子計測器54への排気経路に設けられた各計測用開閉弁60を閉鎖し、真空ポンプPへの排気経路58に設けられた各排気側開閉弁62を開いた状態で、真空ポンプPを所定時間、作動させ、各中空糸膜モジュール18の一端面と凹部68の底面68aとの間の空間、および排気通路56内の残存気体を排気する。
【0063】
次いで、各集気ホルダ52から微粒子計測器54への排気経路に設けられた各計測用開閉弁60を開き、真空ポンプPへの排気経路58に設けられた各排気側開閉弁62を閉じ、微粒子計測器54のポンプを作動させ、各中空糸膜モジュール18の一端面と凹部68の底面68aとの間の空間を減圧し、中空糸膜モジュール18の開口端から矢印Aで示されるように微粒子を含んだ空気を中空糸膜モジュール18に流入させる。微粒子を含む気体としては、通常、欠陥検査装置周辺の空気が使用される。
【0064】
微粒子計測器54では、中空糸膜を通過してきた気体にレーザー光源からの光を当て、気体中の微粒子の数を測定し、その後、気体は排気される。測定された気体中の微粒子の数に関するデータは、判定部66に送られ、中空糸膜モジュール18の良否が判定される。
【0065】
判定結果が、NGであった場合には、同時に計測を行った3つの中空糸膜モジュールのいずれかにリークが生じていたことになるので、上述した個々の中空糸膜モジュールに対してリークを検査する方法で、同時に計測を行った3つの中空糸膜モジュールの1つ1つに対し個別にリーク検査を行い、いずれの中空糸膜モジュールでリークが起ったかを特定する。
【0066】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0067】
上記実施形態では、図1に示されている中空糸膜モジュールが検査対象として説明されたが、本発明は、他のタイプの中空糸膜モジュールに対しても適用可能である。
【0068】
気体中の微粒子の数を測定する際に中空糸膜モジュール18に流す微粒子を含む気体としては、中空糸膜モジュール18の仕様に応じて、所定粒径の微粒子を所定濃度添加した気体を用いてもよい。
【0069】
上記説明では、第1段階として、本実施形態の欠陥検査装置によって、3本の中空糸膜モジュールのリーク検査を同時に行うものとしたが、第1段階として、個々の中空糸膜モジュールに対してリークを検査する方法を行っても良い。
【符号の説明】
【0070】
18:中空糸膜モジュール
18a:中空糸膜モジュールの一端
50:欠陥検査装置
52:集気ホルダ
68:凹部
70:シリコンパッキン
72:押圧手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6