特許第6016198号(P6016198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016198
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】移動体装置、露光装置、及び移動方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20161013BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   H01L21/68 N
【請求項の数】36
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-11949(P2014-11949)
(22)【出願日】2014年1月27日
(62)【分割の表示】特願2010-45208(P2010-45208)の分割
【原出願日】2010年3月2日
(65)【公開番号】特開2014-112247(P2014-112247A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年1月27日
(31)【優先権主張番号】61/157,415
(32)【優先日】2009年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/714,733
(32)【優先日】2010年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】青木 保夫
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−125767(JP,A)
【文献】 特開2000−106344(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129762(WO,A1)
【文献】 特開2006−086442(JP,A)
【文献】 特開2002−208562(JP,A)
【文献】 特開平05−329727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材を下方から支持し、前記基板保持部材に対して相対移動可能な第一支持部材と、
前記第一支持部材を下方から支持する第二支持部材と、
第1方向に並んで配置され第二支持部材の異なる部分を下方から支持する第1および第2部材を有する第三支持部材と、
前記第一支持部材が前記基板保持部材を下方から支持した状態で、前記第一支持部材を前記第二支持部材に対して前記第1方向へ相対移動させる第1駆動部と、
前記第二支持部材が前記第一支持部材を下方から支持した状態で、第三支持部材上の前記第二支持部材を前記第1方向に交差する第2方向へ移動させる第2駆動部と、を備える移動体装置。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1方向に離れて配置され、
前記第三支持部材は、前記第二支持部材が前記第1部材と前記第2部材との間に渡された状態で支持する請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記第2駆動部は、前記第二支持部材とともに前記第1駆動部を前記第2方向へ移動させる請求項1又は2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記第駆動部は、前記第2方向に関して前記第一支持部材の両側に配置され前記第一支持部材を前記第方向へ移動させる第1駆動部材および第2駆動部材を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記第1駆動部材と前記第2駆動部材とを連結する連結部をさらに備える請求項4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記第2駆動部は、前記第1駆動部材または前記第2駆動部材に対して前記第2方向へ移動させる駆動力を付与し、
前記第1駆動部材または前記第2駆動部材は、前記第2駆動部により付与される前記第2方向への前記駆動力を前記第二支持部材に伝える伝達部を有する請求項4又は5に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記伝達部は、前記第二支持部材を押圧する押圧部を含む請求項6に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記第2駆動部は、前記第1駆動部材または前記第2駆動部材を介して前記第二支持部材を前記第2方向へ移動させる請求項4又は5に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記第1駆動部材または前記第2駆動部材は、前記第二支持部材を前記第2方向へ押圧する請求項8に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記第2駆動部は、前記第三支持部材と離間して配置された請求項1〜9のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記第2駆動部は、前記第三支持部材とは異なる部材に配置された請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項12】
前記第1部材と前記第2部材との間に配置され、前記第駆動部を支持する第四支持部材を備える請求項1〜11のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項13】
前記第2駆動部は、前記第1方向に関して前記第三支持部材の両側に配置されている請求項1〜12のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項14】
前記第2駆動部は、前記第一支持部材と前記第二支持部材とが前記第1方向へ相対移動しない状態で前記第2方向へ移動させる請求項1〜13のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項15】
前記第2方向に関する前記第一支持部材と前記第二支持部材との相対移動可能な範囲を制限する制限部を備える請求項1〜14のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項16】
前記第一支持部材は、前記第1駆動部に対して上下方向へ相対移動可能に連結された請求項1〜15のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項17】
前記第1駆動部は、前記第1方向に沿って設けられた固定部と前記固定部に対して前記第1方向に関して相対移動可能な可動部とを有し、
前記第一支持部材は、前記可動部に連結された請求項1〜16のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項18】
前記基板保持部材に前記基板が保持される請求項1〜17のいずれか一項に記載の移動体装置と、
前記基板保持部材上に載置された前記基板にエネルギビームを照射するパターニング装置と、を備える露光装置。
【請求項19】
前記基板は前記移動体装置に保持され、走査しながら露光される請求項18に記載の露光装置。
【請求項20】
基板を基板保持部材で保持して移動させる移動方法であって、
第一支持部材を用いて前記基板保持部材に対して相対移動可能なように、前記基板保持部材を下方から支持することと、
第二支持部材を用いて、前記第一支持部材を下方から支持することと、
第三支持部材が有する第1および第2部材を用いて、第1方向に並んで配置され第二支持部材の異なる部分を下方から支持することと、
第1駆動部を用いて、前記第一支持部材が前記基板保持部材を下方から支持した状態で、前記第一支持部材を前記第二支持部材に対して前記第1方向へ相対移動させることと、
第2駆動部を用いて、前記第二支持部材が前記第一支持部材を下方から支持した状態で、第三支持部材上の前記第二支持部材を前記第1方向に交差する第2方向へ移動させることと、を含む移動方法。
【請求項21】
前記第1部材と前記第2部材とを前記第1方向に離れて配置することと、
前記第三支持部材を用いて、前記第二支持部材が前記第1部材と前記第2部材との間に渡された状態で支持することと、を含む請求項20に記載の移動方法。
【請求項22】
前記第2駆動部を用いて、前記第二支持部材とともに前記第1駆動部を前記第2方向へ移動させることと、を含む請求項20又は21に記載の移動方法。
【請求項23】
前記第2方向に関して前記第一支持部材の両側に配置された前記第駆動部が有する第1駆動部材および第2駆動部材を用いて、前記第一支持部材を前記第方向へ移動させることと、を含む請求項20〜22のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項24】
連結部を用いて、前記第1駆動部材と前記第2駆動部材とを連結することと、を含む請求項23に記載の移動方法。
【請求項25】
前記第2駆動部を用いて、前記第1駆動部材または前記第2駆動部材に対して前記第2方向へ移動させる駆動力を付与することと、
前記第1駆動部材または前記第2駆動部が有する伝達部を用いて、前記第2駆動部により付与される前記第2方向への前記駆動力を前記第二支持部材に伝えることと、を含む請求項23又は24に記載の移動方法。
【請求項26】
前記伝達部が有する押圧部を用いて、前記第二支持部材を押圧することと、を含む請求項25に記載の移動方法。
【請求項27】
前記第2駆動部を用いて、前記第1駆動部材または前記第2駆動部材を介して前記第二支持部材を前記第2方向へ移動させることと、を含む請求項23又は24に記載の移動方法。
【請求項28】
前記第1駆動部材または前記第2駆動部材を用いて、前記第二支持部材を前記第2方向へ押圧することと、を含む請求項27に記載の移動方法。
【請求項29】
前記第2駆動部材を前記第三支持部材と離間して配置することと、を含む請求項20〜28のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項30】
前記第2駆動部を前記第三支持部材とは異なる部材に配置することと、を含む請求項20〜29のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項31】
前記第1部材と前記第2部材との間に配置された第四支持部材を用いて、前記第駆動部を支持することと、を含む請求項20〜30のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項32】
前記第1方向に関して前記第三支持部材の両側に前記第2駆動部を配置することと、を含む請求項20〜31のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項33】
前記第2駆動部を用いて、前記第一支持部材と前記第二支持部材とが前記第1方向へ相対移動しない状態で前記第2方向へ移動させることと、を含む請求項20〜32のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項34】
制限部を用いて、前記第2方向に関する前記第一支持部材と前記第二支持部材との相対移動可能な範囲を制限することと、を含む請求項20〜33のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項35】
前記第一支持部材を、前記第1駆動部に対して上下方向へ相対移動可能に連結することと、を含む請求項20〜34のいずれか一項に記載の移動方法。
【請求項36】
前記第一支持部材を、前記第1駆動部が有する前記第1方向に沿って設けられた固定部に対して前記第1方向に関して相対移動可能な可動部に連結することと、を含む請求項20〜35のいずれか一項に記載の移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置、及び移動方法に係り、更に詳しくは、基板を保持する基板保持部材を備える移動体装置、該移動体装置を備える露光装置、及び基板を基板保持部材で保持して移動させる移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
しかるに、近年、露光装置の露光対象である基板(特に液晶露光装置の露光対象であるガラスプレート)は、より大型化される傾向にあり、露光装置においても、基板を保持する基板テーブルが大型化し、これに伴う重量増により基板の位置制御が困難となってきている。このような問題を解決するものとして、基板を保持する基板テーブルの自重を柱状の部材から成る自重キャンセル装置(自重キャンセラ)で支持する露光装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種の露光装置では、自重キャンセル装置は、例えば石材により形成された板状部材である定盤の上面(ガイド面)に沿って基板テーブルと一体的に移動する。また、定盤のガイド面は、基板テーブルを精度良く二次元平面に沿って案内するために、その平坦度が非常に高く仕上げられている。
【0005】
しかるに、大型化した基板を長ストロークで駆動するためには、自重キャンセル装置が移動する際のガイド面を有する定盤を大型化する必要があり、このため、定盤の加工が困難になる。また、定盤が大型化すると、露光装置を設置する場所(例えば、液晶パネルの製造工場)に定盤を搬送(例えば、車両による輸送)することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008−129762号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材を下方から支持し、前記基板保持部材に対して相対移動可能な第一支持部材と、前記第一支持部材下方から支持する第二支持部材と、第1方向に並んで配置され第二支持部材の異なる部分を下方から支持する第1および第2部材を有する第三支持部材と、前記第一支持部材が前記基板保持部材を下方から支持した状態で、前記第一支持部材を前記第二支持部材に対して前記第1方向へ相対移動させる第1駆動部と、前記第二支持部材が前記第一支持部材を下方から支持した状態で、第三支持部材上の前記第二支持部材を前記第1方向に交差する第2方向へ移動させる第2駆動部と、を備える移動体装置が、提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、前記基板保持部材に前記基板が保持される本発明の移動体装置と、前記基板保持部材上に載置された前記基板にエネルギビームを照射するパターニング装置と、を備える露光装置が、提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、基板を基板保持部材で保持して移動させる移動方法であって、第一支持部材を用いて前記基板保持部材に対して相対移動可能なように、前記基板保持材を下方から支持することと、第二支持部材を用いて、前記第一支持部材を下方から支持することと、第三支持部材が有する第1および第2部材を用いて、第1方向に並んで配置され第二支持部材の異なる部分を下方から支持することと、第1駆動部を用いて、前記第一支持部材が前記基板保持部材を下方から支持した状態で、前記第一支持部材を前記第二支持部材に対して前記第1方向へ相対移動させることと、第2駆動部を用いて、前記第二支持部材が前記第一支持部材を下方から支持した状態で、第三支持部材上の前記第二支持部材を前記第1方向に交差する第2方向へ移動させることと、を含む移動方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の液晶露光装置の概略構成を示す図である。
図2】露光装置が備える基板ステージをX軸方向から見た側面(一部断面)図である。
図3】露光装置が備える基板ステージをY軸方向から見た側面(一部断面)図である。
図4】基板ステージを一部省略して示す平面図(その1)である。
図5】基板ステージを一部省略して示す平面図(その2)である。
図6図6(A)〜図6(C)は、基板をステップ方向(Y軸方向)に駆動する際の基板ステージの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1図6(C)に基づいて説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係る液晶露光装置10の概略構成が示されている。この液晶露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわちいわゆるスキャナである。
【0015】
液晶露光装置10は、図1に示されるように、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、マスクステージMST、投影光学系PLなどが搭載されたボディBD、基板PをXY平面に沿って移動可能に保持する基板ステージPST、並びにこれらの制御系等を含んでいる。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0016】
照明系IOPは、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない水銀ランプから射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどの光学要素を介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0017】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着により固定されている。マスクステージMSTは、後述するボディBDの一部である鏡筒定盤31の上面に一体的に固定されたX軸方向を長手方向とする一対のマスクステージガイド35上で、例えば不図示のエアパッドを介して非接触状態で支持されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(不図示)によって、一対のマスクステージガイド35の上で、走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向に微少駆動される。
【0018】
マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、マスクレーザ干渉計(以下、「マスク干渉計」という)91によって、マスクステージMSTに固定された(あるいは形成された)反射面を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。マスク干渉計91の計測値は、不図示の制御装置に送られ、制御装置では、マスク干渉計91の計測値に基づいてマスクステージ駆動系を介してマスクステージMSTのX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置(及び速度)を制御する。
【0019】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの図1における下方において、鏡筒定盤31に支持されている。本実施形態の投影光学系PLは、例えば米国特許第6,552,775号明細書に開示された投影光学系と同様の構成を有している。すなわち、投影光学系PLは、マスクMのパターン像の投影領域が千鳥状に配置された複数の投影光学系(マルチレンズ投影光学系)を含み、Y軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。本実施形態では、複数の投影光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。また、以下では投影光学系PLの千鳥状に配置された複数の投影領域をまとめて露光領域とも呼ぶ。
【0020】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるマスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージPSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0021】
ボディBDは、例えば米国特許出願公開第2008/0030702号明細書などに開示されているように、一対の基板ステージ架台33(図3参照)と、該一対の基板ステージ架台33上に架設された一対の支持部材32を介して水平に支持された鏡筒定盤31と、を含んでいる。図1及び図3から分かるように、一対の基板ステージ架台33は、それぞれY軸方向を長手方向とする部材から成り、X軸方向に所定間隔で配置されている。各基板ステージ架台33は、その長手方向の両端部が、床面F上に設置された防振機構34に支持されており、床面Fに対して振動的に分離されている。
【0022】
図1に示されるように、基板ステージPSTは、床面F上に配置された複数(本実施形態では、例えば3つ)のベースフレーム14A、14B,14Cと、一対の基板ステージ架台33上に架設された一対の定盤12A、12Bと、3つのベースフレーム14A〜14C上でX軸方向に駆動されるX粗動ステージ23Xと、X粗動ステージ23X上でY軸方向に駆動され、X粗動ステージ23Xと共にXY二次元ステージ装置を構成するY粗動ステージ23Yと、Y粗動ステージ23Yの+Z側(上方)に配置された微動ステージ21と、微動ステージ21に連動してXY平面内を移動する自重キャンセル装置40と、を備えている。
【0023】
ベースフレーム14A〜14Cは、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。ベースフレーム14A〜14Cそれぞれは、図4に示されるようにX軸方向に延設された梁状の部材であるガイド部15と、ガイド部15の両端部を床面F上で支持する一対の脚部16とを備えている。各ガイド部15は、YZ断面がZ軸方向に長い矩形状となっている。ベースフレーム14A〜14Cと、基板ステージ架台33(図1参照)とは、機械的に非接続(非接触)となっている。なお、本実施形態では、ガイド部15の両端部が一対の脚部16により支持されているが、これと併せて、ガイド部15の長手方向中間部分(複数箇所でも良い)を同様の脚部で支持しても良い。
【0024】
一対の定盤12A,12Bは、一対の基板ステージ架台33の上面に固定されている。定盤12A,12Bそれぞれは、例えば石材により形成されたX軸方向を長手方向とする平面視矩形の板状部材であり、Y軸方向に所定間隔で配置されている。定盤12Aは、ベースフレーム14Aとベースフレーム14Bとの間に配置され、定盤12Bは、ベースフレーム14Bとベースフレーム14Cとの間に配置されている。定盤12A,12Bそれぞれの上面は、平坦度が非常に高く仕上げられている。
【0025】
X粗動ステージ23Xは、図4に示されるように、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向に所定間隔で配置された一対の梁状部材であるYビーム部材25と、一対のYビーム部材25の長手方向の両端部それぞれを接続する一対の接続部材26と、を備えており、平面視で矩形枠状に形成されている。Yビーム部材25の下面と接続部材26の下面とは、同一面上に配置されているが、接続部材26の上面は、Yビーム部材25の上面よりも低い(−Z側)位置に配置されている(図2参照)。
【0026】
図2に示されるように、一対の接続部材26の一方(−Y側)は、ベースフレーム14Aに支持され、他方(+Y側)は、ベースフレーム14Cに支持されている。一対の接続部材26それぞれの底面には、断面逆U字状に形成されたX可動子29が固定されている。−Y側の接続部材26に固定されたX可動子29の一対の対向する対向面の間には、ベースフレーム14Aのガイド部15(図4参照)が挿入される。また、+Y側の接続部材26に固定されたX可動子29の一対の対向する対向面の間には、ベースフレーム14Cのガイド部15(図4参照)が挿入される。各X可動子29は、一対の対向面に複数のコイルを含むコイルユニット29aを備えている。一方、各ガイド部15の両側面には、X軸方向に所定間隔で配列された複数の永久磁石を含む磁石ユニット15aが固定されている(図4では図示省略)。磁石ユニット15aは、X可動子29のコイルユニット29aと共に、X粗動ステージ23XをX軸方向に駆動するローレンツ力駆動方式のXリニアモータを構成している。また、各ガイド部15の両側面及び上面それぞれには、X軸方向に延設されたXガイド15bが固定されている(図4では図示省略)。一方、各X可動子29には、複数の図示しないベアリングを含み、各Xガイド15bに対してスライド可能な状態で機械的に係合する複数の断面逆U字状のスライド部29bが配置されている。
【0027】
一対のYビーム部材25それぞれの長手方向中央部の下面には、ベースフレーム14Bに固定されたXガイド17にスライド可能な状態で機械的に係合する断面U字状の部材を下端部に有するスライド部27が固定されている。一対のYビーム部材25それぞれの上面には、Y軸方向に延設されたYガイド28が固定されている。
【0028】
Y粗動ステージ23Yは、平面視略正方形の板状(又は箱形)部材から成り、図2に示されるように、中央部にZ軸方向に貫通する開口部23Yaを有している。また、Y粗動ステージ23Yの下面の四隅部には、複数の図示しないベアリングを含み、前述したYビーム部材25上に固定されたYガイド28上にスライド可能な状態で機械的に係合した断面逆U字状のスライド部30が固定されている(図4参照)。なお、各図面では省略されているが、各Yビーム部材25の上面には、例えば複数の磁石を含む磁石ユニットがYガイド28に平行に延設され、Y粗動ステージ23Yの下面には、複数のコイルを含むコイルユニットが配置されている。各Yビーム部材25上の磁石ユニット、及びこれに対応するY粗動ステージ23Yのコイルユニットは、Y粗動ステージ23YをY軸方向に駆動するローレンツ力駆動方式のYリニアモータを構成する。なお、X粗動ステージ及びY粗動ステージの駆動方式(アクチュエータ)は、リニアモータに限らず、例えばボールねじ駆動、ベルト駆動などでも良い。
【0029】
図2に示されるように、Y粗動ステージ23Yの上面の+Y側の端部には、X軸方向に所定間隔で(図2で図面奥行き方向に重なって)配置された複数、例えば3つのY固定子53YがZ軸方向に延設された柱状の支持部材56aを介して固定されている。また、図3に示されるように、Y粗動ステージ23Yの上面の+X側の端部には、Y軸方向に関して所定間隔で(図3で図面奥行き方向に重なって)配置された複数、例えば3つのX固定子53XがZ軸方向に延設された柱状の支持部材56aを介して固定されている。Y固定子53Y、X固定子53Xは、それぞれ複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有している。
【0030】
また、図2及び図3に示されるように、Y粗動ステージ23Y上面の四隅部には、Z固定子53Zが支持部材56bを介して固定されている。なお、図面の錯綜を避けるため、4つのZ固定子53Zのうち、図2では−Y側且つ+X側のZ固定子53Zのみが示され、図3では−X側且つ−Y側のZ固定子53Zのみが示され、その他の2つのZ固定子に関しては、図示が省略されている。Z固定子53Zは、複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有している。
【0031】
微動ステージ21は、平面視略正方形の板状(又は箱形)部材から成り、その上面に基板ホルダPHを介して基板Pを保持する。基板ホルダPHは、例えば図示しない真空吸着機構(又は静電吸着機構)の少なくとも一部を有しており、その上面に基板Pを吸着保持する。
【0032】
図2及び図3に示されるように、微動ステージ21の−Y側、−X側それぞれの側面には、固定部材24Y、24Xを介して、移動鏡(バーミラー)22Y、22Xがそれぞれ固定されている。移動鏡22Xの−X側の面、及び移動鏡22Yの−Y側の面は、それぞれ鏡面加工され反射面とされている。微動ステージ21のXY平面内の位置情報は、移動鏡22X、22Yに測長ビームを照射するレーザ干渉計システム92(図1参照)によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。なお、実際には、レーザ干渉計システム92は、X移動鏡22X、及びY移動鏡22Yそれぞれに対応したXレーザ干渉計及びYレーザ干渉計を備えているが、図1では、代表的にYレーザ干渉計のみが図示されている。
【0033】
また、図2に示されるように、微動ステージ21の+Y側の側面には、X軸方向に所定間隔で配置された複数、例えば3つの断面U字状のY可動子51Yが固定されている。また、図3に示されるように、微動ステージ21の+X側の側面には、Y軸方向に関して所定間隔で配置された複数、例えば3つの断面U字状のX可動子51Xが固定されている。Y可動子51Y、X可動子51Xは、それぞれ対向する一対の対向面に複数の磁石を含む磁石ユニット(図示省略)を有している。3つのY可動子51Yそれぞれは、3つのY固定子53Yそれぞれと共に3つのローレンツ力駆動方式のY軸ボイスコイルモータ55Y(以下、Y軸VCM55Yと略記する)を構成し、3つのX可動子51Xそれぞれは、3つのX固定子53Xそれぞれと共に3つのローレンツ力駆動方式のX軸ボイスコイルモータ55X(以下、X軸VCM55Xと略記する)を構成している。図示しない主制御装置は、例えば、3つのX軸VCM55X(又は3つのY軸VCM55Y)のうち、両端のX軸VCM55X(又はY軸VCM55Y)が発生する駆動力(推力)を異ならせることにより、微動ステージ21をθz方向に駆動する。
【0034】
また、微動ステージ21の下面の四隅部には、断面逆U字状のZ可動子51Zが固定されている。なお、図面の錯綜を避けるため、4つのZ可動子51Zのうち、図2では−Y側且つ+X側のZ可動子51Zのみが示され、図3では−X側且つ−Y側のZ可動子51Zのみが示され、その他の2つのZ可動子に関しては、図示が省略されている。また、図2及び図3では、図示の便宜上、Z可動子51Zは,固定部材24X,24Yに接続されているが、実際には、微動ステージ21の下面に固定されている。Z可動子51Zは、対向する一対の対向面に複数の磁石を含む磁石ユニット(図示省略)を備えている。4つのZ可動子51Zそれぞれは、4つのZ固定子53Zそれぞれと共に4つのローレンツ力駆動方式のZ軸ボイスコイルモータ55Z(以下、Z軸VCM55Zと略述する)を構成している。図示しない主制御装置は、4つのZ軸VCM55Zそれぞれの推力が同じとなるように制御することにより、微動ステージ21をZ軸方向に駆動(上下動)する。また、主制御装置は、各Z軸VCM55Zの推力を異ならせるように制御することによって、微動ステージ21をθx方向、及びθy方向に駆動する。なお、本実施形態では、Z軸VCMが微動ステージの四隅部に対応して4つ配置されたが、これに限らず、Z軸VCM55Zは、少なくとも同一直線上にない3点でZ軸方向に推力を発生できれば良い。
【0035】
以上の構成により、基板ステージPSTは、基板PをXY2軸方向に長ストロークで駆動(粗動)可能、且つ6自由度方向(X,Y,Z軸方向、並びにθx、θy、θz方向)に微少ストロークで駆動(微動)可能となっている。なお、本実施形態のX軸VCM、Y軸VCM、及びZ軸VCMそれぞれは、可動子が磁石ユニットを有するムービングマグネット式のボイスコイルモータであるが、これに限らず、可動子がコイルユニットを有するムービングコイル式のボイスコイルモータであっても良い。また、駆動方式もローレンツ力駆動方式以外の駆動方式であっても良い。同様に、露光装置10が備える各リニアモータもムービングマグネット式及びムービングコイル式のいずれであっても良いし、その駆動方式もローレンツ力駆動方式に限らず、可変磁気抵抗駆動方式等のその他の方式であっても良い。
【0036】
自重キャンセル装置40は、微動ステージ21を含む系(具体的には微動ステージ21、基板ホルダPH、移動鏡22X,22Y、固定部材24X,24Yなどから成る系)の自重を支持する部材であり、図2に示されるように、微動ステージ21に連動して移動する装置本体60と、装置本体60を定盤12A、12B上で支持し、装置本体60に追従して移動する追従支持装置70と、を備えている。
【0037】
装置本体60は、Z軸方向に延設された柱状の部材から成り、Y粗動ステージ23Yに形成された貫通孔23Ya内に挿入されている。装置本体60は、筐体61、空気バネ62、及びスライド部63を含んでいる。装置本体60は、心柱とも呼ばれる。
【0038】
筐体61は、有底の筒状部材から成る。筐体61の周壁面の上端部外側には、図2に示されるように+Y方向、−Y方向それぞれに延びる一対のYアーム状部材64Yと、図3に示されるように+X方向、−X方向それぞれに延びる一対のXアーム状部材64X(以下、4本のアーム状部材を併せて単にアーム状部材64と呼ぶ)とが固定されている。4本のアーム状部材64それぞれの先端部には、プローブ部65が配置されている。一方、微動ステージ21の下面には、上記各プローブ部65に対応して、ターゲット部66が配置されている。本実施形態では、これらプローブ部65とターゲット部66とを含んで、プローブ部65とターゲット部66との間の距離、すなわち微動ステージ21のZ位置を計測することが可能な静電容量センサ(以下、Zセンサと呼ぶ)が構成されている。Zセンサの出力は、図示しない主制御装置に供給される。主制御装置は、4つのZセンサの計測結果を用いて、微動ステージ21のZ軸方向の位置、及びθx方向、θy方向それぞれのチルト量を制御する。なお、Zセンサは、少なくとも同一直線上にない3箇所で微動ステージ21のZ位置を計測可能であれば、その数は4つに限定されず、例えば3つでも良い。また、Zセンサは、静電容量センサに限ることなく、CCD方式のレーザ変位計などであっても良い。また、Zセンサを構成するプローブ部とターゲット部の位置関係は、上記とは逆であっても良い。
【0039】
筐体61は、図2に示されるように、筐体61の+Y側、−Y側それぞれに配置された一対のフレクシャ67によりY粗動ステージ23Yに接続されている。フレクシャ67は、ボールジョイントを介して一端が筐体61に接続され、他端がY粗動ステージ23Yに接続された、例えば鋼材によって形成された薄板を備えている。従って、前述のYリニアモータ(図示省略)によってY粗動ステージ23YがX粗動ステージ23X上でY軸方向に駆動されると、筐体61は、薄板に作用する張力によりY粗動ステージ23Yに牽引されて、Y粗動ステージ23Yと一体にY軸方向(+Y方向及び−Y方向)に移動する。ただし、筐体61は、ボールジョイントの滑節の作用により、Z軸方向、θx、θy、θz方向に関する位置がY粗動ステージ23Yに拘束されない。また、フレクシャ67は、装置本体60のZ軸方向に関する重心位置を含む平面内で、装置本体60とY粗動ステージ23Yとを接続している。従って、装置本体60をY軸方向に駆動する際に、装置本体60にθx方向(X軸周り)のモーメントが作用することを抑制でき、装置本体60を安定してY軸方向に駆動できる。なお、厳密に言えば、後述のスライド部68と76の間の動摩擦力が大きければそれを考慮に入れてフレクシャの位置を重心面より下方にずらした方が良い。しかし、Y軸方向の移動に関しては一対のベースパッド(Xに比べてスパンの広い)でモーメントを受けることができるので、摩擦力の影響があっても比較的安定して駆動できる。
【0040】
空気バネ62は、筐体61内の最下部に収容されている。空気バネ62には、不図示の気体供給装置から気体(例えば空気)が供給されており、これにより、その内部が外部に比べて気圧の高い陽圧空間に設定されている。装置本体60は、微動ステージ21を支持した状態では、空気バネ62が微動ステージ21などの自重を吸収(キャンセル)することによって、Z軸VCM55Zへの負荷を軽減する。また、空気バネ62は、その内圧の変化によって微動ステージ21(すなわち基板P)をZ軸方向に長ストロークで駆動するZ軸エアアクチュエータとしても機能する。空気ばね62の代わりに、微動ステージ21を支持した状態でその自重を吸収(キャンセル)できるとともに、微動ステージ21をZ軸方向に駆動することができるダンパ兼アクチュエータ(例えばショックアブソーバがこれに該当する)を用いることができる。この場合、ベローズ式、油圧式等のその他の方式のばねを用いることができる。
【0041】
スライド部63は、筐体61の内部に収容された筒状の部材である。筐体61の周壁の内側には、図示しない複数のエアパッドが取り付けられており、スライド部63がZ軸方向に移動する際のガイドを形成している。スライド部63の上面には、図示しない複数のエアパッドが配置され、レベリング装置57を浮上支持している。
【0042】
レベリング装置57は、軸受部58と、ボール59とを含む。軸受部58は、XY平面に平行に配置された平板状の部材から成り、下面がスライド部63の上面に配置されたエアパッド(図示省略)に対向している。軸受部58の上面には、半球状の凹部が形成され、凹部には、ボール59の下部が摺動可能に嵌合している。また、微動ステージ21の下面中央にも、同様に半球状の凹部が形成され、ボール59の上部が摺動可能に嵌合している。なお、ボール59は、微動ステージ21に固定されていても良い。従って、微動ステージ21は、スライド部63に対して、チルト方向(θx方向及びθy方向)に移動(揺動)自在となっている。なお、本実施形態の装置本体60(フレクシャ67を含む)は、例えば国際公開第2008/129762号(対応米国特許出願公開第2010/0018950号明細書)などに開示された自重キャンセル機構と同様に構成されている。また、上記レベリング装置57に換えて、上記国際公開第2008/129762号に開示されるような、三角錐状部材を複数(例えば3つ)のエアパッドで支持することで微動ステージの傾斜を許容する機構を用いても良い。
【0043】
追従支持装置70は、図2に示されるように、Y軸方向(すなわちステップ方向)が長手方向である平板状に形成され、装置本体60を下方から支持するステップボード71と、ステップボード71を下方から支持する一対のベースパッド72A,72Bと、一対のベースパッド72A,72Bの間に配置された重心駆動装置73と、を含む。
【0044】
ステップボード71は、図4に示されるように、X粗動ステージ23Xの一対のYビーム部材25及び一対の接続部材26によって形成される矩形の開口部内に配置されている。ステップボード71の長手方向の寸法は、一対の接続部材26間の間隔よりも短く(例えば、3/4程度の長さに)設定されている。また、ステップボード71は、図2に示されるように、ベースパッド72A,72Bを介して、定盤12A,12Bに跨って配置されている。
【0045】
図4に示されるように、ステップボード71の上面のY軸方向の両端部には、それぞれストッパ74が固定されている。各ストッパ74は、X軸方向に所定間隔で配置された一対の凸部から成り、該一対の凸部の間には、Y軸方向に沿って張られたガイドロープ75が微少な隙間を介して挿入されている(図3参照)。ガイドロープ75は、一対の接続部材26の上面相互間に張られている。これにより、ステップボード71のZ軸周り(θz方向)の回転が抑制される。ガイドロープ75は、例えばワイヤロープなどにより形成されている。
【0046】
ステップボード71の上面には、ガイドロープ75を挟んで+X側及び−X側に、一対のYガイド76がY軸方向に延設されている。図3及び図4に示されるように装置本体60は、筐体61の下面の四隅部に一対のYガイド76にスライド可能な状態で機械的に係合する複数(本実施形態では4つ)の断面逆U字状のスライド部68を有しており、ステップボード71上でY軸方向に相対移動自在、且つX軸方向にはステップボード71と一体で移動するようになっている。また、図3に示されるように、ステップボード71の下面には一対のYガイド76のそれぞれに対向して一対のYガイド77がY軸方向に延設されている。さらに、ステップボード71の下面の中央部には、複数の図示しない永久磁石を含む磁石ユニット78が、Y軸方向に延設されている。
【0047】
図4に示されるように、ステップボード71の+X側、−X側の側面には、X軸方向に平行な軸周りに回転自在な一対の滑車79a、79bがそれぞれ取り付けられている。一対の滑車79a、79bそれぞれには、例えばワイヤロープなどにより形成された駆動ロープ80a、80bがそれぞれ巻き掛けられている。図2に示されるように、+Y側の滑車79aに巻き掛けられた駆動ロープ80aの一端は、X粗動ステージ23Xの+Y側の接続部材26に固定され、他端は、Y粗動ステージ23Yの下面の+Y側の端部に固定された支持部材81aを介してY粗動ステージ23Yに固定されている。一方、−Y側の滑車79bに巻き掛けられた駆動ロープ80bの一端は、X粗動ステージ23Xの−Y側の接続部材26に固定され、他端は、Y粗動ステージ23Yの下面の−Y側の端部に固定された支持部材81bを介してY粗動ステージ23Yに固定されている。駆動ロープとしては、可撓性を有し、且つ張力による長手方向の変化が少ないものが好ましいが、その形状はロープに限定されず、例えばベルト状に形成されていても良い。
【0048】
従って、前述のYリニアモータ(図示省略)によってY粗動ステージ23YがX粗動ステージ23X上でY軸方向に駆動されると、ステップボード71は、駆動ロープ80a又は駆動ロープ80bに作用する張力によりY粗動ステージ23Yに牽引されて、Y粗動ステージ23Yに追従してY軸方向に移動する。ただし、滑車79a、79bが動滑車として機能することにより、ステップボード71のY軸方向への移動量は、Y粗動ステージ23YのY軸方向への移動量の半分(1/2)となり、駆動速度も半分となる。なお、ステップボードをY粗動ステージに追従させて半分程度の速度で駆動可能であれば、ステップボードを駆動する機構は、上述したものに限られず、例えばリニアモータなどのアクチュエータ、あるいは送りねじなどを含む機構などを用いても良い。
【0049】
一対のベースパッド72A,72Bそれぞれは、図2に示されるように、ベースパッド72Aが定盤12A上に配置され、ベースパッド72Bが定盤12B上に配置されている点を除き、実質的に同じ部材である。一組のベースパッド72A,72Bは、それぞれ例えば平面視八角形の平板状(図5参照)に形成されたベース部82と、ベース部82の下面にボールジョイント83を介して接続された複数、例えば3つのエアパッド84とを備えている。エアパッド84は、定盤12A(又は12B)の上面に対して加圧気体を噴出することにより、定盤12A(又は12B)の上面との間に、例えば数μm程度のクリアランスを形成する。すなわち、エアパッド84は、気体の静圧によりベース部82を定盤12A(又は12B)上で浮上させる気体静圧軸受として機能する。なお、エアパッド84の数は、3つに限らず、例えばX軸方向に離間していれば、2つでも良い。本実施形態では、一組のベースパッド72A,72BがY軸方向に離間して配置されていることから、エアパッドが2つであっても、ステップボード71を安定して支持できる。ベースパッド72A,72Bは、例えば露光装置の要求仕様などによっては定盤12A(又は12B)に対して接触していても良いが、本実施形態の露光装置10は、大型のフラットパネルディスプレイ製造用の装置であるため、摩擦力により定盤12A(又は12B)の上面に損傷が生じないように、一例としてエアパッド84を用いて定盤に対して非接触式な構成を採用している。
【0050】
図5に示されるように、ベース部82の上面には、ステップボード71の下面に固定された一対のYガイド77にスライド可能な状態で機械的に係合する複数、例えば4つの断面U字状のスライド部85が固定されている。従って、自重キャンセル装置40(すなわち装置本体60と、ステップボード71と、一組のベースパッド72A,72Bとから成る系)は、X軸方向に関しては、一体的に移動するように構成されている。
【0051】
また、図5に示されるように、一対のベースパッド72A,72Bそれぞれのベース部82の上面には、複数のコイル(図示省略)を含むコイルユニット86が各1つ配置されている。各コイルユニット86は、ステップボード71に配置された磁石ユニット78(図3参照)と共に、ベースパッド72A,72Bをステップボード71に対してY軸方向に駆動するYリニアモータを構成している。一方のベースパッド72Aのコイルユニット86のコイル、及び他方のベースパッド72Bのコイルユニット86のコイルに供給される電流は、図示しない主制御装置により独立して制御される。従って、一対のベースパッド72A,72Bそれぞれは、互いに独立してステップボード71に対する支持位置を変更することが可能となっている。
【0052】
重心駆動装置73は、図3に示されるように、断面U字状の部材であるスライド部87と、スライド部87の互いに対向する対向面の先端(上端)にボールジョイント88を介して接続された一対のエアパッド89と、を備える。
【0053】
スライド部87には、複数のコイルを含むコイルユニット90がステップボード71の下面に固定された磁石ユニット78に対向して配置されている。コイルユニット90は、磁石ユニット78と共に、重心駆動装置73をステップボード71に対してY軸方向に駆動するYリニアモータを構成している。コイルユニット90のコイルに供給される電流は、図示しない主制御装置により制御される。
【0054】
コイルユニット90の+X側、−X側には、ステップボード71の下面に配置されたYガイド77にスライド可能な状態で、且つ重心駆動装置73が自重により落下しないように機械的に係合する断面U字状のスライド部94が固定されている。従って、重心駆動装置73とステップボード71とは、X軸方向に関して一体的に移動する。
【0055】
一対のエアパッド89それぞれは、一対のYビーム部材25それぞれの内側面に固定されたパッド用ガイド25aに対して加圧気体を噴出することにより、Yビーム部材25の内側面との間に、例えば数μm程度のクリアランスを形成する。従って、重心駆動装置73は、一対のYビーム部材25に対して非接触状態で配置され、Yビーム部材25とは独立してY軸方向に関して移動可能である一方で、X軸方向に関しては、エアパッド89から噴出される気体の静圧によりYビーム部材25と一体的にX軸方向に移動するようになっている。
【0056】
ここで、一対のエアパッド89それぞれの軸受面(気体供給面)のZ軸方向に関する位置は、自重キャンセル装置40(装置本体60、ステップボード71、及び一組のベースパッド72A、72Bから成る系)の重心位置CG(図2参照)のZ軸方向に関する位置と略一致している。従って、自重キャンセル装置40をX軸方向(スキャン方向)に駆動する際の駆動力は、重心位置CGを含む平面内で自重キャンセル装置40に対してX軸方向に作用する。これにより、自重キャンセル装置40にθy方向(Y軸周り)のモーメントが作用せず、安定して自重キャンセル装置40をX軸方向に駆動(重心駆動)することができる。
【0057】
さらに、図示しない主制御装置は、装置本体60のY軸方向の位置に応じて、一組のベースパッド72A、72B、及び重心駆動装置73の位置を制御する。図6(A)〜図6(C)には、装置本体60のY軸方向の位置の変化に応じてベースパッド72A、72B及び重心駆動装置73が駆動される様子が示されている。
【0058】
図6(A)では、Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23X上でのY軸方向に関する移動可能範囲の最も−Y側に位置している。この図6(A)に示される状態では、装置本体60は、定盤12Aの−Y側の端部近傍の上方に位置し、図示しない主制御装置は、定盤12A上に配置された一方のベースパッド72Aを装置本体60の下方に(Z軸方向に重なるように)位置させる。また、主制御装置は、定盤12B上に配置された他方のベースパッド72Bを定盤12Bの−Y側の端部近傍に位置させる。ステップボード71は、図6(A)に示される状態のときに、−Y側の端部がベースパッド72Aに、+Y側の端部がベースパッド72Bにそれぞれ支持されるように、Y軸方向の寸法が設定されている。
【0059】
次いで、例えば露光中にステップ動作を行う際など、Y粗動ステージ23YがX粗動ステージ23X上で+Y方向に駆動されると、フレクシャ67の板バネの剛性により、装置本体60が連動してステップボード71上を+Y方向に移動する。ステップボード71は、駆動ロープ80aに牽引され、装置本体60に追従して(ただし、移動ストロークは半分程度)+Y方向に移動する。そして、主制御装置は、Y粗動ステージ23YのY軸方向に関する移動量に応じた移動量でベースパッド72Aを定盤12A上で駆動する。これにより、ベースパッド72Aは、装置本体60が定盤12Aの上方で移動する間は、常に装置本体60の直下に配置された状態が維持される。このように、ベースパッド72Aの位置が装置本体60と常にZ軸方向に重なるように制御されるので、ステップボード71に偏荷重による曲げ応力が作用することを抑制できる。このため、ステップボード71を薄型化、軽量化することができる。
【0060】
なお、図6(B)に示されるように、装置本体60がY粗動ステージ23Yに連動して+Y方向に移動し、ベースフレーム14B(定盤12Aと定盤12Bとの間)の上方に位置する際には、主制御装置は、ベースパッド72Aを定盤12Aの+Y側の端部近傍に停止させる。この図6(B)に示される状態では、一組のベースパッド72A,72Bが近接して配置されるので、ステップボード71の中央部に作用する曲げ応力を最小限とすることができる。
【0061】
図6(B)に示される状態から図6(C)に示されるように、さらにY粗動ステージ23Yが+Y方向に駆動されると、ステップボード71も装置本体60に追従してさらに+Y方向に移動する。また、主制御装置は、装置本体60が定盤12Bの上方で移動する間は、Y粗動ステージ23YのY軸方向に関する移動量に応じて、常に装置本体60の直下に配置されるように、ベースパッド72Bを駆動する。なお、図6(A)〜図6(C)に示される場合とは逆にY粗動ステージ23Yが−Y方向に駆動される際は、上記の場合と反対にステップボード71がY粗動ステージ23Yの半分の移動量でY粗動ステージ23Yに追従して−Y方向に移動し、主制御装置は、ベースパッド72A、又はベースパッド72Bが、常に装置本体60の直下に配置されるように制御する(ただし、図6(B)に示される状態を除く)。
【0062】
これに対し、例えば露光動作(スキャン動作)を行う際など、X粗動ステージ23XがXリニアモータによりX軸方向に駆動されると、重心駆動装置73の一組のエアパッド89(図3参照)のいずれか一方が、対向するYビームガイド25に押圧される。これにより互いに機械的に接続された装置本体60、ステップボード71、及び一組のベースパッド72A,72Bから成る自重キャンセル装置40がX粗動ステージ23Xと一体にX軸方向に移動する。
【0063】
ここで、主制御装置は、装置本体60がY軸方向に移動する際(併せてX軸方向にも移動する際も含む)、重心駆動装置73が自重キャンセル装置40の重心位置CGの移動に追従するように、重心駆動装置73の位置を制御する。図6(A)〜図6(C)を用いて具体的に説明すると、例えば、図6(A)に示される状態のとき、重心位置CGは、ステップボード71のY軸方向の中心よりも幾分−Y側に位置する。主制御装置は、図6(A)に示されるように、重心駆動装置73を重心位置CGに対応する位置に位置させる。この状態でX粗動ステージ23XがX軸方向に駆動されると、エアパッド89(図3参照)を介して、自重キャンセル装置40がX軸方向に重心駆動される。また、図6(B)に示されるように、装置本体60がステップボードのY軸方向の中心上に位置する状態では、重心位置CGは、装置本体60の直下に位置するので、主制御装置は、これに応じて重心駆動装置73の位置を制御する。
【0064】
すなわち、図6(A)〜図6(C)に示されるように、自重キャンセル装置40の重心位置CGは、装置本体60、ステップボード71、及び一組のベースパッド72A,72Bの相対的な位置関係の変化により、Y軸方向に関して位置が変化するが、主制御装置は、この重心位置CGの位置変化に応じて、重心駆動装置73のY軸方向の位置を制御するので、常に自重キャンセル装置40の重心位置CGにX軸方向の駆動力を作用させることができる。従って、装置本体60、ステップボード71、及び一組のベースパッド72A,72Bの相対的な位置関係に関わらず、自重キャンセル装置40にθz方向(Z軸周り)のモーメントが作用せず、安定して自重キャンセル装置40をX軸方向(X軸方向及びY軸方向に同時駆動する場合を含む)に重心駆動できる。なお、重心駆動装置73の駆動量の算出のため、基板PをY軸方向に駆動する際の微動ステージ21の駆動量に応じた自重キャンセル装置40の重心位置CGの変化量を、例えば予め実験(又はシミュレーション)などにより求めておき、このデータをテーブル化(あるいは数式化)して主制御装置の図示しないメモリ装置に記憶させておくと良い。主制御装置は、上記テーブルを参照することにより、微動ステージ21の位置又は移動量(すなわち、重心位置CGの変化量)に応じた駆動量で重心駆動装置73の位置を制御することができる。
【0065】
上述のようにして構成された液晶露光装置10では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージMST上へのマスクMのロード、及び不図示の基板ローダによって、基板ステージPST上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式と同様であるのでその説明は省略するものとする。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の液晶露光装置10では、2つの定盤12A,12B上にそれぞれベースパッド72A、72Bが配置され、且つベースパッド72A、72Bにより一枚のステップボード71が支持される。装置本体60は、ステップボード71上を移動することによって、定盤12A上から定盤12B上に(及びその反対に)移動するので、分離して配置された隣接する定盤12Aと定盤12Bとの境界部は、自重キャンセル装置40がY軸方向に移動する際のガイド面として機能することがない。従って、2つの定盤12A,12Bを離間させて配置したにも関わらず、自重キャンセル装置40をXY平面に沿って案内することができ、これにより基板PをY軸方向に安定して駆動することができる。
【0067】
また、定盤が2つの部材で構成されているので、各定盤12A,12Bを小型化することができる。従って、定盤の材料(例えば、石材)の確保が容易であり、且つ定盤の加工及び搬送も容易となる。また、定盤12A,12Bを離間して配置することができるので、各定盤の間にX粗動ステージ23Xを移動可能に支持するベースフレーム14Bを配置することができ、X粗動ステージ23Xの長手方向中央部分の撓みを抑制できる。
【0068】
なお、定盤は、一方向(例えば上記実施形態のX軸に相当する方向)に長くても輸送(搬送)上、問題はなく、その一方向への大型化には、本実施形態と同様の装置構成を採用することにより容易に対応することができる。また、一方向に関して定盤が長くなった場合には基板ステージ架台(33)を3つ以上配置しても良いし、その一方向に関しても定盤を複数に分割して配置しても良い。
【0069】
さらに、隣接する定盤間に渡して配置された板状部材であるステップボード上を自重キャンセル装置40の装置本体60が移動する構成としたので、例えば複数の定盤(上記実施形態では、例えば2つ)に対応させて複数の自重キャンセル装置を配置する場合に比べ低コストである。
【0070】
また、ステップボード71が装置本体60に追従してY軸方向に移動するようにしたので、ステップボード71を小型化、軽量化することができる。また、ステップボード71を駆動ロープ80a、80bにより牽引する構成としたので、アクチュエータ等を設ける場合に比べ、構造が簡単である。
【0071】
また、複数(上記実施形態では2つ)の定盤12A,12Bが、露光時のステップ方向に関して所定間隔で配置され、すなわちスキャン方向に関しては、複数の定盤の継ぎ目が存在しないので、スキャン動作時には、定盤12A,12Bの上面が単一のガイド面として(単一のガイド面を有する一枚の定盤と同様に)機能し、基板Pを安定してスキャン方向に駆動することができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、定盤がステップ方向(Y軸方向)に所定間隔で2つ配列されたが、これに限らず定盤は、例えば3つ以上であっても良い。この場合には、複数の定盤上それぞれにベースパッドを配置し、上記実施形態よりもY軸方向に長いステップボードを複数のベースパッドに渡して(すなわち、複数の定盤を跨った状態で)配置すると良い。また、上記実施形態では、ステップボードが自重キャンセル装置の装置本体に追従する構成であったが、これに限らず、ステップボードは固定であっても良い(ただし上記実施形態よりもY軸方向寸法を長くする必要がある)。また、複数の定盤は、スキャン方向(X軸方向)に所定間隔で配列されても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、ベースパッドが、装置本体に追従してY軸方向に移動する構成であったが、これに限らず、ベースパッドを実施形態のものより大きく形成することにより、Y軸方向に関して移動しないように(ただし、X軸方向には、移動可能に)構成しても良い。また、上記実施形態では、ベースパッドは、リニアモータにより駆動される構成であったが、ステップボードと同様に、ワイヤロープなどによって牽引される構成としても良い。また、ステップボードはワイヤロープに引っ張られることによって装置本体に追従する構成であったが、これに限らず、例えばリニアモータなどのアクチュエータによって駆動されても良い。さらに、上記実施形態では、自重キャンセル装置は、X粗動ステージに押圧されてX軸方向に移動する構成であったが、これに限らず、リニアモータなどのアクチュエータによってX軸方向に駆動されても良い。また、一つの定盤上に複数のベースパッドを配置しても良い。
【0074】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、投影光学系PLが、複数本の投影光学ユニットを備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学ユニットの本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、例えばオフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
【0076】
また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は縮小系及び拡大系のいずれでも良い。
【0077】
なお、上記実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
【0078】
なお、上記実施形態などの本発明の露光装置は、サイズ(外径、対角線、一辺の少なくとも1つを含む)が500mm以上の基板、例えば液晶表示素子などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の大型基板を露光する露光装置に対して適用することが特に有効である。これは、基板の大型化に対応すべく本発明がなされているからである。
【0079】
なお、上記実施形態では、プレートのステップ・アンド・スキャン動作を伴う走査型露光を行う投影露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、投影光学系を用いない、プロキシミティ方式の露光装置にも適用することができる。また、本発明は、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(いわゆるステッパ)あるいはステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用することができる。
【0080】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、シリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置として、例えば米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される、投影光学系とウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などに本発明を適用しても良い。
【0081】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0082】
なお、本発明は、露光装置に限らず、例えばインクジェット式の機能性液体付与装置を備えた素子製造装置に適用しても良い。
【0083】
《デバイス製造方法》
次に、上記実施形態の露光装置10をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法について説明する。上記実施形態の露光装置10では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることができる。
【0084】
〈パターン形成工程〉
まず、上述した露光装置10を用いて、パターン像を感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に形成する、いわゆる光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成される。
【0085】
〈カラーフィルタ形成工程〉
次に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列された、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルタを形成する。
【0086】
〈セル組み立て工程〉
次に、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板、及びカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。例えば、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0087】
〈モジュール組立工程〉
その後、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。
【0088】
この場合、パターン形成工程において、上記実施形態の露光装置を用いて高スループットかつ高精度でプレートの露光が行われるので、結果的に、液晶表示素子の生産性を向上させることができる。
【0089】
上述した本発明の実施形態は、現状における好適な実施形態であるが、リソグラフィシステムの当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対して、多くの付加、変形、置換をすることに容易に想到するであろう。全てのこうした付加、変形、置換は、以下に記載される請求の範囲によって最も的確に明示される本発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、基板を保持する基板保持部材を駆動するのに適している。また、本発明の露光装置は、エネルギビームの照射により基板を露光するのに適している。また、本発明の移動方法は、基板を移動させるのに適している。
【符号の説明】
【0091】
10…露光装置、12A,12B…定盤、14A〜14C…ベースフレーム、21…微動ステージ、23X…X粗動ステージ、23Y…Y粗動ステージ、40…自重キャンセル装置、71…ステップボード、72A,72B…ベースパッド、73…重心駆動装置、80a、80b…駆動ロープ、P…プレート、PH…基板ホルダ、PST…基板ステージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6