【文献】
Journal of Lightwave Technology,2009年 3月15日,Vol.27,No.6,786-790
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光合分波器は、長方形の平板上チップに形成され、前記入力導波路の入力部および前記出力導波路の出力部および前記調心用入力導波路のうち少なくとも1本以上の導波路がチップ辺に対して垂直より8度以上の傾きをなすことを特徴とする請求項1に記載の光合分波器。
【背景技術】
【0002】
インターネットの進展、特にクラウドへの期待からイーサ系の通信容量拡大が喫急の課題になっている。次世代の高速40G/100Gイーサネット(登録商標)規格として、2010年にIEEE802.3ba(非特許文献1)がリリースされ、議論が行われている。特に伝送距離で数十mから数十kmという範囲は、データセンター内およびデータセンター間の接続に必要な距離に相当し、潜在需要の大きさから注目を集めている。この規格では数十mを超える範囲では電気信号の減衰が大きいことから光通信使用が推奨され、また経済性に鑑みて、高速なLSI(Large Scale Integration)の多用を回避できるマルチレーン伝送方式が推奨されている。特に数百m以上の伝送距離用には1.3μm帯のLAN−WDM(Local Area Network Wavelength Division Multiplexing)あるいはCWDM(Couse Wavelength Division Multiplexing)という波長配置での4波の波長多重方式が推奨されている。
【0003】
これらの伝送方式の実現を、最も物理媒体に近いところで担っているのが光トランシーバである。光トランシーバは、一般に、光信号と電気信号の入出力を担うコネクタ部と、光電変換を担うTOSA(Transmitter Optical Sub−Assembly)およびROSA(Receiver Optical Sub−Assembly)と、さらに各部の制御や監視を行う電子回路と、必要に応じ信号変換をする電子回路とから構成されている。さらに、これらの伝送方式で使われるROSAには、1.3μm帯の4波に分かれたマルチレーンの信号を分波する光フィルタと、4つのPD(Photo Diode)、さらにはPDに近接してTIA(Trans−impedance Amplifier)等が実装される。たとえば、小さなTFF(Thin Film Filter)4片と全反射ミラーとを実装した光学モジュールを4ch分波光フィルタとして用いて作成したROSAの報告がある(非特許文献2参照)。この文献で報告されたROSAは、TFFの小片と実装技術の粋を尽くした結果、極めて小型なモジュールサイズを実現している。しかし複数のTFFを用いた光モジュールの作製は、多チャネル化や小型化を推し進めようとすればするほど製造が難しくなり、小型化と低価格化との両立は容易ではなくなる。
【0004】
一方、石英系PLC(Planar Lightwave Circuits)で作成した多チャネル光フィルタであるアレイ導波路格子型光フィルタ(AWG:Arrayed Waveguide Grating )は、波長分波特性だけでなく量産性や信頼性に優れているため、テレコム系の伝送装置で広く使われている。また、特にチャネル数が多い場合や小型化が求められる場合は、TFFを並べた光フィルタに比べて、製造工程数が少ないことと、また、必要とされる機械精度(TFF設置精度と導波路露光精度)のトレランスが大きいこととから、経済性や量産性が優れるという特徴がある。
【0005】
しかし、かつてはAWGにも課題があった。AWGの開発当初は、数10nm以上のチャネル間隔のAWGを設計するとチップサイズが大型になるという問題があった。しかし、アレイ導波路配置の工夫により制約は大きく緩和されたため、現在ではチャネル間隔100nm以上のAWGも容易に実現できるようになった(特許文献1、2参照)。
【0006】
AWGの設計方法について、まず、第1の従来例について
図1を用いて説明する。
図1は、従来のアレイ導波路格子型光フィルタの概略を示す。
図1に示すように、アレイ導波路格子型光フィルタは、スラブ導波路1、2と、アレイ導波路群3と、入力導波路4および出力導波路5とにより構成される。ここで、アレイ導波路格子型光フィルタを適切に動作させるには、スラブ導波路1、2を結ぶ導波路群において、スラブ導波路1、2との接続点がスラブ導波路1、2の入出力導波路側の焦点から放射状に引ける直線の延長線上にあり、かつ、互いに隣接するすべての導波路は、長さがある一定量(d
0)だけ異なっており、かつ、長さが単調に増加または減少していることが必要である。
【0007】
図1に示したアレイ導波路格子型フィルタでは、アレイ導波路群3は、直線導波路3aと、円弧導波路3cと、直線導波路3bとの各導波路を順次接続してなる。ここで、第1の従来例では円弧導波路3cの円弧の凸の方向を一方向のみ、
図1の場合は上方向のみであるため、アレイ導波路群3の下方の導波路に対し、上方の導波路が長くなる。しかし、直線導波路3aと直線導波路3bの長さと、円弧導波路3cの半径とを適切に選べば、隣接するすべての導波路は、長さがある一定量(d
0)だけ異なるように、アレイ導波路群3を配置することが可能である。
【0008】
一方、上記アレイ導波路群3の隣接する導波路の長さの差(d
0)、は、アレイ導波路格子型光フィルタの各パラメータ(λ
0:中心波長、n
g:群屈折率、FSR:フリースペクトラルレンジ)と下記式(1)に示す関係がある。なお、以下、d
0を導波路長差と呼び、導波路の有効屈折率n
eを乗じたd
0×n
eを光路長差と呼ぶ。
【0009】
波長間隔×最大チャンネル数<λ
02/(d
0×n
g)=FSR・・・式(1)
【0010】
所要の波長間隔が広いか若しくは多数のチャンネル数が必要な場合、導波路長差d
0を短く設定する必要があるが、導波路長差d
0が極めて短い場合、上記アレイ導波路群3において、上方の導波路と下方の導波路とが接触、あるいは交差してしまい、アレイ導波路格子型光フィルタを適切に動作させることが困難になる。すなわち、上記第1の従来技術では幾何学的制約から、設定できる導波路長差には下限があるため、第1の従来例による設計方法では光路長差を極めて短く設定することは幾何学的に見出せないか、または実現できても回路の大きさが異常に大きくなる場合がある。
【0011】
このようなデバイスを導波路型で実現しようとすると、使用可能な基板材料の大きさには一定の限界があるので、回路の大きさがこれを超える場合には、このようなデバイスを製造することは事実上不可能となる。したがって、光路長差を極めて短く設定する必要がある広FSRのアレイ導波路格子、すなわち、分離・合波する波長間隔が広いか、またはチャネル数の多いアレイ導波路格子は、この構成をとることが難しかった。
【0012】
次に、第2の従来例について
図2を用いて説明する。なお、特許文献1には、第2の従来例であるS字光導波路から構成されるアレイ導波路格子型フィルタが開示されている。
図2は、第2の従来例であるアレイ導波路格子型光フィルタの概略を示す。
図2中、アレイ導波路格子型光フィルタは、スラブ導波路1、2と、アレイ導波路群3と、扇型円弧導波路群6とにより構成されている。
【0013】
図2に示すように、スラブ導波路1、2は、S字状のアレイ導波路群3によって接続されており、全体の回路構成はほぼ点対称となっている。このS字状の光導波路は、左の円弧導波路3cと右の円弧導波路3dの円弧の向きが逆向きである。したがって、上記円弧導波路群6を省いて円弧導波路3cと円弧導波路3dを直接接続した場合に、各導波路長が総じて等しくなるように設計することができる。すなわち、S字光導波路は変極点で幾何学的配置上必要となる導波路長差を一旦相殺し、零(0)となるように構成している。
【0014】
図2に示す従来例では、フィルタ動作上必要な光路長差は、上記S字光導波路の変極点に挿入された扇型円弧導波路群6によって与えられている。この扇型円弧導波路群6は、同一の中心点を持ち、かつ開き角が同一、かつ間隔が一定で、かつ半径が一定量だけ増加する円弧導波路から構成されている。この回路の光路長差は、扇型円弧導波路群6の導波路間の導波路差(半径差×開き角)で決定されるために、広FSR、すなわち、光路長差が極めて短くとも、所望の回路を設計できる。
【0015】
ところが、この
図2のような構成では、導波路がS字状構造によって点対称で配置されるため回路の長さLが大きくなる、という問題がある。したがって、回路の大きさが有効な基板の大きさを超えてしまうか、または仮に基板上に配置できたとしても一枚の基板に配置できる回路数が少なくなってしまう、という欠点がある。
【0016】
次に、第3の従来例について
図3を用いて説明する。
図3は第3の従来例であるアレイ導波路格子型光フィルタの概略である。第3の従来例は、ほぼ線対称である導波路群から構成されるアレイ導波路格子型フィルタである(特許文献2参照)。
図3に示すように、アレイ導波路格子型光フィルタは、スラブ導波路1、2と、アレイ導波路群3と、入力導波路4および出力導波路5と、扇型円弧導波路群6とを備えている。特にアレイ導波路群3のうち左側の部分は直線導波路3aと円弧導波路3cと直線導波路3eとの各導波路を順次接続してなるアレイ導波路群3gから構成され、アレイ導波路群3のうち右側の部分は直線導波路3fと円弧導波路3dと直線導波路3bとの各導波路を順次接続してなるアレイ導波路群3hから構成される。
【0017】
アレイ導波路群3gとアレイ導波路群3hとにおいて、隣接する上方の導波路と下方の導波路との長さの差は、
図1を用いて説明した第1の従来例設計方法と同じく、各直線導波路の長さと各円弧導波路の半径とを適切に選択すれば一定に設計することが可能である。しかし、円弧導波路3cと円弧導波路3dの円弧の凸の方向が全て上向きであるので、下方の導波路に対し上方の導波路は必ず長くなる。すなわち、円弧の凸の方向が等しいアレイ導波路群3gとアレイ導波路群3hだけでは、導波路長差をゼロにすることはできない。
【0018】
しかし
図3において扇型円弧導波路6の円弧の凸の方向が円弧導波路3cと円弧導波路3dとは逆向きであるので、同一の中心点を持ちかつ開き角が同一かつ間隔が一定でかつ半径が一定量だけ増加する円弧導波路から構成された扇型導波路群6の開き角と円弧の半径とを適切に選択すれば導波路長差を一旦相殺し、零となるように構成することが可能になる。その後、扇型導波路の開き角を必要量増加あるいは減少させることにより、アレイ導波路群3の導波路長差を、FSRの広いAWGが必要とする値に容易に設定することが可能になる。
図3を用いて説明した第3の従来例による設計法でAWGを設計した場合、
図2を用いて説明した第2の従来例による設計法に比べて、円弧導波路の組み合わせ自由度が異なるので、回路サイズがより小さなAWGが設計可能になる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし光トランシーバは、IEEEの勧告の他にも、MSA(Multi Source Agreement)と呼ばれる業界標準によって寸法、ピン配置等が規定されていて、40G/100Gイーサネット用の光トランシーバでは小型化・省電力化が強く求められている(非特許文献3)。特にCFP4として議論されているモジュールの外寸は、約9.5×21.7×88mmと極めて小型である(CFP:100G Form−factor Pluggableの略。Cはローマ数字で100を表す。)。そのうえ、この寸法のモジュール内にROSAとTOSAとを並列に、さらにはトランシーバに必要な電子回路等を直列に配置しなければならないため、ROSA単体さらにはROSAに内蔵される光フィルタに許容されるスペースは極めて小さい。
【0022】
IEEEが勧告するLAN−WDMやCWDMのようなチャネル間隔が広い波長範囲を合分波するAWGを設計することは、扇型円弧導波路群の使用により可能にはなったが、作製可能なAWGは回路形態が細長く、CFP4などのモジュールに収めるには、回路形態を短尺化してAWG自体のサイズをさらに小さくする必要があるという問題があった。
【0023】
導波路の比屈折率差(Δ)を高くして最小曲げ半径を小さくすることにより、AWG本体の回路サイズをある程度小さくすることは可能だが、個別のPDに結合させるための出力ファンアウト部分は、その大きさはPD間隔(あるいはPDに接続するTIAの端子間隔)にも強く依存していてΔを上げるだけでは十分な小型化ができないという問題があった。
【0024】
さらに、IEEEが勧告する仕様には、光波長のチャネル間隔だけでなく各チャネルでの波長帯域幅も含まれている。そのため光フィルタの透過波長帯域幅も確保する必要がある。出力導波路をマルチモード導波路にすると透過波長帯域幅が拡大することが報告(非特許文献4)されているが、シングルモード導波路に比べて、マルチモード導波路の最小曲げ半径は大きい。そのため、従来例の設計法によるAWGでは、出力ファンアウト部分(展開部分)の大きさも回路レイアウト上大きなスペースを取ってしまうという問題があった。
【0025】
一方、イーサネット用の光トランシーバは、データセンター内およびデータセンター間の接続に用いることが多いと想定されるため、低廉な電気信号のトランシーバと競合するために、テレコム用の光トランシーバに比べて格段の低コスト化が必要である。
【0026】
ROSAに用いる光フィルタは、入力側では、光ケーブルのコネクタと、レセプタクルと呼ばれる光学部品を介して光結合し、出力側では、光レンズを介して4つのPDと光結合する必要がある。ROSAを組み立てる時、これらを精密に調心して互いに位置ずれしないように固定する必要がある。
【0027】
調心方法として一番単純な方法は、上述の光ケーブルから実際に用いる信号光波長の光を入れて、レセプタクル用部材、光フィルタ、光レンズ、PDに順番に通したのち、PDからの電気出力をモニタしながら、すべての部品を一括して多体調心する方法である。しかし、この方法では、非常に複雑な多体調心装置が必要になり、コストが極めて大きくなるという問題があった。
【0028】
また、互いに光接続するPDと光フィルタおよび光ファイバは、屈折率が大きく異なる異種材料を選択せざるを得ないので材料境界での反射が発生してしまう。さらには、それぞれの光結合の結合効率を上げるためにレンズ系を用いた場合は、レンズ表面毎に空気層が入るために更に多数の反射が発生する。受信S/Nを向上させるためテレコム用途としては反射防止膜を付与するのが一般的であるが、イーサネット用途としては工程数増加に伴うコスト増を避けたいという問題があった。
【0029】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、高速なイーサネット用トランシーバを実現するのに必要な小型で安価なROSAモジュールを構成できる、極めて小さなAWG型光フィルタとして機能する合分波器を提供することを目的する。さらに、AWG型光フィルタに追加する回路およびチップ形状に起因するROSAモジュールの製造コストを抑制することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記の課題を解決するために、実施形態に記載の発明は、一端に入力部を有する少なくとも1本の入力導波路と、一端が前記入力導波路の他端に接続された第1のスラブ導波路と、一端が前記のスラブ導波路の他端に接続された複数本の導波路を有するアレイ導波路群と、一端が前記アレイ導波路群の他端に接続された第2のスラブ導波路と、一端が前記第2のスラブ導波路の他端に接続され、他端に出力部を有する少なくとも1本の出力導波路とを備え、前記アレイ導波路群の各導波路は、
一端が前記第1のスラブ導波路に接続され、導波路の延伸方向が180度以上変化する第1の曲部と、
一端が前記第1の曲部の他端に接続され、他端が前記第2のスラブ導波路に接続され、前記第1の曲部とは逆方向に導波路の延伸方向が180度以上変化する第2の曲部とを有する
、S字状の導波路からなり、前記入力導波路の入力部と前記出力導波路の出力部とは前記光合分波器の対向する端部にそれぞれ設けられ、一端が前記第1のスラブ導波路の他端に接続され、他端に入力部を有する調心用入力導波路をさらに備え、前記調心用入力導波路の入力部は、前記入力導波路の入力部および前記出力導波路の出力部と同じ平面内であって、前記対向する端部とは異なる前記光合分波器の端部に設けられ、前記出力導波路のうち2本の他端には出力部がなく、かつ互いに接続されていることにより、ループ状になっていることを特徴とする光合分波器である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0033】
本発明の光合分波器は、少なくとも1本の入力導波路と、入力導波路に接続された第1のスラブ導波路と、第1のスラブ導波路に接続され、複数本並列した導波路からなるアレイ導波路群と、アレイ導波路群に接続された第2のスラブ導波路と、第2のスラブ導波路に接続された少なくとも1本の出力導波路とを備えたアレイ導波路格子型の光合分波器において、第1のスラブに接続されたアレイ導波路の各導波路が、それぞれの導波路の延伸方向を180度以上変えた後に、さらに逆方向に導波路の延伸方向を180度以上変化した後段に第2のスラブに接続した構成を備えている。ここで「導波路の延伸方向」とは、導波路内を導波する光の光軸方向に等しいといえる。また、アレイ導波路群は、言い換えると下記(1)から(3)の構成を備えているといえる。
【0034】
(1)前記アレイ導波路群の各導波路は、第1の部分と第2の部分とからなり、前記第1の部分は、入力スラブ導波路(第1のスラブ導波路)の出射端から前記第2の部分の接続点までであって、光路が前記出射端から第1の方向に180度以上湾曲し、前記第2の部分は、前記第1の部分の接続点から出力スラブ導波路(第2のスラブ導波路)の入射端までであって、光路が前記接続点から前記第1の方向と反対の第2の方向に180度以上湾曲している。なお、本明細書において、「湾曲」した光路とは、必ずしも光路の全ての部分が曲がっていなくてもよく、光路の曲率が0となる部分を有する態様も含む。
【0035】
(2)前記アレイ導波路群の各導波路は、第1の部分と第2の部分とからなり、前記第1の部分は、入力スラブ導波路の出射端から前記第2の部分の接続点まで、第1の方向に180度以上湾曲した円弧導波路を含み、前記第2の部分は、前記第1の部分の接続点から出力スラブ導波路の入射端まで、前記第1の方向と反対の第2の方向に180度以上湾曲した円弧導波路を含む。なお、本明細書において、「円弧導波路」とは、必ずしも導波路の全ての部分が曲がっていなくてもよく、導波路の曲率が0となる部分を有する態様も含む。
【0036】
(3)前記アレイ導波路群の各導波路は、第1の円弧導波路と第2の円弧導波路とからなり、前記第1の円弧導波路は、入力スラブ導波路の出射端から第1の方向に180度以上湾曲し、前記第2の円弧導波路と接続され、前記第2の円弧導波路は、前記第1の円弧導波路との接続点から前記第1の方向と反対の第2の方向に180度以上湾曲し、出力スラブ導波路の入射端と接続される。
【0037】
第1のスラブ導波路に接続された各アレイ導波路は、導波路の延伸方向を一旦180度以上変え、さらに逆方向に180度以上変えた後に第2のスラブに接続する。この構成により、FSRの広いAWGでも細長い形態にすることなくAWG本体の面積を小さくすることができる。
【0038】
好ましくは、複数本並列した導波路からなるアレイ導波路群が配置された領域の最右端と最左端より内側に、入力導波路と第1のスラブ導波路との接続点と、第2のスラブ導波路と出力導波路との接続点とが配置され、かつ、複数本並列した導波路からなるアレイ導波路群が配置された領域の最上端と最下端より内側に、入力導波路と第1のスラブ導波路との接続点と、第2のスラブ導波路と出力導波路との接続点とが配置される。
【0039】
2つのスラブ導波路を干渉回路のレイアウト上の両端ではなく内側に配置することによりAWGの入出力ファンアウト部が効率よく配置でき、出力ファンアウト部を含めたAWGのフットプリントを小さくすることができる。
【0040】
また好ましくは、入力導波路が達する光合分波器の第1の辺、および、出力導波路の少なくとも1本が達する第2の辺とは異なる第3の辺に達する調心用入力導波路があって、かつ、調心用入力導波路が、第1のスラブ導波路に接続され、かつ、複数の出力導波路のうち2本は第2のスラブ導波路と接続されていない一端が互いに接続されることにより、ループ状になっている。
【0041】
調心用入力導波路の一端を一方のスラブ導波路に接続し、他方のスラブ導波路にループ状の導波路を配置する。この構成により、調心用入力導波路に入力する光波長を選択することで、AWGの入出力両方の導波路から調心用の光を出すことができる。
【0042】
さらに好ましくは、入力導波路または出力導波路または調心用入力導波路のうち少なくとも一本以上の導波路がチップ辺に対して垂直より8度以上の傾きをもってチップ辺に達している。
【0043】
入出力導波路または調心用入力導波路が達しているチップ辺をダイシングするだけで、斜め研磨あるいは反射防止膜付加工程をすることなく反射減衰量を抑制できる。結果として研磨工程を省ける分、コストを下げることが可能になる。
【0044】
(実施例1)
図4は本実施例にかかるアレイ導波路格子型光フィルタの概略を示す。本実施例にかかるアレイ導波路格子型光フィルタは、
図4に示すように、第1のスラブ導波路11と、第2のスラブ導波路12と、アレイ導波路群13と、入力導波路14と、出力導波路15とを備えている。
【0045】
アレイ導波路群13は、直線導波路13aと、円弧導波路13bと、円弧導波路13cと、直線導波路13dと、円弧導波路13eと、円弧導波路13fと、第1の導波路長差調整用の直線導波路17aと、円弧導波路13gと、直線導波路13hと、円弧導波路13iと、第2の導波路長差調整用の直線導波路17bと、円弧導波路13jと、直線導波路13kとを縦列接続してなるS字状の導波路からなるアレイ導波路群であり、S字状の各導波路の全長は隣接する導波路間で一定値ずつ単調増加または単調減少している。
【0046】
なお、上記の直線導波路13aから直線導波路13kまでの各導波路の長さ、および第1の導波路長差調整用の直線導波路17aと第2の導波路長差調整用の直線導波路17bの各導波路の長さは、其々ゼロであってもよい。
【0047】
アレイ導波路群13を構成するS字状の各導波路は、第1のスラブ導波路11から直線導波路13aと円弧導波路13bとを経て第1の基準線18aと直交し、円弧導波路13cと直線導波路13dとを経て第2の基準線18bと直交し、円弧導波路13eを経て第3の基準線18cと直交し、円弧導波路13fを経て第4の基準線18dと直交し、第1の導波路長差調整用の直線導波路17aと円弧導波路13gとを経て第5の基準線18cと直交し、直線導波路13hと円弧導波路13iと第2の導波路長差調整用の直線導波路17bとを経て第6の基準線18fと直交し、円弧導波路13jと直線導波路13kとを経て第2のスラブ導波路12へと結合する。
【0048】
アレイ導波路群13を構成するS字状の各導波路は、光信号の伝搬方向を第1のスラブ導波路11から第2のスラブ導波路12へと設定したとき、円弧導波路13cと円弧導波路13eとは伝搬方向右向きに凸であり、円弧導波路13fと円弧導波路13gと円弧導波路13iは伝搬方向左向きに凸である。また、円弧導波路13cと円弧導波路13eの開き角の合計と、円弧導波路13fと円弧導波路13gと円弧導波路13iの開き角との合計は同じ値に設計されている。このため第1の導波路長差調整用の直線導波路17aと第2の導波路長差調整用の直線導波路17bを除くと、S字状の各導波路の長さは大凡等しくなる。
【0049】
第1のスラブ導波路11から第1の基準線18aと直交するまでの直線導波路13aと円弧導波路13bとの長さと、第2の基準線18fと直交してから第2のスラブ導波路12に結合するまでの円弧導波路13jと直線導波路13kとの長さとの和は、厳密にはS字状の導波路毎に異なる。また、直線導波路13dおよび直線導波路13hの長さも、S字状の導波路毎に異なる。これらの長さの差は、直線導波路13aの延長線が第1の基準点19aで交差し、直線導波路13kの延長線が第2の基準点19bで交差することに起因する。第1の基準点19aを中心とする直線導波路13aの開き角20aと、第2の基準点19bを中心とする直線導波路13kの開き角20bとは、入力導波路11と出力導波路14の開口数と同程度の値を設計で与える。結果として、互いに隣接するS字状の導波路の総延長の差は数μm程度に収まる。しかし、S字状の導波路毎の総延長の差は有限値であるので、その分を第1の導波路長差調整用の直線導波路17aの長さと第2の導波路長差調整用の直線導波路17bの長さとを調整することにより、S字状の導波路毎の総延長を厳密にゼロになるよう設計することが可能である。
【0050】
アレイ導波路群13は、第1の基準線18aから第5の基準線18cまでの導波路で形成される第1の曲部と、5の基準線18cから第2の基準線18fまでの導波路で形成される第2の曲部とを有している。第1の曲部は、アレイ導波路群13を構成する導波路が180度以上曲がった部分である。第2の曲部は、アレイ導波路群13を構成する導波路が第1の曲部とは反対方向に180度以上曲がった部分である。したがって、アレイ導波路群13内を導波する光の光軸方向は、第1の基準線18aから第5の基準線18cまでの間に180度以上変化し、第5の基準線18cから第2の基準線18fまでの間に、第1の曲部とは逆方向に180度以上変化する。
【0051】
図4に示すアレイ導波路格子型光フィルタを、波長合分波フィルタとして動作させるには、まず所望のFSRから前述の式(1)(下記に数式を再掲)用いて導波路長差d
0を算出し、隣接するS字状の導波路間で総延長の差と等しくなるように、第1の導波路長差調整用の直線導波路17aの長さと第2の導波路長差調整用の直線導波路17bの長さとを設計すればよい。
【0052】
波長間隔×最大チャンネル数<λ
02/(d
0×n
g)=FSR・・・式(1)
【0053】
上式(1)においてλ
0:中心波長、n
g:群屈折率、FSR:フリースペクトラルレンジである。
【0054】
図5は、上述の設計法で実際に設計したCWDM信号4チャンネル分波用アレイ導波路格子型光フィルタの導波路配置図である。用いた導波路は、石英ガラスにゲルマニウムを添加した埋め込み導波路で、比屈折率差を2%とし、標準の導波路のコアの高さを4μm、コアの幅を4μmとした。この標準導波路において、1300nm帯での最小曲げ半径は上述の750μmであった。分波する光信号の波長を1271nm、1291nm、1311nm、1331nmとし、透過損失のチャネル間格差を減らすためFSRを3250GHzとした。結果、隣接するS字状アレイ導波路間に付与する導波路長差は、6.498μmとした。
【0055】
また合分波特性の透過域での平坦性を出現させるため、入力導波路14と出力導波路15との導波路幅を違う値にした。具体的には第1のスラブ導波路11に接続される入力導波路14の幅を8.0μmとし、第2のスラブ導波路12に接続される4本の出力導波路15の幅を15μmとした。なお、幅15μmの出力導波路15には高次モード光も伝搬するため最小曲げ半径を1200μmとした。準備した4連のPDアレイの受光面の間隔が250μmであったため出力導波路の間隔を250μmとした。最小曲げ半径と出力導波路間隔より出力導波路のファンアウト部分22が大きくなることが予想されるので、第2のスラブ導波路12と出力導波路15との接続点を、アレイ導波路群13を配置する領域の最右端と最左端の内側でかつ最上端と最下端の内側になるように配置した。すなわち、第2のスラブ導波路12と出力導波路15との接続点を、導波路を形成したチップ辺(
図5では導波路を取り囲む方形の枠で示されている)からアレイ導波路群13に達するまでの距離よりも、チップ辺から第2のスラブ導波路12に達するまでの距離が大きくなるように配置している。
【0056】
また、
図5に示すように、第1のスラブ導波路11と入力導波路14との接続点を、アレイ導波路群13を配置する領域の最右端と最左端の内側でかつ最上端と最下端の内側になるように配置した。すなわち、第1のスラブ導波路11と出力導波路14との接続点を、導波路を形成したチップ辺からアレイ導波路群13に達するまでの距離よりも、チップ辺から第1のスラブ導波路11に達するまでの距離が大きくなるように配置している。ここで、アレイ導波路群13の具体的な配置は、
図4を用いて説明した設計方法に従って設計した。
【0057】
さらには、出力導波路のチップ端での反射を抑制するため、出力側のチップ辺に対して垂直より8度の傾きをもってチップ辺に達する様設計した。なお、入力側のチップ辺に対しても同様に8度の傾きをもってチップ辺に達するようにしてもよい。
【0058】
このように、本発明の設計方法に従って具体的にアレイ導波路格子型光合分波器のレイアウトを設計した結果、
図5に示す通り、チップサイズを長さ8.2mm、幅4.9mmという小さいフットプリントの中にAWGを収めることができた。
【0059】
さらには、第2のスラブ導波路12と出力導波路15との接続点を、アレイ導波路群13を配置する領域の最右端と最左端の内側でかつ最上端と最下端の内側になるように配置したため、チップ端での出力導波路15の位置をチップ中央に配置することが、副次的効果として得られた。チップ端での出力導波路15の位置をチップ中央にできると、PDやTIAおよび取り出し電極を実装するときに上下方向に無駄な展開スペースを不要とするので、最終的にROSAのモジュールサイズを小さくできるというメリットがある。
【0060】
図6は、比較のため、同じ波長配置をもったアレイ導波路格子型光合分波器を同じ導波路構造で、第2の従来例の設計方法でレイアウト計算した結果である。
図6に示したアレイ導波路格子型光合分波器のアレイ導波路群13は、並走するS字状の光導波路からなり、全体として、ほぼ点対称の構造をしている。できあがったチップサイズは長さ11.8mm、幅3.9mmであった。チップ幅3.9mmは、
図5に示したアレイ導波路格子型光合分波器より狭い。しかし、チップ辺での出力導波路15の位置をチップ中央にするという制限を追加するとチップ幅は6.4mm必要になる。すなわち、本発明の設計方法によるアレイ導波路格子型光合分波器よりチップ幅が大きくなる。またチップ長11.8mmは、本発明の設計方法による
図5に示したアレイ導波路格子型光合分波器より3.6mm、割合にして約44%長くなってしまった。
【0061】
また、
図7は、比較のため、同じ波長配置をもったアレイ導波路格子型光合分波器を同じ導波路構造で、第3の従来例の設計方法でレイアウト計算した結果である。
図7に示したアレイ導波路格子型光合分波器のアレイ導波路群13は、全体として、ほぼ線対称の構造をしている。アレイ導波路群13の中央部分と両脇の部分は、円弧導波路の円弧が凸になる方向が逆向きである。できあがったチップサイズは長さ14.3mm、幅3.1mmであった。チップ幅は、チップ辺での出力導波路15の位置をチップ中央にするという制限を追加しても4.1mmと狭くできた。しかし、チップ長14.3mmは、本発明の設計方法による
図5に示したアレイ導波路格子型光合分波器より6.1mm、割合にして約75%長くなってしまった。
【0062】
図5に示した本発明の設計法によるアレイ導波路格子型光合分波器、
図6に示した第2の従来例の設計法によるアレイ導波路格子型光合分波器、
図7に示した第3の従来例の設計法によるアレイ導波路格子型光合分波器、それぞれのチップ面積は、出力導波路の位置をチップ中央にするという制限を外した場合、約40平方mm、約46平方mm、約44平方mmである。したがって、ウエハあたりの収率からチップ単価を見積もると、本発明の設計法によるアレイ導波路格子型光合分波器を用いることにより、第1の従来例の光合分波器に比べ約15%、第2の従来例の光合分波器に比べ約10%、チップ単価を下げる効果が得られることが分かった。
【0063】
本実施例のアレイ導波路格子型光合分波器は、アレイ導波路群の導波路が、延伸方向を一旦180度以上変えた後に、逆方向に180度以延伸方向を変える。さらに、第1スラブ導波路と第2スラブ導波路とを、アレイ導波路群が配置される領域の最右端と最左端の内側かつ最上端と最下端の内側に配置する。結果として、小さいチップサイズを実現している。
【0064】
さらに本実施例では、導波路の延伸方向を180度以上変え且つ小型化を低損失に実現している。これは、通常の石英系ガラス導波路(比屈折率差1%以下)に比較してより急峻な曲げに耐えられる導波路を用いることにより実現している。通常の石英系ガラス導波路では、導波路を曲げられる最小曲げ半径は、2mm以上である。それ以上に急峻に曲げると、通常の石英系ガラス導波路では、透過光が曲がりきらず、放射光として導波路外に放出されてしまう。そのため急峻な曲げに通常の導波路を用いるとアレイ導波路型合分波器の損失が大きくなってしまう。
ここで、比屈折率差2%以上の導波路を用いると最小曲げ半径は(波長1300nm帯において)750μm以下と通常の導波路より急峻に曲げられるようになる。
【0065】
本実施例では、比屈折率差2%以上の導波路を用いることにより、導波路の延伸方向を180度以上変え且つ小型な構成において、低損失なアレイ導波路型合分波器を実現している。
【0066】
(実施例2)
本実施例では、調心用導波路付きLAN−WDM信号分波用アレイ導波路格子型光フィルタとして機能させるために、実施例1のアレイ導波路格子型光合分波器を、分波する光信号の波長が異なる構成としている。
図8は、本実施例で設計した調心用導波路付きLAN−WDM信号分波用アレイ導波路格子型光フィルタの導波路配置図である。用いた導波路の材質と導波路パラメータは、
図5に示したアレイ導波路格子型光合分波器と同一であるが、分波する光信号の波長が異なる。4波の波長を1295.56nm、1300.05nm、1304.58nm、1309.14nmとし、透過損失のチャネル間格差を考慮しFSRを7830GHzとした。結果、隣接するS字状アレイ導波路間に付与する導波路長差は、25.79μmとした。また、
図5に示したアレイ導波路格子型光合分波器と同様に、合分波特性の透過域での平坦性を出現させるため、入力導波路14と出力導波路15との導波路幅を違う値にした。具体的には第1のスラブ導波路11に接続される入力導波路14の幅を8.0μmとし、第2のスラブ導波路12に接続される4本の出力導波路15の幅を15μmとした。
【0067】
また、幅15μmの出力導波路の最小曲げ半径を1200μmとし、チップ辺での出力導波路15の間隔を250μmとした。出力導波路15のファンアウト部分22を効率的に配置するために、
図5に示したアレイ導波路格子型光合分波器と同様に、第1のスラブ導波路11と入力導波路14との接続点と、第2のスラブ導波路12と出力導波路15との接続点とが、アレイ導波路群13を配置する領域の最右端と最左端の内側でかつ最上端と最下端との内側になるように配置した。
【0068】
本実施例では、
図5で示した4本のマルチモード導波路からなる出力導波路15の両脇に、光レンズ・アレイを調心するためのシングルモード導波路からなる第1の調心用光出力導波路の1組(2つ)30と、PDアレイ調心するためのシングルモード導波路からなる第2の調心用光出力導波路の1組(2つ)31とを追加して配置した構成としている。さらに、アレイ導波路格子型光合分波器のチップの左右の辺には、それぞれ光部品が接続されるため、調心用光入力導波路32をチップの上辺に設置した。なお、調心用光入力導波路32は、アレイ導波路格子型光合分波器の入力導波路14が接続する第1のスラブ導波路11へ接続されている。また、アレイ導波路格子型光合分波器の出力導波路15が接続する第2のスラブ導波路12には、調心用光入力導波路32から入れた光信号が折り返せるようにループ状導波路33を接続した。さらにループ状の導波路33の脇にチップ下辺へ出力される第3の調心用光出力導波路34を設置した。
【0069】
ここで、反射減衰量を40dB以上にするため、チップ右辺に設置した出力導波路15、第1の調心用光出力導波路の1組(2つ)30、第2の調心用光出力導波路の1組(2つ)31の各導波路がチップ右辺となす角度を8度に設定した。また、調心用光入力導波路32のチップの上辺に対する角度および第三の調心用光出力導波路34のチップの下辺に対する角度を8度に設定した。ただし、チップ右辺の端面には1.3帯で反射量を抑制するAR(Anti−Reflection)コートを施したので、入力導波路14がチップ左辺となす角度は、ここでは垂直とした。
【0070】
以上の設計の結果、チップの上辺の調心用光入力導波路32から1.3μm帯の光を入力すると、チップ下辺の第3の調心用光出力導波路34からは1324.2nmの波長の光が出力され、光レンズ・アレイ調心用の第1の調心用光出力導波路1組30からは1287.8nmと1308.0nmの波長の光が其々出力され、PDアレイ調心用の第2の調心用光出力導波路1組31からは1285.6nmと1310.28nmの波長の光が其々出力され、レセプタクル用部材を調心・設置するアレイ導波路格子型光フィルタの入力導波路14には1319.5nmの波長の光が出力される。なお、入力導波路14へは、以下の道筋を通って光が出力される。調芯用入力導波路32に入った光の中で波長1319.5nmの光は、第1のスラブ導波路11、第2のスラブ導波路12を経て、ループ状の導波路33を経て再び、第2のスラブ導波路12に入射して、第1のスラブ導波路11から、入力導波路14へ出力される。
【0071】
図9A、
図9B、
図9C、
図9Dは、
図5に示した調心用導波路付きLAN−WDM信号分波用アレイ導波路格子型光フィルタ・チップ35に、光レンズ・アレイ36、PDアレイを集積した部材37、レセプタクル用部材38を実装する工程を示した概略図である。
【0072】
まず、光部品を実装するべき光フィルタ・チップ35の左右の辺ではないチップ上辺の調心用光入力導波路32に、波長1324.2nmの波長の光を用いて、1芯の光ファイバ・ブロック39を仮固定する(
図9A)。より具体的には、光フィルタ・チップ35下辺の第3の調心用光出力導波路34の出射光は大口径PD36を用いて受光し、光フィルタ・チップ35と1芯の光ファイバ・ブロック39との二体調芯を行ったのち仮固定を行う。なお、仮固定では、組み立て工程後に、1芯の光ファイバ・ブロック39を取り除けるように、接着力が弱い接着剤または接着条件を用いて固定する。また、ここで用いた1芯の光ファイバ・ブロック39の端面は8度に研磨されていているため、チップ上辺での損失および反射を小さく抑えたまま光結合をすることが可能になる。
【0073】
次に、仮固定した1芯の光ファイバ・ブロック39を介して、チップ上辺の調心用光入力導波路32に、波長1287.8nmと1308.0nmの光を入力すると、第1の調心用光出力導波路30から光が出力される。この出力された光を用いて光レンズ・アレイ36を二体調芯装置で調心し、調心完了後に接着固定する。(
図9B)
【0074】
第3ステップとして、仮固定した1芯の光ファイバ・ブロック39を介して、チップ上辺の調心用光入力導波路32に、波長1319.5nmの光を入力すると、アレイ導波路格子型光フィルタの入力導波路14から光が出力される。この出力された光を用いてレセプタクル用部材38を二体調芯装置で調心し、調心完了後に接着固定する。(
図9C)
【0075】
第4ステップとして、仮固定した1芯の光ファイバ・ブロック39を介して、チップ上辺の調心用光入力導波路32に、波長1285.6nmと1310.28nmの光を入力すると、第2の調心用光出力導波路31から光が出力される。この出力された光を用いてPDアレイを集積した部材38を二体調芯装置で調心し、調心完了後に接着固定する。(
図9D)
【0076】
最後に、ねじり応力を加えて、仮固定した1芯の光ファイバ・ブロック39を光フィルタ・チップ35から取り外せば、光フィルタ・チップ35周辺の実装は終了する。
【0077】
ここで重要なのは、
図9A、
図9B、
図9C、
図9Dを用いて説明した本発明のアレイ導波路格子型光合分波器への周辺部材の実装には、高価で使用方法が煩雑な3体以上の多体調心装置を全く用いずに、二体調心装置のみを用いて実装できることである。すなわち、本発明のアレイ導波路格子型光合分波器を用いれば、組み立てラインへの初期投資を大きく抑えることが可能になる。その結果、安価なROSAを提供することが可能になる。
【0078】
つまり、入出力とは異なる第3のチップ辺に調心用光入力導波路からの光が第1のスラブ導波路に接続され、かつ第2のスラブ導波路にループ状の導波路を接続していることから、入出力両方の導波路に調心光を出力できる。その結果、周辺部材の実装時の作業コストを抑えられるというメリットがある。
【0079】
また、
図9A、
図9B、
図9C、
図9Dを用いて説明した実装工程では、光レンズ・アレイ36として、8本のGRIN(GRadient INdex)レンズを並べて固定したのち端面を8度に研磨したものを用いた。光レンズ・アレイ36の両端面のうち、PDアレイ側にはAR(Anti Reflection)コートを施したが、光フィルタ・チップ35側はARコートを省略し研磨のみとした。また
図9A、
図9B、
図9C、
図9Dに示した本発明のアレイ導波路格子型光合分波器も光レンズ・アレイ36を実装する端面はARコートを省略し研磨のみとした。さらには光フィルタ・チップ35と光レンズ・アレイ36の接着には、硬化後の屈折率が石英ガラスとほぼ一致する接着剤を用いた。
【0080】
さらには、調心時に用いた調心用入力導波路32の端部があるチップ上辺および調心用入力導波路34の端部があるチップ下辺もARコートを省略し研磨のみとした。
【0081】
この様にして実装した光フィルタ・チップ35と光レンズ・アレイ36の境界からの反射減衰量を実測したところ40dB以上であった。すなわち本発明のアレイ導波路格子型光合分波器を用いれば、工程数を増やしてコスト増の要因となるARコートの実施を最大4回省くことが可能になり。その結果、より安価なROSAを提供することが可能になる。
【0082】
いうまでもないが、上記の効果は、光フィルタ・チップ35とレセプタクル用部材37との間でも同様の効果を得ることが可能である。その場合は合計でARコートの実施を最大6回省くことが可能になり、さらに安価なROSAを提供することが可能である。
【0083】
図10は、
図8を用いて説明した調心用導波路付きLAN−WDM信号分波用アレイ導波路格子型光フィルタに、
図9A、
図9B、
図9C、
図9Dを用いて説明した実装方法でレセプタクル用部材37と、光レンズ・アレイ36と、PDアレイを集積した部材38とを実装したROSAモジュールの受光感度の波長依存性を示す図である。光フィルタ・チップ35のサイズは長さ8.2mm、幅4.9mmと小型であるが十分な分波特性を満たしていることが判る。
【0084】
以上の実施形態では、ROSAとして用いられる光合分波器を例に挙げて説明したが、これに限定されず、光の対称性から、上記光合分波器はTOSAとして用いることもできる。