(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔排水処理システム〕
図1は、本発明の排水処理システムの一例を示す概略構成図である。排水処理システムは、原水槽(図示略)からの排水を活性汚泥中の好気性微生物によって生物処理する曝気槽10と;曝気槽10にて生物処理された曝気槽混合水を汚泥と上澄み液とに固液分離する沈殿槽20と;沈殿槽20からの上澄み液を活性汚泥中の好気性微生物によって生物処理すると同時に、膜モジュール35によって汚泥と透過水(処理水)とに固液分離する膜分離活性汚泥処理装置30と;原水槽からの排水を曝気槽10に供給する排水流路50と;曝気槽10にて生物処理された曝気槽混合水を沈殿槽20に移送する曝気槽混合水流路51と;沈殿槽20からの上澄み液を膜分離活性汚泥処理装置30に移送する上澄み液流路52と;沈殿槽20からの余剰汚泥を排出する余剰汚泥流路53と;沈殿槽20からの余剰汚泥の一部を曝気槽10に返送する返送汚泥流路54と;膜分離活性汚泥処理装置30からの透過水を排出する透過水流路55と;膜分離活性汚泥処理装置30からの余剰汚泥を排出する余剰汚泥流路56と;薬液を膜モジュール35に供給する薬液流路59とを具備する。
【0016】
(曝気槽)
曝気槽10は、槽本体11と;槽本体11内の底部近傍に配置された散気管12と;散気管12にエアを供給するブロア13と;散気管12とブロア13とを接続するエア導入管14とを具備する。
【0017】
(沈殿槽)
沈殿槽20は、曝気槽10から移送された曝気槽混合水を、重力沈降によって汚泥と上澄み液とに固液分離できるものであればよく、特に限定はされない。沈殿槽20は、一般的な沈殿池であってもよい。
【0018】
(膜分離活性汚泥処理装置)
膜分離活性汚泥処理装置30は、槽本体31と;槽本体31内の底部近傍に配置された散気管32と;散気管32にエアを供給するブロア33と;散気管32とブロア33とを接続するエア導入管34と;槽本体31内かつ散気管32の上方に配置された膜モジュール35と;透過水流路55の途中に設けられ、膜モジュール35内を減圧にすることによって汚泥と透過水(処理水)との固液分離を行い、かつ透過水を逆浸透膜ろ過装置40へと送り出す吸引ポンプ36と;薬液流路59の途中に設けられ、逆洗用の薬液等を膜モジュール35に送り出す逆洗ポンプ37とを具備する。
【0019】
膜モジュール35としては、公知のろ過膜を備えた公知の膜モジュールが挙げられる。
ろ過膜の種類としては、精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)が好ましい。ろ過膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜、袋状膜等が挙げられる。これらのうち、容積ベースで比較した場合に膜面積の高度集積が可能であることから、中空糸膜が好ましい。
【0020】
ろ過膜の材質としては、有機材料(セルロース、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等)、金属(ステンレス等)、無機材料(セラミック等)が挙げられる。ろ過膜の材質は、排水の性状に応じて適宜選択する。
【0021】
ろ過膜の孔径は、処理の目的に応じて適宜選択すればよい。膜分離活性汚泥法において、ろ過膜の孔径は、0.001〜3μmが好ましい。孔径が0.001μm未満では、膜の抵抗が大きくなる。孔径が3μmを超えると、活性汚泥を完全に分離することができないため、透過水の水質が悪化するおそれがある。ろ過膜の孔径は、精密ろ過膜の範囲とされる0.04〜1.0μmがより好ましい。
【0022】
膜分離活性汚泥処理装置30においては、
図2および
図3に示すような、散気管32と膜モジュール35とが一体化された膜ユニットを用いてもよい。
膜ユニットは、散気発生装置60と;散気発生装置60の上部に設けられた膜モジュール35と;膜モジュール35の上部に設けられた集水ヘッダ80とを具備する。
【0023】
散気発生装置60は、上下が開口した平面視矩形のケーシング61と;ケーシング61の4隅から下方に向かって延びる支柱62と;ケーシング61の外壁に設けられ、ブロア33からエア導入管34を通って供給されるエアをケーシング61内に供給する接続管63と;ケーシング61の内壁に沿って設けられ、接続管63に連通するエア供給ヘッダ64と;エア供給ヘッダ64に直交してその内壁64aに接続された複数の散気管32とを具備する。
【0024】
散気管32は、ブロア33から供給されるエアを上方へ吐出するものであり、穴あきの単管やメンブレンタイプのものから構成され、一端はエア供給ヘッダ64に接続され、他端は閉塞されている。
【0025】
膜モジュール35は、散気発生装置60の4隅から上方に向かって延びるフレーム65と;フレーム65に支持され、かつ平行に配列された複数の中空糸膜エレメント70と;4方の側面を覆うケーシング66とを具備する。
【0026】
中空糸膜エレメント70は、長手方向に沿って形成された通路(図示略)を内部に有し、この通路の一端に形成されて縦杆72の通路と連通する透過水取出口71aを有する下枠71と;下枠71の両端から上方に向かって延び、長手方向に沿って形成された通路(図示略)を内部に有する一対の縦杆72、73と;縦杆72、73の上端に設けられ、長手方向に沿って形成された通路(図示略)を内部に有し、この通路の一端に形成された透過水取出口74aを有する上枠74と;透過水取出口74aに連結された、上方へ向けて屈曲するL字継手75と;縦杆72、73に沿い、水面に対して鉛直方向に配列された多数の中空糸膜76aからなる中空糸膜シート76と;上枠74および下枠71の内部の通路に中空糸膜76aの端部が開口された状態にて、中空糸膜76aの上端および下端を、それぞれ上枠74、下枠71に液密に固定、支持するポッティング材77とを具備する。
【0027】
中空糸膜シート76を構成する中空糸膜76aの本数は、中空糸膜シート76の1枚あたり500〜3000本が好ましい。中空糸膜76aの本数が500本未満では、中空糸膜の膜面積が低下し、単位容積あたりの透水量が低下する。中空糸膜76aの本数が3000本を超えると、膜ユニットの設置面積が大きくなりすぎる。
【0028】
中空糸膜76aは、弛みを有して水面に対して略鉛直方向に配列されることが好ましい。中空糸膜76aが水面に対して略鉛直方向に配列されることによって、中空糸膜76aの表面に固形分が堆積しにくくなり、また、散気管32からのエアによって中空糸膜76aの表面が効率よく洗浄される。また、中空糸膜76aが弛みを有することによって、散気管32からのエアによって中空糸膜76aが遥動し、中空糸膜76aの表面が効率よく洗浄される。
【0029】
集水ヘッダ80は、中空糸膜エレメント70の配列方向に沿って設けられる。集水ヘッダ80は、長手方向に沿って形成された複数の集水口80aと;一端が集水口80aに連結され、他端が中空糸膜エレメント70のL字継手75に連結される、下方に屈曲するL字継手81と;集水ヘッダ80の上面に設けられ、透過水流路55に接続される吸水口80bとを有する。
【0030】
(逆浸透膜ろ過装置)
排水処理システムは、
図4に示すように、膜モジュール35を透過し、透過水流路55から排出された透過水を逆浸透膜によってろ過する逆浸透膜ろ過装置40と;逆浸透膜ろ過装置40を透過した精製水を排出する精製水流路57と;逆浸透膜ろ過装置40を透過しなかった濃縮水を排出する濃縮水流路58とをさらに具備していてもよい。
【0031】
逆浸透膜ろ過装置40は、1つ以上の逆浸透膜モジュールを具備するものである。
逆浸透膜モジュールは、逆浸透膜を透過した精製水と逆浸透膜を透過しない濃縮水とを分離できる形態であればよく、特に限定はされない。
【0032】
逆浸透膜モジュールとしては、例えば、集水管のまわりに逆浸透膜を巻き回した円柱状の逆浸透膜エレメントを円筒状のケーシングに収納した、いわゆるスパイラル型逆浸透膜モジュール等が挙げられる。
逆浸透膜の材質としては、ポリアミド、ポリスルフォン、セルロースアセテート等が挙げられ、芳香族ポリアミドまたは架橋芳香族ポリアミドを含むポリアミドが好ましい。
【0033】
図5は、スパイラル型逆浸透膜モジュールの一例を示す斜視および一部断面図である。スパイラル型逆浸透膜モジュール41は、逆浸透膜42の中央に、複数の集水孔43aが形成された集水管43を置いた状態で逆浸透膜42を二つ折りにし、逆浸透膜42の間に通液性支持繊維44を挟んだ状態で重なった逆浸透膜42の3辺を接着し、二重の逆浸透膜42に網目スペーサ45を重ねた状態で集水管43を中心に二重の逆浸透膜42を円柱状に巻いて逆浸透膜エレメント46とし、この逆浸透膜エレメント46を円筒状のケーシング47に収納したものである。
【0034】
〔排水処理方法〕
図1の排水処理システムを用いた排水処理方法は、下記のステップ(a)〜(c)を有し、
図4の排水処理システムを用いた排水処理方法は、下記のステップ(a)〜(d)を有する。
(a)曝気槽10にて、COD
cr容積負荷を1〜3〔COD
cr−kg/m
3/日〕に保ちつつ、原水槽(図示略)からの排水を活性汚泥中の好気性微生物によって生物処理するステップ。
(b)沈殿槽20にて、曝気槽10にて生物処理された曝気槽混合水を固液分離するステップ。
(c)膜分離活性汚泥処理装置30にて、COD
cr容積負荷を0.1〜0.5〔COD
cr−kg/m
3/日〕に保ちつつ、沈殿槽20からの上澄み液を活性汚泥中の好気性微生物によって生物処理すると同時に、膜モジュール35によって汚泥と透過水(処理水)とに固液分離するステップ。
(d)必要に応じて逆浸透膜ろ過装置40にて、膜モジュール35を透過した透過水(処理水)を逆浸透膜によってろ過するステップ。
【0035】
(排水)
本発明において処理される排水は、COD
cr/BOD
5が3〜10であることが好ましい。
COD
cr/BOD
5が3未満であれば、易(生物)分解性であり、1段でも分解可能であり、2段で処理する場合、2段目の容積負荷を通常通りの負荷としても目標の処理水質が得られる。COD
cr/BOD
5が10を超えると、極めて難分解であり、本発明の対応範囲外である。
COD
crは、二クロム酸カリウムによる酸素消費量であり、JIS K0102にしたがって測定する。
BOD
5は、5日間生物化学的酸素要求量であり、JIS K0102にしたがって測定する。
【0036】
COD
crおよびBOD
5が上述した範囲を満たす排水としては、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸を製造する際に排出される排水、たとえば、アルキル基を有する芳香族炭化水素を酸化して粗芳香族カルボン酸スラリーとする酸化工程、該粗芳香族カルボン酸スラリーを固液分離等により粗芳香族カルボン酸を回収する第一固液分離工程、該粗芳香族カルボン酸を水等に溶解した後に水素添加処理し、水素添加処理液とする水素添加処理工程、該水素添加処理液を晶析して芳香族カルボン酸スラリーとする晶析工程、該芳香族カルボン酸スラリーを固液分離して芳香族カルボン酸ケーキとする第二固液分離工程および該芳香族カルボン酸ケーキを乾燥して芳香族カルボン酸を得る乾燥工程等から構成される芳香族カルボン酸の製造工程においてにおいて排出される排水が挙げられる。尚、本発明における芳香族カルボン酸の製造プロセスにおける排水とは前記各工程のいずれかの工程から排出される排水である。本発明の排水処理システムおよび排水処理方法は、このような排水の処理に好適である。
【0037】
酸化工程に使用するアルキル基を有する芳香族炭化水素の具体例としてはm−ジイソプロピルベンゼン、m−シメン、p−シメン、パラキシレン、メタキシレン、オルトキシレン等のジアルキルベンゼン類;ジメチルナフタレン類、ジエチルナフタレン類、ジイソプロピルナフタレン類などのジアルキルナフタレン類;ジメチルビフェニル類などのジアルキルビフェニル類などがあげられ、好ましくジアルキルベンゼン類であり、更に好ましくはパラキシレンである。
【0038】
前記酸化工程においては、溶媒中にて前記アルキル基を有する芳香族炭化水素を酸化することが好ましい。更に、前記酸化工程は触媒の存在下行うことが好適である。前記酸化工程は、通例、分子状酸素含有ガスにより酸化を行うことが好ましい。前記酸化工程においては、粗芳香族カルボン酸スラリーが生成される。尚、前記酸化工程においては、一旦酸化反応を行った後に、未反応物物や不完全酸化物をなくすために再度酸化反応を行う(追酸化と称する場合がある)ことが好ましい。
【0039】
第一固液分離工程においては、前記粗芳香族カルボン酸スラリーと母液に固液分離して粗芳香族カルボン酸ケーキを回収した後、洗浄及び乾燥を行って粗芳香族カルボン酸を得る工程である。
【0040】
水素添加処理工程は、上記粗芳香族カルボン酸を水等に溶解して、水素添加により水素添加処理液とする工程である。
【0041】
晶析工程は、上記水素添加処理液を晶析して芳香族カルボン酸スラリーを得る工程である。
【0042】
第二固液分離工程は、上記芳香族カルボン酸スラリーと分離母液に固液分離して、芳香族カルボン酸ケーキと分離母液とに分離する工程である。
【0043】
乾燥工程は、上記芳香族カルボン酸ケーキを乾燥させて、芳香族カルボン酸を得る工程である。
【0044】
酸化工程からは、酸化反応のために導入される分子状酸素含有ガスに伴って、溶媒及び未反応のp−キシレン等のアルキル基を含有する芳香族炭化水素を含有するガスが排出される。該ガスをアルカリ水などと接触洗浄した後、大気放出され、酸化排ガス洗浄水が排水として排出される。
【0045】
第一固液分離工程からは、固液分離された母液が発生する。該母液の一部は前記酸化工程に戻して再利用する。再利用に供されない母液は好ましくは触媒を回収した後に、洗浄排水とともに排水として排出される。
【0046】
晶析工程からは、晶析する際に、生じる蒸気を冷却して得られる晶析時発生凝縮水が発生する。晶析時発生凝縮水は排水として排出される。
【0047】
第二固液分離工程においては、芳香族カルボン酸ケーキが固液分離されると共に、分離母液が発生する。該分離母液は放圧冷却等により析出分を濾過分離し、排水として排出される。
上記第二固液分離工程及び乾燥工程からはこの他に、ベントガスを一括してスクラバーで処理する際に発生するベントガス洗浄水が排水として排出される。
【0048】
(ステップ(a))
テレフタル酸等の芳香族カルボン酸を製造する際に排出され、原水槽(図示略)に貯留された排水を、排水流路50を経て曝気槽10に供給する。
曝気槽10に供給する排水については、あらかじめ粗大な浮遊物質、土砂等を除去したり、pHを調整したり、希釈したりしてもよい。
【0049】
曝気槽10においては、ブロア13を作動させて散気管12からエアを導入し、活性汚泥中の好気性微生物に酸素を与えることによって排水の生物処理を行う。この生物処理によって、排水中の芳香族化合物(芳香族カルボン酸等)等を脂肪族カルボン酸(酢酸等)等に分解する。
【0050】
芳香族カルボン酸としては、テレフタル酸、パラトルイル酸、安息香酸、4−カルボキシベンズアルデヒド、これらの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。
好気性微生物は、酸素を用いて芳香族化合物等を分解できる細菌等である。このような細菌としては、アルカリゲネス属、ロドコッカス属等が挙げられる。
【0051】
曝気槽10内のMLSS(混合水中浮遊物質)は、1000〜10000mg/Lが好ましく、2000〜8000mg/Lがより好ましい。MLSSが1000mg/L未満では、好気性微生物が不足し、排水の生物処理を十分に行えないおそれがある。MLSSが10000mg/Lを超えると、汚泥が水面に浮上し、汚泥が流出するおそれがある。
【0052】
曝気槽10においては、COD
cr容積負荷を1〜3〔COD
cr−kg/m
3/日〕に保つように運転を行う。COD
cr容積負荷が1〔COD
cr−kg/m
3/日〕未満では、処理時間が長くなる。COD
cr容積負荷が3〔COD
cr−kg/m
3/日〕を超えると、排水の生物処理を十分に行えない。COD
cr容積負荷は、時間あたりに処理される排水中のCOD
crに応じて、水理学的滞留時間(HRT)を調整することによって、上述の範囲に調整できる。
【0053】
(ステップ(b))
曝気槽10にて生物処理された曝気槽混合水を、曝気槽混合水流路51を経て沈殿槽20に移送する。
沈殿槽20においては、曝気槽混合水を、重力沈降によって汚泥と上澄み液とに固液分離する。
【0054】
分離された余剰汚泥は、余剰汚泥流路53を経て排出される。また、余剰汚泥には、好気性微生物が含まれているため、余剰汚泥の一部を、返送汚泥流路54を経て曝気槽10に返送し、再び排水の生物処理に用いる。なお、曝気槽10の好気性微生物の種類は、膜分離活性汚泥処理装置30の好気性微生物の種類と異なるため、曝気槽10からの余剰汚泥は、膜分離活性汚泥処理装置30に返送しないことが好ましい。
【0055】
上澄み液のCOD
crは、200mg/L以上が好ましい。上澄み液のCOD
crを200mg/L未満にしようとすると、曝気槽10における生物処理の負担が大きくなりすぎる。また、膜分離活性汚泥処理装置30における好気性微生物がエネルギー源とする有機物が不足し、生物処理が不十分となるおそれがある。
【0056】
沈殿槽20において好気性微生物を含む汚泥を分離した後、上澄み液のみを膜分離活性汚泥処理装置30に移送することによって、曝気槽10における好気性微生物の種類と、膜分離活性汚泥処理装置30における好気性微生物の種類とが異なるものとなる。すなわち、曝気槽10における有機物の種類(芳香族化合物等)と、膜分離活性汚泥処理装置30における有機物の種類(脂肪族カルボン酸等)とが異なるため、自然に、曝気槽10と膜分離活性汚泥処理装置30のそれぞれにおいて、異なる有機物を好物とする異なる好気性微生物が増殖することとなる。
なお、沈殿槽20の代わりに、曝気槽10へ膜分離装置を設置し、膜による固液分離を行ってもよい。
【0057】
もし、沈殿槽20を介さずに、曝気槽10の曝気槽混合水を膜分離活性汚泥処理装置30に移送した場合、膜分離活性汚泥処理装置30において、曝気槽10と異なる好気性微生物が増殖しにくくなくなるため、曝気槽10および膜分離活性汚泥処理装置30における好気性微生物の種類がほぼ同じになる。そのため、膜分離活性汚泥処理装置30において、脂肪族カルボン酸等を好物とする異なる好気性微生物が増殖しにくくなり、膜分離活性汚泥処理装置30における脂肪族カルボン酸等の生物処理が不十分となる。
【0058】
(ステップ(c))
沈殿槽20の上澄み液を、上澄み液流路52を経て膜分離活性汚泥処理装置30に移送する。
沈殿槽20からの上澄み液には、混合後のCOD
cr、BOD
5が上述する排水の範囲を超えない程度であれば、他の液(COD
crの高い他の排水等)を混合してもよい。
【0059】
膜分離活性汚泥処理装置30においては、ブロア33を作動させて散気管32からエアを導入し、活性汚泥中の好気性微生物に酸素を与えることによって上澄み液の生物処理を行う。この生物処理によって、排水中の脂肪族カルボン酸(酢酸等)等を二酸化炭素等に分解する。
好気性微生物は、酸素を用いて脂肪族カルボン酸等を分解できる細菌等である。
【0060】
膜分離活性汚泥処理装置30内のMLSS(混合水中浮遊物質)は、3000〜15000mg/Lが好ましく、5000〜10000mg/Lがより好ましい。MLSSが3000mg/L未満では、好気性微生物が不足し、上澄み液の生物処理を十分に行えないおそれがある。MLSSが15000mg/Lを超えると、汚泥の粘度上昇に伴い流動性が悪化し、膜面の洗浄効率が低下し、閉塞するおそれがある。
【0061】
膜分離活性汚泥処理装置30においては、COD
cr容積負荷を0.1〜0.5〔COD
cr−kg/m
3/日〕に保つように運転を行う。COD
cr容積負荷が0.1〔COD
cr−kg/m
3/日〕未満では、処理時間が長くなる。COD
cr容積負荷が0.5〔COD
cr−kg/m
3/日〕を超えると、上澄み液の生物処理を十分に行えない。COD
cr容積負荷は、時間あたりに処理される上澄み液のCOD
crに応じて、水理学的滞留時間(HRT)を調整することによって、上述の範囲に調整できる。
【0062】
また、膜分離活性汚泥処理装置30においては、吸引ポンプ36を作動させて膜モジュール35内を減圧にすることによって、混合水を汚泥と透過水(処理水)とに固液分離する。この際、散気管32からエアを膜モジュール35に導入することによって、中空糸膜76aの表面を洗浄しながら、効率よく固液分離を行うことができる。
【0063】
分離された余剰汚泥は、余剰汚泥流路56を経て排出される。また、余剰汚泥には、好気性微生物が含まれているため、余剰汚泥の一部を、膜分離活性汚泥処理装置30に返送し、再び上澄み液の生物処理に用いてもよい。なお、膜分離活性汚泥処理装置30の好気性微生物の種類は、曝気槽10の好気性微生物の種類と異なるため、膜分離活性汚泥処理装置30からの余剰汚泥は、曝気槽10に返送しないことが好ましい。
【0064】
透過水(処理水)のCOD
crは、少ないほど好ましく、具体的には80mg/L以下が好ましい。透過水のCOD
crが80mg/L以下であれば、環境に与える影響が十分に小さくなる。
【0065】
(ステップ(d))
膜分離活性汚泥処理装置30からの透過水(処理水)は、そのまま外部に放流してもよい。ただし、透過水は、芳香族カルボン酸を製造する際に用いた触媒等に由来する金属イオン等を含むため、電気伝導率が高い。よって、膜分離活性汚泥処理装置30からの透過水を、透過水流路55を経て逆浸透膜ろ過装置40に移送し、透過水中のイオンを逆浸透膜42によって取り除くことが好ましい。
【0066】
逆浸透膜ろ過装置40のスパイラル型逆浸透膜モジュール41において、透過水(処理水)は、円柱状の逆浸透膜エレメント46の一方の端面に形成される透過水入口41aに導入され、網目スペーサ45で形成される流路を流れる。この間に透過水の一部は、逆浸透膜42を透過して精製水となり、通液性支持繊維44で形成された流路を通って集水管43に導かれ、集水管43の端部の精製水出口41bから排出される。一方、逆浸透膜42を透過しなかった透過水は、濃縮水となって逆浸透膜エレメント46の他方の端面に形成される濃縮水出口41cから排出される。
【0067】
逆浸透膜ろ過装置40を透過した精製水は、精製水流路57を経て芳香族カルボン酸の製造設備等に移送され、冷却水等として再利用される。
逆浸透膜ろ過装置40を透過しなかった濃縮水は、濃縮水流路58を経て外部に放流される。濃縮水は、塩素等で滅菌した後、放流してもよい。
【0068】
(作用効果)
以上説明した本発明の本発明の排水処理システムおよび排水処理方法にあっては、曝気槽10にて、COD
cr容積負荷を1〜3〔COD
cr−kg/m
3/日〕に保ちつつ、活性汚泥中の好気性微生物によって排水の生物処理を行い、かつ膜分離活性汚泥処理装置30にて、COD
cr容積負荷を0.1〜0.5〔COD
cr−kg/m
3/日〕に保ちつつ、活性汚泥中の好気性微生物によって沈殿槽20からの上澄み液の生物処理を行うため、透過水(処理液)のCOD
crを、従来の排水処理システムおよび排水処理方法に比べ十分に低減できる。
【0069】
また、沈殿槽20において好気性微生物を含む汚泥を分離した後、上澄み液のみを膜分離活性汚泥処理装置30に移送することによって、曝気槽10における好気性微生物の種類と、膜分離活性汚泥処理装置30における好気性微生物の種類とが異なるものとなるため、曝気槽10および膜分離活性汚泥処理装置30における生物処理を異なる好気性微生物によって効率よく行うことができ、透過水(処理液)のCOD
crを十分に低減できる。
また、膜分離活性汚泥処理装置30にて処理を行うため、曝気槽および沈殿槽のみの従来の排水処理システムおよび排水処理方法に比べ処理時間を短縮できる。
また、曝気槽および沈殿槽の代わりに膜分離活性汚泥処理装置30を用いるため、曝気槽および沈殿槽の組み合わせを2段有する従来の排水処理システムおよび排水処理方法に比べ沈殿槽の数が減り、システムの設置面積を小さくできる。
【0070】
(他の形態)
なお、本発明の排水処理システムおよび排水処理方法は、膜分離活性汚泥処理装置を用いるシステムおよび方法であればよく、図示例の排水処理システムおよびこれを用いる排水処理方法に限定はされない。
【0071】
たとえば、膜分離活性汚泥処理装置30からの透過水(処理水)を冷却水等として再利用しない場合は、逆浸透膜ろ過装置40を省略しても構わない。
また、膜分離活性汚泥処理装置は、図示例のように、活性汚泥中の好気性微生物による生物処理と膜モジュールによる固液分離処理とを1つの槽で行う一体型であってもよく、活性汚泥中の好気性微生物による生物処理と膜モジュールによる固液分離処理とを別々の槽で行う槽別置型であってもよい。
【0072】
〔テレフタル酸の製造方法〕
テレフタル酸の製造方法の一つの事例を、下記の工程(I)〜(VI)として示す。
(I)触媒、助触媒の存在下、水および酢酸を含む溶媒中にて、パラキシレンを液相酸化して粗テレフタル酸スラリーを得る工程。
(II)粗テレフタル酸スラリーを固液分離して、粗テレフタル酸を回収する工程。
(III)粗テレフタル酸を水に溶解させた水溶液を、水素添加処理する工程。
(IV)水素添加処理した水溶液からテレフタル酸を晶析させて、テレフタル酸スラリーを得る工程。
(V)テレフタル酸スラリーを固液分離して、テレフタル酸を回収する工程。
(VI)前記工程(I)〜(V)から排出される排水を処理する工程。
【0073】
(工程(I))
パラキシレンを、酢酸等の脂肪族カルボン酸を含む溶媒中にて、触媒、助触媒の存在下、空気中の酸素によって酸化する。このとき、酸化により生じる水が、溶媒とともに反応蒸気として留出する。
触媒としては、コバルト、マンガン等の遷移金属の化合物を主成分とする触媒および/またはハロゲン化水素等の臭素化合物が挙げられる。
【0074】
(工程(II))
パラキシレンの酸化によって生成されたテレフタル酸、その中間体、不純物を含む混合スラリーから、粗テレフタル酸結晶をさらに析出させ、粗テレフタル酸スラリーを得る。粗テレフタル酸スラリーを、分離母液と粗テレフタル酸ケーキとに固液分離する。
粗テレフタル酸ケーキを乾燥させ、粗テレフタル酸結晶を得る。
【0075】
(工程(III))
粗テレフタル酸結晶は、不純物として酸化中間体である4−カルボキシベンズアルデヒドを含んでいるため、テレフタル酸結晶を得るためには、粗テレフタル酸結晶中の4−カルボキシベンズアルデヒドを水溶性の高いパラトルイル酸に還元し、溶解度の差によってパラトルイル酸を分離する必要がある。
粗テレフタル酸結晶を高温高圧下で水等に溶解させる。得られた水溶液を、水素によって処理することによって、水溶液中の4−カルボキシベンズアルデヒドをパラトルイル酸に還元する。
【0076】
(工程(IV))
得られた還元処理液を、放圧冷却させてテレフタル酸結晶を析出させ、テレフタル酸スラリーを得る。放圧冷却とは、高圧状態にある液体を、より低圧な状態へ急激に移行させることによって、蒸発および冷却させることをいう。このとき、パラトルイル酸等の不純物を同伴した晶析蒸気が得られる。
【0077】
(工程(V))
テレフタル酸スラリーを、分離母液とテレフタル酸ケーキとに固液分離する。
テレフタル酸ケーキを乾燥させ、テレフタル酸結晶を得る。
分離母液からは、濃縮や冷却によってパラトルイル酸等の不純物を含む結晶を回収し、原料として再利用するために工程(I)に返送する。また、回収しきれなかった芳香族化合物を含む水溶液は、一部は工程(III)に返送して溶媒として利用してもよいが、一部または全部は排水として処理する。
【0078】
(工程(VI))
工程(I)〜(V)から排出される、反応蒸気、水成分、晶析蒸気、芳香族化合物を含む水溶液等の一部は、回収し切れなかった有機物を含んだまま、排水処理される。また、上述した工程以外からも、有機物を含む排水が出ることがある。さらに、テレフタル酸の製造設備を洗浄する際の洗浄水も、有機物を含む排水となる。これらの排水を処理する際に、本発明の排水処理システムおよび排水処理方法を用いると、テレフタル酸を製造する際に排出される排水のCOD
crを大きく減少させることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
(排水)
触媒として酢酸コバルトおよび酢酸マンガンとし、助触媒として臭化水素の存在下、水および酢酸を含む溶媒中にて、パラキシレンを液相酸化して粗テレフタル酸スラリーとした。次いで粗テレフタル酸スラリーを固液分離により母液と粗テレフタル酸ケーキとした。粗テレフタル酸ケーキは水洗、乾燥し、粗テレフタル酸として回収した。回収した粗テレフタル酸と水を水添反応器に入れ、水素を用いて水素添加処理し、テレフタル酸を含むスラリーとし、その後、テレフタル酸を回収した。前記固液分離において分離された母液から触媒を回収した後に、洗浄排水と共に排出された排水を用意した。この排水の性状を表1に示す。
【0081】
〔実施例1〕
排水処理システムとしては、
図1の排水処理システムを用いた。
膜ユニットとしては、散気管32と膜モジュール35とが一体化された
図2に示す膜ユニットを用いた。
曝気槽10および膜分離活性汚泥処理装置30の水槽容量を表1に示す。
【0082】
この排水システムを用いて排水処理を行った。
処理水量は、表1に示す水量とした。
曝気槽10のMLSS濃度、HRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷は、表1に示す値とした。
膜分離活性汚泥処理装置30のMLSS濃度、HRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷は、表1に示す値とした。
沈殿槽20からの返送汚泥量は、表1に示す量とした。
沈殿槽20からの上澄み液および膜モジュール35からの透過水(処理水)の性状を表1に示す。
【0083】
〔実施例2、3〕
処理水量を表1に示す水量に変更し、曝気槽10のHRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷を表1に示す値に変更し、膜分離活性汚泥処理装置30のHRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
沈殿槽20からの上澄み液および膜モジュール35からの透過水(処理水)の性状を表1に示す。
【0084】
〔比較例1〕
排水処理システムとしては、
図6に示す従来の排水処理システムを用いた。
第1の曝気槽101および第2の曝気槽103の水槽容量を表1に示す。
【0085】
この排水システムを用いて排水処理を行った。
処理水量は、表1に示す水量とした。
第1の曝気槽101のMLSS濃度、HRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷は、表1に示す値とした。
第2の曝気槽103のMLSS濃度、HRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷は、表1に示す値とした。
第1の沈殿槽102からの返送汚泥量および第2の沈殿槽104からの返送汚泥量は、表1に示す量とした。
第1の沈殿槽102からの上澄み液および第2の沈殿槽104からの上澄み液(処理水)の性状を表1に示す。
【0086】
〔比較例2、3〕
処理水量を表1に示す水量に変更し、曝気槽10のHRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷を表1に示す値に変更し、膜分離活性汚泥処理装置30のHRT(水理学的滞留時間)、COD
cr容積負荷を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
沈殿槽20からの上澄み液および膜モジュール35からの透過水(処理水)の性状を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(結果)
実施例1〜3は、処理水水質が良好で、滞留時間も小さいため設置面積が小さくなる。一方、膜分離を用いない比較例1は、処理水質は実施例1より多少悪い程度であるが、第2の沈殿槽を用いるため、設置面積が大きくなる。比較例2は、高負荷のため曝気槽10での処理が十分ではなく、膜分離活性汚泥処理装置30への負荷が大きくなり、結果として、処理水の水質が、満足できない。また、比較例3は、処理水質は、満足できるが滞留時間が長くなり設置面積が広大となる。