(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016569
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】表面保護テープの剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20161013BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
H01L21/304 622P
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-230048(P2012-230048)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-82380(P2014-82380A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 一寛
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−047722(JP,A)
【文献】
特開2008−288485(JP,A)
【文献】
特開2004−346277(JP,A)
【文献】
特開2009−231533(JP,A)
【文献】
特開2012−015231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のバンプを有するとともに該バンプを介して表面に表面保護テープが貼着されたウエーハから該表面保護テープを剥離する表面保護テープの剥離方法であって、
表面に複数のバンプを有するとともに該バンプを介して表面に表面保護テープが貼着されたウエーハを減圧雰囲気中に載置して、該バンプの下方縮径部の外周側に残存する空気を膨張させる空気膨張ステップと、
該空気膨張ステップを実施した後、該表面保護テープをウエーハから剥離する剥離ステップと、
を備えたことを特徴とする表面保護テープの剥離方法。
【請求項2】
前記剥離ステップは、前記空気膨張ステップに引き続いて減圧雰囲気中で実施される請求項1記載の表面保護テープの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプ付きウエーハに貼着された表面保護テープの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、シリコンや化合物半導体からなるウエーハ表面にストリートと呼ばれる格子状の分割予定ラインが形成され、分割予定ラインによって区画される各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。これらのウエーハは裏面が研削されて所定の厚みへと薄化された後、ストリートに沿って切削装置等によって分割されることで個々の半導体デバイスが製造される。
【0003】
ウエーハの裏面研削には、例えば特開2002−200545号公報で開示されるような研削装置が用いられる。研削装置のチャックテーブルでウエーハの表面側を表面保護テープを介して保持し、ウエーハの裏面に研削砥石を当接しつつ摺動させ、研削砥石を研削送りすることで研削が遂行される。
【0004】
近年、半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術として、デバイス表面にバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に相対させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている(例えば、特開2001−237278号公報参照)。
【0005】
表面にバンプを有するウエーハを研削するためには、表面に形成されたバンプ付きデバイスを保護するために、ウエーハの表面にバンプを埋め込むような十分厚い糊層を有する表面保護テープを貼着するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−200545号公報
【特許文献2】特開2001−237278号公報
【特許文献3】特開2012−79911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バンプ付きウエーハに表面保護テープを貼着すると、バンプの下方の縮径部の外周側とウエーハ表面との僅かな隙間に表面保護テープの糊が入り込む。バンプ付きウエーハに表面保護テープを貼着した後、ウエーハ裏面の研削工程を実施し、更に洗浄工程等を経て一定の時間が経過した後に表面保護テープをウエーハから剥離する。
【0008】
しかし、表面保護テープをウエーハから剥離しても、表面保護テープをウエーハに貼着してから一定の時間が経過しウエーハやバンプに対して密着性が向上した糊は、バンプの下方の縮径部の外周側とウエーハ表面との僅かな隙間に残存してしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バンプの下方の縮径部の外周側とウエーハ表面との僅かな隙間に表面保護テープの糊残りが生じる恐れを低減可能な表面保護テープの剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、表面に複数のバンプを有するとともに該バンプを介して表面に表面保護テープが貼着されたウエーハから該表面保護テープを剥離する表面保護テープの剥離方法であって、表面に複数のバンプを有するとともに該バンプを介して表面に表面保護テープが貼着されたウエーハを減圧雰囲気中に載置して、該バンプの下方縮径部の外周側に残存する空気を膨張させる空気膨張ステップと、該空気膨張ステップを実施した後、該表面保護テープをウエーハから剥離する剥離ステップと、を備えたことを特徴とする表面保護テープの剥離方法が提供される。
【0011】
好ましくは、剥離ステップは、空気膨張ステップに引き続いて減圧雰囲気中で実施される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、表面保護テープをウエーハから剥離する前にバンプ付きウエーハを減圧雰囲気中に載置することで、バンプの下方縮径部とウエーハ表面及び表面保護テープとの間に残存した空気が膨張するため、バンプやウエーハ表面に固着していた糊が一度剥がされる。
【0013】
この状態で、表面保護テープをバンプ付きウエーハから剥離すると、バンプの下方の縮径部の外周側とウエーハ表面との僅かな隙間に表面保護テープの糊残りが生じる恐れを低減できる。
【0014】
減圧雰囲気中で剥離ステップを実施すると、バンプの下方縮径部と表面保護テープとの間に残存していた空気が膨張してバンプやウエーハ表面に固着していた糊が剥がれた状態で表面保護テープが剥離されるため、より確実に糊残りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】バンプ付きウエーハに表面保護テープを貼着する様子を示す分解斜視図である。
【
図3】ウエーハ表面に表面保護テープが貼着された状態の拡大断面図である。
【
図4】研削ステップを示す研削装置の要部斜視図である。
【
図5】研削終了後のウエーハが外周部が環状フレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハユニットの断面図である。
【
図6】空気膨張ステップを説明する減圧チャンバーの断面図である。
【
図7】空気膨張ステップを説明する一部拡大断面図である。
【
図8】剥離ステップを説明する減圧チャンバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1を参照すると、バンプ付きウエーハ11の斜視図が示されている。ウエーハ11は、表面11a及び裏面11bを有しており、表面11aには複数のストリート(分割予定ライン)13が直交して形成されており、ストリート13によって区画された各領域にそれぞれデバイス15が形成されている。
【0017】
図1の拡大図に示すように、各デバイス15の4辺には複数の突起状のバンプ17が形成されている。各デバイス15の4辺にバンプ17が形成されているので、ウエーハ11はバンプ17が形成されているバンプ形成領域19と、バンプ形成領域19を囲繞する外周余剰領域(外周バンプ未形成領域)21を有している。
【0018】
図2を参照すると、ウエーハ11の表面11aに表面保護テープ23を貼着する様子を示す分解斜視図が示されている。表面保護テープ23は、
図3に示すように、ポリエチレン塩化ビニル、ポリオレフィン等の樹脂から形成された基材シート25と、基材シート25上に配設された糊層27とから構成される。
【0019】
図3に示すように、バンプ付きウエーハ11の表面11aに表面保護テープ23を貼着すると、バンプ17の下方縮径部17aと表面保護テープ23との間には僅かな隙間29が生じ、この隙間29には空気が残存した状態となる。
【0020】
ウエーハ11の表面11aに表面保護テープ23を貼着後、
図4に示すように、研削装置のチャックテーブル10で表面保護テープ23側を吸引保持し、ウエーハ11の裏面11bを露出させて研削ユニット12によりウエーハ11の裏面11bの研削を実施する。
【0021】
研削ユニット12は、回転駆動されるスピンドル14と、スピンドル14の先端に固定されたホイールマウント16と、ホイールマウント16に複数のねじ20で着脱可能に固定された研削ホイール18とを含んでいる。研削ホイール18は、ホイール基台22と、ホイール基台22の下端部外周側に環状に固着された複数の研削砥石24とから構成される。
【0022】
研削ステップでは、チャックテーブル10を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール18を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、図示しない研削ユニット送り機構を作動して研削ホイール18の研削砥石24をウエーハ11の裏面11bに接触させる。
【0023】
そして、研削ホイール18を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。接触式又は非接触式の厚み測定ゲージによってウエーハ11の厚みを測定しながらウエーハ11を所望の厚み(例えば100μm)に研削する。
【0024】
ウエーハ11の裏面研削終了後、
図5に示すように、表面に表面保護テープ23が貼着されたウエーハ11をダイシングテープTに貼着するとともに、ダイシングテープTの外周部を環状フレームFに貼着してウエーハユニット26を形成する。ウエーハユニット26では、ウエーハ11はダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となる。
【0025】
このようにウエーハユニット26を形成してから、ウエーハユニット26を減圧容器30中に収容し、チャンバー32内を減圧する。ウエーハユニット26が減圧雰囲気中に載置されると、
図7に示すように、バンプ17の下方縮径部17aとウエーハ表面11aとの間の隙間29に残存している空気が膨張して隙間29が拡大し、これに応じてバンプ17やウエーハ表面11aに固着していた糊27が一度剥がされる。
【0026】
このようにバンプ17やウエーハ表面11aに固着していた糊27が一度剥がされるため、ウエーハユニット26を減圧容器30中から取り出して、表面保護テープ23をウエーハ11から剥離すると、バンプ17の下方の縮径部17aの外周側とウエーハ表面11aとの僅かな隙間29に表面保護テープ23の糊残りが生じる恐れを低減できる。
【0027】
好ましくは、
図8に示すように、表面保護テープ23の剥離ステップを減圧容器30中で実施する。この実施形態では、減圧されたチャンバー32中に手袋34,36が配設されている。両手を手袋34,36中に挿入し、片方の手でウエーハユニット26を持ちながら他方の手で表面保護テープ23を剥離する。
【0028】
このように減圧雰囲気中で剥離ステップを実施すると、バンプ17の下方縮径部17aと表面保護テープ23との間の隙間29に残存していた空気が膨張して、バンプ17やウエーハ表面11aに固着していた糊が剥がれた状態で表面保護テープ23がウエーハ11から剥離されるため、より確実に糊残りを防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
11 半導体ウエーハ
15 デバイス
17 バンプ
18 研削ホイール
23 表面保護テープ
25 基材シート
26 ウエーハユニット
27 糊層
29 隙間
30 減圧容器
32 チャンバー
34,36 手袋