特許第6016620号(P6016620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016620
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】硬さ試験機、及び硬さ試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G01N3/42 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-281955(P2012-281955)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126417(P2014-126417A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】有我 幸三
(72)【発明者】
【氏名】川添 勝
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−166923(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0096093(US,A1)
【文献】 特開2001−319219(JP,A)
【文献】 特開昭61−193046(JP,A)
【文献】 特開2000−146794(JP,A)
【文献】 特開2003−004613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記試料の形状を特定可能な試料形状データを取得するデータ取得手段と、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の画像データを取得させる撮像制御手段と、
前記データ取得手段により取得された試料形状データと、前記撮像手段により取得された試料の画像データと、を対応付けるマッチング手段と、
前記マッチング手段により前記試料形状データと前記試料の画像データとが対応付けられた後、前記試料形状データ上に設定されている試験位置に前記圧子により前記くぼみを形成させるくぼみ付け手段と、
前記くぼみ付け手段により前記くぼみが形成された後、前記撮像手段により撮像された当該くぼみに基づいて前記試料の硬さ値を算出する硬さ値算出手段と、
を備えることを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
前記撮像手段により取得された試料の画像データに基づいて、前記試料の表面の画像を表示手段に表示させる表示制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記撮像手段により撮像されたくぼみ及び前記硬さ値算出手段により算出された前記試料の硬さ値に基づいて、試験結果を前記表示手段に更に表示させることを特徴とする請求項2に記載の硬さ試験機。
【請求項4】
前記データ取得手段により取得された試料形状データ上に、前記試験位置を設定する試験位置設定手段を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の硬さ試験機。
【請求項5】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
前記試料の形状を特定可能な試料形状データを取得するデータ取得工程と、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の画像データを取得させる撮像工程と、
前記データ取得工程で取得された試料形状データと、前記撮像工程で取得された試料の画像データと、を対応付けるマッチング工程と、
前記マッチング工程で前記試料形状データと前記試料の画像データとが対応付けられた後、前記試料形状データ上に設定されている試験位置に前記圧子により前記くぼみを形成させるくぼみ付け工程と、
前記くぼみ付け工程で前記くぼみが形成された後、前記撮像手段により撮像された当該くぼみに基づいて前記試料の硬さ値を算出する硬さ値算出工程と、
を含む硬さ試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機、及び硬さ試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビッカース硬さ試験法、ヌープ硬さ試験法など、平面形状が多角形の圧子を試料の表面に押し付け、試料表面に生じる多角形のくぼみの対角線長さより硬さ値を測定する押し込み式の硬さ試験法がよく知られており、金属材料の機械的性質の評価に多く用いられている。
【0003】
従来の硬さ試験機では、例えば、熱処理の硬化層深さ評価等のように、複数点の硬さ試験を行う場合がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、まず、試料の部分画像を複数枚取得する。次に、取得した複数枚の部分画像をつなぎ合わせた画像上で、又はつなぎ合わせた画像を画像処理して輪郭を抽出することにより得られた試料の形状を示す画像上で、複数のくぼみ付け位置を決定することで、複数点の自動硬さ試験が実施されている。
【0004】
硬さ試験におけるくぼみの計測は、高倍率の顕微鏡を用いて行われるため、くぼみ付け位置を決定するプロセスにおいては視野が狭くなるという問題がある。従って、何らかの形で試料の広範囲画像を取得することにより、ユーザが試料の全体像を把握できるようにする必要がある。
ここで、硬化層深さ評価等の試験では、通常、熱処理対象の試料の何処の硬さを知りたいかについて、ユーザの想定、具体的には、試料の寸法を示すCADデータや硬さ試験を行う試験位置を示す計画図が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4261418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の硬さ試験機には、CADデータや計画図を取り込む手段が存在しないため、試料のカメラ画像からの情報を利用して試験位置のプログラミングが行われていた。従って、上記従来のプログラミング方法では、試料の広範囲画像を取得する必要があるなど、プログラミングの容易性を実現することができなかった。即ち、従来の硬さ試験機では、ユーザが予め作成したデータを有効に活用することができず、硬さ試験を効率的に行うことができなかった。
【0007】
本発明は、硬さ試験を効率的に行うことが可能な硬さ試験機、及び硬さ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記試料の形状を特定可能な試料形状データを取得するデータ取得手段と、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の画像データを取得させる撮像制御手段と、
前記データ取得手段により取得された試料形状データと、前記撮像手段により取得された試料の画像データと、を対応付けるマッチング手段と、
前記マッチング手段により前記試料形状データと前記試料の画像データとが対応付けられた後、前記試料形状データ上に設定されている試験位置に前記圧子により前記くぼみを形成させるくぼみ付け手段と、
前記くぼみ付け手段により前記くぼみが形成された後、前記撮像手段により撮像された当該くぼみに基づいて前記試料の硬さ値を算出する硬さ値算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記撮像手段により取得された試料の画像データに基づいて、前記試料の表面の画像を表示手段に表示させる表示制御手段を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の硬さ試験機において、
前記表示制御手段は、前記撮像手段により撮像されたくぼみ及び前記硬さ値算出手段により算出された前記試料の硬さ値に基づいて、試験結果を前記表示手段に更に表示させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の硬さ試験機において、
前記データ取得手段により取得された試料形状データ上に、前記試験位置を設定する試験位置設定手段を更に備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
前記試料の形状を特定可能な試料形状データを取得するデータ取得工程と、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の画像データを取得させる撮像工程と、
前記データ取得工程で取得された試料形状データと、前記撮像工程で取得された試料の画像データと、を対応付けるマッチング工程と、
前記マッチング工程で前記試料形状データと前記試料の画像データとが対応付けられた後、前記試料形状データ上に設定されている試験位置に前記圧子により前記くぼみを形成させるくぼみ付け工程と、
前記くぼみ付け工程で前記くぼみが形成された後、前記撮像手段により撮像された当該くぼみに基づいて前記試料の硬さ値を算出する硬さ値算出工程と、
を含む硬さ試験方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試験前に予め作成されている試料形状データを有効に活用することができるので、硬さ試験を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る硬さ試験機の全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明に係る硬さ試験機の試験機本体を示す模式図である。
図3】本発明に係る硬さ試験機の硬さ測定部を示す模式図である。
図4】本発明に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
図5】本発明に係る硬さ試験機の動作を示すフローチャートである。
図6】試料の試料形状データの一例を示す図である。
図7】モニターに表示される試料の表面の画像の一例を示す図である。
図8】試料形状データとマッチングされた後の試料の表面の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、図1におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X−Y面を水平面とする。
【0016】
硬さ試験機100は、例えば、圧子14a(図3参照)の平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機である。硬さ試験機100は、図1図4に示すように、試験機本体10と、制御部6と、操作部7と、モニター8と、データ取得部9と、を備えて構成されている。
【0017】
試験機本体10は、図2に示すように、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を移動させるXYステージ3と、試料Sの表面に焦点を合わせるためのAFステージ4と、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を昇降する昇降機構部5と、を備えて構成されている。
【0018】
硬さ測定部1は、図3に示すように、試料Sの表面を照明する照明装置11と、試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子14aを備える圧子軸14と対物レンズ15を備え、回転することにより圧子軸14と対物レンズ15との切り替えが可能なターレット16と、を備えて構成されている。
【0019】
照明装置11は、光を照射することにより試料Sの表面を照明するものである。照明装置11から照射される光は、レンズ1a、ハーフミラー1d、ミラー1e、及び対物レンズ15を介して試料Sの表面に到達する。
【0020】
CCDカメラ12は、試料Sの表面から対物レンズ15、ミラー1e、ハーフミラー1d、ミラー1g、及びレンズ1hを介して入力された反射光に基づき、当該試料Sの表面や圧子14aにより試料Sの表面に形成されるくぼみを撮像して画像データを取得する。そして、CCDカメラ12は、複数フレームの画像データを同時に蓄積、格納可能なフレームグラバー17を介して、当該取得した画像データを制御部6に出力する。
即ち、CCDカメラ12は、本発明の撮像手段として機能する。
【0021】
圧子軸14は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動される負荷機構部(図示省略)により試料台2に載置された試料Sに向けて移動され、先端部に備えた圧子14aを試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。本実施形態では、圧子14aとして、ビッカース用の四角錐圧子(対面角が136±0.5°)を使用する。
【0022】
対物レンズ15は、それぞれ異なる倍率からなる集光レンズであって、ターレット16の下面に複数保持されている。対物レンズ15は、ターレット16の回転により試料Sの上方に配置されることで、照明装置11から照射される光を一様に試料Sの表面に照射させる。
【0023】
ターレット16は、下面に圧子軸14と複数の対物レンズ15を取り付け可能に構成される。ターレット16は、Z軸方向を中心に回転することにより、圧子軸14及び複数の対物レンズ15の中の何れか一つを試料Sの上方に配置可能なように構成されている。即ち、圧子軸14を試料Sの上方に配置することで試料Sの表面にくぼみを形成することができ、対物レンズ15を試料Sの上方に配置することで形成されたくぼみを観察することができるようになっている。
【0024】
試料台2は、上面に載置される試料Sを、試料固定部2aで固定する。
XYステージ3は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料台2を圧子14aの移動方向(Z方向)に垂直な方向(X,Y方向)に移動させる。
AFステージ4は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、CCDカメラ12が撮像した画像データに基づき試料台2を微細に昇降させることで、試料Sの表面に焦点を合わせる。
昇降機構部5は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)をZ方向に移動させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
【0025】
操作部7は、キーボード71と、マウス72と、を備えて構成され、硬さ試験を行う際のユーザによる入力操作を受け付ける。そして、操作部7は、ユーザによる所定の入力操作を受け付けると、その入力操作に応じた所定の操作信号を生成して、制御部6へと出力する。
具体的には、操作部7は、ユーザが、くぼみの合焦位置を決定する条件を選択する操作を受け付ける。
また、操作部7は、ユーザが、試料台2(昇降機構部5及びAFステージ4)の移動する範囲(試料台2と対物レンズ15との間の相対距離の範囲)を指定する操作を受け付ける。
また、操作部7は、ユーザが、硬さ試験機100による硬さ試験を実施する際の試験条件値を入力する操作を受け付ける。入力された試験条件値は、制御部6に送信される。ここで、試験条件値とは、例えば、試料Sの材質、圧子14aにより試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率、等の値である。
また、操作部7は、ユーザが、くぼみの合焦位置の決定を手動で行う手動モード又は自動で行う自動モードの何れかを選択する操作を受け付ける。
また、操作部7は、ユーザが、硬さ試験を実施する際の試験位置をプログラミングする操作を受け付ける。
【0026】
モニター8は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されている。モニター8は、操作部7において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果、及びCCDカメラ12が撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
即ち、モニター8は、本発明の表示手段として機能する。
【0027】
データ取得部9は、外部機器と各種データ(例えば映像信号や音声信号等)の送受信を行うインターフェースであり、例えば、USB、HDMI、ブルートゥース、有線LAN、無線LAN等である。データ取得部9では、例えば、試料Sの形状を特定可能な試料形状データが取得される。試料形状データは、例えば、CAD(Computer Aided Design)を利用して作成されたベクターデータ又はビットマップデータである。試料形状データは、例えば、データ取得部9に着脱自在に装着されるCD−ROM(Compact Disk ROM)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc ROM)等の磁気的、光学的記録媒体や、無線通信等を介して接続されるサーバ装置から取得される。
即ち、データ取得部は、本発明のデータ取得手段として機能する。
【0028】
制御部6は、図4に示すように、CPU61と、RAM62と、記憶部63と、を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0029】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等をRAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部63は、CPU61が硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。また、記憶部63は、データ取得部9で取得された試料形状データを記憶する。
【0030】
次に、本実施形態に係る硬さ試験機100の動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。
まず、試料形状データD1を取得する(ステップS1:データ取得工程)。具体的には、CPU61は、データ取得部9を制御して、硬さ試験の対象となる試料Sの試料形状データD1を取得させる。ステップS1で取得される試料形状データD1は、試料S全体の輪郭を含む形状データであり、試料Sの内外を判定できるようになっている。なお、本実施形態では、図6に示すように、試料形状データD1上に、ユーザにより予め試験位置P、…がプログラミングされているものとする。
【0031】
次に、試料Sの画像データD2を取得する(ステップS2:撮像工程)。具体的には、まず、CPU61は、ターレット16の回転により対物レンズ15が試料Sの上方に配置された状態で、試料Sの表面の所定領域が対物レンズ15の真下に位置するようにXYステージ3を移動させる。そして、CPU61は、CCDカメラ12により撮像された画像データに基づいてAFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対する自動合焦を行う。そして、CPU61は、試料Sの表面に対する自動合焦が行われた状態において、CCDカメラ12により試料Sの表面を撮像させて試料Sの画像データD2を取得させる。そして、CPU61は、取得された試料Sの画像データD2に基づいて、試料Sの表面の画像Gをモニター8に表示させる(図7参照)。
即ち、CPU61は、CCDカメラ12を制御して試料Sの表面を撮像させ、当該試料Sの画像データD2を取得させる本発明の撮像制御手段として機能する。
また、CPU61は、CCDカメラ12により取得された試料Sの画像データD2に基づいて、試料Sの表面の画像Gをモニター8に表示させる本発明の表示制御手段として機能する。
【0032】
次に、試料形状データD1と試料Sの画像データD2とのマッチング処理を行う(ステップS3:マッチング工程)。具体的には、CPU61は、ステップS1で取得された試料形状データD1と、ステップS2で取得された試料Sの画像データD2と、を対応付けるためのマッチング処理を行う。本実施形態では、試料Sの画像データD2は、対物レンズ15の視野の関係上、図7に示すように、その一部のみが取得される。従って、この取得された一部の画像データと試料形状データD1に含まれる試料Sの輪郭とを比較して、X、Y方向のずれや回転方向のずれを適宜補正することにより、マッチング処理を行う。これにより、図8に示すように、モニター8において、試料形状データD1上に設定されている試験位置が試料Sの画像データD2に基づく画像G上に重ねて表示される。
即ち、CPU61は、データ取得部9により取得された試料形状データD1と、CCDカメラ12により取得された試料Sの画像データD2と、を対応付ける本発明のマッチング手段として機能する。
なお、このマッチング処理により、試料形状データD1を参照することができるようになるため、試料Sの一部のみならず、試料S全体の試験位置を把握することができるようになる。従って、試料S全体の画像データを取得することなく、試料S全体に対して硬さ試験を行うことが可能となる。
【0033】
次に、試料形状データD1上に設定されている試験位置P、…に、圧子14aによるくぼみ付けを行う(ステップS4:くぼみ付け工程)。具体的には、まず、CPU61は、試料形状データD1上の試験位置を参照して、圧子14aと対向する位置に所定の試験位置(初回は試験開始点)が配されるように試料S(試料台2)を移動させる。そして、CPU61は、当該試験位置に対して圧子14aによりくぼみを形成させる。
即ち、CPU61は、ステップS3で試料形状データD1と試料Sの画像データD2とが対応付けられた後、試料形状データD1上に設定されている試験位置P、…に圧子14aによりくぼみを形成させる本発明のくぼみ付け手段として機能する。
【0034】
次に、試料Sの硬さ値を算出する(ステップS5:硬さ値算出工程)。具体的には、まず、CPU61は、ターレット16の回転により対物レンズ15が試料Sの上方に配置された状態で、CCDカメラ12により試料Sの表面を撮像させて画像データを取得させる。そして、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データを解析し、試料Sの表面に形成されたくぼみの対角線長さを計測する。そして、CPU61は、当該計測された対角線長さに基づいて、試料Sの硬さ値を算出する。
即ち、CPU61は、ステップS4でくぼみが形成された後、CCDカメラ12により撮像された当該くぼみに基づいて試料Sの硬さ値を算出する本発明の硬さ値算出手段として機能する。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る硬さ試験機100は、試料Sの形状を特定可能な試料形状データD1を取得するデータ取得部9と、CCDカメラ12を制御して試料Sの表面を撮像させ、当該試料Sの画像データD2を取得させる撮像制御手段(CPU61)と、データ取得部9により取得された試料形状データD1と、CCDカメラ12により取得された試料Sの画像データD2と、を対応付けるマッチング手段(CPU61)と、マッチング手段により試料形状データD1と試料Sの画像データD2とが対応付けられた後、試料形状データD1上に設定されている試験位置P、…に圧子14aによりくぼみを形成させるくぼみ付け手段(CPU61)と、くぼみ付け手段によりくぼみが形成された後、CCDカメラ12により撮像された当該くぼみに基づいて試料Sの硬さ値を算出する硬さ値算出手段(CPU61)と、を備える。
従って、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、試料Sの形状を特定可能な試料形状データD1を取得して利用することができるので、試験前に予め作成されている試料形状データD1を有効に活用することができることとなって、硬さ試験を効率的に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、試料Sの形状を特定可能な試料形状データD1を取得して利用することができるので、試料Sの内外を自動判定することができることとなって、試料Sの範囲を超える位置での硬さ試験の実施を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、ユーザにより予め試験位置P、…がプログラミングされた試料形状データD1を取り込んで、当該試料形状データD1上に設定されている試験位置P、…にくぼみを形成させることができるので、硬さ試験の段取りを軽減させることができることとなって、硬さ試験をより効率的に行うことができる。
【0038】
また、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、CCDカメラ12により取得された試料Sの画像データD2に基づいて、試料Sの表面の画像Gをモニター8に表示させる表示制御手段(CPU61)を更に備えるので、マッチング処理後の画像G等を表示させることができることとなって、画像G上に重ねて表示された試験位置P、…をユーザに視認させることができる。
【0039】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、図5のステップS1で試料形状データD1を取得した後に、ステップS2で試料Sの画像データD2を取得するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS1で試料Sの画像データD2を取得した後に、ステップS2で試料形状データD1を取得するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、試料形状データD1上に、ユーザにより予め試験位置P、…がプログラミングされているようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、図5のステップS1で試験位置P、…がプログラミングされていない試料形状データD1を取得した後に、当該試料形状データD1をモニター8に表示させ、操作部7を介して当該試料形状データD1に対して試験位置P、…をプログラミングするようにしてもよい。この場合、操作部7は、データ取得部9により取得された試料形状データD1上に、試験位置P、…を設定する本発明の試験位置設定手段として機能する。
試料形状データD1に対して試験位置P、…をプログラミングすることにより、従来のように試料Sの画像データD2に対して試験位置P、…をプログラミングする場合と比較して、不要なパターンや傷等の存在しないきれいな画像上でプログラミングすることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、試料Sの画像データD2に基づく試料Sの表面の画像Gや、試料形状データD1と試料Sの画像データD2とのマッチング処理後の画像G等をモニター8に表示させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、モニター8を備えない構成として、上記画像G等を表示させないようにしてもよい。
また、上記実施形態では、試料Sの輪郭やプログラミングされた試験(予定)位置P、…をモニター8に表示させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、上記表示の他に、CCDカメラ12により撮像されたくぼみ及び硬さ値算出手段により算出された試料Sの硬さ値等に基づいて、試験実施位置、硬さ値、硬さ分布等高線図、硬さに応じた色又は色帯等の試験結果を表示させるようにしてもよい。上記のような試験結果をモニター8に表示させることで、試験結果を分かり易く且つ詳細にユーザに報知することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、図5のステップS2で取得された一部の画像データと試料形状データD1に含まれる試料Sの輪郭とを比較して、X、Y方向のずれや回転方向のずれを適宜補正することにより、マッチング処理を行うようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、試料Sの全体を表示可能な広範囲画像を取得して、当該広範囲画像と試料形状データD1とを比較して、マッチング処理を行うようにしてもよい。
また、試料形状データD1が、試料S全体ではなく、試料Sの一部のみの輪郭を示す形状データであった場合であっても、当該試料形状データD1と、取得された一部の画像データ又は広範囲画像とを比較して適宜補正することで、マッチング処理を行うことが可能である。
また、取得される試料Sの画像データD2が、試料形状データD1と自動的にマッチングする位置に試料Sが配置されるように、予め試料台2上に治具を設定しておくようにしてもよい。
その他、マッチング処理については、試料形状データD1と試料Sの画像データD2とのマッチングが可能であれば、いかなる方法を採用してもよい。
【0044】
その他、硬さ試験機100を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
100 硬さ試験機
10 試験機本体
1 硬さ測定部
11 照明装置
12 CCDカメラ(撮像手段)
14 圧子軸
14a 圧子
15 対物レンズ
16 ターレット
17 フレームグラバー
2 試料台
3 XYステージ
4 AFステージ
5 昇降機構部
6 制御部
61 CPU(撮像制御手段、マッチング手段、くぼみ付け手段、硬さ値算出手段、表示制御手段)
62 RAM
63 記憶部
7 操作部(試験位置設定手段)
8 モニター(表示手段)
9 データ取得部(データ取得手段)
S 試料
図1
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図8