特許第6016664号(P6016664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016664銅微粒子分散溶液、焼結導電体の製造方法、及び導電接続部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016664
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】銅微粒子分散溶液、焼結導電体の製造方法、及び導電接続部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20161013BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20161013BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20161013BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20161013BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20161013BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20161013BHJP
   B01F 17/38 20060101ALI20161013BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20161013BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B22F9/00 B
   B22F1/02 B
   B22F1/02 D
   B22F1/00 L
   H01B1/22 A
   H01B1/00 D
   H01B1/00 J
   H01B13/00 503C
   B01F17/38
   H05K1/09 A
   H05K3/32 A
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-27435(P2013-27435)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-156626(P2014-156626A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161322
【弁理士】
【氏名又は名称】白坂 一
(74)【代理人】
【識別番号】100120570
【弁理士】
【氏名又は名称】中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】石井 智紘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英道
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/018782(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0193034(US,A1)
【文献】 特開2008−121043(JP,A)
【文献】 特開2012−207250(JP,A)
【文献】 特開2009−218497(JP,A)
【文献】 特開2014−024330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)で被覆された一次粒子の粒子径が1〜300nmの銅微粒子(Pa)と、
X線回折測定においてCu(111)面のピーク高さをH、CuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])が0.09〜0.75である表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)とが、
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含有している有機溶媒(S)に分散している、
ことを特徴とする、銅微粒子分散溶液。
【請求項2】
前記ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)と、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の割合([Pa/Pb]質量比)が1〜10である、請求項1に記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項3】
前記表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の一次粒子の粒子径が500nm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項4】
前記ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)において、該被覆しているラクタム系化合物(L)と銅微粒子(Pa)中でのラクタム系化合物(L)の割合が0.5〜5質量%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項5】
前記ラクタム系化合物(L)が五員環構造を有する、2−ピロリドン、アルキル−2−ピロリドン、及びヒドロキシアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項6】
前記アルキル−2−ピロリドンがN−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−n−プロピル−2−ピロリドン、N−n−ブチル−2−ピロリドン、N−iso−ブチル−2−ピロリドン、N−n−オクチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−ピロリドン、4−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、及びN−メチル−4−メチル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項7】
前記ヒドロキシアルキル−2−ピロリドンがN−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、及びN−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項8】
前記有機溶媒(S)の常圧における沸点が140℃以上であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項9】
前記有機溶媒(S)の常圧における沸点が350℃以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項10】
前記有機化合物(S1)がヒドロキシル基の結合している炭素原子に1又は2の水素原子が結合している有機化合物であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項11】
前記少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、及び1,2,4−ブタントリオールの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、1から10のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【請求項12】
前記請求項1から11のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液を基板に塗布し、大気雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で、有機溶媒(S)の沸点よりも50〜40℃低い温度範囲で加熱・焼結することにより、基板上に銅微粒子の導電体を形成することを特徴とする、焼結導電体の製造方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液を電子部品における半導体素子又は回路基板の電極端子又は導電性基板の接合面に載せた後、該銅微粒子分散溶液上に更に接続する他方の電極端子又は導電性基板の接合面を配置し、加熱処理により焼結して形成することを特徴とする、導電接続部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温における焼成でも導電性に優れる導電部材を得ることが可能な銅微粒子分散溶液、該銅微粒子分散溶液を焼結する、焼結導電体の製造方法及び導電接続部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ナノメートルサイズ(1μm未満のサイズをいう。以下同じ)の金属微粒子は、融点の低下、触媒活性、磁気特性、比熱特性、光学特性の変化等を発現することから、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料等の分野で広く用いられている。特に、電子材料用の導電性ペーストのような配線形成材料として、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用されている。
【0003】
このようなナノメートルサイズの金属微粒子を製造する方法としては、大きく気相合成法と液相合成法の2種類の製法が知られている。ここで気相合成法とは、気相中に導入した金属蒸気から固体の金属微粒子を形成する方法であり、他方、液相合成法とは、溶液中に分散させた金属イオンを還元することにより金属微粒子を析出させる方法である。また、液相合成法においては、一般にその金属イオンを還元するための還元剤を使用する方法と、電気化学的にカソード電極上で還元を行う方法とが知られている。
【0004】
また、最近では、金属微粒子を含有するインクを使用して、配線パターンをインクジェットプリンタにより印刷し、焼成して配線を形成する技術が注目されている。しかし、インクジェットプリンタのインクとして、金属微粒子を含有するインクを使用する場合、インク中において分散性を長期間保つことが重要である。そのため、インク中において分散性を長期間保つ金属微粒子の製造方法が提案されている。金属微粒子分散溶液を乾燥後に焼成して金属薄膜又は金属細線等を得る方法として下記の特許文献が公開されている。
【0005】
特許文献1には、銅微粒子を得る方法として、核生成のためのパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加してポリエチレングリコール又はエチレングリコール溶液中でパラジウムを含有する粒子径50nm以下の銅微粒子を形成し、ついでこの銅微粒子分散溶液を用いて、基板上にパターン印刷を行うために、4%H−N気流中において250℃で3時間の熱処理を行うことによって、微細な銅の導電膜を形成したことが開示されている。
【0006】
特許文献2には、1次粒子径が100nm以下である金属酸化物微粒子を含むインクジェット用インクをインクジェット法により基板上に塗布した後、水素ガス雰囲気下で350℃で1時間の熱処理を施して、酸化第一銅の還元を行い、金属配線のパターンを得たことが開示されている。特許文献3には、金属の周りに分散剤として有機金属化合物が付着している金属ナノ粒子をスピンコート法により、基板(ガラス)上に塗布し、100℃で乾燥し、250℃での焼成により銀の薄膜を作製したことが開示されている。特許文献4には、ジエチレングリコール中に懸濁された、2次粒子の平均粒子径500nmの酢酸銅を濃度が30重量%になるように濃縮し、さらに超音波処理を施して、導電性インクとした後、スライドガラス上に塗布して、還元雰囲気で350℃で1時間加熱して銅薄膜を得たことが記載されている。
【0007】
特許文献5には、銅合金微粒子が(i)少なくとも、アミド基を有する有機溶媒5〜90体積%、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒5〜45体積%、並びに常圧における沸点が100℃を超え、かつ分子中に1又は2以上のヒドロキシル基を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒5〜90体積%含む有機溶媒、(ii)少なくとも、アミド基を有する有機溶媒5〜95体積%、及び常圧における沸点が100℃を超え、かつ分子中に1又は2以上のヒドロキシル基を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒5〜95体積%含む有機溶媒、又は、(iii)常圧における沸点が100℃を超え、かつ分子中に1又は2以上のヒドロキシル基を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒、に分散された銅微粒子分散溶液が開示されている。
特許文献6には低分子量ビニルピロリドン存在下に還元剤を用いて、低分子量ビニルプロリドンで被覆された金属微粒子を分子中に1つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物を含む有機溶媒に分散させた金属微粒子分散溶液が開示され、該分散溶液を不活性ガス雰囲気中190℃以上の温度で、熱処理して導電性の証結膜を得たことが開示されている。
【0008】
特許文献7には、コア部が銅であり、シェル部が酸化銅であるコア/シェル構造を有する粒子を還元性の分散媒に分散させてなる分散溶液を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜を加熱し、該塗膜中の粒子の酸化銅を銅に還元するとともに、還元されて得られた銅粒子同士を焼結する工程と、を含む導電性基板の製造方法が開示されている。特許文献8には、表面酸化膜層を有する銅微粒子または酸化銅微粒子の分散溶液を利用して超ファインなパターン描画、あるいは薄膜塗布層形成後、還元処理、焼成して、低インピーダンスでかつ微細な焼結体銅系配線パターン、あるいは極薄い膜厚の銅薄膜層を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−330552号公報
【特許文献2】特開2004−277627号公報
【特許文献3】特開2005−081501号公報
【特許文献4】特開2004−323568号公報
【特許文献5】特開2009−030084号公報
【特許文献6】特開2008‐121043号公報
【特許文献7】特開2009‐218497号公報
【特許文献8】特許第3939735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1、2をはじめ、特許文献3及び特許文献4における従来の製造方法では、水素ガス等の還元剤を使用して、250〜300℃程度で焼結をしなければ、導電性の焼結金属を得ることができないという問題点もあった。特許文献5には前記3種類の分散溶液が開示されているが、窒素ガス雰囲気中180〜300℃で焼結して焼結膜を得たことが開示されているが、金属微粒子を比較的低温で焼成しても導電性の高い焼結体を得られることが望ましい。また、従来の金属又は合金微粒子に使用する還元性有機溶媒として、ヒドロキシル基を2以上有する、高い沸点を有する多価アルコールを多く含む分散溶媒を使用する必要があった。特許文献6に開示された、還元剤を用いる非電解還元により銅微粒子を生成する際に、分散剤として低分子分散剤を用いると銅微粒子への分散剤の被覆量が減少して分散性が低下するおそれがある。特許文献7には、コア部が銅であり、シェル部が酸化銅であるコア/シェル構造を有する粒子を還元性の分散媒に分散させた分散溶液を加熱・焼結する際に該酸化銅の作用により焼結が促進されるが、この酸化銅がすべて還元されるとその後の焼結の促進効果は消滅する。特許文献8には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散溶液を基板上にパターン化後に、焼成することが開示されているが焼成温度は、少なくとも250〜350℃程度の温度で処理する必要がある。
【0011】
表面に銅酸化物層が適度に形成されているコア/シェル構造を有する銅粒子が存在すると、微粒子間の焼結を触媒的に促進させる効果を示す結果、酸化銅が存在している段階では焼結は促進される。しかし、該酸化銅が還元されて存在しなくなるとこのような触媒的な効果も消滅する。一方、ラクタム系化合物が焼結条件で酸化されて生成されるカルボン酸類、窒素酸化物類などを焼結開始時から添加すると銅微粒子とコア/シェル銅粒子が過剰に酸化されてしまい、かえって焼結性が大幅に低下する不都合を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、銅微粒子分散溶液中に銅微粒子として、表面に銅酸化物層が適度に形成された銅微粒子と、炭素原子数4〜12のラクタム系化合物で被覆された、銅微粒子を併存させると、焼成前半に銅酸化物層が形成された銅微粒子により銅微粒子間の焼結を触媒的に促進させる効果が発現し、該銅酸化物層が還元されて消失する焼成後半に、ラクタム系化合物(L)の分解生成物であるカルボン酸類、窒素酸化物類により銅微粒子表面に酸化物層が再形成(リーチング効果)され、触媒的に焼結を促進させる効果が持続すると共に、低分子有機化合物である炭素原子数4〜12のラクタム系化合物は、高分子より沸点が低いため残留物が少なくなり、比較的短時間で良好な導電性の焼成膜を形成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の(1)ないし(13)に記載する発明を要旨とする。
【0013】
(1)炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)で被覆された一次粒子の粒子径が1〜300nmの銅微粒子(Pa)と、
X線回折測定においてCu(111)面のピーク高さをH、CuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])が0.09〜0.75である表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)とが、
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含有している有機溶媒(S)に分散している、ことを特徴とする、銅微粒子分散溶液。(以下、第1の態様ということがある)。
(2)前記ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)と、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の割合([Pa/Pb]質量比)が1〜10である、前記(1)に記載の銅微粒子分散溶液。
(3)前記表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の一次粒子の粒子径が500nm以下であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の銅微粒子分散溶液。
(4)前記ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)において、該被覆しているラクタム系化合物(L)と銅微粒子(Pa)中でのラクタム系化合物(L)の割合が0.5〜5質量%であることを特徴とする、前記(1)から(3)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
(5)前記ラクタム系化合物(L)が五員環構造を有する、2−ピロリドン、アルキル−2−ピロリドン、及びヒドロキシアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)から(4)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【0014】
(6)前記アルキル−2−ピロリドンがN−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−n−プロピル−2−ピロリドン、N−n−ブチル−2−ピロリドン、N−iso−ブチル−2−ピロリドン、N−n−オクチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−ピロリドン、4−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、及びN−メチル−4−ジメチル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(5)に記載の銅微粒子分散溶液。
(7)前記ヒドロキシアルキル−2−ピロリドンがN−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、及びN−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(5)に記載の銅微粒子分散溶液。
(8)前記有機溶媒(S)の常圧における沸点が140℃以上であることを特徴とする、前記(1)から(7)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
(9)前記有機溶媒(S)の常圧における沸点が350℃以下であることを特徴とする、前記(1)から(7)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
(10)前記有機化合物(S1)がヒドロキシル基の結合している炭素原子に1又は2の水素原子が結合している有機化合物であることを特徴とする、前記(1)から(9)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
(11)前記少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、及び1,2,4−ブタントリオールの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)から(10)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液。
【0015】
(12)前記(1)から(11)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液を基板に塗布し、大気雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で、有機溶媒(S)の沸点よりも50〜40℃低い温度範囲で加熱・焼結することにより、基板上に銅微粒子の導電体を形成することを特徴とする、焼結導電体の製造方法(以下、第2の態様ということがある)。
(13)前記(1)から(11)のいずれかに記載の銅微粒子分散溶液を電子部品における半導体素子もしくは回路基板の電極端子又は導電性基板の接合面に載せた後、該銅微粒子分散溶液上に更に接続する他方の電極端子又は導電性基板の接合面を配置し、加熱処理して形成することを特徴とする、導電接続部材の製造方法(以下、第3の態様ということがある)。
【発明の効果】
【0016】
表面に銅酸化物層が適度に形成されているコア/シェル構造を有する銅微粒子が存在すると、微粒子間の焼結を触媒的に促進させる効果を示す。
焼結が進行するとコア/シェル銅微粒子表面の銅酸化物層は還元されて消失し触媒焼結性が低下してしまう。一方、銅微粒子を被覆していたラクタム系化合物(L)の分解生成物であるカルボン酸類、窒素酸化物類が銅微粒子表面に酸化物層を再形成(リーチング効果)し、触媒的な焼結が持続するとともに、低分子有機化合物は高分子より沸点が低いため残留物が少なくなり、比較的低温かつ短時間で良好な導電性の焼成膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1において生成した銅微粒子(Pa)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】実施例1において生成した銅微粒子(Pb)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】実施例1において生成した銅微粒子(Pa+Pb)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4】実施例6において生成した銅微粒子(Pa)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5】実施例6において生成した銅微粒子(Pb)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図6】実施例6において生成した銅微粒子(Pa+Pb)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の〔1〕銅微粒子分散溶液(第1の態様)、〔2〕焼結導電体の製造方法(第2の態様)、及び〔3〕導電接続部材の製造方法(第3の態様)について説明する。
〔1〕銅微粒子分散溶液(第1の態様)
本発明の第1の態様である「銅微粒子分散溶液」は、炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)で被覆された、一次粒子の粒子径が1〜300nmの銅微粒子(Pa)と、
X線回折測定においてCu(111)面のピーク高さをH、CuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])が0.09〜0.75である表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)とが、
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含む有機溶媒(S)に分散している、ことを特徴とする。
【0019】
(1)ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)
銅微粒子(Pa)は、炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)で被覆された、一次粒子の粒子径が1〜300nmの銅微粒子である。
(イ)銅微粒子(Pa)
銅微粒子(Pa)は、一次粒子の粒子径が1〜300nmの銅微粒子である。銅微粒子(Pa)の製造方法に特に制限はなく、還元反応水溶液中で銅イオンの電解還元、還元剤を用いた非電解還元等により製造することが可能である。前記銅イオンの電解還元による製造の場合、後述する通り還元反応水溶液中に銅イオンと共に炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)を適量溶解させておくことにより、該ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)を製造することも可能である。
【0020】
(ロ)ラクタム系化合物(L)
ラクタム系化合物は、一般的にカルボキシル基とアミノ基が脱水縮合して環を成している化合物の総称で、環の一部に−CO−NR−(Rは水素でもよい)結合を有しており、本発明で使用するラクタム系化合物(L)は、銅微粒子(Pa)の被覆性、焼結性を考慮すると、炭素原子数が4〜12の低分子化合物である。
該ラクタム系化合物(L)は、銅微粒子分散溶液中で銅微粒子(Pa)表面を被覆した状態で存在していて、焼成条件下で前記[−CO−NR−]結合部が分解してカルボン酸、窒素酸化物を生成して、銅微粒子表面部を酸化させる作用を発揮して、銅表面部に酸化銅層を形成させる。
【0021】
炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)としては、五員環構造を有する、2−ピロリドン、アルキル−2−ピロリドン、及びヒドロキシアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
前記アルキル−2−ピロリドンとして、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−n−プロピル−2−ピロリドン、N−n−ブチル−2−ピロリドン、N−iso−ブチル−2−ピロリドン、N−n−オクチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−ピロリドン、4−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、及びN−メチル−4−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。また、前記ヒドロキシアルキル−2−ピロリドンとして、N−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、及びN−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドン等を挙げることができる。
【0022】
(ハ)ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)
ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)は、被覆されていない、一次粒子の粒子径が1〜300nmの銅微粒子を、ラクタム系化合物(L)が溶解されている分散溶液中に分散させて得ることもできるが、銅イオンとラクタム系化合物(L)が溶解されている還元反応水溶液で電解還元により、銅イオンを還元して、ラクタム系化合物(L)で被覆された、銅微粒子(Pa)を形成することもできる。
この具体例としては、銅イオンとラクタム系化合物(L)が溶解されている還元反応水溶液中で還元反応を行い、得られた還元反応生成液をろ過、遠心分離等の操作で回収後、低分子アルコールで洗浄することにより、ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)を得ることができる。
尚、前記ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)において、該被覆しているラクタム系化合物(L)と銅微粒子(Pa)中でのラクタム系化合物(L)の割合が0.5〜5質量%であることが好ましい。前記ラクタム系化合物(L)の割合が0.5質量%以上で銅微粒子(Pa)の分散性を良好に維持することが可能になり、一方、前記ラクタム系化合物(L)の割合が5質量%を超えると、銅微粒子分散溶液を焼成する際にラクタム系化合物(L)の加熱分解、蒸発の進行が遅くなり得られる焼結体の導電性が低下するおそれがある。
上記還元反応水溶液には任意の成分として、銅微粒子が生成する際にデンドライト化を防止するためにアルカリ金属イオンを添加することもできる。また、還元水溶液は水溶液、該水溶液にメタノール、エタノール等の親水性化合物を添加した混合溶液、および親水性溶液が使用可能であるが水溶液の使用が好ましい。
【0023】
上記電解還元反応により、ラクタム系化合物(L)で被覆された、銅微粒子(Pa)の製造例を以下に記載する。
電解還元浴中のカソード(陰極)の材料としては、白金、カーボン、ステンレス等の棒状、板状電極、ドット電極のようなナノ構造電極を挙げることができ、アノード(陽極)の材料としては、Cu、カーボン、白金、チタン、イリジウム等の棒状・板状・網状の形状電極を挙げることができる。
このような電解還元装置を使用して、電解槽内に、銅イオンとラクタム系化合物(L)を溶解させた還元反応水溶液を供給して、電解還元により、作用電極であるカソード及び補助電極であるアノード間に印加することにより、銅イオンを還元してカソード表面から銅微粒子を析出することができる。
尚、還元反応水溶液中へのラクタム系化合物(L)の添加量は、該還元反応水溶液に存在する銅原子に対する質量比([ラクタム系化合物(L)/Cu]比)で0.3〜12.5とすることが好ましい。
【0024】
電解還元条件としては、電流密度は好ましくは0.01〜150A/dm、より好ましくは1〜100A/dm程度であり、直流のほかパルス電流とすることもできる。還元温度は、10〜70℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。還元温度は、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒子径は小さくなるとともに、酸化による粒子の腐食速度も小さくなる傾向がある。還元時間は、1〜60分が好ましく、3〜10分がより好ましい。
還元反応終了後に、還元反応水溶液から銅微粒子をろ過、遠心分離等の操作で回収し、炭素原子数1〜4の低級アルコール等で洗浄してラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)を得ることができる。
【0025】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)
銅微粒子(Pb)は、X線回折測定においてCu(111)面のピーク高さをH、CuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])が0.09〜0.75である、表面層が酸化銅からなる銅微粒子である。
前記X線回折ピーク強度比が0.09未満であると触媒焼結性が著しく低下し、一方、0.75を超えると酸化物層が厚くなり銅微粒子間の焼結を阻害するおそれがある。
X線源としてCuKαを用いたX線回折によると、酸化銅(I)(CuO)の(111)面は2θ=36度付近にピークが現れ、銅(Cu)の(111)面は2θ=43度付近にピークが現れる。尚、酸化銅として存在するのは、酸化銅(I)(CuO)のみであり、酸化銅(II)(CuO)は、通常存在しない。
表面層が酸化銅(CuO)からなる銅微粒子(Pb)における、酸化銅(CuO)と銅(Cu)中の酸化銅(CuO)の割合は、X線回折測定において2θ=43度付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36度付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときにX線回折ピーク強度比(H/[H+H])から求められる。
【0026】
表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)は、例えば、銅イオンを反応水溶液中で酸素ガスを含むガスをバブリングさせながら還元することにより得ることができる。その他、銅微粒子(Pb)は、過酸化水素や硝酸などの酸化剤を反応水溶液中へ添加することにより得ることができる。
この場合、前記表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の一次粒子の粒子径が500nm以下であることが好ましい。銅微粒子(Pb)の触媒効果により、有機溶媒(S)から水素ガスを発生させて焼結を促進させる還元作用を発揮するが、粒子径が500nmを超えると触媒効果が大きく低下するため、500nm以下とすることが好ましい。粒子径を500nm以下に制御する手段は添加剤濃度と温度などの電解還元条件によって可能である。
【0027】
(3)有機溶媒(S)
有機溶媒(S)は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含有している有機溶媒である。有機溶媒(S)の常圧における沸点が140℃以上であることが好ましく、一方、350℃以下であることが好ましい。前記の通り、銅微粒子(Pb)の触媒活性が著しく高いので、焼結の際に有機溶媒(S)の沸点よりも50〜40℃低い温度範囲で還元性ガス雰囲気を形成して焼結反応が開始することが好ましいが、100℃以上で銅微粒子の焼結が進行しやすいため、有機溶媒(S)の沸点は140℃以上とするのが好ましい。また、沸点が350℃を超える有機溶媒を用いると揮発しづらく焼結後も残留する可能性があるので有機溶媒(S)の沸点は350℃以下とすることが好ましい。
前記少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、及び1,2,4−ブタントリオールの中から選択される1種又は2種以上であることが望ましい。
【0028】
また、有機化合物(S1)として、トレイトール、エリトリト−ル、ペンタエリスリト−ル、ペンチト−ル、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシト−ル、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコ−ス、フルクト−ス、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクト−ス、キシロ−ス、アラビノ−ス、イソマルト−ス、グルコヘプト−ス、ヘプト−ス、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロース、等の糖類も使用することが可能であるが、これらの中で融点が高いものについては他の有機溶媒と混合して使用することができる。
有機化合物(S1)は、優れた分散性を有しており、一般に時間の経過により分散溶液中の微粒子同士は接合する傾向にあるが、有機化合物(S1)を混合溶媒中に存在させるとこのような接合をより効果的に抑制して、分散液の一層の長期安定化を図ることが可能になる。また有機化合物(S1)を有機溶媒(S)中に存在させると、その微粒子分散液を基板上に塗布して焼結した際、その焼結膜の均一性が向上し、導電性の高い焼成膜を得ることが出来る。
有機化合物(S1)は、ヒドロキシル基の結合している炭素原子に1又は2の水素原子が結合している有機化合物であることが好ましい。炭素原子に水素原子が結合した第一級アルコール又は第二級アルコールでは酸化反応によって還元性の水素ガスを放出しやすいからである。
【0029】
有機溶媒(S)として、有機化合物(S1)以外に使用できる溶媒は特に限定されるものではないが、以下に記載する有機化合物(A)、有機化合物(B)等が挙げられる。
有機化合物(A)は、アミド基(−CON=)を有する化合物であり、特に比誘電率が高いものが好ましい。アミド基を有する有機化合物(A)として、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトアミド等が挙げられるが、これらを混合して使用することもできる。これらの中でも比誘電率が100以上である、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトアミドなどが好適に使用できる。尚、N−メチルアセトアミド(融点:26〜28℃)のように常温で固体の場合には他の溶媒と混合して作業温度で液状として使用することができる。有機化合物(A)は、混合溶媒中で微粒子の分散性と保存安定性を向上する作用を有し、また本発明の微粒子分散溶液を基板上に塗布後焼成して得られる焼成膜の導電性を向上する作用をも有する。
【0030】
有機化合物(B)として、一般式R−O−R(R、Rは、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(B1)、一般式R−C(=O)−R(R、Rは、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(B2)、及び一般式R−(N−R)−R(R、R、Rは、それぞれ独立にアルキル基、又は水素原子で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物(B3)、の中から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
前記エーテル系化合物(B1)としては、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、ジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルエーテル等が例示出来る。前記ケトン系化合物(B2)としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が例示できる。また、前記アミン系化合物(B3)としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン等が例示できる。
【0031】
有機化合物(B)は、混合溶媒中で溶媒分子間の相互作用を低下させ、分散粒子の溶媒に対する親和性を向上する作用を有していると考えられる。このような効果は一般に沸点の低い溶媒において期待され、特に常温における沸点が100℃以下の有機化合物は、有効な溶媒分子間の相互作用を低減する効果が得られることから好ましい。有機化合物(B)の中でも特にエーテル系化合物(B1)が、その溶媒分子間の相互作用を低減する効果が大きいことから好ましい。
【0032】
(4)銅微粒子分散溶液
銅微粒子分散溶液中の、前記ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)と、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の割合([Pa/Pb]質量比)は、1〜10であることが好ましい。
該割合([Pa/Pb]質量比)が前記範囲の上限以下で、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(Pb)の触媒焼結性が充分に発揮されることにより、焼成初期から粒子間が緻密に融着しながら粒成長してき、一方、前記範囲の下限以上で、ラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(Pa)による触媒的な焼結を持続させる作用が焼成終了時まで充分に発揮されることにより、焼結構造の緻密化がさらに促進される。
銅微粒子分散溶液中の銅微粒子(Pa)と銅微粒子(Pb)の合計量は、5〜85質量%が望ましい。該合計量が5質量%未満であると焼結後の膜厚が薄くなってクラックが発生し易くなり、一方、85質量%を超えると、有機溶媒(S)の還元作用が低下して焼結が不十分になるおそれがある。
有機溶媒(S)中に銅微粒子(P)を添加して、分散性を向上させるために、撹拌手段を採用することが望ましい。分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。前記銅微粒子分散溶液は、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続用の配線形成材料等の導電性焼結体として好適に利用される。
【0033】
〔2〕焼結導電体の製造方法(第2の態様)
第2の態様である「焼結導電体の製造方法」は、第1の態様である「銅微粒子分散溶液」を基板に塗布し、大気雰囲気中、もしくは不活性ガス雰囲気中で、有機溶媒(S)の沸点よりも50〜40℃低い温度範囲で焼結することにより、基板上に銅微粒子の導電体を形成することを特徴とする。第1の態様である、銅微粒子(Pa)と銅微粒子(Pb)が、有機溶媒(S)に分散されている銅微粒子分散溶液は、例えば百数拾℃から200℃程度の比較的低温でかつ水素ガス等の還元剤を使用することなくインクジェット等により基板上に配置して焼成し、導電性を有する焼結導電体を形成することが可能である。
前述の通り、150℃以下での焼結温度でも焼結導電体を形成することが可能となる。
上記基板は特に制限はなく使用目的等により、ガラス、ポリイミド等が使用できる。焼成前に予め乾燥工程を設けることが望ましい。乾燥条件は、使用する有機溶媒(S)にもよるが例えば100〜200℃で15〜30分程度であり、焼成条件は、塗布厚みにもよるが有機溶媒(S)の沸点よりも50〜40℃低い温度範囲で焼結することが望ましい。例えば190〜250℃、10〜40分間程度で焼結することができる。
【0034】
〔3〕導電接続部材の製造方法(第3の態様)
第3の態様である「導電接続部材の製造方法」は、第1の態様である「銅微粒子分散溶液」を電子部品における半導体素子もしくは回路基板の電極端子又は導電性基板の接合面に載せた後、該銅微粒子分散溶液上に更に接続する他方の電極端子又は導電性基板の接合面を配置し、加熱処理により焼結して形成することを特徴とする。
【0035】
導電接続部材としては半導体素子間を接合するための導電性バンプ、半導体素子と導電性基板間を接合するための導電性ダイボンド部等が挙げられるがこれらに限定されない。
導電性バンプは、銅微粒子分散液を電子部品における半導体素子もしくは回路基板の電極端子の接合面に載せ(塗布、印刷等も含まれる)、該銅微粒子分散液上に更に接続する他方の電極端子の接合面を配置した後、加熱処理、又は加圧下に加熱処理により焼結して形成される。前記接続する他方の電極端子にはワイヤボンディングを行う場合の金ワイヤ等のワイヤも含まれる。尚、前記銅微粒子分散液(A)上に更に接続する他方の電極端子の接合面を配置する際に位置合わせを行うことが望ましい。
導電性ダイボンド部は、通常、銅微粒子分散液を電子部品における回路基板の接合面に載せ(塗布、印刷等も含まれる)、該銅微粒子分散液上に更に接続する他方の電極端子の接合面を配置した後、加熱処理、又は加圧下に加熱処理により焼結して形成される。
【0036】
前記加圧下の加熱処理は、両電極端子間、又は電極端子と基板間の加圧により導電接続部材前躯体と両電極端子接合面、又は電極端子と導電性基板間との接合を確実にするか、または導電接続部材前躯体に適切な変形を生じさせて電極端子接合面との確実な接合を行うことができるとともに、導電接続部材前躯体と電極端子接合面との接合面積が大きくなり、接合信頼性を一層向上することができる。また、半導体素子と導電接続部材前躯体間を加圧型ヒートツ−ル等を用いて加圧下で焼成すると、接合部での焼結性が向上してより良好な接合部が得られる。前記両電極端子間、又は電極端子と基板間の加圧は、0.5〜15MPaが好ましい。
【実施例】
【0037】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に本実施例、比較例における評価方法を記載する。
(1)銅微粒子の一次粒子径の測定方法
銅微粒子の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))を使用した観察により、走査型電子顕微鏡で観察可能な、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径の測定値である。
(2)銅微粒子の有機添加剤被覆量の測定方法
炭素・硫黄分析計((株)堀場製作所製、型式:EMIA−920V2)を用いて、有機添加剤で被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤/銅微粒子(P)]×100(質量%))を求めた。尚、該銅微粒子(P)の質量には銅微粒子中に含有される不純物の質量も含まれる。
(3)X線回折ピーク強度比
X線回折測定装置((株)リガク製、X線回折測定装置、型式:Geigerflex RAD-A)を用いて、表面層が酸化銅からなる銅微粒子の、X線源としてCuKαを用いたX線回折測定を行い、2θ=43度付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36度付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])を求めた。
【0038】
[実施例1]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g([有機添加剤/Cu]質量比:4.7)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
次にこの水溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出した。
還元反応終了後の還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。
得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果、銅微粒子の一次粒子径は、3〜70nmの範囲で、平均一次粒子径は12nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、N−ビニル−2−ピロリドンの割合は、2.3質量%であった。
図1は、上記N−ビニル−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)を、フィルター(アノディスク、Whatman社製)にトラップさせた状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0039】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)2.75gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.1であった。
次にこの水溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温10℃で、還元反応水溶液を空気でバブリングして循環させることにより還元反応水溶液中の溶存酸素量を5ppm以上になるように維持しながら、電流密度15A/dmで8分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
還元反応終了後の還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、0.75gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果、銅微粒子の一次粒子径は、40〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。
前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])は、0.34であった。
図2は、上記X線回折ピーク強度比(H/[H+H])が0.5の銅微粒子(P2)を、フィルター(アイソポア、MERCK社製)にトラップさせた状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0040】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
前記有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)0.75gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で微粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるエチレングリコールに添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、実施例1の銅微粒子分散溶液を得た。
図3は、上記銅微粒子(P1)と銅微粒子(P2)とを混合して調製した銅微粒子分散溶液を、フィルター(アノディスク、Whatman社製)に通過させてトラップさせた状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。該SEM写真から粒子径が異なる銅微粒子が混在していることが確認できる。
【0041】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記実施例1で得た銅微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)上の全面に塗布して、窒素ガス雰囲気中150℃で30分間加熱・焼成して塗膜を乾燥させた後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、銅で構成された焼成膜を得た。
直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記実施例1で得た銅微粒子分散溶液を銅基板(サイズ:2cm×2cm)に焼結後の導電接続部材の厚みが40μmとなるようにそれぞれ乾燥塗布した後、熱処理炉中で、半導体シリコンチップ(サイズ:4mm×4mm)を10MPaの加圧力で塗布膜上に押し付けて、窒素ガス雰囲気中150℃で30分間加熱・焼成させた後、ゆっくりと室温まで炉冷し、銅で構成された焼結体を介して半導体素子と導体基板とを接合した。基板表面に接合されたシリコンチップを米国MIL‐STD‐883に準拠したダイシェア強度評価装置を用いて、25℃において、ダイシェア強度を評価した。測定結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン50g([有機添加剤/Cu]質量比:7.8)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.36gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.6であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
還元反応終了後の還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。
得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果、銅微粒子の一次粒子径は、1〜50nmの範囲で、平均一次粒子径は8nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、N−ビニル−2−ピロリドンの割合は、5.1質量%であった。
【0043】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)2.75gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.1であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温10℃で、電解液を空気でバブリングして循環させることにより電解液中の溶存酸素量を5ppm以上になるように維持しながら、電流密度15A/dmで5分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、0.46gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、40〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。
また、前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])は、0.34であった。
【0044】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
その後、得られた有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)0.46gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるグリセロールに添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、実施例2の銅微粒子分散溶液を得た。
【0045】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記実施例2で得た銅微粒子分散溶液を塗布、250℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記実施例2で得た銅微粒子分散溶液を、250℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80g([有機添加剤/Cu]質量比:12.5)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.36gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.6であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、5〜100nmの範囲で、平均一次粒子径は20nmであった。また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、N−メチル−2−ピロリドンの割合は、1.2質量%であった。
【0047】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)4.12gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.3であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温5℃で、電解液を空気でバブリングして循環させることにより電解液中の溶存酸素量を5ppm以上になるように維持しながら、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、30〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は45nmであった。
また、前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])は、0.09であった。
【0048】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
その後、得られた有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)3.0gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるエチレングリコール90体積%と1−オクタノール10体積%に添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、実施例3の銅微粒子分散溶液を得た。
【0049】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記実施例3で得た銅微粒子分散溶液を塗布、150℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様の方法により、焼成膜を形成し、その抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記実施例3で得た銅微粒子分散溶液を、150℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機添加剤として2−ピロリドン(炭素原子数:4)2g([有機添加剤/Cu]質量比:0.31)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.22gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.0であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、銅微粒子の一次粒子径は、20〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は35nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤である2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、2−ピロリドンの割合は、0.5質量%であった。
【0051】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)0.2gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約4.9であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温35℃で、電解液を空気でバブリングして循環させることにより電解液中の溶存酸素量を5ppm以上になるように維持しながら、電流密度15A/dmで4分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、0.33gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、90〜450nmの範囲で、平均一次粒子径は150nmであった。
また、前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])は、0.50であった。
【0052】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
得られた有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)0.33gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるグリセロール90体積%とエリトリトール10体積%に添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、実施例4の銅微粒子分散溶液を得た。
【0053】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記実施例4で得た銅微粒子分散溶液を塗布、300℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記実施例4で得た銅微粒子分散溶液を、300℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0054】
[実施例5]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機添加剤としてN−n−オクチル−2−ピロリドン(炭素原子数:12)2g([有機添加剤/Cu]質量比:0.31)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.36gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.1であった。
次にこの水溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、銅微粒子の一次粒子径は、15〜200nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるN−n−オクチル−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、N−n−オクチル−2−ピロリドンの割合は、0.8質量%であった。
【0055】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)0.2gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約4.9であった。
次にこの水溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温50℃で、電解液を空気でバブリングして循環させることにより電解液中の溶存酸素量を5ppm以上になるように維持しながら、電流密度15A/dmで4分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、0.3gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、90〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は180nmであった。
また、前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])は、0.75であった。
【0056】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
得られた有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)0.3gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるグリセロール90体積%とエリトリトール10体積%に添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、実施例5の銅微粒子分散溶液を得た。
【0057】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記実施例5で得た銅微粒子分散溶液を塗布、300℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記実施例5で得た銅微粒子分散溶液を、300℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
[実施例6]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機添加剤としてN−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン5g([有機添加剤/Cu]質量比:0.78)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.22gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.2であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで30分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、銅微粒子の一次粒子径は、5〜80nmの範囲で、平均一次粒子径は18nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるN−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンの割合は、0.9質量%であった。
図4は、上記N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)を、フィルター(アノディスク、Whatman社製)にトラップさせた状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0059】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)0.2gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約4.9であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温35℃で、電解液を空気でバブリングして循環させることにより電解液中の溶存酸素量を5ppm以上になるように維持しながら、電流密度15A/dmで4分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、0.33gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、90〜450nmの範囲で、平均一次粒子径は150nmであった。
また、前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのX線回折ピーク強度比(H/[H+H])は、0.50であった。
図5は、上記X線回折ピーク強度比(H/[H+H])が0.50の銅微粒子(P2)を、フィルター(アイソポア、MERCK社製)にトラップさせた状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0060】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
得られた有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)0.33gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるグリセロール90体積%とエリトリトール10体積%に添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、実施例6の銅微粒子分散溶液を得た。
図6は、上記銅微粒子(P1)と銅微粒子(P2)とを混合して調製した銅微粒子分散溶液を、フィルター(アノディスク、Whatman社製)に通過させてトラップさせた状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。該SEM写真から粒子径が異なる銅微粒子が混在していることが確認できる。
【0061】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記実施例6で得た銅微粒子分散溶液を塗布、300℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記実施例6で得た銅微粒子分散溶液を、300℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
還元反応水溶液中の有機添加剤をポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)として、その濃度を5g/Lとした以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応終了後、得られた還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果、一次粒子径は、20〜350nmの範囲で、平均一次粒子径は45nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるポリビニルピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、ポリビニルピロリドンの割合は、0.35質量%であった。
【0063】
(2)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応終了後の還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、0.75gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、40〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。
また、前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCuO(111)面のピーク高さをHとしたときのピーク強度比(H/[H+H])は、0.34であった。
【0064】
(3)銅微粒子分散溶液の調製
得られた高分子有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)0.75gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるエチレングリコールに添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、比較例1の銅微粒子分散溶液を得た。
【0065】
(4)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記比較例1で得た銅微粒子分散溶液を塗布、150℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(5)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記比較例1で得た銅微粒子分散溶液を、150℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
[比較例2]
(1)ラクタム系化合物で被覆された銅微粒子(P1)の調製
実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応終了後、還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P1)を得た。得られた銅微粒子(P1)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、3〜70nmの範囲で、平均一次粒子径は12nmであった。
また、炭素・硫黄分析計を用いた分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された銅微粒子(P1)における、N−ビニル−2−ピロリドンの割合は、2.3質量%であった。
【0067】
(2)銅微粒子分散溶液の調製
その後、上記有機添加剤で被覆された銅微粒子(P1)3.0gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるエチレングリコールに添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、比較例2の銅微粒子分散溶液を得た。
【0068】
(3)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記比較例2で得た銅微粒子分散溶液を塗布、150℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(4)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記比較例2で得た銅微粒子分散溶液を、150℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0069】
[比較例3]
(1)表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)の調製
通電時間を30分間とした以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応終了後の還元反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、3.0gの銅微粒子(P2)を得た。得られた銅微粒子(P2)について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測結果、一次粒子径は、40〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。
前記水洗して溶媒を乾燥除去して得られた銅微粒子(P2)の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH、2θ=36°付近に存在するCUO(111)面のピーク高さをHとしたときのピーク強度比(H/[H+H])は、0.34であった。
【0070】
(2)銅微粒子分散溶液の調製
表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)3.0gと、50mlのエタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収するエタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と50mlの1−ブタノールとを入れよく撹拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する1−ブタノール洗浄を3回行った。上記の方法によって得られた銅微粒子を、有機溶媒であるエチレングリコールに添加、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌し、比較例3の銅微粒子分散溶液を得た。
【0071】
(3)銅微粒子分散溶液を塗布、焼成後して得られた焼成膜の抵抗率
上記比較例3で得た銅微粒子分散溶液を塗布、150℃で焼成した以外は実施例1に記載したと同様にして得られた焼成膜の抵抗率を測定した。測定結果を表1に示す。
(4)銅微粒子分散溶液を、銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度
上記比較例3で得た銅微粒子分散溶液を、150℃で焼成した以外は、実施例1に記載したと同様に銅基板と半導体シリコンチップの接合材に使用したときの接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0072】
[焼結膜の導電性についての考察]
比較例1〜3で得たサンプルから調製した焼成膜についての抵抗率は、80〜300μΩcmであったのに対し、実施例1〜6で得たサンプルから調製した焼成膜についての抵抗率は、15〜60μΩcmと小さい抵抗率を示した。このように、本発明のラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(P1)と、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)からなる分散溶液を用いることで、銅微粒子の焼結性を向上させることが可能であることが確認された。
【0073】
[接合体の接合強度についての評価]
実施例1〜6で得られた銅微粒子分散溶液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は20〜60N/mm、比較例1〜3で得られた銅微粒子分散溶液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は3〜10N/mmであった。このように、本発明のラクタム系化合物(L)で被覆された銅微粒子(P1)と、表面層が酸化銅からなる銅微粒子(P2)からなる分散溶液を用いることで、半導体素子と導体基板の接合強度を向上させることが可能であることが確認された。
【0074】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6