(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の樹脂基材の一方の主面側に金属反射層を有してなる第1のフィルムと、第2の樹脂基材からなる第2のフィルムとを接着層を介して積層したフィルムミラーであって、
前記第1のフィルムの厚さd1が50μm〜300μmであり、
前記第2のフィルムの厚さd2が50μm〜300μmであり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの厚さの合計d0が150μm〜600μmであり、
前記第1のフィルムの厚さと前記第2のフィルムの厚さとの比d2/d1が0.5〜2.0であり、
前記第2のフィルムは、前記第1のフィルムの前記金属反射層とは反対側の面側に積層されることを特徴とするフィルムミラー。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[フィルムミラー]
以下に、本発明のフィルムミラーの層構成について、
図1および
図2を用いて詳述する。
ここで、
図1および
図2は、本発明のフィルムミラーの好適な実施態様の例を模式的に示す断面図であり、フィルムミラーの層構成はこれらの図面に特に限定されるものではなく、例えば、必要に応じて、各層間に易接着層や接着層を設けていてもよい。
〔第1態様〕
本発明の第1態様に係るフィルムミラーは、第1の樹脂基材の一方の主面側に金属反射層を有してなる第1のフィルムと、第2の樹脂基材からなる第2のフィルムとを接着層を介して積層したフィルムミラーであって、第1のフィルムの金属反射層とは反対側の面に、第2のフィルムが積層され、第1のフィルムの厚さd1が、50μm〜300μmであり、第2のフィルムの厚さd2が、50μm〜300μmであり、第1のフィルムと第2のフィルムとの合計の厚さd0が150μm〜600μmであり、厚さの比d2/d1が、0.5〜2.0であるフィルムミラーである。
次に、本発明の第1態様に係るフィルムミラーの概要について、
図1を用いて説明する。
【0013】
図1(A)に示すように、本発明の第1態様に係るフィルムミラー10は、第1の樹脂基材12の一方の主面に金属反射層14が形成された第1のフィルム16と、この第1のフィルム16の、金属反射層14とは反対側の面に積層される、第2の樹脂基材からなる第2のフィルム18とが接着層(図示せず)を介して積層されてなるものである。なお、図示は省略するが、金属反射層14の表面には、表面被覆層が積層され
てもよい。
ここで、フィルムミラー10の各層は、第1のフィルム16の厚さd1が、50μm〜300μmであり、第2のフィルム18の厚さd2が、50μm〜300μmであり、全体の厚さd0(=d1+d2)が150μm〜600μmであり、厚さの比d2/d1が、0.5〜2.0を満たす。
なお、通常、太陽光などの光は、金属反射層14(表面被覆層)側から入射されて、金属反射層14表面上で反射する。
【0014】
また、
図1(B)に示すように、本発明の第1態様に係るフィルムミラー10は、第2のフィルム18側が、例えば、反射装置の筐体(被着体)30等に装着されて、反射装置100として利用される。通常、筐体30は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料からなる。
【0015】
本発明のフィルムミラー10は、全体の厚さd0を150μm以上と厚くすることにより、樹脂製のフィルムミラーであっても変形しにくくできる。そのため、筐体30に装着した際の筐体30の凹凸の影響等による歪みを低減して、拡散反射成分が増加して正反射性が低下することを防止することができる。
ここで、単に、金属反射層を形成する第1の樹脂基材の厚さを厚くすれば、被着体に装着した際の凹凸の影響による変形は低減できる。しかしながら、第1の樹脂基材を厚くすると、カールを矯正(アニーリング)することが難しくなったり、アニーリングに長時間要したり、あるいは、ハンドリングが難しくなるという問題が生じる。
そこで、本発明のフィルムミラーは、金属反射層を有する第1のフィルムと第2のフィルムとを積層して全体の厚さを厚くする。このとき、積層するフィルムの厚さの比d2/d1を0.5〜2.0とする。従って、各フィルムの厚さは全体の厚さに比べて薄くでき、カールの矯正やハンドリングが容易になり、アニーリングの時間も短縮できる。また、同程度の厚さのフィルムを積層することにより、互いに反り(カール)を抑制し、フィルムミラーの反りを抑制できる。
従って、本発明のフィルムミラーは、筐体に装着した際の筐体の凹凸の影響による歪みを低減し、また、フィルムの反りを抑制することで、正反射性の低下を防止できる。
【0016】
ここで、第1のフィルム16の金属反射層14とは反対側の面に、第2のフィルム18を積層する構成(第1態様)、すなわち、第1のフィルム16と第2のフィルムとが金属反射層14を挟まない構成は、後述する金属反射層14を挟む構成(第2態様)と比較して、金属反射層14と筐体30との間の層の厚さが厚くなるので、筐体30の凹凸の影響による歪みをより好適に低減することができる点でより好ましい。また、金属反射層14の上層を薄くできるので、正反射性の低下を防止できる点でより好適である。
【0017】
〔第2態様〕
本発明の第2態様に係るフィルムミラーは、第1の樹脂基材の一方の主面側に金属反射層を有してなる第1のフィルムと、第2の樹脂基材からなる第2のフィルムとを接着層を介して積層したフィルムミラーであって、第1のフィルムの金属反射層側の面に、第2のフィルムが積層され、第1のフィルムの厚さd1が、50μm〜300μmであり、第2のフィルムの厚さd2が、50μm〜300μmであり、全体の厚さd0が150μm〜600μmであり、厚さの比d2/d1が、0.5〜2.0であるフィルムミラーである。
次に、本発明の第2態様に係るフィルムミラーの概要について、
図2を用いて説明する。
【0018】
図2(A)に示すように、本発明の第2態様に係るフィルムミラー20は、第1の樹脂基材12の一方の主面に金属反射層14が形成された第1のフィルム16と、この第1のフィルム16の、金属反射層14側の面に積層される、第2の樹脂基材からなる第2のフィルム18とが接着層(図示せず)を介して積層されてなるものである。
ここで、フィルムミラー20の各層は、第1のフィルム16の厚さd1が、50μm〜300μmであり、第2のフィルム18の厚さd2が、50μm〜300μmであり、全体の厚さd0が150μm〜600μmであり、厚さの比d2/d1が、0.5〜2.0を満たす。
なお、通常、太陽光などの光は、第2のフィルム18側から入射されて、金属反射層14表面上で反射する。
【0019】
また、
図2(B)に示すように、第2態様のフィルムミラー20は、第1のフィルム側(第1のフィルムの金属反射層14とは反対側の面)が、例えば、反射装置の筐体(被着体)30等に装着されて、反射装置100として利用される。
なお、第2態様の場合は、第1のフィルムの厚さd1が、100μm以上であることが好ましい。金属反射層の下層となる第1のフィルムの厚さd1が厚みを有することで、筐体30に装着された際に、筐体30の凹凸の影響による歪みを好適に低減できる。
【0020】
ここで、上記第1態様および第2態様において、第1のフィルム16の巻き方向と第2のフィルム18の巻き方向とが、45度以上90度以下の交差角度で交差していることが好ましい。
この点について
図3を用いて説明する。
【0021】
図3は、フィルムの巻き方向と、第1のフィルム16および第2のフィルム18を積層する際の方向との関係を模式的に示した図である。
図3においては、第1のフィルム16の巻き方向と第2のフィルム18の巻き方向とが直交するように積層している。
【0022】
通常、第1のフィルムおよび第2のフィルム(第1の樹脂基材および第2の樹脂基材)は、長尺なシート状に形成されロール状に巻き取られて供出される。そのため、各フィルムには、巻き方向に反る(カールする)ような内部応力が生じる。
従って、第1のフィルムおよび第2のフィルムの巻き方向を一致させてフィルムを積層すると、フィルムミラーが、この巻き方向にカールしてしまい、正反射性が低下してしまうおそれがある。
【0023】
そこで、本発明においては、好ましい態様として、第1のフィルム16の巻き方向と第2のフィルム18の巻き方向とが交差するように積層する。これにより、フィルム同士が互いに、他方のフィルムの反りを抑制し、フィルムミラー10がカールすることを抑制して正反射性が低下することを防止できる。
【0024】
ここで、フィルムの巻き方向とは、カールしているフィルムを、下が凸になるように平板上の台の上に置いたときに、フィルムと台が接する領域に対して、直行する方向のことである。
【0025】
なお、図示例においては、第1のフィルム16の巻き方向と第2のフィルム18の巻き方向とが直交する構成としたが、これに限定はされず、第1のフィルム16の巻き方向と第2のフィルム18の巻き方向との交差角度は、45度以上90度以下であるのが好ましく、70度以上90度以下であることがより好ましい。巻き方向の交差角度をこの範囲とすることにより、好適にカールを抑制することができる。
【0026】
また、上記第1態様において、第1のフィルム16と第2のフィルム18との巻き方向が一致し、かつ、第1の樹脂基材12の主たる延伸方向と第2の樹脂基材の主たる延伸方向とが、45度以上90度以下の交差角度で交差していることも好ましい。
この点について
図4を用いて説明する。
【0027】
図4は、第1の樹脂基材12の延伸方向と、第2の樹脂基材の延伸方向との関係を模式的に示した図である。
図4においては、第1のフィルム16の樹脂基材12は、主たる延伸方向が、その巻き方向に対して図中時計回りに45度傾いている。また、第2のフィルム18(第2の樹脂基材)は、主たる延伸方向が、その巻き方向に対して図中反時計回りに45度傾いている。また、第1のフィルム16と第2のフィルム18とは、その巻き方向は一致し、かつ、主たる延伸方向が交差するように積層される。
【0028】
このように第1の樹脂基材12の主たる延伸方向と、第2の樹脂基材(第2のフィルム18)の主たる延伸方向とが交差するように積層することにより、フィルム同士が互いに、他方のフィルムの反りを抑制し、フィルムミラー10がカールすることを抑制して正反射性が低下することを防止できる。
【0029】
なお、その巻き方向(長尺方向)と主たる延伸方向とが異なる樹脂基材は、種々の公知の二軸延伸処理により成形することができる。主たる延伸方向とは、長尺方向の延伸処理と幅方向の延伸処理とが重畳されて、その方向に延伸したとみなすことができる方向である。長尺方向および幅方向それぞれの延伸処理の条件を適宜設定することにより、所望の方向を主たる延伸方向とすることができる。
【0030】
ここで、主たる延伸方向は、結晶配向を広角X線解析で法線を軸としてフィルム面に沿って円周方向に走査していき、最も配向の高い方向を主たる延伸方向、次に高い方向を第二の延伸方向とするのが一般的である。また、延伸方向は、縦延伸、もしくは、横延伸等における、延伸倍率の大きい方が主たる延伸方向となる。
【0031】
なお、図示例においては、第1の樹脂基材12の主たる延伸方向と第2の樹脂基材の主たる延伸方向とが直交する構成としたが、これに限定はされず、第1の樹脂基材12の主たる延伸方向と第2の樹脂基材の主たる延伸方向との交差角度は、45度以上90度以下であるのが好ましく、70度以上90度以下であることがより好ましい。延伸方向の交差角度をこの範囲とすることにより、好適にカールを抑制することができる。
【0032】
また、上記第1態様および第2態様において、第1のフィルム16と第2のフィルム18の巻きの内面同士、あるいは、外面同士を接着することも好ましい。
この点について
図5を用いて説明する。
【0033】
図5(A)は、第1態様において、第1のフィルム16および第2のフィルム18が各々ロール状に巻き回されてなる供給ロール26および28からそれぞれ第1のフィルム16および第2のフィルム18が送り出されて、第1のフィルム16と第2のフィルム18とを接着する装置(図示せず)に供給される際の、第1のフィルム16および第2のフィルム18の供給ロール26および28からの送り出し方向を模式的に示した図である。また、供給ロール26は、第1のフィルム16の金属反射層14(反射面)が、巻きの外面となるように巻き回されている。
【0034】
図5(A)においては、供給ロール26は供給ロール28の上方に配置される。また、供給ロール26は、図中時計回りに回転して第1のフィルム16を送り出す。一方、供給ロール28は、図中反時計回りに回転して第2のフィルム18を送り出す。すなわち、図に示すように、第1のフィルム16の巻きの内側の面と、第2のフィルム18の巻きの内側の面とが対向して、内面同士で張り合わされる。
【0035】
このように、本発明においては、好ましい態様として、ロールの巻きの内面同士を貼り合せる。これにより、第1のフィルム16および第2のフィルム18の反り(カール)の方向が互いに反対方向になるので、フィルム同士が互いに、他方のフィルムの反りを抑制し、フィルムミラー10がカールすることを抑制して正反射性が低下することを防止できる。
【0036】
なお、第2態様の場合も同様に、ロールの巻きの内面同士を貼り合せてもよい(
図5(B))。この場合は、供給ロール26は、金属反射層14が巻きの内面側となるように巻き回されている。
あるいは、
図5(C)(第1態様)および
図5(D)(第2態様)に示すように、ロールの巻きの外面同士を貼り合せてもよい。外面同士を貼り合せる場合は、上方に配置される供給ロールが図中反時計回りに回転され、下方に配置される供給ロールが図中時計回りに回転される。
【0037】
なお、積層されたフィルムの貼り合せ面が巻きの内面か外面かは、フィルムを剥がして、そのカール方向から判断することができる。
【0038】
また、第1のフィルム16の巻き方向と第2のフィルム18の巻き方向とが交差する構成と、主たる延伸方向が交差する構成と、巻きの内面(外面)同士を貼り合せる構成とを適宜組み合わせてもよい。
【0039】
また、図示例においては、第1のフィルム16と第2のフィルム18とを積層する構成としたが、これに限定はされず、さらに、樹脂基材からなるフィルムを少なくとも1枚、第1のフィルム18の第1のフィルム16とは反対側の面に積層してもよい。
【0040】
以下に、フィルムミラーを構成する各層(金属反射層、樹脂基材、表面被覆層など)について詳述する。
【0041】
(樹脂基材)
樹脂基材(第1の樹脂基材および第2の樹脂基材を含む。以下、同様。)は特に限定されず、その構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリエーテルサルフォン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;スチレン系樹脂;セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;等が挙げられる。なお、第1のフィルムの樹脂基材および第2の樹脂基材の構成材料は、それぞれ同一材料であっても異なる材料であってもよいが、同一材料であることが好ましい。同一材料とすることにより、より好適に反りを抑制することができる。
これらのうち、得られるフィルムミラーの反射率および耐候性の観点から、ポリエステル系樹脂またはアクリル系樹脂が好ましい。
【0042】
樹脂基材の形状は平面状に限定されず、例えば、凹面状、凸面状などのいずれであってもよい。
【0043】
(金属反射層)
金属反射層は特に限定されず、その構成材料(金属)としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni、Co、Mn、Tl、Cr、V、Ru、Rh、Ir、Al等が挙げられる。
これらのうち、得られるフィルムミラーの反射率および耐候性の観点から、Ag、Al、NiまたはCuであることが好ましく、Agであることがより好ましい。
また、金属反射層を構成する金属がAgである場合、金属反射層中のAgの含有量は、金属反射層を構成する全金属に対して、30mol%以上であることが好ましく、50mol%以上であることがより好ましく、80mol%以上であることがさらに好ましく、95mol%以上であることが特に好ましく、100mol%であることが最も好ましい。
【0044】
金属反射層の形状は特に限定されず、樹脂基材の主面の全てを覆う層であっても、一部を覆う層であってもよい。
金属反射層の厚みは特に限定されないが、フィルムミラーの反射率等の観点から、50〜500nmが好ましく、70〜300nmがより好ましい。
【0045】
金属反射層の形成方法は特に限定されず、湿式法および乾式法のいずれも採用することができる。
湿式法としては、例えば、いわゆる金属めっき法(無電解めっき、または、電気めっき)として公知の方法が挙げられる。
また、乾式法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
本発明においては、金属反射層の形成方法の好適態様として、例えば、(i)樹脂基材にプライマー層を形成し、(ii)形成したプライマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与し、(iii)めっき触媒またはその前駆体が付与されたプライマー層に対してめっきする方法、などが挙げられる。
以下、上記(i)〜(iii)の各工程について詳述する。
【0046】
(工程(i):プライマー層形成工程)
工程(i)は、樹脂基材にプライマー層を形成する工程である。
ここでプライマー層は、樹脂基材と金属反射層との間に配置される層であり、両者の密着性を高める層である。
プライマー層は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基および重合性基を有するポリマーを含む層に、加熱処理と光照射処理の少なくとも一方(以下、エネルギー付与ともいう)を施して得られる。
以下では、まず、使用されるポリマーについて詳述し、その後工程(i)の手順について詳述する。
【0047】
プライマー層に使用されるポリマーには、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以後、相互作用性基とも称する)および重合性基が含まれる。相互作用性基は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する基であり、金属反射層とプライマー層との密着性を高める役割を果たす。重合性基は、後述する加熱処理と光照射処理の少なくとも一方を施すことにより、架橋反応が進行し、プライマー層の強度を高めると共に、その一部が樹脂基材と反応して樹脂基材とプライマー層との密着性を高める役割を果たす。
【0048】
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと樹脂基材との間で化学結合を形成しうる官能基であればよい。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、なかでも、ラジカル重合反応性、合成汎用性の観点から、メタクリロイル基、アクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基がより好ましく、耐アルカリ性の観点から、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が更に好ましい。
【0049】
相互作用性基は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する基であればその種類は特に制限されず、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホン酸塩構造を含む基、スルホン酸基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフェート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、極性が高く、金属への吸着能が高いことから、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、およびボロン酸基などのイオン性極性基や、エーテル基またはシアノ基などの非解離性官能基がより好ましい。
【0050】
ポリマー合成の容易性、および、樹脂基材と金属反射層との密着性の観点から、ポリマー中には下記式(1)で表されるユニット(繰り返し単位)、および、下記式(2)で表されるユニットが含まれることが好ましい。
【0052】
式(1)中、R
10は、水素原子またはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基など)を表す。
式(1)中、L
2は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基)、置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12。例えば、フェニレン基)、−O−、−S−、−SO
2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
式(1)中、R
11は、相互作用性基を表す。相互作用性基の定義、具体例および好適な態様は、上述のとおりである。
なお、ポリマー中においては、R
11で表される相互作用性基の種類が異なる2種以上の式(1)で表されるユニットが含まれていてもよい。例えば、R
11がイオン性極性基である式(1)で表されるユニットと、R
11が非解離性官能基である式(1)で表されるユニットとが、ポリマー中に含まれていてもよい。
【0053】
式(2)中、R
12〜R
15は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
R
12〜R
15が、置換または無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0054】
なお、R
12としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R
13としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R
14としては、水素原子が好ましい。R
15としては、水素原子が好ましい。
【0055】
式(2)中、L
3は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基の具体例および好適な態様は、上記式(1)中のL
2と同じである。
【0056】
ポリマーの最好適範囲としては、下記式(A)で表されるユニットと、下記式(B)で表されるユニットと、下記式(C)で表されるユニットとを含む共重合体、下記式(A)で表されるユニットと下記式(B)で表されるユニットとを含む共重合体、下記式(A)で表されるユニットと下記式(C)で表されるユニットとを含む共重合体、などが挙げられる。
【0058】
上記式(A)〜(C)中、R
21〜R
26は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。X、Y、Z、およびUは、それぞれ独立して、単結合または2価の連結基を表す。L
4、L
5、およびL
6は、それぞれ独立して、単結合または2価の連結基を表す。Wは、非解離性官能基からなる相互作用性基を表す。Vは、イオン性極性基からなる相互作用性基を表す。2価の連結基の具体例および好適な態様は、上記式(1)中のL
2と同じである。
式(A)で表されるユニットにおいて、YおよびZは、それぞれ独立に、エステル基、アミド基、フェニレン基(−C
6H
4−)が好ましい。L
4は、炭素数1〜10の置換または無置換の2価の有機基(特に、炭化水素基)であることが好ましい。
式(B)で表されるユニットにおいて、Wは、シアノ基またはエーテル基であることが好ましい。また、XおよびL
5は、いずれも単結合であることが好ましい。
式(C)で表されるユニットにおいて、Vはカルボン酸基であることが好ましく、また、Vがカルボン酸基であり、且つ、L
6がVと連結する部分において4員〜8員の環構造を含む態様が好ましく、更に、Vがカルボン酸基であり、且つ、L
6の鎖長が6原子〜18原子である態様も好ましい。さらに、式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、UおよびL
6が単結合であることも好ましい態様の1つである。なかでも、Vがカルボン酸基であり、且つ、UおよびL
6のいずれも単結合である態様が最も好ましい。
【0059】
式(A)〜式(C)で表されるユニットの含有量は、以下の範囲が好ましい。
すなわち、式(A)で表されるユニットと式(B)で表されるユニットと式(C)で表されるユニットとを含む共重合体の場合には、式(A)で表されるユニット:式(B)で表されるユニット:式(C)で表されるユニット=5〜50mol%:5〜40mol%:20〜70mol%であることが好ましく、10〜40mol%:10〜35mol%:20〜60mol%であることがより好ましい。
また、式(A)で表されるユニットと式(B)で表されるユニットとを含む共重合体の場合には、式(A)で表されるユニット:式(B)で表されるユニット=5〜50mol%:50〜95mol%であることが好ましく、10〜40mol%:60〜90mol%であることがより好ましい。
さらに、式(A)で表されるユニットと式(C)で表されるユニットとを含む共重合体の場合は、式(A)で表されるユニット:式(C)で表されるユニット=5〜50mol%:50〜95mol%であることが好ましく、10〜40mol%:60〜90mol%であることがより好ましい。
この範囲にて、加熱処理または光照射処理によるポリマーの重合性の向上、プライマー層の抵抗値の低下、また耐湿密着力の向上などが達成される。
【0060】
上記ポリマーを含む層の形成方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、上記ポリマーを含む層形成用組成物を樹脂基材上に塗布して、必要に応じて乾燥処理を施して層を形成する方法が挙げられる。
【0061】
上記ポリマーを含む層には、加熱処理と光照射処理の少なくとも一方が施される。上記ポリマーを含む層に実施される処理は、加熱処理および光照射処理の一方のみが実施されても、両者が実施されてもよい。また、両者の処理を実施する場合、別々の工程で実施してもよいし、同時に実施してもよい。
これらの処理を実施することにより、重合性基が活性化され、重合性基間および重合性基と樹脂基材との間で反応が進行し、樹脂基材上に密着したプライマー層が形成される。
【0062】
加熱処理の条件は使用されるポリマーの種類に応じて最適な条件が選択されるが、なかでもプライマー層の架橋密度が高まり、フィルムミラーの耐侯性およびフレキシブル性が高まる点で、60〜150℃(好ましくは、80〜120℃)で0.1〜3時間(好ましくは、0.5〜2時間)処理することが好ましい。
光照射処理の条件は使用されるポリマーの種類に応じて最適な条件が選択されるが、なかでもプライマー層の架橋密度が高まり、フィルムミラーの耐侯性およびフレキシブル性がより高まる点で、露光量は10〜8000mJ/cm
2が好ましく、100〜3000mJ/cm
2がより好ましい。露光波長は200〜300nmが好ましい。
なお、露光に使用される光源は特に制限されず、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。
【0063】
なお、加熱処理または光照射処理後に、適宜、加熱処理または光照射処理後の組成物から未反応のポリマーを除去してもよい。除去方法としては、溶媒を使用する方法が挙げられ、例えば、ポリマーを溶解する溶剤や、アルカリ可溶性のポリマーの場合はアルカリ系現像液(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液)などで除去することができる。
【0064】
プライマー層の厚みは特に制限されないが、フィルムミラーの耐侯性およびフレキシブル性が優れる点で、0.05〜10μmが好ましく、0.3〜5μmがより好ましい。
【0065】
(工程(ii):触媒付与工程)
触媒付与工程は、プライマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程である。本工程においては、めっき触媒またはその前駆体が、プライマー層中の相互作用性基に吸着する。例えば、めっき触媒前駆体として金属イオンを使用した場合は、金属イオンがプライマー層に吸着する。
めっき触媒またはその前駆体としては、後述する「工程(iii):めっき工程」における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
以下に、使用されるめっき触媒(例えば、無電解めっき触媒)またはその前駆体について詳述する。
【0066】
無電解めっき触媒としては、無電解めっき時の活性核となり得るものが好ましい。例えば、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。なかでも、触媒能の高さから、PdまたはAgが好ましい。
【0067】
無電解めっき触媒前駆体としては、化学反応により無電解めっき触媒となり得るものが好ましい。例えば、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンをプライマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いてプライマー層に付与されることが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO
3)
n、MCl
n、M
2/n(SO
4)、M
3/n(PO
4)Pd(OAc)
n(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられる。なかでも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数および触媒能の点で、Agイオン、Cuイオン、Pdイオンが好ましい。
【0068】
なお、無電解めっき触媒前駆体をめっき工程の前に還元させる場合、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤と還元剤を活性化するためのpH調整剤が含有される場合が多い。
液全体に対する還元剤の濃度は、0.1〜10質量%が好ましい。
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
特に、ホルムアルデヒドを含有するアルカリ水溶液で還元することが好ましい。
【0069】
なお、めっき触媒として、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒を使用してもよい。このような触媒としては、例えば、0価金属が挙げられ、より具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。なかでも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0070】
めっき触媒またはその前駆体をプライマー層に付与する方法としては、これらを含む溶液(例えば、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液)を調製し、その分散液若しくは溶液をプライマー層上に塗布するか、または、その分散液若しくは溶液中にプライマー層が形成された樹脂基材を浸漬すればよい。
【0071】
(工程(iii):めっき工程)
めっき工程は、めっき触媒またはその前駆体が付与されたプライマー層に対し、めっき処理を施すことで、金属反射層を形成する工程である。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっきが挙げられ、上記触媒付与工程でプライマー層に付与されためっき触媒またはその前駆体の機能によって、適宜選択することができる。つまり、本工程では、めっき触媒またはその前駆体が付与されたプライマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
以下、本工程において好適に行われるめっき処理について説明する。
【0072】
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与されたプライマー層を備える樹脂基材を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与されたプライマー層を備える樹脂基材を、無電解めっき触媒前駆体がプライマー層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を洗浄して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬することが好ましい。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
【0073】
本工程おいては、付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、めっき触媒またはその前駆体が付与されたプライマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、得られるフィルムミラーの反射率がより向上する理由から、銀が好ましい。
また、上述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、さらに、電気めっきを行ってもよい。
なお、めっきに用いる銀化合物としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、メタンスルホン酸銀、アンモニア銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。なかでも、得られるフィルムミラーの反射率がより向上する理由から、メタンスルホン酸銀が好ましい。
【0074】
(表面被覆層)
表面被覆層は特に限定されず、その構成材料としては、光を透過する透明性を有していればよい。例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどが挙げられ、なかでも、フレキシブル性に優れる点で樹脂が好ましい。
樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、シリコーン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などの光硬化性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂(尿素樹脂)、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂;フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォンなどの熱可塑性樹脂;等が挙げられる。なお、第2態様で用いる第1の表面被覆層および第2の表面被覆層の構成材料は、それぞれ同一材料であっても異なる材料であってもよい。
【0075】
表面被覆層の厚みは特に限定されないが、フィルムミラーの耐侯性およびフレキシブル性がより優れる点で、10〜200μmが好ましく、25〜100μmがより好ましい。
【0076】
表面被覆層の形成方法は特に限定されないが、例えば、所定の樹脂基板を金属反射層上に貼り合わせる方法や、上述した光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を含有する硬化性組成物を金属反射層上に塗布した後、紫外線照射による光硬化や加熱による加熱硬化する方法等が挙げられる。
【0077】
(プライマー層)
任意のプライマー層の構成材料は、各層間の密着性を向上させることができる材料であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
また、プライマー層の厚さは特に限定されず、0.1〜50μmであるのが好ましく、1〜30μmであるのがより好ましい。
また、プライマー層の形成方法は特に限定されず、例えば、ウレタンアクリル樹脂をプライマー層とする場合は、ウレタンアクリレート(例えば、ダイセル・サイテック社製のEBECRYL8402など)と光重合開始剤(例えば、チバスペシャリティケミカルズ製のイルガキュア184など)との混合溶液を樹脂基材の表面に塗布した後、紫外線照射により光硬化させる方法等が挙げられる。
【0078】
(接着層)
任意の接着層の構成材料は、密着性や平滑性を満足するものであれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエステル系樹脂、アクリレート系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、接着層の厚さは特に限定されず、密着性、平滑性、反射率等の観点から、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.1〜2μmであるのがより好ましい。
また、接着層の形成方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、スクリーンコーター、バーコーター、カーテンコーター等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0079】
(バックコート層)
任意のバックコート層の形成材料は特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂や、上述した表面被覆層に含有する樹脂等が挙げられる。
また、バックコート層の厚さは特に限定されず、0.5〜50μmであるのが好ましく、1〜30μmであるのがより好ましい。
また、バックコート層の形成方法は特に限定されず、例えば、上述した光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂をバックコート層とする場合は、これらの樹脂を含有する硬化性組成物を上樹脂基材の裏面に塗布した後、紫外線照射による光硬化や加熱による加熱硬化する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
<実施例1>
実施例1として、
図1(A)に示す第1態様のフィルムミラーを作製した。なお、フィルムミラーの大きさは、500mm×500mm四方とした。
〔第1のフィルムの形成〕
第1の樹脂基材としてPET基材(厚み:250μm、富士フイルム社製)を用いた。
(プライマー層の形成)
PET基材上に、式(3)で表されるアクリルポリマーを含む溶液を、厚さ500nmになるようにスピンコート法により塗布し、80℃にて5分乾燥して塗膜を得た。
【0082】
【化3】
【0083】
ここで、式(3)中の数値は各ユニットの割合(mol%)を表す。
式(3)で表されるアクリルポリマーの合成方法は以下のとおりである。
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに、原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーM1を精製し20g得た。
【0084】
【化4】
【0085】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下65℃まで加熱した。そこへ、上記で得たモノマーM1:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応溶液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54gを加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、式(3)で表されるアクリルポリマー(重量平均分子量5.3万)を12g得た。
【0086】
また、式(3)で表されるアクリルポリマーを含む溶液の調製法は以下のとおりである。
式(3)で表されるアクリルポリマー(7質量部)、1−メトキシ−2−プロパノール(74質量部)、水(19質量部)の割合で混合し、さらにこの混合溶液に対して、光重合開始剤(エサキュアKTO−46、ランベルディー社製)(0.35質量部)を添加して、攪拌混合し、式(3)で表されるアクリルポリマーを含む溶液を得た。
【0087】
上記塗膜に対して、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用いて、254nmの波長で1000mJ/cm
2の積算露光量にて照射を行い、プライマー層(厚み:500nm)を形成した。
なお、プライマー層から未反応のポリマーを除去するために現像を行った。具体的には、上記プライマー層付きPET支持体を1wt%炭酸水素ナトリウム水溶液中に5分間浸漬した。その後純水で洗浄した。
【0088】
(金属反射層の形成)
次に、プライマー層付きPET支持体を1wt%硝酸銀水溶液中に5分間浸漬し、その後純水で洗浄して、無電解めっき触媒前駆体(銀イオン)が付与されたプライマー層付きPET支持体を得た。
さらに、得られたプライマー層付き樹脂基材を、0.14wt%のNaOHと0.25wt%のホルマリンとを含むアルカリ水溶液(pH12.5)(還元剤に該当)に1分間浸漬し、その後純水で洗浄して、還元金属(銀)が付与されたプライマー層付きPET支持体を得た。
【0089】
次に、還元金属(銀)が付与されたプライマー層に対して、以下の電気めっき処理を行い、プライマー層上に厚み100nmの金属(銀)反射層を形成した。
電気めっき液として、ダインシルバーブライトPL50(大和化成社製)を用い、8M水酸化カリウムによりpH9.0に調整した。還元金属を表面にもつプライマー層付きPET支持体を、電気めっき液に浸漬し、0.5A/dm
2にて15秒間めっきし、その後、純水で1分間掛け流しにより洗浄した。
【0090】
次に、表面被覆層として、ポリビニルブチラール(積水化学社製 BL−1)を厚み15μmとなるように金属反射層上に形成した。
【0091】
〔第2のフィルムの積層〕
次に、上記工程で得られた第1のフィルムに第2のフィルムを貼り合せた。
第2のフィルム(第2の樹脂基材)として、第1の樹脂基材と同じPET基材(厚み:250μm、富士フイルム社製)を用いた。
接着剤として、LIS−825(東洋インキ社製):44質量%、LCR−901(東洋インキ社製):4.4質量%を、酢酸エチル:52質量%に溶解させ、接着剤溶液を調整した。
得られた接着剤溶液を、第1のフィルムの金属反射層とは反対側の面に、乾燥後の膜厚が約10μmとなるように、バーコート法により塗布し、室温で2分間および80℃で10分間乾燥した。
その後、上記第2の樹脂基材を接着剤溶液に貼り合せた(ラミネート速度0.1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)。その際、第1のフィルムと第2のフィルムとの巻き方向の交差角度を90度とし、貼り合せ面は巻きの外面同士とした。その後、約60℃で12時間加熱することで接着剤を硬化させて反射ミラーを作製した。
【0092】
下記第1表中に、作製したフィルムミラーの第1のフィルムの厚みd1、第2のフィルムの厚みd2および全体の厚みd0、第1のフィルムと第2のフィルムの厚み比d2/d1、樹脂基材の種類、タイプ、巻き方向の交差角度、延伸方向の交差角度、および、貼り合せ面を示す。
なお、下記表1、2中、タイプにおける「挟まない」とは、フィルムミラーの層構成が上述した第1態様(
図1)であることを表し、「挟む」とは、フィルムミラーの層構成が上述した第2態様(
図2)であることを表す。
【0093】
<実施例2>
第1の樹脂基材および第2の樹脂基材として、それぞれ主たる延伸方向が巻き方向に対して45度傾いているPET基材を用い、第1のフィルムと第2のフィルムとの巻き方向の交差角度を0度とし、延伸方向の交差角度を90度とし、貼り合せ面を巻きの内面同士とした以外は、実施例1と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0094】
<実施例3>
貼り合せ面を巻きの内面と外面とした以外は、実施例1と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0095】
<実施例4>
貼り合せ面を巻きの内面と外面とした以外は、実施例2と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0096】
<実施例5>
巻き方向の交差角度を0度とし、貼り合せ面を巻きの内面同士とした以外は、実施例1と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0097】
<実施例6>
貼り合せ面を巻きの内面と外面とした以外は、実施例5と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0098】
<実施例7>
第2のフィルムの厚みを125μmとした以外は、実施例3と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0099】
<実施例8>
第1のフィルムの厚みを125μmとした以外は、実施例3と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0100】
<実施例9>
第2の樹脂基材をPMMAとした以外は、実施例2と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0101】
<実施例10>
実施例10として、
図2(Aに示す)第2態様のフィルムミラーを作製した。
厚みを125μmとし、表面被覆層を形成しない以外は、実施例1と同様の方法により、第1のフィルムを形成した。
〔第2のフィルムの積層〕
次に、第2のフィルム(第2の樹脂基材)として、PMMA基材(厚み:75μm、住友化学社製、S001G)を用いた。
接着剤として、LIS−825(東洋インキ社製):44質量%、LCR−901(東洋インキ社製):4.4質量%を、酢酸エチル:52質量%に溶解させ、接着剤溶液を調整した。
得られた接着剤溶液を第1のフィルムの金属反射層上に、乾燥後の膜厚が約10μmとなるように、バーコート法により塗布し、室温で2分および80℃で10分間乾燥した。
その後、上記第2の樹脂基材を接着剤溶液に貼り合せた(ラミネート速度0.1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)。その際、第1のフィルムと第2のフィルムとの巻き方向の交差角度を90度とし、貼り合せ面は巻きの内面と外面とした。その後、約60℃で12時間加熱することで接着剤を硬化させて反射ミラーを作製した。
【0102】
<実施例11>
貼り合せ面を巻きの内面同士とした以外は、実施例10と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0103】
<実施例12>
第1のフィルムの厚みを75μmとし、第2のフィルムの厚みを125μmとした以外は、実施例10と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0104】
<実施例13>
貼り合せ面を巻きの内面同士とした以外は、実施例12と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0105】
<実施例14>
第1のフィルムの厚みを250μmとした以外は、実施例12と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0106】
<実施例15>
貼り合せ面を巻きの内面同士とした以外は、実施例14と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0107】
<比較例1>
第1のフィルムの厚みを25μmとし、第2のフィルムの厚みを75μmとした以外は、実施例5と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0108】
<比較例2>
第2のフィルムの厚みを188μmとし、巻き方向の交差角度を0度とし、延伸方向の交差角度を90度とした以外は、実施例12と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0109】
<比較例3>
第1のフィルムの厚みを25μmとし、巻き方向の交差角度を0度とし、延伸方向の交差角度を90度とした以外は、実施例10と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0110】
<比較例4>
第1のフィルムの厚みを50μmとし、第2のフィルムの厚みを50μmとし、延伸方向の交差角度を90度とした以外は、実施例10と同様の方法により、フィルムミラーを作製した。
【0111】
作製した各フィルムミラーについて、拡散反射成分の割合(正反射性)、歪みおよび反りを以下に示す方法で評価した。結果を下記表1に示す。
なお、各評価は、フィルムミラーを筐体に装着して行った。筐体として、アルミニウムの厚さ3mmの板を用いた。このアルミニウム板に接着剤(東洋インキ、LIS825)を10μm塗布して貼り合せて評価した。
【0112】
<拡散反射成分の比率(正反射性)>
作製した各フィルムミラーの正反射性の評価は、全反射光に対する拡散成分のエネルギー比率を算出して行った。
具体的には、各フィルムミラーを筐体に装着して、光源用LEDからフィルムミラー上に光を照射させ、その反射光をレンズを通して、CCDイメージセンサに画像として受光させ、得られた画像における正反射成分と拡散成分との合計面積中の拡散成分の占める割合から算出した。
結果を表1、表2に示す。
【0113】
<歪み>
作製した各フィルムミラーの歪みは、5cm置きの点に、上記のように光源用LEDからフィルムミラー上に光を照射させ、その反射光をレンズを通してCCDイメージセンサに画像として受光させ、本来受光すべき場所からのずれ角度を測定し、以下の基準に従って、評価した。
AA:ずれ角度の平均が5%以下であった。
A:ずれ角度の平均が15%未満であった。
B:ずれ角度の平均が25%未満であった。
C:ずれ角度の平均が25%以上であった。
結果を表1、表2に示す。
【0114】
<反り>
各反射ミラーを100mm角に裁断し、平滑な面に置いたときの接地点からフィルム4隅の浮き上がった部分までの高さを測定した。
AA:4隅の浮き上がりがない。
A:4隅の浮き上がりがほとんどない。
B:4隅の浮き上がりが平均で数mm程度あった。
C:4隅の浮き上がりが平均で10mm以上であった。
結果を表1、表2に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1および表2に示す結果から、各フィルムの厚さd1、d2、d0および厚さ比d2/d1が本発明の範囲を外れる比較例1〜4は、拡散反射成分の比率が25%以上と大きくなることがわかる。
これに対して、本発明のフィルムミラーである実施例1〜15は、いずれも拡散反射成分の比率が18%以下と低く、正反射性が良好となることが分かった。また、歪みや反りについても優れることがわかる。
【0118】
また、実施例1〜9と実施例10〜15との対比から、金属反射層を挟まない構成とすると、金属反射層の下層の厚みが厚くなるため、筐体の凹凸の影響による反りや歪みをより好適に低減でき、拡散反射成分の比率を低くすることができ、正反射性が良好となることがわかる。
また、実施例1、2、3、4と実施例5、6との対比等から、巻き方向を交差させる構成や延伸方向を交差させる構成とすると、反りを抑制でき正反射性が良好になることがわかる。
また、実施例1、2と実施例3、4との対比、実施例12と実施例13との対比、実施例14と実施例15の対比等から貼り合せ面を内面同士あるいは外面同士とすると反りが抑制されて正反射性が良好となることがわかる。
また、実施例1〜6と実施例7、8との対比から、第1の樹脂基材と第2の樹脂基材とを同じ厚さとすることにより、反りを好適に抑制でき正反射性が良好となることがわかる。
また、実施例2と実施例9との対比から第1の樹脂基材と第2の樹脂基材とを同じ材質とすることにより、歪みや反りが抑制されて正反射性が良好となることがわかる。
また、実施例10、11と実施例12、13との対比から、金属反射層の下層の厚みを100μmとすることにより、歪みや反りが抑制されて正反射性が良好となることがわかる。