(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書中、「xx〜yy」の記載は、xx及びyyを含む数値範囲を表す。
「(メタ)アクリレート」等は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等と同義であり、以下同様とする。
「(成分A)重量平均分子量1,000以上の高分子開始剤」等を、単に「成分A」等ともいう。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
(インク組成物)
本発明のインク組成物は、(成分A)重量平均分子量1,000以上の高分子開始剤、(成分B)重合性化合物、及び、(成分C)着色剤、を含み、成分Aが、アシルホスフィンオキシド構造を有し、上記アシルホスフィンオキシド構造が、そのアシル基側で成分Aの主鎖又はコアに結合していることを特徴とする。
【0022】
本発明のインク組成物は、活性線により硬化可能なインク組成物である。「活性線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
また、本発明のインク組成物は、活性放射線硬化型のインク組成物であり、油性インク組成物であることが好ましい。本発明のインク組成物は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、インク組成物の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インク組成物(「インクジェットインク組成物」ともいう。)として好適に用いることができる。
更に、本発明のインク組成物は、パッケージ印刷用インク組成物として好適に用いることができ、パッケージ印刷用インクジェットインク組成物としてより好適に用いることができる。また、本発明のインク組成物は、食品パッケージ印刷用インク組成物として特に好適に用いることができる。
【0023】
アシルホスフィンオキシド化合物は、光によって分解し、ベンゾイルラジカルとフォスフィノイルラジカルとを生成するが、その反応性はベンゾイルラジカルがより低い。このため、硬化後のインク膜には、硬化に関与しなかった未反応のベンゾイルラジカルから生成したベンズアルデヒド化合物が多量に残存する。また、全ての開始剤が分解することはなく、未反応のアシルホスフィンオキシド化合物も存在する。
本発明者が詳細な検討を行った結果、アシルホスフィンオキシド構造のアシル基側で高分子量の化学構造と結合している高分子開始剤を含有するインク組成物に用いることで、残存しやすい前述の二つの化合物が重合性化合物と共に膜に取り込まれるため、当該インク組成物により形成された画像から溶出する低分子化合物の量及び画像から生じる臭気を低減することが可能であることを見出した。
例えば、従来の活性線硬化型のインクジェット印刷により得た印刷物は、硬化膜から未反応の重合開始剤、重合開始剤残渣等が移動するという問題があり、特に、食品包装用等のパッケージ印刷に使用する場合には、パッケージ内包物に転写する量、いわゆる、マイグレーション(溶出、転移)量が多いという問題があった。また、硬化膜の臭気が強く、内包物や周囲の食品に臭いが移るという問題もあった。更に、低分子化合物が膜中に残存することで、膜の強度が低下し、支持体との密着性が低下するという問題もあった。
本発明のインク組成物を用いることにより、記録媒体との密着性に優れるだけでなく、膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、印刷物の臭気が抑制された印刷物を提供することができる。
以下、本発明のインク組成物について、詳細に説明する。
【0024】
(成分A)重量平均分子量1,000以上の高分子開始剤
本発明のインク組成物は、(成分A)重量平均分子量1,000以上の高分子開始剤を含み、成分Aが、アシルホスフィンオキシド構造を有し、上記アシルホスフィンオキシド構造が、そのアシル基側で成分Aの主鎖又はコアに結合していることを特徴とする。
成分Aの重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であり、1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000であることがより好ましく1,000〜10,000であることが更に好ましく、1,000〜4,000であることが特に好ましく、1,000〜3,000であることが最も好ましい。上記範囲であると、得られる画像から溶出する低分子化合物の量及び得られる画像から生じる臭気が低減でき、また、硬化性及び重合性化合物への相溶性に優れる。ここで重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
成分Aは、高分子開始剤であり、その高分子量部分である、一般的な樹脂構造を有するものであると主鎖に、デンドリマーや樹状高分子、スターポリマー等の多分岐高分子であるとコアに、上記アシルホスフィンオキシド構造のアシル基側で結合している。
【0025】
成分Aは、モノアシルホスフィンオキシド構造又はビスアシルホスフィンオキシド構造を有することが好ましく、モノアシルホスフィンオキシド構造を有することが、製造の観点から、より好ましい。上記態様であると、得られる画像から溶出する低分子化合物の量及び得られる画像から生じる臭気がより低減でき、また、インク組成物のインクジェット吐出性及び分散安定性により優れる。
成分Aがビスアシルホスフィンオキシド構造を有する場合、リン原子に結合する2つのアシル基の少なくとも1つのアシル基側で成分Aの主鎖又はコアに結合していればよいが、リン原子に結合する2つのアシル基がいずれもアシル基側で成分Aの主鎖又はコアに結合していることが好ましい。上記態様であると、得られる画像から溶出する低分子化合物の量及び得られる画像から生じる臭気がより低減できる。
上記アシル基における成分Aの主鎖又はコアとの結合位置は、アシル基の任意の位置に結合することができる。また、上記結合数は、1つのアシル基に1つ以上であればよいが、製造適性の観点から、1つのアシル基に1つであることが好ましい。
成分Aが有するアシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよいが、吸収波長の観点から、芳香族アシル基であることが好ましく、置換基を有していてもよい、成分Aの主鎖又はコアと直接又は連結基を介して結合したベンゾイル基であることがより好ましい。
また、上記アシル基が上記ベンゾイル基である場合、成分Aの主鎖又はコアが直接又は連結基を介して結合する位置は、ベンゼン環上のカルボニル基の結合位置を1位として、2位、4位及び/又は6位であることが好ましく、また、製造適性の観点から、少なくとも4位であることが好ましい。
【0026】
成分Aにおけるアシル基は、成分Aの主鎖又はコアに結合する基以外に、任意の置換基を有することができる。置換基としては、アルキル基、アリール基、及び、アルコキシ基が好ましく挙げられ、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及び、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましく挙げられ、メチル基が特に好ましく挙げられる。
また、上記成分Aの主鎖又はコアに結合する基としては、特に制限はないが、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数2〜12の鎖状若しくは環状アルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の上記アルキレン基、上記アルケニレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基が好ましく挙げられる。また、上記成分Aの主鎖又はコアに結合する基の炭素数は、1〜40であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましい。
【0027】
成分Aにおけるアシルホスフィンオキシド構造は、下記式(1)又は式(2)で表される構造であることが好ましい。
【0028】
【化7】
(式中、R
1はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基を表し、R
1のうち少なくとも1つは成分Aの主鎖又はコアに連結する連結基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、nは1〜5の整数を表し、R
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基を表し、R
4のうち少なくとも1つは成分Aの主鎖又はコアと連結する連結基であり、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、mは1〜7の整数を表す。)
【0029】
式(1)におけるR
1とベンゼン環との結合位置は、特に制限はなく、任意の位置であればよい。
nは、1〜3の整数であることが好ましく、2又は3であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。
式(2)におけるR
4又はリン原子に結合しているカルボニル基とナフタレン環との結合位置は、特に制限はなく、任意の位置であればよい。また、式(2)におけるリン原子に結合しているカルボニル基とナフタレン環との結合位置は、ナフタレン環の1位であることが好ましい。
mは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、式(2)におけるR
4とナフタレン環との結合位置は、少なくともナフタレン環の2位であることが好ましい。
R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。上記アルキル基及びアリール基は、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子が挙げられる。
R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基であることがより好ましく、メチル基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基であることが更に好ましい。上記態様であると、膜中成分のマイグレーションがより少なく、臭気がより抑制された印刷物が得られる。
また、成分A中に式(1)又は式(2)で表される基が複数存在する場合、2以上の式(1)又は式(2)で表される基は、互いに異なっていても同じであってもよいが、同じであることが好ましい。
【0030】
成分Aにおける上記アシルホスフィンオキシド構造は、下記式(1−1)で表される構造であることがより好ましい。また、上記式(1)は、下記式(1−1)であることがより好ましい。
【0031】
【化8】
(式中、R
11〜R
13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基を表し、R
11〜R
13のうち少なくとも1つは成分Aの主鎖又はコアに連結する連結基であり、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。)
【0032】
R
11〜R
13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基であることがより好ましく、メチル基又は成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基であることが更に好ましい。上記態様であると、膜中成分のマイグレーションがより少なく、臭気がより抑制された印刷物が得られる。
また、R
11〜R
13におけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
R
14及びR
15はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。上記アルキル基及びアリール基は、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子が挙げられる。
また、R
11〜R
13における成分Aの主鎖若しくはコアに連結する連結基は、ベンゼン環とメチレン基を介して結合する連結基であることが好ましい。
また、成分Aにおける上記アシルホスフィンオキシド構造は、下記式(1−2)で表される構造であることが更に好ましい。また、上記式(1)は、下記式(1−2)であることが更に好ましい。
【0033】
【化9】
(式中、R
21は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R
22及びR
23のうちの一方は、成分Aの主鎖又はコアに連結する連結基を表し、R
22及びR
23のうちの他方は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R
24及びR
25はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。)
【0034】
R
21は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基又であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。上記態様であると、膜中成分のマイグレーションがより少なく、臭気がより抑制された印刷物が得られる。
R
22及びR
23のうちの一方における成分Aの主鎖又はコアに連結する連結基は、ベンゼン環とメチレン基を介して結合する連結基であることが好ましい。
また、R
22及びR
23のうちの他方は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基又であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。上記態様であると、膜中成分のマイグレーションがより少なく、臭気がより抑制された印刷物が得られる。
また、R
21〜R
23におけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
R
24及びR
25はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。上記アルキル基及びアリール基は、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0035】
また、成分Aにおける高分子構造としては、特に制限はなく、成分Aとしては、例えば、アシルホスフィンオキシド構造を有する、(メタ)アクリル樹脂、多分岐高分子、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂等が例示できる。中でも、成分Aは、アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂、又は、アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子であることが好ましく、また、製造適性の観点からは、アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂であることが特に好ましく、インクジェット吐出性の観点からは、アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子であることが特に好ましい。
【0036】
本発明における(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物を単独重合又は少なくとも共重合した樹脂であれば特に制限はないが、(メタ)アクリル樹脂が有する全モノマー単位に対し、10モル%以上が(メタ)アクリレート化合物由来のモノマー単位であることが好ましく、50モル%以上が(メタ)アクリレート化合物由来のモノマー単位であることがより好ましく、80モル%以上が(メタ)アクリレート化合物由来のモノマー単位であることが更に好ましい。
また、本発明におけるモノマー単位は、重合後、モノマー単位を高分子反応により修飾したものも含むものとする。
アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、側鎖にアシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリレート化合物と共重合してもよいモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、スチレン化合物、オレフィン化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、クロトン酸エステル化合物、ビニルエステル化合物、マレイン酸ジエステル化合物、フマル酸ジエステル化合物、イタコン酸ジエステル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルケトン化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。
また、(メタ)アクリレート化合物やこれらモノマーは、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよいが、アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、単官能エチレン性不飽和化合物由来のモノマー単位を主として(50質量%以上)有する樹脂であることが好ましく、単官能エチレン性不飽和化合物由来のモノマー単位のみからなる樹脂であることがより好ましい。
【0038】
アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、下記式(A1)で表されるモノマー単位(構成単位)を有することが好ましい。
【0039】
【化10】
(式(A1)中、R
aは水素原子又はメチル基を表し、L
aは単結合又は二価の連結基を表し、Ar
Pは上記式(1)におけるベンゼン環又は式(2)におけるナフタレン環を表す。)
【0040】
R
aとしては、メチル基であることが好ましい。
L
aは、単結合、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数2〜12の鎖状若しくは環状アルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の上記アルキレン基、上記アルケニレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基であることが好ましく、単結合、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、又は、1以上の上記アルキレン基と1以上のエーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基であることがより好ましく、炭素数1〜8の鎖状アルキレン基、又は、1以上の炭素数1〜8の鎖状アルキレン基と1以上のエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
また、L
aは、分子量が小さいほうがインク組成物への添加量(質量%)あたりの硬化性の観点から好ましい。具体的には、L
aの分子量は、290以下であることが好ましく、170以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。また、14以上であることが好ましい。
Ar
Pは、式(1)又は式(2)における成分Aの主鎖又はコアに連結する連結基の結合位置で結合することを示す。
【0041】
また、式(A1)で表されるモノマー単位は、下記式(A2)〜式(A4)で表されるモノマー単位であることがより好ましい。
【0042】
【化11】
(式(A2)〜(A4)中、R
aは水素原子又はメチル基を表し、Ar
Pは上記式(1)におけるベンゼン環又は式(2)におけるナフタレン環を表す。)
【0043】
また、アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、下記式(A5)で表されるモノマー単位を有することが特に好ましい。
【0044】
【化12】
(式(A5)中、R
aは水素原子又はメチル基を表す。)
【0045】
また、アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、硬化性及び保存安定性の観点から、(ポリ)エーテル構造を有するモノマー単位を有することが好ましい。
(ポリ)エーテル構造を有するモノマー単位としては、下記式(A6)で表されるモノマー単位が好ましい。
【0046】
【化13】
(式中、R
aは水素原子又はメチル基を表し、L
bはエチレン基又はプロピレン基を表し、L
cは単結合又は二価の連結基を表し、R
bは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又はフェニル基を表し、nは1〜50を表す。)
【0047】
式(A6)におけるR
aは、重合時における各モノマーの重合速度の均一性の観点から、メチル基が好ましい。
R
bは、炭素数1〜8のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。また、上記R
bにおけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していてもよい。
L
bは−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、又は、−CH(CH
3)CH
2−であることが好ましく、エチレン基(−CH
2CH
2−)であることが特に好ましい。
L
cは、単結合又は炭素数1〜50の二価の連結基であることが好ましく、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基であることがより好ましく、単結合であることが更に好ましい。
式(A6)におけるnは、1〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜5であることが更に好ましい。
【0048】
アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂における(ポリ)エーテル構造を有するモノマー単位の含有量は、アシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂が有する全モノマー単位に対し、1〜50モル%であることが好ましく、2〜40モル%であることがより好ましく、5〜25モル%であることが更に好ましい。
【0049】
アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子は、末端にアシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子であることが好ましい。
また、アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子におけるアシルホスフィンオキシド構造の数は、1〜20であることが好ましく、3〜10であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。
上記多分岐高分子としては、少なくとも1以上の分岐を有する高分子であればよく、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー、樹状高分子、スターポリマー等が挙げられる。
アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子は、分子量(重量平均分子量)が、1,000以上5,000以下であることが好ましく、1,000以上3,000以下であることがより好ましい。
また、アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子は、例えばコアとして以下に示す構造を少なくとも有することが好ましいが、これらの構造に限定されない。
【0050】
【化14】
(式中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。)
【0051】
また、アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子が、上記式(1)及び/又は式(2)で表される構造を有する場合、上記多分岐高分子における上記式(1)及び/又は式(2)で表される構造以外の部分、及び、成分Aの主鎖又はコアに連結する連結基は、脂肪族構造であることが好ましく、p価の脂肪族炭化水素基(pは3以上の整数を表す。)、又は、1以上のq価の脂肪族炭化水素基(qは1以上の整数を表す。)と、1以上のエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及び/若しくはカルボニル基とを組み合わせた基であることがより好ましい。
アシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子は、少なくとも硫黄原子を有していることが好ましく、少なくともチオエーテル結合を有していることがより好ましい。
【0052】
成分Aの具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。また、各構成単位における括弧の右下の数字は、モル比を表す。また、Phはフェニル基を表し、t−Buはt−ブチル基を表し、i−Prはイソプロピル基を表す。
【0063】
本発明のインク組成物における成分Aの含有量については、特に制限はないが、インク組成物の全量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることが更に好ましく、4〜8質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れ、また、得られる画像から溶出する低分子化合物の量及び得られる画像から生じる臭気がより低減できる。
【0064】
(成分B)重合性化合物
本発明のインク組成物は、重合性化合物(単に「モノマー」又は「重合性モノマー」ともいう。)を含む。
重合性化合物としては、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
【0065】
重合性化合物は、反応速度、硬化膜物性、インク組成物の物性等を調整する目的で、1種又は複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。単官能重合性化合物の割合が大きいと硬化物は柔軟なものになりやすく、多官能重合性化合物の割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。したがって、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との割合は用途に応じて任意に決定されるものである。
【0066】
重合性化合物としては、光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性のモノマーを使用することもできる。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0067】
ラジカル重合性モノマーとして用いられる(メタ)アクリレート類としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、二官能の(メタ)アクリレート、三官能の(メタ)アクリレート、四官能の(メタ)アクリレート、五官能の(メタ)アクリレート、六官能の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
【0069】
4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
二官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
三官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキシド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
ラジカル重合性モノマーとして用いられる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0073】
ラジカル重合性モノマーとして用いられる芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0074】
更に、本発明に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、N−ビニルラクタム類(N−ビニルカプロラクタムなど)などが挙げられる。などが挙げられる。
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0075】
成分Bとしては、多官能エチレン性不飽和化合物を少なくとも含むことが好ましく、二官能エチレン性不飽和化合物及び三官能エチレン性不飽和化合物を少なくとも含むことがより好ましく、トリプロピレングリコールジアクリレート及びEO変性トリメチロールプロパントリアクリレートを少なくとも含むことが更に好ましく、トリプロピレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート及びPO変性ネオペンチルグリコールジアクリレートを少なくとも含むことが特に好ましい。上記態様であると、硬化性により優れ、硬化膜のマイグレーション及び臭気をより抑制することができる。
本発明のインク組成物における重合性化合物の含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全質量に対し、50〜95質量%が好ましく、55〜92質量%がより好ましい。
本発明のインク組成物における重合性化合物中の多官能重合性化合物の割合は、重合性化合物全量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。上記態様であると、硬化性により優れ、硬化膜のマイグレーション及び臭気をより抑制することができる。
【0076】
(成分C)着色剤
本発明のインク組成物は、着色剤を含有する。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0077】
顔料は、インク組成物の着色剤として機能するが、本発明においては、後述するような粒径の微細な上記顔料が、インク組成物中に均一、且つ安定に分散される結果、本発明のインク組成物は発色性に優れ、鮮鋭かつ耐候性に優れる画像が形成可能となる。
上記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等)も挙げられる。なお、上記顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載のものなどもが挙げられる。
【0078】
上記有機顔料及び無機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、青、シアン顔料、緑色顔料、オレンジ顔料、茶色顔料、バイオレット顔料、黒色顔料、白色顔料、などが挙げられる。
【0079】
上記イエロー顔料は、イエロー色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー219等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)等のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー166等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー24(フラバントロンイエロー等)等のアントラキノン顔料、C.I.ピグメントイエロー110(キノフタロンイエロー等)等のキノフタロン顔料、C.I.ピグメントイエロー139(イソインドリンイエロー等)等のイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー60(ピラゾロンイエロー等)等のピラゾロン顔料、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー194等のアセトロン顔料、C.I.ピグメントイエロー150等の金属錯塩顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)等のニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)等の金属錯塩アゾメチン顔料、C.I.ピグメントイエローなどが挙げられる。
【0080】
上記マゼンタ顔料は、赤あるいはマゼンタ色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)等のモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド6等のB−ナフトール顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B等)、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド48(B−オキシナフト酸レーキ等)のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242(縮合アゾレッド等)等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)、C.I.ピグメントレッド172(エリスロシンレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)等のチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)等のペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)等のアリザリンレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド208等のナフトロン顔料、C.I.ピグメントレッド247等のナフトールAS系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272等のジケトピロロピロール顔料などが挙げられる。
【0081】
上記シアン顔料は、青あるいはシアン色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16(フタロシアニンブルー等)等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)等のアルカリブルー顔料などが挙げられる。
【0082】
上記緑色顔料は、緑色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10等のアゾ金属錯体顔料などが挙げられる。
上記オレンジ顔料は、オレンジ色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ5等のΒ−ナフトール顔料、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ74等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントオレンジ61等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72等のアセトロン顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34等のピラゾロン顔料などが挙げられる。
上記茶色顔料は、茶色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32等のナフトロン顔料などが挙げられる。
上記バイオレット顔料は、紫色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントバイオレット32等のナフトロン顔料、C.I.ピグメントバイオレット29等のペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット17、C.I.ピグメントバイオレット50等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37等のジオキサジン顔料などが挙げられる。
【0083】
上記黒色顔料は、黒色を呈する顔料であり、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)等のインダジン顔料、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32などのペリレン顔料などが挙げられる。
上記白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCO
3Pb(OH)
2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO
2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)、などが挙げられる。白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
中でも、上記酸化チタンは、他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れていることから、好適に使用される。なお、上記酸化チタンに加えて他の白色顔料(上述した白色顔料以外のものであってもよい。)を併用してもよい。
【0084】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、などの分散装置を好適に使用することができる。
本発明においては、上記顔料の分散を行う際に、後述する分散剤を添加することが特に好ましい。
また、上記顔料の分散の際に、必要に応じて、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを添加してもよい。上記分散助剤の上記インク組成物における含有量としては、上記顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。
【0085】
上記顔料を上記インク組成物に分散させる際に使用する分散媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、低分子量である上記重合性化合物を該分散媒としてもよいし、溶媒を該分散媒としてもよい。ただし、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを記録媒体上に適用後、硬化させるため、上記溶媒を含まず無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このため、上記分散媒として、上記重合性化合物を用い、その中でも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが、分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の点で好ましい。
【0086】
上記顔料の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μm程度が好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、上記顔料の最大粒径としては、3μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記顔料の粒径は、上記顔料、分散剤、分散媒体の選択、分散条件、濾過条件の設定などにより調整することができ、上記顔料の粒径を制御することにより、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
なお、上記顔料の上記インク組成物における粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
【0087】
上記顔料のインク組成物における含有量としては、上記顔料が有機顔料の場合、固形分換算で、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。また、上記顔料が無機顔料の場合、固形分換算で、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
【0088】
(成分D)増感剤
本発明のインク組成物は、特定の活性線を吸収して成分A等の重合開始剤の分解を促進させるため、増感剤として機能する化合物(以下、単に「増感剤」ともいう。)を含有してもよい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)等が挙げられる。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明のインク組成物は、増感剤として、式(3)又は式(4)で表される化合物を含有することが好ましい。成分Aと併用することにより、膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、印刷物の臭気が抑制され、硬化性及び耐ブロッキング性に優れるインク組成物が得られる。
【0090】
【化25】
(式(3)及び式(4)中、R
101、R
102、R
103及びR
104はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、x及びyは、それぞれ独立に2〜4の整数を表し、j及びmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、k及びnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、j、k、m及びnが2以上の整数のとき、複数存在するR
101、R
102、R
103及びR
104はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X
101は炭化水素鎖、エーテル結合、エステル結合のいずれかを少なくとも含むx価の連結基を表し、X
102は炭化水素鎖、エーテル結合、エステル結合のいずれかを少なくとも含むy価の連結基を表す。)
【0091】
<式(3)で表される化合物>
本発明のインク組成物は、増感剤として、式(3)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(3)中、R
101及びR
102はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、上記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、また、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキル基であることがより好ましく、エチル基又はイソプロピル基であることが更に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が例示され、塩素原子であることが好ましい。
これらの中でも、R
101及びR
102はそれぞれ独立にエチル基、イソプロピル基又は塩素原子であることが特に好ましい。
式(3)中、jは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。jが2以上の整数の場合、複数存在するR
1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(3)中、kは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。kが2以上の整数の場合、複数存在するR
102は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(3)中、xは2〜4の整数を表し、3又は4であることがより好ましく、4であることが更に好ましい。
【0092】
式(3)中、X
101はエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−(C=O)−O−)を含んでいてもよい炭素数2〜300のx価の炭化水素鎖からなる、x価の連結基を表す。
なお、式(3)において、連結基であるX
101を除いたチオキサントン構造(式(1)中、[ ]内に表された構造)を複数(x個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
【0093】
上記式(3)で表される化合物において、チオキサントンへの置換位置を以下のように表すこととする。
【0095】
X
101の置換位置が1〜4位であるとした場合、X
101の置換位置は、2位、3位又は4位であることが好ましく、2位又は4位であることがより好ましく、4位であることが更に好ましい。
R
101の置換位置は、特に限定されないが、6位又は7位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。
また、R
102の置換位置は、特に限定されないが、1位、2位又は3位であることが好ましく、1位であることがより好ましい。
【0096】
式(3)で表される化合物は、下記式(3’)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
式(3’)におけるR
101、R
102、j及びkは、式(3)におけるR
101、R
102、j及びkとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。
式(3’)中、R
111はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(3’)中、rはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、rが2以上のとき、複数存在するR
111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
x’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y
101は少なくともx’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、x’個のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(x’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(3’)中、A
101は下記(i)〜(iii)よりなる群から選択される基を表す。
【0099】
【化28】
(式(i)〜式(iii)中、R
112及びR
113のいずれか一方は水素原子を表し、他方は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは4又は5の整数を表し、zは1〜20の整数を表し、*はカルボニル炭素との結合位置を表し、**はY
101との結合位置を表す。)
【0100】
A
101は、式(i)で表される基であることが好ましく、*−(OCH
2CH
2)
z−**、*−(OCH
2CH
2CH
2CH
2)
z−**、又は、*−O(CH(CH
3)CH
2)
z−**であることがより好ましい。この場合、zは3〜10の整数であることが好ましい。
【0101】
式(3)で表される化合物の分子量は、500〜3,000であることが好ましく、800〜2,500であることがより好ましく、1,000〜2,000であることが更に好ましい。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、式(3)で表される化合物が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
【0102】
以下に式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0105】
これらの中でも化合物(I−A)又は(I−E)が好ましく、化合物(I−E)がより好ましい。
【0106】
式(3)で表される化合物として、上市されている化合物を使用することもできる。具体的には、SPEEDCURE 7010(1,3-di({α-[1-chloro-9-oxo-9H-thioxanthen-4-yl]oxy}acetylpoly[oxy(1-methylethylene)])oxy)-2,2-bis({α-[1-chloro-9-oxo-9H-thioxanthen-4-yl]oxy}acetylpoly[oxy(1-methylethylene)])oxymethyl)propane、CAS No. 1003567-83-6)、OMNIPOL TX(Polybutyleneglycol bis(9-oxo-9H-thioxanthenyloxy)acetate、CAS No. 813452-37-8)が例示される。
【0107】
式(3)で表される化合物は、公知の反応により製造することができ、特に限定されないが、例えば、上記式(3’)で表される化合物は、下記式(3−1)で表される化合物と、下記式(3−2)で表される化合物とを反応させることにより調製することができる。
【0109】
式(3−1)及び式(3−2)におけるR
101、R
102、R
111、A
101、Y
101、j、k、r及びx’は、式(3’)におけるR
101、R
102、R
111、A
101、Y
101、j、k、r及びx’と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記の反応は溶媒の存在下で行うことが好ましく、適当な溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示される。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
反応終了後、反応混合物から公知の手段によって単離し、必要に応じて洗浄し、乾燥することによって、生成物を分離することができる。
【0110】
<式(4)で表される化合物>
本発明のインク組成物は、増感剤として、式(4)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0111】
【化32】
(式(4)中、R
103及びR
104はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、mは0〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表し、yは2〜4の整数を表し、m及びnが2以上の整数のとき、複数存在するR
103及びR
104はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X
102は炭化水素鎖、エーテル結合、エステル結合のいずれかを少なくとも含むy価の連結基を表す。)
【0112】
式(4)中、R
103及びR
104はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、上記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、また、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキル基であることがより好ましく、エチル基又はイソプロピル基であることが更に好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が例示され、塩素原子であることが好ましい。R
103及びR
104は、エチル基、イソプロピル基又は塩素原子であることが特に好ましい。
式(4)中、mは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。mが2以上の整数の場合、複数存在するR
103は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(4)中、nは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。mが2以上の整数の場合、複数存在するR
104は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(4)中、yは2〜4の整数を表し、2又は3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0113】
式(4)中、X
102は炭化水素鎖、エーテル結合(−O−)及びエステル結合(−(C=O)−O−)よりなる群から選択された少なくとも1つを含むy価の連結基を表す。
なお、式(4)において、連結基であるX
2を除いたベンゾフェノン構造(式(4)中、[ ]内に表された構造)を複数(y個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
【0114】
上記式(4)で表される化合物において、ベンゾフェノンへの置換位置を以下のように表すこととする。
【0116】
X
102の置換位置が1〜5位であるとした場合、X
102の置換位置は、2位又は3位であることが好ましく、3位であることがより好ましい。
R
103の置換位置は、特に限定されないが、2’位又は3’位であることが好ましく、3’位であることがより好ましい。
また、R
104の置換位置は、特に限定されないが、2位、3位又は4位であることが好ましい。
【0117】
式(4)で表される化合物は、下記式(4’)で表される化合物であることが好ましい。
【0119】
式(4’)におけるR
103、R
104、m及びnは、式(2)におけるR
103、R
104、m及びnとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。
式(4’)中、R
121はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(4’)中、tはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、tが2以上のとき、複数存在するR
121はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
y’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y
102は少なくともy’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、y’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(y’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(4’)中、A
102は下記式(i)〜式(iii)よりなる群から選択される基を表す。
【0120】
【化35】
(式(i)〜式(iii)中、R
112及びR
113のいずれか一方は水素原子を表し、他方は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは4又は5の整数を表し、zは1〜20の整数を表す。なお、*はカルボニル炭素との結合位置を示し、**はY
102との結合位置を示す。)
【0121】
A
102は、式(i)で表される基であることが好ましく、*−(OCH
2CH
2)
z−**、*−(OCH
2CH
2CH
2CH
2)
z−**、又は、*−O(CH(CH
3)CH
2)
z−**であることがより好ましい。この場合、zは3〜10の整数であることが好ましい。
【0122】
式(4)で表される化合物の分子量は、500〜3,000であることが好ましく、800〜2,500であることがより好ましく、1,000〜2,000であることが更に好ましい。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、式(4)で表される化合物が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
【0123】
以下に式(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0126】
式(4)で表される化合物として、上市されている化合物を使用することもできる。具体的には、OMNIPOL BP(Polybutyleneglycol bis(4-benzoylphenoxy)acetate、CAS No. 515136-48-8)が例示される。
【0127】
式(4)で表される化合物は、公知の反応により製造することができ、特に限定されないが、例えば、上記の式(4’)で表される化合物は、下記式(4−1)で表される化合物と、下記式(4−2)で表される化合物とを反応させることにより調製することができる。
【0128】
【化38】
(式(4−1)及び式(4−2)におけるR
103、R
104、R
121、A
102、Y
102、m、n、t及びy’は式(4’)におけるR
103、R
104、R
121、A
102、Y
102、m、n、t及びy’とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。)
【0129】
上記の反応は溶媒の存在下で行うことが好ましく、適当な溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示される。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
【0130】
反応終了後、反応混合物から公知の手段によって単離し、必要に応じて洗浄し、乾燥することによって、生成物を分離することができる。
【0131】
式(4)で表される化合物の含有量は、高感度化、並びに、マイグレーション、臭気及びブロッキングを抑制する観点から、インク組成物全体の1〜5質量%であることが好ましく、2〜4質量%であることが更に好ましい。
また、式(4)で表される化合物としては、式(4−1)で表される化合物がより好ましい。
【0132】
また、増感剤の総含有量は、インク組成物全体の0.01〜10.0質量%であることが好ましく、0.05〜5.0質量%であることがより好ましく、0.1〜2.4質量%であることが更に好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れる。
更に、マイグレーション及び臭気の抑制及び硬化性の観点から、成分Aの含有量と増感剤の総含有量との質量比率が、(成分Aの含有量):(増感剤の含有量)=1:1.5〜8:1.5であることが好ましい。
【0133】
<他の重合開始剤>
本発明のインク組成物は、必要に応じて、上記成分A以外のその他の重合開始剤を含有することができる。
上記その他の重合開始剤としては、ラジカル重合又はカチオン重合の重合開始剤であることが好ましく、ラジカル重合開始剤が特に好ましい。例えば、特開2009−138172号公報に記載の重合開始剤を用いることができる。
【0134】
他の重合開始剤の総含有量は、インク組成物全体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、含まないことが特に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れる。
また、他の重合開始剤は、分子量340以上の化合物であることが好ましい。
また、他の重合開始剤の総含有量は、成分Aの含有量よりも少ないことが好ましい。
【0135】
<共増感剤>
本発明のインク組成物は、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する目的で、共増感剤を含有していてもよい。
上記共増感剤としては、例えば、アミン類(例えば、M. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物)などが挙げられる。上記アミン類の具体例としては、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリンなどが好適に挙げられる。
また、上記共増感剤としては、例えば、チオール及びスルフィド類(例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報記載のジスルフィド化合物)なども好適に挙げられる。上記チオール及びスルフィド類の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレンなどが挙げられる。
また、上記共増感剤としては、例えば、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)や、特公昭48−42965号公報に記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載の水素供与体や、特開平6−308727号公報に記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報に記載のSi−H、Ge−H化合物などが挙げられる。
共増感剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
共増感剤の含有量としては、特に制限はないが、インク組成物の全質量に対し、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0136】
<分散剤>
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0137】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
【0138】
<界面活性剤>
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。上記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。上記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。上記ポリシロキサン化合物としては、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いられてもかまわない。また、中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物がインクジェットにおける吐出安定性改良の観点で好ましい。ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、シリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
本発明のインク組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.0001〜1質量%であることが好ましい。
【0139】
<溶剤>
本発明のインク組成物には、記録媒体との密着性を改良するため、溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、トリプロリレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ―ブチロラクトンのような環状エステル系溶剤、2−メチルピロリドン、2−ピロリドンのようなアミド系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、溶剤の量はインク組成物の全質量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
インク組成物において顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低い重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
本発明のインク組成物には、更に目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
【0140】
また、本発明のインク組成物は、上記した成分以外にも種々の公知の添加剤を含んでいてもよい。
上記以外の添加剤として、具体的には、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、膜物性の調整を目的とした高分子化合物等が挙げられる。
【0141】
本発明のインク組成物には、膜物性を調整する目的で、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、この他にも、必要に応じて、例えば、塩基性化合物、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
【0142】
本発明のインク組成物は、インクジェットノズルからの吐出性を考慮し、吐出時の温度でのインク組成物の粘度が0.5〜30mPa・sであることが好ましく、0.5〜20mPa・sであることがより好ましく、1〜15mPa・sであることが最も好ましい。この範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
なお、25℃(室温)でのインク組成物の粘度は、1mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましく、2.5mPa・s以上30mPa・s以下であることが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物の浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。また、25℃でのインク組成物の粘度が200mPa・s以下であると、インク組成物の装置内におけるインクジェットヘッド等へのデリバリーが容易である。
【0143】
本発明のインク組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、23〜35mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点から35mN/m以下が好ましい。
【0144】
このようにして調製された本発明のインク組成物は、インク組成物をインクジェットプリンターにより記録媒体に印字し、その後、印字されたインク組成物に活性線を照射して硬化して記録を好適に行うことができる。
本発明のインク組成物により得られた印刷物は、画像部の強度に優れるため、インク組成物による画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用し得る。
【0145】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射し、インク組成物を硬化して画像を形成する方法である。
【0146】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a
1)記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b
1)吐出されたインク組成物に活性線を照射して上記インク組成物を硬化する工程、を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a
1)及び(b
1)工程を含むことにより、記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体上の同一部分において、上記(a
1)及び(b
1)工程を2回以上行うこと、すなわち、同一部分を重ね打ちにより印刷するマルチパスモードで行うことが好ましい。本発明のインク組成物を用いることにより、マルチパスモードで印刷を行った場合、光沢性により優れた画像が得られる。
また、本発明の印刷物は、本発明のインク組成物により記録された印刷物であり、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることが好ましい。
【0147】
また、本発明のインク組成物は、パッケージ印刷用に好適であり、特に、食品包装用のパッケージ印刷に好適である。その場合には、以下の工程をこの順で含むインクジェット記録方法であることが好ましい。
(a)インク組成物をインクジェットヘッドから吐出し、膜厚150μm以下のパッケージ用支持体上に印刷する工程、及び、
(b)上記吐出されたインク組成物に活性線を照射する工程
【0148】
本発明のインクジェット記録方法における(a
1)工程及び(a)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0149】
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a
1)工程及び(a)工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
【0150】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0151】
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0152】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0153】
次に、(b
1)工程及び(b)工程について説明する。
記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線(活性線)を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0154】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0155】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm
2、より好ましくは20〜2,500mW/cm
2で硬化させることが適当である。
【0156】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm
2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm
2であることがより好ましく、50〜800mW/cm
2であることが特に好ましい。
【0157】
本発明のインク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0158】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0159】
本発明のインク組成物は、複数のインクジェット記録用インクからなるインクセットとして使用することが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物から記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。
【0160】
図1は、本発明で好ましく使用されるインクジェット記録装置の模式図である。支持体の搬送手段である、支持体巻き取りロール5、5’に張架された支持体6は、矢印方向に搬送され、各色のインク組成物を吐出する打滴ヘッドが配備されたインクジェットヘッドユニット7にて、各色のインク組成物(K:ブラック、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、W:ホワイト)が吐出される。
図1に示すように、LED光源ユニット1は、不活性ガスブランケット2に囲まれており、不活性ガス配管3を介して不活性ガス発生装置4に接続している。不活性ガスブランケット2内の雰囲気を貧酸素雰囲気とする手段である不活性ガス発生装置4は、不活性ガス配管3を介して不活性ガスブランケット2の内部に不活性ガスを供給するもので、初期状態では不活性ガスブランケット2内雰囲気は空気であるが、不活性ガス発生装置4を稼働させると、不活性ガスブランケット2内の空気は不活性ガスに置換される。不活性ガスは、既述の通り、N
2などを利用することができる。
【0161】
<記録媒体>
本発明のインク組成物を適用しうる記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができる。
各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPS(二軸延伸ポリスチレン)フィルム、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(二軸延伸ナイロン)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(セルローストリアセテート)フィルム等が挙げられる。
その他、記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリアセタール、PVA(ポリビニルアルコール)、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も記録媒体として使用可能である。
【0162】
本発明のインク組成物は、特定の重合開始剤を含有するため、活性エネルギー線の照射により硬化しうる硬化性のインクジェット用インク組成物として好適に用いることができる。また、本発明のインク組成物は、非吸収性の記録媒体上にも、高品質の画像をデジタルデータに基づき直接形成し得ることから、大面積の印刷物の作製にも好適に使用される。
本発明のインク組成物は、特定の重合開始剤を含有することにより低露光量でも硬化し得る。このため、低露光強度の安価な光源を用いることによるシステムやランニングコストの削減、露光時間を短縮することによる印刷速度の向上に寄与するものと思われる。更に、露光後の硬化速度が速いことにより画像のにじみを抑制ができ、鮮明な画像を形成することができる。
【0163】
(高分子開始剤)
本発明の第1の実施形態における高分子開始剤は、重量平均分子量が1,000以上であり、側鎖に下記式(1)又は式(2)で表されるアシルホスフィンオキシド構造を有する(メタ)アクリル樹脂である。
また、本発明の第2の実施形態における高分子開始剤は、重量平均分子量が1,000以上であり、分子末端に1以上の下記式(1)又は式(2)で表されるアシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子である。
【0164】
【化39】
(式中、R
1はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は(メタ)アクリル樹脂の主鎖に連結する連結基を表し、R
1のうち少なくとも1つは(メタ)アクリル樹脂の主鎖に連結する連結基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、nは1〜5の整数を表し、R
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は(メタ)アクリル樹脂の主鎖に連結する連結基を表し、R
4のうち少なくとも1つは(メタ)アクリル樹脂の主鎖に連結する連結基であり、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、mは1〜7の整数を表す。)
【0165】
本発明の第1又は第2の実施形態における高分子開始剤の好ましい態様は、成分Aとして前述した態様とそれぞれ同様である。
本発明の第2の実施形態における高分子開始剤は、重量平均分子量が1,000以上であり、分子末端に3以上の下記式(1)又は式(2)で表されるアシルホスフィンオキシド構造を有する多分岐高分子であることが好ましい。
【0166】
本発明の第1又は第2の実施形態における高分子開始剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法により製造すればよい。
例えば、本発明の第1の実施形態における高分子開始剤は、(メタ)アクリル樹脂を重合した後、高分子反応により式(1)又は式(2)で表されるアシルホスフィンオキシド構造を導入してもよいし、式(1)又は式(2)で表されるアシルホスフィンオキシド構造を有するモノマーを重合して合成してもよい。
また、例えば、本発明の第2の実施形態における高分子開始剤は、コア部分を合成した後、末端に式(1)又は式(2)で表されるアシルホスフィンオキシド構造を連結することにより合成することができる。
【0167】
また、式(1)で表されるアシルホスフィンオキシド構造の導入方法としては、特に制限はないが、モノアシルホスフィンオキシド化合物のアシル基のベンゼン環上にメチル基を有する化合物を用い、当該メチル基を臭素化して−CH
2Brとし、−CH
2Brの臭素原子に置換して成分Aの主鎖又はコアの高分子量部分を導入する方法が好ましく例示できる。上記臭素価方法としては、例えば、モノアシルホスフィンオキシド化合物のアシル基のベンゼン環上にメチル基を有する化合物に、アゾイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等の熱ラジカル発生剤とN−ブロモスクシンイミド等の臭素化剤とを作用させる方法が好ましく挙げられる。
また、アシルホスフィンオキシド構造の導入方法として、カルボン酸クロライドとアルコキシジフェニルホスフィンとの反応で導入する方法も好ましく例示できる。
【実施例】
【0168】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
また、後述する実施例1〜18、22、23、36及び38〜45をそれぞれ、参考例1〜18、22、23、36及び38〜45と読み替えるものとする。
【0169】
<(成分A)重量平均分子量1,000以上の高分子開始剤>
本実施例で使用したA−1〜A−11及びB−1〜B−8は、前述した構造の高分子開始剤である。
【0170】
<A−1の合成>
−ベンジルブロマイド中間体E1の合成−
撹拌棒、窒素導入管、温度計を取り付けた500mL三口フラスコに、10g(28.7mmol)の2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN TPO、チバ・ジャパン(株)製)、N−ブロモスクシンイミド5.11g(28.7mmol)、クロロベンゼン115mLを入れて65℃にて窒素気流下で1時間加熱撹拌した。固体が完全に溶解した後、アゾイソブチロニトリルを0.26g加えて更に6時間反応させた。溶液を放冷したのち、酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で化合物のベンジルブロマイド中間体E1を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.04(s,6H)、4.38(s,2H)、7.03(s,2H)、7.50〜7.61(m,6H)、7.97〜8.02(m,4H)
【0171】
−メタクリレート体E2の合成−
撹拌棒、温度計を取り付けた500mL三口フラスコに、炭酸セシウム9.15(28.09mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(40mL)と純水(8mL)との混合溶液に加え、溶解させた。続いて減圧下で12時間撹拌して濃縮した。メタクリル酸1.33g(15.45mmol)を加え、ベンジルブロマイド中間体E1 6.0g(14.04mmol)のジメチルホルムアミド(DMF、30mL)溶液を加えて室温(25℃)にて5時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)でメタクリレート体E2を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.00(s,3H)、2.04(s,6H)、5.10(s,2H)、6.37(d,1H)、6.48(d,1H)、7.03(s,2H)、7.45〜7.68(m,6H)、7.96〜8.10(m,4H)
【0172】
−A−1の合成−
窒素気流下、メタクリレート体E2 3.0g(7.17mmol)、メチルエチルケトン(4.3mL)、ドデカンチオール4.35g(21.51mmol)を加え、70℃で撹拌しアゾイソブチロニトリルを0.24g加えて6時間反応させた。反応終了後、へキサン:酢酸エチル=9:1で再沈し、ポリマーA−1を得た。重量平均分子量は1,100であった。
【0173】
<A−2〜A−5の合成>
−A−2の合成−
窒素気流下、3.0g(7.17mmol)のメタクリレート体E−2、メチルエチルケトン(4.3mL)を加え、70℃で撹拌し、ドデカンチオール0.62g(3.07mmol)を加え、70℃で撹拌し、次いでアゾイソブチロニトリルを0.12g加えて6時間反応させた。反応終了後、へキサン:酢酸エチル=9:1で再沈し、ポリマーA−2を得た。重量平均分子量は8,000であった。
【0174】
−A−3の合成−
窒素気流下、3.0g(7.17mmol)のメタクリレート体E−2、メチルエチルケトン(4.3mL)を加え、70℃で撹拌し、次いでアゾイソブチロニトリルを0.12g加えて6時間反応させた。反応終了後、へキサン:酢酸エチル=9:1で再沈し、ポリマーA−3を得た。重量平均分子量は32,000であった。
【0175】
−A−4及びA−5の合成−
ポリマーA−1の合成(ポリマー化)において、メタクリレート体E−2に代えて、メタクリレート体E−2及びブレンマーPME−100(日油(株)製)を用いたこと以外は、ポリマーA−1の合成と同様にして、ポリマーA−4を得た。
ポリマーA−4の合成において、メタクリレート体E−2及びブレンマーPME−100(日油(株)製)に代えて、メタクリレート体E−2及びブレンマーPME−200(日油製)を用いたこと以外は、ポリマーA−4の合成と同様にして、ポリマーA−5を得た。
【0176】
<A−6の合成>
−ベンジルブロマイド中間体E3の合成−
撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコに、Irgacure 819(フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド) 10g(23.9mmol)をN−ブロモスクシンイミド 4.25g(23.9mmol)、クロロベンゼン100mLを入れて65℃にて窒素気流下で1時間加熱撹拌した。固体が完全に溶解した後、アゾイソブチロニトリルを0.22g加えて更に6時間反応させた。溶液を放冷したのち、酢酸エチルと水とで2回分液した後カラム精製により、片方のベンゾイル基の4位のメチル基を臭素化した化合物E3を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.32(s,3H)、2.50(s, 12H)、4.56(s,2H)、7.10(d,4H)、7.32〜7.51(m,3H)、7.70〜7.85(m,2H)
【0177】
−メタクリレート体E4の合成−
撹拌棒、温度計を取り付けた500mL三口フラスコに、炭酸セシウム6.55g(20.11mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(30mL)と水(10ml)の混合溶液に加え、溶解させた。続いて減圧下で12時間撹拌して濃縮した。メタクリル酸0.80g(11.06mmol)を加え、ベンジルブロマイド中間体E3 5.0g(10.05mmol)のDMF(30mL)溶液を加えて室温にて5時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)でメタクリレート体E4を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.34(s,3H)、2.55(s, 12H)、5.20(s,2H)、5.59(d, 1H)、5.95(d,1H)、6.31(d,1H)、7.11(s,2H)、7.25(s,2H)、7.40〜7.50(m,3H)、7.80〜8.01(m,2H)
【0178】
−A−6の合成−
メタクリレート体E4をA−1と同様の方法でポリマー化し、対応するポリマーA−6を得た。
【0179】
<A−7の合成>
撹拌棒、温度計を取り付けた500mL三口フラスコに、テトラヒドロフラン100ml、トリエチルアミン8.81g(58.45mmol)、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸 10.0g(53.14mmol)に、TBSCl(tert−ブチルジメチルクロロシラン)8.81g(58.45mmol)を5℃で反応させ、2時間撹拌した後、室温まで昇温し、酢酸エチルと塩化アンモニウム水溶液で2回分液し、2−ターシャリーブチルジメチルシロキシ−1−ナフトエ酸E5をクルード(未精製物)で得た。500mL三口フラスコにE5のクルード、塩化チオニル6.06g(50.91mmol)を作用させ、減圧留去後、トルエン100ml、エトキシジフェニルホスフィン12.79g(55.54mmol)を加え70℃で4時間反応させた。反応液に水100mlとテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)14.52g(55.54mmol)を加え、40℃で3時間反応させ、酢酸エチルと水で2回分液し2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸ホスフィンオキシドE6のクルードを得た。
500mL三口フラスコにE6のクルード、テトラヒドロフラン100ml、メタクリル酸クロライド5.43g(52.00mmol)、トリエチルアミン5.74g(56.72mmol)を5℃で反応させ、2時間撹拌した後、室温まで昇温し、酢酸エチルと塩化アンモニウム水溶液で2回分液し、イソプロピルアルコールで再結晶することにより、2−メタクリロキシ−1−ナフトエ酸ホスフィンオキシドE7を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.01(s,3H)、6.20(d,1H)、6.43(d,1H)、7.08〜7.20(m,1H)、7.40〜9.28(m,14H)
2−メタクリロキシ−1−ナフトエ酸ホスフィンオキシドE7をA−4と同様の方法でポリマー化し、対応するポリマーA−7を得た。
【0180】
<A−8の合成>
200mlナスフラスコに、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド6.0g(26.8mmol)をとり、減圧して窒素置換した後、乾燥テトラヒドロフラン107mlを加えて溶解した。この溶液に対して、65℃でメトキシジフェニルホスフィン5.4ml(27mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサン107mlで2回共沸し、減圧乾燥して、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物11.9gを得た。そのうち、10.5gの粗生成物をアルミホイルで遮光した100mlナスフラスコに入れ、減圧して窒素置換した後、ジメチルホルムアミド40ml、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル6.5ml(53mmol)を順次添加した。この溶液を50℃で13時間撹拌した後、ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒200mlで希釈した。この溶液を水で洗浄した後、ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒100mlで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液を減圧下濃縮して得られた残渣を、遮光下、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。減圧下濃縮して得られた白色固体に、酢酸エチルを添加し、懸濁液を濾過することによって、E8 3.0gを得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ=8.02〜7.95、(m,4H)、7.58〜7.47(m,6H)、6.90(s,1H)、6.3〜6.0(m,2H)、5.57(s,1H)、4.36(s,4H)、2.21(s,3H)、1.95(s,9H)
E8をA−4と同様にポリマー化し、対応するポリマーA−8を得た。
【0181】
<A−9の合成>
4−ビニルベンゾイルクロリド(Tetrahedron,2002,58,4,741記載の方法により合成した。)10g(60.02mmol)とエトキシジフェニルホスフィン15.20g(66.02mmol)とを反応させた後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、4−エテニルベンゾイルホスフィンオキシドE9を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=5.20(d,1H)、5.61(d,1H)、6.62(d,1H)、7.40〜8.78(m,14H)
E9をA−4と同様にポリマー化し、対応するポリマーA−9を得た。
【0182】
<A−10の合成>
200mlナスフラスコに、2,6−ジメチル−4−トリメチルシリルオキシベンゾイルクロライド5g(21.85mmol)とエトキシジフェニルホスフィン5.54g(24.04mmol)を加え70℃で5時間反応させた後、水100mlとTBAF6.86g(26.22mmol)を加え、40℃で2時間反応させ2,6−ジメチル−4−ヒドロキシホスフィンオキシドE10をクルードで得た。200mlナスフラスコに、テトラヒドロフラン50ml、E10のクルード6.34g、メタクリル酸−2−トシロキシエチル4.51g(21.64mmol)、トリエチルアミン2.39g(23.60mmol)を5℃で反応させ、室温まで昇温し、40℃で2時間撹拌した後、酢酸エチルと塩化アンモニウム水溶液で2回分液し、イソプロピルアルコールで再結晶することにより、2,6−ジメチル−4−(2−メタクリロキシエチルオキシ)ベンゾイルホスフィンオキシドE11を得た。
E11をA−4と同様にポリマー化し、対応するポリマーA−10を得た。
【0183】
<A−11の合成>
A−7と同様にして2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸ホスフィンオキシドE6のクルードを得た。500mL三口フラスコにE6のクルード17.6g(47.26mmol)、テトラヒドロフラン100ml、メタクリル酸−2−メシロキシエチル10.83g(52.00mmol)、トリエチルアミン5.74g(56.72mmol)を5℃で反応させ、2時間撹拌した後、室温まで昇温し、酢酸エチルと塩化アンモニウム水溶液で2回分液し、イソプロピルアルコールで再結晶することにより、2−(2−メタクリロキシエチル)−1−ナフトエ酸ホスフィンオキシドE12を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.02(s,3H)、4.42(m、4H)、6.40(d,1H)、6.52(d,1H)、7.08〜7.20(m,2H)、7.35〜9.58(m,12H)
E12をA−4と同様にポリマー化し、対応するポリマーA−11を得た。
【0184】
<B−1の合成>
−アクリレート体E13の合成−
撹拌棒、温度計を取り付けた500mL三口フラスコに、炭酸セシウム9.15(28.09mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(40mL)と純水(8mL)との混合溶液に加え、溶解させた。続いて減圧下で12時間撹拌して濃縮した。アクリル酸1.11g(15.45mmol)を加え、ベンジルブロマイド中間体E1 6.0g(14.04mmol)のジメチルホルムアミド(DMF、30mL)溶液を加えて室温(25℃)にて5時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)でアクリレート体E13を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=2.04(s,6H)、5.10(s,2H)、5.86(d,1H)、6.11〜6.21(m、1H)、6.42(d,1H)、7.01(s,2H)、7.47〜7.66(m,6H)、7.96〜8.07(m,4H)
【0185】
−B−1の合成−
撹拌棒、温度計を取り付けた100mL三口フラスコにアクリレート体E13 2.0g(4.78mmol)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート) 0.43g(1.19mmmol)(東京化成工業(株)製)、トリエチルアミン0.5mlをアセトニトリル(5mL)に加え、溶解させ40℃で5時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でB−1を単離した。
B−1 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 64.82; H, 5.56. Calcd for C
87H
89O
18P
3S
3 C, 64.83; H, 5.57
【0186】
<B−2及びB−3の合成>
トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)の代わりにそれぞれトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオナート)を用いた以外は、B−1と同様に合成を行った。
B−2 Elemental Analysis: Found: C, 64.45; H, 5.36. Calcd for C
113H
112O
24P
4S
4 C, 64.44; H, 5.36
B−3 Elemental Analysis: Found: C, 65.35; H, 5.80. Calcd for C
90H
95O
18P
3S
3 C, 65.36; H, 5.79
【0187】
<B−4の合成>
撹拌棒、窒素導入管、温度計を取り付けた100mL三口フラスコにベンジルブロマイド中間体E1 2.5g(5.85mmol)、クエン酸0.22g(1.17mmol)、炭酸水素ナトリウム0.49g(5.85mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)20mLを入れて75℃で8時間加熱撹拌した。溶液を放冷したのち、酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:5)で化合物のB−4を単離した。
B−4 Elemental Analysis: Found: C, 69.41; H, 5.45. Calcd for C
152H
142N
2O
28P
6 C, 69.40; H, 5.44
【0188】
<B−6、B−7及びB−8の合成>
クエン酸の代わりにそれぞれ対応する多価カルボン酸を用いた以外は、B−4と同様に合成を行った。
B−6 Elemental Analysis: Found: C, 68.76; H, 5.53. Calcd for C
159H
152O
27P
6S
3 C, 68.77; H, 5.52
B−7 Elemental Analysis: Found: C, 68.64; H, 5.44. Calcd for C
210H
198O
36P
8S
4 C, 68.65; H, 5.43
B−8 Elemental Analysis: Found: C, 66.10; H, 4.74. Calcd for C
90H
77O
18P
3S
3 C, 66.09; H, 4.74
【0189】
<B−5の合成>
撹拌棒、窒素導入管、温度計を取り付けた100mL三口フラスコにB−4 2.0g(4.68mmol)、ヘキサメチレンジイソシアナート0.31g(1.87mmol)、ネオスタンU−600 0.05g、NMP4.0mLを入れて60℃で8時間加熱撹拌した。溶液を放冷したのち、酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で化合物のB−5を単離した。
B−5 Elemental Analysis: Found: C, 69.41; H, 5.42. Calcd for C
152H
142N
2O
28P
6 C, 69.40; H, 5.44
【0190】
<B−9の合成>
撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコに2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒド10g(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)とトリエチルアミン8.09gとテトラヒドロフラン70mlを加え、0℃下4−クロロメチルベンゾイルクロリド13.9gを1時間かけ滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でクロロメチルベンゾイル保護体E−15を16.5g得た。つづいて、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにトルエン70ml、E−15 16.5g、ジフェニルホスフィンオキシド14.3gを加えた後、ソジウムメトキシド1.0gを加え2時間撹拌し、濾過、洗浄して、ホスフィンオキシド付加体E−16 23.4gを得た。次に、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにE−16 23.4gをクロロベンゼン73mlに溶解し、バナジウムアセチルアセトナート 0.3g、tert−ブチルヒドロペルオキシド6.2gを加え2時間撹拌したのち、亜硫酸ナトリウム水溶液を加え、分液後濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:7)でアシルホスフィンオキシドE−17 16.3gを得る。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)100ml中、E−17 16.3gを1,3,5−トリカルボキシベンゼン1.98g、炭酸カリウム5.38gを加えた後、80℃で7時間撹拌した。反応液を酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でB−9 9.5gを単離した。
B−9 元素分析(Elemental Analysis): Found: C,71.65; H, 4.70. Calcd for C
96H
75O
18P
3: C, 71.64; H, 4.70
【0191】
<B−10の合成>
撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにアセトン100ml、2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒド10g(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)とアリルブロミド8.9g、炭酸カリウム11.0gを加え、還流下20時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でアリル保護体E−18を10.1g得た。
続いて、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにトルエン70ml、E−18 10.1g、ジフェニルホスフィンオキシド14.0gを加えた後、ソジウムメトキシド0.8gを加え2時間撹拌し、濾過、洗浄して、ホスフィンオキシド付加体E−19 16.7gを得た。次に、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにE−19 16.7gをクロロベンゼン60mlに溶解し、バナジウムアセチルアセトナート0.3g、tert−ブチルヒドロペルオキシド5.8gを加え2時間撹拌したのち、亜硫酸ナトリウム水溶液を加え、分液後濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:7)でアシルホスフィンオキシドE−20 13.2gを得る。トルエン100ml中、E−20 13.2gとテトラチオグリコール酸ペンタエリトリトール3.5gを加えた後、80℃に加熱し、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を0.28g加え、そのまま6時間撹拌した。反応液を酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でB−10 10.7gを単離した。
B−10 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 65.66; H, 5.66. Calcd for C
109H
112O
20P
4S
4: C, 65.65; H, 5.66
【0192】
<B−11の合成>
撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコに水100ml、2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒド10g(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)、2−クロロエタノール6.4g、水酸化ナトリウム4.0gを加え、還流下15時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)で2−ヒドロキシエチル−4,6−ジメチルベンズアルデヒド E−21を9.71g得た。撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにテトラヒドロフラン100ml、E−21 9.71g、トリエチルアミン7.59gを加え、0℃下メタンスルホニルクロリド6.87gを1時間かけ滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でメシル保護体E−22を11.6g得た。
続いて、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにトルエン55ml、E−22 11.6g、ジフェニルホスフィンオキシド11.2gを加えた後、ソジウムメトキシド1.0gを加え2時間撹拌し、濾過、洗浄して、ホスフィンオキシド付加体E−23 16.1gを得た。次に、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにE−23 16.1gをクロロベンゼン60mlに溶解し、バナジウムアセチルアセトナート0.2g、tert−ブチルヒドロペルオキシド4.6gを加え2時間撹拌したのち、亜硫酸ナトリウム水溶液を加え、分液後濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:5)でアシルホスフィンオキシドE−24 12.9gを得る。DMAC100ml中、E−24 12.9gをピロメリット酸1.66g、炭酸カリウム4.51gを加えた後、80℃で7時間撹拌した。反応液を酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)でB−11 8.6gを単離した。
B−11 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 69.61; H, 5.16. Calcd for C
102H
90O
20P
4: C, 69.62; H, 5.16
【0193】
<B−12の合成>
撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコに、2−アセトキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒド12.3gとトルエン80ml、E−15 16.5g、ジフェニルホスフィンオキシド16.8gを加えた後、ソジウムメトキシド0.8gを加え2時間撹拌し、濾過、洗浄して、ホスフィンオキシド付加体E−26 22.7gを得た。次に、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコにE−26 22.7gをクロロベンゼン60mlに溶解し、バナジウムアセチルアセトナート0.2g、tert−ブチルヒドロペルオキシド5.3gを加え2時間撹拌したのち、亜硫酸ナトリウム水溶液を加え、分液後濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:7)でアシルホスフィンオキシドE−27 12.0gを得る。エタノール100mlに12.0gのアシルホスフィンオキシドE−27、炭酸カリウム10.57gを加えた後、室温で7時間撹拌した。反応液に水を加え、反応生成物を酢酸エチルで2回抽出した後に、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:6)で、9.43gの脱保護体E−28を単離した。一方、撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコペンタエリスリトール15gとトリエチルアミン16.7gとDMF70mlに、0℃下クロロメチルベンゾイルクロリド93.7gを1時間かけ滴下し、60℃で2時間撹拌し、クロロメチルベンゾイル保護体E29を45.2g得た。
撹拌棒、温度計を取り付けた200mL三口フラスコに、DMF50ml、E29 4.6gとE28 9.07g、炭酸カリウム4.26gを加え、80℃で7時間撹拌し、B−12を9.25g得た。
B−12 元素分析(Elemental Analysis): Found: C,72.60; H, 5.24. Calcd for C
121H
104O
20P
4: C, 72.59; H, 5.24
【0194】
<B−13の合成>
2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒドの代わりに5−クロロ−2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒド(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)を用いてB−9と同様に合成を行い、B−13を得た。
B−13 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 67.32; H, 4.23. Calcd for C
96H
72O
18Cl
3P
3: C, 67.32; H, 4.24
【0195】
<B−14の合成>
2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルベンズアルデヒド(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)を用いてB−9と同様に合成を行い、B−14を得た。
B−14 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 72.48; H, 4.83. Calcd for C
96H
77O
17P
3: C, 72.47; H, 4.83
【0196】
<B−15の合成>
2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−3,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)を用いてB−9と同様に合成を行い、B−15を得た。
B−15 元素分析(Elemental Analysis): Found: C,72.00; H, 4.95. Calcd for C
99H
81O
18P
3: C, 71.99; H, 4.94
【0197】
<B−16の合成>
2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−6−メチル−3−ターシャリーブチルベンズアルデヒド(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)を用いてB−9と同様に合成を行い、B−16を得た。
B−16 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 72.66; H, 5.40. Calcd for C
105H
93O
18P
3: C, 72.65; H, 5.40
【0198】
<B−17の合成>
2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−6−メチル−3−イソプロピルベンズアルデヒド(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)を用いてB−9と同様に合成を行い、B−17を得た。
B−17 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 72.32; H, 5.19. Calcd for C
102H
87O
18P
3: C, 72.33; H, 5.18
【0199】
<B−18の合成>
2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−3−メチル−6−イソプロピルベンズアルデヒド(国際公開第2004/87626号パンフレット、又は、Journal of Organometallic Chemistry, 2005, vol.690, #23, p.5125〜5144記載の方法で合成した。)を用いてB−9と同様に合成を行い、B−18を得た。
B−18 元素分析(Elemental Analysis): Found: C, 72.34; H, 5.18. Calcd for C
102H
87O
18P
3: C, 72.33; H, 5.18
【0200】
<シアンミルベースAの調製>
IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASF・ジャパン(株)製)を300質量部と、SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)を620質量部と、SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0201】
(実施例1〜45、及び、比較例1〜4)
<インク組成物の作製方法>
表1〜表3に記載の素材を記載した量(質量部)で混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
なお、前述した以外の表1〜表3に記載の略号は、下記に示す通りである。
<重合性化合物(モノマー)>
・TPGDA::トリプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製SR306
・NPGPODA:PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製SR9003
・EOTMPTA:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製SR454
・A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業(株)製
・DVE−3:2官能ビニルエーテル化合物、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP Europe社製
【0206】
<成分A以外の重合開始剤>
・LUCIRIN TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、チバ・ジャパン(株)製
・C−1(下記化合物、Mw=21,100)
・C−2(下記化合物、Mw=2,100)
・C−3(下記化合物、Mw=800)
【0207】
【化40】
【0208】
<増感剤>
・DBA(AnthcureUVS−1331):9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成工業(株)製
・ITX:イソプロピルチオキサントン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製
・SPEEDCURE 7010:分子量1,899、Lambson社製
・増感剤X(下記化合物I−F)
【0209】
【化41】
【0210】
<界面活性剤>
・BYK307:シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製
【0211】
<インクジェット記録方法>
図1に示すインクジェット装置において、インクジェットヘッドとして、東芝テック(株)製CA3ヘッドを各色4つずつ並列に配置し、ヘッドを45℃に加温して、42pLの打滴サイズで、描画できるよう、周波数をコントロールした。光源として、ピーク波長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technology社製)を不活性ガスブランケット内に配置し、不活性ガス源として、コンプレッサー付きN
2ガス発生装置Maxi−Flow30(Inhouse Gas社製)を0.2MPa・sの圧力で接続し、ブランケット内のN
2濃度(N
2分圧)が90〜99%の範囲になるよう、2〜10L/分の流量でN
2をフローさせ、N
2濃度を設定した。支持体として、パイレンフィルム−OTP3162(A4サイズ、ポリプロピレンシート、膜厚40μm)を30m/minの速度で走査させ、100%ベタ画像の描画を行い、以下に示す諸性能のテストを行った。
【0212】
<マイグレーション評価方法>
上記インクジェット画像記録方法によって得られた印刷物を1平方デシメートルの大きさに切り取り、その印刷表面に水:エタノール=70:30混合液10mLを滴下し、混合溶媒が揮発しないように印刷物をガラス密閉容器に入れて、40℃で10日間放置した。その後、水−エタノール混合液中に含有する、印刷物からの全溶出量(オーバーオールマイグレーション量:OML)を測定し、1〜5段階で評価を行った。なお、全容出量の測定は、10日間放置後に、水−エタノール混合液を揮発させ、残存成分の質量を測定することにより行った。
5:溶出量が10ppb以下
4:溶出量が10ppbを超え、50ppb以下
3:溶出量が50ppbを超え、100ppb以下
2:溶出量が100ppbを超え、2,000ppb以下
1:溶出量が2,000ppbを超える
【0213】
<臭気評価方法>
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像を、30cm×30cmのジップ付きビニール袋に内包し、24時間放置した。
その後、ジップを解放し、臭気の評価を行った。評価は10人の平均を採用した。評価基準を以下に示す。なお、平均における小数点以下は四捨五入した。
5:ほぼ無臭である
4:わずかな臭気があるがほとんど気にならない
3:ある程度の臭気があるが、不快なレベルでない
2:強い臭気がある
1:非常に強い臭気がある
【0214】
<基材密着性評価方法>
上記インクジェット記録方法にて、支持体をPriplak(膜厚0.8mm、ポリプロピレンシート、Robert Horne社製)に変更して印刷物を作成し、評価を行った。上記印刷物における硬化膜と記録媒体との接着性は、クロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価し、下記5B〜1Bで表す。5Bが最も接着性に優れ、3B以上で実用上問題のないレベルであると評価する。
5B:まったく欠けた部分が見られず、端のめくれも見られない。
4B:まったく欠けた部分が見られないが、格子の交点でわずかにめくれが見られる。
3B:まったく欠けた部分が見られないが、格子の四隅でわずかにめくれが見られる。
2B:欠けた部分が1〜5点見られ、格子の四隅でめくれが見られる。
1B:欠けた部分が6点以上見られ、格子の四隅でめくれが見られる。
【0215】
<吐出性評価方法>
吐出性はインクジェットヘッドとして、ピエゾ型インクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/30(FUJIFILM DIMATIX社製、ノズル数256個、最小液滴量30pL、33kHz)を用い、得られたインク組成物のノズル詰まり評価を行った。評価基準を以下に示す。なお、5が最も優れ、3以上で実用性に問題のないレベルと評価する。
5:インク詰まり本数なし
4:インク詰まり本数が1本以上2本以下
3:インク詰まり本数が3本以上5本以下
2:インク詰まり本数が6本以上20本以下
1:インク詰まり本数が20本以上
【0216】
<分散安定性評価方法>
インク液10mlをポリ容器に入れ、オーブンで60℃4日加熱の前後における顔料粒子の平均粒径の変化を測定した。なお、平均粒径は(株)島津製作所製SALD−7100Hで測定した。5が最も優れ、3以上で実用性に問題のないレベルと評価する。
5:粒径の変化が0.1%未満
4:粒径の変化が0.1%以上1%未満
3:粒径の変化が1%以上2%未満
2:粒径の変化が2%以上5%未満
1:粒径の変化が5%以上
【0217】
実施例1〜45、及び、比較例1〜4における評価結果を、表4及び表5に示す。
【0218】
【表4】
【0219】
【表5】