(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(i)で準備される懸濁物が、少なくとも1種の触媒的に活性な金属を、懸濁物中に含まれる固体の合計量に対して、0.5〜15質量%の量で含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
工程(i)で準備される懸濁物が、少なくとも1種の担体、又はその適切な前駆体を、懸濁物の合計質量に対して、0.01〜40質量%の量で含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
ガス流中に懸濁物を分散させることにより得られる小滴の径が、1マイクロメーター以上のd10から100マイクロメーター以下のd90までの範囲であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
工程(ii)で懸濁物が分散されるガス流が、窒素、空気、希薄空気、アルゴン、水、及びこれらの2種以上の混合物から選ばれることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
工程(iii)でガス流をスプレーによってモノリス構造の支持体部材に導いている間、モノリス構造の支持体部材に向かい合って配置された少なくとも1個のスプレーノズルが、ノズルの長手方向軸に対して垂直の方向に動かされることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。
モノリス構造の支持体部材が、シリコンカーバイド、コージライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、又は金属からできていることを特徴とする請求項1〜21の何れか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述したように、本発明は、被覆されたモノリス構造の支持体部材を製造する方法であって、
前記支持体部材は、通路を含み、該通路は壁によって相互に分けられており、前記通路は多角形、好ましくは長方形、より好ましくは正方形の断面輪郭を有しており、
その方法は、以下の工程、
(i)所定の懸濁物を準備する工程、
を含み、ここで前記所定の懸濁物は、該懸濁物を100s
−1のせん断速度でせん断して測定して、0.5〜100mPasの範囲の粘度を有し、及び固体含有量が、懸濁物の合計質量に対して、1〜40質量%の範囲であり、及び前記懸濁物は、好ましくは、水性懸濁物であり、
更に以下の工程、
(ii)前記懸濁物をガス流中に分散させ、小滴を含むガス流を得る工程、
を含み、ここで、前記小滴は、1マイクロメーター以上のd10から100マイクロメーター以下のd90までの範囲に小滴径を有しており、
更に以下の工程、
(iii)前記小滴を含む前記ガス流を、前記モノリス構造の支持体部材に、支持体の通路の軸方向に沿って導く工程、
を含むことを特徴とする被覆されたモノリス構造の支持体部材を製造する方法に関する。
【0014】
本発明に従えば、(i)で準備される、所定の懸濁物の所定の特徴、すなわち懸濁物の特定の粘度、及び懸濁物の特定の固体含有量、及び分散された懸濁物の(ii)における特定のパラメーター、すなわち分散された懸濁物の平均小滴径の、特定の組合せが、(断面輪郭の隅部が、被覆物材料の最少の量を含んでいるという)優れた被覆特性を有する、被覆されたモノリス構造の支持体部材を得ることを可能にすることが見出された。特に、モノリス構造の支持体部材が長方形又は正方形の場合について、被覆されたモノリス構造の支持体材料は、従来技術の物品と比較して、この優れた特徴を示し、及び断面輪郭の隅部において、被覆物材料の量が少なく、本発明に従う被覆物が「長方形被覆物」又は「正方形被覆物」と称することができる。
【0015】
工程(i)
本発明の工程(i)に従えば、100s
−1のせん断速度でせん断して測定して、0.5〜100mPasの範囲の粘度を有する懸濁物(suspension)が準備される。より好ましくは、この粘度は、1〜50mPas
(mPa・s)の範囲、好ましくは1.5〜30mPasの範囲、より好ましくは1.5〜20mPasの範囲である。従って、本発明に従う懸濁物の、代表的な粘度の値は、1.5〜5mPas、又は5〜10mPas、又は10〜15mPas、又は15〜20mPasの範囲である。本発明の懸濁物の、特に好ましい低粘度の値は例えば、1.5〜4mPasの範囲、より好ましくは2〜3mPas
(mPa・s)の範囲である。上述したように、工程(i)で準備される懸濁物の全ての粘度の値は、コーン−プレート−レオメーター、例えばAnton−Paar MCR−100レオメーターを使用して、懸濁物を100s
−1のせん断速度(shear rate)でせん断して測定されていると理解される。
【0016】
更に工程(i)で、準備された懸濁物は、固体含有量が、懸濁物の合計質量に対して1〜40質量%の範囲である。概して懸濁物は、低い固体含有量、例えば1〜20質量%の固体含有量を有することが可能であるが、固体含有量は、20〜40質量%の範囲が好ましく、20〜35質量%の範囲がより好ましい。特に、本発明に従う方法の工程(i)で準備される懸濁物の固体含有量は、20〜30質量%の範囲である。
【0017】
更に、工程(i)で準備される懸濁物中に存在する固体材料の粒子の平均粒径が、特定の範囲内に存在する場合に、特に有利であって良いことがわかった。好ましい粒子径は、10マイクロメーター以下のd90、より好ましくは7マイクロメーター以下のd90、及びより好ましくは5マイクロメーター以下のd90の範囲である。特に好ましい粒径は3マイクロメーター以下のd90、より好ましくは2マイクロメーター以下のd90である。本発明で使用される「粒径」は、懸濁物又は懸濁物の希釈物のレーザー回折測定によって測定された粒径として理解される。「d90」という用語は、この径(サイズ)以下の全ての粒子の集合体が、全試料の90%の粒子体積を含むことを意味する。通常、本発明の方法は、モノリス構造の支持体部材に、実質的に如何なるタイプの被覆をも施すのにも使用することができる。好ましい実施の形態に従えば、本発明の方法によって施される被覆物は、少なくとも1種の触媒的に活性な成分を含む。この理由は、本発明の好ましい使用に従えば、被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒物品として使用されるからである。少なくとも1種の触媒的に活性な成分が関与することについて、特定の制限は存在しない。特に、触媒的に活性な金属、又は触媒的に活性な金属の前駆体を記載することができる。本発明で使用される「触媒的に活性な金属の前駆体」という用語は、本発明の方法に使用された場合に、最終的に得られたモノリス構造の支持体部材中に存在する、触媒的に活性な金属になる化合物を意味する。限定を目的とすることなく、例示として、触媒的に活性な金属のこのような前駆体は、工程(i)に従う懸濁物中に含まれる上記金属の所定の塩であることができ、ここで、この所定の塩は、(ii)で懸濁物を分散させた場合、及び/又は(iii)で分散した懸濁物を施す場合、及び/又は後に詳述するように、被覆されたモノリス構造の支持体部材を乾燥、及び/又はか焼、及び/又は適切なガス流で処理する場合に、触媒的に活性な金属に変換されるものである。他の触媒的に活性な成分として、例えば、触媒反応促進化合物、例えば促進剤金属(promoter metal)、又はこれらの前駆体、触媒的に活性な多孔性化合物、例えばゼオライト、又はこれらの前駆動体、分子篩、又はこれらの前駆体を記載することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態では、(i)で準備される懸濁物は、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体を含む。特に、上述したように通常、「触媒的に活性な金属の適切な前駆体」という記載は、触媒的に活性な金属の塩(この塩は、本発明の方法を受け、被覆されたモノリス構造の支持体部材中に、金属化合物として存在する)を表す。好ましくは、少なくとも1種の触媒的に活性な金属は、マンガン、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、銀、金、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる。より好ましくは、少なくとも1種の触媒的に活性な金属は、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる。より好ましくは、触媒的に活性な金属は、白金、又は白金とパラジウムの混合物である。
【0019】
本発明において記載される、このような金属の代表的な前駆体は、例えば白金アミンヒドロキシド、白金ニトレート、テトラアミン白金ヒドロキシド、又はクロリド、パラジウムニトレート、テトラアミンパラジウムニトレート、又はクロリド、又はロジウムニトレートである。
【0020】
上述した粘度の値、及び固体含有量の値が実現されていれば、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体に関し、通常(i)で準備される懸濁物の含有量としては特定の限定は存在しない。本発明に従えば、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体に関し、(i)で準備される懸濁物の好ましい含有量は、懸濁物中に含まれる固体の合計質量に対して、0.5〜15質量%の範囲である。より好ましくは、触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体に関し、(i)で準備される懸濁物の好ましい含有量は、0.6〜14質量%の範囲、より好ましくは0.7〜13質量%の範囲、より好ましくは0.8〜12質量%の範囲、より好ましくは0.9〜11質量%の範囲、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。2種以上の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体が懸濁物中に含まれる場合、これらの値は、それぞれの触媒的に活性な金属又はその前駆体の、個々の含有量の合計を表す。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態に従えば、(i)で準備される懸濁物は、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体に加え、少なくとも担体、特に少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体のための、少なくとも1種の担体、又は少なくとも1種の担体の少なくとも1種の適切な前駆体を含む。本発明で使用される「担体の前駆体」という記載は、本発明の方法が行われた場合に、(最終的に得られる被覆されたモノリス構造の支持体部材中に存在する)担体が得られる化合物を意味する。
【0022】
本発明の好ましい担体は、酸化物、及び/又は混合酸化物、特に多孔性の酸化物、及び/又は混合多孔性酸化物を含み(これらに限定されるものではない)、ここで、多孔性の酸化物、又は混合多孔性酸化物は、非結晶質(アモルファス)、又は結晶質、又は非結晶質及び結晶質であることができる。このような酸化物は、ミクロ孔(微小孔)、又はメソ細孔、又はマクロ孔、又はミクロ−及びメソ細孔、又はミクロ−及びマクロ孔、又はミクロ−及びメソ−及びマクロ孔を含んでも良い。特定の制限は存在しないが、多孔性酸化物が耐火性金属酸化物であることが好ましい。より好ましくは、多孔性酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、希土類金属酸化物、例えばセリウムの酸化物、プラセオジム、ランタン、ネオジム、及びサマリウムの酸化物、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート、アルミナ−ジリコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア、チタニア−アルミナ、ゼオライト、分子篩、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる。より好ましくは、少なくとも1種の多孔性支持体材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0023】
考えられるゼオライトは、天然の、又は化学的に合成した、又は天然の及び化学的に合成したゼオライトである。ゼオライトの考えられる構造タイプは、例えば、Atlas of Zeolite Structure Typesに定義されており、そしてABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NA
B、NAT、NES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、PHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YNU、YUG、及びZONを含むが、これらに限定されるものではない。http://izasc.ethz.ch/fmi/xsl/lZASC/ft.xslが参照される。代表的なゼオライトは、例えば、菱沸石、モルデン沸石、ゼオライトベータ、ZSM−5である。
【0024】
好ましい実施の形態に従えば、耐火性の金属酸化物は基本的に、アルミナから構成され、より好ましくはガンマアルミナ、又は活性アルミナ、例えばガンマ、又はエータアルミナから構成される。好ましくは、活性化されたアルミナは、BET表面積測定に従い測定して、比表面積が、60〜300m
2/g、好ましくは90〜200m
2/g、より好ましくは100〜180m
2/gである。従って、本発明は上述した方法であって、(i)で準備される懸濁物中に含まれる担体がAl
2O
3、好ましくはガンマ−Al
2O
3である方法に関する。
【0025】
通常、上記に定義した粘度の値、及び固体含有量の値が実現されていれば、少なくとも1種の担体、又はその適切な前駆体に関して、(i)で準備される懸濁物の含有量として特定の限定は存在しない。本発明に従い、担体、又はその適切な前駆体に関し、(i)で準備される懸濁物の好ましい含有量は、0.01〜40質量%であることがわかった。より好ましくは、担体、又はその適切な前駆体について、(i)で提供される懸濁物の含有量は、0.1〜35質量%の範囲、より好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜25質量%の範囲である。2種以上の担体、又はその適切な前駆体が懸濁物中に含まれる場合、これらの値は、各担体、又はその前駆体の個々の含有量の合計を表す。典型的には、本発明に従い、少なくとも1種の担体が、少なくとも1種の触媒的に活性な金属のための担体として使用される。
【0026】
(i)で懸濁物を準備することについて、得られた懸濁物が上記に定義した特性を有する限り、特定の制限は存在しない。懸濁物が少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体、及び/又は少なくとも1種の担体、又はその適切な前駆体、好ましくは少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体、及び少なくとも1種の担体、又はその適切な前駆体、より好ましくは少なくとも1種の触媒的に活性な金属前駆体、及び少なくとも1種の担体を含む場合、担体、又はその前駆体を、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその前駆体を含む、少なくとも1種の溶液で含浸させることが好ましい。溶媒が使用される場合、懸濁物が本発明の工程(ii)の処理を受けることができるのであれば、特定の制限は存在しない。好ましい実施の形態に従えば、溶液は水溶液である。含浸された担体は、次に好ましくは、((i)の懸濁物を得るために)少なくとも1種の適切な液体と混合される。好ましくは、この液体は水であり、より好ましくは脱イオン水である。
【0027】
モノリス構造の支持体部材を被覆する化合物の種類に依存して、特に担体又はその前駆体、及び/又は触媒的に活性な金属、又はその前駆体に依存して、(上記に定義した特性を有する懸濁物を得るために、)例えば、固体粒子の粒径を低減する必要があることが考えられて良い。このような場合、粒子の径は、考えられる如何なる方法によってでも適切に低減される。好ましい実施の形態に従えば、モノリス構造の支持体部材に被覆される化合物に基づいて、特に、上述した含浸された担体に基づいて、第1の懸濁物が製造され、これは固体の粒径を低下させるためにミル(粉化)の処理を受ける。
【0028】
このような粒径低減工程、特に(少なくとも1回行っても良い)ミル工程から、上記に定義した粒径を、10マイクロメーター以下、好ましくは7マイクロメーター以下、より好ましくは5マイクロメーター以下のd90の範囲に有する固体を含む懸濁物が得られる。
【0029】
このようにして得られた懸濁物の粘度に依存して、上記に定義した粘性を有する、(i)で準備される懸濁物を得るために、懸濁物を適切に濃縮、又は希釈することが必要であっても良い。好ましくは、少なくとも1つの粒径を低減する工程から得られた懸濁物は、少なくとも1種の液体、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水を使用して希釈され、100s
−1のせん断速度で懸濁物をせん断して測定して、0.5〜100mPasの範囲の粘度を有し、及び固体含有量が、懸濁物の合計質量に対して、1〜40質量%の範囲である懸濁物が得られる。
【0030】
特に、被覆される化合物が、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその前駆体を含む場合、この金属は、好ましくは、マンガン、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、銀、金、及びこれらの2種以上の混合物から選ばれ、より好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれ、この金属は特に、白金又は白金とパラジウムの混合物であり、及び更に、少なくとも1種の担体、またはこれらの前駆体を(上記触媒的に活性な金属、又はその前駆体のために)含む場合、この担体は、好ましくは、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、希土類金属酸化物、例えばセリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム、及びサマリウムの酸化物、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート、アルミナ−ジリコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア、チタニア−アルミナ、ゼオライト、分子篩、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれ、より好ましくは、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれ、担体は特に、アルミナ、より好ましくはガンマ−アルミナである。工程(i)で準備される懸濁物を製造する間、(i)での製造の間に得られる懸濁物のpHは、3〜5の範囲、より好ましくは3.4〜4.5の範囲に維持されるべきであることがわかった。溶液のpHをこのような値に調節することは、少なくとも1種の適切な酸の適切な量を加えることによって達成されても良い。代表的な酸は、例えば、酢酸、硝酸、酒石酸であり、酢酸及び硝酸が特に好ましい。
【0031】
従って、本発明は、上記に定義した方法であって、工程(i)で、懸濁物が以下の工程、
(a)少なくとも1種の担体、又はその適切な前駆体に、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体を含む、少なくとも1種の溶液を含浸させる工程;
(b)少なくとも1種の含浸された担体、又はその適切な前駆体を、水、及び適切な量の酸と混合し、pHが3〜5の範囲、固体含有量が20〜50質量%の範囲の懸濁物を得る工程;
(c)工程(b)で得られた懸濁物をミル(粉化)し、工程(i)で準備される懸濁物の粒子の粒子径d
90が、10マイクロメーター以下、好ましくは7マイクロメーター以下、より好ましくは5マイクロメーター以下である懸濁物を得る工程;
(d)脱イオン水を使用して、及び任意に追加的に適切な量の酸を使用して、工程(c)で得られた懸濁物を希釈し、該懸濁物を100s
−1のせん断速度でせん断して測定して、0.5〜100mPasの範囲の粘度を有し、及び固体含有量が、懸濁物の合計質量に対して、1〜40質量%の範囲である懸濁物を得る工程、
を含む方法によって準備されることを特徴とする方法にも関する。
【0032】
特に好ましい実施の形態に従えば、本発明は、上記に定義した方法であって、工程(i)で、懸濁物が以下の工程、
(a)アルミナを、触媒的に活性な金属前駆体として白金塩、好ましくは白金ヒドロキシド(水酸化白金)を含む溶で、又は触媒的に活性な金属前駆体として白金塩とパラジウム塩、好ましくは白金アミンヒドロキシドとパラジウムニトレートを含む溶液で含浸させる工程;
(b)含浸したアルミナを、脱イオン水、適切な量の酸、好ましくは酢酸と混合して、pHが3〜5の範囲、及び固体含有量が20〜50質量%の範囲の溶液を得る工程;
(c)工程(b)で得られた懸濁物をミル(粉化)し、工程(i)で準備される懸濁物の粒子の粒子径d
90が、10マイクロメーター以下、好ましくは7マイクロメーター以下、より好ましくは5マイクロメーター以下である懸濁物を得る工程;
(d)脱イオン水を使用して、工程(c)で得られた懸濁物を希釈し、該懸濁物を100s
−1のせん断速度でせん断して測定して、0.5〜100mPasの範囲の粘度を有し、及び固体含有量が、懸濁物の合計質量に対して、1〜40質量%の範囲である懸濁物を得る工程、
を含む方法によって準備されることを特徴とする方法にも関する。
【0033】
工程(i)で、懸濁物を製造するための方法の任意の工程で、(上述した化合物に加え、)1種以上の更なる成分が加えられても良い。最終的に得られた被覆されたモノリス構造の支持体材料の用途に依存して、1種以上の適切な促進剤、又はその適切な前駆体、例えば、La、Pr、Nd、Ba及び/又はSr、及び/又は1種以上の適切な孔形成剤、例えば、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、又はエチルセルロース、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポイオレフィン、ポリアミド、又はポリエステル(が加えられても良い)。1種以上の消泡剤、例えばオクタノール、又は他の適切な界面活性剤が加えられることも考えられる。
【0034】
(i)で懸濁物を製造する間の個々の工程は、適切な圧力と温度で行うことができる。好ましい実施の形態に従えば、個々の工程は20〜30℃の温度、及び周囲圧力(環境圧力)で行うことができる。
【0035】
工程(ii)
本発明の工程(ii)に従えば、(i)から得られた懸濁物は、ガス流中に分散されて、1マイクロメーター以上のd10から100マイクロメーター以下のd90までの範囲に小滴径を有する小滴を含むガス流が得られる。本発明で使用される小滴径d10及びd90は、懸濁物粒径についてのd90と同様に理解される:d10以下の全ての小滴の集合体が、測定された試料の全小滴体積の10%を含み、d90以下の全ての小滴の集合体が、測定された試料の全小滴体積の90%を含むものである。小滴径は、レーザー回折システム、例えばMalvern Lnsitec Tによって測定することができる。
【0036】
本発明で、(i)で得られた懸濁物を工程(ii)でガス流中に混入させること(乗せて運ぶこと)について、通常、特定の制限は存在しない。本発明の特に好ましい実施の形態に従えば、(i)で得られた懸濁物をガス流中に混入させることは、スプレーノズル、特に2−相スプレー−ノズルを使用して行われる。このような2−相スプレーノズルでは、(i)からの懸濁物は、ノズル内に注入されるか、又は圧力下、又は重力下にノズルに供給される。更に、懸濁物の霧化媒体として作用するガス流が、ノズル内に注入される。ノズル内で、(拡大するガス流によって懸濁物に作用する)せん断力によって、懸濁物が微細な小滴へと分散される。小滴径を上記に定義した範囲に形成可能な、通常のスプレーノズル(例えば、Schlickによる2−相ノズル、例えばSchlick model 970)を、本発明に使用することかできる。
【0037】
工程(ii)におけるノズルの特性について、上記に定義した範囲の小滴径を得ることができれば、特定の制限は存在しない。
【0038】
典型的には、ガス流は、圧力下にノズルに注入される。本発明に従えば、0.5〜2バール、好ましくは0.5〜1.5バール、より好ましくは0.5〜1.2バールの範囲の圧力下で、ガス流をノズル内に導入することが好ましい。
【0039】
通常、流れをノズルに導入する前に、ガス流を加熱することが可能である。本発明に従えば、ガス流の典型的な温度は、0〜100℃の範囲、より好ましくは10〜75℃の範囲、より好ましくは15〜50℃の範囲である。
【0040】
懸濁物を混入させるために使用されるガス流について、特定の限定は存在しない。本発明に従えば、ガス流の好ましいガスは、窒素、空気、希薄空気(lean air)、アルゴン、水、及びこれらの2種以上の混合物から選ばれる。特に好ましいものは、窒素、又は窒素と水の混合物である。懸濁物が混入されるガス流が、水を含む窒素である場合、53〜99.5体積%の窒素、及び47〜0.5体積%の水を含む混合物が好ましい。本発明に従えば、懸濁物が混入されるガス流が、水を含む窒素である場合、62〜99.5体積%の窒素及び0.5〜38体積%の水、より好ましくは88〜99.5体積%の窒素及び0.5〜12体積%の水を含む混合物が、より好ましい。
【0041】
上述したように、ガス流に懸濁物を混入させることによって得られる小滴のサイズ(径)は、1マイクロメーター以上のd10から100マイクロメーター以下のd90までの範囲である。本発明の考えられる実施の形態に従えば、0.1マイクロメーター以下のd90にまで低下する小滴径が想定されている。好ましくは、小滴径は、1マイクロメーター以上のd10から70マイクロメーター以下のd90までの範囲、より好ましくは、1マイクロメーター以上のd10から50マイクロメーター以下のd90までの範囲である。
【0042】
本発明の方法の工程(iii)に従えば、上記に定義した小滴径を有する小滴を含むガス流が、支持体の通路の軸方向に沿って、モノリス構造の支持体部材に向けて導かれる。従って、上述したノズルについて、ガス流に懸濁物を混入させることによって、懸濁物をガス流中に分散させ、及び少なくとも1個のスプレーノズルを通して、ガス流を導くことが好ましい(ここで、少なくとも1個のガスノズルは、モノリス構造の支持体部材に向かい合って配置され、及び少なくとも1個のノズルを通した貫流方向が、モノリス構造の支持体部材の通路の貫流方向と平行であることが好ましい)。
【0043】
工程(iii)
本発明において、少なくとも1個のスプレーノズルの、モノリス構造の支持体部材からの距離について、特定の制限は存在しない。しかしながら、上記に定義した懸濁物、及び上記に定義した小滴径について、少なくとも1個のスプレーノズルとモノリス構造の支持体部材の距離は、35mm以下であることが有利であり、この距離は、好ましくは25mm以下、より好ましくは15〜25mmの範囲である。
【0044】
被覆されるモノリス構造の支持体部材の通路の数に依存して、(ガス流をモノリス構造の支持体部材に導くために、)1個のスプレーノズルを使用することが可能であり、又は1個を超える数のスプレーノズルを使用することが可能である。モノリス構造の支持体部材が、数個の平行な通路しか含まない場合、モノリス構造の支持体部材に対して、固定された位置に配置された、(まさしく)1個のスプレーノズルを使用することが考えられる。本発明の、被覆されたモノリス構造の支持体部材の特性の可能な改良のために、ノズルと部材の位置を自由に調整することができるように、スプレーノズルとモノリス構造の支持体部材を配置することもできる。従って、本発明の好ましい実施の形態に従えば、(iii)で、スプレーによってガス流をモノリス構造の支持体部材に導いている間、モノリス構造の支持体部材に向かい合って配置されたスプレーノズルが、ノズルの長手方向軸に対して垂直の方向に動かされる。
【0045】
本発明の他の実施の形態に従えば、モノリス構造の支持体部材に向けてガス流を導くために、少なくとも2個のスプレーノズルを使用することも可能である。2個以上のスプレーノズルが使用される場合、ノズルは個々のノズルの間で異なる距離で、平行に配置されても良い。更に、2列以上のこのような列(ここで、ノズルの個々の並びの距離は、同一であるか、互いに異なるものである)でノズルを使用することが可能である。1個の個別のノズル、及び/又は1列のノズル、及び/又は全てのノズルを、モノリス構造の支持体部材に対して、固定された位置に配置することができる。本発明の被覆されたモノリス構造の支持体の特性の可能な改良を行うために、ノズルと部材の位置を自由に調整できるように、スプレーノズルの少なくとも1列の列、及びモノリス構造の支持体部材を配置することができる。従って、本発明の好ましい実施の形態に従えば、(iii)で、ガス流をスプレー(噴霧)によってモノリス構造の支持体部材に導いている間、モノリス構造の支持体部材に向かい合って配置された(複数の)スプレーノズルが、ノズルの長手方向軸に対して垂直の方向に動かされる。
【0046】
まとめると、本発明は、上述した方法であって、(iii)で、ガス流を、スプレー(噴霧)によってモノリス構造の支持体部材に向けて導いている間、モノリス構造の支持体部材に向かい合って配置された、少なくとも1個のスプレーノズルが、ノズルの長手方向軸に対して垂直の方向に動かされることを特徴とする方法にも関する。
【0047】
本発明に従えば、少なくとも1個のスプレーノズルの長手方向軸は、モノリス構造の支持体部材の通路の長手方向軸と同じ方向に配置されることが特に好ましい。通常、少なくとも1個のノズルの長手方向軸と、モノリス構造の支持体部材の通路の長手方向軸の両方が、水平に、又は垂直に配置されるように、少なくとも1個のノズル及びモノリス構造の支持体部材を配置することができる。これらが垂直に配置される場合、ガス流を下から上への方向、又は上から下への方向に、モノリス構造の支持体に向けて導くことができ、上から下への方向が好ましい。本発明によれば、頂部から下方に向けた角で、30°〜60°、好ましくは35°〜55°、より好ましくは基本的に40°〜50°の角度で、ガス流がモノリス構造の支持体部材に導かれるように、少なくとも1個のノズル及びモノリス構造の支持体部材を配置することが有利であることがわかった。より好ましくは、この角度は45°である。
【0048】
本発明において、ガス流をモノリス構造の支持体部材に向けて導いている間、角度付けされた頂部−下方の方向を変化させることができるように、少なくとも1個のノズル及びモノリス構造の支持体部材の両方を配置することも考えられる。
【0049】
本発明の好ましい実施の形態に従えば、モノリス構造の支持体部材の通路を通って導かれる、上記に定義した分散された懸濁物が、特定の質量流を有する場合に、被覆されたモノリス構造の支持体部材の特に有利な特性が得られる。好ましくは、モノリス構造の支持体部材の通路を通る、分散された懸濁物の質量流は、好ましくは0.1g/分/cm
2〜1g/分/cm
2、より好ましくは0.2g/分/cm
2〜0.8g/分/cm
2、より好ましくは0.3g/分/cm
2〜0.6g/分/cm
2の範囲であり、ここで1cm
2は、モノリス構造の支持体部材の断面輪郭の1cm
2を意味する。本発明において、「質量流」という用語は、通路を通って導かれる懸濁物の質量にかかわるものである。
【0050】
本発明の更なる好ましい実施の形態に従えば、モノリス構造の支持体部材に向けて、所定の期間導かれた、上記に定義された分散した懸濁物について、被覆されたモノリス構造の支持体部材の特に有利な特性が得られる。好ましくは、(iii)で、ガス流が、モノリス構造の支持体部材に向けて導入され、この導入は、スプレーノズルにつき、10秒/cm
2〜10分/cm
2の範囲、より好ましくは15秒/cm
2〜7分/cm
2の範囲、より好ましくは20秒/cm
2〜5分/cm
2の範囲の時間で行われ、ここで1cm
2は、モノリス構造の支持体部材の断面輪郭の1cm
2を意味する。
【0051】
本発明に従えば、ガス流は、1工程(1段階)以上でモノリス構造の支持体部材に向けて導かれる。ガス流がモノリス構造の支持体部材に向けて少なくとも1工程(1段階)で導かれる場合、1〜16工程(段階)、より好ましくは1〜8工程が行われる。1工程以上が行われる場合、2、4又は8工程が好ましく、4及び8工程がより好ましく、及び4工程が特に好ましい。更に好ましいものは、2つの連続した工程の間で、モノリス構造の支持体部材が、その長手方向軸の回りで回転する実施の形態である。
【0052】
従って、一実施の形態に従えば、本発明は、上記に定義した方法であって、モノリス構造の支持体部材の通路が長方形、好ましくは正方形の断面輪郭を有し、懸濁物が、4又は8工程(段階)で、モノリス構造の支持体部材に向けて導かれ、好ましくはスプレーされ、及び2つの連続する工程の間で、モノリス構造の支持体部材がその長手方向軸の回りに、85°〜95°にわたり、好ましくは基本的に90°、回転することを特徴とする方法に関する。
【0053】
上述したように、被覆されたモノリス構造の支持体部材の特に有利な特性は、上記に定義したように、モノリス構造の支持体に向けて、所定の期間にわたって導かれた、分散された懸濁物によって得られる。上述した、好ましい期間は、ガス流がモノリス構造の支持体部材に向けて導かれる合計時間(すなわち、1工程以上が行われる場合には、全ての連続的な工程にわたる時間)を表す。
【0054】
工程(iv)
ガス流をモノリス構造の支持体部材に、及びその通路を通して導き、通路の壁に被覆物を施した後、1種以上の適切な温度でモノリス構造の支持体部材を乾燥させることが好ましい。これらの温度は、被覆物の組成に依存する。(i)から得られた懸濁物が、少なくとも1種の触媒的に活性な材料、及びより好ましくは、少なくとも1種の担体を含む、本発明に従う好ましい実施の形態に従えば、好ましくはこの温度は、450℃以下である。より好ましくは、この温度は100〜450℃の範囲、より好ましくは100〜400℃である。従って、本発明は、上記に定義した方法であって、更に以下の工程、
(iv)(iii)から得られたモノリス構造の支持体部材を、450℃以下の温度、好ましくは100〜450℃の範囲の温度、より好ましくは100〜400℃の範囲の温度で乾燥させる工程、
を含む方法に関する。
【0055】
乾燥は、任意の適切な装置で行われる。例えば乾燥は、被覆されたモノリス構造の支持体部材を適切な炉内に配置することによって行うことができる。好ましくは乾燥は、モノリス構造の支持体部材の被覆された通路を通して、加熱されたガスを通すことによって行われる。モノリス構造の支持体部材を乾燥させるために使用されるガス流について、本発明に従い使用されるガスの化学的性質は通常、被覆物の化学的性質に依存する。被覆物が、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、及び好ましくは少なくとも1種の金属に加え更に、少なくとも1種の担体を含む、本発明に従う好ましい実施の形態について、(iv)で乾燥させるために使用される好ましいガスは、空気、窒素、アルゴン、蒸気、二酸化炭素、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0056】
(少なくとも2工程(段階)の連続する工程で、モノリス構造の支持体部材に向けてガス流が導かれる、)本発明の好ましい実施の形態によれば、乾燥は、これらの工程の間で、モノリス構造の支持体部材が、その長手方向軸の回りにを回転されるか、されないかにかかわらず、このような2つの連続する工程の間で乾燥を行うことができる。
【0057】
本発明の考えられる実施の形態によれば、第1の懸濁物の小滴を含む第1のガス流を、少なくとも1工程で、モノリス構造の支持体部材に向けて導くことができ、これにより通路に第1の被覆物を含む、被覆されたモノリス構造の支持体部材が得られる。第2の懸濁物の小滴を含む、第2のガス流を、少なくとも更なる工程で、このように被覆されたモノリス構造の支持体部材に導くことができる。ここで、第2の懸濁物は、少なくとも1つの特性、例えば粘度、固体含有量、粒径、及び/又は化学的組成について、第一の懸濁物と同一であることも、又は異なっていることも可能である。更に、第2のガス流は、第1のガス流の小滴と比較して、同一の、又は異なる径を有することができる小滴を含むことができる。更に、第2のガス流を所定の態様で、モノリス構造の支持体部材に導くことが考えられ、ここでこの所定の態様は、第2のガス流の質量流が、第1のガス流の質量流と同一であるか、又は異なる、及び/又は第2のガス流がモノリス構造の支持体部材に向けて導かれる時間が、第1のガス流がモノリス構造の支持体部材に向けて導かれる時間と同一であるか、又は異なる、及び/又は第2のガス流がモノリス構造の支持体部材に向けて導かれる工程の数が、第1のガス流がモノリス構造の支持体部材に向けて導かれる工程の数と同一であるか、又は異なる態様である。第3、第4の又はこれを超えるガス流をモノリス構造の支持体部材に向けて導くことも考えられる。従って、本発明は、(例えば異なる層の状態の)2種以上の異なる被覆物を、モノリス構造の支持体部材に施す方法をも記載する。
【0058】
通常、(iv)での乾燥は、乾燥の間、基本的に一定に維持される温度で行うことができる。しかしながら、2種以上の温度(各温度は、所定の時間にわたり、基本的に一定に維持される)を使用することも可能である。更に、与えられた温度で乾燥工程を開始させ、そして温度を連続的に上昇、又は低下させることも可能である。
【0059】
乾燥の後、及び被覆物の化学的特性に依存して、少なくとも1つのか焼工程を、通常は乾燥温度よりも高い温度で行うことも考えられる。行う場合、か焼が行われる雰囲気は、乾燥が行われる雰囲気と同一であっても良く、又は異なっていても良い。典型的なか焼温度は、500〜600℃の範囲、好ましくは525℃〜575℃の範囲である。典型的なか焼時間は、5分〜12時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0060】
本発明の方法に使用される、好ましいモノリス構造の支持体部材は、多角形の断面輪郭を有する通路を有するものである。特に好ましくは、長方形の断面輪郭を有する通路であり、正方形の断面輪郭を有する通路が、特に好ましい。
【0061】
通常、非被覆の通路の断面輪郭の端部(
縁部;edge)は、適切な長さを有していても良い。しかしながら、上記に定義した好ましい懸濁物、及びこの懸濁物をモノリス構造の支持体部材に向けて導く好ましいパラメーターに関して、モノリス構造の支持体部材の非被覆の通路の断面輪郭の端部
(縁部)が、0.5〜2.5mmの範囲、好ましくは0.55〜2.0mmの範囲、より好ましくは0.6〜1.5mmの範囲の長さを有する、モノリス構造の支持体部材が好ましい。
【0062】
通常、モノリス構造の支持体部材の通路は、適切な任意の長さを有していても良い。しかしながら、上記に定義した好ましい懸濁物、及びこの懸濁物をモノリス構造の支持体部材に向けて導く好ましいパラメーターに関して、モノリス構造の支持体部材の通路が、5〜31cmの範囲、好ましくは5〜16cmの範囲の長さを有している、モノリス構造の支持体部材が好ましい。
【0063】
本発明の考えられる実施の形態に従えば、より長い通路を有する支持体部材も可能である。より長い通路を有する、このような部材が使用された場合、1つ以上の工程で、ガス流を、第1の断面輪郭、例えばモノリス構造の支持体部材の入口端部に導くことが可能である。2つの連続的な工程の間で、モノリス構造の支持体部材が向きを変えられ、向きを変えた後、ガス流が第2の断面輪郭、例えばモノリス構造の支持体部材の出口端に向けて導かれる。
【0064】
本発明の方法で使用される、好ましいモノリス構造の支持体部材は、セラミック状の材料、例えばコージライト、アルミナ、例えばアルファ−アルミナ、シリコンカーバイド、シリコンニトリド、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミニウムチタネート、アルミナ−シリカ−マグネシア、又はジルコニウムシリケート、又は耐火性金属、例えばステンレス鋼から成る。より好ましいモノリス構造の支持体部材は、コージライト、及びシリコンカーバイドから形成される。セラミック壁流基材は、代表的には、多孔率が約40〜70%の材料から形成される。本願で使用される「多孔率」は、DIN66133に従う水銀多孔率測定法に従い測定されるものと理解される。本発明によれば、多孔率が38〜75%の壁流基材が好ましい。
【0065】
本発明の方法に使用されるモノリス構造の支持体部材は、貫流基材(flow-through substrate)、及び壁流基材を含む。壁流基材は典型的には、入口端部、出口端部、入口端部と出口端部の間に延びる基材軸長さ、及び壁流フィルター基材の内部壁によって規定された、複数の通路(ここで、複数の通路は、開口した入口端部と閉塞した出口端部を有する入口通路、及び閉塞した入口端部と開口した出口端部を有する出口通路を有する)を含む。
【0066】
モノロリス構造の支持体部材を被覆する、上記に定義した本発明のパラメーターは、上述したように、被覆された通路の断面輪郭の隅部で、被覆材料の沈殿量が少ないモノロリス構造の支持体部材を製造することを可能にする。特に被覆物が、触媒的に活性な材料、例えば貴金属を含む場合には、本発明の方法は、断面輪郭の隅部に堆積し、及び金属と接触するべき反応物質が、部分的にしかアクセス(利用又は接近)できない、又は全くアクセスできない金属の量を最少限にすることができる。
【0067】
従って本発明は概して、上記に定義した本発明の方法によって得ることができる、又は得られた、その上に被覆物を有する壁を有する通路を含む、モノリス構造の支持体部材にも関する。
【0068】
更に本発明は、壁を有する通路(ここで前記壁は通路を相互に分離しており、及びその上に堆積した被覆物を有する)を含むモノリス構造の支持体部材であって、非被覆の通路は多角形の断面輪郭を有し、好ましくは長方形の断面輪郭、より好ましくは正方形の断面輪郭を有し、上記断面輪郭の隅部における被覆物の平均厚さd
Cが、前記断面輪郭の端部の被覆物の平均厚さd
Eプラス85マイクロメーター以下(d
C≦(d
E+85マイクロメーター))、好ましくはプラス80マイクロメーター以下であることを特徴とするモノリス構造の支持体部材にも関する。
【0069】
本発明の好ましい実施の形態に従えば、上記断面輪郭の隅部における被覆物の平均厚さd
Cが、(d
E+60マイクロメーター)〜(d
E+85マイクロメーター)の範囲、より好ましくは(d
E+60マイクロメーター)〜(d
E+80マイクロメーター)の範囲、より好ましくは(d
E+60マイクロメーター)〜(d
E+75マイクロメーター)の範囲である。
【0070】
本願で使用される「平均厚さd
E」という記載は、断面輪郭の端部の中央で測定した平均被覆部厚さを表す。「平均厚さ」という記載は、n個の個々に測定した被覆部厚さを合計し、そして得られた値をnで割ることによって得られる平均値として理解される。本発明において、nは8である。このような端部被覆厚さの個々の値は、(例えば、通路の断面輪郭の顕微鏡写真から)被覆部表面から壁までの距離を測定することによって測定される。
【0071】
実用的な目的のために、この厚さは、2個の隣合う通路の、2個の隣合う端部での被覆部厚さに基づいて測定することもできる:第1の通路の第1の断面輪郭の第1の端部の中央(すなわち、それぞれの隅部の間の端部の中央、ここで第1の端部の中央は、第2の通路の第2の断面輪郭の端部の中央と隣合っている)で、合計端部厚さ(d
E,total)、すなわち、第1の端部の被覆部厚さ、プラス2個の通路を分けている壁の厚さ、プラス第2の端部の中央の被覆部厚さが測定され、得られた値から、壁のわかっている厚さが差し引かれ、そして得られた値が2で割られる。
図2には、被覆部厚さの個々の厚さの測定が概略的に示されている。本発明において、光学顕微鏡(Keyence VHX 600)を使用して断面の写真を撮り、そして装置に備えられたVHX 600測定ソフトウェアーを使用して、上記厚さを測定することにより、このような測定を物理的に行うことができる。
【0072】
本願で使用される「平均厚さd
C」という記載は、個々に測定されたn個の隅部被覆物厚さを合計し、そして得られた値をnで割ることによって得られた平均値を表す。このような隅部被覆物厚さは、隅肉部分の被覆物表面と(非被覆の)支持体壁の隅部の間の、最も短い距離として定義される。規則通りに被覆された通路にとって、この最も短い距離は、隅部角の二等分線上に位置する。
【0073】
実用的な目的のために、隅部厚さは、長方形断面輪郭で、2個のすいじかい的(対角的)に隣合う通路の、2個のすじかい的に隣合う被覆物厚さに基づいて測定することができる:第1の通路の第1の断面輪郭の第1の隅部(この隅部は、第2の通路の第2の断面輪郭の隅部とすじかい的に隣合っている)で、合計隅部厚さ(d
C,total)が測定される。通路を分けている全ての壁が同一の厚さd
Wを有しているという前提に基づき、合計隅部厚さは、(非被覆の)通路の断面輪郭の端部に対して45°の角度で測定して、第1の隅部の被覆物の表面と第2の隅部の被覆物の表面の間の距離であると理解される。測定した値から、壁厚さに2の平方根を掛けた値が差し引かれ、そして得られた値が2で割られる。
図2には、被覆物厚さの個々の値の測定が概略的に示されている。本発明において、光学顕微鏡(Keyence VHX 600)を使用して断面の写真を撮り、そして装置に備えられたVHX 600測定ソフトウェアーを使用して、上記厚さを測定することにより、このような測定を物理的に行うことができる。
【0074】
本発明に従う、代表的な被覆されたモノリス構造の支持体部材は、壁を有する通路を含み(前記壁は、通路を相互に分けており、及び被覆物をその上に堆積した状態で有している)、非被覆の通路は、多角形の断面輪郭を有しており、そして2つの隣合う被覆された壁の接合部が、隅肉部を被覆することによって形成されており、及び隅肉部の被覆が、断面において窪んだ輪郭を形成し、この窪んだ輪郭は、2つの隣合う被覆された壁について正接的に配置された円の部分の中点に及ぶ深さのもので、そして上記円は最大で0.2mmの半径Rを有しているものである。
【0075】
上述したように、(i)で準備された懸濁物は、好ましくは、少なくとも1種の触媒的に活性な金属、又はその適切な前駆体、また好ましくは少なくとも1種の担体、又はその適切な前駆体を含む。最終的に得られた被覆されたモノリス構造の支持体部材は、好ましくは上述したように、工程(iv)に従い乾燥させた後、(従って)好ましくは、少なくとも1種の触媒的に活性な金属及び少なくとも1種の担体を含む。より好ましくは、被覆されたモノリス構造の支持体部材は、マンガン、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、銀、金、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる、より好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる、少なくとも1種の触媒的に活性な金属を含み(金属は特に、白金又は白金とパラジウムの混合物である)、及び更に、アルミナ、ジルコニア、チタニア、希土類金属酸化物、例えば、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム、及びサマリウムの酸化物、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア、チタニア−アルミナ、ゼオライト、分子篩、及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる、少なくとも1種の担体を含み、より好ましくはAl
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれる、少なくとも1種の担体を含む(担体は特に、アルミナ、より好ましくはガンマ−アルミナである)。
【0076】
本発明の方法に従うモノリス構造の支持体部材に施される被覆物は、少なくとも1種の触媒的に活性な金属を、モノリス構造の支持体の体積に対して、20〜200g/ft
3(706.3〜7063g/m3)、好ましくは25〜150g/ft
3の量で含む。被覆物が1種以上の触媒的に活性な金属を含む場合、これらの値は、個々の触媒的に活性な金属の量の合計を表す。
【0077】
本発明の方法に従うモノリス構造の支持体部材に施された被覆物は、モノリス構造の支持体の体積に対して、好ましくは0.5〜2.5g/in
3(0.03051〜0.15255g/cm3)、好ましくは0.5〜2g/in
3の、少なくとも1種の担体を含む。被覆物が1種以上の担体を含む場合、これらの値は、個々の担体の合計量を表す。
【0078】
本発明の方法に従い得ることができる、又は得られた、被覆されたモノリス構造の支持体部材、特に上述した厚さの値、d
C及びd
Eによって特徴付けられる被覆物を有する、被覆されたモノリス構造の支持体部材は、考えられる全ての用途のために使用することができる。特に、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒物品として使用される。特に、自動車触媒、三元触媒、ディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター、プロセス触媒、例えば水素化、及び脱水素化反応、脱硫黄反応が記載されても良い。更に考えられる使用は、例えば、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材の、燃料電池への適用である。従って、好ましい実施の形態に従えば、本発明は、上記に定義したモノリス構造の支持体部材を触媒物品として、好ましくは、排ガスを処理するための触媒物品として、より好ましくは、自動車の排ガスの処理のために使用する方法に関する。
【0079】
ある実施の形態では、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒物品として、(本発明の被覆されたモノリスに加え、1種以上の更なる成分を含む)自動車の排ガス処理システム内に含めることができる。例えば、被覆されたモノリス構造の支持体部材が、触媒化された煤フィルター(CSF)として使用された場合、これは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、選択的触媒的還元(SCR)物品、及び/又はNO
x貯蔵及び還元(NSR)触媒物品と連結、例えば流体的に連結されていても良い。例えば、被覆されたモノリス構造の支持体部材がDOCとして使用された場合、これは、CSF、SCR物品、及び/又はNSR触媒物品と連結、例えば流体的に連結されていても良い。例えば、被覆されたモノリス構造の支持体部材がSCR物品として使用される場合、これは、CSF、DOC、及び/又はNSR触媒物品と連結、例えば流体的に連結(連通)されていても良い。例えば、被覆されたモノリス構造の支持体部材がNSR物品として使用される場合、これは、CSF、SCR物品、及び/又はDOCと連結、例えば流体的に連結(連通)されていても良い。
【0080】
以下に実施例と比較例を使用して、本発明を説明する。
【実施例】
【0081】
実施例1:被覆される懸濁物の製造
1027.4gのSBa150L4(Sasolからのガンマ−アルミナ)を、ボール内に計量導入した。78.97gPtアミンヒドロキシドを436.1gの脱イオン水で希釈し、そしてSBa150L4に加え、そして5分間、混合(攪拌)した。49.32gの酢酸を98.63gの脱イオン水で希釈し、そして混合物に加え、そして15分間混合した。pHが3.5の500gの脱イオン物をビーカー内に計量導入し、そして酢酸をpHが2.45になるまで加えた。
【0082】
得られた懸濁物を攪拌メディアミル内で、粒径d90<10マイクロメーターが得られるまで細かく砕いた。この時点における固体含有量は46.4質量%であった。第2のミル工程(粉砕工程)で、スラリーを脱イオン水を使用して約40質量%の固体含有量まで希釈し、そしてd90<2マイクロメーターが得られるまで更に粉砕(ミル)した。粉砕の後、スラリーを27質量%の固体含有量にまで更に希釈し、そして酢酸を加えることによってpHをpH=4に調整した。
【0083】
最終的に得られた懸濁物の粘度は、Anton−Paar MCR−100 cone−plateレオメーターを使用して、100s
−1のせん断速度で測定して2〜3mPasの範囲であった。懸濁物の固体含有量は、27質量%であった。懸濁物中に含まれる固体粒子の粒径は、d90=1.9マイクロメーターであった。
【0084】
実施例2:実施例1に従う懸濁物のモノリス構造の支持体部材へのスプレー(吹付)
2.1 モノリス構造の支持体部材として、コージライト貫流モノリスを使用した。このコージライト貫流モノリスは次の特性を有していた:3インチ(7.62cm)の長さ、1.5インチ(3.81cm)の直径、より大きいモノリス(市販、Corning Celcor(登録商標)、Corning inc.より)、セル密度が400cpsi(平方インチ当たりのセル数)。
2.2 スプレーノズルとして、4S3からの2相Schlickノズル、タイプ970を使用した。ノズル出口からモノリス支持体部材の表面までの距離は24mmであった。モノリス構造の支持体部材に施されるガス流が、モノリス構造の支持体部材に、頂部から下方に向けた方向の角度が45°(注、
図1)でスプレーされるように、ノズル及びモノリス構造の支持体部材を配置した。
2.3 実施例1で得られた懸濁物を、240g/hの質量流でノズルに供給した。ノズルに供給したガス流は(基本的に、気泡貫流容器内で、室温において水で飽和した)窒素であり、従って、約2体積%の水を含んでいた。ガス流を1bargの圧力でノズルに供給した。
2.4 モノリス構造の支持体部材の通路を通る分散した懸濁物の質量流は、0.135g/分/cm
2であった。
2.5 この懸濁物を、8工程でモノリス構造の支持体部材に導いた。最初の4工程で、ガス流を、モノリス構造の支持体部材の第1の側に導いた。この4工程の後、モノリス構造の支持体部材の向きを変え(反転させ)、そしてガス流をモノリス構造の支持体部材の第2の側に、4工程で導いた。2つの連続する工程(この工程の間、ガス流は、モノリス構造の支持体部材の与えられた側に導かれる)の間、モノリス構造の支持体部材を、その長手方向軸の回りに90°回転させた。
【0085】
合計スプレー時間は4分で、各工程が30秒で、これは21秒/cm
2の合計値に対応する(ここで、1cm
2は、モノリス構造の支持体部材の断面輪郭の1cm
2を表す)。
【0086】
2.6 各工程の後、モノリス構造の支持体部材の通路を、エアガンを使用して短時間(約5秒)ブローし、そして熱風ブロアーを使用して事前乾燥した。ブロアーの設定温度は350℃で、通路を通って導かれた空気の温度は100〜150℃であった。熱風ブロアーを使用した事前乾燥を、約30秒間行った。この後、モノリスを炉内に直立状態で配置し、そして400℃で10分間、乾燥させた。
【0087】
最後のスプレー及び乾燥工程の後、モノリスを同一の炉内で60分間、550℃でか焼した。
【0088】
2.7 最終的に得られた、被覆されたモノリス構造の支持体部材を
図3に示す。被覆物の平均厚さd
Eは、約25マイクロメーター(平均の合計厚さは、174マイクロメーター、測定した壁厚さは120〜130マイクロメーター、従って125マイクロメーターと推定される)、及び被覆物の平均厚さd
Cは、84マイクロメーター(平均の合計厚さは345マイクロメーター、壁厚さは125マイクロメーターであった)であった。
【0089】
被覆されたモノリス構造の支持体部材の断面輪郭は、非常に少ない量の被覆物材料を含んでいることが明確であった。このことは、式d
C<d
E+80マイクロメーターを満たす、平均厚さd
C及び平均厚さd
Eによって説明される。本発明の代表的な被覆されたモノリス構造の支持体部材について上記に定義した、断面輪郭の隅部での半径Rは、100〜150マイクロメーター、すなわち0.2mm未満であった。
【0090】
最終的に得られた被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒的に活性な金属(白金)の含有量が、25g/ft
3であり、及び合計ワッシュコート積載量(担体+活性材料として定義されたワッシュコート積載量)が1.16g/in
3であった。
【0091】
比較例1:浸漬被覆(dip-coating)
実施例1に従い製造した懸濁物を、実施例2、セクション2.1で使用したモノリス構造の支持体部材の浸漬被覆のために使用した。
【0092】
モノリスを、スラリーを含むビーカー内に配置し、そしてこの中に5分間保持した。モノリスをビーカーから取り出し、エアガンを使用して通路をブローし、そして実施例1で行ったのと同じ手順(熱風ブロー約30秒、次に400℃で10分間)に従って乾燥した。この手順を1回繰り返した(すなわち、合計で2回の被覆工程)。2回目の乾燥工程の後、モノリスを60分間、550℃でか焼した。
【0093】
最終的に得られた被覆されたモノリス構造の支持体部材を
図4に示す。被覆物の平均厚さd
Eは、23マイクロメーター(=(170−125)マイクロメーター/2)であり、及び被覆物の平均厚さd
Cは、約120マイクロメーター(418メイクロメーターであった平均の合計厚さ、125マイクロメーターであった壁厚さから計算)であった。
【0094】
明確に、被覆されたモノリス構造の支持体部材の断面輪郭の隅部は、実施例1に従い本発明から得られた断面輪郭の隅部と比較して、相当に多くの被覆物材料を含んでいる。このことは、(式d
C<d
E+85マイクロメーターを満たさない)平均厚さd
C及び平均厚さd
Eによって説明される。対照的に、この比較例では、d
C=d
E+97マイクロメーターであった。上記に定義した断面輪郭の隅部の半径Rは、200〜250マイクロメーター、すなわち少なくとも0.2mmであり、そして従って、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材について、代表的に得られた値を上回っている。
【0095】
最終的に得られたモノリス構造の支持体部材は、触媒的に活性な金属(白金)が29g/ft
3、及び担体(アルミナ)含有量が1.36g/in
3であった。
【0096】
比較例2:浸漬被覆
固体含有量が42質量%、及び粘度が25mPasの懸濁物を製造した。
【0097】
懸濁物の製造を、実施例1(ミル前の全ての工程)に記載したものと同一の手法に従って行ったが、他のバッチで製造した。
【0098】
ミル(粉砕)を1回だけ行い、ミルの間に5滴のオクタノールを加えた。最終的なスラリーは、pHが4.07、粘度が25mPasであり、そして固体含有量が42.4質量%であった。懸濁物の粒子は、d90=11.36マイクロメーターの径(サイズ)であった。
【0099】
浸漬被覆工程のために、実施例1に記載したモノリス構造の支持体部材を、通路をダウンして(垂直ポジション)、上述した懸濁物中に沈めた。モノリス構造の支持体部材を、この状態で約1分間、保持した。次に、支持体部材を懸濁物から取り除き、そして過剰の懸濁物を通路から流出除去した。懸濁物から取り出した時、モノリスを180°回転(反転)させて、排液を方向付けた。モノリス構造の支持体部材の外側表面「スキン」をふき、過剰の懸濁物を除去した。モノリス通路をクリアにし、そしてエアガンを使用して過剰の懸濁物を除去した。
【0100】
モノリス構造の支持体部材を、乾燥のために炉内に400℃で1時間、直接的に配置し、そして最終的に、これを550℃で1時間、か焼した。
【0101】
最終的に得られた被覆されたモノリス構造の支持体部材を
図5に示す。被覆物の平均厚さd
Eは、約4マイクロメーター(=約(132−125)マイクロメーター/2)であり、及び被覆物の平均厚さd
Cは、約132マイクロメーター(合計=440マイクロメーター、壁=125マイクロメーター)であった。
【0102】
明確に、被覆された状態の隅部の断面輪郭は、本発明から得られた断面の隅部よりも、相当に多くの被覆物を含んでいた。このことは、式d
C≦d
E+85マイクロメーターを満たさない、平均厚さd
C、及び平均厚さd
Eから説明される。対照的に、この比較例では、d
C=d
E+128であった。上記に定義した断面輪郭の隅部における半径Rは、250〜300マイクロメーター、すなわち少なくとも0.25mmであり、及び従って、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材について典型的に得られた値を超えるものであった。
【0103】
最終的に得られた、被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒的に活性な金属(白金)が29g/ft
3、及び合計ワッシュコート積載量が1.26g/in
3であった。
【0104】
比較例3:スプレー被覆
実施例1に従う懸濁物と同様の態様で、懸濁物を製造した。しかしながら、この懸濁物の粘度は130mPasであった。
【0105】
懸濁物を実施例1と同様の態様で製造した。d90=1.6マイクロメーターにミルした後、懸濁物を脱イオン化した水で希釈し、固体含有量を約25質量%にした。次に、ベーマイト(ガンマ−アルミニウムヒドロキシド)懸濁物(市販品、Dispal 23N4−20、Sasolより)を、懸濁物のベーマイト含有量が、合計懸濁物の4質量%になる量で加えた。この懸濁物は最終的に、固体含有量が29.9質量%、及び粘度が130mPasであった。
【0106】
この懸濁物を、以下に記載する方法に従い、モノリス上にスプレーした。
【0107】
実施例2.1に記載したものと同一の種類のモノリス構造の支持体部材を使用した。
【0108】
実施例2.2に記載したものと同じスプレーノズルを使用した。ノズル及びモノリス構造の支持体部材を配置し、これにより、モノリス構造の支持体部材に施されるガス流が、頂部から下方に向けた方向の角度が45°の角でモノリス構造の支持体部材にスプレーされるようにした(注、
図1)。
【0109】
懸濁物をモノリスに、8工程でスプレーした。各2工程間で、モノリスを180°方向替えさせた。各2回目の180°ターンで、モノリスの長手方向軸の回りに90°の追加的な回転を行った。
【0110】
最初の4スプレー工程で、ノズルをモノリスから20mm離れて配置した;スプレー継続時間は5分間であった。スプレー工程5及び6の間で、ノズル距離は35mm、継続時間は20分であった。スプレー工程7及び8の間で、ノズル距離は70mm、継続時間は20分であった。
【0111】
この実験の間、懸濁物流は測定しなかった。ノズルに供給されたガス流は乾燥窒素であった。ガス流を、1bargの圧力でノズルに供給した。
【0112】
分散した懸濁物の、モノリス構造の支持体部材の通路を通る質量流は、0.01g/分/cm
2であった。
【0113】
合計スプレー時間は、100分であり、525秒/cm
2の合計値に対応した(ここで、1cm
2は、モノリス構造の支持体部材の断面輪郭の1cm
2に対応する)。
【0114】
各工程の後、モノリス構造の支持体部材の通路を、エアガンを使用して短時間(約5秒)ブローし(吹き)、そして熱風ブロアーを使用して事前乾燥させた。ブロアーの設定温度は350℃であり、そして通路を通って導かれた空気の温度は、100〜150℃であった。熱風ブロアーを使用した事前乾燥を約30秒行った。この後、モノリスを炉内に直立状態で起き、そして400℃で10分間、乾燥させた。
【0115】
最後のスプレー及び乾燥工程で、モノリスを550℃で60分間、同じ炉内でか焼した。最終的に得られた、被覆されたモノリス構造の支持体部材を
図6に示す。明確に示されているように、得られた被覆物は、被覆物厚さ及び隅部の半径に関して、非常に不均一である。隅部厚さを正確に測定していないが、(本発明の方法に従い得られた断面輪郭の隅部よりも)相当に多くの材料が断面輪郭の隅部に含まれていることがわかる。
【0116】
最終的に得られた被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒的に活性な金属(白金)の含有量が40g/ft
3、及び合計ワッシュコート積載量が1.9g/in
3であった。
【0117】
比較例4:スプレー被覆
懸濁物を実施例1に従う懸濁物と基本的に同様の態様で製造した。しかしながら、懸濁物の固体含有量は42質量%であった。
【0118】
懸濁物を実施例1に記載した方法と同じ方法で製造した。しかしながら、ミル(粉砕)の後、懸濁物を水で希釈することなく、そのままで使用した。懸濁物は、固体含有量が42質量%、粒子径d90が7マイクロメーター、及び粘度が2.5mPasであった。
【0119】
実施例2、セクション2.1〜2.6に記載された方法に従い、懸濁物をモノリス上にスプレーしたが、分散ガスとして乾燥窒素を使用し、及び各スプレーの間隔を20秒にした。
【0120】
最終的に得られた、被覆されたモノリス構造の支持体部材を
図7に示す。明確に示されているように、被覆物厚さ及び隅部半径について、得られた被覆物は非常に不均一である。隅部に相当に多くの材料が含まれていることを理解するのに、隅部厚さの測定は不必要である。
【0121】
最終的に得られた、被覆されたモノリス構造の支持体部材は、触媒的に活性な金属(白金)の含有量が23g/ft
3、及びワッシュコート積載量が0.94g/in
3であった。
【0122】
実施例3:実施例2、比較例1、及び比較例2のモノリス構造の支持体部材の試験
実施例2、比較例1、及び比較例2の被覆されたモノリス構造の支持体部材を触媒物品として使用した。この目的のために、触媒物品を炭化水素含有ガス流に、以下のように接触させた:
触媒試験の前に、モノリス構造の支持体部材を、10%の水を含む空気雰囲気中で、5時間、750℃で調節した(エージングした)。次に、モノリス構造の支持体部材を反応器内に配置し、ガス流を、55000h
−1のGHSV(ガス時間空間速度:gas hourly space velocity)で、被覆されたモノリス構造の支持体部材を通して流した。ガス流は、1500ppmのCO、150ppmのC
1HC(C
3H
6/CH
4=4/1);100ppmのNO、13%のO
2、10%のCO
2及び5%H
2Oを含む窒素で構成されていた。反応器内の温度を20K/分の速度で上昇させた。排出ガス組成を、ABBからの赤外線測光器Uras 14(CO分析)及びABBからの炎イオン化検出器(FID)(酸化水素分析)を使用して、一酸化炭素及び炭化水素の変換を、温度の関数として監視した。これらの結果に基づいて、変換速度を計算した。
【0123】
図8に、試験結果を示す。明確に、被覆されたモノリス構造の支持体部材は、最も有利な特性を示し、そしてHC変換が、(比較例1及び2のモノリス構造の支持体部材と比較して)相当に低い温度で達成された。特に、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材を使用した場合、約140℃の温度でHC変換が既に開始されている。これに対して、他の部材を使用した場合、変換は約150℃で開始されるか、又は175℃で開始されている。比較例のモノリスと比較して、少なくとも7℃低い温度で、50%の変換が達成されている。
【0124】
これらの有利な結果は、本発明の被覆されたモノリス構造の支持体部材が、比較例に従う被覆されたモノリス構造の支持体部材(29g/ft
3)よりも少ない量の触媒的に活性な金属(25g/ft
3)を含むのにもかかわらず得られたものである。このことは、本発明の方法が、非常に優れた、被覆されたモノリス構造の支持体部材をもたらすことを明確に示している。