特許第6017170号(P6017170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017170
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】堆積物除去方法及びガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H01L21/302 102
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-94439(P2012-94439)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-222875(P2013-222875A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 慈
(72)【発明者】
【氏名】西村 栄一
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−353205(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0211752(US,A1)
【文献】 特開2006−156122(JP,A)
【文献】 特開2008−117867(JP,A)
【文献】 特開2002−033313(JP,A)
【文献】 特表2000−514606(JP,A)
【文献】 特表平10−512100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去方法であって、
前記基板を加熱しながら酸素プラズマに晒す酸素プラズマ処理工程と、
前記酸素プラズマ処理工程の後、前記基板を、処理チャンバー内でフッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気に晒し、かつ、前記混合ガスの全圧を第1の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を第1の分圧とする第1の期間と、処理チャンバー内を排気し前記混合ガスの全圧を前記第1の全圧より低い第2の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を前記第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間とを、複数サイクル繰り返すサイクル処理工程と、
を具備し、
前記サイクル処理工程では、前記基板に対向する領域から前記混合ガスを前記基板に供給し、かつ、前記基板の中央部を含み前記基板の直径より小さな直径を有する円形の第1領域と、前記第1領域の外側の環状の第2領域とからの前記混合ガスの単位面積当たりの供給量を、前記第2領域より前記第1領域の方を多くする
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の堆積物除去方法であって、
前記第1領域の直径が前記基板の直径の85%以下である
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の堆積物除去方法であって、
前記第1の分圧が、前記混合ガスの作用によって前記堆積物を除去可能な分圧である
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記第1の期間及び前記第2の期間が、5秒乃至20秒の期間である
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記堆積物が、シリコン酸化物を含む
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記パターンが、構造物として二酸化ケイ素を含む
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記アルコールガスが、メタノールガスである
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項8】
基板を、処理チャンバー内でフッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気に晒し、かつ、前記混合ガスの全圧を第1の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を第1の分圧とする第1の期間と、処理チャンバー内を排気し前記混合ガスの全圧を前記第1の全圧より低い第2の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を前記第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間とを、複数サイクル繰り返すサイクル処理工程を実施し、前記基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去するガス処理装置であって、
前記基板に対向する領域から前記混合ガスを前記基板に供給し、かつ、前記基板の中央部を含み前記基板の直径より小さな直径を有する円形の第1領域と、前記第1領域の外側の環状の第2領域とからの前記混合ガスの単位面積当たりの供給量が、前記第2領域より前記第1領域の方が多くなるように供給することを特徴とするガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積物除去方法及びガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野においては、半導体ウエハ等の基板に、成膜処理やエッチング処理を行って、所望のパターンを形成することが行われている。このような半導体装置の製造工程において、STI(シャロー・トレンチ・アイソレーション)プロセスを実施すると、パターンの側壁部分にシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)の堆積物が堆積する。従来、このような堆積物の除去は、例えば、HF単ガスを用いた処理によって行われていた。
【0003】
しかしながら、堆積物の組成や結合の状態がパターン中の構造物の二酸化シリコン(例えば、ゲート酸化膜)と近い場合、これらとの選択比が取れないという問題がある。なお、堆積物とHFとの反応(SiO+4HF→SiF+2HO)によって生成される副産物の水が反応を加速して連鎖反応を引き起こし、堆積物のみではなくパターン中の構造物の二酸化シリコンが削られてしまう場合がある。
【0004】
また、エッチング処理後の放置時間が長くなると、堆積物の吸湿状態に依存して水分の影響が出てしまうため、更に選択比が悪くなる場合があるという問題がある。なお、シリコン基板表面に形成された自然酸化膜を除去する技術としては、HF蒸気およびHOまたはアルコール蒸気を使用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この技術は自然酸化膜を除去する技術であり、パターンの側壁部分に堆積した堆積物を除去する技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−263416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、従来においては、パターンに堆積した堆積物を除去する際に、堆積物とパターン中の構造物の二酸化シリコンとの選択比が低く、パターン中の構造物の二酸化シリコンがダメージを受けるという問題があった。さらに、エッチング処理後の放置時間が長くなると、堆積物の吸湿状態に依存して水分の影響が出てしまうため、更に選択比が悪くなるという問題があった。
【0007】
また、堆積物を除去する速度に、基板の中央部と周縁部に差が生じ易く、基板の面内における処理の均一性を向上させることが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、エッチング処理後の放置時間の長短に係わらず、効率的に堆積物を除去することができ、かつ、パターン中の構造物の二酸化シリコンに対するダメージを抑制するとともに均一に処理することのできる堆積物の除去方法及びガス処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の堆積物除去方法の一態様は、基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去方法であって、前記基板を加熱しながら酸素プラズマに晒す酸素プラズマ処理工程と、前記酸素プラズマ処理工程の後、前記基板を、処理チャンバー内でフッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気に晒し、かつ、前記混合ガスの全圧を第1の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を第1の分圧とする第1の期間と、処理チャンバー内を排気し前記混合ガスの全圧を前記第1の全圧より低い第2の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を前記第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間とを、複数サイクル繰り返すサイクル処理工程と、を具備し、前記サイクル処理工程では、前記基板に対向する領域から前記混合ガスを前記基板に供給し、かつ、前記基板の中央部を含み前記基板の直径より小さな直径を有する円形の第1領域と、前記第1領域の外側の環状の第2領域とからの前記混合ガスの単位面積当たりの供給量を、前記第2領域より前記第1領域の方を多くすることを特徴とする。
【0010】
本発明のガス処理装置は、基板を、処理チャンバー内でフッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気に晒し、かつ、前記混合ガスの全圧を第1の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を第1の分圧とする第1の期間と、処理チャンバー内を排気し前記混合ガスの全圧を前記第1の全圧より低い第2の全圧とするか、あるいは、アルコールガスの分圧を前記第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間とを、複数サイクル繰り返すサイクル処理工程を実施し、前記基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去するガス処理装置であって、前記基板に対向する領域から前記混合ガスを前記基板に供給し、かつ、前記基板の中央部を含み前記基板の直径より小さな直径を有する円形の第1領域と、前記第1領域の外側の環状の第2領域とからの前記混合ガスの単位面積当たりの供給量が、前記第2領域より前記第1領域の方が多くなるように供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エッチング処理後の放置時間の長短に係わらず、効率的に堆積物を除去することができ、かつ、パターン中の構造物の二酸化シリコンに対するダメージを抑制するとともに均一に処理することのできる堆積物の除去方法及びガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に用いるプラズマ処理装置の断面概略構成を示す図。
図2】本発明の一実施形態に用いるガス処理装置の断面概略構成を示す図。
図3図2のガス処理装置の要部構成を示す図。
図4】本発明の一実施形態の工程を示すフローチャート。
図5】本発明の一実施形態における圧力の変化の状態を示すグラフ。
図6】実施例におけるパターンの状態を示す電子顕微鏡写真。
図7】比較例におけるパターンの状態を示す電子顕微鏡写真。
図8】堆積物除去前と実施例及び比較例の堆積物除去後の状態を示す電子顕微鏡写真。
図9】堆積物除去可能な圧力、メタノールガス流量、温度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の堆積物除去方法における酸素プラズマ処理工程に使用するプラズマ処理装置100の構成例を模式的に示す縦断面図である。同図に示すようにこのプラズマ処理装置100は、内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバー101を具備している。この処理チャンバー101内には、半導体ウエハ(基板)Wを載置するためのステージ102が設けられている。ステージ102は、図示しない温度制御機構を具備しており、ステージ102上に載置された半導体ウエハWの温度を所定温度に維持できるようになっている。
【0015】
処理チャンバー101は、例えばクォーツ等から構成されており、その天井部には、クォーツ製の窓103が形成されている。そして、この窓103の外側には、図示しない高周波電源に接続されたRFコイル104が設けられている。窓103の部分には、酸素ガスを含む所定の処理ガス(例えば、Oガス単ガス)を処理チャンバー101内に導入するためのガス導入部105が設けられている。そして、RFコイル104に供給された高周波の作用によって、ガス導入部105から導入された処理ガスのプラズマPを発生させるようになっている。
【0016】
窓103の下方には、プラズマの遮蔽とガスの分散を行うためのガス拡散板106が設けられており、このガス拡散板106を介してプラズマ中のラジカルが分散した状態でステージ102上の半導体ウエハWに供給されるようになっている。なお、基板にプラズマを作用させる場合、直接基板とプラズマとを接触させてもよく、また本実施形態のように、リモートプラズマによる処理、すなわち、直接基板とプラズマとを接触させるのではなく、基板とは離間した部位で発生させたプラズマ中から引き出されたラジカルを基板に作用させてもよい。
【0017】
また、処理チャンバー101の底部には、排気管107が設けられている。この排気管107は、図示しない真空ポンプ等に接続されており、処理チャンバー101内を所定の圧力に排気できるようになっている。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態の堆積物除去方法におけるサイクル処理工程に使用するガス処理装置200の構成例を模式的に示す縦断面図である。同図に示すようにこのガス処理装置200は、内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバー201を具備している。この処理チャンバー201内には、半導体ウエハ(基板)Wを載置するためのステージ202が設けられている。ステージ202は、図示しない温度制御機構を具備しており、ステージ202上に載置された半導体ウエハWの温度を所定温度に維持できるようになっている。
【0019】
処理チャンバー201の上部には、処理チャンバー201内に所定の処理ガス(本実施形態ではHFガスとメタノールガスとの混合ガス)を導入するためのガス導入部203が設けられている。また、ガス導入部203が処理チャンバー201内に開口する開口部204の下方には、多数の透孔205が形成されたガス拡散板206が、ステージ202に載置された半導体ウエハWと対向するように配設されている。そして、このガス拡散板206の透孔205から、すなわち、半導体ウエハWと対向する領域から、処理ガスを半導体ウエハWの表面に供給するように構成されている。
【0020】
このガス拡散板206は、図3(a)にも示すように、直径300mmの半導体ウエハWに対して、直径d1が250mmの円形の第1領域206a内に均一なピッチで形成された透孔205を有しており、第1領域206aより外側の環状の第2領域206bには、透孔205が形成されていない構成となっている。これによって、半導体ウエハWと対向する領域のうち、第1領域206aから供給される処理ガスの単位面積当たりの流量が、第2領域206bから供給される処理ガスの単位面積当たりの流量(本実施形態では0)より多くなるようになっている。
【0021】
なお、図3(a)には、第1領域206aと第2領域206bとの境界を示す仮想線を一点鎖線で図示してある。また、図3(b)に、実質的に第1領域と第2領域の区別が無く、全面に均一なピッチで形成された透孔215を有するガス拡散板216の構成を示す。図3(a)のガス拡散板206における透孔205の数と、図3(b)に示すガス拡散板216における透孔205の数は同数であり、透孔205は例えば28mmピッチ、透孔215は例えば40mmピッチで形成されている。また、ガス拡散板216における透孔205の配置されている領域の直径d2は、半導体ウエハWの直径より大きい345mmとされている。
【0022】
なお、図3(a)、図3(b)において、第1領域206aの直径d1及び透孔205の配置されている領域の直径d2とは、その領域内の全ての透孔205及び透孔215が内部に含まれる最小径の円を描いた時のその円の直径を示している。また、なお、図3(a)、図3(b)において、透孔205の数及びピッチは、実際の数及びピッチを表したものではなく、省略して記載されている。
【0023】
なお、上記のガス拡散板206、ガス拡散板216を用いた場合、例えば、処理ガス流量を2800sccm程度とすると、ガス拡散板206、ガス拡散板216の背圧は13.3KPa(100Torr)程度となる。一方、半導体ウエハWが配置された処理チャンバー201内の圧力は、665Pa(5Torr)程度とされる。このように、ガス拡散板206及びガス拡散板216の背圧と、処理チャンバー201内の圧力との間に大きな差があるので、ガス拡散板206及びガス拡散板216の面内において、例えば、中央部に配設された透孔205及び透孔215であっても、周縁部に配設された透孔205及び透孔215であっても、各透孔205及び透孔215からは、略均一な流量で処理ガスが吐出される。
【0024】
図1に示すように、処理チャンバー201の底部には、排気管207が設けられている。この排気管207は、図示しない真空ポンプ等に接続されており、処理チャンバー201内を所定の圧力に排気できるようになっている。
【0025】
上記構成のプラズマ処理装置100及びガス処理装置200を用いて本実施形態では、次のようにして堆積物除去処理を行う。
【0026】
図4のフローチャートに示すように、前工程においてエッチング処理が行われ(ステップ301)、所定のパターンが形成された半導体ウエハには、パターンの側壁部分にエッチング処理に伴う反応生成物が堆積する。例えば、SIT(シャロー・トレンチ・アイソレーション)プロセスを実施すると、パターンの側壁部分にシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)の堆積物が堆積する。そこで、本実施形態における堆積物除去処理によって、パターンの側壁部分に堆積した堆積物を除去する。
【0027】
上記のエッチング処理(ステップ301)は、例えば、以下に示す2ステップのエッチング処理として実施される。
(ステップ1)
圧力:6.65Pa(50mTorr)
高周波電力(周波数の高い高周波)/(周波数の低い高周波):400/1500W
エッチングガス:HBr/NF/O=400/75/5sccm
ステージ温度: 110℃
時間:5秒
(ステップ2)
圧力:6.65Pa(50mTorr)
高周波電力(周波数の高い高周波)/(周波数の低い高周波):400/1400W
エッチングガス:HBr/NF/O=350/32/19sccm
ステージ温度: 110℃
時間:20秒
【0028】
上記のエッチング処理の後、堆積物除去処理における酸素プラズマ処理を行う(ステップ302)。この酸素プラズマ処理は、図1に示したプラズマ処理装置100等によって実施することができる。この堆積物除去処理は、上記エッチング処理の後、直ちに行ってもよく、ある程度の放置時間(例えば、数時間から数日)の後に行ってもよい。
【0029】
このプラズマ処理装置100における酸素プラズマ処理工程は、例えば以下のように実施する。すなわち、酸素プラズマ処理工程では、予め所定温度に設定されたステージ102上に半導体ウエハWが載置され、図示しない静電チャック等によって吸着されることによって半導体ウエハWが所定温度に加熱された状態となる。この状態でガス導入部105から酸素ガスを含む所定の処理ガスが導入されるとともに、排気管107から排気が行われ、処理チャンバー101内が所定圧力の処理ガス雰囲気とされる。そして、RFコイル104に高周波電力が印加されることによって、酸素ガスの誘導結合プラズマが生起される。このプラズマ中のイオンは、ガス拡散板106によって遮蔽され、電荷を有しない酸素ラジカルが分散した状態でステージ102上の半導体ウエハWに供給され、酸素ラジカルの作用による酸素プラズマ処理が行われる。
【0030】
この酸素プラズマ処理は、エッチング処理後の放置時間の長短に係わらず、パターン及び堆積物の吸湿状態を一定にする(脱水する)ために行うものである。これにより、後に行うサイクル処理工程において、吸湿状態の差異による影響を排除することによってパターンの側壁に堆積した堆積物であるシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)を除去することができ、かつ、反応が過剰になってパターン構造物であるゲート酸化膜等のSiO層がダメージを受けること等を抑制することができる。
【0031】
この酸素プラズマ処理では、処理ガスとして酸素を含むガス例えば、酸素ガスの単ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスの混合ガス等を使用し、半導体ウエハWの加熱温度(ステージ温度)は例えば200℃〜300℃程度に設定される。また、圧力は、例えば66.5Pa(0.5Torr)〜266Pa(2Torr)程度とされる。
【0032】
上記の酸素プラズマ処理の後、堆積物除去処理におけるサイクル処理を実施する(ステップ303〜305)。このサイクル処理は、図2に示したガス処理装置200等によって実施することができる。
【0033】
ガス処理装置200におけるサイクル処理工程は、以下のように実施される。すなわち、サイクル処理工程では、予め所定温度に設定されたステージ202上に半導体ウエハWが載置されることによって半導体ウエハWが所定温度に維持された状態となる。この状態でガス導入部203から所定の処理ガス(本実施形態ではHFガス+メタノールガス)が導入されるとともに、排気管207から排気が行われ、処理チャンバー201内が所定圧力の処理ガス雰囲気とされる。
【0034】
図4のフローチャートに示すように、サイクル処理工程では、メタノールガスの分圧を第1の分圧とする第1の期間(ステップ303)と、処理チャンバー内を排気しメタノールガスの分圧を第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間(ステップ304)とを、複数サイクル繰り返す(ステップ305)。このようにメタノールガスの分圧を変動させる方法としては、例えば、以下のような方法を用いることができる。
【0035】
すなわち、ガスの供給を変化させ、例えば、第1の期間では所定流量の混合ガスを供給し、第2の期間では混合ガスの供給を停止し所定流量の窒素ガス等を供給する方法、また、第1の期間では所定流量の混合ガスを供給しつつ自動圧力制御装置(APC)で処理チャンバー内を所定圧力に維持し、第2の期間では自動圧力制御装置(APC)の設定圧力を低く又は全開として真空ポンプで全引きし、圧力を低くする方法、等である。本実施形態では、図5のグラフに示すように、後者の方法を用いて第1の期間と第2の期間とを設定する。
【0036】
この時、半導体ウエハWの温度は、例えば数十度(例えば30℃)以下の低温とすることが好ましい。また、第1の期間における圧力は、例えば665Pa(5Torr)〜1330Pa(10Torr)程度が好ましく、処理ガスは、HFガス+アルコールガス(本実施形態ではCHOHガス)の混合ガスを使用する。
【0037】
このようなサイクル処理において、第1の期間は、混合ガスの作用によって堆積物が除去され得る混合ガスの圧力またはアルコールガスの分圧に設定する。また、第2の期間は、混合ガスの圧力またはアルコールガスの分圧を低下させ、堆積物が除去されずに第1の期間中に堆積物と混合ガスとの反応によって生成された物質(HO等)を排気して処理チャンバー201外に排出する期間とする。このような第1の期間及び第2の期間は、夫々5秒から20秒程度とし、このサイクルを複数回繰り返して行う。
【0038】
そして、上記のサイクル処理を所定回数繰り返した後、堆積物除去処理が終了する(ステップ306)。
【0039】
以上のように、本実施形態の堆積物除去方法では、まず、酸素プラズマ処理によってパターン及び堆積物の吸湿状態をエッチング処理後の放置時間の長短に係わらず一定にする。
【0040】
上記の酸素プラズマ処理を行うと、HF単ガスによる処理では反応促進剤として作用するHOが酸素プラズマ処理により除去されるため、処理結果が安定する反面、構造中のSiO膜との選択比を確保しながら堆積物の除去を行うことが困難になる。このため、本実施形態におけるサイクル処理では、HFガス+アルコールガス(本実施形態ではメタノールガス)の混合ガスを用いる。さらにこの場合、反応によって生じたHO量がチャンバ内で過剰になり、パターン構造物であるゲート酸化膜等がダメージを受けたり、逆反応によって再び堆積が生じる場合がある。このため、サイクル処理により、堆積物の除去が行われる第1の期間と、堆積物の除去が行われず反応生成物が排気される第2の期間とを繰り返して行うことによってチャンバ内のHO量が過剰になることを防止する。
【0041】
これによって、パターンの側壁に堆積した堆積物であるシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)を除去することができ、かつ、HOによる触媒作用によって反応が過剰に進行し、パターン構造物であるゲート酸化膜等のSiO層がダメージを受けることを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、ガス処理装置200のガス拡散板206は、図3(a)に示すように、直径300mmの半導体ウエハWに対して、直径250mmの円形の第1領域206a内に均一なピッチで形成された透孔205を有し、第1領域206aより外側の環状の第2領域206bには透孔205が形成されていない構成となっており、半導体ウエハWと対向する領域のうち、第1領域206aから供給される処理ガスの単位面積当たりの流量が、第2領域206bから供給される処理ガスの単位面積当たりの流量より多くなる構成となっている。これによって、上記堆積物除去処理を半導体ウエハWの面内においてより均一に行うことができる。
【0043】
すなわち、例えば、図3(b)に示したように、実質的に第1領域と第2領域の区別が無く、全面に均一なピッチで形成された透孔215を有するガス拡散板216を用いた場合、半導体ウエハWの中央部で堆積物除去処理の速度が速くなり、周縁部で遅くなるように半導体ウエハWの面内における処理速度が不均一になるという現象が起きる。なお、このような現象は、半導体ウエハWにパターンが形成されている場合に生じ、半導体ウエハWにパターンが形成されていない所謂ベタ膜でエッチングを行った場合は、半導体ウエハWの中央部より周縁部におけるエッチング速度が高くなるという現象が生じる。
【0044】
上記のように、半導体ウエハWにパターンが形成されている場合と、形成されていない場合とで逆の現象が起きるのは、特に半導体ウエハWの中央部においては半導体ウエハW上空のガス流速が端部に比べて遅く、反応によって生じたHOのパターン奥部からの排気が効率的に行われなくなりパターン内滞留が多くなる結果、HOによる触媒作用によって反応が進行するためと考えられる。そこで、半導体ウエハWの中央部に対する処理ガスの単位面積当たりの供給量を、周縁部に対する処理ガスの単位面積当たりの供給量より多くし、半導体ウエハWの中央部上空における速度を速くすることによって中央部のパターン内からのHOの排出を促進することによって、処理の面内均一性を向上させることができる。
【0045】
なお、図3(a)に示した例では、第1領域206aの外側の第2領域206bに透孔205を配設しない構成となっているが、第2領域206bに第1領域206aより少ない配置密度(単位面積当たりの透孔の個数)で透孔205を配設した構成としてもよい。また、透孔205の配置密度は変えずに、第1領域206aと第2領域206bにおける処理ガスの供給量を独立に変えることができる構成として、第1領域206aからの処理ガスの単位面積当たりの供給量を、第2領域206bからの処理ガスの単位面積当たりの供給量より多くするようにしてもよい。さらに、第1領域206aの直径d1は、半導体ウエハWの直径より小さくする必要があり、半導体ウエハWの直径の90%以下70%以上とすることが好ましく、85%以下75%以上とすることがさらに好ましい。また、第2領域206bに透孔205を配設した構成とした場合、第2領域206bの外径は半導体ウエハWの直径より大きくしてもよい。
【0046】
実施例1として、エッチングによりパターンを形成した後1カ月放置した半導体ウエハに、堆積物除去プロセスを実施した。まず、酸素プラズマ処理を以下の処理条件によって行った。
圧力:133Pa(1Torr)
高周波電力:1000W
エッチングガス:O=1980sccm
ステージ温度: 250℃
時間:120秒
【0047】
次に、サイクル処理を以下の処理条件によって行った。
圧力:(931Pa(7Torr)10秒⇔173Pa(1.3Torr)10秒)×6サイクル
HF/CHOH=2800/44sccm
ステージ温度:10℃
【0048】
なお、上記のサイクル処理における圧力の設定は、前述したとおり、第1の期間では、APCの圧力設定を931Pa(7Torr)とした時間を10秒維持し、第2の期間では、処理ガスを流した状態でAPCを全開とした状態を10秒維持したものであり、実際の処理チャンバー201内の圧力の変動は、図5のグラフに示したようになる。すなわち、APCが全開の状態からAPCの圧力設定を931Pa(7Torr)としても、実際の圧力が931Pa(7Torr)に到達するまで4〜5秒程度かかる。また、APCの圧力設定を931Pa(7Torr)から全開にすると比較的短時間で圧力が173Pa(1.3Torr)程度で一定となる。
【0049】
ここで、上記のステージ温度及び処理ガスの流量の条件では、堆積物除去(デポ剥離)が可能となる圧力は、665Pa(5Torr)程度となる。したがって、この場合のサイクル処理における1/2サイクルの時間は、5〜20秒程度とすることが好ましい。なお、第1の期間と第2の期間は、必ずしも同じにする必要はなく、異なるようにしてもよい。
【0050】
以上の堆積物除去工程を実施した後の半導体ウエハをSEMで拡大して観察したところ、パターンの側壁部に堆積した堆積物が除去され、かつ、パターン構造物であるゲート酸化膜等のSiO層がダメージを受けていなかった。この実施例1の電子顕微鏡写真を図6(a)〜図6(c)に示す。
【0051】
一方、比較例1として、実施例1における酸素プラズマ処理後、HF単ガスで実施例1と同様なガス処理を行ったところ、堆積物はほとんど除去できなかった。この比較例1の電子顕微鏡写真を図7(a)〜図7(c)に示す。図6の実施例の電子顕微鏡写真と図7の比較例の電子顕微鏡写真とを比較すると、図6の実施例1ではパターン側壁の堆積物が除去されてゲート酸化膜の部分が白い線としてはっきり見えるが、図7の比較例1ではパターン側壁の堆積物が除去されていないのでゲート酸化膜の部分が白い線として見えていない。
【0052】
図8(a)〜(c)は、パターンの電子顕微鏡写真(図中左側)とEELS(Electron Energy-Loss Spectroscopy)による酸素マップ(図中右側)を示したもので、図8(a)は、エッチング終了後(堆積物除去前)のパターン、図8(b)は、上記実施例1における堆積物除去後のパターンである。これらの電子顕微鏡写真に示されるように、実施例1では、パターンの側壁部の堆積物が略完全に残すことなく除去されており、かつ、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生することが抑制されている。なお、図8(c)は、HF単ガスによる処理で条件を変えて堆積物を除去した場合を示している。この場合、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生していることが分かる。
【0053】
次に、堆積物を除去可能となる処理の条件を調べた結果について説明する。まず、処理ガスにおけるメタノールガス添加量と堆積物の剥離力との関係を調べたところ、メタノールガスを添加しなかった場合に堆積物を除去できなかったサンプルに対して、メタノールガスを100sccm添加した場合は、堆積物を除去することができた。また、メタノールガスの添加量を200sccmに増やすと、堆積物の剥離力が増大することを確認できた。但し、この実験は、サイクル処理を行うことなく、連続的にガス処理を行ったため、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生した。
【0054】
また、処理ガスの圧力と堆積物の剥離力との関係を調べるため、圧力を665Pa(5Torr)、1330Pa(10Torr)、1995Pa(15Torr)として、サンプルの堆積物の除去を行った。この結果、高圧化することによって、堆積物の剥離力が増大することを確認できた。但し、この実験は、サイクル処理を行うことなく、連続的にガス処理を行ったため、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生した。
【0055】
さらに、温度と堆積物の剥離力との関係を調べるため、温度を10℃、30℃、50℃として、サンプルの堆積物の除去を行った。この結果、低温化することによって、堆積物の剥離力が増大することを確認できた。但し、この実験は、サイクル処理を行うことなく、連続的にガス処理を行ったため、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生した。
【0056】
上記の結果から、縦軸を圧力、横軸をメタノールガス流量とした図9のグラフに示すように、各処理温度毎に、堆積物の除去が進行する領域と堆積物の除去が進行しない領域とを仕切る境界線を求めることができる。そして、この境界線を跨ぐように処理条件(全圧又はメタノールガス流量又はこれら双方)を変更すれば、サイクル処理における堆積物の除去が行われる第1の期間と、堆積物の除去が行われない第2の期間とを設定することができる。
【0057】
次に、堆積物除去処理における処理の面内均一性を調べた結果について説明する。実施例2としてラインアンドスペースのパターンが形成され各ライン間のスペースに堆積物が堆積した半導体ウエハWについて、上述した堆積物除去処理を、図3(a)に示したガス拡散板206を有するガス処理装置200を用いて行い、ライン間のスペースの深さを測定した。深さを測定は、半導体ウエハWの中央部、中間部、エッヂから30mmの位置、エッヂから4mmの位置で行った。この結果、
中央部=107.2nm
中間部=75.4nm
エッヂから30mmの位置=74.1nm
エッヂから4mmの位置=75.4nm
となり、中央部とエッヂから4mmの位置との深さの差は、31.8nmとなった。
【0058】
一方、比較例2として、ラインアンドスペースのパターンが形成され各ライン間のスペースに堆積物が堆積した半導体ウエハWについて、上述した堆積物除去処理を、図3(b)に示したガス拡散板216を有するガス処理装置200を用いて行い、ライン間のスペースの深さを測定した。なお、ガス拡散板216を用いた点以外は、実施例2と同一の条件で堆積物除去処理を行った。深さを測定は、半導体ウエハWの中央部、中間部、エッヂから30mmの位置、エッヂから4mmの位置で行った。この結果、
中央部=111.1nm
中間部=71.4nm
エッヂから30mmの位置=67.5nm
エッヂから4mmの位置=66.2nm
となり、中央部とエッヂから4mmの位置との深さの差は、44.9nmとなった。
【0059】
上記の結果から明らかなように、実施例2では、比較例2に比べて、堆積物除去処理の面内均一性が上昇していることが分かった。
【0060】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。例えば、上記実施形態及び実施例では、アルコールガスとしてメタノールガスを使用した場合について説明したが、他のアルコールガス、例えばエタノールガスやイソプロピルアルコールガス等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
W……半導体ウエハ、100……プラズマ処理装置、101……処理チャンバー、102……ステージ、103……窓、104……RFコイル、105……ガス導入部、106……ガス拡散板、107……排気管、200……ガス処理装置、201……処理チャンバー、202……ステージ、203……ガス導入部、204……開口部、205……透孔、206……ガス拡散板、207……排気管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9