(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明のエッチング方法に係るエッチング工程の好ましい実施形態について、
図1、
図2に基づき説明する。
【0010】
[エッチング工程]
図1はエッチング前の半導体基板を示した図である。本実施形態の製造例においては、シリコンウエハ(図示せず)の上に、特定の第3層として、SiOC層3、SiON層2を配し、その上側にTiN層1を形成したものを用いている。このとき、上記複合層にはすでにビア5が形成されており、当該ビア5の底部には金属を含む第2層(金属層)4が形成されている。この状態の基板10に本実施形態におけるエッチング液(図示せず)を適用して、TiN層を除去する。結果として、
図2に示したように、TiN膜が除去された状態の基板20を得ることができる。言うまでもないが、本発明ないしその好ましい実施形態においては、図示したようなエッチングが理想的ではあるが、TiN層の残り、あるいは第2層の多少の腐食は、製造される半導体素子の要求品質等に応じて適宜許容されるものであり、本発明がこの説明により限定して解釈されるものではない。
なお、シリコン基板ないし半導体基板、あるいは単に基板というときには、シリコンウエハのみではなくそこに回路構造が施された基板構造体を含む意味で用いる。基板の部材とは、上記で定義されるシリコン基板を構成する部材を指し1つの材料からなっていても複数の材料からなっていてもよい。加工済みの半導体基板を半導体基板製品として区別して呼ぶことがある。これに必要によりさらに加工を加えダイシングして取り出したチップ及びその加工製品を半導体素子ないし半導体装置という。基板の向きについては、特に断らない限り、
図1で言うと、シリコンウエハと反対側(TiN側)を「上」もしくは「天」といい、シリコンウエハ側(SiOC側)を「下」もしくは「底」という。
【0011】
[エッチング液]
次に、本発明のエッチング液の好ましい実施形態について説明する。本実施形態のエッチング液は酸化剤と有機オニウム化合物とを含有する。以下、任意のものを含め、各成分について説明する。
【0012】
(酸化剤)
酸化剤としては、硝酸、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸、過酢酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、又はその組合せなどが挙げられ、なかでも硝酸及び過酸化水素が特に好ましい。
【0013】
酸化剤は、本実施形態のエッチング液の全質量に対して、1質量%以上含有させることが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上含有させることが特に好ましい。上限としては40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。上記上限値以下とすることで、第2層の過剰なエッチングをより抑制できるため好ましい。上記下限値以上とすることが、十分な速度で第1層をエッチングする観点で好ましい。また、この量を好適な範囲に調整することで、第1層のエッチング面の均一化を一層効果的に図ることができ好ましい。
【0014】
(有機オニウム化合物)
有機オニウム化合物とは、分子内に炭素原子を有しており、第四級オニウム構造を含むものと定義する。具体的には、第四級アンモニウムまたはその塩であることが好ましく、第四級アンモニウム水酸化物がより好ましい。第四級アンモニウム水酸化物としては、テトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAH)、ベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物、エチルトリメチルアンモニウム水酸化物、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム水酸化物、ベンジルトリエチルアンモニウム水酸化物、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)、テトラヘキシルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、などが挙げられる。
なかでも、メチル基及び/またはエチル基を3個以上有するテトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましい。最も好ましくは、テトラメチルアンモニウム水酸化物、またはエチルトリメチルアンモニウム水酸化物である。
【0015】
有機オニウム化合物は、本実施形態のエッチング液の全質量に対して、0.01質量%以上で含有させることが好ましく、0.05質量%以上含有させることがより好ましく、0.1質量%以上含有させることが特に好ましい。上限としては、6質量%以下で含有させることが好ましく、4質量%以下含有させることがより好ましく、2.5質量%以下含有させることが特に好ましい。上記上限値以下とすることで、W等が必要以上にエッチングされることがないできるため好ましい。上記下限値以上とすることで、TiNのエッチングレートを実用性のあるものにすることができるため好ましい。
【0016】
酸化剤との関係でいうと、酸化剤100質量部に対して、有機オニウム化合物を0.01質量部以上で用いることが好ましく、0.02質量部以上で用いることがより好ましい。上限としては30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。この両者の量を適正な関係で使用することにより、良好なエッチング性を実現し、かつ高い面内均一性を併せて達成することができる。
【0017】
(表面均一化剤)
本発明のエッチング液においては、第2層におけるエッチングによる均一性を改善する表面均一化剤を含有させることが好ましい。この添加により、第1層のエッチング後の表面の均一性を一層高めることができ、さらに第2層の表面均一性をも実現することができる。このように併設された金属層(第2層)の表面均一性が高まることで、上述した第1層(TiN層)の表面均一性が実現されたことと相俟って、単独で均一性を有するものに比し、製造工程上の改善および製造品質の向上に大いに貢献することができる。
【0018】
・含窒素有機化合物/芳香族化合物
表面均一化剤としては、含窒素有機化合物であることが好ましく、5員または6員の含窒素ヘテロ環化合物(ヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄等)が好ましい。あるいはその好ましいものとして芳香族化合物が挙げられる。ヘテロ環化合物および芳香族化合物は単環でも多環のものであってもよい。ヘテロ環化合物としては、なかでも5員の含窒素複素芳香族化合物がより好ましい。このときの窒素の含有数は1〜4であることが好ましい。芳香族化合物としてはベンゼン環を有する化合物が好ましい。
【0019】
表面均一化剤は下記式(I)〜(IX)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0021】
・R
1〜R
30
式中、R
1〜R
30はそれぞれ独立に水素原子または置換基を示す。置換基としては、後記アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜6)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜6)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは1〜12)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜6)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜6)、アシル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜6)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜6)、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシ基、チオール基(−SH)、ボロン酸基(−B(OH)
2)などが挙げられる。なお、上記アリール基としては、フェニル基、またはナフチル基が好ましい。上記ヘテロ環基としては、含窒素複素芳香族基が挙げられ、なかでも5員の含窒素複素芳香族基が好ましく、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、またはテトラゾール基がより好ましい。これらの置換基は本発明の効果を奏する範囲でさらに置換基を有していてもよい。なお、上記の置換基のうち、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基は、その塩を形成していてもよい。塩をなす対イオンとしては、アンモニウムイオン(NH
4+)やテトラメチルアンモニウムイオン((CH
3)
4N
+)などの第四級アンモニウムなどが挙げられる。
【0022】
上記の置換基は任意の連結基を介して置換していてもよい。その連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜6)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜6)、エーテル基(−O−)、イミノ基(好ましくは炭素数0〜4)、チオエーテル基(−S−)、カルボニル基、またはこれらの組合せが挙げられる。この連結基を以降連結基Lと呼ぶ。なお、この連結基は、本発明の効果を奏する範囲でさらに置換基を有していてもよい。
【0023】
R
1〜R
30はなかでも、炭素数1〜6のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基(炭素数0〜4が好ましい)、ヒドロキシ基、またはボロン酸基が好ましい。これらの置換基は上記のように連結基Lを介して置換していてもよい。
【0024】
また、R
1〜R
30はその隣接するものどうしが連結もしくは縮環して環構造を形成していてもよい。形成される環構造としては、ピロール環構造、イミダゾール環構造、ピラゾール環構造、またはトリアゾール環構造等が挙げられる。これらの環構造部は、さらに本発明の効果を奏する範囲でさらに置換基を有していてもよい。なお、ここで形成する環構造がベンゼン環であるときは、式(VII)の方に区分して整理する。
【0025】
・A
Aはヘテロ原子を表し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはリン原子を表す。ただし、Aが二価(酸素原子又は硫黄原子)であるとき、R
1、R
3、R
6、R
11、R
24、R
28はないものとする。
【0026】
前記式(VII)で表される化合物は、下記式(VII−1)〜(VII−4)のいずれかで表されるものが好ましい。
【化3】
【0027】
R
aは酸性基を表し、好ましくはカルボキシル基、リン酸基、またはボロン酸基である。上記酸性基は前記連結基Lを介して置換していてもよい。
R
bは炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基(好ましくは炭素数0〜4)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6)、またはアシル基(好ましくは炭素数1〜6)である。上記の置換基R
bは前記連結基Lを介して置換していてもよい。R
bが複数あるとき、これらは連結ないし縮環して環構造を形成していてもよい。
n1は1〜5の整数である。n2は0〜5の整数である。n3は0〜4の整数である。n1〜n3がそれぞれ2以上であるとき、そこで規定される複数の置換基はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0028】
式中、Aは前記で定義したAと同義である。R
c、R
d、R
eはR
1〜R
30と同義の基である。ただし、Aが二価のとき、R
c、R
eはないものとする。
【0029】
以下に、上記式(I)〜(IX)のいずれかで表される化合物の例を挙げるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
なお、下記の例示化合物においては互変異性体の一例を示したものを含み、他の互変異性体も本発明の好ましい例に含まれるものである。これは、前記の式(I)〜(IX)、(VII−1)〜(VII−4)についても同様である。
【0031】
表面均一化剤をなす含窒素有機化合物ないし芳香族化合物の含有量は特に限定されないが、エッチング液中で、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。上記下限値以上とすることで、金属層に対する好適な均一化効果が得られるため好ましい。一方、上記上限値以下とすることが、良好なエッチング性能を妨げない観点から好ましい。
【0032】
・含酸素有機化合物
本発明のエッチング液においては、前記表面均一化剤として、含酸素有機化合物を含有させることも好ましい。含酸素有機化合物は水溶性有機溶媒となる化合物であることが好ましい。水溶性有機溶媒は、水と任意の割合で混合できる有機溶媒が好ましい。
【0033】
含酸素有機化合物は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール化合物、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)を含むエーテル化合物が挙げられる。
これらの中で好ましくは炭素数2〜15のアルコール化合物、炭素数2〜15の水酸基含有エーテル化合物であり、更に好ましくは、炭素数2〜10のアルコール化合物、炭素数2〜10の水酸基含有エーテル化合物である。とくに好ましくは、炭素数3〜8のアルキレングリコールアルキルエーテルである。含酸素有機化合物は単独でも2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書においては、水酸基(−OH)とエーテル基(−O−)とを分子内にもつ化合物は、原則的にはエーテル化合物に含まれるものとし(アルコール化合物とは称しない)、水酸基とエーテル基との両者を有するものを特に区別して指すときには水酸基含有エーテル化合物と称することがある。
【0034】
前記含酸素有機化合物は下記式(O−1)で表される化合物であることが好ましい。
R
11−(−O−R
13−)
n−O−R
12 ・・・ (O−1)
【0035】
・R
11,R
12
R
11及びR
12は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基である。なかでも、それぞれ独立に、炭素数1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
【0036】
・R
13
R
13は直鎖状又は分岐状の炭素数1以上4以下のアルキレン鎖である。複数のR
13が存在するときそのそれぞれは異なっていてもよい。
【0037】
・n
nは1以上6以下の整数である。
【0038】
含酸素有機化合物の添加量はエッチング液全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限としては、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。この量が上記下限値以上であることで、上記のエッチングの均一性の向上を効果的に実現することができる。
【0039】
なお、本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、当該化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0040】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5または6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、スルホンアミド基((好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルもしくはアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ベンゼンスルホニル等)、ヒドロキシル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシル基である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記の置換基Tがさらに置換していてもよい。
【0041】
化合物ないし置換基・連結基等がアルキル基・アルキレン基、アルケニル基・アルケニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、同様に置換されていても無置換でもよい。
【0042】
(水媒体)
本発明のエッチング液には、その媒体として水(水媒体)が適用されることが好ましく、各含有成分が均一に溶解した水溶液であることが好ましい。水の含有量は、エッチング液の全質量に対して50〜99.5質量%であることが好ましく、55〜95質量%であることが好ましい。このように、水を主成分(50質量%以上)とする組成物を特に水系組成物と呼ぶことがあり、有機溶剤の比率の高い組成物と比較して、安価であり、環境に適合する点で好ましい。この観点で本発明のエッチング液は水素組成物であることが好ましい。水(水媒体)としては、本発明の効果を損ねない範囲で溶解成分を含む水性媒体であってもよく、あるいは不可避的な微量混合成分を含んでいてもよい。なかでも、蒸留水やイオン交換水、あるいは超純水といった浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に使用される超純水を用いることが特に好ましい。
【0043】
(pH)
本発明においては、エッチング液のpHを6.5以上に調整することが好ましく、7以上にすることがより好ましい。上限側は、pHを11以下とすることが好ましく、10.5以下とすることがより好ましく、9以下とすることがさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、TiNのエッチング速度を実用的レベルするだけでなく、面内均一性をも一層良化することができる観点で好ましい。一方、上記上限値以下とすることでSiOやSiOCといった他の基板に対する防食性のために好ましい。なお、本発明においてpHは特に断らない限り、実施例で測定した装置及び条件によるものとする。
(その他の成分)
・pH調整剤
本実施形態においては、エッチング液のpHを上記の範囲にするが、この調整にpH調整剤を用いることが好ましい。pH調整剤としては、pHを上げるために水酸化カリウム等の水酸化アルカリ又はアルカリ土類塩、2−アミノエタノール、グアニジン等のアミノ化合物を用いることが好ましい。pHを下げるためには、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、又はギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸等の有機酸が挙げられる。
【0044】
pH調整剤の使用量は特に限定されず、pHを上記の範囲に調整するために必要な量で用いればよい。
【0045】
(キット)
本発明におけるエッチング液は、その原料を複数に分割したキットとしてもよい。例えば、第1液として前記有機オニウム化合物を水媒体に含有する液組成物を準備し、第2液として前記酸化剤を水媒体に含有する液組成物を準備する態様が挙げられる。その使用例としては、両液を混合してエッチング液を調液し、その後適時に前記エッチング処理に適用する態様が好ましい。このようにすることで、酸化剤(例えば過酸化水素)の分解による液性能の劣化を招かずにすみ、所望のエッチング作用を効果的に発揮させることができる。ここで、混合後「適時」とは、混合ののち所望の作用を失うまでの時期を指し、具体的には60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましく、10分以内であることが特に好ましい。下限は特にないが、1秒以上であることが実際的である。
【0046】
第1液における有機オニウム化合物の濃度は特に限定されないが、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。上限値としては20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。この濃度を前記の範囲にすることで、第2液との混合に適した状態とすることができ、上記エッチング液における好適な濃度領域とすることができ好ましい。
【0047】
第2液における酸化剤の濃度は特に限定されないが、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限値としては、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが好ましい。この濃度を前記の範囲にすることで、第1液との混合に適した状態とすることができ、上記エッチング液における好適な濃度領域とすることができ好ましい。
【0048】
前記表面均一化剤を用いる場合は、第1液側に添加しておくことが好ましい。あるいは、水溶性有機溶媒を水媒体に含有させた液組成物を準備し、これを第3液として前記第1液および第2液と混合するようにしてもよい。
【0049】
第1液と第2液との混合の仕方は特に限定されないが、第1液と第2液とをそれぞれの流路に流通させ、両者をその合流点で合流させて混合することが好ましい。その後、さらに流路を流通させ、合流して得られたエッチング液を吐出口から吐出ないし噴射し、半導体基板と接触させることが好ましい。この実施形態でいうと、前記合流点での合流混合から半導体基板への接触までの過程が、前記「適時」に行われることが好ましい。これを、
図3を用いて説明すると、調製されたエッチング液が吐出口13から噴射され、反応容器11内の半導体基板Sの上面に適用される。同図に示した実施形態では、A及びBの2液が供給され、合流点14で合流し、その後流路fcを介して吐出口13に移行するようにされている。流路fdは薬液を再利用するための返戻経路を示している。半導体基板Sは回転テーブル12上にあり、回転駆動部Mによって回転テーブルとともに回転されることが好ましい。なお、このような基板回転式の装置を用いる実施態様は、キットにしないエッチング液を用いた処理においても同様に適用することができる。
【0050】
本発明のエッチング液は、SiOやSiOCの防食性能のため、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の錯化合物を用いることが好ましい。
【0051】
(容器)
本発明のエッチング液は、(キットであるか否かに関わらず)対腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬、そして使用することができる。また、半導体用途向けに、容器のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。使用可能な容器としては、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、コダマ樹脂工業(株)製の「ピュアボトル」などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
[エッチング条件]
本実施形態においてエッチングを行う条件は特に限定されないが、枚葉式(スプレー式)のエッチングであっても浸漬式(バッチ式)のエッチングであってもよい。スプレー式のエッチングにおいては、半導体基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間にエッチング液を噴射して前記半導体基板に前記エッチング液を接触させる。他方、バッチ式のエッチングにおいては、エッチング液からなる液浴に半導体基板を浸漬させ、前記液浴内で半導体基板とエッチング液とを接触させる。これらのエッチング方式は素子の構造や材料等により適宜使い分けられればよい。
【0053】
エッチングを行う環境温度は、後記実施例で示す温度測定方法において、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、55℃以上であることが特に好ましい。上限としては、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、TiN層に対する十分なエッチング速度を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、エッチング処理速度の経時安定性を維持することができ好ましい。エッチング液の供給速度は特に限定されないが、0.05〜1L/minとすることが好ましく、0.1〜0.5L/minとすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチングの面内の均一性を一層良好に確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、連続処理時に安定した選択性を確保でき好ましい。半導体基板を回転させるときには、その大きさ等にもよるが、上記と同様の観点から、50〜400rpmで回転させることが好ましい。
【0054】
バッチ式の場合も、上記と同様の理由により、液浴を前記の温度範囲とすることが好ましい。半導体基板の浸漬時間は特に限定されないが、0.5〜30分とすることが好ましい、1〜10分とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチングの面内の均一性を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、エッチング液を再度利用する場合の性能を維持することができ好ましい。
【0055】
本発明の好ましい実施形態に係る枚葉式のエッチングにおいては、半導体基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間にエッチング液を噴射して前記半導体基板に前記エッチング液を接触させることが好ましい。エッチング液の供給速度や基板の回転速度についてはすでに述べたことと同様である。
【0056】
本発明の好ましい実施形態に係る枚葉式の装置構成においては、
図4に示すように、吐出口(ノズル)を移動させながら、エッチング液を付与することが好ましい。具体的に、本実施形態においては、Ti含有層を有する半導体基板Sに対してエッチング液を適用する際に、基板がr方向に回転させられている。他方、該半導体基板の中心部から端部に延びる移動軌跡線tに沿って、吐出口が移動するようにされている。このように本実施形態においては、基板の回転方向と吐出口の移動方向とが異なる方向に設定されており、これにより両者が互いに相対運動するようにされている。その結果、半導体基板の全面にまんべんなくエッチング液を付与することができ、エッチングの均一性が好適に確保される構成とされている。
吐出口(ノズル)の移動速度は特に限定されないが、0.1cm/s以上であることが好ましく、1cm/s以上であることがより好ましい。一方、その上限としては、30cm/s以下であることが好ましく、15cm/s以下であることがより好ましい。移動軌跡線は直線でも曲線(例えば円弧状)でもよい。いずれの場合にも移動速度は実際の軌跡線の距離とその移動に費やされた時間から算出することができる。
【0057】
[残渣]
半導体素子の製造プロセスにおいては、レジストパターン等をマスクとして用いたプラズマエッチングにより半導体基板上の金属層等をエッチングする工程がありうる。具体的には、金属層、半導体層、絶縁層などをエッチングし、金属層や半導体層をパターニングしたり、絶縁層にビアホールや配線溝等の開口部を形成したりすることが行われる。上記プラズマエッチングにおいては、マスクとして用いたレジストや、エッチングされる金属層、半導体層、絶縁層に由来する残渣が半導体基板上に生じうる。本発明においては、このようにプラズマエッチングにより生じた残渣を「プラズマエッチング残渣」と称する。なお、この「プラズマエッチング残渣」には、前記の第3層(SiONやSiOC等)のエッチング残渣も含まれる。
【0058】
また、マスクとして用いたレジストパターンは、エッチング後に除去される。レジストパターンの除去には、上述のように、ストリッパー溶液を使用する湿式の方法、又は例えばプラズマ、オゾンなどを用いたアッシングによる乾式の方法が用いられる。上記アッシングにおいては、プラズマエッチングにより生じたプラズマエッチング残渣が変質した残渣や、除去されるレジストに由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにアッシングにより生じた残渣を「アッシング残渣」と称する。また、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣等の半導体基板上に生じた洗浄除去されるべきものの総称として、単に「残渣」ということがある。
【0059】
このようなエッチング後の残渣(Post Etch Residue)であるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣は、洗浄組成物を用いて洗浄除去されることが好ましい。本実施形態のエッチング液は、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去するための洗浄液としても適用することができる。なかでも、プラズマエッチングに引き続いて行われるプラズマアッシング後において、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去するために使用することが好ましい。
【0060】
[被加工物]
本実施形態のエッチング液を適用することによりエッチングされる材料はどのようなものでもよいが、TiNを含む第1層を有する基板を適用する。ここでTiNを含む層(TiN層)とは、酸素を含有してもよい意味であり、特に酸素を含有しない層と区別して言うときには、TiON層などということがある。本発明において、TiN層の酸素含有率は、10mol%以下であり、8.5mol%以下であることが好ましく、6.5mol%以下であることがさらに好ましい。下限側は0.1mol%以上であり、2.0mol%以上であることが好ましく、4.0mol%以上であることがさらに好ましい。
本発明においては、この基板におけるTiN層の表面酸素濃度を上記の範囲に設定することが重要である。上記下限値以上かつ上記上限値以下としたことにより、TiNのエッチング後の面内均一性を実現することができる。このような表面の均一化効果は枚葉式エッチング装置を用いることで顕著になる。また、複数の液を組み合わせたキットとして適用することでも顕著になる。なお、TiN層(第1層)の表面酸素濃度は、後記実施例に記載の方法で測定することができる。
このような基板によるTiN層における酸素濃度の調節は、例えば、TiN層を形成するときのCVD(Chemical Vapor Deposition)のプロセス室内の酸素濃度を調整することによって行うことができる。なお、第1層は、その主たる成分としてTiNを含むが本発明の効果を奏する範囲でそれ以外の成分を含んでいてもよい。このことは第2層(金属層)等の他の層についても同様である。
【0061】
前記第1層は高いエッチングレートでエッチングされることが好ましい。第1層の厚さは特に限定されないが、通常の素子の構成を考慮したとき、0.005〜0.3μm程度であることが実際的である。第1層のエッチングレート[R1]は、特に限定されないが、生産効率を考慮し、50Å/min以上であることが好ましく、100Å/min以上がより好ましく、200Å/min以上であることが特に好ましい。上限としては、500Å/min以下が好ましく、400Å/min以下がより好ましく、350Å/min以下が特に好ましい。
【0062】
なお、特開2010−10273号等に開示されている発明は、TiN膜を利用するものであるが、これは絶縁膜用途に関するものである。絶縁膜としてのTiN膜は絶縁性を高めるために、表面酸素濃度を高くし、その濃度は通常10mol%を超える。本発明の好ましい実施形態に係るTiN膜の利用においては、メタルハードマスク(MHM)が対象となるので、絶縁性は必ずしも要求されない。そのため、表面酸素濃度はエッチング性等に応じて調節することができる。
【0063】
本発明の方法は、Cu、W、Co、Ni、Ag、Ta、Hf、Pt、Au等の金属を含む第2層を有する半導体基板に適用されることが好ましい。なかでも、第2層の材料としてCu、Wを適用することが好ましい。
ここで金属層のもつ技術的意義をこの材料としてタングステン(W)を利用する例に基づき説明する。近年、半導体デバイス(半導体装置)の高速化、配線パターンの微細化、高集積化の要求に対応して、配線間の容量の低減、配線の導電性向上およびエレクトロマイグレーション耐性の向上が要求されている。これらの要求に対応するための技術として、配線材料として導電性が高くかつエレクトロマイグレーション耐性に優れている銅を用い、層間の絶縁層として低誘電率層(Low−k層)を用いる多層配線技術が注目されている。この銅配線は一般に、該銅配線での銅の拡散を防ぐための銅拡散防止膜として機能する、銅シード層(例えば、タンタル(Ta)及び窒化タンタル(TaN)の二重層)の上に、デュアル・ダマシン・プロセスによって設けられる。
【0064】
一方、半導体素子のコンタクトは通常、銅配線及びビアホールの形成の際に用いられるデュアル・ダマシン・プロセスの代わりに、シングル・ダマシン・プロセスによるタングステンプラグを介して設けられる。このような多層配線技術では、低誘電率層に配線溝やスルーホールなどの凹部を形成してその中に銅を埋め込むダマシン法が採用される。この場合、低誘電率層に凹部をエッチングにより精度良く形成するためには、低誘電率層をエッチングする際のマスクとして、低誘電率層との選択比が十分に高い材料からなるマスクを使用する必要がある。
【0065】
上記低誘電率層としては一般に有機系の材料が用いられており、このため、同じ有機系の材料からなるフォトレジスト層をマスクとして低誘電率層をエッチングする場合、選択比が不十分になることが考えられる。このような課題を解決するため、TiN膜のような無機系の材料からなるハードマスク層を、エッチングの際のマスクとして使用することが提案されている。そして、このハードマスク層は低誘電率層をエッチングの後のプロセスにて除去が必要となる。特にウェットプロセスのエッチングにおいて、タングステンプラグ等の金属層や、必要により他の配線・低誘電率層材料を腐食せずに溶解する、あるいはその表面を均一に保つことが好ましい。
【0066】
上記のような態様でハードマスクを構成する第1層(TiN)層が除去されるため、その場合、金属層(第2層)は通常ビアホールもしくはトレンチの底部に位置する(
図1、2参照)。
第2層(金属層)のエッチングレート[R2]は、特に限定されないが、過度に除去されないことが好ましく、0.001〜100Å/minであることが好ましく、0.01〜50Å/minであることがより好ましい。
【0067】
金属層の露出幅(図中のd)は特に限定されないが、本発明の利点がより顕著になる観点から、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。上限値は同様に効果の顕著性の観点から、1000nm以下であることが実際的であり、100nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましい。
【0068】
さらに、本発明の方法は、SiO、SiN、SiOC、SiON等の金属化合物を含む第3層を有する半導体基板に適用されることも好ましい。なお、本明細書において、金属化合物の組成をその元素の組合せにより表記した場合には、任意の組成のものを広く包含する意味である。例えば、SiOとは、シリコンの熱酸化膜、SiO
2を含む意味であり、SiOxを包含するものである。この第3層は低いエッチングレートに抑えられることが好ましい。第3層の厚さは特に限定されないが、通常の素子の構成を考慮したとき、0.005〜0.5μm程度であることが実際的である。第3層のエッチングレート[R3]も同様に低いことが好ましく、その好ましい範囲は前記[R2]と同様である。
【0069】
[半導体基板製品の製造]
本実施形態においては、シリコンウエハ上に、前記第1層と第2層とを形成した半導体基板とする工程と、前記半導体基板にエッチング液を適用し、前記第1層を選択的に溶解する工程とを介して、所望の構造を有する半導体基板製品を製造することが好ましい。このとき、エッチングには前記特定のエッチングを液を用いる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1、比較例1>
以下の表1に示す成分を同表に示した組成(質量%)で含有させてエッチング液を調液した。なお、残部は水(超純水)である。
【0072】
(TiN基板の作成方法)
市販のシリコン基板上に、CVDにより、表面酸素濃度6.1mol%のTiN膜を作成した。また、同様にCVDにより、必要により表中の金属層(W層)をTiN層の隣に形成し、試験用基板とした。CVDの際には、その気相中の微量の酸素濃度をコントロールすることで、表面酸素濃度の異なる基板、基板の直径が異なるものを作成した。酸素濃度12.2%のものは市販のTiN基板(Silicon Valley microelectronics 社製)をそのまま使用した。
【0073】
(表面酸素濃度)
TiN層の表面酸素濃度はエッチングESCA(アルバックファイ製 Quantera)にて0〜30nmまでの深さ方向のTi,O,Nの濃度プロファイルを測定し、5〜10nmでの含有率をそれぞれ計算し、その平均酸素含有率を表面酸素濃度とした。
【0074】
(エッチング試験)
上記の試験用基板に対して、枚葉式装置(SPS−Europe B.V.社製、POLOS(商品名)))にて下記の条件でエッチングを行い、評価試験を実施した。
・処理温度:57℃
・吐出量:1L/min.
・ウェハ回転数500rpm
【0075】
(処理温度の測定方法)
株式会社堀場製作所製の放射温度計IT−550F(商品名)を前記枚葉式装置内のウェハ上30cmの高さに固定した。ウェハ中心から2cm外側のウェハ表面上に温度計を向け、薬液を流しながら温度を計測した。温度は、放射温度計からデジタル出力し、パソコンで連続的に記録した。このうち温度が安定した10秒間の温度を平均した値をウェハ上の温度とした。
【0076】
(面内均一性評価)
円形の基板の中心のエッチング深さを、時間を変えて条件だしを行い、エッチング深さが300Åになる時間を確認した。次にその時間で基板全体を再度エッチングした時に基板の周辺から中心方向に30mmの位置でのエッチング深さを測定し、その深さが300Åに近いほど面内均一性が高いと評価した。具体的な区分は下記のとおりである。下記では、上記2点(中心、30mm位置)の差を示しており、5箇所の平均値で評価している。
【0077】
AAA ±5Å以下
AA ±5超12Å以下
A ±12超15Å以下
B ±15超20Å以下
C ±20超30Å以下
D ±30超50Å以下
E ±50Å超
【0078】
(pHの測定)
pHは室温(25℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値である。
【0079】
(エッチング速度[ER])
TiN層のエッチング速度(ER)については、下記に区分して評価した。測定は、エリプソメトリー、分光エリプソメーターJ.A.woollam 社製、VASE(商品名)を使用した膜厚測定方法により行い、その5点の平均から評価した。
A 300Å/min以上
B 200Å/min以上300Å/min未満
C 100Å/min以上200Å/min未満
D 50Å/min以上100Å/min未満 実用上難あり
E 50Å/min未満 実用にならない
【0080】
【表1】
【0081】
(表の注釈)
Cで始まる試験は比較例
使用した基板は表1においてすべて6インチのウェハである。
TMAH:テトラメチルアンモニウム水酸化物
TBAH:テトラブチルアンモニウム水酸化物
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
なお、エッチング液のpHは試験101において7.2、102において8.3、103において7.1であった。
【0082】
上記の結果から、本発明によれば、TiNの好適な除去を行うとともに、エッチング後の良好な面内均一性を保つことができることが分かる。
【0083】
さらに、試験No.105の実験において、基板の直径を8インチ、12インチに変更して実験を行ったところ基板の直径が大きいほどWの面内均一性がさらに良化することがわかった。
【0084】
(実施例2・比較例2)
下表のように基板の表面酸素濃度等を変えた以外、実施例1のNo.109と同様にしてエッチング試験を行った。その結果を下表に示している。
【0085】
【表2】
【0086】
上記の結果によれば基板(第1層)の表面酸素濃度を適切な範囲とした本発明によれば、第1層(TiN層)の良好なエッチング均一性を実現することができることが分かる。
【0087】
(実施例3)
下表3のようにエッチング条件を変更した以外、実施例1のNo.109と同様にしてエッチング試験を行った。その結果を下表に示している。
【0088】
【表3】
【0089】
(表の注記)
・SWT:ノズルスイング式の枚葉式装置
SPS−Europe B.V.社製 POLOS (製品名)
・BT:バッチ式装置
瀬戸技研工業社製 手動式ウエットベンチ(製品名)
・スイング速度・・・薬液を付与する吐出口のスイング速度
・液供給形態
1:1液として薬液を調製し適用したもの(調液直後に適用)
2:2液の薬液キットを調製し混合したもの(
図3の装置を用いた)
なお、2液キットは、35wt%過酸化水素水を第2液とし、第1液はその他の成分を水溶液に加え、2液との混合後に所定の薬液組成となるように成分調整したものを使用した。
・混合経過時間:2液の薬液キットを混合した時点から基板に付与
するまでの経過時間
【0090】
上記の結果より、枚葉式使用による製造法、2液キットで混合する製造方法も金属層の面内均一性を良化させる好ましい態様であることが分かる。
【0091】
1 TiN層(第1層)
2 SiON層(第3層(1))
3 SiOC層(第3層(2))
4 Cu/W層(第2層)
5 ビア
10、20 半導体基板
11 反応容器
12 回転テーブル
13 吐出口
14 合流点
S 基板