(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017364
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20161013BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20161013BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-75229(P2013-75229)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199778(P2014-199778A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 隆宏
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−342548(JP,A)
【文献】
特開2004−192846(JP,A)
【文献】
特表2010−505732(JP,A)
【文献】
特開2006−054159(JP,A)
【文献】
特開2004−355824(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/078784(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/108389(WO,A1)
【文献】
特開2006−134816(JP,A)
【文献】
特開2003−203632(JP,A)
【文献】
特開2009−283354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:LixNi1-yMyO2+α
(前記式において、MはMn、Co、Cu、Zn、Mg及びZrから選択される1種以上であり、0.9≦x≦1.2であり、0<y≦0.7であり、−0.1≦α≦0.1である。)
で表され、
一次粒子が凝集して形成された二次粒子、又は、一次粒子及び二次粒子の混合物で構成され、
平均粒子径D50が7〜12μmであり、
ペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm2の圧縮応力を30秒間加えたとき、一山のピークを持つ粒度分布となり、且つ、圧縮応力印加前後でメインピークが小粒径側にシフトするリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項2】
前記粒度分布における一山のピークの平均粒子径D50が1〜7μmである請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項3】
前記粒度分布における一山のピークの頻度が3〜12%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項4】
前記Mが、Mn及びCoから選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)等であり、特性改善(高容量化、サイクル特性、保存特性、内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用やパソコン用とは異なった特性が求められている。
【0003】
リチウムイオン電池の正極側の正極材活物質は、上記のようなコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムに代表される。しかしながら、それぞれには、長所短所があり、コバルト酸リチウムは、容量及び安全性などバランスのとれた材料であるが、コバルトはレアメタルという非常に希少な金属であるため、コストが高いという短所がある。ニッケル酸リチウムは非常に電池容量を持つが、安全性に乏しく、マンガン酸リチウムは、非常に熱的安定性があるが、容量が低いという短所がある。最近になり、高容量、安全性、コストの面からNiMnCo、NiCoAlに代表される三元系と三種類を用いた正極材活物質が使用されている。この三元系においては電池作製後の充放電により高Ni比率の材料に関しては充放電後の粒子内の割れが報告されており、これによって寿命劣化が起きるといわれている。
【0004】
このような充放電における粒子内の割れを抑制するための技術としては、例えば、特許文献1に、粉体状のリチウム遷移金属複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極活物質であって、その粒子径のモード値をRaμm、算術標準偏差をRbμmとした場合に、(i)Ra≧0.5であり、且つ、(ii)40MPaの圧力で1分間の圧縮処理を行なった後の粒度分布において、Raμmに最も近接した極大粒子径をRcμmとした場合に、x=(Rc−Ra)/Rbで定義されるxが、−2.7<x<−1.2であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質が開示されている。そして、このような構成によれば、高温環境下での使用時にもクラックが発生し難く、サイクル特性、特に高温サイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できる、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−342548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように正極活物質の粒子の割れを抑制する手段以外の、充放電サイクル等の電池特性の向上に寄与する技術の開発も望まれている。
本発明は、このような課題に鑑み、粒子の割れ方のバラツキが良好に抑制され、これにより電池特性が良好となるリチウムイオン電池用正極活物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
正極活物質の粒子の割れは、上記のように電池の充放電時に発生する。電極を構成する正極活物質の二次粒子間で割れかたにバラツキがあると、電極セルの電池性能にバラツキが生じることになる。そうすると、バラツキの中で最も劣化すると想定される条件で電極セルの設計を行わざるを得ず、良好な電池特性が望めない。そこで、正極材活物質が充放電サイクル時における二次粒子間の割れかたのバラツキを制御することが電池特性の向上にとって有効であることを見出した。
【0008】
上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、組成式:Li
xNi
1-yM
yO
2+α
(前記式において、Mは
Mn、Co、Cu、Zn、Mg及びZrから選択される1種以上であり、0.9≦x≦1.2であり、0<y≦0.7であり、−0.1≦α≦0.1である。)
で表され、
一次粒子が凝集して形成された二次粒子、又は、一次粒子及び二次粒子の混合物で構成され、平均粒子径D50が7〜12μmであり、ペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm
2の圧縮応力を30秒間加えたとき、一山のピークを持つ粒度分布とな
り、且つ、圧縮応力印加前後でメインピークが小粒径側にシフトするリチウムイオン電池用正極活物質である。
【0009】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は一実施形態において、前記粒度分布における一山のピークの平均粒子径D50が1〜7μmである。
【0010】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は別の一実施形態において、前記粒度分布における一山のピークの頻度が3〜12%である。
【0012】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は一実施形態において、前記Mが、Mn及びCoから選択される1種以上である。
【0013】
本発明は、別の一側面において、本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極である。
【0014】
本発明は、更に別の一側面において、本発明に係るリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粒子の割れ方のバラツキが良好に抑制され、これにより電池特性が良好となるリチウムイオン電池用正極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】圧縮応力印加後の粒度分布の形状のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(リチウムイオン電池用正極活物質の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の材料としては、一般的なリチウムイオン電池用正極用の正極活物質として有用な化合物を広く用いることができるが、特に、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)等のリチウム含有遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。このような材料を用いて作製される本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、
組成式:Li
xNi
1-yM
yO
2+α
(前記式において、Mは金属であり、0.9≦x≦1.2であり、0<y≦0.7であり、−0.1≦α≦0.1である。)
で表される。
また、Mは、好ましくはMn、Co、Cu、Al、Zn、Mg及びZrから選択される1種以上であり、より好ましくはMn及びCoから選択される1種以上である。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子、又は、一次粒子及び二次粒子の混合物で構成されている。これらの一次粒子が凝集して形成された二次粒子、又は、一次粒子及び二次粒子の混合物の平均粒子径D50は7〜12μmである。平均粒子径D50が7〜12μmであれば、ばらつきが抑制された粉体となり、電極組成のばらつきを抑制することができる。このため、リチウムイオン電池に用いたときにレート特性及びサイクル特性等の電池特性が良好となる。平均粒子径D50は、好ましくは7〜9μmである。
【0019】
本発明のペレット圧縮試験は以下の手順で行う。まず、SUS製の金型を準備する。当該金型は、内部に粉体試料を入れるための17.5mm径の内空部が形成されている。次に、正極活物質の粒子の粉体を1±0.05g採取して試料とし、これを金型の内空部に入れ、厚みが均等になるように広げる。次に、金型の内空部の試料を、押圧面を備えた別のSUS製の金型で上から押し込んで30秒間圧縮する。常圧に戻した後、金型から正極活物質を取り出す。続いて、試料の粒度分布の測定を行う。当該測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等で行うことができる。本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、このようなペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm
2の圧縮応力を30秒間加えたとき、一山のピークを持つ粒度分布となる。
【0020】
圧縮応力印加前は、粒度分布は一山のピークであるが、圧縮応力印加後には一山もしくは二山のピークになる。圧縮応力が印加されることによって、粒度分布の平均粒子径は小さくなるが、粒子の硬度にバラツキがあるときは二山のピークとなり、バラツキがないときは一山のピークとなる。圧縮応力印加後の粒度分布の形状には、
図1に示す(1)〜(4)の4パターンがある。(1)と(2)は一山のピークであり、圧縮応力印加後に均一に粒子が一次粒子に分離されている。一方、(3)と(4)は二山のピークであり、圧縮応力印加後に一次粒子に分離される部分と二次粒子のままで一次粒子に分離されない部分が混在している。なお、ピークの「山」は、ピークの曲線中の極大部分ともいうことができる。(2)は元の平均粒子径D50(例えば、7〜12μm)に対し、大部分が割れて、メインピークが小粒径側にシフトし、一部の粒子のみがショルダーの形状で残っている。一方、(3)は元の平均粒子径D50(例えば、7〜12μm)に対し、一部しか割れが進行せず、メインピークが小粒径側にシフトしていない。(2)と(3)はいずれも完全な二山ではないが、圧縮応力印加前後でメインピークが小粒径側にシフトするか否かで区別される。電池特性については、メインピークが小粒径側にシフトしている(2)のほうが、メインピークが小粒径側にシフトしていない(3)に対して優れている。
【0021】
圧縮応力印加後の一次粒子と二次粒子の混在は、粒子間のバラツキ、ひいては電極セルのバラツキの形で発現する。二次粒子間の硬度が均一な場合は、各二次粒子は製造プロセス中のプレス等により正極活物質の二次粒子が一次粒子に対応した形状に分離するが、二次粒子間の硬度にバラツキがある場合は、製造プロセスで破壊していなかった異常部分が充放電による格子の膨張・収縮により破壊され、電池の特性を劣化させる要因となる。ここで、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、ペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm
2の圧縮応力を30秒間加えたとき、一山のピークを持つ粒度分布となる。このため、電池の充放電後等で電極材として用いられている正極活物質の粒子の割れかたのバラツキが抑制されることとなり、電池特性が良好となる。
【0022】
上記粒度分布における一山のピークの平均粒子径D50は1〜7μmであるのが好ましい。このような構成によれば、正極活物質の粒子の割れかたのバラツキがより抑制されることとなり、電池特性がより良好となる。また、上記粒度分布における一山のピークの平均粒子径D50は2〜5μmであるのがより好ましい。
【0023】
上記粒度分布における一山のピークの頻度が3〜12%であるのが好ましい。このような構成によれば、正極活物質の粒子の割れかたのバラツキがより抑制されることとなり、電池特性がより良好となる。また、上記粒度分布における一山のピークの頻度が4〜9%であるのがより好ましい。
【0024】
(リチウムイオン電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を備えている。
【0025】
(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
まず、金属塩溶液を作製する。当該金属は、Ni及び金属Mである。金属Mとしては、好ましくはMn、Co、Cu、Al、Zn、Mg及びZrから選択される1種以上であり、より好ましくはMn及びCoから選択される1種以上である。また、金属塩は硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等であり、特に硝酸塩が好ましい。これは、焼成原料中に不純物として混入してもそのまま焼成できるため洗浄工程が省けることと、硝酸塩が酸化剤として機能し、焼成原料中の金属の酸化を促進する働きがあるためである。金属塩に含まれる各金属は、所望のモル比率となるように調整しておく。これにより、正極活物質中の各金属のモル比率が決定する。
【0026】
次に、炭酸リチウムを純水に懸濁させ、その後、上記金属の金属塩溶液を投入して金属炭酸塩スラリーを作製する。このとき、スラリー中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出する。なお、金属塩として硫酸塩や塩化物等熱処理時にそのリチウム化合物が反応しない場合は飽和炭酸リチウム溶液で洗浄した後、濾別する。硝酸塩や酢酸塩のように、そのリチウム化合物が熱処理中にリチウム原料として反応する場合は洗浄せず、そのまま濾別し、乾燥することにより焼成前駆体として用いることができる。
次に、濾別したリチウム含有炭酸塩を乾燥することにより、リチウム塩の複合体(リチウムイオン電池正極材用前駆体)の粉末を得る。
【0027】
次に、リチウムイオン電池正極材用前駆体の焼成を行う。本発明では、当該焼成の条件によって、圧縮応力印加後の粒度分布を制御する。ペレット圧縮試験で正極活物質の粒子の粒度分布の形状が一山と二山のピークとなる機構は、焼成原料を焼成用こう鉢に充填する際に、充填時に焼成原料が固まって不均一となる、もしくは焼成原料が充填前から凝集しており不均一となり、焼成の昇温時にこれらの不均一部分が局所的に異常焼成を起こすことがその発生要因の一つに挙げられる。焼成原料が凝集しないようにするためには、こう鉢(焼成容器)内への充填密度を均一にすることが重要である。焼成原料を焼成用こう鉢に充填する際に、こう鉢を一定時間振動することによって充填密度のバラツキが抑制される。また、焼成速度が部分的に速いと異常焼成が起こりやすい。昇温時以外の焼成部分で一部は正常な部分に戻るが、異常焼成のまま残る粒子がある。焼成後に行われる解砕工程の後もそのような粒子として残っているため、この異常焼成の粒子がペレット圧縮試験で破壊されずに残り、二山のピークとなる。
【0028】
焼成工程として、まず、所定の大きさの容量を有する焼成容器を準備し、この焼成容器にリチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末を充填する。焼成原料を焼成容器に充填する際には、原料が凝集しないようにする。次に、リチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末が充填された焼成容器を、焼成炉へ移設し、焼成を行う。焼成は、昇温工程においては100〜300℃/hの昇温レートで900〜1000℃まで加熱し、続いて当該温度で1〜4時間保持する。その後、100〜200℃/hの降温レートで降温させる。このような焼成条件により、昇温工程では均一に熱が入り、粒子同士の熱の伝導性が良好となる。また、降温工程では急冷且つ適切な降温雰囲気の制御によって、遷移金属層内の原子の再配列や遷移金属層の積層欠陥、酸素欠陥等の生成のような構造的変化が促進される。このように焼成条件を制御することで、異常焼成を抑制し、ペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm
2の圧縮応力を30秒間加えたとき、一山のピークを持つ粒度分布となるように制御することができる。
また、101〜202KPaでの加圧下で焼成を行うと、さらに組成中の酸素量が増加するため、好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法において、焼成温度を高くすることで結晶化を促進し、平均粒子径D50を7〜12μmに制御する。
【実施例】
【0029】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0030】
(実施例)
まず、所定の投入量の炭酸リチウムを純水に懸濁させた後、金属塩溶液を投入した。この処理により溶液中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出したが、この析出物を、フィルタープレスを使用して濾別した。
続いて、析出物を乾燥してリチウム含有炭酸塩(リチウムイオン電池正極材用前駆体)を得た。
次に、焼成容器を準備し、この焼成容器内にリチウム含有炭酸塩を充填した。次に、表1に示すような焼成条件により焼成を行った。続いて室温まで冷却した後、解砕してリチウムイオン二次電池正極材の粉末を得た。
【0031】
(比較例)
焼成容器へ原料を充填する際に、焼成条件が異なること以外は、実施例と同様にしてリチウムイオン二次電池正極材の粉末を作製した。
【0032】
(評価)
−正極材組成の評価−
各正極材中の金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成比(モル比)を算出した。各金属の組成比は、表2に記載の通りであることを確認した。また、酸素含有量はLECO法で測定しαを算出した。
【0033】
−平均粒子径D50の評価−
粒子断面をFIBにより切り出し、そのままエスエスアイ・ナノテクノロジー社製のFIB装置(SMI3050SE)を用いてSIM像を取得した。当該SIM像上の任意の直線上に存在する粒子のみの定方向径を測定することにより、平均粒子径D50を算出した。
【0034】
−粒度分布の評価−
SUS製の金型を準備した。当該金型は、内部に粉体試料を入れるための17.5mm径の内空部が形成されている。次に、正極活物質の粒子の粉体を1±0.05g採取して試料とし、これを金型の内空部に入れ、厚みが均等になるように広げた。次に、金型の内空部の試料を、押圧面を備えた別のSUS製の金型で上から3.0ton/cm
2の圧縮応力で押し込んで30秒間圧縮した。常圧に戻した後、金型から正極活物質を取り出した。続いて、試料の粒度分布の測定を日機装社製Microtrac MT3300EX IIレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で行った。
【0035】
−放電容量及び充放電効率の評価−
各正極活物質と、導電材と、バインダーとを90:5:5の割合で秤量し、バインダーを有機溶媒(N−メチルピロリドン)に溶解したものに、正極活物質と導電材とを混合してスラリー化して正極合剤を作製し、これをAl箔上に塗布して乾燥後にプレスして正極とした。続いて、対極をLiとした評価用の2032型コインセルを作製し、電解液に1M−LiPF6をEC−DMC(1:1)に溶解したものを用いて、電流密度0.2Cの際の放電容量を測定した。また、充放電効率は、電池測定によって得られた初期放電容量及び初期充電容量から算出した。
これらの結果を表1〜3に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
表3より、実施例1〜9は、いずれも平均粒子径D50が7〜12μm、ペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm
2の圧縮応力を30秒間加えたとき、一山のピークを持つ粒度分布となり、作製した電池の放電容量及び充放電効率が良好であった。
比較例1〜4は、ペレット圧縮試験において、正極活物質の粒子に3.0ton/cm
2の圧縮応力を30秒間加えたとき、二山のピークを持つ粒度分布となり、作製した電池の充放電効率が不良であった。
実施例1〜5及び比較例1の粒度分布を示すグラフを
図2〜7に示す。なお、
図2〜7では、それぞれ上記3.0ton/cm
2の圧縮応力で押し込んで30秒間圧縮した正極活物質の日機装社製Microtrac MT3300EX IIレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置による粒度分布を「3.0T」で示している。また、実施例1〜5及び比較例1について上記圧縮前の試料も正極活物質の日機装社製Microtrac MT3300EX IIレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で粒度分布を測定し、その結果を「0.0T」で示している。