特許第6017384号(P6017384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017384
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】医療支援サーバ及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20120101AFI20161020BHJP
【FI】
   G06Q50/22
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-159931(P2013-159931)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-32061(P2015-32061A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075281
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 和憲
(72)【発明者】
【氏名】上田 智
(72)【発明者】
【氏名】大田 恭義
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 亮介
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−052075(JP,A)
【文献】 特開2012−027565(JP,A)
【文献】 特開2003−108661(JP,A)
【文献】 特開2003−076789(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0042724(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0278100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診療情報と、前記患者の診療に必要な診療予定項目とを時間軸に沿って管理するタイムライン情報により、前記患者に対する医療を支援する医療支援サーバであり、
前記タイムライン情報として、前記患者を搬送元の現場から搬送先の医療施設に搬送するまでの救急初期段階に、前記救急初期段階において共通に実施される診療項目が前記診療予定項目として設定されている救急フォーマットに患者を識別するための患者IDが登録された救急タイムライン情報を作成してタイムラインデータベースに格納し、前記患者の疾病が特定された場合に、特定された前記疾病専用の専用タイムライン情報であって、疾病名称に対応した専用フォーマットに患者IDが登録された専用タイムライン情報を作成してタイムラインデータベースに格納するタイムライン作成部と、
前記患者の前記救急タイムライン情報の作成後に、前記専用タイムライン情報が作成された場合に、前記タイムラインデータベースから同じ患者IDを有する前記救急タイムライン情報及び前記専用タイムライン情報を読み出し、前記救急タイムライン情報に登録されている診療情報の管理を、同じ患者IDを有する前記専用タイムライン情報に移行する診療情報移行部と、
を備えることを特徴とする医療支援サーバ。
【請求項2】
前記救急タイムライン情報の前記診療予定項目には、救急隊員が行うことができる診療項目が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の医療支援サーバ。
【請求項3】
前記専用タイムライン情報の前記診療予定項目は、前記疾病の種類により、診療項目の種類、内容のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項2に記載の医療支援サーバ。
【請求項4】
前記診療予定項目として、血栓溶解療法が共通に設定されている複数種類の前記専用タイムライン情報は、疾病の種類により、前記血栓溶解療法の治療可能時間と、血栓溶解薬の投与量とが異なっていることを特徴とする請求項3に記載の医療支援サーバ。
【請求項5】
前記複数種類の専用タイムライン情報は、少なくとも脳血管系の疾病に対応する第1の専用タイムライン情報と、循環器系の疾病に対応する第2の専用タイムライン情報とを含むことを特徴とする請求項4に記載の医療支援サーバ。
【請求項6】
前記タイムライン作成部は、前記救急タイムライン情報が出産に用いられた場合に、前記専用タイムライン情報として、母体の前記診療情報の管理に使用される母体用タイムライン情報と、新生児の前記診療情報の管理に使用される新生児用タイムライン情報とを作成することを特徴とする請求項2または3に記載の医療支援サーバ。
【請求項7】
前記患者の診療情報を受け付けて、受け付けた前記診療情報を、前記救急タイムライン情報あるいは前記専用タイムライン情報に登録する診療情報登録部を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載の医療支援サーバ。
【請求項8】
前記診療情報登録部は、前記救急初期段階において、救急隊員が前記患者を処置するために使用される医療機器から送信される前記診療情報を受け付けて、受け付けた前記診療情報を前記救急タイムライン情報に登録することを特徴とする請求項7に記載の医療支援サーバ。
【請求項9】
前記診療情報登録部は、前記救急初期段階の経過後に、前記患者が搬送された前記医療施設で前記患者の診療情報を管理する院内サーバから前記診療情報を受け付けて、受け付けた前記診療情報を前記専用タイムライン情報に登録することを特徴とする請求項7または8に記載の医療支援サーバ。
【請求項10】
前記救急タイムライン情報及び前記専用タイムライン情報を、通信ネットワークを介してクライアント端末へ配信する配信部を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療支援サーバ。
【請求項11】
前記救急初期段階が経過した後、前記タイムライン情報を管理する管理機能の全部又は一部を別のサーバへ移管するタイムライン移管部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の医療支援サーバ。
【請求項12】
前記タイムライン移管部は、前記タイムライン作成部の有する機能のうち前記専用タイムライン情報を作成する機能と、前記診療情報移行部としての機能を前記別のサーバへ移管することを特徴とする請求項11に記載の医療支援サーバ。
【請求項13】
請求項11または12に記載の医療支援サーバと、
前記タイムライン移管部により、前記タイムライン情報の管理機能の全部又は一部が移管される移管先サーバと、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
【請求項14】
前記移管先サーバは、前記患者の搬送先の医療施設が管理する院内サーバであることを特徴とする請求項13に記載の医療支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを利用した医療支援サーバ及びシステムに関するものである。
【0002】
従来、急病や怪我などで医師の診療が必要な患者が発生した場合に、救急隊員が患者を救急車で病院まで搬送し、病院で患者の診療を行う救急医療体制が設けられている。患者が搬送された病院の医師は、患者を診断して疾病を特定し、治療方針を決定して患者の処置を行っている。実際の救急医療では、複数の医師や看護師が連携して短時間のうちに患者の診療を行っているため、患者に施された診断や治療に関する診療情報は、複数の医師や看護師で共有できることが望まれている。
【0003】
特許文献1には、脳卒中などの脳血管障害の患者が病院に搬送され、検査画像の撮影などが行われた場合に、患者の検査画像や診断結果などを含む診療情報を時間軸に沿って管理するタイムライン情報を医療支援サーバで作成し、医師や看護師が使用する複数のクライアント端末に配信する医療支援システムが記載されている。この医療支援システムによれば、タイムライン情報に患者の診療情報が登録されるので、複数の医師や看護師で患者の診療情報を共有することができる。また、タイムライン情報により、患者の診療に関する時間的な流れも容易に把握することができる。
【0004】
特許文献2には、疾病の種類毎に診療に必要な診療予定項目を時間軸に沿って設定した治療計画情報を医療支援サーバにより疾病別に標準化しておき、この医療支援サーバから、医師や看護師が使用する複数のクライアント端末に治療計画情報が配信される医療支援システムが記載されている。治療計画情報には、実施された診療予定項目の実績が記録される。この医療支援システムによれば、治療計画情報に診療情報として診療予定項目の実績が登録されるので、複数の医師や看護師で患者の診療情報を共有することができる。また、時間軸に沿って設定された診療予定項目とその実績により、患者の診療に関する時間的な流れも容易に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−027565
【特許文献2】特開2003−108661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のタイムライン情報と、特許文献2記載の治療計画情報は、患者の診療情報を複数の医師や看護師で共有することができ、患者の診療に関する時間的な流れも容易に把握することができるので、様々な疾病の救急医療においても有用である。しかし、特許文献1には、脳血管障害以外の疾病にも適用可能であるという記載はあるが、他の疾病の救急医療に利用可能なタイムライン情報をどのように作成するかは、具体的に記載されていない。また、特許文献2の医療支援システムは、治療計画情報が疾病別に標準化されているため、諸種の疾病に対して対応できるが、疾病が特定される以前の段階、すなわち、患者が救急現場から病院に搬送されるまでの救急初期段階に対応した治療計画情報は備えていない。
【0007】
本発明は、患者が現場から病院に搬送されるまでの救急初期段階において、タイムライン情報が利用可能な医療支援サーバ及びシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の医療支援サーバは、患者の診療情報と、患者の診療に必要な診療予定項目とを時間軸に沿って管理するタイムライン情報により、患者に対する医療を支援するものであり、タイムライン情報として、患者を搬送元の現場から搬送先の医療施設に搬送するまでの救急初期段階に、この救急初期段階において共通に実施される診療項目が診療予定項目として設定されている救急フォーマットに患者を識別するための患者IDが登録された救急タイムライン情報を作成してタイムラインデータベースに格納し、患者の疾病が特定された場合に、特定された疾病専用の専用タイムライン情報であって、疾病名称に対応した専用フォーマットに患者IDが登録された専用タイムライン情報を作成してタイムラインデータベースに格納するタイムライン作成部と、患者の救急タイムライン情報の作成後に専用タイムライン情報が作成された場合に、タイムラインデータベースから同じ患者IDを有する救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報を読み出し、救急タイムライン情報に登録されている診療情報の管理を、同じ患者IDを有する専用タイムライン情報に移行する診療情報移行部とを備えている。
【0010】
救急タイムライン情報の診療予定項目には、救急隊員が行うことができる診療項目が設定されていることが好ましい。
【0012】
専用タイムライン情報の診療予定項目は、疾病の種類によって、診療項目の種類、内容のうち少なくとも1つが異なることが好ましい。
【0013】
診療予定項目として、血栓溶解療法が共通に設定されている複数種類の専用タイムライン情報は、血栓溶解療法の治療可能時間と、血栓溶解薬の投与量とが、疾病の種類によって異なっていることが好ましい。
【0014】
複数種類の専用タイムライン情報は、少なくとも脳血管系の疾病に対応する第1の専用タイムライン情報と、循環器系の疾病に対応する第2の専用タイムライン情報とを含むことが好ましい。
【0015】
タイムライン作成部は、救急タイムライン情報が出産に用いられた場合に、専用タイムライン情報として、母体の診療情報の管理に使用される母体用タイムライン情報と、新生児の診療情報の管理に使用される新生児用タイムライン情報とを作成することが好ましい。
【0017】
患者の診療情報を受け付けて、受け付けた診療情報を、救急タイムライン情報あるいは前記専用タイムライン情報に登録する診療情報登録部を有することが好ましい。
【0018】
診療情報登録部は、救急初期段階において、救急隊員が前記患者を処置するために使用される医療機器から送信される診療情報を受け付けて、受け付けた診療情報を救急タイムライン情報に登録することが好ましい。
【0019】
診療情報登録部は、救急初期段階の経過後に、患者が搬送された医療施設で患者の診療情報を管理する院内サーバから診療情報を受け付けて、受け付けた診療情報を専用タイムライン情報に登録することが好ましい。
【0020】
救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報を、通信ネットワークを介してクライアント端末へ配信する配信部を有していることが好ましい。
【0021】
救急初期段階が経過した後、タイムライン情報を管理する管理機能の全部又は一部を別のサーバへ移管するタイムライン移管部を有することが好ましい。
【0022】
タイムライン移管部は、タイムライン作成部の有する機能のうち専用タイムライン情報を作成する機能と、診療情報移行部としての機能を別のサーバへ移管することが好ましい。
【0023】
本発明の医療支援システムは、上述した医療支援サーバと、タイムライン移管部により、タイムライン情報の管理機能の全部又は一部が移管される移管先サーバとを備えている。
【0024】
移管先サーバは、患者の搬送先の医療施設が管理する院内サーバであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、救急初期段階に、救急医療において実施される診療予定項目が設定された救急タイムライン情報を作成することができるので、救急初期段階の患者の診療情報を救急タイムライン情報に登録することができる。これにより、救急タイムライン情報により、救急初期段階の患者の診療情報及び診療予定項目を閲覧することができるので、救急初期段階の患者を適切に診断することができる。また、患者の疾病の特定後に、各疾病専用の専用タイムライン情報を作成し、診療情報の管理を救急タイムライン情報から専用タイムライン情報に移行するので、専用タイムライン情報によって、救急初期段階から疾病特定後までの患者の診療情報及び診療予定項目を閲覧し、診療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】医療支援システムが使用される救急医療体制の構成を示す概略図である。
図2】タイムライン情報の作成タイミングを示す概念図である。
図3】医療支援システムの構成を示す概略図である。
図4】医療支援サーバなどを構成するコンピュータの構成を示すブロック図である。
図5】医療支援システムの帰納的な構成を示すブロック図である。
図6】タイムライン管理部の機能的な構成を示すブロック図である。
図7】救急タイムライン情報から専用タイムライン情報への移行を説明する概念図である。
図8】トリアージ情報の構成を示す説明図である。
図9】フォーマットDBの構成を示す説明図である。
図10】タイムラインDBの構成を示す説明図である。
図11】救急タイムライン画面の構成を示す説明図である。
図12】トリアージ情報が表示された救急タイムライン画面の構成を示す説明図である。
図13】超音波画像が表示された救急タイムライン画面の構成を示す説明図である。
図14】疾病入力ウィンドウが表示された救急タイムライン画面の構成を示す説明図である。
図15】コメント入力ウィンドウが表示された救急タイムライン画面の構成を示す説明図である。
図16】運用終了登録ウィンドウが表示されたタイムライン画面の構成を示す説明図である。
図17】タイムライン情報の運用終了画面を示す説明図である。
図18】専用タイムライン画面の構成を示す説明図である。
図19】仮患者IDの配信手順を示すフローチャートである。
図20】救急タイムライン情報の作成手順を示すフローチャートである。
図21】専用タイムライン情報の作成手順を示すフローチャートである。
図22】タイムライン情報の運用終了手順を示すフローチャートである。
図23】患者IDの入力機能を備えた救急携帯端末の構成を示すブロック図である。
図24】第2実施形態の救急タイムライン情報から専用タイムライン情報への移行を説明する概念図である。
図25】第3実施形態の医療支援サーバの構成を示すブロック図である。
図26】タイムライン情報の管理権能の移管手順を示すフローチャートである。
図27】タイムライン情報の管理機能の移管を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
図1に示すように、都道府県などの自治体毎に、急病や怪我などで医師の診療が必要な患者が発生した場合に、救急隊員が救急車で患者を病院まで搬送し、病院で患者の診療を行う救急医療体制が設けられている。この救急医療体制は、例えば、その地域の救急医療において中心的役割を果たす施設である消防指令センタ10と、複数の消防署11と、複数の病院、例えば病院12A、病院12B、病院12Cなどで構成されている。
【0028】
消防指令センタ10は、救急現場15にいる患者Pなどからの緊急通報を受け付けて、通報内容等から救急現場15を特定し、救急現場15に近い消防署11に消防車の出動を指令する。消防署11は、出動指令に応じて、救急救命士を含む複数人の救急隊員Fからなる救急隊を編成し、救急車16を出動させる。救急隊は、救急現場15に到着後、患者Pに救急処置を施して救急車16に乗せる。救急隊は、病院12A〜12Cに患者Pの受入れ可否を問い合わせ、受入れ可能な病院に患者Pを搬送する。病院12A〜12Cは、救急医療設備を備えた救急指定病院である。病院12A〜12Cの医師Dは、搬送された患者Pの診療を行う。なお、救急救命士とは、救急救命士資格を取得した救急隊員であり、医師の指示の下、心肺停止状態の患者に対する静脈路確保、気管挿管、薬剤投与、及び半自動式除細動器による処置などを行うことができる。
【0029】
図2に示すように、本発明の医療支援システム19は、患者Pの診療情報と、患者Pの診療予定項目とを時間軸に沿って管理するタイムライン情報により、患者に対する医療を支援するコンピュータシステムである。医療支援システム19は、患者Pが救急現場15から病院12A〜12Cのいずれかに救急車16で搬送されるまでの救急初期段階に、患者Pの処置開始に応じて、諸種の疾病の救急初期段階に対して汎用的に使用される救急タイムライン情報を作成する。また、患者Pの疾病が特定された場合には、特定された疾病専用の専用タイムライン情報が作成され、診療情報の管理は、救急タイムライン情報から専用タイムライン情報に移行される。なお、診療情報とは、患者Pに施された診断や治療に関する情報であり、診療予定項目とは、患者Pの診療を行う上で必要な診断や治療の項目である。
【0030】
図3に示すように、医療支援システム19は、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報を作成、管理する医療支援サーバ21と、救急車16に搭載されているトリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24及び車内カメラ25とを備えている。トリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24及び車内カメラ25は、患者Pを処置するために使用される医療機器である。
【0031】
また、医療支援システム19には、救急隊員Fにより使用される少なくとも1つの救急携帯端末26、病院12A〜12Cにそれぞれ設けられている院内情報サーバ29及び少なくとも1つの院内端末27、専門医により使用される少なくとも1つの専門医携帯端末28なども含まれる。医療支援システム19の各装置は、通信ネットワーク30によって接続されている。通信ネットワーク30は、インターネットや移動体通信ネットワークで構成されている。
【0032】
医療支援サーバ21は、例えば消防指令センタ10に設置されている。医療支援サーバ21は、医療機器22〜25のいずれかから、患者Pに対する処置が開始されたことを表す処置開始情報を受け付けた場合に、救急タイムライン情報を作成する。また、医療支援サーバ21は、患者Pが搬送された病院の院内端末27から、患者Pの疾病が特定されたことを表す疾病特定情報が入力された場合に、専用タイムライン情報を作成し、救急タイムライン情報に登録されている救急初期段階の診療情報の管理を、専用タイムライン情報に移行する。医療支援サーバ21は、作成した救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報を、クライアント端末である救急携帯端末26、院内端末27及び専門医携帯端末28に配信する。
【0033】
医療支援サーバ21は、救急タイムライン情報の作成後に、各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28から患者Pの診療情報を受信し、受信した診療情報をタイムライン情報に登録する。また、医療支援サーバ21は、専用タイムライン情報の作成後には、患者Pが搬送された病院の院内情報サーバ29に対し、患者Pの診療情報及び診断画像の配信を要求し、院内情報サーバ29から配信された診療情報及び診断画像を専用タイムライン情報に登録する。診療情報が登録された救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報は、クライアント端末26〜28に再配信される。
【0034】
各クライアント端末26〜28に配信された救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報は、クライアント端末26〜28のディスプレイに、救急タイムライン画面KTLV(図10参照)、及び専用タイムライン画面STLV(図15参照)として表示される。救急タイムライン画面KTLV及び専用タイムライン画面STLVには、左方から右方に向かって時間の流れを表す帯状の時間軸75と、時間軸75から上下方向に延ばされている複数の引出し線76と、各引出し線76の先端に配置される複数の情報表示枠77及び予定表示枠105とを備えている。情報表示枠77内には、医療機器などから送信された診療情報が表示される。予定表示枠105内には、予め設定されている診療予定項目が表示される。
【0035】
トリアージ装置22は、患者Pに対する診療の緊急性を表す重症度を表示する装置であり、救急車16から持ち出され、救急現場15で患者Pの身体に装着される。従来、大規模災害などで多数の患者が発生した場合に、治療の優先順位を決定するために重症度に基づいて患者を分類し、患者の身体に装着されるトリアージタグによって重症度を表示するトリアージ作業が知られている。トリアージ装置22は、従来のトリアージタグの代わりに使用されるものであり、重症度の設定及び表示を電子的に行い、設定された重症度を含むトリアージ情報を、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する。
【0036】
バイタルサイン測定装置23は、救急車16内に設置されている生体モニタであり、救急車16内に搬入された患者Pの血圧、呼吸数、血中酸素飽和度、体温、心電図などのバイタルサインを測定する。バイタルサイン測定装置23は、バイタルサインの測定結果を含むバイタル情報を、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する。
【0037】
診断画像撮影装置24は、例えば救急車16内に設置されている超音波撮影装置であり、救急車16内に搬入された患者Pの超音波画像を撮影する。診断画像撮影装置24は、患者Pの超音波画像データを、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する。なお、診断画像撮影装置24としては、超音波撮影装置以外に、X線撮影装置や、CT(Computed Tomography)撮影装置などを用いてもよい。
【0038】
車内カメラ25は、例えば救急車16内の天井に設置され、救急車16内に搬入された患者Pの静止画あるいは動画を、患者Pの診断に供するために撮影する。したがって、車内カメラ25は、本発明の医療機器の一つである診断画像撮影装置に含まれる。車内カメラ25は、患者Pの静止画あるいは動画のデータを含む車内撮影データを、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する。
【0039】
救急携帯端末26は、救急隊に編成された複数の救急隊員Fが出動時にそれぞれ携帯する携帯端末であり、いわゆるスマートフォンが用いられている。救急携帯端末26は、スマートフォンの電話機能により、救急処置に対するアドバイスの問い合わせや、病院12A〜12Cに対する搬送可否の問い合わせなどに使用される。また、救急携帯端末26は、スマートフォンの撮影機能、録音機能により、救急現場15や患者Pの静止画あるいは動画の撮影、患者Pや目撃者に対するインタビューの録音などにも用いられる。静止画、動画あるいは音声のデータを含む携帯撮影データは、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信される。
【0040】
救急携帯端末26は、医療支援サーバ21から配信された救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報の閲覧と、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報に対するコメント入力にも利用される。コメント入力には、スマートフォンの文字入力機能が利用される。救急携帯端末26に入力されたコメントは、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信される。また、救急携帯端末26は、患者Pの病院への搬送が完了した場合に、患者Pの病院への搬送が完了したことを表す搬送完了情報を、医療支援サーバ21に送信する。
【0041】
院内情報サーバ29と院内端末27は、院内ネットワーク33によって接続されている。院内ネットワーク33は、インターネットと同様の通信プロトコルを用いたイントラネットで構成されており、ファイヤーウォールを介して通信ネットワーク30に接続されている。
【0042】
院内情報サーバ29は、患者Pの電子カルテ情報及び診断画像を管理するコンピュータシステムである。電子カルテ情報は、患者毎に電子カルテデータベース(図示せず)に格納されている。電子カルテ情報は、例えば患者Pの個人情報、診療情報などからなる。個人情報には、例えば、患者氏名、院内患者ID、生年月日、性別及び住所などが含まれる。診療情報は、病院内で患者Pに施された診断及び治療に関する情報であり、例えば、診療日付、診療科、傷病名、診断結果、投薬の種類及び量及び処方薬局名などが含まれる。院内情報サーバ29は、院内端末27で作成された電子カルテ情報を受信し、電子カルテデータベース(以下、データベースをDBという)に格納する。また、院内情報サーバ29は、院内端末27あるいは医療支援サーバ21からの読出要求に応じて電子カルテDBを検索し、探し出した電子カルテ情報を院内端末27あるいは医療支援サーバ21に送信する。
【0043】
院内情報サーバ29には、X線撮影装置、CT撮影装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)撮影装置、超音波撮影装置及び内視鏡などの診断画像撮影装置が接続されており、これらの診断画像撮影装置で撮影された診断画像を受信し、診断画像DBに格納する。診断画像DBに格納されている診断画像は、どの患者の診断画像であるかが識別できるように、院内患者IDと関連付けられている。また、院内情報サーバ29は、院内端末27または医療支援サーバ21からの配信要求に応じて診断画像DBを検索し、探し出した診断画像を院内端末27または医療支援サーバ21に送信する。
【0044】
院内端末27は、病院12A内の救急診療科に設置されているクライアント端末であり、救急診療科の医師Dや看護師によって操作される。院内端末27は、院内情報サーバ29に対する電子カルテ情報の入力、電子カルテ情報及び診断画像の閲覧、診断画像撮影装置に対する診断画像の撮影予約などに使用される。
【0045】
また、院内端末27は、医療支援サーバ21から配信された救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報の閲覧と、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報に対するコメント入力にも利用される。院内端末27に入力されたコメントは、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信される。また、患者Pが搬送された病院の院内端末27は、患者Pの疾病が特定した場合に、患者Pの疾病が特定されたことを表す疾病特定情報を医療支援サーバ21に送信する。疾病特定情報には、患者Pの疾病名称が含まれている。
【0046】
なお、病院12B及び12Cに設けられている院内情報サーバ及び院内端末は、病院12Aの院内情報サーバ29及び院内端末27と同様の構成であるため、詳しい説明は省略する。
【0047】
専門医携帯端末28は、医療支援サーバ21に予め登録されている専門医Sが携帯する携帯端末であり、いわゆるスマートフォンが用いられている。専門医Sは、脳血管系疾患、循環器系疾患などの特定分野に対する専門的知識を有する医師であり、重篤な患者に対する処置のアドバイスや診療に関する見解などを救急隊員Fや病院の医師Dに提供する。専門医携帯端末28は、医療支援サーバ21から配信された救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報の閲覧と、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報に対するコメント入力にも利用される。専門医携帯端末28に入力されたコメントは、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信される。
【0048】
図4に示すように、医療支援サーバ21、院内端末27及び院内情報サーバ29は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータに、オペレーティングシステムなどの制御プログラムや、コンピュータを目的のサーバあるいは端末として機能させるためのアプリケーションプログラム(AP)36をインストールして構成されている。医療支援サーバ21、院内端末27及び院内情報サーバ29は、ディスプレイ37と、キーボードやマウスなどの入力部38と、コンピュータ本体39とを備えている。
【0049】
コンピュータ本体39には、CPU42、メモリ43、ストレージデバイス44、通信I/F45が設けられており、これらはデータバス46を介して接続されている。ストレージデバイス44は、各種データを格納するデバイスであり、例えば、ハードディスクドライブで構成される。ストレージデバイス44は、制御プログラムや、医療支援プログラム、各種データベースなどのアプリケーションプログラム(AP)36が格納される。
【0050】
メモリ43は、CPU42が処理を実行するためのワークメモリである。CPU42は、ストレージデバイス44に格納されている制御プログラムをメモリ43へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。通信I/F45は、通信ネットワーク30に接続して、医療支援システム19の各装置と通信するための通信インタフェースである。
【0051】
図5に示すように、医療支援プログラムを起動すると、医療支援サーバ21のCPU42は、メモリ43と協働して、患者ID配信部49、タイムライン管理部50及び配信部51として機能する。また、医療支援サーバ21のストレージデバイス44には、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報のフォーマット情報を格納するフォーマットDB52と、作成された救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報タイムラインDB53と、クライアント端末26〜28に関する配信情報が格納された配信先DB54とが格納されている。
【0052】
患者ID配信部49は、患者Pの仮患者IDを各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28に配信する。医療支援システム19では、例えば、火事や交通事故、大規模災害などによって多数の患者が発生した場合、患者毎に複数の救急タイムライン情報が作成されるため、各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28から送信される診療情報が、どの患者のものであるか識別する必要がある。そのため、患者ID配信部49は、診療情報の識別に仮患者IDを使用する。
【0053】
仮患者IDの配信は、例えば次のような手順で行われる。消防指令センタ10において出動指令など行う消防緊急システム(図示せず)は、患者Pに仮患者IDを付与し、この仮患者IDを含む出動指令を消防署11に送信する。消防署11において出動指令を処理する出動処理システム(図示せず)は、出動する救急車16の決定及び救急隊の編成後、救急車16に搭載されている各医療機器22〜25の機器情報と、出動する各救急隊員Fの救急携帯端末26の端末情報などを含む出動情報を消防緊急システムに送信する。消防指令センタ10の消防緊急システムは、通信ネットワーク30を介して、医療支援サーバ21に仮患者ID及び出動情報を送信する。
【0054】
上述した出動情報の機器情報には、医療機器22〜25の機器IDと、医療機器22〜25と通信を行うために必要な通信情報とが含まれている。端末情報には、各救急携帯端末26の端末ID及び通信情報が含まれている。また、通信情報は、例えば各医療機器22〜25及び各救急携帯端末26に付与されたIPアドレスや、MACアドレスなどである。なお、出動情報には、仮患者IDの他、緊急通報の受付時刻や、緊急通報から判明している場合には、患者Pの性別、年齢あるいは年代などを含めてもよい。
【0055】
患者ID配信部49は、出動情報に含まれる通信情報に基づいて、各医療機器22〜25及び各救急携帯端末26に仮患者IDを配信する。また、患者ID配信部49は、配信先DB54に登録されている各院内端末27及び各専門医携帯端末28にも仮患者IDを配信する。仮患者IDを受信した各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28は、医療支援サーバ21に診療情報を送信する際に、診療情報に仮患者IDを付与する。これにより、医療支援サーバ21は、仮患者IDに基づいて、受診した診療情報がどの患者のものであるかを識別することができる。
【0056】
患者Pが搬送された病院の院内情報サーバ29は、患者Pに病院内で使用する院内患者IDを付与し、この院内患者IDを医療支援サーバ21に送信する。医療支援サーバ21は、患者Pのタイムライン情報に院内患者IDを登録し、病院への搬送後には、この院内患者IDに基づいて患者Pのタイムライン情報を管理する。
【0057】
図6に示すように、タイムライン管理部50は、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報の作成、救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報への診療情報の登録、救急タイムライン情報から専用タイムライン情報への診療情報の管理の移行など、タイムライン情報全般を管理する。タイムライン管理部50は、上述したタイムライン情報の管理を実現するために、処置開始情報受付部50a、タイムライン作成部50b、診療情報登録部50c、タイムライン終了部50d、疾病特定情報受付部50e、診療情報移行部50fとして機能する。
【0058】
処置開始情報受付部50aは、図7に示すように、トリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24及び車内カメラ25などの医療機器によって患者Pから取得される最初の診療情報を、処置開始情報として受け付ける。したがって、タイムライン管理部50が各医療機器22〜25から複数の診療情報を受信する場合でも、2回目以降に受信した診療情報を処置開始情報として受け付けることはない。
【0059】
タイムライン作成部50bは、処置開始情報として診療情報を受け付けた際に、受け付けた診療情報に付与されている仮患者ID毎に1件の救急タイムライン情報を作成する。したがって、仮患者IDが異なる複数の処置開始情報を受け付けた場合には、各仮患者IDに対応して複数の救急タイムライン情報が作成される。これにより、患者の人数と同数の救急タイムライン情報が作成されるので、一人の患者の診療情報が複数の救急タイムライン情報で管理されたり、複数の患者の診療情報が1つの救急タイムライン情報で管理されるなど、診療情報の管理ミスを防止することができる。
【0060】
タイムライン作成部50bは、フォーマットDB52から、トリアージ情報に含まれている重症度に対応した救急タイムライン情報のひな型である救急フォーマットを読み出し、読み出した救急フォーマットに、処置開始情報として受け付けた診療情報と、仮患者IDとを登録して救急タイムライン情報を作成する。タイムライン管理部50は、作成した救急タイムライン情報に救急タイムラインIDを付与し、タイムラインDB53に格納する。
【0061】
診療情報登録部50cは、救急タイムライン情報の作成後に、各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28から診療情報を受信した場合に、受信した診療情報の仮患者IDを確認し、仮患者IDに対応する救急タイムライン情報に受信した診療情報を登録する。また、診療情報登録部50cは、患者Pが病院に搬送された場合には、患者Pが搬送された病院の院内情報サーバ29に対し、患者Pの院内患者IDを指定して診療情報及び診断画像の配信を要求し、院内情報サーバ29から配信された診療情報及び診断画像をタイムライン情報に登録する。
【0062】
疾病特定情報受付部50eは、患者Pが搬送された病院12A〜12Cの院内端末27から、患者Pの疾病が特定されたことを表す疾病特定情報を受け付ける。タイムライン作成部50bは、疾病特定情報を受け付けた場合に、受け付けた疾病特定情報に付与されている仮患者ID毎に1件の専用タイムライン情報を作成する。
【0063】
タイムライン作成部50bは、フォーマットDB52から、疾病特定情報に含まれている疾病名称に対応した専用タイムライン情報のひな型である専用フォーマットを読み出す。タイムライン作成部50bは、読み出した専用フォーマットに、仮患者IDを登録して専用タイムライン情報を作成する。例えば、疾病名称が脳卒中の場合には、脳血管系疾患に対応した専用タイムライン情報を作成し、疾病名称が心筋梗塞の場合には、循環器疾患に対応した専用タイムライン情報を作成する。タイムライン作成部50bは、作成した専用タイムライン情報に専用タイムラインIDを付与し、タイムラインDB53に格納する。
【0064】
診療情報移行部50fは、救急タイムライン情報に登録されている診療情報の管理を、同じ仮患者IDを有する専用タイムライン情報に移行する。専用タイムライン情報は、救急タイムライン情報から移行された診療情報を時間軸75に沿って管理する。
【0065】
タイムライン終了部50dは、患者が軽症なためタイムライン情報が不要であったり、患者の回復や死亡などによってタイムライン情報が不要になった場合に、タイムライン情報の運用を終了する終了処理を行う。タイムライン終了部50dは、医療支援サーバ21で終了操作がされた場合、あるいは、救急携帯端末26、院内端末27及び専門医携帯端末28などのクライアント端末からタイムライン終了情報が送信された場合に、終了処理を行う。この終了処理は、終了対象となった患者のタイムライン情報に、タイムライン情報の運用状況を表す運用ステータスとして、「運用終了」と、運用を終了する理由とを登録する。運用ステータスが「運用終了」とされたタイムライン情報は、それ以降、診療情報の登録が終了され、クライアント端末26〜28には、運用終了画面が配信される。
【0066】
配信部51は、タイムラインDB53に格納されている救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報を読み出し、読み出した救急タイムライン情報及び専用タイムライン情報に基づいて救急タイムライン画面KTLV、及び専用タイムライン画面STLVを作成し、配信先DB54に格納されている配信情報に基づいて、クライアント端末26〜28に配信する。配信情報には、各救急携帯端末26、各院内端末27及び各専門医携帯端末28にタイムライン情報を配信するために必要な通信情報が登録されている。なお、患者Pの病院への搬送後には、患者Pに対する救急初期段階の処置が終了するため、配信部51は、患者Pの病院への搬送後に救急携帯端末26に対する診療情報の配信を終了する。また、配信部51は、タイムライン終了部50dでタイムライン情報の運用が終了された場合には、クライアント端末26〜27に運用終了画面を配信する。
【0067】
トリアージ装置22は、患者Pの重症度を設定する設定部57と、患者Pのバイタルサインを測定する測定部58と、重症度及び測定結果を表示する表示部59と、重症度及び測定結果を含むトリアージ情報を作成し、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する通信部60とを備えている。
【0068】
設定部57及び表示部59は、例えばカラー液晶パネルを使用したタッチパネルによって構成されている。救急隊員Fは、一般にSTART法と呼ばれる判定方法を用いて患者Pの重症度を判定し、タッチパネルを操作して重症度を設定する。START法とは、患者の歩行可否、呼吸状態、呼吸数、循環状態及び意識レベルに基づいて、患者の重症度を「死亡もしくは救命不可能」、「生命に関わる重篤な状態」、「生命に関わる重篤な状態ではないが搬送の必要がある」、及び「救急での搬送の必要がない」の4段階に分類する。各重症度には、黒色、赤色、黄色及び緑色の4色の識別カラーが割り当てられている。タッチパネルには、設定部57で設定された重症度に対応する識別カラーの識別マークが表示される。
【0069】
測定部58は、従来から医療現場で用いられているパルスオキシメータと同様の機能を有しており、患者Pの耳や指先などの身体に装着される装着部に内蔵された発光部から赤色光と赤外光を照射し、患者Pの身体を透過または反射した光を装着部に内蔵された受光部で受光し、この受光量に基づいて脈拍及び血中酸素飽和度を測定する。
【0070】
通信部60は、本発明の患者ID受付部として機能し、医療支援サーバ21の患者ID配信部49から仮患者IDを受け付ける。また、通信部60は、患者Pに対する処置が開始されたことを表す処置開始情報を医療支援サーバ21に送信する処置開始情報送信部としても機能する。図8に示すように、通信部60は、処置開始情報としても用いられる診療情報として、トリアージ情報Tdを作成する。トリアージ情報Tdには、設定部57で設定された重症度と、測定部58で測定されたバイタルサインの測定結果とが含まれる。また、トリアージ情報Tdには、患者ID配信部49から受信した仮患者IDが付加されている。
【0071】
バイタルサイン測定装置23は、患者Pの血圧、呼吸数、血中酸素飽和度、体温、心電図などのバイタルサインを測定する測定部63と、バイタルサインの測定結果を含むバイタル情報を、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する通信部64とを備えている。通信部64は、トリアージ装置22の通信部60と同様に、患者ID受付部及び処置開始情報送信部としても機能する。また、バイタル情報には、トリアージ情報Tdと同様に仮患者IDが付加される。
【0072】
診断画像撮影装置24は、患者Pの超音波画像を撮影する超音波撮影部67と、患者Pの超音波画像データを、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する通信部68とを備えている。通信部68は、トリアージ装置22の通信部60と同様に、患者ID受付部及び処置開始情報送信部としても機能する。また、超音波画像データには、トリアージ情報Tdと同様に仮患者IDが付加される。
【0073】
車内カメラ25は、救急車16内に搬入された患者Pの静止画あるいは動画を撮影する撮影部71と、患者Pの静止画あるいは動画のデータを含む車内撮影データを、患者Pの診療情報として医療支援サーバ21に送信する通信部72とを備えている。通信部72は、トリアージ装置22の通信部60と同様に、患者ID受付部及び処置開始情報送信部としても機能する。また、車内撮影データには、トリアージ情報Tdと同様に仮患者IDが付加される。
【0074】
救急携帯端末26、院内端末27及び専用医携帯端末28から医療支援サーバ21に、診療情報として送信される携帯撮影データ、コメントにも、仮患者IDが付与される。したがって、医療支援サーバ21では仮患者IDを確認することにより、どの患者に対するコメントであるかを特定することができる。
【0075】
図9に示すように、フォーマットDB52には、救急フォーマットFFD及び専用フォーマットEFDが格納されている。救急フォーマットFFDは、例えばトリアージ装置22で設定される4段階の重症度に対応して、「死亡」、「重症」、「中等症」及び「軽症」の4種類が設けられている。タイムライン管理部50は、救急タイムライン情報を作成する際に、トリアージ情報Tdに含まれる重症度に対応した救急フォーマットFFDをフォーマットDB52から読み出す。例えば、救急フォーマットFFDの「軽症」には、診療予定項目として「バイタル測定」が登録されている。また、救急フォーマットFFDの「重症」には、救急救命士による処置が可能な、静脈路確保、気管挿管、薬剤投与、及び半自動式除細動器による処置などが登録されている。
【0076】
専用フォーマットEFDは、「脳卒中」、「心筋梗塞」など、疾病毎に複数種類が設けられている。タイムライン管理部50は、専用タイムライン情報を作成する際に、疾病特定情報に含まれている疾病名称に対応した専用フォーマットEFDをフォーマットDB52から読み出す。例えば、専用フォーマットEFDの「脳卒中」には、診療予定項目として「血栓溶解療法(t−PA)」が登録されている。診療予定項目「血栓溶解療法(t−PA)」には、血栓溶解の投与が可能な「治療可能時間」として、発症から「4.5時間」が登録されている。また、専用フォーマットEFDの「心筋梗塞」にも、診療予定項目として「血栓溶解療法(t−PA)」が登録されている。心筋梗塞の診療予定項目「血栓溶解療法(t−PA)」には、「治療可能時間」として発症から「12時間」が登録されている。このように、同じ診療予定項目であっても、疾病の種類によって設定されている治療可能時間が異なっている。
【0077】
なお、救急初期段階の患者Pに対する処置は、全ての患者に施されるバイタル測定や、患者Pの状態や医師の指示にしたがって実施される超音波画像撮影などであるため、救急フォーマットFFDの診療予定項目には、「治療可能時間」は設定されていない。
【0078】
図10に示すように、タイムラインDB53には、救急タイムラインIDが付与された複数の救急タイムライン情報FTLDと、専用タイムラインIDが付与された複数の専用タイムライン情報ETLDとが格納されている。救急タイムラインIDは、例えば、そのタイムライン情報が作成された年月日と、その作成日における作成順位を表す数字と、救急を表す符号「F」とで構成されている。例えば、「20130805-001F」は、2013年8月5日に1番目に作成された救急タイムライン情報であることを表している。
【0079】
救急タイムライン情報FTLDは、仮患者ID、診療予定項目、救急登録情報及びステータスにより構成されている。診療予定項目には、救急フォーマットEFDにおいて設定された診療項目が設定されている。救急登録情報は、タイムライン管理部50により登録された、救急初期段階の診療情報が格納されている。救急登録情報には、トリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24及び車内カメラ25からそれぞれ受信した、トリアージ情報、バイタル情報、超音波画像データ及び車内撮影データが登録される。また、各救急携帯端末26から受信した携帯撮影データ及びコメントと、各院内端末27及び各専門医携帯端末28からそれぞれ受信したコメントも救急登録情報に登録される。
【0080】
ステータスには、患者Pが病院に搬送途中であることを表す「搬送中」と、病院への搬送が完了したことを表す「搬送完了」と、タイムライン情報の運用が終了されたことを表す「運用終了」とが登録される。タイムライン作成部50bは、タイムライン情報の作成時に、ステータスに「搬送中」を登録する。診療情報登録部50cは、救急携帯端末26から搬送完了情報を受信した場合には、ステータスに「搬送完了」を登録する。タイムライン終了部50dは、医療支援サーバ21で終了操作がされた場合、あるいは、救急携帯端末26、院内端末27及び専門医携帯端末28などのクライアント端末からタイムライン終了情報を受信した場合には、ステータスに「運用終了」を登録する。
【0081】
専用タイムラインIDは、救急タイムラインIDと同じ数字列と、末尾に付された専用を表す符号「E」とで構成されている。専用タイムライン情報ESTLDは、仮患者ID、院内患者ID、診療予定項目、移行情報、専用登録情報及びステータスにより構成されている。移行情報は、救急タイムライン情報から専用タイムライン情報に診療情報の管理が移行される際に、救急タイムライン情報FTLDの救急登録情報に登録されている診療情報が登録される。専用登録情報には、患者Pが病院に搬送された後に、院内情報サーバ29の電子カルテDBから読み出された患者Pの診療情報と、画像DBから読み出された診断画像のデータとが登録される。ステータスは、救急タイムライン情報FTLDと同じ項目が登録される。
【0082】
図11に示すように、各クライアント端末26〜28には、救急タイムライン情報から作成された救急タイムライン画面FTLVが配信され、救急タイムライン画面FTLVは、各クライアント端末26〜28のディスプレイに表示される。救急携帯端末26や専門医携帯端末28に配信された救急タイムライン画面FTLVは、タッチパネルによるタッチ操作によって操作される。また、院内端末27に配信された救急タイムライン画面FTLVは、キーボードやマウスによって操作される。
【0083】
救急タイムライン画面FTLVには、左方から右方に向かって時間の流れを表す時間軸75と、時間軸75から下方に延ばされた複数本の引出し線76と、引出し線76の先端に配されている複数の四角枠状の情報表示枠77とを備えている。各情報表示枠77内には、診療情報の一部や縮小画像が表示されており、情報表示枠77の下部には、医療機器や病院名など、診療情報の送信元の名称が表示されている。時間軸75の下部で、引出し線76の横には、各診療情報の送信時刻が表示されている。救急タイムライン画面FTLVにおいて情報表示枠77が選択されると、選択された情報表示枠77に対応する診療情報が救急タイムライン情報FTLDから読み出され、救急タイムライン画面FTLV上に表示される。
【0084】
時間軸75の上方には、診療予定項目78が表示されている。上述したように、救急タイムライン情報FTLDの診療予定項目には、治療可能時間が設定されていないため、診療予定項目78は時間軸75に沿って配置されずに、時間軸の上方にまとめて表示されている。
【0085】
救急タイムライン画面FTLVの上部左方には、救急タイムラインID及び仮患者IDと、消防緊急システムから受信した出動情報に含まれている患者Pの性別、年齢が表示されている。救急タイムライン画面FTLVの上部中央及び右方には、救急タイムライン情報が作成されてからの経過時間と、現在時刻とが表示されている。
【0086】
救急タイムライン画面FTLVの下部左方には、患者が軽症なためタイムライン情報が不要であったり、患者の回復や死亡などによって救急タイムライン情報が不要になった場合に、救急タイムライン情報の運用を終了するために操作される終了ボタン80が設けられている。終了ボタン80が操作された場合には、入力して運用終了を登録するための運用終了登録画面がタイムライン画面TLV上に表示される。
【0087】
終了ボタン80の右方に配置されている搬送完了ボタン82は、患者Pの病院への搬送完了後に、救急隊員Fによって操作される。搬送完了ボタン82は、救急隊員F以外の不用意な操作を防止するため、救急携帯端末26の救急タイムライン画面FTLVのみに表示される。救急携帯端末26は、搬送完了ボタン82が操作されると、医療支援サーバ21に搬送完了情報を送信する。
【0088】
救急タイムライン画面FTLVの上部に設けられている標題部83の右方には、患者Pの搬送状況が表示される搬送状況表示部84が設けられている。タイムライン管理部50は、救急タイムライン情報の作成時には、搬送状況表示部84に「搬送中」と表示させ、救急携帯端末26から搬送完了情報が入力された場合には、搬送状況表示部84を「搬送完了」に変更する。
【0089】
搬送完了ボタン82の右方に配置されている疾病特定ボタン86は、患者Pの病院への搬送完了後、病院内で患者Pの疾病が特定された場合に、病院の医師Dによって操作される。疾病特定ボタン86は、患者Pが搬送された病院の医師D以外の不用意な操作を防止するため、患者Pが搬送された病院の院内端末27の救急タイムライン画面FTLVのみに表示される。院内端末27は、疾病特定ボタン86が操作されると、疾病名称を入力するための疾病名称入力ウィンドウが救急タイムライン画面FTLV上に表示される。
【0090】
救急タイムライン画面FTLVの下部右方には、救急タイムライン情報にコメントを送信する際に操作されるコメントボタン85が設けられている。コメントボタン85が操作されると、コメントを入力するためのコメント入力ウィンドウが救急タイムライン画面FTLV上に表示される。
【0091】
図12は、救急タイムライン画面FTLVにおいて、トリアージ装置22の情報表示枠77が選択された場合を表している。救急タイムライン画面FTLV上には、背景色が重症度を表す識別カラーにされた重症度の説明文88と、脈拍及び血中酸素飽和度の測定結果89とが表示されたサブウィンドウ90が表示されている。また、図13は、救急タイムライン画面FTLVにおいて、診断画像撮影装置24の情報表示枠77が選択された状態を表している。救急タイムライン画面FTLV上には、超音波画像92が表示されたサブウィンドウ93が表示されている。
【0092】
図14は、救急タイムライン画面FTLVにおいて、疾病特定ボタン86が操作された場合を表しており、救急タイムライン画面FTLV上には、疾病名称入力欄95と、送信ボタン96及びキャンセルボタン97とが設けられた疾病入力ウィンドウ98が表示されている。図15は、救急タイムライン画面FTLVにおいて、コメントボタン85が操作された場合を表しており、救急タイムライン画面FTLV上には、コメント入力欄99と、送信ボタン100及びキャンセルボタン101とが設けられたコメント入力ウィンドウ102が表示されている。
【0093】
図16は、タイムライン画面TLVにおいて、終了ボタン80が操作された場合を表している。タイムライン画面TLV上には、タイムライン情報の運用を終了する理由が入力される終了理由入力欄104と、送信ボタン105及びキャンセルボタン106とが設けられた運用終了登録ウィンドウ107が表示されている。なお、運用終了登録ウィンドウ107では、終了理由入力欄104に終了理由が入力しなければ、送信ボタン105を操作しても医療支援サーバ21にタイムライン終了情報が送信されないようになっているため、終了ボタン80が誤って操作されてもタイムライン情報がすぐに終了されるようなことはない。
【0094】
図17は、タイムライン情報の運用終了後にクライアント端末26〜28に配信される運用終了画面109である。運用終了画面109には、タイムラインID及び仮患者ID110と、タイムライン情報の運用が終了されたことを表すメッセージ111と、運用終了登録ウィンドウ107で入力された終了理由112とが表示される。
【0095】
図18に示すように、各クライアント端末26〜28には、専用タイムライン情報から作成された専用タイムライン画面ETLVが配信され、専用タイムライン画面ETLVは、各クライアント端末26〜28のディスプレイに表示される。専用タイムライン画面ETLVは、救急タイムライン画面FTLVと同様に、タッチパネルあるいはマウスなどで操作される。
【0096】
専用タイムライン画面ETLVには、救急タイムライン画面FTLVと同様に、時間軸75、引出し線76、情報表示枠77とを備えている。専用タイムライン画面ETLVの標題部83には、患者Pの疾病名称115として、例えば「脳卒中」が表示されている。
【0097】
また、時間軸75の上方の引出し線76の先端には、複数の四角枠状の予定表示枠117が配置されている。予定表示枠117の引出し線76は、患者Pの疾病の発症時刻、緊急通報時刻あるいは救急タイムライン情報の作成時刻に、予定表示枠117内に記載されている予定診療項目の治療可能時間を加算した治療可能時刻から引き出されており、引出し線76の横には、各診療予定項目の治療可能時刻が表示されている。これにより、専用タイムライン画面ETLVを閲覧することにより、患者Pの診療情報だけでなく、診療予定項目と、診療予定項目の治療可能時刻も確認することができる。
【0098】
専用タイムライン画面ETLVのその他の部分は、救急タイムライン画面FTLVと同様の構成及び機能を有するため、詳しい説明は省略する。専用タイムライン画面ETLVでは、患者Pの病院への搬送完了と、疾病特定とを行う必要がないため、専用タイムライン画面ETLVには、搬送完了ボタン82及び疾病特定ボタン86は表示されていない。
【0099】
次に、上記実施形態の作用について説明する。図19に示すように、消防指令センタ10は、患者Pなどからの緊急通報を受け付け、通報内容等から救急現場15を特定する。消防指令センタ10の消防緊急システムは、患者Pに仮患者IDを付与し、この仮患者IDを含む出動指令を消防署11に送信する(S10)。消防署11は、出動指令に応じて、出動する救急車16及び救急隊を編成して出動させる(S11)。消防署11の出動処理システムは、救急車16に搭載されている各医療機器22〜25の機器情報と、出動する各救急隊員Fの救急携帯端末26の端末情報、仮患者IDなどを含む出動情報を消防指令センタ10に送信する。消防指令センタ10の消防緊急システムは、通信ネットワーク30を介して、医療支援サーバ21に出動情報及び仮患者IDを送信する(S12)。
【0100】
図20に示すように、医療支援サーバ21の患者ID配信部49は、出動情報に含まれる通信情報に基づいて、各医療機器22〜25及び各救急携帯端末26に仮患者IDを配信し、配信先DB54に基づいて各院内端末27及び各専門医携帯端末28にも仮患者IDを配信する(S15)。
【0101】
救急現場15に到着した救急隊は、患者Pの診療を開始する。救急隊員Fは、救急車16からトリアージ装置22を持ち出して患者Pの身体に装着し、重症度の設定及びバイタルサインの測定を開始する(S16)。トリアージ装置22は、通信部60から重症度、バイタルサインの測定結果及び仮患者IDを含むトリアージ情報Tdを、診療情報として医療支援サーバ21に送信する(S16)。
【0102】
処置開始情報受付部50aは、患者Pから取得される最初の診療情報、この場合トリアージ情報を処置開始情報として受け付け、タイムライン作成部50bは、トリアージ情報の重症度に対応した救急タイムライン情報を作成する(S17)。タイムライン作成部50bは、ストレージデバイス44から読み出した救急フォーマット情報に、処置開始情報として受け付けた診療情報と、仮患者IDとを登録して救急タイムライン情報を作成し、救急タイムラインIDを付与してタイムラインDB53に格納する。
【0103】
なお、患者Pから最初に診療情報を取得する医療機器がバイタルサイン測定装置23である場合には、バイタルサイン測定装置23のバイタル情報に応じて救急タイムライン情報が作成される。また、患者Pから最初に診療情報を取得する医療機器が診断画像撮影装置24である場合には、診断画像撮影装置24の超音波画像データに応じて救急タイムライン情報が作成される。同様に、患者Pから最初に診療情報を取得する医療機器が車内カメラ25である場合には、車内カメラ25の車内撮影データに応じて救急タイムライン情報が作成される。
【0104】
配信部51は、タイムラインDB53に格納されている救急タイムライン情報を読み出し、読み出した救急タイムライン情報に基づいて救急タイムライン画面FTLVを作成し、配信先DB54に格納されている配信情報に基づいて、クライアント端末26〜28に救急タイムライン画面FTLVを配信する(S17)。救急携帯端末26、院内端末27及び専門医携帯端末28は、配信された救急タイムライン画面FTLVをディスプレイに表示する(S18)。
【0105】
救急隊員F、医師D及び専門医Sは、ディスプレイに表示されている救急タイムライン画面FTLVを閲覧することができる。また、診療情報の詳細を確認したい場合には、救急タイムライン画面FTLVにおいて情報表示枠77選択する。すると、図12図13に示すように、救急タイムライン画面FTLV上には、選択された診療情報が表示される。
【0106】
救急隊員Fは、救急タイムライン情報の作成トリガとなる最初の処置を行った後も患者Pの処置を継続する(S19)。救急隊員Fは、救急携帯端末26を使用して、救急現場15や、救急現場15における患者Pの様子などを撮影する。また、救急隊員Fは、救急携帯端末26を使用して、患者Pや目撃者のインタビューを録音する。救急隊員Fは、患者Pを担架やストレッチャーなどを利用して救急車16内に搬送した後、バイタルサイン測定装置23や診断画像撮影装置24を使用して患者Pの処置を継続する。
【0107】
また、車内カメラ25は、救急車16内の患者Pの状態を撮影する。患者Pの処置に用いられたトリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24、車内カメラ25及び救急携帯端末26は、診療情報として、仮患者IDが付与されたトリアージ情報、バイタル情報、超音波画像データ、車内撮影データ及び携帯撮影データを医療支援サーバ21に送信する(S19)。
【0108】
救急隊員Fは、患者Pの処置に対する質問などがある場合には、図15に示すように、救急携帯端末26の救急タイムライン画面FTLV上にコメント入力ウィンドウ102を呼び出し、コメント入力欄99に質問を入力する。また、医師D及び専門医Sは、救急隊員Fの質問に対する回答や、アドバイス、見解の提供、患者Pの受け入れ表明などを行う場合には、コメント入力ウィンドウ102にそれらのコメントを入力する。コメント入力ウィンドウ102に入力されたコメントは、診療情報として医療支援サーバ21に送信される(S20)。これにより、救急隊員Fは、救急タイムライン情報から質問の回答や、患者の受け入れ可否に関する情報などを得ることができる。
【0109】
診療情報登録部50cは、救急タイムライン情報の作成後に各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28から診療情報を受信した場合には、受信した診療情報の仮患者IDを確認し、仮患者IDに対応する救急タイムライン情報に受信した診療情報を登録する(S21)。配信部51は、診療情報が登録された救急タイムライン情報を各クラインアント端末26〜28に再配信する(S21)。救急携帯端末26、院内端末27及び専門医携帯端末28は、再配信された救急タイムライン画面FTLVをディスプレイに表示する(S22)。
【0110】
救急隊員Fは、患者Pが病院12A〜12Cのいずれかに搬送された場合に、救急タイムライン画面FTLVにおいて搬送完了ボタン82を操作する。救急携帯端末26は、搬送完了ボタン82が操作されると、医療支援サーバ21に搬送完了情報を送信する。診療情報登録部50cは、は、搬送完了情報を受信することにより、患者Pの病院への搬送完了を確認する。
【0111】
院内情報サーバ29は、搬送された患者Pに院内患者IDを付与し、この院内患者IDを医療支援サーバ21に送信する(S24)。診療情報登録部50cは、患者Pのタイムライン情報に院内患者IDを登録する(S25)。
【0112】
診療情報登録部50cは、患者Pが病院に搬送された場合(S23でYES)、患者Pが搬送された病院の院内情報サーバ29に対し、患者Pの診療情報及び診断画像の配信を要求する(S26)。院内情報サーバ29は、配信要求に応じて、電子カルテDBから患者Pの診療情報を読み出し、画像DBから患者Pの診断画像を読み出して、診療情報として医療支援サーバ21に配信する(S27)。タイムライン管理部50は、院内情報サーバ29から配信された診療情報及び診断画像を救急タイムライン情報に登録する(S28)。配信部51は、診療情報が登録された救急タイムライン情報を、救急携帯端末26を除く各クラインアント端末27、28に再配信する(S28)。院内端末27及び専門医携帯端末28は、再配信された救急タイムライン画面FTLVをディスプレイに表示する(S29)。
【0113】
患者Pが搬送された病院の医師Dは、患者Pの疾病が特定された場合、院内端末27に表示されている救急タイムライン画面FTLVにおいて、疾病特定ボタン86を操作する。院内端末27は、疾病特定ボタン86が操作されると、医療支援サーバ21に疾病名称を含む疾病特定情報を送信する。図21に示すように、疾病特定情報受付部50eは、院内端末27から送信された疾病特定情報を受け付けし(S30)、タイムライン作成部50bは、疾病特定情報に付与されている仮患者ID毎に1件の専用タイムライン情報を作成する(S31)。
【0114】
タイムライン作成部50bは、フォーマットDB52から、疾病特定情報に含まれている疾病名称に対応した専用タイムライン情報のひな型である専用フォーマットを読み出し、読み出した専用フォーマットに、仮患者IDを登録して専用タイムライン情報を作成する。例えば、疾病名称が脳卒中の場合には、脳血管系疾患に対応した専用タイムライン情報を作成し、疾病名称が心筋梗塞の場合には、循環器疾患に対応した専用タイムライン情報を作成する。タイムライン管理部50は、作成した専用タイムライン情報に専用タイムラインIDを付与し、タイムラインDB53に格納する。
【0115】
診療情報移行部50fは、救急タイムライン情報に登録されている診療情報の管理を、同じ仮患者IDを有する専用タイムライン情報に移行する(S32)。専用タイムライン情報は、救急タイムライン情報から移行された診療情報を時間軸75に沿って管理を開始する。配信部51は、タイムラインDB53に格納されている専用タイムライン情報を読み出し、読み出した専用タイムライン情報に基づいて専用タイムライン画面ETLVを作成し、配信先DB54に格納されている配信情報に基づいて、院内端末27及び専門医携帯端末28に専用タイムライン画面ETLVを配信する(S33)。配信された専用タイムライン画面ETLVは、院内端末27及び専門医携帯端末28のディスプレイに表示される。
【0116】
タイムライン管理部50は、救急タイムライン情報と同様に、専用タイムライン情報の運用を行う。具体的には、診療情報登録部50cは、患者Pが搬送された病院の院内情報サーバ29から配信される患者Pの診療情報及び診断画像と、院内端末27及び専門医携帯端末28から送信されるコメントとを診療情報として専用タイムライン情報に登録し、診療情報が登録された専用タイムライン情報を院内端末27及び専門医携帯端末28に再配信する。
【0117】
患者が軽症なためタイムライン情報が不要であったり、患者の回復や死亡などによってタイムライン情報が不要になった場合には、医療支援サーバ21や、救急携帯端末26、院内端末27及び専門医携帯端末28などのクライアント端末で、救急タイムライン画面FTLV、あるいは専用タイムライン画面ETLVの終了ボタン80が操作される。終了ボタン80が操作された端末のディスプレイには、図16に示す運用終了登録ウィンドウ107が表示される。図22に示すように、運用終了登録ウィンドウ107で終了理由が入力されて送信ボタン105が操作されると、医療支援サーバ21には、タイムライン終了情報が送信される(S40)。
【0118】
タイムライン終了情報を受信したタイムライン終了部50dは、終了処理を開始する(S41)。この終了処理は、終了対象となった患者の救急タイムライン情報、あるいは専用タイムライン情報のステータスに「運用終了」と、運用を終了する理由とを登録する。ステータスが「運用終了」とされた救急タイムライン情報、あるいは専用タイムライン情報は、それ以降、診療情報の登録が終了される。配信部51は、タイムライン終了部50dでタイムライン情報の運用が終了された場合には、クライアント端末26〜27に、図17に示す運用終了画面109を配信する(S42)。運用終了画面109は、クライアント端末26〜28のディスプレイに表示される(S43)。これにより、救急隊員F、医師D及び専門医Sは、患者の救急タイムライン情報、あるいは専用タイムライン情報の運用が終了したことを知ることができる。
【0119】
以上で説明したように、本実施形態の医療支援システム19によれば、救急初期段階に汎用の救急タイムライン情報を作成するので、救急初期段階の診療情報を救急タイムライン情報に登録することができる。また、救急タイムライン情報を閲覧することにより、救急初期段階の診療情報と、救急初期段階において必要な診療予定項目とを確認できるので、救急初期段階の患者を適切に診療することができる。さらに、患者の疾病が特定された後には、特定された疾病専用の専用タイムライン情報を作成し、救急タイムライン情報に登録されている診療情報を専用タイムライン情報に移行するので、専用タイムライン情報を閲覧することにより、救急初期段階から疾病特定後における患者の診療情報と、疾病に対応した診療予定項目とを確認することができる。これにより、疾病に応じて患者を適切に診療することができる。
【0120】
救急タイムライン情報には、諸種の疾病の救急初期段階において共通に実施される診療項目が診療予定項目として設定されているので、どのような疾病であっても救急初期段階に必要な診療項目を確認することができる。また、専用タイムライン情報には、疾病の種類毎に実施が必要な診療項目が診療予定項目として設定されているので、疾病毎に診療に必要な診療項目を確認することができる。
【0121】
また、本実施形態では、救急隊員Fが出動する際に、患者のタイムライン情報が必ず作成されるが、患者が軽症なためタイムライン情報が不要であったり、患者の回復や死亡などによってタイムライン情報が不要になった場合には、タイムライン情報の運用を終了することができる。これにより、不要なタイムライン情報の運用が継続されることによる混乱や診療ミスを未然に防ぐことができるとともに、医療支援サーバ21の負荷を軽減することができる。
【0122】
上記実施形態では、トリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24及び車内カメラ25などの医療機器のうち、最初に患者Pから取得された診療情報に応じて救急タイムライン情報を作成しているが、救急初期段階で最初に使用される医療機器の種類が予め決まっている場合には、その種類の医療機器が最初に患者Pから取得された診療情報に応じて救急タイムライン情報を作成するようにしてもよい。例えば、トリアージ装置22、バイタルサイン測定装置23、診断画像撮影装置24及び車内カメラ25などの医療機器では、救急現場に持ち出して使用されるトリアージ装置22が最初に使用される可能性が高いため、トリアージ装置22のトリアージ情報に基づいて救急タイムライン情報を作成するようにしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、救急隊の出動時に、医療支援サーバ21から各医療機器22〜25及び各クライアント端末26〜28に仮患者IDを配信しているため、1種類の仮患者IDしか設定できない。しかし、出動当初に患者数が1人であった場合でも、救急現場到着後に複数の患者の存在が判明することもある。このような場合、複数の患者に対して1種類の仮患者IDを付与され、同一の救急タイムライン情報が使用されることになるため、医療ミスの原因となりかねない。
【0124】
このような場合に対処できるようにするため、図23に示すように、救急携帯端末26に対し、タッチパネルなどを利用して仮患者IDを手動で入力する患者ID入力部120と、入力された仮患者IDを各医療機器に対して個別に送信する患者ID送信部121とを設けてもよい。これによれば、救急現場で複数の患者の存在が判明した場合でも、各患者に対して仮患者IDを付与できるので、患者毎にタイムライン情報を作成することができる。
【0125】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、1つの救急タイムライン情報に対応して、複数の専用タイムライン情報を作成医療支援システムに関する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を用いることにより詳しい説明は省略する。
【0126】
図24に示すように、救急タイムライン情報は、医療支援サーバ21のタイムライン作成部50bにより、処置開始情報に応じて作成される。救急タイムライン情報には、救急初期段階において発生した患者の診療情報がその都度登録される。疾病特定情報により、患者の疾病が出産であると特定された場合、タイムライン作成部50bは、母体用と新生児用の2つの専用タイムライン情報を作成し、各専用タイムライン情報に救急タイムライン情報に登録されている診療情報を移行する。これによれば、出産前に一緒に管理していた母体及び胎児の診療情報を、出産後にはそれぞれ専用のタイムライン情報で管理することができるので、母体と新生児とに最適な診療を行うことができる。
【0127】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、救急初期段階が経過した後、すなわち、患者Pが病院に搬送された後に、医療支援サーバによるタイムライン情報の管理機能の全部又は一部を別のサーバへ移管する医療支援システムに関する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を用いることにより詳しい説明は省略する。
【0128】
図25に示すように、本実施形態の医療支援サーバ130は、タイムライン情報の管理機能の全部又は一部を別のサーバへ移管する、タイムライン移管部131を備えている。タイムライン情報の管理機能が移管される移管先サーバは、例えば患者Pが搬送された病院の院内情報サーバ29である。院内情報サーバ29は、医療支援サーバ130と同様の機能を有するタイムライン管理部132、配信部133、フォーマットDB134、タイムラインDB135及び配信先DB136を備えている。
【0129】
タイムライン移管部131には、救急携帯端末26の救急タイムライン画面FTLVにおいて搬送完了ボタン82が操作された場合に、救急携帯端末26から搬送完了情報が入力される。第1実施形態で説明したように、搬送完了情報は、患者Pの病院への搬送完了を表す情報である。図26に示すように、タイムライン移管部131は、搬送完了情報を受け付けると(S50)、医療支援サーバ130から院内情報サーバ29に救急タイムライン情報の管理を移管する移管処理を実行する(S51)。この移管処理では、タイムライン移管部131は、院内情報サーバ29のタイムライン管理部132に対し、患者Pの救急タイムライン情報と、患者Pの救急タイムライン情報を移管することを表す移管情報とを送信する。院内情報サーバ29のタイムライン管理部132は、移管情報に基づいて救急タイムライン情報が移管されることを確認し、受信した救急タイムライン情報をタイムラインDB135に格納する。タイムライン管理部132は、図27に示すように、患者Pの救急タイムライン情報の運用を開始し(S52)、救急タイムライン情報に対する診療情報の登録と、クライアント端末に対する救急タイムライン情報の配信とを行う(S53)。
【0130】
また、院内情報サーバ29のタイムライン管理部132は、院内端末27から送信された患者Pの疾病特定情報を受け付けた場合には(S54)、疾病特定情報に含まれている疾病名称に対応した専用タイムライン情報を作成し(S55)、救急タイムライン情報から専用タイムライン情報に診療情報を移行する(S56)。タイムライン管理部132は、救急タイムライン情報と同様に患者Pの専用タイムライン情報の運用を開始し、専用タイムライン情報に対する診療情報の登録と、クライアント端末に対するタイムライン情報の配信とを行う(S57)。
【0131】
本実施形態によれば、患者が病院に搬送された後に、医療支援サーバのタイムライン情報の管理機能を他のサーバに移管するので、都道府県単位という広い医療圏で使用されている医療支援サーバの負荷を減らすことができる。
【0132】
なお、第3実施形態では、院内情報サーバ29にタイムライン情報の格納、診療情報の登録、タイムライン情報の配信機能を移管したが、これらのうちの少なくとも1つを移管するようにしてもよい。
【0133】
上記各実施形態では、消防指令センタに医療支援サーバを設置したが、医療圏内の救急医療センタや、データセンタ、医療圏外のデータセンタなどに設置してもよい。また、患者の病院への搬送完了後にタイムライン情報の管理権能を移管するようにしたが、搬送先病院の決定後に移管してもよい。
【0134】
トリアージ装置として、タッチパネルにより重症度を設定するものを用いたが、例えば従来の紙製のトリアージタグと同様の外観を有するタグ内に、タグを破る位置によって抵抗値などが変化して重症度の設定が可能な回路を設けたトリアージタグを使用してもよい。
【符号の説明】
【0135】
12A、12B、12C 病院
15 救急現場
16 救急車
21 医療支援サーバ
22 トリアージ装置
23 バイタルサイン測定装置
24 診断画像撮影装置
26 救急携帯端末
27 院内端末
28 専門医携帯端末
29 院内情報サーバ
50 タイムライン管理部
51 配信部
53 タイムラインDB
116 タイムライン移管部
図1
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