(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
〈第1の実施の形態〉
[基板温調固定装置の構造]
まず、第1の実施の形態に係る基板温調固定装置の構造について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る基板温調固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図1を参照するに、基板温調固定装置10は、静電チャック20と、接着層31と、断熱層32と、ベースプレート40とを有する。
【0014】
静電チャック20は、基体21と、電極22と、発熱体23と、耐熱層24とを有するクーロン力型静電チャックであり、吸着対象物を吸着保持する機能を有する。静電チャック20は、接着層31及び断熱層32を介して、ベースプレート40上に固定されている。
【0015】
基体21は、基板温調固定装置10の吸着対象物である半導体ウェハ(シリコンウエハ等)等の基板(図示せず)が載置される載置面を有する部材である。基体21は誘電体であり、例えば、Al
2O
3、AlN等のセラミックスを用いることができる。基体21の厚さは、例えば、1〜20mm程度とすることができる。基体21の外径は、例えば、6インチ、8インチ、12インチ、18インチ等とすることができる。
【0016】
基体21の比誘電率(1KHz)は、例えば、9〜10程度、基体21の体積抵抗率は、例えば、10
12〜10
18Ωm程度とすることができる。基体21の載置面は、エンボスタイプの表面形状を有してもよい。基体21の載置面をエンボスタイプの表面形状とすることにより、吸着対象物である基板(図示せず)の裏面側に付着するパーティクルを低減できる。
【0017】
電極22は、薄膜電極であり、基体21に内蔵されている。電極22は、給電部(図示せず)を介して、基板温調固定装置10の外部に設けられた直流電源(図示せず)に接続される。電極22に給電部(図示せず)を介して直流電源(図示せず)から所定の電圧が印加されると、吸着対象物である基板(図示せず)との間にクーロン力が発生し、吸着対象物である基板(図示せず)を基体21の載置面に吸着保持する。吸着保持力は、電極22に印加される電圧が高いほど強くなる。電極22は、単極形状でも、双極形状でも構わない。電極22の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0018】
発熱体23は、基体21の裏面(載置面の反対面)に所定のパターンで直接形成されている。発熱体23は、基板温調固定装置10の外部から電圧を印加されることで発熱し、基体21の載置面が所定の温度となるように加熱する。発熱体23は、例えば、基体21の載置面の温度を250℃〜300℃程度まで加熱することができる。
【0019】
発熱体23の材料としては、例えば、銅(Cu)やタングステン(W)、ニッケル(Ni)等を用いることができる。発熱体23の厚さは、例えば、5〜30μm程度とすることができる。なお、発熱体23を基体21の裏面に直接形成することの効果については、後述する。
【0020】
耐熱層24は、発熱体23を覆うように、基体21の裏面に形成されている絶縁層である。耐熱層24の材料としては、耐熱性(例えば、300℃以上)及び絶縁性に優れた材料を選定することが好ましく、例えば、ポリイミド等の絶縁性樹脂、低融点ガラス、アルミナ、シリカ等の無機系材料をベースにした無機接着材等を用いることができる。耐熱層24の熱膨張率は、基体21の熱膨張率と同程度であることが好ましい。耐熱層24の厚さは、例えば、30〜200μm程度とすることができる。
【0021】
このように、耐熱層24に耐熱温度の高い材料(発熱体23の最高温度に耐える材料)を選定することにより、耐熱層24が発熱体23の最高温度に耐えることが可能になると共に、発熱体23の温度が接着層31及び断熱層32に伝わり難くなる。そのため、接着層31及び断熱層32の材料選定の自由度を向上することが可能となり、例えば、接着層31及び断熱層32には耐熱温度の低い材料(例えば、150℃程度)を選定することができる。
【0022】
接着層31は、静電チャック20をベースプレート40上に固定するために設けられている。接着層31は、静電チャック20の基体21とベースプレート40との熱膨張率差に起因して生じる応力を緩和することができる。接着層31の材料としては、柔軟性に優れた材料を選定することが好ましく、例えば、シリコーン等の絶縁性樹脂を用いることができる。接着層31はフィラーを含有してもよいが、フィラーの含有量が少ない方が柔軟性を向上しやすい。接着層31の厚さは、例えば、50〜500μm程度とすることができる。
【0023】
断熱層32は、発熱体23の発した熱がベースプレート40側に逃げることを防止するために設けられている。断熱層32の材料としては、例えば、フィラーを含有したシリコーン等の絶縁性樹脂を用いることができる。断熱層32において、フィラーの含有量を増やすことにより、断熱性を向上することができる。断熱層32の厚さは、所定の断熱性を有する程度に厚くすることが好ましく、例えば、500〜2000μm程度とすることができる。なお、接着層31と断熱層32とに、同一の絶縁性樹脂を用いる必要はない。
【0024】
ベースプレート40は、静電チャック20を支持するための部材である。ベースプレート40の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)等を用いることができる。ベースプレート40がAlである場合には、その表面にアルマイト層(硬質の絶縁層)を形成しても構わない。ベースプレート40には、水路(図示せず)が設けられており、基体21の温度制御を行う。
【0025】
水路(図示せず)は、基板温調固定装置10の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水を水路(図示せず)に循環させ
る。
【0026】
基体21やベースプレート40の内部に、ガス流路(図示せず)を設けてもよい。基板温調固定装置10の外部に設けられたガス圧力制御装置(図示せず)からガス流路(図示せず)に不活性ガス(例えば、HeやAr等)を注入して、基体21の載置面と基板(図示せず)との間に形成された空間に充填する。充填された不活性ガスは、基体21と基板(図示せず)との間の熱伝導性を向上させ、基板(図示せず)の温度の均一化を図ることができる。
【0027】
[基板温調固定装置の製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る基板温調固定装置の製造方法について説明する。
図2〜
図5は、第1の実施の形態に係る基板温調固定装置の製造工程を例示する図である。なお、
図3及び
図4は、便宜上、
図1とは上下が反転した状態で描かれている。
【0028】
まず、
図2に示す工程では、ベースプレート40上に断熱層32を形成する。具体的には、例えば、フィラーを含有した熱硬化性を有するフィルム状のシリコーン等の絶縁性樹脂をベースプレート40上にラミネートする。そして、ラミネートした絶縁性樹脂を必要に応じて押圧しつつ、硬化温度以上に加熱して硬化させる。
【0029】
又は、例えば、フィラーを含有した熱硬化性を有する液状又はペースト状のシリコーン等の絶縁性樹脂を、例えば印刷法等によりベースプレート40上に塗布する。そして、塗布した絶縁性樹脂を硬化温度以上に加熱して硬化させる。断熱層32を所定の厚さにするために、塗布と硬化を複数回繰り返して、絶縁性樹脂を積層してもよい。
【0030】
断熱層32の厚さは、例えば、500〜2000μm程度とすることができる。なお、ベースプレート40としては、例えば、アルミニウム(Al)を用い、必要に応じて、
図2に示す工程よりも前に、ガス流路や水路等を予め形成しておく。
【0031】
次に、
図3に示す工程では、電極22が内蔵された基体21の一方の面(載置面の反対面となる面)に、発熱体23を直接形成する。まず、電極22が内蔵された基体21を準備する。電極22が内蔵された基体21は、例えば、複数のグリーンシートを準備し、所定のグリーンシートに印刷法やスパッタ法等により所定パターンの電極22を形成し、他のグリーンシートと積層して焼成することにより得られる。
【0032】
発熱体23は、例えば、無電解めっき法により基体21の一方の面の全面に銅(Cu)やニッケル(Ni)等の層を形成し、不要な部分をエッチングで除去することにより形成できる。又は、基体21の一方の面の発熱体23を形成しない部分を予めレジスト層等のマスクで被覆し、マスクで被覆されていない部分のみに無電解めっき法により銅(Cu)やニッケル(Ni)等の層を形成してもよい。
【0033】
又、無電解めっき法に代えて、スパッタ法や蒸着法、溶射法等により、基体21の一方の面に所定パターンの発熱体23を形成してもよい。発熱体23の厚さは、例えば、5〜30μm程度とすることができる。
【0034】
次に、
図4に示す工程では、基体21の一方の面に、発熱体23を覆うように耐熱層24を形成する。耐熱層24を形成するには、
図2に示す工程と同様に、フィルム状の材料をラミネートして硬化させてもよいし、液状又はペースト状の材料を塗布して硬化させてもよい。耐熱層24の材料としては、例えば、ポリイミド等の絶縁性樹脂、低融点ガラス、アルミナ、シリカ等の無機系材料をベースにした無機接着材等を用いることができる。耐熱層24の厚さは、例えば、30〜200μm程度とすることができる。なお、この工程により、静電チャック20が完成する。
【0035】
次に、
図5に示す工程では、
図2に示す構造体の断熱層32上に接着層31を形成し、接着層31を硬化させる前に、接着層31上に静電チャック20を搭載する。その後、必要に応じて静電チャック20をベースプレート40側に押圧しつつ、接着層31を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、
図1に示す基板温調固定装置10が完成する。
【0036】
接着層31を形成するには、
図2に示す工程と同様に、フィルム状の材料をラミネートしてもよいし、液状又はペースト状の材料を塗布してもよい。接着層31の材料としては、例えば、シリコーン等の絶縁性樹脂を用いることができる。接着層31の厚さは、例えば、50〜500μm程度とすることができる。なお、接着層31は、硬化後にも柔軟性を有している。
【0037】
ここで、比較例を示しながら、第1の実施の形態に係る基板温調固定装置10の有する特有の効果について説明する。
図6は、比較例に係る基板温調固定装置を簡略化して例示する断面図である。なお、
図6において、
図1と同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する。
【0038】
図6を参照するに、基板温調固定装置100は、静電チャック200と、断熱層32と、ベースプレート40とを有する。静電チャック200は、基体21と、電極22と、発熱体210と、均熱板220と、接着層230とを有するクーロン力型静電チャックである。静電チャック200は、断熱層32を介して、ベースプレート40上に固定されている。
【0039】
発熱体210は、例えば、タングステン(W)等の発熱抵抗体を絶縁材料で被覆した薄いシート状の発熱体(所謂フィルムヒータ)であり、均熱板220の一方の面に貼り付けられている。均熱板220の他方の面は、接着層230を介して、基体21に接着されている。
【0040】
均熱板220は、発熱体210により加熱される基板(図示せず)に熱分布が発生することを防止し、基板(図示せず)全体の温度を略均一にするために設けられている。均熱板220の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)を用いることができる。均熱板220の厚さは、例えば、2mm程度とすることができる。
【0041】
このように、所謂フィルムヒータは単体では均熱化が困難であるため、均熱板220に貼り付けて使用されることが一般的である。ところで、フィルムヒータの場合、接着層230の耐熱性の問題から、約150℃以上の高温で使用することが困難である。
【0042】
一方、本実施の形態に係る基板温調固定装置10では、フィルムヒータを用いず、無電解めっき法等により基体21の一方の面に直接発熱体23を形成している。この構造では、発熱体23を基体21の一方の面に略均一な厚さに形成でき、熱分布が発生し難いため、均熱板は必要ない。又、発熱体23を断熱層24で覆い、更に断熱層24とベースプレート40との間に接着層31と断熱層32を設けて、発熱体23とベースプレート40との間を3層構造としている。その結果、基板温調固定装置10の使用温度を従来(例えば、150℃程度)よりも高く(例えば、300℃程度)することができる。
【0043】
又、静電チャック20とベースプレート40との間に、柔軟性を有する接着層31を設けている。そのため、加熱時に応力が発生した場合にも、発生した応力を接着層31で緩和することができる。従って、この観点からも、基板温調固定装置10は高温(例えば、300℃程度)での使用に好適である。
【0044】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは接着層の構造が異なる基板温調固定装置の例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0045】
図7は、第2の実施の形態に係る基板温調固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図7を参照するに、基板温調固定装置10Aは、接着層31と断熱層32との積層の順番が反対である点が基板温調固定装置10(
図1参照)と相違する。
【0046】
すなわち、ベースプレート40側に接着層31が形成され、静電チャック20側に断熱層32が形成されている。接着層31及び断熱層32の材料や厚さは、第1の実施の形態と同様とすることができる。
【0047】
接着層31と断熱層32との積層の順番が反対になっても、接着層31及び断熱層32はそれぞれの機能を発揮できる。すなわち、第1の実施の形態と同様に、接着層31は静電チャック20とベースプレート40との熱膨張率差に起因する応力を緩和する機能を発揮できるし、断熱層32は発熱体23の発した熱がベースプレート40側に逃げることを防止する機能を発揮できる。
【0048】
このように、接着層31と断熱層32との積層の順番を反対にしてもよく、この場合にも第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0049】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1の実施の形態とは接着層の構造が異なる基板温調固定装置の他の例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0050】
図8は、第3の実施の形態に係る基板温調固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図8を参照するに、基板温調固定装置10Bは、接着層31と断熱層32が接着層33に置換された点が基板温調固定装置10(
図1参照)と相違する。
【0051】
接着層33は、1つの層のみから構成されている。前述のように、接着層31と断熱層32とに同一の絶縁性樹脂を用いる必要はないが、接着層31と断熱層32とにフィラーの含有量の異なる同一の絶縁性樹脂を用いることもできる。
【0052】
そこで、基板温調固定装置の接着層に要求される柔軟性及び断熱性の仕様によっては、フィラーの含有量を調整した1つの層のみから構成された接着層を用いることができる。例えば、接着層33としては、所定量のフィラーを含有するシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0053】
このように、要求仕様によっては、第1の実施の形態の接着層と断熱層の両方の機能を適度に備えた1層のみから構成された接着層を用いてもよく、この場合にも第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0054】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、各実施の形態及では、本発明をクーロン力型静電チャックに適用する例を示したが、本発明は、ジョンセン・ラーベック型静電チャックにも同様に適用することができる。
【0056】
又、本発明に係る基板温調固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。