(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1段階の前、後または途中において、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えず、前記サセプタ座標から見た前記基板ホルダの回転を停止したまま前記基板を処理する第2段階、
をさらに有する請求項7に記載の表面処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置のように基板を自公転させることで、基板表面での温度分布、原料供給等を均一化でき、成膜速度、エッチングレート等基板表面での処理の結果を均一にすることができる。しかし、特許文献1に記載の装置は、サセプタの回転(公転)をギヤを介して基板ホルダに伝達し基板ホルダを回転(自転)するものであるから、ギヤを複雑に組み合わせる必要がある。複雑なギア構造は、コストを高める要因になる。
【0008】
また、基板を自公転させることで処理の均一性を高めることが可能である。しかし、基板ホルダの回転(自転)に起因して、ギヤからの磨耗粉が生じる場合がある。さらに、サセプタを高速に回転させる場合には、基板ホルダの回転(自転)により、サセプタ表面近傍のガス流れが乱流になり、処理の均一性を乱す可能性がある。すなわち、装置の用途あるいは処理の種類によっては、基板ホルダの回転を停止するメリットが、基板ホルダを回転させるメリットを上回る可能性がある。たとえば、基板の表面処理が半導体層等の層形成である場合、形成される層の種類によっては基板に反りを生じ、基板ホルダ上に設置された基板の設置安定性を低下させる場合がある。特に、サセプタが高速回転している場合に、基板の脱落等が生じる可能性が高くなる。このような場合、基板ホルダの回転を停止するメリットが、基板ホルダを回転させるメリットを上回るといえる。しかし、特許文献1に記載の装置のような従来の自公転機構では、自転駆動のためのギヤが公転運動に連動するギヤと結合されているため、サセプタを回転しつつ基板ホルダの回転を停止することは不可能であった。
【0009】
また、特許文献2に記載の装置のようにサセプタを高速回転することで、基板表面の処理における均一性が向上すると期待できるところ、より高い均一性の獲得を目指して、たとえば、特許文献2に記載の装置に、特許文献1に記載の自公転機構を適用することが考えられる。しかし、特許文献2に記載の装置に特許文献1に記載の自公転機構を単純に適用したとしても、高速回転に耐え得る複雑なギヤ構造の実現は困難であり、特に、減圧環境下での使用が前提となるCVD装置への適用は不可能に近い。
【0010】
さらに、基板の表面処理が、処理に用いる物質(処理剤)の熱反応を伴う場合、処理剤が基板表面に到達する前の反応を抑制するため、基板の加熱を処理剤の供給側とは反対、すなわち基板ホルダの裏側から行わなければならない場合がある。このような場合、特許文献1に記載の装置では、基板ホルダの裏側に複雑なギア構造を有するため、基板の表面あるいはサセプタの表面への熱伝達が不均一になる可能性がある。このため、基板またはサセプタの表面における処理剤の熱反応を伴う表面処理では、処理の不均一さ、たとえば堆積層の厚さの不均一さ、堆積層の質の不均一さなどが発生する可能性があった。
【0011】
本発明の目的は、サセプタ上に複数の基板ホルダを有し、各基板ホルダに保持される基板を自公転させつつ当該基板の表面を処理する表面処理装置において、基板の自公転構造を極めて簡単にすることにある。特に、サセプタを高速に回転させる場合であっても基板の自転が実現できる、単純な基板の自公転機構を備えた表面処理装置を提供することにある。さらに、基板ホルダの裏側から加熱する場合であっても均一な温度分布を実現できる、基板の自公転機構を備えた表面処理装置を提供することにある。また、サセプタを回転しつつ基板ホルダの回転を停止することが可能な自公転機構を備えた表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、基板を支持する基板ホルダと、前記基板の処理面に平行な面と直交する第1直線を回転軸として回転され、前記基板ホルダを支持するサセプタと、前記サセプタを回転させるサセプタ回転機構と、を有する前記基板の表面処理装置であって、前記基板ホルダが、前記サセプタの回転に伴って前記第1直線の周りを回転し、かつ、前記サセプタに固定されたサセプタ座標において不動な直線であって前記第1直線と平行な第2直線を回転軸として回転可能なものであり、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えることで、前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させる表面処理装置を提供する。
【0013】
前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えることで、前記基板ホルダを前記サセプタに固定したサセプタ座標から見て回転させる機構として、前記基板ホルダが、前記第2直線上ではない位置に重心を有する機構が例示される。あるいは、前記サセプタの回転に連動して前記第1直線を回転軸として回転するとともに、前記サセプタとの相対変位が許容された慣性体と、前記慣性体と前記サセプタとの相対変位に応じて前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させる基板ホルダ回転機構と、をさらに有する機構が例示される。
【0014】
前記基板ホルダを前記サセプタに対し回転させる機構に前記慣性体と前記基板ホルダ回転機構を有する場合、前記サセプタが円盤形状を有し、前記第1直線が前記サセプタの中心を通り、前記慣性体が、前記第1直線を回転軸として前記サセプタと同軸かつ同方向に回転するリング状のスライダであり、前記基板ホルダ回転機構が、前記スライダとともに回転する第1歯車と、前記第1歯車に咬み合い、前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させる第2歯車と、を有してもよく、前記スライダと前記サセプタとの相対変位により、前記第1歯車が前記サセプタ座標から見て回転され、当該第1歯車の前記サセプタ座標から見た回転が前記第2歯車を介して前記基板ホルダに伝えられることにより、前記基板ホルダが前記サセプタ座標から見て回転されるものであってもよい。あるいは、前記サセプタが円盤形状を有し、前記第1直線が前記サセプタの中心にを通り、前記慣性体が、前記第1直線を回転軸として前記サセプタと同軸かつ同方向に回転するリング状のスライダであり、前記基板ホルダ回転機構が、前記スライダに固定された第1磁石と、前記基板ホルダの中心以外の位置に固定され、前記第1磁石と引き合うまたは反発し合う第2磁石と、を有するものであってもよい。なお、基板ホルダ回転機構に第1磁石および第2磁石を用いる場合に基板を加熱する加熱手段を併用する場合には、第1磁石および第2磁石は、加熱手段により加熱される温度以上のキュリー点を有する磁石であることが好ましい。
【0015】
前記した表面処理装置は、前記基板を加熱する加熱手段をさらに有してもよく、この場合、前記加熱手段は、前記処理面とは反対側のサセプタ裏側に配置されていることが好ましい。前記サセプタの毎分回転数が、300rpm以上であることが好ましい。前記サセプタの毎分回転数が300rpm以上である場合、前記基板の表面処理に利用されるガスを供給するガス供給手段をさらに有してもよく、前記ガス供給手段が、前記基板の前記処理面に向けて前記ガスを供給し、供給された前記ガスが、前記サセプタの外周に向けて排気されることが好ましい。前記基板ホルダの前記サセプタ座標から見た回転運動を測定する回転モニタをさらに有してもよく、前記サセプタ回転機構が、前記回転モニタの測定結果に応じて前記サセプタの前記回転数を制御してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、前記した表面処理装置を用いた表面処理方法であって、前記基板ホルダに基板を配置する段階と、前記サセプタを回転させ、前記基板ホルダを前記第1直線の周りで回転させる段階と、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えることで、前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させつつ前記基板を処理する第1段階と、を有する表面処理方法を提供する。
【0017】
前記第1段階の前、後または途中において、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えず、前記サセプタ座標から見た前記基板ホルダの回転を停止したまま前記基板を処理する第2段階、をさらに有してもよい。前記第1段階および前記第2段階における前記基板の処理が、前記基板の処理面へのエピタキシャル結晶成長法による半導体層の形成であり、前記第1段階において、半導体デバイスの活性領域として機能する活性層を形成し、前記第2段階において、前記基板と前記活性層との間に位置するバッファ層を形成することが好ましい。
【0018】
本発明の第3の態様においては、駆動力を受けて回転するサセプタと、前記サセプタに固定されたサセプタ座標から見て中心位置が不動かつ回転が可能なように前記サセプタに支持され、前記サセプタの回転に伴い前記サセプタの回転軸の周りを回転する基板ホルダと、を有し、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えることで、前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させる基板支持機構を提供する。
【0019】
前記基板ホルダとして、前記基板ホルダの回転軸上ではない位置に重心を有するものが挙げられる。基板支持機構は、前記サセプタの回転を受けて、前記サセプタと同軸かつ同方向に回転され、前記サセプタとの回転方向における相対的な変位が許容された慣性体と、前記慣性体と前記サセプタとの相対変位に応じて前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させる基板ホルダ回転機構と、をさらに有してもよい。前記慣性体として、前記サセプタと同心に配置されたリング状のスライダが例示され、前記基板ホルダ回転機構として、前記スライダとともに回転する第1歯車と、前記第1歯車に咬み合い、前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させる第2歯車と、を有するものが例示され、この場合、前記スライダと前記サセプタとの相対変位により、前記第1歯車が前記サセプタ座標から見て回転され、当該第1歯車の前記サセプタ座標から見た回転が前記第2歯車を介して前記基板ホルダに伝えられることにより、前記基板ホルダが前記サセプタ座標から見て回転されてもよい。
あるいは、前記慣性体として、前記サセプタと同心に配置されたリング状のスライダが例示され、前記基板ホルダ回転機構として、前記スライダに固定された第1磁石と、前記基板ホルダの中心以外の位置に固定された、前記第1磁石と引き合うまたは反発し合う第2磁石と、を有するものが例示される。
【0020】
本発明の第4の態様においては、前記した基板支持機構を用いた表面処理装置を制御するコンピュータに、前記サセプタを回転させることで、前記基板ホルダを、前記サセプタの回転軸の周りで回転させる機能と、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えることで、前記基板ホルダを前記サセプタ座標から見て回転させつつ前記基板を処理する機能と、を実現させるためのプログラムを提供する。前記プログラムに、前記サセプタの単位時間当たり回転数を変えず、前記サセプタ座標から見た前記基板ホルダの回転を停止したまま前記基板を処理する機能、をさらに実現させてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、表面処理装置100の要部を示した断面図であり、
図2は、表面処理装置100の要部を示した上面図である。表面処理装置100は、平板形の基板の表面を処理する。表面処理装置100は、基板ホルダ110、サセプタ120、サセプタ回転機構130、スライダ140、加熱手段150を有する。加熱手段150は、処理面とは反対側のサセプタ120の裏側に配置され、基板を加熱する。
【0023】
表面処理装置100は、処理の種類に応じた他の構成、たとえば、外界から処理空間を分離するための容器、処理に用いる原料等を容器に供給するための供給手段、処理後に発生する廃液または廃ガスのような排出物を排出する排出手段、あるいは、容器内を減圧状態にするための真空排気手段、等を有するが、これら他の構成は、処理の種類に応じた固有の構成であるので、以下の記述では説明を省略する。
【0024】
基板の表面処理として、洗浄または乾燥のような基板の表面から不要物を除去する処理、酸化、窒化またはシリサイドのような基板の表面で反応させる処理、金属層、半導体層または絶縁層のようなフィルムを基板の表面に形成する処理、または、エッチングもしくはアッシングのような基板に形成したフィルムを全面的にもしくは領域選択的に除去する処理、等が例示される。具体的には、サセプタ120および基板の処理面への熱放射、ガス放射、プラズマ放射、イオン放射、原子放射、原子クラスター放射、UV照射、これらの任意の組み合わせが例示される。これら処理は、処理目的に応じた原料が供給された状態で行われても良い。原料は気体または液体の状態で供給される。これら表面処理の結果として、基板の処理面には、研磨、エッチング、元素拡散、窒化、炭化、酸化、層堆積等が実施される。層堆積には、エピタキシャル成長が含まれる。エッチングの方法として、ICP(Inductively Coupled Plasma)法、RIE(Reactive Ion Etching)法、RCA法、酸またはアルカリ水溶液によるウエットエッチング法が挙げられる。層堆積の方法として、熱CVD(Thermal Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられる。エピタキシャル成長の方法として、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法が挙げられる。
【0025】
基板ホルダ110は、処理対象である基板を保持する。基板ホルダ110は、円盤形状を有し、基板ホルダ110の中央部には座ぐり部112が形成されている。座ぐり部112に平板形の基板を落とし込んで基板を保持することができる。座ぐり部112の平面形状は、保持する基板の外形に応じて任意の形状が選択できる。基板を保持する態様の他の例として、爪のような小さな基板押し付け部材によって基板を抑えつける態様、静電チャックまたは真空チャックにより保持する態様等が挙げられる。被処理部材である基板は、平板形状であることが必要である。当該基板は、シリコン等からなる半導体ウェハあるいは板ガラスのような板状の硬い基板であっても、プラスチックフィルムのような可撓性を有する基板であってもよい。基板ホルダ110には、後に説明するスライダ140の第1歯車と噛み合う第2歯車114が固定されている。
【0026】
サセプタ120は、
図2に示すように円盤形状を有し、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転可能に支持する。サセプタ120が基板ホルダ110を支持する態様として、サセプタ120に形成した穴122に基板ホルダ110を落とし込む態様が例示される。すなわち、基板ホルダ110は、サセプタ120に固定した座標(サセプタ座標)から見て回転が可能なようにサセプタ120に支持され、サセプタ120の回転に伴い回転軸の周りを回転する。つまり、基板ホルダ110は、サセプタ120に対し回転可能であるが、その中心位置はサセプタ120に対し不動に支持される。サセプタ120と基板ホルダ110との接触部124には、摩擦を低減するためのベアリングを配置してもよい。ベアリングに代えて、基板ホルダ110をサセプタ120から僅かに浮上させる磁気浮上機構を設けてもよい。なお、摺動部には、グラファイトまたはボロンナイトライドなどの摺動性に優れる部材を用いても良い。サセプタ120が支持する基板ホルダ110の数として、
図2では4つを例示するが、任意である。基板ホルダ110の数は、1つでも複数でもよい。サセプタ120の外周付近には、後に説明するスライダ140の溝と噛み合うレール126が形成されている。
【0027】
サセプタ回転機構130は、第1直線160を回転軸として、サセプタ120を回転する。第1直線160は、基板の処理面に平行な面、すなわち基板ホルダ110の表面あるいはサセプタ120の表面、と直交する。サセプタ回転機構130は、シャフト132と回転機134とを有する。シャフト132は、サセプタ120の中心に接続され、回転機134の回転力をサセプタ120に伝達する。回転機134は、サセプタ120に伝達する回転力を生成する。サセプタ120がサセプタ回転機構130により回転されることで、基板ホルダ110の全体も第1直線160の周りを回転する。なお、基板ホルダ110は第2直線165を回転軸として回転運動が可能である。第1直線160と第2直線165は平行であるものの、一致はしない。
【0028】
スライダ140は、リング形状を有し、サセプタ120の外周付近に形成されたレール126と噛み合う溝142を有する。溝142は、スライダ140の中央部にリング状に形成され、溝142とレール126とが噛みあうことで、スライダ140をサセプタ120に対し褶動可能に保持する。褶動部分における摩擦を低減するために、溝142またはレール126にベアリング、磁気浮上機構等の褶動性を高める機構を配置してもよい。摺動部を構成する材料として、グラファイトまたはボロンナイトライドなどの摺動性に優れる部材を用いても良い。
【0029】
スライダ140は、サセプタ120に対して運動可能であるが、サセプタ120の外周付近に束縛され、第1直線160を中心に回転する運動だけが許される。すなわち、スライダ140は、サセプタ120と同心に配置され、サセプタ120に対し所定角度の範囲で自由に回転できる。スライダ140は、慣性体の一つであり、サセプタ120の回転運動に連動して、第1直線160の周りを回転するとともに、サセプタ120との相対変位が許容されたものであるといえる。
【0030】
スライダ140は、サセプタ120の回転を受けて、サセプタ120と同軸かつ同方向に回転する。ただし、サセプタ120およびスライダ140は、回転方向における相対的な変位が許容される。つまり、スライダ140は、サセプタ120と同軸かつ同方向に回転するが、スライダ140の単位時間当たり回転数は軸体の単位時間当たり回転数と異なってもよい。スライダ140は、サセプタ120より速く回転してもよく、サセプタ120より遅く回転してもよい。サセプタ120からスライダ140への回転力の伝達は、たとえば、サセプタ120とスライダ140との褶動部における摩擦によって行われる。あるいは、サセプタ120とスライダ140との間の変位量(角度のずれ)が一定以上にはならないようストッパ機構を設けてもよい。
【0031】
サセプタ120からスライダ140への回転力の伝達を褶動部の摩擦で行う場合、スライダ140とサセプタ120との間の摩擦力を増大させる機構を有してよい。この機構を有することによりサセプタ120の回転数を増減(正または負の加速)させた場合に、スライダ140の回転がサセプタ120の回転に対して進んでまたは遅れて回転することを防ぐことができる。また、サセプタ120の回転数の増減に対し、急激に基板ホルダ110が回転することを抑制でき、基板の破損または脱落等を防ぐことができる。摩擦力を増大させる機構として、たとえば、2枚のグラファイト板をグラファイトコイルにより一定の力で押さえつけるような機構が例示される。
【0032】
また、スライダ140は、基板ホルダ110に固定された第2歯車114と噛み合う第1歯車144を有する。第1歯車144はスライダ140に固定され、またはスライダ140と一体に形成されている。第1歯車144と第2歯車114とが噛みあうことで、サセプタ120とスライダ140との相対的な位置変動が基板ホルダ110に伝達され、サセプタ120とスライダ140との変位に応じて基板ホルダ110が回転する。すなわち、第1歯車144および第2歯車114は、スライダ140とサセプタ120との相対変位に応じて基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させる基板ホルダ回転機構といえる。
【0033】
図3から
図5は、表面処理装置100の動作を説明するための要部上面図である。
図3はサセプタ120が一定の角速度(単位時間当たりの回転数)で回転している場合を示し、
図4はサセプタ120の角速度が減少している場合を示し、
図5はサセプタ120の角速度が増加している場合を示している。
図3から
図5において、破線矢印は、紙面に対し静止している座標から見たサセプタ120の動きを示し、実線矢印は、サセプタ120に対し静止している座標から見た基板ホルダ110およびスライダ140の動きを示す。サセプタ120の回転がストッパの作用によりスライダ140に伝達され、十分な角速度を得た後にスライダ140の角速度を一定に維持すれば、慣性の作用によりサセプタ120の角速度が一定に保たれ、
図3に示すように、サセプタ120とスライダ140の相対位置に変動は生じない。このため、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転は生じない。
【0034】
図3に示す状態から、
図4に示すようにサセプタ120の角速度を減少させると、スライダ140はその慣性によりサセプタ120よりも先に進もうとするから、各基板ホルダ110において矢印で示すように、基板ホルダ110がサセプタ120に対して反時計方向に回転する。逆に、
図5に示すようにサセプタ120の角速度を増加させると、スライダ140はその慣性によりサセプタ120よりも遅れるから、各基板ホルダ110において矢印で示すように、基板ホルダ110がサセプタ120に対して時計方向に回転する。すなわち、サセプタ120の単位時間当たり回転数を変えることで、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させることができる。
【0035】
表面処理装置100における基板ホルダ110のサセプタ120に対する回転は、サセプタ120とスライダ140の相対的位置関係に応じた回転であることに大きな特徴がある。すなわち、サセプタ120とスライダ140との相対位置に変化がなければ、基板ホルダ110は、サセプタ120に対して回転しない。また、基板ホルダ110のサセプタ120に対する回転の速度は、サセプタ120の角速度とは関係なく、サセプタ120の角速度の変化量によって制御される。よって、サセプタ120が高速に回転する場合であっても、サセプタ120の角速度を、慣性運動するスライダ140の角速度と同様に一定に維持するよう制御すれば、サセプタ120に対し基板ホルダ110をほぼ静止させることができる。また、サセプタ120の角速度が穏やかに変化するよう制御すれば、基板ホルダ110のサセプタ120に対する回転速度を低くすることができる。
【0036】
すなわち、表面処理装置100によれば、サセプタ120の回転(公転)の速度に関わらず、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転(自転)を停止し、または低速にすることができる。この点、サセプタの回転(公転)駆動力をギヤにより伝達して基板ホルダを回転(自転)する従来の自公転機構とは大きく異なる。従来の自公転機構は、複雑なギヤ構造を有していたため、サセプタの回転(公転)を高速にすることが困難または不可能であったが、表面処理装置100では、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転がサセプタ120の角速度には直接依存しないので、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転を適度な角速度に制御しつつ、サセプタ120の回転を高速にすることができる。また、従来の自公転機構は、サセプタの回転と基板ホルダの回転がギヤを介して結合されており、サセプタを回転させつつ基板ホルダを停止することが出来なかったが、表面処理装置100では、サセプタ120を回転させつつ基板ホルダ110を停止することができる。処理の種類によっては、特段の均一性を求めない場合があり、このような場合に、表面処理装置100では、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転を停止して、第1歯車144あるいは第2歯車114の摩耗による粉末の発生を抑制することができる。
【0037】
以上の通り、表面処理装置100によれば、サセプタ120を回転し、かつ、サセプタ120の単位時間当たり回転数(角速度)を変えることで、単純な構造である第1歯車144および第2歯車114を用いて、基板ホルダ110をサセプタ120に対し、回転することができる。基板ホルダ110に保持される基板は、サセプタ120および基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転により自公転することとなり、ガス流や温度分布等を均一にし、処理速度や処理の質等を均一にすることができる。表面処理装置100の基板ホルダ回転機構(第1歯車144および第2歯車114)は、基板ホルダ110の周辺部に配置されるものであるため、加熱手段150を基板ホルダ110の裏側に配置しても、基板ホルダ回転機構が邪魔にならず、基板加熱を均一に行うことができる。表面処理装置100は、加熱手段150を基板ホルダ110の裏側に配置できるので、基板またはサセプタ120の表面における処理剤の熱反応を伴うような表面処理においても、回転機構が熱反応を妨害することが無い。
【0038】
なお、基板ホルダ110、サセプタ120およびスライダ140の材料は、回転運動に耐え得る強度を有する材料である限り任意である。ただし、処理の種類によっては、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、放射線耐性、紫外線耐性等が必要とされる場合もある。基板ホルダ110、サセプタ120およびスライダ140の材料として、ステンレススチール、石英ガラス、アルミナ、SiC、グラファイト、ボロンナイトライド、シリコンナイトライド、SiCコートグラファイト等が好ましい。また、慣性体であるスライダ140の重量が大きいほど慣性力も大きくなるので、スライダ140の重量が大きいほど基板ホルダ110を駆動するトルクも大きくすることが出来る。このような観点から、スライダ140の材料として比重の大きいものを選択することも可能である。
【0039】
上記した表面処理装置100には、表面処理装置100から独立して把握できる基板支持機構が含まれる。すなわち、表面処理装置100で用いられる基板支持機構は、基板ホルダ110と、サセプタ120と、スライダ140と、第1歯車144および第2歯車114からなる基板ホルダ回転機構とを有してもよい。
【0040】
図6は、表面処理装置100の変形例を示した要部上面図である。
図6に示す変形例では、表面処理装置100における基板ホルダ回転機構(第1歯車144および第2歯車114)に代えて、第1磁石170および第2磁石172を備える。第1磁石170は、スライダ140に固定され、第2磁石172は、基板ホルダ110の中心以外の位置に固定されている。第1磁石170と第2磁石172は、互いに引き合うよう、極性を選択する。なお、第1磁石170および第2磁石172は、加熱手段150により加熱される温度以上のキュリー点を有することが好ましい。
【0041】
第1磁石170および第2磁石172は、第1歯車144および第2歯車114と同様に、サセプタ120およびスライダ140の相対位置に変化が生じた場合に基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転する。よって、第1磁石170および第2磁石172も基板ホルダ回転機構の一例であるといえ、表面処理装置100と同様の効果を奏する。当該変形例は、第1歯車144および第2歯車114を用いる場合と比較して構造が単純であり、歯車の咬み合いによる発塵等の発生を抑制することができる。
【0042】
なお、
図6に示す例では、第1磁石170と第2磁石172とが対向するときに、第1磁石170および第2磁石172として互いに引き合うよう極性が選択されたものを例示した。しかし、第1磁石170と第2磁石172とが対向するときに、第1磁石170および第2磁石172が互いに反発し合うよう極性が選択されたものであってもよい。この場合、スライダ140と基板ホルダ110との位置関係は、
図6に示した状態とは異なり、第1磁石170と第2磁石172との間の距離が最も大きくなる位置で安定する。そして、サセプタ120とスライダ140との相対位置に変化が生じた場合に基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させることができる。ただし、第1磁石170と第2磁石172の間の距離が大きいと、スライダ140(第1磁石170)の動きが第2磁石172に伝わり難いので、第1磁石170と第2磁石172は、「互いに反発し合う」より「互いに引き合う」よう極性が選択されたものである方が好ましい。
【0043】
図7は、表面処理装置100をCVD法に適用した場合のガス流の様子を示した要部断面図である。表面処理装置100をCVD法に適用する場合、容器180で基板ホルダ110、サセプタ120およびスライダ140を囲み、容器180内部の処理空間と外界を分離する。容器180にはガス供給手段182が接続され、ガス供給手段182によりCVDの原料ガスが容器内部に供給される。供給された原料ガスは、ノズル184により基板の処理面に向けて吹きつけられ、排気系186によりサセプタ120の外周に向けて排気され、容器180の外部に排出される。
【0044】
図7のCVD装置(CVD法を適用した場合の表面処理装置100)において、サセプタ120の単位時間当たり回転数は、300rpm以上であることが好ましい。供給された原料ガスは、サセプタ120の中心からサセプタ120の外周に向けて排気されるが、サセプタ120が、たとえば300rpm以上で高速回転している場合、サセプタ120近傍のガス流速は、雰囲気ガスの流速よりも高速となる。このため、ベルヌーイの定理によりサセプタ120上の圧力が周囲より低くなり、基板の処理面でのガス流が乱流にならず層流になりやすくなる。この結果、サセプタ120近傍の原料ガスの均一性を高めることができ、それにより処理の均一性を高めることができる。CVD法による層形成に適用した場合、形成される層の厚さを均一にすることができる。また、層流を形成する処理面での層形成の条件を最適化すれば、処理面以外の場所での意図しない層形成が抑制でき、あるいはパーティクルの発生を抑制できる。この結果、装置のメンテナンス性を高めることができる。
【0045】
図8は、表面処理装置200の要部を示した断面図であり、
図9は、表面処理装置200の要部を示した上面図である。表面処理装置200は、表面処理装置100のスライダ140、第1歯車144および第2歯車114を無くし、基板ホルダ110の慣性を利用して基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転しようとするものである。
【0046】
表面処理装置200においては、基板ホルダ110は、第2直線165と異なる位置に重心を有する。具体的には、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転中心(第2直線165)から外れた位置に質量体202を固定する。基板ホルダ110、サセプタ120、サセプタ回転機構130、加熱手段150については、表面処理装置100と同様である。
【0047】
図10から
図12は、表面処理装置200の動作を説明するための要部上面図である。
図10はサセプタ120が一定の角速度(単位時間当たりの回転数)で回転している場合を示し、
図11はサセプタ120の角速度が減少している場合を示し、
図12はサセプタ120の角速度が増加している場合を示している。
図10から
図12において、破線矢印は、紙面に対し静止している座標から見たサセプタ120の動きを示し、実線矢印は、サセプタ120に対し静止している座標から見た基板ホルダ110の動きを示す。サセプタ120の角速度が一定である場合、基板ホルダ110にかかる力は、サセプタ120の中心から外に向かう遠心力が支配的であり、質量体202の位置は、サセプタ120の外方に向かう位置で安定する。
【0048】
図10に示す状態から、
図11に示すようにサセプタ120の角速度を減少させると、質量体202によって、重心と中心位置とが異なる基板ホルダ110の全体に、サセプタ120の回転方向とは逆の加速度が加わるので、基板ホルダ110にトルクTが発生する。この結果、各基板ホルダ110において実線矢印で示すように、基板ホルダ110がサセプタ120に対して反時計方向に回転する。逆に、
図12に示すようにサセプタ120の角速度を増加させると、基板ホルダ110の全体に、サセプタ120の回転方向の加速度が加わるので、基板ホルダ110に、先の場合とは逆方向のトルクT’が発生する。この結果、各基板ホルダ110において実線矢印で示すように、基板ホルダ110がサセプタ120に対して時計方向に回転する。すなわち、表面処理装置100の場合と同様に、サセプタ120の単位時間当たり回転数を変えることで、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させることができる。
【0049】
表面処理装置200においては、表面処理装置100のように、第1歯車と第2歯車を用いて基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転するのではなく、サセプタ120の回転の変化による弾みでを基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転するものである。よって、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転における正確性には若干欠ける可能性がある。しかし、表面処理装置100より構造が簡単であり、コスト競争力およびメンテナビリティに優れる効果がある。表面処理装置100について前記したその他の効果は、表面処理装置200においても同様に得られる。なお、
図7で説明した表面処理装置100の場合と同様に、表面処理装置200をCVD装置に適用することも可能である。
【0050】
上記した表面処理装置100または表面処理装置200では、1つのサセプタ120について基板ホルダ110が4つ備えられた例を説明したが、基板ホルダ110の数は任意である。基板ホルダ110は、複数であってもよく、単数であってもよい。基板ホルダ110が複数である場合、複数の基板ホルダ110は、それぞれが独立に回転運動してもよく、スライダ140等の慣性体を介して連動してもよい。
【0051】
上記した表面処理装置100または表面処理装置200では、1つの基板ホルダ110につき基板が1枚の場合を例示したが、基板ホルダ110には、複数の基板が保持されてもよい。基板ホルダ110に複数の基板が保持される場合、各基板は、基板ホルダ110に固定された座標から見て回転されてもよい。つまり、前記したサセプタ120の回転に応じて基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転する基板ホルダ回転機構と同様の回転機構を基板ホルダ110にも備え、当該回転機構によって基板ホルダ110に保持した複数の基板のそれぞれを回転してもよい。
【0052】
基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転運動(基板ホルダ110に複数の基板を有し、当該基板が回転する場合は当該基板の回転運動を含む。以下同様。)は、1周未満であってもよく、正回転および逆回転の交互運動であってもよい。基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転方向は、サセプタ120の回転方向と同じであってもよく、逆であってもよい。基板ホルダ110の運動は、振り子運動であっても良い。基板ホルダ110は、連続的に回転されてもよく、断続的に回転されても良い。断続的に基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転する場合であっても、処理の均一性の向上が期待できる。
【0053】
上記した表面処理装置100または表面処理装置200において、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転運動を測定する回転モニタをさらに有してもよい。この場合、サセプタ回転機構130が、回転モニタの測定結果に応じてサセプタ120の回転数を制御することができる。回転モニタとして、基板ホルダ110上に配置した基板の画像を、外部から観察する態様が例示される。この場合、サセプタ120の回転に同期した時間窓での基板の画像を解析し、オリエンテーションフラットの位置を画像解析により検知できる。検出したオリエンテーションフラットの位置から、サセプタ座標から見た基板の回転角が算出できる。あるいは、回転モニタとして、基板の回転角に応じた位置に配置した光センサアレイが例示される。光センサは、たとえば出射光としてレーザ光を発し、反射光を観察する。基板と基板ホルダとでは光の反射率が異なるので、各位置に配置した光センサアレイからの出力を比較すればオリエンテーションフラットに対応するセンサが特定できる。当該特定されたセンサの位置から、サセプタ座標から見た基板の回転角が検出できる。
【0054】
上記した表面処理装置100または表面処理装置200を用いた表面処理方法として、以下のような方法が例示される。すなわち、サセプタ120に支持された基板ホルダ110に基板を配置し、サセプタ120を、基板の処理面に平行な面と直交する第1直線160を回転軸として回転し、基板ホルダ110を、第1直線160の周りで周回運動する。次に、サセプタ120の単位時間当たり回転数を変えることで、第1直線160と平行な第2直線165を回転軸として基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させつつ、基板の処理面を処理する。このような処理方法により、表面処理装置100または表面処理装置200を用いて、基板の表面を均一に処理できる。
【0055】
なお、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させつつ基板を処理する前、後または途中に、サセプタ120とスライダ140との回転方向における相対位置を変化させないことで基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させず、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転を停止したまま基板を処理することもできる。これにより、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転する必要性が低い場合に、発塵の防止等を図ることができる。
【0056】
基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させつつ基板を処理する第1処理と基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転を停止したまま行う基板を処理する第2処理が、基板の処理面へのエピタキシャル結晶成長法による半導体層の形成である場合、第1処理において、半導体デバイスの活性領域として機能する活性層を形成し、第2処理において、基板と活性層との間に位置するバッファ層を形成することができる。半導体デバイスが電界効果トランジスタである場合、バッファ層として、ストレス制御、電気抵抗増強その他の目的のために形成される中間層が例示される。第1処理において活性層を形成することにより、膜厚均一性に優れた活性層が形成でき、電子デバイスの性能を高めることができる一方、第2処理においてバッファ層を形成することにより、発塵を抑制し、また、基板の反りによる基板ホルダ110から基板が脱離する危険を低減することができる。
【0057】
また、上記した表面処理方法は、表面処理装置100または表面処理装置200をコンピュータ制御する場合に、プログラムの発明として把握することもできる。すなわち、表面処理装置100または表面処理装置200を制御するコンピュータに導入できるプログラムであって、当該プログラムにより、サセプタ120を回転することでスライダ140を回転し、基板ホルダ110を、サセプタ120の回転軸の周りで周回運動させる機能と、サセプタ120とスライダ140との回転方向における相対位置を変えることで、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させつつ基板を処理する機能と、を実現させることができる。当該プログラムは、表面処理装置200を制御するコンピュータに、サセプタ120とスライダ140との回転方向における相対位置を変化させないことで基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させず、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転を停止したまま基板を処理する機能をさらに実現させることもできる。
【0058】
(実施例1)
表面処理装置100をMOCVD装置として利用し、窒化ガリウム結晶層をエピタキシャル結晶成長法により形成した。基板として、4インチサファイヤ基板上にGaN層を付与したテンプレートを用いた。オリエンテーションフラット(OF)がサセプタ120の外周側を向くように、基板(テンプレート)を基板ホルダ110にセットし、成長室内にキャリアガスとして水素ガスを導入した。加熱手段150によりサセプタ120および基板ホルダ110を加熱した。基板の表面温度が500℃に達したところでサセプタ120の回転を開始し、V族原料であるアンモニアの供給を開始した。サセプタ120の回転数は500rpmとした。
【0059】
基板の表面温度が1050℃に達した時点で、III族原料であるトリメチルガリウムの供給を開始した。同時に、サセプタ120の単位時間当たり回転数を
図13に示すように制御した。
図13は、実施例1におけるサセプタの回転シーケンスを説明する図である。図示するようにサセプタ120の回転に変調を与えながら、窒化ガリウム結晶の厚さが1μmになるまでエピタキシャル成長を行った。サセプタ120の回転数の変調により、基板ホルダ110が正回転と逆回転を反復的に繰り返すことが、装置のビューポートから目視により確認できた。エピタキシャル成長の終了後、原料ガスの供給を停止し、基板を冷却し、容器内を窒素ガスで置換した後に、基板を取り出した。取り出した基板に形成された窒化ガリウム結晶の厚さを、光学式の厚さ計(thickness meter)により測定した。なお、厚さの測定において、テンプレートの一部として付与されていたGaN層の厚さを予め測定しておき、エピタキシャル成長の前後における厚さ測定の差分から、表面処理装置100をにより形成した窒化ガリウム結晶の厚さを求めた。
【0060】
図14は、実施例1における堆積層の厚さ分布を示すグラフである。厚さの測定箇所は、グラフ右下に示したように、基板の中央部を通る、オリエンテーションフラット(OF)に平行な線に沿った点である。実施例1の実測点は、図において四角のプロットで示す。比較のため、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させなかった場合のデータを比較例1(菱形のプロット)として示した。厚さのばらつき(標準偏差/平均値)は、比較例1の場合で4.3%であるのに対し、実施例1の場合は、1.2%であった。表面処理装置100の自公転機構により、エピタキシャル成長法により形成した窒化ガリウム結晶の厚さの均一性が向上することを確認した。
【0061】
(実施例2)
表面処理装置200を電子ビーム蒸着装置として利用し、Ti層を蒸着法により形成した。基板として、4インチSiウェハを用いた。オリエンテーションフラット(OF)がサセプタ120の外周側を向くように、基板を基板ホルダ110にセットし、成長室を1×10
−6torrになるまで減圧した。その後、カーボン坩堝内のTi原料に電子ビームを照射し、Ti蒸気を発生させた。次いでサセプタ120の単位時間当たり回転数を
図15に示すように制御した。
図15は、実施例2におけるサセプタの回転シーケンスを説明する図である。サセプタ120回転数の変調により、基板ホルダ110のサセプタ座標から見た回転を繰り返す様子が装置のビューポートから目視で確認できた。ついでシャッターを開け、蒸着を行った。蒸着の終了後、装置内から基板を取り出した。形成されたTi層を部分的にHFでエッチングにより除去し、段差測定によりTi層の厚さを測定した
【0062】
図16は、実施例2における堆積層の厚さ分布を示すグラフである。厚さの測定箇所は、グラフ左上に示したように、基板の中央部を通る、オリエンテーションフラット(OF)に垂直な線に沿った点である。実施例2の実測点は、図において四角のプロットで示す。比較のため、基板ホルダ110をサセプタ座標から見て回転させなかった場合のデータを比較例2(菱形のプロット)として示した。厚さのばらつき(標準偏差/平均値)は、比較例2の場合で8.0%であるのに対し、実施例2の場合は、1.8%であった。表面処理装置200の自公転機構により、蒸着法により形成したTi層の厚さの均一性が向上することを確認した。