(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体素子には、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)などがある。LEDには、例えば、III族元素とV族元素との化合物からなるIII−V族半導体が用いられる。
【0003】
III族元素としてAl,Ga,In等を用い、V族元素としてNを用いたIII族窒化物半導体は、高融点で窒素の解離圧が高くバルク単結晶成長が困難であり、大口径で安価な導電性単結晶基板が無いという理由から、サファイア基板上に成長させることにより形成するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、サファイア基板は絶縁性であって電流が流れないため、発光ダイオードは従来、サファイア基板上に順に成長させたn型のIII族窒化物半導体層、活性層(発光層)およびp型のIII族窒化物半導体層からなる半導体積層体の一部を除去してn型のIII族窒化物半導体層を露出させ、この露出させたn型のIII族窒化物半導体層およびp型のIII族窒化物半導体層の上にn型電極およびp型電極をそれぞれ配置して、電流を横方向に流す横型構造を採用するのが通常であった。
【0005】
これに対し、近年、サファイア基板上にIII族元素(例えばAl,Gaなど)以外の特定の元素からなるバッファ層を形成後、発光層を含む半導体積層体を形成し、この半導体積層体を導電性のサポート体で支持した後、バッファ層を化学的なエッチングにより選択的に溶解してサファイア基板を剥離(リフトオフ)し、これらサポート体と半導体積層体を一対の電極で挟むことで、縦型構造のLEDチップを得る技術が研究されている。なお、ここで言うバッファ層は、半導体積層体のエピタキシャル成長のためのバッファ層であるとともに、サファイア基板から半導体積層体を剥離するためのリフトオフ層の役割も兼ねるものである。
【0006】
このような構造のIII族窒化物半導体LEDチップを作製するには、リフトオフ層を特定のエッチング液でエッチングすることでサファイア基板からエピタキシャル層を剥離するケミカルリフトオフ法が用いられる。なお、エピタキシャル層から成長用基板をリフトオフするという表現でも良い。
【0007】
リフトオフ層としてCrNを用いる方法が報告されている(特許文献1)。特許文献1には、サファイア基板上に、CrNからなるリフトオフ層を介してIII族窒化物からなる複数個の発光構造部を形成する工程と、これら発光構造部を一体支持する導電性サポート体をCuメッキ法により形成する工程と、導電性サポート体に設けた貫通孔を介してエッチング液を供給して、リフトオフ層を除去することで、成長用基板を半導体構造部から剥離する工程と、半導体構造部間で導電性サポート体を切断してLEDチップを得る個片化工程と、を有するIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップの製造方法が記載されている。
【0008】
一方、CrN以外の材料でリフトオフ層を構成する技術も開発されつつある。例えば、特許文献2には、ZrまたはHfからなる単一金属層をリフトオフ層とする技術が、特許文献3にはスカンジウム窒化物(ScN)膜をリフトオフ層とする技術が、それぞれ記載されている。CrN以外の材料をリフトオフ層とする理由は、青色よりも短波長領域(例えば波長が400nm以下)を発光するLEDチップを得るためである。すなわち、発生させる光の波長を短波長化するほど、窒化物半導体素子のAl
xGa
1−xN層のAl組成xを大きくする必要がある。概ねAl組成が30原子%を超えるAlGaNの成長温度は、CrNの融点である1050℃程度を超える。このため、CrN層上にこのような高Al組成のAlGaNを成長させると、高温度環境下でCrNが溶融する結果、サファイア基板上にCrNが偏在し、サファイア基板に直接AlGaNが成長する箇所がでてくる。そのため、ケミカルリフトオフが困難となる。一方、特許文献2,3に記載の材料をリフトオフ層とすれば、その上に成長温度が高い高Al組成のAlGaNを成長させても、リフトオフ層が溶融しないため、このリフトオフ層を除去することで、短波長を発光するLEDチップを得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CrNからなるリフトオフ層の場合、例えば硝酸第二セリウムアンモン溶液、
フェリシアンカリウム系の溶液など、CrNのみをエッチング可能な選択エッチング液がある。しかしながら、CrN以外の材料、例えば特許文献2,3に記載されたZr、Hf、またはScNからなるリフトオフ層の場合、フッ酸系エッチング液、あるいは塩酸、硝酸、有機酸などの酸性エッチング液を用いてリフトオフ層を除去していた。ここで、III族窒化物層はこれらのエッチング液に対する耐性があるものの、例えば、導電性サポート体をメッキ法によりCuで形成した場合、これらのエッチング液は、リフトオフ層のみならず、Cuからなる導電性サポート体をも溶解する。Cuのように導電性が高く比較的安価な金属材料は耐酸性も低いからである。そのため、適切なLEDチップを得ることができないという問題があった。
【0011】
また、このとき導電性サポート体をメッキ法によりAuや白金族の金属で形成すれば、上記の酸性エッチング液に対して溶解することもなく、リフトオフ層のみを除去してLEDチップを得ることができる。しかし、導電性サポート体をAuや白金族の金属のみで構成する場合、材料費が高価になり好ましくない。
【0012】
このような問題は、III族窒化物半導体縦型構造LEDチップにかかわらず、あらゆるケミカルリフトオフ法を使用して作製する半導体素子の量産化においても、リフトオフ層の材料選択の自由度を確保するという観点から解決すべき重要な課題である。
【0013】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、適切な選択エッチング液がない材料をリフトオフ層とした場合でも、当該リフトオフ層のエッチング液に侵食されることのない導電性サポート体を有する半導体素子集合体および半導体素子を、コストを抑えたまま製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このようにして製造した半導体素子集合体および半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)成長用基板の上にリフトオフ層および半導体層をこの順に形成する工程と、
該半導体層の一部を除去して、前記成長用基板または前記リフトオフ層の一部が底部で露出する溝を形成することで、互いに独立した複数個の半導体構造部を形成する工程と、
複数個の前記半導体構造部を一体支持する導電性サポート体をメッキ法により形成するメッキ工程と、
所定のエッチング液で前記リフトオフ層を除去することで、前記成長用基板を前記複数個の半導体構造部から剥離するケミカルリフトオフ工程と、
を有し、
前記メッキ工程は、前記導電性サポート体が、前記エッチング液に溶解する第1の金属を前記エッチング液に溶解しない第2の金属で包含し、かつ、該第2の金属の中に前記溝に連通する貫通孔を形成するように行われ、
前記ケミカルリフトオフ工程では、前記貫通孔を介して前記エッチング液を前記溝に供給すること
により半導体素子集合体
を得、
前記半導体素子集合体の前記半導体構造部間の前記第2の金属を切断することにより、各々が前記第2の金属で前記第1の金属を包含した切断後の導電性サポート体に支持された前記半導体構造部を有する複数個の半導体素子に個片化する工程を有することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【0015】
(2)前記メッキ工程は、
前記半導体構造部上に前記第2の金属による第1メッキ層を形成する工程と、
前記第1メッキ層上の一部分に前記第1の金属による第2メッキ層を形成する工程と、
該第2メッキ層および該第2メッキ層の形成されていない前記第1メッキ層の上に、前記第2の金属による第3メッキ層を形成する工程と、
を有する上記(1)に記載の半導体素子集合体の製造方法。
【0016】
(3)前記第2メッキ層は、複数の前記半導体構造部のそれぞれの上方に島状に形成する上記(2)に記載の半導体素子集合体の製造方法。
【0017】
(4)前記第1メッキ層および前記第3メッキ層が同じ種類の金属からなる上記(2)または(3)に記載の半導体素子集合体の製造方法。
【0018】
(5)前記メッキ工程は、前記貫通孔を形成する部位にレジストを埋めた状態で行う上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の半導体素子集合体の製造方法。
【0019】
(6)前記第1の金属が、CuまたはNiである上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の半導体素子集合体の製造方法。
【0020】
(7)前記第2の金属が、Auまたは白金族の金属である上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の半導体素子集合体の製造方法。
【0022】
(
8)導電性サポート体と、該導電性サポート体上に一体支持され、互いに独立した複数個の半導体構造部と、を有し、
前記導電性サポート体が、CuまたはNiからなる第1の金属と、該第1の金属を包含するAuまたは白金族の金属からなる第2の金属とを有し、かつ、前記第2の金属の中の前記半導体構造部を支持しない位置に貫通孔を有することを特徴とする半導体素子集合体。
【0023】
(9)前記第
1の金属が、複数の前記半導体構造部のそれぞれの上方に島状に位置する上記(8)に記載の半導体素子集合体。
【0024】
(
10)導電性サポート体と、該導電性サポート体上に設けられた半導体構造部と、を有し、
前記導電性サポート体が、CuまたはNiからなる第1の金属と、該第1の金属を包含するAuまたは白金族の金属からなる第2の金属とを有し、かつ、前記第2の金属で構成される側面のいずれかの位置に厚み方向に延びる溝を有することを特徴とする半導体素子。
【0025】
なお、溶解するとは、体積が減少することだけでなく、表面に高抵抗の酸化膜を形成して表面を改質しなければ電気的接続の抵抗が高くなる反応も含む。逆に、溶解しないとは、表面が安定で電気的接続に悪影響を及ぼす反応をおこさないことを含む。実装時、導電性サポート体に電気的接続が必要だからである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、導電性サポート体が、リフトオフ層除去用のエッチング液に溶解する第1の金属をこのエッチング液に溶解しない第2の金属で包含し、かつ、この第2の金属の中にエッチング液供給用の貫通孔を有する構成とした。そのため、ケミカルリフトオフ工程において、貫通孔を介してエッチング液を供給しても、導電性サポート体がエッチング液に侵食されることがない。また、導電性サポート体の全体を第2の金属で構成する場合に比べて、導電性サポート体のコストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、半導体素子の模式断面図においては、説明の便宜上、リフトオフ層および半導体積層体を実状とは異なる比率で厚み方向に誇張して示す。
【0029】
(半導体素子集合体の製造方法)
本発明の一実施形態にかかる半導体素子100の製造方法を、
図1および
図2により説明する。まず、
図1と
図2との対応関係を先に説明する。
図2(a)は、
図1(b)に示した状態の模式上面図であり、
図2(a)のI−I断面が
図1(b)に相当する。なお、
図1(b)以外の
図1の断面図も同様の位置でのものである。
図2(b)は、
図1(g)に示した状態の上面図である。
図2(c)は、
図1(h)に示した状態の上面図である。
図2(d)は、
図1(i)に示した状態の横断面図である。
【0030】
まず、
図1(a)に示すように、成長用基板102の上にリフトオフ層104および半導体層106をこの順に形成する。本実施形態では、リフトオフ層104はScNからなるものとする。
【0031】
次に、
図1(b)および
図2(a)に示すように、半導体層106の一部を除去して、成長用基板102の一部が底部で露出する溝108を格子状に形成することで、互いに独立した複数個の半導体構造部110を形成する。本実施形態では、反応性イオンエッチング(RIE)によるパターニングを2段階に分けて行い、
図1(b)に示すような断面形状の半導体構造部110を形成する。
【0032】
本実施形態では、
図1(c)に示すように、例えばNi,Cu,CrまたはWからなる犠牲層112を形成して、溝108を埋める。犠牲層112は、後述の貫通孔を介して所定のエッチング液により除去される。その結果、リフトオフ層104を除去するためのエッチング液を各半導体構造部110の周辺部からリフトオフ層104へと供給するための空間が形成される。
コメント:本段落に補充いただいた内容は、後ろの段落にしました。
【0033】
本実施形態では、引き続き
図1(d)に示すように、各半導体構造部110の側面に絶縁膜114を形成する。絶縁膜114は、半導体構造部110の厚み方向を流れる電流が側面からリークするのを防ぐものである。
【0034】
本実施形態では、引き続き
図1(e)に示すように、各半導体構造部110の主表面および絶縁膜114で覆われた側面の上に、各半導体構造部110と接するオーミック電極層116を形成する。
【0035】
次に、複数個の半導体構造部110を一体支持する導電性サポート体をメッキ法により形成するメッキ工程を行う。
【0036】
本実施形態では、まず、
図1(f)に示すように、オーミック電極層116を覆うように半導体構造部110上にメッキシード層118を形成する。メッキシード層118は、TiとAuによる2層構造(Ti/Au)を有する。
【0037】
その後、
図1(g)に示すように、メッキシード層118のAu層から第2の金属としてのAuを電解メッキにより成長させ、半導体構造部110上にAuによる第1メッキ層120を形成する。このとき、
図2(b)にも示すように、第1メッキ層120は、厚み方向に成長するとともに隣接する半導体構造部110間で結合する一方、各半導体構造部110の角部においてはメッキが結合せず、孔122が形成される状態でメッキ成長を止める。
【0038】
その後、
図1(h)に示すように、第1メッキ層120上の一部分に第1の金属としてのCuによる第2メッキ層128を形成する。具体的にはまず、
図2(c)にも示すように、第1メッキ層120上の一部にレジスト126を形成する。このとき、孔122もレジスト124で塞がれる。その後、レジスト126に被覆されず、露出した第1メッキ層120からCuを電解メッキにより成長させ、第2メッキ層128を形成する。本実施形態では、
図1(h)および
図2(c)に示すように、第2メッキ層128は、複数の半導体構造部110のそれぞれの上方に島状に形成する。
【0039】
その後、
図1(i)および
図2(d)に示すように、レジスト126を除去し、各半導体構造部110の角部に対応する位置にのみ柱状のレジスト126Aを改めて形成する。レジスト126Aは、第1メッキ層120中のレジスト124とともに、後述の貫通孔が形成される部位である。本実施形態ではさらに、島状の第2メッキ層128の表面上に、Niを無電解メッキにより形成し、Niメッキ層130を形成する。これは、Cu上に直接Auをメッキ成長させることができない一方、Ni上であればAuを成長させることができるからである。
【0040】
その後、
図1(j)に示すように、第2メッキ層128およびこの第2メッキ層128の形成されていない第1メッキ層120A(
図1(i)および
図2(d)に図示)の上に、第2の金属としてのAuを電解メッキにより成長させ、第3メッキ層132を形成する。このようにして、第1の金属が第2の金属によって包含された導電性サポート体134が形成される。
【0041】
そして、レジスト124,126Aを除去することにより、
図1(k)に示すように貫通孔136を形成する。このように、メッキ工程は、貫通孔136を形成する部位にレジスト124,126Aをあらかじめ埋めた状態で行われる。続いて、所定の選択エッチング液を用いて、犠牲層112を除去し、リフトオフ層104へとエッチング液を供給するための空間(溝108)を形成する。
【0042】
次に、ケミカルリフトオフ工程を行う。すなわち、
図1(k)に示すように、ウェハ全体を所定のエッチング液に浸漬し、貫通孔136を介してこのエッチング液を溝108に供給することで、リフトオフ層104を除去する。本実施形態では、ScNからなるリフトオフ層104を除去するべく、塩酸、硝酸、有機酸などの酸性エッチング液を用いる。これにより、
図1(l)に示すように、成長用基板102を複数個の半導体構造部110から剥離することができる。
【0043】
このようにして半導体素子集合体100を製造する。ここで、第1の金属であるCuは、リフトオフ層104を除去するための上記の酸性エッチング液に多少なりとも溶解する一方、第2の金属であるAuは溶解しない。つまり、
図1(f)〜
図1(k)に示したメッキ工程の結果、
図1(k)および
図1(l)に示すように、エッチング液に溶解する第1の金属128をエッチング液に溶解しない第2の金属120,132で包含し、かつ、この第2の金属132の中に溝108に連通する貫通孔136を形成するように、導電性サポート体134が形成され、この点が本発明の特徴的工程である。
【0044】
このような特徴的工程を採用したことの技術的意義を作用効果とともに説明する。本実施形態によれば、導電性サポート体134の表面は、貫通孔136の内表面を含めて全てAuや白金族の金属となる。そのため、ケミカルリフトオフ工程において、貫通孔136を介して塩酸などの酸性エッチング液を供給しても、導電性サポート体134がエッチング液に侵食されることがない。また、導電性サポート体134の内部には、Auや白金族の金属よりも安価なCuからなる部位が存在する。そのため、導電性サポート体の全体をAuや白金族の金属で構成する場合に比べて、導電性サポート体のコストを抑えることができる。酸性溶液に溶解しない金属、すなわち耐酸性に強い第2の金属と酸性溶液に溶解する第1の金属とを比較すると、一般的に前者が後者よりも高価である。そのため、導電性サポート体134のうちエッチング液に接触しうる部分には第2の金属を設けつつ、エッチング液に接触しない部位には第1の金属を設ける。これにより、導電性サポート体のエッチング液に対する耐食性とコストとを両立しようとするものである。
【0045】
なお、本発明においては、少なくとも上記のケミカルリフトオフ工程の際において第1の金属を第2の金属で包含する状態であれば足り、後述の半導体構造部110間で導電性サポート体134を切断する工程後に第1の金属が切断面で部分的に露出することがあっても構わない。ただし、半導体素子の耐候性を向上するため、切断する工程の後も第1の金属が第2の金属により包含されていることが好ましい。すなわち、電解メッキでの導電に必要な各半導体構造部110間での電気的結合は、メッキシード層および第1メッキ層によって形成すればよく、第2メッキ層の形成は切断予定箇所に形成するレジストによって隔離された各半導体構造部110の上の閉じた領域の中でメッキすればよい。
【0046】
(半導体層形成工程)
成長用基板102は、サファイア基板またはサファイア基板上にAlN膜を形成したAlNテンプレート基板を用いるのが好ましい。形成するリフトオフ層の種類やIII族窒化物半導体からなる半導体積層体のAl、Ga、Inの組成、LEDチップの品質、コストなどにより適宜選択すればよい。
【0047】
リフトオフ層104は、エッチング液で溶解できる材料であれば特に限定されず、CrNなどのIII族以外の金属や金属窒化物バッファ層を挙げることができる。ただし、適切な選択エッチング液のない材料を用いると本発明の効果を好適に享受することができる。そのような材料として、例えば、Hf,Zr,ScN,
TiNなどを挙げることができる。リフトオフ層104は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法やMOCVD法で成膜することができる。通常、リフトオフ層104の膜厚は2〜100nm程度とする。
【0048】
半導体層106は、ケミカルリフトオフ法により製造する半導体素子であれば、その材料や層構成は特に限定されず、1層でもよいし、2層以上であってもよい。半導体構造部が発光層を含めばLEDとなり、含まない場合は他の半導体素子となる。半導体層106は、例えばMOCVD法によりリフトオフ層104上にエピタキシャル成長させることができる。通常、半導体層106の膜厚は0.5〜50μm程度とする。例えば、リフトオフ層104上に、第1伝導型のIII族窒化物半導体層、発光層および第1伝導型とは異なる第2伝導型のIII族窒化物半導体層を順次積層して半導体層として、本発明の半導体素子をIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップとすることができる。この場合、第1伝導型をn型とし、第2伝導型をp型としてもよいし、この逆であってもよい。また、半導体層106は、例えば、AlInGaN系、AlInGaPAs系のIII−V族や、ZnOなどのII−VI族としてもよい。
【0049】
(溝形成工程)
半導体層106の一部の除去には、ドライエッチング法を用いるのが好ましい。これは、半導体層106のエッチングの終点を再現性良く制御できるからである。また、半導体層106が繋がった状態であると、後工程においてエッチング液でリフトオフ層104をエッチングすることができないため、この除去は、少なくとも成長用基板またはリフトオフ層が露出するまで行うものとする。上記の本実施形態では、溝108の底部ではリフトオフ層104は除去され、成長用基板102が完全に露出する例を示した。
【0050】
本実施形態において半導体構造部110の横断面形状は四角形で示したが、半導体構造部110の形状は特に限定されず、円形でも、多角形でもよい。ただし、半導体素子を個片化する工程において、レーザーダイシング装置などにより溝108を直線で切断しやすいように、半導体構造部110は縦横に整列していることが好ましい。
【0051】
半導体構造部110の横断面が四角形の場合、1辺の長さは特に限定されないが、250〜3000μm程度とすることができる。また、溝108の直線部位における幅は、40〜200μmの範囲内とすることが好ましく、60〜100μmの範囲内とすることがより好ましい。40μm以上とすることにより、溝108へのエッチング液の供給を十分に円滑に行うことができ、200μm以下とすることにより、発光面積のロスを最小限に抑えることができるからである。
【0052】
犠牲層112は、第2の金属およびメッキシード層118と異なる材料であり、かつ、これらの金属をエッチングしないエッチング液により除去可能な金属または樹脂等の材料から選択でき、例えば、使用可能な金属としては、Ni,Cu,CrまたはWが挙げられる。例えばWをスパッタリング法で0.1〜0.3μm成膜し、通常のフォトリソグラフでパターニングを行う。犠牲層112の除去は、その材料に適した選択エッチング液を用いて行えばよく、例えば、過酸化水素水、塩酸、硝酸、有機酸などの酸性エッチング液や硝酸第二セリウムアンモン溶液などが挙げられる。
【0053】
絶縁膜118は、例えばSiO
2やSiNを用いることができる。絶縁膜の形成はプラズマCVD法で行い、100〜500nmの膜厚とするが、電子ビーム(EB)蒸着等によってもよい。
【0054】
オーミック電極層116は、仕事関数の大きな金属、例えばPd,Pt,Rh,Au,Agなどの貴金属やCo,Niにより形成することができる。また、オーミック電極層116とメッキシード層118との間にさらに反射層を形成するか、オーミック電極層116が反射層の機能を兼ねることがより好ましい。これらの層形成には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法を用いることができる。反射層としては、Rh等の反射率が高いため好ましく、オーミック電極層との兼用も可能である。また、発光領域が可視領域の場合にはAgやAl層等を、紫外線領域の場合にはRhやRu層等を用いるのがより好ましい。
【0055】
(メッキ工程)
導電性サポート体134は、下部電極を兼ねることができる。導電性サポート体134は、電解メッキや無電解メッキ等の湿式メッキを主体として形成するが、導電性サポート体134の一部やメッキシード層の形成には真空蒸着法やスパッタリング法などを用いる。
【0056】
メッキシード層118の成長用基板側(半導体構造部側)は、オーミック電極層116との密着性が十分な金属、例えばTiを用いるのが好ましい。また、メッキシード層118の表面(導電性サポート体134側)は、Auや白金族の金属から適宜選択することができる。メッキシード層118としてこれらの金属を用いれば、リフトオフ層を除去するエッチング液にメッキシード層が接触しても溶解されることがなく、導電性サポート体134の剥がれを回避できるからである。なお、Tiの膜厚と、Auや白金族の金属の膜厚はそれぞれ、10〜100nm,100〜200nm程度であり、真空蒸着法やスパッタリング法により形成する。
【0057】
なお、
図1(f)ではオーミック電極層116上のみにメッキシード層118を形成する例を示した。しかし、犠牲層112として樹脂などの絶縁物を選択した場合には、犠牲層上において個々の半導体構造部110の間がメッキシード層118により一部連結するように、メッキシード層118を配置すればよい。その後のメッキ時の通電経路を確保するためである。
【0058】
第1の金属(第2メッキ層)128は、CuまたはNiとすることができる。これらの金属は、コスト面で安価であるとともに、電気メッキでの成膜速度を高速とすることが可能で、生産性の面でも優れるからである。その厚みは80〜200μmの範囲内とすることができる。また、
図2(c)に示す上面視の1辺は、半導体構造部110の1辺の長さの90〜98%程度とすることができる。また、本実施形態のように、第2メッキ層128は、複数の半導体構造部110のそれぞれの上方に島状に形成すると、個片化後も導電性サポート体の表面に第1の金属が露出することがなく好ましい。第1の金属が露出すると、素子の耐候性面で腐食などの問題を生じる危険性があるからである。
【0059】
第2の金属120,132は、AuまたはRh,Pdなどの白金族の金属とすることができる。これらの金属は非常に安定であり、既述の酸性エッチング液に溶解しないからである。また、第1メッキ層120と第3メッキ層132とは異なる材料でもよいが、同じ材料とすることが好ましい。第1メッキ層および第3メッキ層によって、完全に第2メッキ層128を覆う状態とする。第1メッキ層120の厚みは5〜20μm程度とすることができ、第3メッキ層132の第2メッキ層上における厚みは5〜20μm程度とすることができる。これらの範囲を設定することで、第1および第3メッキ層のピンホール残留を回避し、ケミカルリフトオフ工程でのエッチング液による第2メッキ層の溶解を完全に防止することができる。
【0060】
第2の金属としてAuを用いる場合、Auメッキ液としてはノンシアン系(亜硫酸金系)の液を用いることが好ましい。
【0061】
Niメッキ層130は、Cu上に第2の金属のメッキを行うために設ける層であり、3〜9μm程度でよく、無電解メッキ法(一般に低〜中リンタイプと称する薬液を用いる)または電解メッキ法により形成する。第2メッキ層128がNiの場合には、Niメッキ層130は省略してもよい。
【0062】
なお、Cuの電解メッキでは一般に硫酸銅浴と称するものを用いるが、液温としては23〜30℃程度、カソード電流密度は2〜5A/dm
2である。電流密度・メッキ時間を調整して所望の膜厚とする。メッキ膜の表面平坦性や光沢度の確保には、プリント回路基板や半導体バンプ用の有機物添加剤を適宜選択して用いる。また、液の攪拌にはエアーバブリング法を用いる。
【0063】
Au電解メッキにおいては、排水処理等の負荷を低減するため、pHがほぼ中性の亜硫酸金系のメッキ液を用い、液温は57〜62℃、カソード電流密度は0.5〜2.0A/dm
2とする。電流密度・メッキ時間を調整して所望の膜厚とする。メッキ液成分が成膜界面に効率よく供給されるようにするため、噴流式のメッキ液供給方式とする。
【0064】
貫通孔136の寸法および形状は、特に限定されない。エッチング液が空隙となった溝108まで通過できればよく、例えば1辺の長さまたは直径が40〜100μmの矩形または円形とすることができる。また、レジスト124,126の材料は、CuめっきやAuめっき対応として市販されている東京応化製やJSR社製のものを適宜選択すればよい。レジストの除去は、例えばアセトンなどのレジスト樹脂を溶解可能な液体により行う。超音波を併用しても良く、この液体は沸点以下の温度に加熱しても良い。
【0065】
なお、貫通孔136の位置は、溝108の交差部位の上方に限定されず、溝108に連通可能な位置であればよい。貫通孔136を溝108の交差部位以外の上方に設ける場合には、
図1(g)の第1メッキ層120の形成に先立ち、第1メッキ層中の貫通孔となる部分にレジストによるピラーを形成しておく。
【0066】
(ケミカルリフトオフ工程)
本発明におけるケミカルリフトオフ法に使用可能なエッチング液は特に限定されない。リフトオフ層がCrNの場合、硝酸第二セリウムアンモン溶液やフェリシアンカリウム系の溶液などのCrNに対して選択性のあるエッチング液を用いることができる。リフトオフ層がScNの場合、塩酸、硝酸、有機酸などの酸性エッチング液を用いることができる。また、リフトオフ層がZr,Hfの場合は、BHFなどのフッ酸系エッチング液を用いることができる。これらの酸性エッチング液は、導電性サポート体の材質によってはこれをも侵食する。よって、これら酸性エッチング液を使用する場合には本発明の効果を好適に享受することができる。
【0067】
また、リフトオフ後に露呈した半導体構造部110の面は、ウエット洗浄で清浄化されるのが好ましい。次いで、ドライエッチングおよび/またはウエットエッチングで所定量削ることができる。
【0068】
さらに、レジストをマスクとしたリフトオフ法により上部電極としてのn型オーミック電極およびボンディングパッド電極を形成する。電極材としてはAl、Cr、Ti、Ni、Pt、Auなどが用いられ、オーミック電極、ボンディングパッドにはTi、Pt、Auなどをカバー層として成膜して、配線抵抗の低減とワイヤーボンドの密着性を向上させる。なお、半導体構造部110の露出している表面(ボンディングパッド表面を除く)には、SiO
2やSiNなどの保護膜を付与しても良い。
【0069】
(半導体素子集合体)
図3は、上記製造方法で得ることができる、本発明に従う半導体素子集合体100を示し、
図1(l)の後、露出した半導体構造部110の表面を所定量除去し、平坦化したものである。この半導体素子集合体100は、導電性サポート体134と、導電性サポート体134上に一体支持され、互いに独立した複数個の半導体構造部110と、を有する。また、導電性サポート体134が、CuまたはNiからなる第1の金属128と、この第1の金属128を包含するAuまたは白金族の金属からなる第2の金属120,132とを有し、かつ、第2の金属120,132の中の半導体構造部110を支持しない位置に貫通孔136を有することを特徴とする。このような半導体素子集合体100は、リフトオフ層を除去するために用いたエッチング液によって導電性サポート体134が侵食されていないため好ましい。また、導電性サポート体の全体をAuなどの第2の金属で構成する場合に比べて、導電性サポート体のコストを抑えることができる。このように本明細書において「半導体素子集合体」とは、導電性サポート体に互いに独立した複数個の半導体構造部が一体支持され、半導体層を成長させた基板を剥離した状態のウェハを意味する。
【0070】
半導体構造部110の側面は絶縁膜114で覆われている。さらに、半導体構造部110上には、オーミック電極層116およびメッキシード層118がある。第2メッキ層128と第3メッキ層132との間には、Niメッキ層130がある。
【0071】
また、第
1の金属128が、複数の半導体構造部110のそれぞれの上方に島状に位置することが好ましい。個片化後も導電性サポート体の表面に第1の金属が露出することがないためである。
【0072】
(半導体素子の製造方法)
上記製造方法により得た半導体素子集合体100(
図3)の半導体構造部110間で導電性サポート体134を切断することにより、
図4に示すように、各々が切断後の導電性サポート体134Aに支持された半導体構造部110を有する複数個の半導体素子200に個片化する。なお、半導体構造部110上には上部電極140を形成する。切断は例えばブレードダイサーやレーザーダイシング装置を用いて、
図2(a)の破線で示したラインに沿って行う。
【0073】
(半導体素子)
このような方法で得ることができる、本発明に従う半導体素子200を
図4により説明する。半導体素子200は、導電性サポート体134Aと、導電性サポート体134A上に設けられた半導体構造部110と、を有する。また、導電性サポート体134Aが、CuまたはNiからなる第1の金属128と、この第1の金属128を包含するAuまたは白金族の金属からなる第2の金属120,132とを有し、かつ、第2の金属120,132で構成される側面のいずれかの位置に厚み方向に延びる溝138を有することを特徴とする。この溝138は、エッチング液供給用の貫通孔136に由来するものである。このような半導体素子200は、リフトオフ層を除去するために用いたエッチング液によって導電性サポート体134Aが侵食されていないため好ましい。また、導電性サポート体の全体をAuなどの第2の金属で構成する場合に比べて、導電性サポート体のコストを抑えることができる。
【0074】
半導体素子100では、導電性サポート体134Aが下部電極として働き、半導体構造部110上に設けられた上部電極140と対になる。なお、絶縁膜114、オーミック電極116、メッキシード層118およびNiメッキ層130については既述のとおりである。
【0075】
以上は代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【実施例】
【0076】
(実施例)
図1および
図2に示す製造方法で、
図3に示すLEDチップを作製した。具体的には、まず、サファイア基板上に、MOCVD法を用いてAlN単結晶層(厚さ:1μm)を成長させて、AlN(0001)テンプレートを作成した。この成長用基板上に、スパッタ法を用いて、Sc(厚さ:15nm)を成膜し、その後、MOCVD装置内で窒化処理を施し、リフトオフ層としてのScN層を形成した。窒化処理条件は、アンモニアガス雰囲気で圧力200Torr,1150℃,10分である。
【0077】
その後、同一MOCVD装置内で引続き、リフトオフ層上に半導体層として、AlN層を1μm成長した後、n型AlGaNクラッド層(厚さ:2.5μm)、AlInGaN/AlGaNのMQW(多重量子井戸)発光層、p−AlGaN電子ブロック層、p−AlGaNクラッド・コンタクト層(厚さ:0.25μm)を成長し、紫外線LED構造エピタキシャル基板を得た。
【0078】
その後、サファイア基板の一部が露出するよう、半導体層の一部をドライエッチングにより除去して格子状の溝を形成することで、横断面の形状が正方形の島状に独立した複数個の半導体構造部を形成した。半導体構造部の幅Wは1000μmであり、個々の素子の配置は碁盤の目状とした。素子間のピッチは1150μm、すなわち溝幅は150μmである。
【0079】
その後、スパッタ法により犠牲層としてのCr(厚さ:300nm)を形成して、溝を埋めた。引き続き、プラズマCVDにより半導体構造部の側面に絶縁膜(SiO
2膜、厚さ:250nm)を形成した。さらに、その上にスパッタ法によりオーミック電極層(Rh、厚さ:100nm)を形成した。
【0080】
その後、スパッタ法により、オーミック電極層を覆うようにメッキシード層(Ti/Au、各厚さ:20nm/200nm)を形成した。さらに、メッキシード層上に第1メッキ層としてAu(半導体層上の厚さ:15μm)を形成した。このとき、半導体構造部の角部に形成された孔は、円形で約110μm径であった。メッキ条件しては、Auイオン含有量が16g/Lの亜硫酸金系メッキ液を用い、液温60℃、カソード電流密度は1.6A/dm
2で15分のメッキ時間とした。
【0081】
次に、第1メッキ層上にレジスト(厚さ:120μm)を塗布し、
図2(c)に示す形状にパターニングした。レジストを除去した部位の1辺の長さは970μmとした。このとき、第1メッキ層の孔もレジストで埋まった。その後、レジストに被覆されず露出した第1メッキ層上に、第2メッキ層としてCu(厚さ:105μm)を形成した。なお、先に示した硫酸銅系メッキ浴を用い、25〜28℃の液温で、カソード電流密度4.0A/dm
2で約2時間メッキを実施した。
【0082】
次に、第1メッキ層上のレジストをアセトンで除去し、その後、第1メッキ層の孔の上のみ柱状のレジスト改めて形成した。続いて、第2メッキ層の表面上に、無電解メッキによりNi層(厚さ:4.5μm)を形成した。中リンタイプ(メッキ膜中のリン濃度で7%程度)の無電解メッキ液を用い、75℃、30分間でメッキを行った。
【0083】
そして、Ni層および露出した第1メッキ層上に、第3メッキ層としてAu(Ni層上の厚さ:20μm)を形成した。これにより、内部がCuメッキで外部がAuメッキの導電性サポート体が形成できた。この場合、第1メッキ層よりも凹凸のアスペクト比が大きいので、カソード電流密度を0.8A/dm
2に抑えてAuメッキ液成分の不足が生じないようにした。
【0084】
次に、アセトンでレジストを除去し、導電性サポート体のAuメッキ中に貫通孔を形成した。その後、硝酸第二セリウムアンモン溶液でCrからなる犠牲層を除去した。さらに、貫通孔を介してエッチング液(36質量%塩酸)をリフトオフ層に供給し、これを除去することで、成長用基板を半導体構造部から剥離した。このとき、導電性サポート体のCu部分はエッチング液に接触せず、Au部分のみが接触するため、導電性サポート体がエッチング液に侵食されることはなかった。
【0085】
その後、露出したAlN層の一部をドライエッチングして、n型AlGaNクラッド層を部分的に露出させた。その後、n型AlGaNクラッド層上にTi/Alのn型オーミック電極を形成し、さらにTi/Auによるパッド電極を形成した。その後、ドライエッチングを施さなかったAlN層の表面をアルカリ水溶液でエッチングしてサブミクロンサイズの粗化面を形成した。半導体構造部の露出している表面および側面にプラズマCVDによる絶縁膜(SiO
2、厚さ:0.2μm)を形成し、パッド電極上部の絶縁膜をバッファードフッ酸でエッチング除去し、パッド電極を露出させた。
【0086】
レーザーダイサーにより半導体構造部間で導電体サポート体を切断し、LEDチップを形成した。このLEDチップは、導電性サポート体がエッチング液に侵食されていないため、切断面に陥没等がなく表面が平坦で形状がくずれていなかった。また、導電性サポート体を全てAuで形成する場合に比べ、Auの使用量が抑えられたため、コスト面でも多大な効果が得られた。
【0087】
(比較例1)
導電性サポート体をCuのみで形成した以外は実施例と同様にして、LEDチップを作製した。メッキ工程のみが実施例と異なるので、その点のみ以下に説明する。
【0088】
オーミック電極を覆うメッキシード層は、Ti/Cu(各厚さ:20nm/200nm)とした。その後、格子状の溝を覆うように5μm厚みのレジストパターンを形成し、開口部の露出したメッキシード層上にCu(半導体層上の厚さ:150μm)を形成した。Cuメッキの途中(約80μm成膜時点)で個々の半導体構造部の間でメッキ層が合体し、その後一体となった状態で成膜が進行した。この場合、
図2(d)の126Aのように溝の交差部上に貫通孔が自動的に形成された。その後、アセトンでレジストを除去し、導電性サポート体のCuメッキ中に貫通孔を形成した。なお、カソード電流密度は4.0A/dm
2でメッキ時間は約3時間とした。
【0089】
この比較例では、リフトオフ工程において、ScNのリフトオフ層をエッチングするとともにCuの侵食を抑えるため、脱気した希塩酸(濃度10%)を用いたが、導電性サポート体がエッチング液に侵食され、ポーラス状もしくは欠損部の多い状態となってしまった。
【0090】
(比較例2)
導電性サポート体をAuのみで形成した以外は実施例と同様にして、LEDチップを作製した。メッキ工程のみが比較例1と異なるので、その点のみ以下に説明する。
【0091】
オーミック電極を覆うメッキシード層は、Ti/Au(各厚さ:20nm/200nm)とした。その後、格子状の溝を覆うように5μm厚みのレジストパターンを形成し、開口部の露出したメッキシード層上にAu(半導体層上の厚さ:150μm)を形成した。Auメッキの途中(約80μm成膜時点)で個々の半導体構造部の間でメッキ層が合体し、その後一体となった状態で成膜が進行した。この場合、
図2(d)の126Aのように溝の交差部上に貫通孔が自動的に形成された。その後、アセトンでレジストを除去し、導電性サポート体のAuメッキ中に貫通孔を形成した。なお、メッキ条件としては、メッキ液種、液温等は先に示したものとし、カソード電流密度は1.3A/dm
2でメッキ時間を約3時間とした。
【0092】
この比較例では、導電性サポート体がAuであるため、エッチング液に侵食されることはなかった。しかしながら、実施例に比べ2.3倍以上のAu使用量となり、コスト面で問題であった。