(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機膜と所定のパターンを有するフォトレジストとが順に積層された被処理体と対向して配置されたシリコンを含む上部電極に負の直流電圧を印加しながらHBr/Arガスのプラズマにより前記フォトレジストに対して、平滑化処理及び堆積処理の少なくともいずれか一つの改質処理を実行する改質工程と、
改質された前記フォトレジストをマスクとしてCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスのプラズマにより前記有機膜をエッチングするエッチング工程と
を含むことを特徴とするプラズマエッチング方法。
前記フォトレジストは、極端紫外線(EUV:Extreme Ultra-Violet)光を用いて形成されたEUVレジストであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0009】
本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、有機膜と所定のパターンを有するフォトレジストとが順に積層された被処理体と対向して配置されたシリコンを含む上部電極に負の直流電圧を印加しながらHBr/Arガスのプラズマによりフォトレジストを改質する改質工程と、改質されたフォトレジストをマスクとしてCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスのプラズマにより有機膜をエッチングするエッチング工程とを含む。
【0010】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、フォトレジストは、ArFエキシマレーザ光を用いて形成されたArFレジストである。
【0011】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、フォトレジストは、極端紫外線(EUV:Extreme Ultra-Violet)光を用いて形成されたEUVレジストである。
【0012】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、CF系ガスは、CF4ガスであり、CHF系ガスは、CHF3ガスである。
【0013】
また、本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、有機膜は、Si−ARC膜である。
【0014】
本実施形態に係るプラズマエッチング装置は、1つの実施形態において、有機膜と所定のパターンを有するフォトレジストとが順に積層された被処理体に対してプラズマエッチング処理を行うための処理チャンバと、処理チャンバ内を減圧する減圧部と、処理チャンバ内に処理ガスを供給するガス供給部と、被処理体と対向して配置されたシリコンを含む上部電極と、シリコンを含む上部電極に負の直流電圧を印加しながらHBr/Arガスのプラズマによりフォトレジストを改質し、改質されたフォトレジストをマスクとしてCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスのプラズマにより有機膜をエッチングする各工程を実行する制御部とを備えた。
【0015】
図1は、実施形態に係るプラズマエッチング方法に適用されるプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
図1に示すプラズマエッチング装置は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた処理チャンバ1を有している。この処理チャンバ1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜を形成されたアルミニウム等から構成されている。処理チャンバ1内には、被処理体である半導体ウエハWを水平に支持する載置台2が設けられている。
【0016】
載置台2は、その基材2aが導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されており、下部電極としての機能を有する。この載置台2は、絶縁板3を介して導体の支持台4に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコンで形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2及び支持台4の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
【0017】
載置台2の上方には、載置台2と平行に対向するように、換言すれば、載置台2に支持された半導体ウエハWと対向するように、上部電極としての機能を有するシャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16と載置台2は、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能するようになっている。シャワーヘッド16には、第1の整合器11aを介して第1の高周波電源10aが接続されている。また、載置台2の基材2aには、第2の整合器11bを介して第2の高周波電源10bが接続されている。第1の高周波電源10aは、プラズマ発生用のものであり、この第1の高周波電源10aからは所定周波数(例えば60MHz)の高周波電力がシャワーヘッド16に供給されるようになっている。また、第2の高周波電源10bは、イオン行き込み用(バイアス用)のものであり、この第2の高周波電源10bからは第1の高周波電源10aより低い所定周波数(例えば、13MHz)の高周波電力が載置台2の基材2aに供給されるようになっている。
【0018】
載置台2の上面には、半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを介在させて構成されており、電極6aには直流電源12が接続されている。そして電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力によって半導体ウエハWが吸着されるよう構成されている。
【0019】
載置台2の内部には、冷媒流路2bが形成されており、冷媒流路2bには、冷媒入口配管2c、冷媒出口配管2dが接続されている。そして、冷媒流路2bの中にガルデンなどの冷媒を循環させることによって、支持台4及び載置台2を所定の温度に制御可能となっている。また、載置台2等を貫通するように、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等の冷熱伝達用ガス(バックサイドガス)を供給するためのバックサイドガス供給配管30が設けられている。このバックサイドガス供給配管30は、図示しないバックサイドガス供給源に接続されている。これらの構成によって、載置台2の上面に静電チャック6によって吸着保持された半導体ウエハWを、所定の温度に制御可能となっている。
【0020】
上記したシャワーヘッド16は、処理チャンバ1の天壁部分に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと電極板をなす上部天板16bとを備えており、絶縁性部材45を介して処理チャンバ1の上部に支持されている。本体部16aは、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなり、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持できるように構成されている。上部天板16bは、シリコン含有物質で形成され、例えばシリコンで形成される。
【0021】
本体部16aの内部には、ガス拡散室16c,16dが設けられ、このガス拡散室16c,16dの下部に位置するように、本体部16aの底部には、多数のガス通流孔16eが形成されている。ガス拡散室は、中央部に設けられたガス拡散室16cと、周縁部に設けられたガス拡散室16dとに2分割されており、中央部と周縁部とで独立に処理ガスの供給状態を変更できるようになっている。
【0022】
また、上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス導入孔16fが、上記したガス通流孔16eと重なるように設けられている。このような構成により、ガス拡散室16c,16dに供給された処理ガスは、ガス通流孔16e及びガス導入孔16fを介して処理チャンバ1内にシャワー状に分散されて供給されるようになっている。なお、本体部16a等には、冷媒を循環させるための図示しない配管が設けられており、プラズマエッチング処理中にシャワーヘッド16を所望温度に温度制御できるようになっている。
【0023】
上記した本体部16aには、ガス拡散室16c,16dへ処理ガスを導入するための2つのガス導入口16g,16hが形成されている。これらのガス導入口16g,16hにはガス供給配管15a,15bが接続されており、このガス供給配管15a,15bの他端には、エッチング用の処理ガスを供給する処理ガス供給源15が接続されている。処理ガス供給源15は、ガス供給部の一例である。ガス供給配管15aには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15c、及び開閉弁V1が設けられている。また、ガス供給配管15bには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15d、及び開閉弁V2が設けられている。
【0024】
そして、処理ガス供給源15からはプラズマエッチングのための処理ガスが、ガス供給配管15a,15bを介してガス拡散室16c,16dに供給され、このガス拡散室16c,16dから、ガス通流孔16e及びガス導入孔16fを介して処理チャンバ1内にシャワー状に分散されて供給される。例えば、処理ガス供給源15からは、後述するように、フォトレジストを改質する際に用いられるHBr/Arガスなどが供給される。また、例えば、有機膜をエッチングする際に用いられるCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスなどが供給される。処理ガス供給源15により供給されるガスの詳細については、後述する。
【0025】
上記した上部電極としてのシャワーヘッド16には、ローバスフィルタ(LPF)51を介して可変直流電源52が電気的に接続されている。この可変直流電源52は、オン・オフスイッチ53により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源52の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ53のオン・オフは、後述する制御部60によって制御されるようになっている。なお、後述のように、第1の高周波電源10a、第2の高周波電源10bから高周波がシャワーヘッド16及び載置台2にそれぞれ印加されて処理空間にプラズマが発生する際には、必要に応じて制御部60によりオン・オフスイッチ53がオンとされ、上部電極としてのシャワーヘッド16に所定の直流電圧が印加される。
【0026】
処理チャンバ1の側壁からシャワーヘッド16の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体1aが設けられている。この円筒状の接地導体1aは、その上部に天壁を有している。
【0027】
処理チャンバ1の底部には、排気口71が形成されており、この排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより処理チャンバ1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。排気装置73は、減圧部の一例である。一方、処理チャンバ1の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口74が設けられており、この搬入出口74には、当該搬入出口74を開閉するゲートバルブ75が設けられている。
【0028】
図中76,77は、着脱自在とされたデポシールド76である。デポシールド76は、処理チャンバ1の内壁面に沿って設けられ、処理チャンバ1にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する役割を有している。このデポシールド76の半導体ウエハWと略同じ高さ位置には、直流的にグランドに接続された導電性部材(GNDブロック)79が設けられており、これにより異常放電が防止される。
【0029】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース62と、記憶部63とが設けられている。
【0030】
ユーザインターフェース62は、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0031】
記憶部63には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0032】
例えば、制御部60は、後述するプラズマエッチング方法を行うようにプラズマエッチング装置の各部を制御する。詳細な一例を挙げると、制御部60は、上部電極としてのシャワーヘッド16に負の直流電圧を印加しながらHBr/Arガスのプラズマにより被処理体に設けられたフォトレジストを改質し、改質されたフォトレジストをマスクとしてCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスのプラズマにより被処理体の有機膜をエッチングする。プラズマエッチング方法の詳細については後述する。ここで、被処理体とは、例えば、半導体ウエハWである。また、フォトレジストとは、例えば、ArFエキシマレーザ光を用いて形成されたArFレジストである。また、フォトレジストとは、例えば、極端紫外線(EUV:Extreme Ultra-Violet)光を用いて形成されたEUVレジストである。また、有機膜とは、例えば、シリコン含有反射防止膜(Si−ARC膜)である。
【0033】
図2は、本実施形態における被処理体の構造例(その1)を示す断面図である。
図2に示す被処理体は、例えば、Si基板101上にSiN膜102、有機誘電体層(ODL:Organic Dielectric Layer)103及びSi−ARC膜104が順に積層されることで形成される。また、Si−ARC膜104の上には、所定のパターンを有するArFレジスト105が形成されている。Si−ARC膜104は、有機膜の一例である。ArFレジスト105は、フォトレジストの一例である。ArFレジスト105は、例えば下記の化学式(1)に示すポリマ構造を有する。
【0035】
図3は、本実施形態における被処理体の構造例(その2)を示す断面図である。
図3に示す被処理体は、例えば、Si基板101上にSiN膜102、ODL103及びSi−ARC膜104が順に積層されることで形成される。SiN膜102、ODL103及びSi−ARC膜104は、
図2に示したSiN膜102、ODL103及びSi−ARC膜104と同一である。また、Si−ARC膜104の上には、所定のパターンを有するEUVレジスト205が形成されている。EUVレジスト205の高さは、
図2に示したArFレジスト105の高さよりも低い。例えば、EUVレジスト205の高さは40nmであり、ArFレジスト105の高さは80nmである。Si−ARC膜104は、有機膜の一例である。EUVレジスト205は、フォトレジストの一例である。EUVレジスト205は、例えば下記の化学式(2)に示すポリマ構造を有する。なお、化学式(2)において、側鎖R,R+は、例えばアダマンチル基及びラクトン基である。
【0037】
次に、上記構成のプラズマエッチング装置で、半導体ウエハWをプラズマ処理する手順について説明する。まず、ゲートバルブ75が開かれ、半導体ウエハWが図示しない搬送ロボット等により、図示しないロードロック室を介して搬入出口74から処理チャンバ1内に搬入され、載置台2上に載置される。この後、搬送ロボットを処理チャンバ1外に退避させ、ゲートバルブ75を閉じる。そして、排気装置73の真空ポンプにより排気口71を介して処理チャンバ1内が排気される。
【0038】
処理チャンバ1内が所定の真空度になった後、処理チャンバ1内には処理ガス供給源15から所定の処理ガス(エッチングガス)が導入され、処理チャンバ1内が所定の圧力に保持される。この時、処理ガス供給源15からの処理ガスの供給状態を、中央部と周縁部とで異ならせることができ、また、処理ガスの全体の供給量のうち、中央部からの供給量と周縁部からの供給量との比率を所望の値に制御することができる。
【0039】
そして、この状態で第1の高周波電源10aからシャワーヘッド16に、周波数が例えば60MHzの高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源10bからは、イオン引き込みのため、載置台2の基材2aに周波数が例えば13MHzの高周波電力(バイアス用)が供給される。このとき、直流電源12から静電チャック6の電極6aに所定の直流電圧が印加され、半導体ウエハWはクーロン力により静電チャック6に吸着される。
【0040】
上述のようにして上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である載置台2とに高周波電力が印加されることにより、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である載置台2との間には電界が形成される。この電界により、半導体ウエハWが存在する処理空間には放電が生じ、それによって形成された処理ガスのプラズマにより、半導体ウエハWがプラズマ処理(エッチング処理、フォトレジスト膜の改質処理等)される。
【0041】
また、前述したとおり、プラズマ処理中にシャワーヘッド16に直流電圧を印加することができるので次のような効果がある。すなわち、プロセスによっては、高い電子密度でかつ低いイオンエネルギーであるプラズマが要求される場合がある。このような場合に直流電圧を用いれば、半導体ウエハWに打ち込まれるイオンエネルギーが抑えられつつプラズマの電子密度が増加されることにより、半導体ウエハWのエッチング対象となる膜のエッチングレートが上昇すると共にエッチング対象の上部に設けられたマスクとなる膜へのスパッタレートが低下して選択性が向上する。
【0042】
そして、上記したプラズマ処理が終了すると、高周波電力の供給、直流電圧の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバ1内から搬出される。
【0043】
次に、本実施形態に係るプラズマエッチング装置によるプラズマエッチング方法について更に詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係るプラズマエッチング装置によるプラズマエッチング方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0044】
図4に示すように、プラズマエッチング装置は、シリコンを含む上部電極に負の直流電圧を印加しながら、HBr/Arガスのプラズマにより被処理体のフォトレジストを改質する改質工程を行う(ステップS101)。具体的には、制御部60は、処理ガス供給源15からHBr/Arガスを処理チャンバ1内に供給し、上部電極であるシャワーヘッド16に負の直流電圧を印加しながらHBr/Arガスのプラズマを生成することによって、フォトレジストを改質する。ここで、フォトレジストを改質するとは、例えば(1)フォトレジストの表面を平滑化する平滑化処理、(2)フォトレジストを硬化させる硬化処理、及び(3)フォトレジストの表面に堆積物を堆積させる堆積処理のうち少なくとも一つを行うことである。以下、平滑化処理、硬化処理及び堆積処理の詳細を順に説明する。
【0045】
図5Aは、フォトレジストの表面を平滑化する平滑化処理を説明するための図である。
図5Aの例では、フォトレジストは、
図2に示したArFレジスト105であるものとする。制御部60は、シャワーヘッド16から処理チャンバ1内にHBr/Arガスを導入し、第1の高周波電源10aから高周波電力を印加するとともに、シャワーヘッド16に可変直流電源52から負の直流電圧を印加して、HBr/Arガスのプラズマを生成する。これにより、
図5Aの(a)に示すように、HBr/Arガスのプラズマ中の水素ラジカルH
*及び光エネルギーhνがArFレジスト105に吸収され、ArFレジスト105に含まれるC−O−C結合が切断されるとともに切断部分がHと再結合してC−H結合が生成される。換言すれば、上記の化学式(1)で示されるArFレジスト105の側鎖であるアダマンチル基及びラクトン基が主鎖から離脱される。すると、
図5Aの(b)に示すように、ArFレジスト105の表面が平滑化される。この結果、ArFレジスト105の表面の荒れが解消され、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑えることが可能となる。
【0046】
なお、
図5Aの例では、フォトレジストがArFレジスト105である例を示したが、フォトレジストは
図3に示したEUVレジスト205であっても良い。この場合、HBr/Arガスのプラズマが生成されると、HBr/Arガスのプラズマ中の水素ラジカルH
*及び光エネルギーhνがEUVレジスト205に吸収され、EUVレジスト205に含まれるC−O結合が切断されるとともに切断部分がHと再結合してC−H結合が生成される。換言すれば、上記の化学式(2)で示されるEUVレジスト205の側鎖R,R
+であるアダマンチル基及びラクトン基が主鎖から離脱される。すると、EUVレジスト205の表面が平滑化される。この結果、EUVレジスト205の表面の荒れが解消され、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑えることが可能となる。
【0047】
なお、フォトレジストであるArFレジスト105又はEUVレジスト205は、波長が150〜160nmである光を吸収する性質を有している。このため、ArFレジスト105又はEUVレジスト205は、波長が例えば158nmであるHBrプラズマの光エネルギーを吸収し易い。すなわち、本実施形態では、HBr/Arガスを用いることで、HBrプラズマの光エネルギーをArFレジスト105又はEUVレジスト205に効率良く吸収させることができ、アダマンチル基及びラクトン基の離脱を促進させることができる。
【0048】
図5Bは、フォトレジストの表面を硬化させる硬化処理を説明するための図である。
図5Bの例では、フォトレジストは、
図2に示したArFレジスト105であるものとする。制御部60は、シャワーヘッド16から処理チャンバ1内にHBr/Arガスを導入し、第1の高周波電源10aから高周波電力を印加するとともに、シャワーヘッド16に可変直流電源52から負の直流電圧を印加して、HBr/Arガスのプラズマを生成する。すなわち、制御部60は、HBr/Arガスのプラズマが形成される際に、シリコンを含む上部電極としてのシャワーヘッド16に可変直流電源52から負の直流電圧を印加する。好ましくは、制御部60は、シリコンを含む上部電極としてのシャワーヘッド16の表面となる上部天板16bの表面に対する所定のスパッタ効果が得られる程度に上部天板16bの表面の自己バイアス電圧の絶対値が大きくなるように、可変直流電源52から負の直流電圧を印加する。これにより、上部天板16bの表面に対するアルゴンイオンの衝突が加速し、
図5Bの(a)に示すように、上部天板16bの表面からArFレジスト105への電子e
−の降下量が増加して、ArFレジスト105に含まれるC−O,C−H結合が切断されるとともに切断部分がCと再結合してC−C,C=C結合が生成される。換言すれば、上記の化学式(1)で示されるArFレジスト105から水分が抜け出てArFレジスト105のグラファイト化が進む。すると、
図5Bの(b)に示すように、ArFレジスト105の密度が上昇してArFレジスト105が硬化される。この結果、ArFレジスト105のプラズマ耐性が強化され、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するフォトレジストの高さを維持することが可能となる。
【0049】
なお、
図5Bの例では、フォトレジストがArFレジスト105である例を示したが、フォトレジストは
図3に示したEUVレジスト205であっても良い。この場合、HBR/Arガスのプラズマが形成される際にシャワーヘッド16に可変直流電源52から負の直流電圧が印加されると、上部天板16bの表面からEUVレジスト205への電子e
−の降下量が増加して、EUVレジスト205に含まれるC−O,C−H結合が切断されるとともに切断部分がCと再結合してC−C,C=C結合が生成される。換言すれば、上記の化学式(2)で示されるEUVレジスト205から水分が抜け出てグラファイト化が進む。すると、EUVレジスト205の密度が上昇してEUVレジスト205が硬化される。この結果、EUVレジスト205のプラズマ耐性が強化され、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するフォトレジストの高さを維持することが可能となる。
【0050】
図5Cは、フォトレジストの表面に堆積物を堆積させる堆積処理を説明するための図である。
図5Cの例では、フォトレジストは、
図2に示したArFレジスト105であるものとする。制御部60は、シャワーヘッド16から処理チャンバ1内にHBr/Arガスを導入し、第1の高周波電源10aから高周波電力を印加するとともに、シャワーヘッド16に可変直流電源52から負の直流電圧を印加して、HBr/Arガスのプラズマを生成する。すなわち、制御部60は、HBr/Arガスのプラズマが生成される際に、シリコンを含む上部電極としてのシャワーヘッド16に可変直流電源52から負の直流電圧を印加する。好ましくは、制御部60は、シリコンを含む上部電極としてのシャワーヘッド16の表面となる上部天板16bの表面に対する所定のスパッタ効果が得られる程度に上部天板16bの表面の自己バイアス電圧の絶対値が大きくなるように、可変直流電源52から負の直流電圧を印加する。これにより、上部天板16bの表面に対するアルゴンイオンの衝突が加速し、シャワーヘッド16に含まれるシリコンの降下量が増加し、
図5Cの(a)に示すように、シリコンがHBr/Arガス中のBrと反応して得られたSiBrがArFレジスト105に降下する。すると、
図5Cの(b)に示すように、ArFレジスト105の表面にSiBr含有物質105aが堆積する。この結果、ArFレジスト105の表面の荒れが改善されるとともにArFレジスト105のプラズマ耐性が強化され、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するフォトレジストの高さを維持することが可能となる。
【0051】
図4の説明に戻る。その後、プラズマエッチング装置は、改質されたフォトレジストをマスクとして、CF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスのプラズマにより有機膜をエッチングするエッチング工程を行う(ステップS102)。具体的には、制御部60は、処理ガス供給源15からCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスを処理チャンバ1内に供給し、上部電極であるシャワーヘッド16に負の直流電圧を印加しながら処理ガスのプラズマを生成することによって、有機膜をエッチングする。ここで、CF系ガスは、例えば、CF4ガスであり、CHF系ガスは、例えば、CHF3ガスである。
【0052】
より詳細な一例を挙げて説明する。制御部60は、シャワーヘッド16から処理チャンバ1内にCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスを導入し、第1の高周波電源10aから高周波電力を印加するとともに、第2の高周波電源10bからイオン引き込み用の高周波電力を印加することで、エッチングを行う。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、被処理体と対向して配置されたシリコンを含む上部電極に負の直流電圧を印加しながらHBr/Arガスのプラズマのプラズマによりフォトレジストを改質し、改質されたフォトレジストをマスクとしてCF系ガス及びCHF系ガスを含む処理ガスのプラズマにより被処理体の有機膜をエッチングする。このため、本実施形態によれば、フォトレジストの表面の荒れを改善するとともにフォトレジストのプラズマ耐性を強化することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するフォトレジストの高さを維持することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、フォトレジストは、ArFレジスト105である。その結果、本実施形態によれば、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するArFレジスト105の高さを維持することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態によれば、フォトレジストは、EUVレジスト205である。その結果、本実施形態によれば、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するEUVレジスト205の高さを維持することが可能となる。
【0056】
以下に、本実施形態のプラズマエッチング方法について、実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本実施形態のプラズマエッチング方法は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(比較例1)
比較例1では、被処理体に対して、エッチング工程を行った。被処理体は、以下の構造を有するものを用いた。エッチング工程は、以下の条件を用いて行った。
(被処理体)
有機膜:Si−ARC膜
フォトレジスト:ArFレジスト
(エッチング工程)
処理ガス:CF4/CHF3/O2=150/75/5sccm
圧力:1.3Pa(10mTorr)
第1の高周波電源からの高周波電力:500W
第2の高周波電源からの高周波電力:50W
上部電極への直流電圧:0V
【0058】
(実施例1)
実施例1では、被処理体に対して、改質工程を行い、その後、エッチング工程を行った。被処理体は、比較例1と同一のものを用いた。エッチング工程は、比較例1と同一の条件で行った。改質工程は、以下の条件を用いて行った。
(改質工程)
処理ガス:HBr/Ar=100/800sccm
圧力:6.7Pa(50mTorr)
第1の高周波電源からの高周波電力:300W
第2の高周波電源からの高周波電力:0W
上部電極への直流電圧:−900V
【0059】
(比較例2)
比較例2では、実施例1における改質工程において、上部電極への直流電圧を0Vとした。その他の点については、実施例1と同様である。
【0060】
(比較例3)
比較例3では、実施例1における改質工程において、処理ガス及び処理ガスの流量として、H2/Ar=100/800sccmを用いた。その他の点については、実施例1と同様である。
【0061】
(比較例4)
比較例4では、実施例1における改質工程において、上部電極への直流電圧を0Vとし、かつ、処理ガス及び処理ガスの流量として、H2/Ar=100/800sccmを用いた。その他の点については、実施例1と同様である。
【0062】
図6は、比較例1〜4及び実施例1における処理結果を示す図である。
図6において、「Initial」は、比較例1における各工程の後の被処理体を示す。「HBr/Ar w DC」は、実施例1におけるエッチング工程の後の被処理体を示す。「HBr/Ar w/o DC」は、比較例2における各工程の後の被処理体を示す。「H2/Ar w DC」は、比較例3における各工程の後の被処理体を示す。「H2/Ar w/o DC」は、比較例4における各工程の後の被処理体を示す。
【0063】
また、
図6における「After Cure 断面」は、実施例1及び比較例2〜4における改質工程の後の被処理体の断面を拡大して得られた写真のトレース図であり、「After Cure 上面」は、実施例1及び比較例2〜4における改質工程の後の被処理体の上面を拡大して得られた写真のトレース図である。なお、「Initial」に対応する「After Cure 断面」と「After Cure 上面」とは、それぞれ、処理前の被処理体の断面と上面とを拡大して得られた写真のトレース図である。
【0064】
また、
図6における「After SiARC Etch 断面」は、実施例1及び比較例1〜4におけるエッチング工程の後の被処理体の断面を拡大して得られた写真のトレース図であり、「After SiARC Etch 上面」は、実施例1及び比較例1〜4におけるエッチング工程の後の被処理体の上面を拡大して得られた写真のトレース図である。
【0065】
また、
図6では、実施例1及び比較例2〜4における改質工程の後に残存するフォトレジストの高さである「PR Heitht 1」を併せて示した。なお、「Initial」に対応する「PR Heitht 1」は、処理前の被処理体に設けられたフォトレジストの高さである。また、
図6では、実施例1及び比較例1〜4におけるエッチング工程の後に残存するフォトレジストの高さである「PR Height 2」を併せて示した。また、
図6では、「PR Heitht 1」と「PR Height 2」との差分である「PR Loss」を併せて示した。また、
図6では、実施例1及び比較例1〜4におけるエッチング工程の後のライン(フォトレジスト)の線幅である「Line CD」を併せて示した。また、
図6では、LWR(Line Width Roughness)、SWR(Space Width Roughness)及びLER(Line Edge Roughness)の値を示すとともに、LWRとSWRとLERとを合計した値である「SUM」を併せて示した。なお、LWR、SWR、LER及びSUMは、それぞれ、ラインの不均一性の度合いを示し、値が小さいほど、ラインの荒れが小さいことを示す。
【0066】
図6に示すように、改質工程を行わない比較例1と比較して、改質工程を行った実施例1では、Line CDが大きくなるとともに、LWRとLERとSWRとSUMとが小さくなった。また、改質工程を行った実施例1では、「PR Height 2」を比較例1と同程度に維持することが可能であった。すなわち、実施例1では、比較例1と比較して、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、残存するフォトレジストの高さを維持することが可能であった。さらに、実施例1では、エッチングにより形成されるラインの荒れを比較例1と比較して小さくすることが可能であった。
【0067】
また、実施例1では、上部電極に負の直流電圧を印加することで、上部電極への直流電圧を印加しない比較例2と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを大きな値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0068】
また、実施例1では、HBr/Arを用いることで、H2/Arを用いた比較例3と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを大きな値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0069】
また、実施例1では、上部電極に負の直流電圧を印加するとともにHBr/Arを用いることで、上部電極への直流電圧を印加せず、かつ、H2/Arを用いた比較例4と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを大きな値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0070】
(比較例5)
比較例5では、実施例1における改質工程において、処理ガス及び処理ガスの流量として、HBr=100sccmを用いた。その他の点については、実施例1と同様である。
【0071】
(比較例6)
比較例6では、実施例1における改質工程において、上部電極への直流電圧を0Vとし、かつ、処理ガス及び処理ガスの流量として、HBr=100sccmを用いた。その他の点については、実施例1と同様である。
【0072】
(比較例7)
比較例7では、実施例1における改質工程において、処理ガス及び処理ガスの流量として、HBr/He=100/800sccmを用いた。その他の点については、実施例1と同様である。
【0073】
(比較例8)
比較例8では、実施例1における改質工程において、上部電極への直流電圧を0Vとし、かつ、処理ガス及び処理ガスの流量として、HBr/He=100/800sccmを用いた。その他の点については、実施例1と同様である。
【0074】
図7は、比較例5〜8における処理結果を示す図である。
図7において、「HBr only w DC」は、比較例5における各工程の後の被処理体を示す。「HBr only w/o DC」は、比較例6における各工程の後の被処理体を示す。「HBr/He w DC」は、比較例7における各工程の後の被処理体を示す。「HBr/He w/o DC」は、比較例8における各工程の後の被処理体を示す。
【0075】
また、
図7における「After Cure 断面」は、比較例5〜8おける改質工程の後の被処理体の断面を拡大して得られた写真のトレース図であり、「After Cure 上面」は、比較例5〜8における改質工程の後の被処理体の上面を拡大して得られた写真のトレース図である。また、
図7における「After SiARC Etch 断面」は、比較例5〜8におけるエッチング工程の後の被処理体の断面を拡大して得られた写真のトレース図であり、「After SiARC Etch 上面」は、比較例5〜8におけるエッチング工程の後の被処理体の上面を拡大して得られた写真のトレース図である。
【0076】
また、
図7では、比較例5〜8における改質工程の後に残存するフォトレジストの高さである「PR Heitht 1」を併せて示した。また、
図7では、比較例5〜8におけるエッチング工程の後に残存するフォトレジストの高さである「PR Height 2」を併せて示した。また、
図7では、「PR Heitht 1」と「PR Height 2」との差分である「PR Loss」を併せて示した。また、
図7では、比較例5〜8におけるエッチング工程の後のライン(フォトレジスト)の線幅である「Line CD」を併せて示した。また、
図7では、LWR、SWR及びLERの値を示すとともに、「SUM」を併せて示した。
【0077】
図6及び
図7に示すように、実施例1では、HBr/Arを用いることで、HBrのみを用いた比較例5と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを同等の値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。これは、シリコンを含む上部電極の表面に対するアルゴンイオンの衝突が加速され、所定のスパッタ効果が得られることによって、フォトレジストの表面にSiBr含有物質が安定的に堆積した結果であると考えられる。
【0078】
また、実施例1では、上部電極に負の直流電圧を印加するとともにHBr/Arを用いることで、上部電極への直流電圧を印加せず、かつ、HBrのみを用いた比較例6と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを同等の値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0079】
また、実施例1では、HBr/Arを用いることで、HBr/Heを用いた比較例7と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを同等の値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。これは、ヘリウムよりもイオン化エネルギーが低いアルゴンがヘリウムよりも容易にイオン化し、シリコンを含む上部電極の表面に対するアルゴンイオンの衝突が加速され、所定のスパッタ効果が得られることによって、フォトレジストの表面にSiBr含有物質が安定的に堆積した結果であると考えられる。
【0080】
また、実施例1では、上部電極に負の直流電圧を印加するとともにHBr/Arを用いることで、上部電極への直流電圧を印加せず、かつ、HBr/Heを用いた比較例8と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを同等の値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0081】
(比較例9)
比較例9では、被処理体に対して、エッチング工程を行った。被処理体は、以下の構造を有するものを用いた。エッチング工程は、比較例1と同一の条件で行った。
(被処理体)
有機膜:Si−ARC膜
フォトレジスト:EUVレジスト
【0082】
(実施例2)
実施例2では、被処理体に対して、改質工程を行い、その後、エッチング工程を行った。被処理体は、比較例9と同一のものを用いた。エッチング工程は、比較例1と同一の条件で行った。改質工程は、以下の条件を用いて行った。
(改質工程)
処理ガス:HBr/Ar=100/800sccm
圧力:6.7Pa(50mTorr)
第1の高周波電源からの高周波電力:300W
第2の高周波電源からの高周波電力:0W
上部電極への直流電圧:−900V
【0083】
(比較例10)
比較例10では、実施例2における改質工程において、上部電極への直流電圧を0Vとした。その他の点については、実施例2と同様である。
【0084】
(比較例11)
比較例11では、実施例2における改質工程において、処理ガス及び処理ガスの流量として、H2/Ar=100/800sccmを用いた。その他の点については、実施例2と同様である。
【0085】
(比較例12)
比較例12では、実施例2における改質工程において、上部電極への直流電圧を0Vとし、かつ、処理ガス及び処理ガスの流量として、H2/Ar=100/800sccmを用いた。その他の点については、実施例2と同様である。
【0086】
図8は、比較例9〜12及び実施例2における処理結果を示す図である。
図8において、「Initial」は、比較例9におけるエッチング工程の後の被処理体を示す。「HBr/Ar w DC」は、実施例2における各工程の後の被処理体を示す。「HBr/Ar w/o DC」は、比較例10における各工程の後の被処理体を示す。「H2/Ar w DC」は、比較例11における各工程の後の被処理体を示す。「H2/Ar w/o DC」は、比較例12における各工程の後の被処理体を示す。
【0087】
また、
図8における「After Cure 断面」は、実施例2及び比較例10〜12における改質工程の後の被処理体の断面を拡大して得られた写真のトレース図であり、「After Cure 上面」は、実施例2及び比較例10〜12における改質工程の後の被処理体の上面を拡大して得られた写真のトレース図である。なお、「Initial」に対応する「After Cure 断面」と「After Cure 上面」とは、それぞれ、処理前の被処理体の断面と上面とを拡大して得られた写真のトレース図である。
【0088】
また、
図8における「After SiARC Etch 断面」は、実施例2及び比較例9〜12におけるエッチング工程の後の被処理体の断面を拡大して得られた写真のトレース図であり、「After SiARC Etch 上面」は、実施例2及び比較例9〜12におけるエッチング工程の後の被処理体の上面を拡大して得られた写真のトレース図である。
【0089】
また、
図8では、実施例2及び比較例10〜12における改質工程の後に残存するフォトレジストの高さである「PR Heitht 1」を併せて示した。なお、「Initial」に対応する「PR Heitht 1」は、処理前の被処理体に設けられたフォトレジストの高さである。また、
図8では、実施例2及び比較例9〜12におけるエッチング工程の後に残存するフォトレジストの高さである「PR Height 2」を併せて示した。また、
図8では、「PR Heitht 1」と「PR Height 2」との差分である「PR Loss」を併せて示した。また、
図8では、実施例2及び比較例9〜12におけるエッチング工程の後のライン(フォトレジスト)の線幅である「Line CD」を併せて示した。また、
図8では、LWR、SWR及びLERの値を示すとともに、LWRとSWRとLERとを合計した値である「SUM」を併せて示した。
【0090】
図8に示すように、改質工程を行わない比較例9と比較して、改質工程を行った実施例2では、Line CDが大きくなるとともに、LWRとLERとSWRとSUMとが小さくなった。また、改質工程を行った実施例1では、「PR Height 2」を比較例1と同程度に維持することが可能であった。すなわち、実施例2では、比較例9と比較して、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、残存するフォトレジストの高さを維持することが可能であった。さらに、実施例2では、エッチングにより形成されるラインの荒れを比較例9と比較して小さくすることが可能であった。
【0091】
また、実施例2では、上部電極に負の直流電圧を印加することで、上部電極への直流電圧を印加しない比較例10と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを大きな値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0092】
また、実施例2では、HBr/Arを用いることで、H2/Arを用いた比較例11と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを大きな値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0093】
また、実施例2では、上部電極に負の直流電圧を印加するとともにHBr/Arを用いることで、上部電極への直流電圧を印加せず、かつ、H2/Arを用いた比較例12と比較して、ラインの線幅及びフォトレジストの高さを大きな値に維持しつつ良好なLWRとLERとSWRとSUMとを得ることが可能である。
【0094】
このように、改質工程の後にエッチング工程を実行することで、マスクとなるフォトレジストの表面の荒れを改善するとともにフォトレジストのプラズマ耐性を強化することが可能となる。この結果、エッチング工程を継続したとしても、改質工程の後にエッチング工程を実行する場合には、改質工程を行わない場合と比較して、エッチングにより形成されるラインの細幅化を抑え、かつ、エッチング後に残存するフォトレジストの高さを維持することが可能となる。