(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーン変性樹脂は、変性される樹脂骨格に下記平均組成式(i)で示されるシリコーン骨格がブロック型或いはグラフト型で結合したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合体。
R1aR2bSiO4−a−b/4 (i)
(式中、R1は水素原子、又は一価炭化水素基を示し、R2は前記樹脂骨格に結合する単結合、又は窒素、酸素、硫黄原子を含んでもよい2価の炭化水素連結基を示し、a、bはそれぞれ、0<a≦3、0<b≦1、かつ0<a+b<4を満たす数である。)
【背景技術】
【0002】
シリコーン変性樹脂は、有機樹脂とシリコーンの特性を併せ持つためにいろいろな用途に用いられているが、他の基材との接着性に劣るという問題がある。
特許文献1には、シリコーン系プライマーを塗布したポリエステルフィルムと該プライマーを塗布していないポリエステルフィルムの間に未架橋のシリコーンゴム層を形成し、これにγ線を照射してシリコーンゴム層を架橋させてなるシリコーンゴム複合体が提案されている。
【0003】
このシリコーンゴム複合体では、シリコーン系プライマーを塗布していないポリエステルフィルムはシリコーンゴム層から剥がすことができ、前記プライマーを塗布したポリエステルフィルムはシリコーンゴム層と一体化しているが、この複合体が熱応力や機械的応力を受けた場合には、前記フィルム表面から前記プライマー層が剥離し、結果的に、ポリエステルフィルムからシリコーンゴム層が剥離してしまうという問題があった。
【0004】
特許文献2では基材上に予めプラズマ処理を施し、その上に透過性のシリコーン液状皮膜を塗り、更に接着性を強固にするために透過性皮膜上から紫外線照射する接合方法を提案しているが工程が煩雑で、上塗りする皮膜は透明性が必要であるという問題がある。
【0005】
特許文献3ではポリジメチルシロキサンからなる基材とガラスまたはシリコンからなる基材の接合を172nmの紫外光で行うことが提案されているが、ポリジメチルシロキサン以外の基材の接合方法については記載されていない。
また、上記以外の特許文献として、下記特許文献4〜9が挙げられる。
これらの文献には、有機樹脂及びシリコーンの接着性向上について提案されているが、シリコーン変性樹脂の接着性向上については何の提案もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、従来はシリコーン変性樹脂を含有する樹脂形成物からなる基材と、他の基材とを強固、かつ持続性よく接合することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂形成物からなる基材と、他の基材とを強固に、かつ持続性よく接合した複合体、及びその複合体の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂成形物からなる第1の基材と、第2の基材とを接合した複合体であって、
前記第1の基材の接合する面、又は前記第1の基材及び前記第2の基材の接合する面は紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施したものであることを特徴とする複合体を提供する。
【0010】
このような複合体であれば、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂形成物からなる基材と、他の基材とを強固に、かつ持続性よく接合したものとなる。
【0011】
また、前記第1の基材のシリコーン変性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂のいずれか1種類以上をシリコーン変性したものとすることができる。さらに、前記第2の基材は樹脂成形物、塗料樹脂硬化物、ガラス、又は金属とすることができ、この樹脂成形物又は塗料樹脂硬化物は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれら樹脂のシリコーン変性樹脂のいずれか1種類以上からなるものとすることができる。
【0012】
本発明の複合体であれば、このような第1の基材と第2の基材とが、強固に、かつ持続性よく接合されたものとすることができる。
【0013】
また、前記シリコーン変性樹脂は、変性される樹脂骨格に下記平均組成式(i)で示されるシリコーン骨格がブロック型或いはグラフト型で結合したものとすることができる。
R
1aR
2bSiO
4−a−b/4 (i)
(式中、R
1は水素原子、又は一価炭化水素基を示し、R
2は前記樹脂骨格に結合する単結合、又は窒素、酸素、硫黄原子を含んでもよい2価の炭化水素連結基を示し、a、bはそれぞれ、0<a≦3、0<b≦1、かつ0<a+b<4を満たす数である。)
【0014】
このようなシリコーン変性樹脂であればより強固に、かつ持続性よく接合された複合体を形成することができる。
【0015】
さらに、前記接合面の紫外線照射処理は、波長172nm又は126nmの紫外線で照射処理を施したものであることが好ましい。また、前記第1の基材に含まれるシリコーン変性量は0.001〜10質量%であることが好ましい。
【0016】
これにより、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂形成物からなる基材と、他の基材とがより強固に、かつより持続性よく接合された複合体を形成することができる。
【0017】
さらに、本発明の複合体は、表示媒体用、車載用ガラス代替材料用、又は建築用ガラス代替材料用であることが好ましい。
【0018】
本発明の複合体は様々な用途に使用することができ、特に表示媒体用、車載用ガラス代替材料用、又は建築用ガラス代替材料用として用いたとしても耐久性の高いものとなる。
【0019】
また、本発明では、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂成形物からなる第1の基材と、第2の基材とを接合して複合体を製造する方法であって、
前記第1の基材の接合する面、又は前記第1の基材及び前記第2の基材の接合する面に、紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施す接合面処理工程を有し、その後前記第1の基材及び前記第2の基材を接合する接合工程を有することを特徴とする複合体の製造方法を提供する。
【0020】
このような方法により、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂形成物からなる基材と、他の基材とを、強固に、かつ持続性よく接合でき、複合体を簡便な方法で製造することができる。
【0021】
さらに、前記第1の基材のシリコーン変性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂のいずれか1種類以上をシリコーン変性したものとすることができる。また、前記第2の基材は樹脂成形物、塗料樹脂硬化物、ガラス、又は金属とすることができ、この樹脂成形物又は塗料樹脂硬化物は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれら樹脂のシリコーン変性樹脂のいずれか1種類以上からなるものとすることができる。
【0022】
本発明の複合体の製造方法であれば、このような第1の基材と第2の基材とを、強固に、かつ持続性よく接合することができる。
【0023】
さらに、前記シリコーン変性樹脂は、変性される樹脂骨格に下記平均組成式(i)で示されるシリコーン骨格がブロック型或いはグラフト型で結合したものとすることができる。
R
1aR
2bSiO
4−a−b/4 (i)
(式中、R
1は水素原子、又は一価炭化水素基を示し、R
2は前記樹脂骨格に結合する単結合、又は窒素、酸素、硫黄原子を含んでもよい2価の炭化水素連結基を示し、a、bはそれぞれ、0<a≦3、0<b≦1、かつ0<a+b<4を満たす数である。)
【0024】
このようなシリコーン変性樹脂であればより強固に、かつ持続性よく接合された複合体を形成することができる。
【0025】
また、前記接合面の処理は、紫外線照射処理が好ましく、特に波長172nm又は126nmの紫外線を照射して処理することが好ましい。さらに、前記紫外線照射処理として、前記第1の基材の接合面に波長172nmの紫外線を照射し、該接合面に対し前記第2の基材を密着させ、40〜200℃の温度に加熱することで接合させることも好ましい。
【0026】
これにより、より強固に、かつ持続性よく接合された複合体を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の複合体はシリコーン変性樹脂を含有する樹脂成形物(例えば、樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物等)からなる第1の基材と、他の樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物、ガラス、金属などの第2の基材とが強固に、かつ持続性よく接合されたものとなる。また、本発明により、その複合体の簡便な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の複合体、及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。前述のように、強固に、かつ持続性よく接合された複合体が望まれていた。
【0029】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂成形物(例えば、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物等)からなる第1の基材の表面に紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施し、他方の第2の基材(樹脂成形体、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物、ガラス、金属等)とを重ね合わせて直接密着させることにより強固に、かつ持続性よく接合された複合体となることを見出して、本発明を完成させた。以下詳細に説明する。
【0030】
本発明は、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂成形物からなる第1の基材と、第2の基材とを接合した複合体であって、第1の基材の接合する面、又は第1の基材及び第2の基材の接合する面は紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施したものであることを特徴とする複合体である。
【0031】
ここで、第1の基材とは、シリコーン変性樹脂を含有する樹脂の成形物であれば特に制限されず、シリコーン変性した樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物等、及びシリコーン変性樹脂を含有してなる樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物等を意味するものとする。また、第2の基材は第1の基材と接合される物であり、特に制限されず、シリコーン変性した樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物等、シリコーン変性樹脂を含有してなる樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物等、シリコーンを含まない樹脂成形物、樹脂フィルム、塗料樹脂硬化物、ガラス、及び金属等を意味するものとする。
【0032】
第1の基材に使用することのできるシリコーン変性される樹脂(以下、樹脂骨格ともいう。)、及び第2の基材に使用することのできる樹脂は天然樹脂、合成樹脂のいずれでも良いが、好ましくは合成樹脂である。このような合成樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂といった熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂(acrylonitrile−butadiene−styrene)、AS樹脂(acrylonitrile−styrene)、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、PBT樹脂(polybutylene terephthalate)、PET樹脂(polyethylene terephthalate)、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0033】
また、前記第1の基材で使用される樹脂骨格としては熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂や熱可塑性樹脂が好ましい。特に、第1の基材のシリコーン変性樹脂として好ましくは、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂のいずれか1種類以上をシリコーン変性したものである。
【0034】
なお、第1の基材はシリコーン変性樹脂を含有するものであれば、特に制限されずそれ以外の樹脂や成分を含有することが可能である。例えば、シリコーン変性樹脂とシリコーン変性していない上記合成樹脂とのブレンドや、シリコーン変性樹脂を含む樹脂組成物にガラス繊維や炭素繊維を配合した複合材料などとすることができる。
【0035】
また、ここで成形物とは、特に制限されず、任意の形状に成形されたものという意味であり、フィルムや任意の形状の硬化物などもこれに含まれる。また、その形状、表面状態、硬さ、透明性には制限されない。
【0036】
さらに、前記第2の基材は樹脂成形物、塗料樹脂硬化物、ガラス、又は金属とすることができ、ガラス又は熱硬化性樹脂からなる樹脂成形物であることがより好ましい。ここで樹脂成形物又は塗料樹脂硬化物は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれら樹脂のシリコーン変性樹脂のいずれか1種類以上からなるものとすることができる。
【0037】
また、第1の基材に含有される前記シリコーン変性樹脂、及び/又は第2の基材に含有されうるシリコーン変性樹脂は、変性される樹脂骨格に下記平均組成式(i)で示されるシリコーン骨格がブロック型或いはグラフト型で結合したものとすることができる。
R
1aR
2bSiO
4−a−b/4 (i)
(式中、R
1は水素原子、又は一価炭化水素基を示し、R
2は前記樹脂骨格に結合する単結合、又は窒素、酸素、硫黄原子を含んでもよい2価の炭化水素連結基を示し、a、bはそれぞれ、0<a≦3、0<b≦1、かつ0<a+b<4を満たす数である。)
【0038】
上記平均組成式(i)において、R
1は独立に水素原子又は一価の炭化水素基である。一価の炭化水素基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、フェニルエチル基等の芳香族基、トリフロロプロピル基、クロロプロピル基、クロロフェニル基といったハロゲン含有基、アミノ含有基、エポキシ基、シアノ基、エステル結合含有基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、芳香族基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0039】
R
2は樹脂との結合に預かる基であれば限定されず、樹脂骨格に結合する単結合、又は窒素、酸素、硫黄原子を含んでもよい2価の炭化水素連結基を示す。2価の炭化水素連結基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基、フェニレン基を含む結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合などが挙げられるが、樹脂に応じて好ましい結合は異なる。
【0040】
上記平均組成式(i)中のaとしては0<a≦3であり、好ましくは0.5≦a≦2.5であり、より好ましくは0.7≦a≦2.1である。式中のbとしては0<b≦1であり、好ましくは0.01≦b≦0.8であり、より好ましくは0.02≦b≦0.4である。
【0041】
第1の基材に含有されるシリコーン変性樹脂、及び第2の基材に含有させることのできるシリコーン変性樹脂は、官能基を有するシリコーンとシリコーン変性される樹脂を熱又は光で反応させて、シリコーンを樹脂骨格に導入することで得られる。
【0042】
例えばシリコーン変性熱硬化性ウレタン樹脂、シリコーン変性熱可塑性ウレタン樹脂は、アルコール性水酸基を有するシリコーンをジイソシアネート化合物、ポリオール化合物と反応することにより得ることができる。
【0043】
シリコーン変性(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル基を有するシロキサンとアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、ヒドロキシメタクリレートなどの一般的な(メタ)アクリル化合物とラジカル開始剤を使用して塊状重合・溶液重合・乳化重合、更には光硬化することにより得ることができる。
【0044】
また、シリコーン変性ポリカーボネートは、フェノール性水酸基を両末端に有するシロキサンと二価フェノールまたは脂肪族ジオールとを共存させた状態でカーボネート前駆体と反応させることにより得ることができる。
【0045】
さらに、シリコーン変性ポリオレフィンは、末端ビニル基含有ノルボルネンを用いて合成した非共役ポリエンランダム共重合体にSi−H基を含有するハイドロジェンシロキサンをヒドロシリル化により結合させることにより得ることができる。
【0046】
また、シリコーン変性ポリイミドは、酸二無水物と両末端アミノシロキサンとを脱水閉環反応させることにより得ることができる。
【0047】
また、前記第1の基材に含まれるシリコーン変性量は0.001〜10質量%であることが好ましい。特に、シリコーン変性樹脂のみからなる場合には、第1の基材に含まれるシリコーン変性量、すなわちその樹脂に結合したシリコーン変性量は0.001〜70質量%とすることができ、0.001〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜5質量%である。ここでシリコーン変性量とは樹脂骨格に結合したシリコーン骨格の量をいう。
【0048】
また、第1の基材が、シリコーン変性樹脂を含有し、他の樹脂との混合した樹脂成形物である場合には第1の基材に含まれるシリコーン変性量はその樹脂成形物全体に対し0.001〜20質量%であることが好ましく、0.001〜10質量%であることがより好ましく、更に好ましくは0.01〜5質量%である。
【0049】
このような第1の基材としては、信越化学工業株式会社製シリコーン変性ウレタン(X−22−2756、X−22−2760)、信越化学工業株式会社製シリコーン変性アクリル樹脂(KP545)、日信化学工業株式会社製シリコーン変性アクリル樹脂(シャリーヌ170S)、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン製レキサンEXL、出光興産株式会社製タフロンネオが挙げられる。
【0050】
本発明の複合体の第1の基材の接合する面、又は第1の基材及び第2の基材の接合する面は、紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施したものである。
【0051】
本発明の複合体を使用した物品としては表示媒体、車載用ガラス代替材料、建築用ガラス代替材料用物品が好ましく、本発明の複合体はこれら用途に用いたとしても耐久性の高いものとなる。
【0052】
本発明のシリコーン変性樹脂を含有する樹脂成形物からなる第1の基材と、第2の基材とを接合して複合体を製造する方法は、第1の基材の接合する面、又は第1の基材及び第2の基材の接合する面に、紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施す接合面処理工程を有し、その後第1の基材及び第2の基材を接合する接合工程を有する。
【0053】
第1の基材、第2の基材としては上記と同様のものを用いることができる。またシリコーン変性樹脂についても上記と同様のものを用いることができる。
【0054】
接合面処理工程では、第1の基材の接合する面、又は第1の基材及び第2の基材の接合する面に、紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれか1以上の処理を施す。特に、この処理の中で紫外線照射処理が好ましい。また、第1の基材の接合する面のみに処理を施すよりも、第1の基材及び第2の基材の接合する面の両方に処理を施す方が好ましい。
【0055】
紫外線照射処理としては、特に制限されないが、波長172nm若しくは126nmの紫外線を照射して処理することが好ましく、172nmの紫外線照射がより好ましい。また、紫外線照射処理に使用される紫外光としては特に限定しないが、172nmエキシマVUVが好ましく、装置としてはウシオ電機株式会社製SUS05、SUS06、株式会社エキシマのE700−172などが挙げられる。
【0056】
コロナ処理は空気雰囲気で行うエアコロナ処理でも窒素ガス雰囲気下で行うコロナ処理のいずれでもよく、株式会社浅草製作所のCTWシリーズ、春日電機株式会社のTEC−4AXが挙げられる。
【0057】
プラズマ処理は高真空化でプラズマを発生させ樹脂表面を処理する方法であり、装置としては神港精機株式会社製プラズマ発生装置が上げられる。なお、上記各処理は組み合わせて行うこともできる。
【0058】
以上の接合面処理工程により接合面には水酸基が増加することとなり、この活性化した接合面状態で第1の基材と第2の基材を直接接合させることで、強固に、かつ持続性よく接合させることが可能となる。
【0059】
更に、接合性を向上させるために接合する前に、第1の基材の接合面、及び/又は第2の基材の接合面にシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤などの接着助剤成分を塗布しても良い。
【0060】
なお、接合面処理工程から接合工程までの時間は特に限定しないが、好ましくは24時間以内、より好ましくは1時間以内、更に好ましくは10分以内である。時間が短ければより強固に、かつ持続性よく接合しやすくなる。これは処理により形成された表面の親水基が徐々に減少するためと考えられる。
【0061】
なお、接合面処理工程後に、接合工程まで処理された第1の基材及び第2の基材を放置する場合には、多湿下または水中に浸漬しておくことが好ましい。
【0062】
接合工程では、特に制限されないが第1の基材と第2の基材を可能な限り隙間がない状態で接触させることが望まれる。また、接触させる際に第1の基材又は第2の基材の自重により接触させる他、更に適度に加圧して押さえるとより好ましい。加圧する手段としてはロールやプレス機が挙げられる。また、接合する温度は特に規定しないが、25℃以上に加熱すると接合時間が短縮されるという点でより好ましく、40〜200℃に加熱することがより好ましく、更に好ましくは50〜100℃に加熱することである。
【0063】
さらに、接合工程の条件は接合面処理工程での処理条件に応じて決定することもでき、例えば、紫外線照射処理として第1の基材の接合面に波長172nmの紫外線を照射した場合は、該接合面に対し前記第2の基材を密着させ、40〜200℃の温度に加熱することで接合させることが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で使用する処理条件、樹脂、及び接合性の評価方法について列挙する。
【0065】
(1)紫外線照射処理条件
ウシオ電機株式会社製SUS05装置を用い、第1の基材表面を、紫外線照度10mW/cm
2、照射時間10秒、紫外線の積算光度100m
J/cm
2で処理を行った。
【0066】
(2)コロナ処理条件
コロナ処理装置(高周波電源;春日電機社製CT−0212、発信機本体;春日電機社製CT−0212、高圧トランス;春日電機社製CT−T022)を用い、基材表面とコロナ処理装置の電極との距離が3mmとなるように調整し、出力280W、ラインスピード1.0m/min、周囲温度23℃、周囲相対湿度55%RHの条件で、連続して3回行なった。
【0067】
(3)プラズマ処理条件
神港精機株式会社製プラズマ発生装置を用い、4Pa減圧下、メタン2ml/分、酸素1ml/分の処理ガスを流しながら10分間処理を行った。
【0068】
〔接合体の製造方法〕
上記各処理を行った後、5分以内に第2の基材と1kg重/10cm
2の加重で圧着させ100℃で1時間エージングした。
【0069】
〔接合度合い試験〕
接合体を指でつまみ両方向に引っ張った際、接合面で剥がれず第1の基材及び第2の基材いずれかの基材が破れた場合を○、接合面の一部が剥がれた場合を△、接合面で剥がれた場合を×とした。
【0070】
〔SxTPU:シリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂〕
平均分子量3200のアルコール変性シロキサンオイル(KF−6002;信越化学工業社製)とε−カプロラクトンを共重合して得られる平均分子量5200でシロキサン成分60質量%のエステル変性ポリシロキサンポリオール1000
質量部と、平均分子量1700のポリテトラメチレンエーテルグリコール1080
質量部に、1,4−ブタンジオール324
質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート1160
質量部を100℃で反応させてシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂(SxTPU)を得た。得られたSxTPU中のシロキサン変性量は17質量%であった。
【0071】
〔SxPC:シリコーン変性ポリカーボネート〕
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に亜ニチオン酸ナトリウム7.6
質量部を含む6質量%水酸化ナトリウム水溶液29700
質量部に、ビスフェノールA3897
質量部を溶解させたのち、塩化メチレン11Lを加え、撹拌下22〜30℃でホスゲン1900
質量部を60分要して吹き込み、得られたポリカーボネートオリゴマー溶液に7質量%水酸化ナトリウム水溶液7836
質量部、p−tert−ブチルフェノール108
質量部を加え、攪拌しながらオイゲノールを両末端Si−H基を有するシロキサンにヒドロシリレーション反応することで得られた両末端フェノール基含有シロキサン(重合度40)210重量部を加えて乳化状態とした後、再度撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン6mlを加えて温度26〜31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を単離し、塩酸水で洗浄後、純水で洗浄を行い、水相の導電率が純水と同等になったところで塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し減圧下で乾燥し、シロキサン変性量5質量%のシロキサン・ポリカーボネート共重合体(SxPC)を得た。
【0072】
〔SxアクリルI:シリコーン変性アクリル樹脂〕
反応器にトルエン250mlを80℃に加温し、片末端メタクリルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−176DX)50質量%、メチルメタクリレート36質量%、ブチルメタクリレート7質量%、2−エチルヘキシルアクリレート7質量%の混合物(合計300g)とベンゾイルパーオキサイド3gをトルエン50mlに希釈した液を同時に2時間かけて滴下し、更に5時間かけて熟成しシリコーングラフトアクリル共重合体のトルエン溶液を得た。これを100℃減圧下でトルエンを除去し冷却粉砕することによりシロキサン50質量%のシリコーングラフトアクリル共重合体粉末(SxアクリルI)を得た。
【0073】
〔SxPI:シリコーン変性ポリイミド樹脂〕
反応器に、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物44.4g(0.1モル)、及びn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。次いで、下記式(ii)で表されるジアミノシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−9496)90.9g(0.075モル)及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン10.3g(0.025モル)をn−メチル−2−ピロリドン100gに溶解した溶液を、反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。次に、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン30gを加え、150℃に昇温させてその温度を6時間保持し得られた溶液を室温まで冷却した後、メタノール再沈澱させた。得られた沈降物を乾燥し、下記式(iii)で示される繰り返し単位を有するシリコーン・ポリイミド共重合体(SxPI)を得た。
【化1】
【化2】
【0074】
〔Sxポリエステル:シリコーン変性ポリエステル〕
反応容器中に、オイゲノールを両末端Si−H基を有するシロキサンにヒドロシリレーション反応することで得られた両末端フェノール基含有シロキサン(重合度40)0.982kg(0.3モル)、ビスフェノールAを0.0799kg(0.35モル)、テトラブロモビスフェノールAを0.0381kg(0.07モル)、p−tert−ブチルフェノール7.65g(0.05モル)、水酸化ナトリウム68.4g(1.71モル)、重合触媒としてベンジル−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド1.53g、ハイドロサルファイトナトリウム1.18gを注入し、さらに反応容器中に水5.90Lを注入して溶解し、水相とした。さらに、別の反応容器中で、ジクロロメタン3.47Lに、イソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドの等量混合物であるフタル酸クロライド(モル比=50:50)152.
6g(0.75モル)を溶解し、有機相とした。この有機相を、既に攪拌している水相溶液中に強攪拌下で添加し、温度を15℃に保って2時間重合反応を行った。この後、攪拌を停止し、デカンテーションにより水相と有機相を分離した。水相を除去した有機相に、純水12Lと酢酸1mLを添加して反応を停止し、さらに15℃で30分間攪拌した。この有機相を純水で5回洗浄し、有機相をヘキサンで再沈殿させた。沈殿したポリマーを有機相から分離し、次いで1日間乾燥させ、ポリアリレート樹脂(A−1)を得た。
【0075】
〔SxアクリルII:シリコーン変性アクリル樹脂〕
オープン容器にオクタメチルシクロテトラシロキサン1,500質量部、メタクリロキシプロピルメチルシロキサン3.8質量部、イオン交換水1,500質量部を混合し、これにラウリル硫酸ナトリウム15質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸10質量部を添加してからホモミキサーで攪拌して乳化した後、圧力3,000barのホモジナイザーに2回通して安定なエマルジョンを調製した。次いで、これをフラスコに仕込み、70℃で12時間加熱し、25℃まで冷却して24時間熟成した後、炭酸ナトリウムでエマルジョンのpHを7に調節し、4時間窒素ガスを吹き込んでから水蒸気蒸留して揮発性のシロキサンを留去し、次に、イオン交換水を加えて不揮発分を45質量%に調節した。攪拌機、コンデンサー、温度計および窒素ガス導入口を備えた2Lの三ッ口フラスコに、上記で得たエマルジョン333質量部(シロキサン分150質量部)とイオン交換水517質量部を仕込み、窒素ガス気流下に器内を30℃に調節した後、t−ブチルヒドロパーオキサイド1.0質量部、L−アスコルビン酸0.5質量部、硫酸第一鉄7水和物0.002質量部を加え、次いで、器内温を30℃に保ちながら、ブチルアクリレート350質量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、1時間攪拌を続けて反応を完結させた。得られた共重合エマルジョンの固形分濃度は41.3質量%であった。上記のエマルジョン1000質量部を攪拌機付きの容器に仕込み、80℃に加熱し、ここに硫酸ナトリウム92質量部を純水563質量部に溶解した溶液を加えてアクリル変性ポリオルガノシロキサンを析出させ、濾過、水洗、脱水を繰り返してから60℃で乾燥し、シロキサン変性量70質量%のアクリル変性オルガノポリノシロキサン(SxアクリルII)を得た。
【0076】
〔Sxエポキシ樹脂:シリコーン変性エポキシ樹脂〕
反応器にトルエン300ml、アリル基含有エポキシ樹脂187g、両末端ハイドロジェンシロキサン(重合度100)150g、触媒としてジビニルテトラメチルジシロキサン配位白金触媒の1%トルエン溶液2gを添加し100℃にて2時間反応させた後、トルエンを減圧条件下で留去しシロキサン変性量44.5質量%のシリコーン変性エポキシ樹脂液体(Sxエポキシ樹脂)を得た。
【0077】
〔その他〕
表1〜5中、以下の左列の略称は右列のものを示すこととする。
非シリコーンPC;住友ダウ社製カリバー
TM200−30
TPU;BASF社製エラストランC95A
アクリル樹脂;三菱レイヨン製アクリペットMD
PI;三井化学社製AURUM−PL450C
PET;帝人デュポンフィルム社製テイジンテトロンフィルムG2
塩化ビニル樹脂;日信化学工業社製ビニブラン240
アクリル板;三菱レイヨン製アクリライトEX
【0078】
〔実施例1−1〜3、比較例1:表面処理方法の違い〕
第1の基材の接合面に対して紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれかの処理を施した実施例1−1〜3と処理を施さなかった比較例1の接合度合いを調べた。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
〔実施例2−1〜8、比較例2:第1の基材の違い〕
表2に記載の第1の基材と第2の基材を加熱プレス機にて平板の複合体とした。なお、比較例2ではシリコーン変性樹脂を含まない樹脂成形物及び基板を用いて複合体を作製した。これら複合体を用いて第1の基材の違いによる接合度合いの違いを調べた。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
〔実施例3−1〜6:第1の基材のブレンドの違い〕
表3に記載のように、第1の基材として二つの材料を質量比1/1の割合でブレンドし、東洋精機株式会社製ラボプラストミルで溶融混練後、加熱プレス機にて平版の複合体とした。これら複合体を用いて第1の基材の2種類の樹脂のブレンドの違いによる接合度合いの違いを調べた。その結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
〔実施例4−1〜7:第2の基材の違い〕
表4に記載のように、第1の基材として二つの材料を質量比1/1の割合でブレンドし、東洋精機株式会社製ラボプラストミルで溶融混練後、加熱プレス機にて平板の複合体とした。これら複合体を用いて第2の基材の違いによる接合度合いの違いを調べた。その結果を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
〔実施例5−1〜4、比較例5:接合面処理工程から接合工程までの時間の違い〕
表5に記載のように、第1の基材として二つの材料を質量比1/1の割合でブレンドし、東洋精機株式会社製ラボプラストミルで溶融混練後、加熱プレス機にて平板の複合体とした。これら複合体を用いて接合面処理工程から接合工程までの時間の違いによる接合度合いの違いを調べた。その結果を表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
以上から示されるように、本発明の複合体であればシリコーン変性樹脂を含有する樹脂形成物からなる基材と、他の基材とを強固に、かつ持続性よく接合したものとなる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。