(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エッチング対象がSi膜の場合に、活性種としてFを用い、前記処理ガス中の活性種の原子数に対する前記トラップガスの原子数の比率が40〜80%であることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
エッチング対象がAl膜の場合に、活性種としてClを用い、前記処理ガス中の活性種の原子数に対する前記トラップガスの原子数の比率が40〜80%であることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
前記処理ガス中の活性種の原子数に対する前記トラップガスの原子数の比率が17〜80%であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のプラズマ処理方法。
エッチング対象がSi膜の場合に、活性種としてFを用い、前記処理ガス中の活性種の原子数に対する前記トラップガスの原子数の比率が40〜80%であることを特徴とする請求項15に記載のプラズマ処理方法。
エッチング対象がAl膜の場合に、活性種としてClを用い、前記処理ガス中の活性種の原子数に対する前記トラップガスの原子数の比率が40〜80%であることを特徴とする請求項15に記載のプラズマ処理方法。
コンピュータ上で動作し、プラズマ処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項11から請求項18のいずれかのプラズマ処理方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマ処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明ではプラズマ処理装置の一例としてプラズマエッチング装置について説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
最初に第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置としてのプラズマエッチング装置を示す断面図、
図2は
図1のプラズマエッチング装置における基板載置台を部分的に示す断面図、
図3は
図1のプラズマエッチング装置における基板載置台を示す平面図である。
【0019】
図1に示すように、このプラズマエッチング装置1は、FPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Gに対してエッチングを行う容量結合型プラズマエッチング装置として構成されている。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。プラズマエッチング装置1は、被処理基板である基板Gを収容する処理容器としてのチャンバー2を備えている。チャンバー2は、例えば、表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなり、基板Gの形状に対応して四角筒形状に形成されている。
【0020】
チャンバー2内の底部には絶縁材からなる絶縁板3を介して下部電極として機能する基板載置台4が設けられている。基板載置台4は、金属、例えばアルミニウムからなり、上部の中央部に形成された凸部5aおよび凸部5aの周囲のフランジ部5bを有する、金属、例えばアルミニウムからなる基材5と、凸部5aの上に設けられた、基板Gの載置面を有する絶縁部材6とを備えている。絶縁部材6の内部には平面状の吸着電極6aが設けられており、これらにより基板Gを静電吸着するための静電チャックが構成されている。フランジ部5bの上には、載置された基板Gを囲むように額縁状の絶縁体からなるシールドリング7が設けられている。また、基材5の周囲を囲むように絶縁リング8が設けられている。絶縁部材6、シールドリング7、絶縁リング8は、例えば、アルミナのような絶縁性セラミックスで構成されている。
【0021】
基材5には、高周波電力を供給するための給電線12が接続されており、この給電線12は分岐し、一方の分岐線に整合器13aとプラズマ生成(ソース)用の第1の高周波電源14aが接続され、他方の分岐線に整合器13bとバイアス印加用の第2の高周波電源14bが接続されている。第1の高周波電源14aからはプラズマ生成用の例えば13.56MHzの高周波電力が基材5に印加され、これにより、基板載置台4が下部電極として機能する。また、第2の高周波電源14bからはバイアス用の例えば3.2MHzの高周波電力が基材5に印加され、これによりプラズマ中のイオンを効果的に基板Gに引き込むことができる。なお、プラズマ生成とバイアス印加を兼ねた一つの高周波電源を設けてもよい。吸着電極6aには、直流電源15が接続されており、吸着電極6aに直流電圧が印加され、クーロン力により基板Gを絶縁部材6の載置面に吸着するようになっている。
【0022】
シールドリング7の上面には、その全周に基板Gの載置面を囲むように、プラズマ中の活性種(ラジカル)をトラップするためのトラップガスとして水素ガス(H
2ガス)を吐出する、額縁状をなすトラップガス吐出ノズル16が設けられている。トラップガス吐出ノズル16の上面には、全周に亘って複数のガス吐出口17が形成されている。トラップガス吐出ノズル16にはガス流路18が接続されていて、ガス流路18の他端にはトラップガスである水素ガスを供給するトラップガス供給源19が接続されている。そして、トラップガスである水素ガスは、トラップガス供給源19からガス流路18を介してトラップガス吐出ノズル16に至り、複数のガス吐出口17から吐出され、基板載置台4上の基板Gの周辺部に供給される。
【0023】
基板載置台4には、基板Gの受け渡しを行うための複数のリフタピン(図示せず)が基板載置台4の上面(すなわち絶縁部材6の上面)に対して突没可能に設けられており、基板Gの受け渡しは、基板載置台4の上面から上方に突出した状態のリフタピンに対して行われる。
【0024】
チャンバー2の上部には、チャンバー2内に処理ガスを供給するとともに上部電極として機能するシャワーヘッド20が、基板載置台4と対向するように設けられている。シャワーヘッド20は、内部に処理ガスを拡散させるガス拡散空間21が形成されているとともに、下面または基板載置台4との対向面に処理ガスを吐出する複数の吐出孔22が形成されている。このシャワーヘッド20は接地されており、基板載置台4とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0025】
シャワーヘッド20の上面にはガス導入口24が設けられ、このガス導入口24には、処理ガス供給管25が接続されており、この処理ガス供給管25には処理ガス供給源28が接続されている。処理ガス供給管25には、バルブ26およびマスフローコントローラ27が設けられている。処理ガス供給源28からは、エッチングのための処理ガスが供給される。処理ガスとしては、この分野で通常用いられる処理ガスを用いることができ、処理する膜によって最適な物質が用いられる。このような処理ガスとしては典型的には、F、Cl、Oのうち少なくとも1種を含むガスを用いることができる。これらはそれぞれ、反応性の高いF、Cl、Oを含む活性種(ラジカル)を形成する。
【0026】
チャンバー2の底壁の4隅には排気管29(2つのみ図示)が接続されており、この排気管29には排気装置30が接続され、図示しない圧力調整弁が設けられている。排気装置30はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これによりチャンバー2内を排気して所定の減圧雰囲気まで真空引き可能なように構成されている。チャンバー2の側壁には、基板Gを搬入出するための搬入出口31が形成されているとともに、この搬入出口31を開閉するゲートバルブ32が設けられており、搬入出口31の開放時に、図示しない搬送手段によって基板Gがチャンバー2内外に搬入出されるように構成されている。
【0027】
また、プラズマエッチング装置1は、プラズマエッチング装置1の各構成部を制御するためのマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラを有する制御部40を備えている。制御部40は、オペレータによるプラズマエッチング装置1を管理するためのコマンド入力等の入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース、および、プラズマエッチング装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部をさらに有している。処理レシピは記憶部の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、コンピュータに内蔵されたハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェースからの指示等にて任意の処理レシピを記憶部から呼び出してプロセスコントローラに実行させることで、プロセスコントローラの制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。
【0028】
次に、上記構成のプラズマエッチング装置1における処理動作について説明する。以下の処理動作は制御部40の制御のもとに行われる。
まず、排気装置30によってチャンバー2内を排気して所定の圧力とし、ゲートバルブ32を開放して搬入出口31を介して隣接する真空に保持された搬送室(図示せず)から搬送手段(図示せず)によって基板Gを搬入し、図示しないリフタピンを上昇させた状態でその上に基板Gを受け取り、リフタピンを下降させることにより基板載置台4上に基板Gを載置させる。搬送手段をチャンバー2から退避させた後、ゲートバルブ32を閉じる。
【0029】
この状態で、処理ガス供給源28から、処理ガス供給管25およびシャワーヘッド20を介して処理ガスをチャンバー2内に供給するとともに、圧力調整弁によりチャンバー2内の圧力を所定の真空度に調整する。
【0030】
そして、第1の高周波電源14aから整合器13aを介して基板載置台4(基材5)にプラズマ生成用の高周波電力を印加し、下部電極としての基板載置台4と上部電極としてのシャワーヘッド20との間に高周波電界を生じさせてチャンバー2内の処理ガスをプラズマ化させる。また、第2の高周波電源14bから整合器13bを介して基板載置台4(基材5)にバイアス用の高周波電力を印加し、プラズマ中のイオンを効果的に基板Gに引き込む。この際に、直流電源15から吸着電極6aに直流電圧を印加することにより、プラズマを介してクーロン力により基板載置台4(絶縁部材6)の載置面に基板Gを吸着固定する。
【0031】
これにより、基板Gの所定の膜に対するプラズマエッチング処理が進行する。このとき、処理ガスとしては、処理する膜によって最適な物質が用いられ、例えば、プラズマにより反応性の高いF、Cl、Oを含む活性種(ラジカル)を生成する、F、Cl、Oのうち少なくとも1種を含むガスを用いることができる。
【0032】
プラズマエッチング処理の際には、基板Gの周辺部では未反応の処理ガスが多く存在することから、エッチング対象膜がケミカル反応性が高いものであると、ローディング効果により、基板Gの周辺部におけるエッチングレートが高くなってしまう。
【0033】
そこで、本実施形態では、プラズマ中の活性種(ラジカル)をトラップするトラップガスとして水素ガスを、トラップガス供給源19からガス流路18を介してトラップガス吐出ノズル16に設けられた複数のガス吐出口17から基板Gの周辺部に供給する。これにより、基板Gの周辺部において活性種(ラジカル)がトラップされる。具体的には、反応性の高いF、Cl、Oを含む活性種(ラジカル)が存在する場合には、これらは基板Gの周辺部で水素ガスと反応してHF、HCl、H
2Oのようなエッチングに寄与しない成分となり、チャンバー2から排出される。このため、エッチングレートが高かった基板Gの周辺部では活性種(ラジカル)の量が減少してエッチングレートが低下し、基板Gの面内においてエッチングレートが均一化される。
【0034】
このように、反応性の高いF、Cl、Oを含む活性種(ラジカル)を用いる際に、基板Gの周辺部にトラップガスとして水素ガスを供給することにより、これら活性種(ラジカル)をトラップすることができるが、水素ラジカル等の他の水素源であってもトラップガスとして機能することができる。また、活性種(ラジカル)と反応してエッチングに寄与しない成分を生成することができれば、水素以外のトラップガスを用いることもできる。
【0035】
トラップガスの流量が多いほど、活性種(ラジカル)をトラップする効果が高くなるから、トラップガスの流量を制御することにより、基板Gのエッチングレートの分布制御が可能となる。この場合に、トラップガスの流量は、活性種の原子量に対してトラップガスの原子量が17〜80%になるような流量とすることが好ましい。
【0036】
具体例としては、アモルファスシリコン(a−Si)膜のエッチングに際しては、処理ガスとしてSF
6ガスを好適に用いることができるが、トラップガスとして水素(H
2)ガスを用いた場合に、活性種(ラジカル)であるF原子量に対してH原子量が40〜80%となるような流量で水素ガスを供給することが好ましい。また、SiN
x膜のエッチングには、反応種としてSF
6ガスおよび酸素(O
2)ガスの混合ガスを好適に用いることができるが、トラップガスとして水素(H
2)ガスを用いた場合に、活性種(ラジカル)であるF、Oの原子量に対してH原子量が17.1〜34.3%なるような流量で水素ガスを供給することが好ましい。さらに、Al膜のエッチングに際しては、BCl
3、Cl
2を好適に用いることができるが、トラップガスとして水素(H
2)ガスを用いた場合に、活性種(ラジカル)であるCl原子量に対してH原子量が40〜80%なるような流量で水素ガスを供給することが好ましい。
【0037】
処理終了後、第1の高周波電源14aおよび第2の高周波電源14bをオフにするとともに、吸着電極6aへの給電を停止して静電吸着を解除し、リフトピン(図示せず)により基板Gをリフトアップし、ゲートバルブ32を開けて処理後の基板Gを搬入出口31から搬出する。
【0038】
本実施形態では、基板Gの周辺部に活性種(ラジカル)をトラップするトラップガスを供給し、基板Gの周辺部における活性種(ラジカル)の量を低減するので、基板Gの周辺部におけるエッチングレートを低減させて面内均一性の高いプラズマエッチングを行うことができる。このように、整流ウォールや犠牲材を用いることなく、基板Gの周辺部のエッチングレートを低減させることができるので、整流ウォールを用いる場合のエッチング対象膜の種類やエッチング条件(レシピ)に合わせて整流ウォールの最適化が必要となるといった問題や、犠牲材を用いる場合の定期的な交換により手間やコストがかかるといった問題や、これら両方で問題となる、複数のエッチング層を連続で処理する場合などに他のエッチング対象膜に影響を与えてしまうといった問題を解消することができる。
【0039】
トラップガスである水素ガスの供給形態は、基板Gの周辺部に供給できれば
図1の形態に限らない。例えば、
図4に示すように、トラップガス吐出ノズル16をシールドリング7の側面に取り付けるようにしてもよく、また、
図5に示すように、トラップガス吐出ノズル16をシャワーヘッド20の外周部に設けて基板Gの上方から基板Gの周辺部に水素ガスを供給するようにしてもよい。
【0040】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置としてのプラズマエッチング装置を示す断面図である。
【0041】
図6に示すように、このプラズマエッチング装置1′は誘導結合型プラズマエッチング装置として構成されている。
図6において
図1と共通の部分には同じ符号を付して説明を簡略化する。
【0042】
このプラズマエッチング装置1′のチャンバー2′は、天壁52が例えばAl
2O
3等のセラミックスや石英のような誘電体からなっており、天壁52の下側部分に、処理ガス供給用の十字状をなすシャワー筐体51が嵌め込まれている他は、チャンバー2と同様に構成されている。
【0043】
シャワー筐体51は導電性材料、例えば陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。このシャワー筐体51には水平に伸びるガス流路53が形成されており、このガス流路53には、下方に向かって延びる複数のガス吐出孔54が連通している。一方、天壁52の上面中央には、ガス導入口24が設けられ、
図1の装置と同様、ガス導入口24には、処理ガス供給管25が接続されており、この処理ガス供給管25には処理ガス供給源28が接続されている。
【0044】
天壁52の上面に沿って高周波(RF)アンテナ55が設けられており、高周波アンテナ55には、給電線56が接続されており、この給電線56に整合器57およびプラズマ生成(ソース)用の第1の高周波電源58が接続されている。高周波アンテナ55に、第1の高周波電源58から例えば周波数が13.56MHzの高周波電力が供給されることにより、チャンバー2′内に誘導電界が形成され、この誘導電界によりシャワー筐体51から吐出された処理ガスがプラズマ化される。
【0045】
一方、基板載置台4の基材5には給電線12が接続され、この給電線12には、整合器13bおよびバイアス印加用の第2の高周波電源14bのみが接続されている。
【0046】
このようなプラズマエッチング装置1′においては、第1の実施形態と同様にして基板Gを基板載置台4上に載置し、処理ガス供給源28から、処理ガス供給管25およびシャワー筐体51を介して処理ガスをチャンバー2′内に供給するとともに、圧力調整弁によりチャンバー2′内の圧力を所定の真空度に調整する。次いで、第1の高周波電源58から高周波電力を高周波アンテナ55に印加し、これにより誘電体からなる天壁52を介してチャンバー2′内に誘導電界を形成する。このようにして形成された誘導電界により、チャンバー2′内で処理ガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成され、基板Gに対してプラズマエッチング処理が行われる。このとき、第2の高周波電源14bから整合器13bを介して基板載置台4(基材5)にバイアス用の高周波電力を印加し、プラズマ中のイオンを効果的に基板Gに引き込み、直流電源15から吸着電極6aに直流電圧を印加することにより、基板Gはプラズマを介してクーロン力により基板載置台4(絶縁部材6)の載置面に吸着固定する。
【0047】
このような誘導結合プラズマによりエッチングする場合でも、基板Gの周辺部では未反応の処理ガスが多く存在することから、エッチング対象膜がケミカル反応性が高いものであると、ローディング効果により、基板Gの周辺部におけるエッチングレートが高くなってしまう。
【0048】
このため、第1の実施形態と同様、プラズマ中の活性種(ラジカル)をトラップするトラップガスとして水素ガスを基板Gの周辺部に供給する。これにより、基板Gの周辺部において活性種(ラジカル)がトラップされる。このため、エッチングレートが高かった基板Gの周辺部では活性種(ラジカル)の量が減少してエッチングレートが低下し、基板Gの面内においてエッチングレートが均一化される。
【0049】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
(実験例1)
ここでは、
図7に示すように、550×650mmの基板をエッチングする容量結合型プラズマエッチング装置において、基板載置台の短辺のシールドリングに対応する部分に、500mmの範囲で水素ガスを吐出させるためのガス吐出ノズル16を設け、このガス吐出ノズルに形成された複数のガス吐出口から、所定の流量で水素ガスを供給しながら所定の処理ガスにより以下に示す膜のエッチング処理を行った。このときの基板の水素ガスを供給している端部から基板中央にかけてのエッチングレートの分布を測定した。
【0050】
・a−Si膜エッチング
Fラジカルの影響を受けやすいa−Si膜について、ベース条件を以下のようにし、水素ガス(H
2ガス)流量を0、25、50sccmで変化させてエッチングを行った。
【0051】
ベース条件
圧力:60mTorr
ソースパワー:3000W
バイアスパワー:300W
処理ガスおよび流量:
SF
6 100sccm
Ar 200sccm
【0052】
このようなa−Si膜のエッチングの際のエッチングレートの分布を
図8に示す。
この図に示すように、H
2ガスを供給しない従来の手法でエッチングした場合には、基板外周部のエッチングレートが非常に高くなり、エッチングレートの均一性(ばらつき)は17.9%であった。これに対して、基板周辺部にH
2ガスを供給することにより、中央部へのエッチングレートにほとんど影響なく、基板外周部のエッチングレートのみをコントロールすることができ、H
2ガスの流量が増加するほど基板外周部のエッチングレートが低下することがわかる。そして、H
2ガス流量が25sccmのときにエッチングレートの均一性(ばらつき)は5.8%と非常に小さくなる。H
2ガス流量が50sccmになると基板外周部のエッチングレートはさらに低下し、均一性(ばらつき)は17.2%と大きくなる。基板中央部のエッチングレートより低くすることが可能となっており、H
2流量によりエッチング分布が制御可能であることがわかる。
【0053】
・SiN
x膜エッチング
FラジカルおよびOラジカルの影響を受けやすいSiN
x膜について、ベース条件を以下のようにし、水素ガス(H
2ガス)流量を0、25、50sccmで変化させてエッチングを行った。
【0054】
ベース条件
圧力:60mTorr
ソースパワー:3000W
バイアスパワー:300W
処理ガスおよび流量:
SF
6 200sccm
O
2 100sccm
【0055】
このようなSiN
x膜のエッチングの際のエッチングレートの分布を
図9に示す。
この図に示すように、H
2ガスを供給しない従来の手法でエッチングした場合には、基板外周部のエッチングレートが非常に高くなり、エッチングレートの均一性(ばらつき)は15.8%であった。これに対して、基板周辺部にH
2ガスを供給することにより、中央部へのエッチングレートにほとんど影響なく、基板外周部のエッチングレートのみをコントロールすることができ、H
2ガスの流量が増加するほど基板外周部のエッチングレートが低下することがわかる。そして、H
2ガス流量が50sccmのときにエッチングレートの均一性(ばらつき)は5.3%と非常に小さくなる。H
2ガス流量が25sccmでも効果は大きく、均一性(ばらつき)は6.4%である。
【0056】
・Al膜エッチング
Clラジカルの影響を受けやすいAl膜について、ベース条件を以下のようにし、水素ガス(H
2ガス)流量を0、50、100sccmで変化させてエッチングを行った。
【0057】
ベース条件
圧力:20mTorr
ソースパワー:1500W
バイアスパワー:50W
処理ガスおよび流量:
BCl
3 200sccm
Cl
2 300sccm
【0058】
このようなAl膜のエッチングの際のエッチングレートの分布を
図10に示す。
この図に示すように、H
2ガスを供給しない従来の手法でエッチングした場合には、基板外周部のエッチングレートが非常に高くなり、エッチングレートの均一性(ばらつき)は34.0%であった。これに対して、基板周辺部にH
2ガスを供給することにより、基板外周部のエッチングレートをコントロールすることができ、H
2ガスの流量が増加するほど基板外周部のエッチングレートが低下することがわかる。そして、H
2ガス流量が100sccmのときにエッチングレートの均一性(ばらつき)は19.5%と大きく改善されているのがわかる。H
2ガス流量が50sccmでも均一性(ばらつき)は28.8%と改善効果が得られる。ローディングの影響を受けやすいAl膜では整流ウォールを用いることが多いが、基板周辺部にトラップガスであるH
2ガスを供給することにより、整流ウォールを設けなくても均一性が改善することが確認された。
【0059】
(トラップガスの供給量の検証)
次に、以上の結果から、処理ガス流量に対するトラップガスの供給量の適正範囲を検証した結果について説明する。
上記結果は基板の一辺にトラップガスであるH
2ガスを吐出するガス吐出ノズルを設けて、そこからトラップガスであるH
2ガスを供給してエッチングレートに及ぼすトラップガスの影響を把握したものであるが、実際には供給された処理ガスは基板の中央部から四辺(全周2400mm)を介して排出される。このため、以下の検証は、処理ガス量を、トラップガスを供給した辺あたりに換算して処理ガスに対して相対的に必要となるトラップガス流量を算出する手法をとった。
【0060】
また、上記結果は、処理ガスの中の反応性の高い反応種(活性種)であるF、Cl、Oを、基板周辺部に供給されたトラップガスであるH
2ガスと反応させることにより、HF、HCl、H
2Oといったエッチングに寄与しない化合物となってチャンバーから排出させ、基板周辺部の反応種を減少させるものと考えられる。事実、
図11の上記a−Si膜のエッチングの際の基板周辺部のプラズマの発光スペクトルに示すように、H
2ガスの流量が増加するほど、波長が656.5nmのHの発光が増加し、波長が704nmのFの発光が減少している。したがって、以下の検証結果はその点を前提とする。
【0061】
・a−Si膜のエッチング
上記実験例では、処理ガスとしてSF
6ガスを100sccm使用しているから、プラズマにより全て解離したとすると、体積は7倍となり、体積流量はSが100sccm、Fが600sccmということとなる。また、上述したように、基板に供給された処理ガスは、4辺を介して排気されるから、基板全周2400mmとすると、基板の辺500mmあたりのFの換算量は125sccmとなる。一方、トラップガスであるH
2ガスは25〜50sccmであるから、これらが全て解離すると、体積は2倍となり、Hが50〜100sccmとなる。原子量の比率に換算すると、F原子量に対してH原子量は40〜80%の範囲となる。
【0062】
・SiN
x膜のエッチング
上記実験例では、処理ガスとしてSF
6ガスを200sccm使用し、O
2ガスを100sccm使用しているから、これらがプラズマにより全て解離したとすると、Sが200sccm、Fが1200sccm、Oが200sccmということとなり、FおよびOの体積流量は1400sccmということとなる。したがって、基板の辺500mmあたりの活性種(ラジカル)の換算量は291.7sccmとなる。一方、トラップガスであるH
2ガスは25〜50sccmであるから、これらが全て解離すると、Hが50〜100sccmとなる。原子量の比率に換算すると、活性種(ラジカル)原子量に対してH原子量は17.1〜34.3%の範囲となる。
【0063】
・Al膜のエッチング
上記実験例では、処理ガスとしてBCl
3ガスを200sccm使用し、Cl
2ガスを300sccm使用しているから、これらがプラズマにより全て解離したとすると、Clの体積流量は1200sccmとなる。したがって、基板の辺500mmあたりのClの換算量は250sccmとなる。一方、トラップガスであるH
2ガスは50〜100sccmであるから、これらが全て解離すると、Hが100〜200sccmとなる。原子量の比率に換算すると、Cl原子量に対してH原子量は40〜80%の範囲となる。
【0064】
上記実験例では、処理ガス量を基板辺あたりに供給される原子流量に換算して、相対的に必要となるトラップガス流量を算出した。実際はトラップガス供給エリアは、基板周囲に設置されるため、必要となるトラップガス流量は、処理ガス投入量に対して相対的に定義することができる。
以上のことから、単位時間に供給される、処理ガスの中のF、Cl、Oの原子量に対して、H原子量の比率が17〜80%の範囲となるように、トラップガスであるH
2ガスを供給することにより、基板周辺部におけるエッチングレートの制御に効果があることが確認された。
【0065】
(実験例2)
次に、
図1と同様の構成を有する容量結合型のプラズマエッチング装置により、実プロセスを想定した実験を行った結果について説明する。基板サイズは730×920mmであり、トラップガスは基板周囲に供給される。
【0066】
ここでは、LTPS(低温ポリシリコン)コンタクトエッチングを想定した実験を行った。低温ポリシリコンコンタクトエッチングは、
図12に示すようなポリシリコン(p−Si)膜101の上にSiO
2膜102、SiN
x膜103、SiO
2膜104を積層した積層構造に対してエッチングを行うものであり、従来はポリシリコン層のエッチングにおいて外周部のエッチングレートが高いエッチング分布となり、基板外周部でポリシリコン膜のエッチオフが生じやすく問題になっていた。そこで、本実験例では、SiO
2膜、SiN
x膜、およびポリシリコン膜と同等のエッチング特性を示すa−Si膜について、H
2ガスを他のガスとともにシャワーヘッドから供給した場合と、H
2ガスをトラップガスとして基板の周辺部へ供給した場合とで、以下に示す条件でエッチングを行った。
【0067】
エッチング条件
圧力:10mTorr
ソースパワー:5000W
バイアスパワー:5000W
処理ガスおよび流量(シャワーヘッド):
C
4F
8 60sccm
Ar 100sccm
H
2 100sccm、0sccm
トラップガス(H
2ガス)流量(基板周辺部):0sccm、100sccm
なお、この場合の活性種であるFの原子量に対するトラップガスであるHの原子量の比率は41.7%である。
【0068】
これらの膜のエッチングの際のエッチングレート(エッチング量)の分布を
図13〜15に示す。
図13、14は、それぞれSiO
2膜およびSiN
x膜の結果であるが、いずれも基板周辺部へのH
2ガス供給の有無にかかわらず、エッチングレートの面内均一性は良好である。一方、
図15はa−Si膜の結果であるが、基板周辺部へH
2ガスを供給しない場合には、基板外周部のエッチングレートが上昇しエッチングレートの面内均一性は44%であったものが、基板周辺部へH
2ガスを供給することにより、均一性が10%まで大幅に改善された。
【0069】
このことから、H
2ガスをトラップガスとして基板周辺部に供給することにより、SiO
2膜やSiN
x膜のエッチングにはほとんど影響を与えず、ケミカル反応性が強く、基板外周部のエッチングレートが高いa−Si膜のみエッチング分布を改善できることが確認された。したがって、本手法は、LTPS(低温ポリシリコン)コンタクトエッチングにおいて、基板外周部で生じやすいポリシリコン膜のエッチオフに対して大変有効な手法であるといえる。
【0070】
(実験例3)
次に、トラップガスであるH
2ガスを供給するトラップガス供給ノズルを
図4に示すようにシールドリングの側面に設けた以外は、
図6と同様の構成を有する誘導結合型のプラズマエッチング装置により、エッチングを行った結果について説明する。基板サイズは1850×1500mmである。
【0071】
本実験例においても、LTPS(低温ポリシリコン)コンタクトエッチングを想定した実験を行った。具体的には、処理ガスとしてC
2HF
5ガス、H
2ガス、Arガスを用い、トラップガスとしてのH
2ガスの有無によるSiO
2膜およびSi膜のエッチング分布を調査した。
【0072】
その結果を
図16に示す。
図16は基板の1/4の部分のエッチングレートを示すものであり、Cは基板の中心、LCは長辺の中心、SCは短辺の中心、Edgeは基板の角である。
図16(a)は、処理ガスをC
2HF
5:300sccm、H
2:180sccm、Ar:240sccmとし、トラップガスを使用せずにエッチングを行った結果である。
図16(b)、(c)は、処理ガス中のH
2:180sccmをなくし、基板周辺部のトラップガス吐出ノズルから流出させた結果である。なお、
図16(b)、(c)の場合の活性種であるFの原子量に対するトラップガスであるHの原子量の比率は24%および72%である。
【0073】
図16(a)に示すように、トラップガスであるH
2ガスを基板周辺部へ供給しない場合は、SiO
2膜はエッチング分布が比較的均一であるが、Si膜では基板外周部のエッチングレートが高くなっている。一方、
図16(a)の処理ガスに含まれるH
2ガスをトラップガスとして基板周辺部に供給した
図16(b)、(c)では、SiO
2膜のエッチング分布を乱すことなく、Si膜のエッチング分布が改善されている。さらに、その効果は、基板周辺部へのH
2ガスの流量が180sccmの(b)の場合よりも、540sccmの(c)のほうが大きいことが確認された。
【0074】
なお、ケミカル性の高いエッチング対象膜を含む積層膜等をエッチングする場合には、基板外周部のエッチングレートの制御が必要となる膜のエッチングステップのみにトラップガスを供給するレシピでエッチングを行うようにすることもできる。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、プラズマ処理としてプラズマエッチングを例にとって説明したが、プラズマエッチングに限らずプラズマCVD等の他のプラズマ処理であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、容量結合型および誘導結合のプラズマ処理装置を例示したが、これに限らず、チャンバー内にプラズマを生成することができれば、マイクロ波プラズマ等、他の方式でプラズマを生成する装置であってもよい。
【0077】
さらに、トラップガスとしてはH
2ガスに限らず、ラジカル等の活性種と反応してトラップできるものであればよい。エッチング対象膜も上記実施形態のものに限らない。
【0078】
さらにまた、上記実施形態では本発明をFPD用のガラス基板に適用した例について説明したが、これに限らず、半導体基板等、他の基板に適用可能であることはいうまでもない。