(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光ファイバのケース体への固定に接着剤を利用した場合には、芯線を露出させる作業や接着剤を塗布してこれを硬化させる作業が必要になるため、組立作業が煩雑となって製造コストが増大してしまう問題があった。また、光ファイバに対するケース体の十分な保持力を確保するためには、接着剤の塗布量や硬化条件等を厳密に管理する必要が生じ、この点も製造コストが増大してしまう原因となっていた。
【0009】
一方、光ファイバのケース体への固定にカシメリングを利用した場合には、芯線を露出させる作業が不要となるため組立作業が比較的容易化するものの、部品点数が増加してしまうことになり、やはり製造コストが増大してしまう問題があった。また、光ファイバに対するケース体の十分な保持力を確保するためには、カシメリングを含む各種部品の寸法精度を厳密に管理することが必要になり、この点も製造コストが増大してしまう原因となっていた。
【0010】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、簡便な構成にて、高精度に光ファイバをケース体に対して位置決めして固定できるとともに、光ファイバに対するケース体の十分な保持力が確保でき、さらには安価にかつ容易に製造できる光ファイバヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく光ファイバヘッドは、光が出射および/または入射する先端面を軸方向の先端部に有する光ファイバと、軸方向に沿った前端および後端を有し、上記光ファイバの上記先端部を収容するとともに上記後端から上記光ファイバ
の上記先端部を除く部分が引き出されてなる略筒状のケース体と、上記光ファイバの上記先端面にその後端面が対向するように配置された光学素子とを備えている。上記ケース体は、周方向において実質的に均等に縮径するように当該ケース体の軸方向に沿った一部が塑性変形されることでその内部に収容された上記光ファイバを保持するカシメ部を有している。上記カシメ部によって保持された部分
を含む上記光ファイバ
の上記先端部は、コアおよびクラッドを含む芯線と、当該芯線を被覆する被覆材とを有して
おり、上記光ファイバの上記先端面を規定する部分の上記芯線および上記被覆材は、上記光学素子の上記後端面に当接している。上記カシメ部は、上記ケース体の軸方向に沿って上記光ファイバの上記先端面が位置する部分から距離をもって上記ケース体の上記後端側の位置に設けられて
おり、上記光ファイバの上記先端部の外周面は、そのすべての領域において上記ケース体の内周面に接触している。
【0013】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記カシメ部が位置する部分の上記ケース体の内周面に、凹凸形状が付与されていることが好ましい。
【0014】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記カシメ部の外形が、正多角柱状または円柱状であることが好ましい。
【0015】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記光学素子が、上記ケース体の上記前端寄りの位置において上記ケース体に圧入されたレンズにて構成されていてもよい。
【0016】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記レンズの外周面が、圧入の際の潰し代となる微小凹凸を有していることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記レンズが、上記ケース体の上記前端側に位置する円柱部と、上記円柱部よりも上記ケース体の上記後端側に位置する円錐台部とを有していることが好ましく、その場合に、上記円錐台部が、上記ケース体の上記後端側に向かうに連れて縮径した形状を有していることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記レンズが、射出成形品にて構成されていてもよく、その場合には、上記レンズの上記後端面寄りの部分に、射出成形の際に生じるゲート跡が位置していることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記光学素子が、上記ケース体の上記前端寄りの位置において上記ケース体に固定されたミラーまたは偏光フィルタにて構成されていてもよい。
【0020】
上記本発明に基づく光ファイバヘッドにあっては、上記光学素子が、上記ケース体の上記前端に設けられた絞り部によって構成されたアパーチャであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡便な構成にて、高精度に光ファイバをケース体に対して位置決めして固定できるとともに、光ファイバに対するケース体の十分な保持力が確保でき、さらには安価にかつ容易に製造できる光ファイバヘッドとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ファイバヘッドの斜視図であり、
図2は、1に示す光ファイバヘッドの断面図である。また、
図3は、
図1に示す光ファイバヘッドの
図2中に示すIII−III線に沿った断面図である。まず、これら
図1ないし
図3を参照して、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aの構成について説明する。なお、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aは、光ファイバ型光電スイッチのヘッドとして構成されたものである。
【0025】
図1ないし
図3に示すように、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aは、光ファイバ10と、ケース体20と、光学素子としてのレンズ30とを備えている。
【0026】
光ファイバ10は、コア11およびクラッド12を含む芯線と、芯線を被覆する被覆材13とを有する長尺状の部材からなる。コア11およびクラッド12は、いずれも光透過性の部材にて構成されており、被覆材13は、遮光性の部材にて構成されている。
【0027】
光ファイバ10としては、POF(Plastic Optical Fiber)またはGOF(Glass Optical Fiber)のいずれかが利用でき、より好適には、POFが利用できる。コア11およびクラッド12を構成する具体的な材質としては、POFの場合には、アクリル系樹脂またはフッ素系樹脂等に代表される樹脂材料が利用でき、GOFの場合には、ガラス材料全般が利用できる。なお、被覆材13としては、たとえばポリ塩化ビニル等に代表される樹脂材料が利用できる。
【0028】
光ファイバ10は、光が出射および/または入射する先端面10aをその軸方向の先端部に有している。光ファイバ10の先端部においては、コア11およびクラッド12を含む芯線が、被覆材13によって覆われた状態とされている。
【0029】
ケース体20は、中空略筒状の形状を有しており、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材にて構成されている。本実施の形態においては、ケース体20が比較的簡素な構成とされているため、切削加工等に代表される付加的な加工を必要としない鋳造品にてケース体20が構成可能となっている。
【0030】
ケース体20は、その前端(
図2中に示す左側の端部)からその後端(
図2中に示す右側の端部)にまで達するように軸方向に沿って延びる貫通孔を有している。当該貫通孔には、上述した光ファイバ10の先端部およびレンズ30が配置されており、これによりケース体20の内部にこれら光ファイバ10の先端部およびレンズ30が収容されている。
【0031】
ケース体20は、前端側に位置する本体部21と、後端側に位置するカシメ部22とを有している。本体部21は、カシメ部22に比較して肉厚に形成されており、その外形が概ね円柱状に形成されている。カシメ部22は、本体部21に比較して肉薄に形成されており、その外形が正六角柱状に形成されている。なお、本体部21の外周面には、雄ネジ部21aが設けられている。当該雄ネジ部21aは、光ファイバヘッド1Aを設置する際に使用されるものである。
【0032】
レンズ30は、光透過性の部材にて構成されており、たとえばアクリル樹脂等に代表される樹脂材料を用いた射出成形品にて構成されている。レンズ30は、略円柱状の形状を有しており、その前端面30a(
図2中に示す左側の端面)が凸状のレンズ面にて構成されており、その後端面30b(
図2中に示す右側の端面)が平面にて構成されている。
【0033】
レンズ30は、ケース体20の前端側に位置する円柱部31と、当該円柱部31よりもケース体20の後端側に位置する円錐台部32とを有しており、当該円錐台部32は、ケース体20の後端側に向かうに連れて縮径した形状を有している。また、レンズ30の後端面30b寄りに位置する円錐台部32の外周面30c上には、射出成形の際に生じるゲート跡30dが位置している。
【0034】
なお、レンズ30としては、上述した射出成形品からなる樹脂レンズ以外にも、ガラスレンズ等の利用が可能である。
【0035】
上述したように、光ファイバ10の先端部およびレンズ30は、いずれもケース体20に設けられた貫通孔に収容されている。より具体的には、光ファイバ10の先端部は、ケース体20の貫通孔の後端側に位置するように配置されており、ケース体20の後端からは、光ファイバ10の先端部を除く部分が外部に向けて引き出されている。一方、レンズ30は、ケース体20の貫通孔の前端側に位置するように配置されている。
【0036】
これにより、光ファイバ10の先端面10aとレンズ30の後端面30bとは、ケース体20の内部において対向して配置されることになり、特に本実施の形態においては、これら光ファイバ10の先端面10aとレンズ30の後端面30bとが当接した状態とされている。
【0037】
光ファイバ10の先端部は、ケース体20に設けられたカシメ部22によってカシメ固定されることで保持されている。カシメ部22は、ケース体20が周方向において実質的に均等に縮径するようにケース体20の軸方向に沿った一部を塑性変形させたものであり、当該縮径されたカシメ部22により、ケース体20の内部に配置された光ファイバ10が挟み込まれることで保持されている。
【0038】
より詳細には、上述したように、当該カシメ部22によって保持される光ファイバ10の先端部は、コア11およびクラッド12を含む芯線が被覆材13によって覆われた状態にあるため、当該縮径したカシメ部22によって適度な弾性を有する被覆材13が押圧されて変形することになり、当該カシメ部22が被覆材13の外周面10bに喰い込むことで強固にその固定が行なわれる。また、弾性を有する被覆材13がカシメ部22と芯線との間に位置することにより、芯線の変形が抑制され、光ファイバ10の光学特性がカシメ固定によって劣化することが防止可能となる。
【0039】
ここで、カシメ部22としては、周方向において実質的に均等に縮径させることが必要であり、このようにケース体20の一部を周方向において実質的に均等に縮径させることにより、光ファイバ10のケース体20に対する高精度の位置決めが可能となって光ファイバ10の光軸にずれが生じることが防止できる。そのため、カシメ部22としては、カシメ後においてその外形が正多角柱状または円柱状とされることが好ましく、本実施の形態においては、上述したように正六角柱状とされている。
【0040】
一方、レンズ30は、ケース体20に圧入固定されることでケース体20によって保持されている。当該圧入固定は、主としてレンズ30の円柱部31をケース体20の貫通孔に強い圧力をもって押し込むことで行なわれ、これによりレンズ30の外周面30cがケース体20の内周面20aに圧接することでレンズ30がケース体20によって保持されることになる。当該圧入固定を利用することにより、レンズ30のケース体20に対する高精度の位置決めが可能となり、レンズ30の光学中心にずれが生じることが防止可能となる。
【0041】
ここで、レンズ30の外周面30cには、微小凹凸が設けられている(
図4(B)および
図4(C)参照)。このようにレンズ30の外周面30cに微小凹凸を設けることとすれば、当該微小凹凸のうちの凸部が、圧入の際の潰し代として機能することになり、よりスムーズにかつ強固にレンズ30をケース体20に対して圧入固定することが可能となる。
【0042】
したがって、上記構成を採用することにより、光ファイバ10およびレンズ30がいずれもケース体20に対して位置決めされた状態で固定できることになるため、これら光ファイバ10の光軸とレンズ30の光学中心とを容易に合致させることが可能となり、所望の光学特性が得られる光ファイバヘッドとすることができる。
【0043】
ここで、
図2に示すように、カシメ部22は、ケース体20の軸方向に沿って光ファイバ10の先端面10aが位置する部分から距離をもってケース体20の後端側の位置に設けられている。このように構成することにより、カシメ部22を用いて光ファイバ10をカシメ固定することで生じる光ファイバ10のケース体20の軸方向に沿った伸長の影響が、光ファイバ10の先端面10aにまで達することが緩和できることになり、光ファイバ10の先端面10aの位置決めがより高精度に行なえることになる。
【0044】
また、当該構成を採用しつつ上述したように光ファイバ10の先端面10aとレンズ30の後端面30bとが当接するように構成すれば、光ファイバ10のケース体20の軸方向に沿った伸長によって光ファイバ10の先端面10aがレンズ30の後端面30bに押し付けられることにもなるため、その光軸のずれがより確実に防止できることになる。
【0045】
図4(A)は、
図1に示す光ファイバヘッドにおける光路の一例を示す概略図であり、
図4(B)および
図4(C)は、当該光ファイバヘッドの細部の構造を示す要部拡大断面図である。次に、この
図4を参照して、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aにおける光路および細部の構造について説明する。なお、
図4(A)に示す光路は、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aを用いて光を投光した場合の光路を模式的に示したものである。
【0046】
図4(A)に示すように、光ファイバ10の芯線の内部を伝播してきた光は、光ファイバ10の先端面10aから光ファイバ10の外部に向けて出射される。光ファイバ10の先端面10aから出射された光は、レンズ30の後端面30bからレンズ30の内部に向けて入射し、当該レンズ30の内部において前端面30a側に向けて伝播され、前端面30aに到達することになる。なお、その際、光ファイバ10の先端面10aから光軸に対して比較的大きい角度をもって出射された光は、主としてレンズ30の円柱部31の外周面30cにおいて反射され、角度を変えてレンズ30の前端面30aに到達することになる。
【0047】
レンズ30の前端面30aに到達した光のうち、レンズ30の光学中心と合致するように伝播された光以外の光は、凸状のレンズ面からなる前端面30aにおいて屈折されて当該前端面30aからレンズ30の外部に向けて出射される。また、レンズ30の前端面30aに到達した光のうち、レンズ30の光学中心と合致するように伝播された光は、前端面30aにおいて屈折されることなくそのまま透過し、当該前端面30aからレンズ30の外部に向けて出射される。
【0048】
これにより、光ファイバヘッド1Aから照射される照射光100は、適度に集光された状態の光となる。したがって、当該レンズ30を設けることにより、これを設けなかった場合に比べ、光ファイバヘッド1Aから照射される照射光100の拡がりを抑制することが可能となり、照射範囲内における光量の増大を図ることができる。
【0049】
ここで、
図4(B)および
図4(C)に示すように、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aにあっては、上述したように、レンズ30の外周面30cに微小凹凸が設けられている。当該微小凹凸は、前述のとおりケース体20に対するレンズ30の圧入の際の潰し代として機能するものであるが、光ファイバヘッド1Aの光学特性に改善をもたらすものでもある。
【0050】
すなわち、レンズ30の外周面30cに微小凹凸を設けることとすれば、光ファイバ10の先端面10aから光軸に対して大きい角度をもって出射された光は、当該微小凹凸に対して照射されることになるため、当該部分において乱反射することになる。そのため、特に光軸に対して顕著に大きい角度をもって出射された光は、レンズ30の内部において向きを大きく変えることで繰り返し反射されることになり、その結果これが減衰してレンズ30の前端面30aに到達し難くなる。したがって、光ファイバヘッド1Aから照射される照射光100に迷光が含まれることが抑制可能となり、光ファイバヘッド1Aの光学特性が改善できることになる。
【0051】
また、
図4(A)に示すように、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aにあっては、上述したように、射出成形の際に生じるゲート跡30dが、レンズ30の後端面30b寄りに位置する円錐台部32の外周面30c上に位置している。このように構成することにより、レンズ30の内部において光が主として反射することとなる、レンズ30の前端面30a寄りに位置する円柱部31の外周面30cを滑らかな形状とすることが可能になるため、当該ゲート跡30dを当該部分の外周面30c上に設けた場合に比べ、光量の減少や迷光の発生を抑制でき、光ファイバヘッド1Aの光学特性の劣化が防止できることになる。
【0052】
なお、上記においては、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aを用いて光を投光した場合の効果について説明を行なったが、当該光ファイバヘッド1Aを用いて光を受光することとした場合にも、同様の効果が得られることになる。なお、その場合、光ファイバヘッド1Aから照射される光に迷光が含まれることが抑制可能となる効果に代えて、外乱光が光ファイバ10に入射されることが抑制できるという効果が得られることになる。
【0053】
図5ないし
図7は、本実施の形態における光ファイバヘッドの組立手順を示す概略図である。次に、これら
図5ないし
図7を参照して、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aの組立手順について説明する。
【0054】
上述した本実施の形態における光ファイバヘッド1Aを組立てるに際しては、まず、
図5に示すように、ケース体20に対してレンズ30が圧入される。その際、レンズ30は、ケース体20の前端側からケース体20に設けられた貫通孔に対して圧入される。これにより、レンズ30がケース体20に対して位置決めされて固定されることになる。
【0055】
ここで、本実施の形態においては、上述したように、後端面30b側に向かうに連れて縮径した形状を有する円錐台部32がレンズ30の後端寄りの位置に設けられているため、圧入の際にスムーズにレンズ30をケース体20に対して挿入することができる。
【0056】
次に、
図6に示すように、レンズ30が組付けられてなるケース体20に対して光ファイバ10の先端部が挿入される。その際、光ファイバ10の先端部は、ケース体20の後端側からケース体20に設けられた貫通孔に対して挿入される。
【0057】
ここで、光ファイバ10の先端部は、芯線が被覆材13によって覆われた状態のままでよいため、当該被覆材13を取り除いて芯線を露出させる必要はない。また、光ファイバ10のケース体20への挿入後の状態においては、光ファイバ10の先端面10aが、先にケース体20に組付けられたレンズ30の後端面30bに当接した状態とされることが好ましい。
【0058】
次に、
図7(A)および
図7(B)に示すように、カシメ固定後においてカシメ部22となるケース体20のカシメ部形成予定領域22’に、カシメ具50A,50Bを用いてカシメ加工が施される。
【0059】
ここで、カシメ具50A,50Bとしては、たとえば組み合わせることで正六角柱状の空間が内部に形成されることとなる半割状のものが用いられる。そして、上記カシメ加工に際しては、これらカシメ具50A,50Bがケース体20のカシメ部形成予定領域22’を挟み込むよう配置され、その後、これらカシメ具50A,50Bが互いに接近するように移動されることで上記カシメ加工が実施される。
【0060】
これにより、カシメ部形成予定領域22’が周方向において実質的に均等に縮径するように塑性変形することになり、その外形が六角柱状に変化し、これによってカシメ部22がケース体20の後端側の位置に形成されることになる。これに伴い、光ファイバ10の先端部がケース体20に対して位置決めされて固定されることになる。
【0061】
以上により、上述した本実施の形態における光ファイバヘッド1Aの組立てが完了する。なお、上記においては、光ファイバ10の先端部のケース体20に対するカシメ固定に先立って、レンズ30のケース体20に対する圧入固定が行なわれるようにした場合の組立手順を例示したが、先に光ファイバ10の先端部のケース体20に対するカシメ固定が行なわれた後に、レンズ30のケース体20に対する圧入固定が行なわれるようにしてもよい。
【0062】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aとすることにより、簡便な構成にて、高精度に光ファイバ10をケース体20に対して位置決めして固定できるとともに、光ファイバ10に対するケース体20の十分な保持力が確保でき、さらには安価にかつ容易に製造できる光ファイバヘッドとすることができる。
【0063】
なお、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aとした場合には、カシメリングを用いて光ファイバをケース体に固定する場合に比べ、光ファイバの固定のために光ファイバに加えられることとなる締め付け力が作用する光ファイバの軸方向長さを長くすることもできる。このようにすれば、光ファイバに対するケース体の十分な保持力を確保しつつ、光ファイバに対して作用する締め付け力を光ファイバの軸方向に沿って分散させることが可能になるため、光ファイバの所定部位に局所的に上記締め付け力が集中してしまうことが回避でき、光ファイバの破損を未然に防止できる効果も得られる。
【0064】
また、本実施の形態における光ファイバヘッド1Aとした場合には、接着剤を用いて光ファイバをケース体に固定する場合に比べて接着剤が不要になるため、接着剤を使用した場合にその耐熱性の低さから設置が困難となる高温環境下への設置や、接着剤を使用した場合に当該接着剤からアウトガスが発生するためにその設置が困難となる半導体製造現場等のクリーン環境下への設置も可能になり、その適用範囲を大幅に拡大できる効果も得られる。
【0065】
図8ないし
図10は、上述した本実施の形態に基づいた第1ないし第3変形例に係る光ファイバヘッドの断面図である。以下、これら
図8ないし
図10を参照して、本実施の形態に基づいた第1ないし第3変形例に係る光ファイバヘッド1B〜1Dについて説明する。
【0066】
図8に示すように、第1変形例に係る光ファイバヘッド1Bは、上述した本実施の形態における光ファイバヘッド1Aと比較した場合に、カシメ部22が位置する部分のケース体20の内周面20aに雌ネジ部23が設けられることによって当該内周面20aに凹凸形状が付与されている点においてのみ相違している。当該雌ネジ部23は、たとえば鋳造品からなるケース体20に切削加工等の付加的な加工を施すことで形成できる。
【0067】
このように構成した場合には、上述した本実施の形態において説明した効果に加え、当該雌ネジ部23が形成されたカシメ部22の内周面20aが被覆材13の外周面10bにより強固に喰い込むことによって光ファイバ10に対するケース体20の保持力がさらに向上する効果を得ることができる。
【0068】
なお、カシメ部22の内周面20aに形成される凹凸形状としては、上述した如くの雌ネジ形状である必要はなく、環状溝あるいは環状突起がカシメ部22の内周面20aに単数設けられていてもよいし、環状溝または環状突起がカシメ部22の内周面20aに複数軸方向に沿って設けられていてもよい。また、カシメ部22の内周面20aに複数の突起が点列状に設けられていてもよい。
【0069】
図9に示すように、第2変形例に係る光ファイバヘッド1Cは、上述した本実施の形態における光ファイバヘッド1Aと比較した場合に、光ファイバ10の先端面10aがレンズ30の後端面30bに当接していない点においてのみ相違している。このように構成した場合にも、上述した本実施の形態において説明した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0070】
図10に示すように、第3変形例に係る光ファイバヘッド1Dは、上述した本実施の形態における光ファイバヘッド1Aと比較した場合に、ケース体20の本体部21の後端寄りの部分にコーナ部が設けられ、さらにその後端側の部分にカシメ部22が設けられている点においてのみ相違している。このように構成した場合にも、上述した本実施の形態において説明した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、以上においては、レンズ30として、集光レンズを用いた場合を例示したが、光ファイバヘッドから出射される光を平行光化するコリメートレンズ等、集光レンズ以外の各種のレンズにこれを置換することも当然に可能である。
【0072】
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2における光ファイバヘッドの断面図である。以下、この
図11を参照して、本実施の形態における光ファイバヘッド1Eについて説明する。
【0073】
図11に示すように、本実施の形態における光ファイバヘッド1Eは、上述した実施の形態1における光ファイバヘッド1Aと比較した場合に、光ファイバ10の先端面10aに対向配置された光学素子がミラー40である点において相違している。
【0074】
具体的には、光ファイバヘッド1Eは、前端が閉塞部24によって閉塞された中空略筒状のケース体20を備えており、当該ケース体20の前端寄りの位置に、光ファイバ10の先端面10aにその後端面40cが対向することとなるように、ミラー40が組付けられてなるものである。当該ミラー40は、入射した光の進行方向を変更するものであり、ケース体20の前端寄りの本体部21には、当該光が通過する開口窓25が設けられている。
【0075】
このように構成された光ファイバヘッド1Eにおいても、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。すなわち、上記構成を採用することにより、簡便な構成にて、高精度に光ファイバ10をケース体20に対して位置決めして固定できるとともに、光ファイバ10に対するケース体20の十分な保持力が確保でき、さらには安価にかつ容易に製造できる光ファイバヘッドとすることができる。
【0076】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3における光ファイバヘッドの断面図である。以下、この
図12を参照して、本実施の形態における光ファイバヘッド1Fについて説明する。
【0077】
図12に示すように、本実施の形態における光ファイバヘッド1Fは、上述した実施の形態1における光ファイバヘッド1Aと比較した場合に、光ファイバ10の先端面10aに対向配置された光学素子がアパーチャ26aである点において相違している。
【0078】
具体的には、光ファイバヘッド1Fは、前端が絞り部26によって概ね閉塞された中空略筒状のケース体20を備えており、光ファイバ10の先端面10aが当該絞り部26の後端面26cに対向することとなるように、光ファイバ10の先端部がケース体20の前端にまで挿入されてなるものである。ここで、アパーチャ26aは、ケース体20の絞り部26に設けられた開口部にて構成されており、余分な光を遮ることでビームスポットの形状を整えて照射範囲を適正化するものである。
【0079】
このように構成された光ファイバヘッド1Fにおいても、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。すなわち、上記構成を採用することにより、簡便な構成にて、高精度に光ファイバ10をケース体20に対して位置決めして固定できるとともに、光ファイバ10に対するケース体20の十分な保持力が確保でき、さらには安価にかつ容易に製造できる光ファイバヘッドとすることができる。
【0080】
上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例においては、光学素子として、レンズ、ミラー、アパーチャを具備した光ファイバヘッドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明はこの他にも、光学素子として偏光フィルタを具備した光ファイバヘッドにも当然にその適用が可能である。
【0081】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例においては、ケース体の外周面に雄ネジ部が形成された構成の光ファイバヘッドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、当該雄ネジ部は必須のものではなく、雄ネジ部が設けられていない光ファイバヘッドに本発明を適用すること当然に可能である。
【0082】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例においては、ケース体として、その内部に形成された貫通孔が円柱状の空間となるように構成されたものを例示したが、当該貫通孔の形状はこれに限られるものではなく、内部に収容される光ファイバの先端部および光学素子の形状に合わせて局所的に貫通孔が縮径したり拡径したりした形状とされていてもよい。
【0083】
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨に照らして許容される範囲で当然にその組み合わせが可能である。
【0084】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。