特許第6018532号(P6018532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018532半導体ウエハ、放射線検出素子、放射線検出器、および化合物半導体単結晶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018532
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】半導体ウエハ、放射線検出素子、放射線検出器、および化合物半導体単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/48 20060101AFI20161020BHJP
   C30B 11/10 20060101ALI20161020BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C30B29/48
   C30B11/10
   G01T1/24
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-72830(P2013-72830)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196213(P2014-196213A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸司
(72)【発明者】
【氏名】野田 朗
(72)【発明者】
【氏名】平野 立一
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−125148(JP,A)
【文献】 特開昭61−106498(JP,A)
【文献】 特開平04−367597(JP,A)
【文献】 特開平04−097991(JP,A)
【文献】 特開2003−277197(JP,A)
【文献】 特開平09−124310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛濃度が1.6原子%以上2.2原子%以下で、インジウム濃度が0.04重量ppm以上0.25重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶または塩素濃度が0.5重量ppm以上3.0重量ppm以下のテルル化カドミウム単結晶からなり、
抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下であり、
前記単結晶から切出されたウエハから取得される矩形基板における面内の抵抗率の相対標準偏差が20%以下となることを特徴とする半導体ウエハ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ウエハから主面が矩形となるように切り出された基板と、
前記基板の一方の主面に形成された共通電極と、
前記基板の他方の主面に行列状に複数形成されたピクセル電極と、を備えたことを特徴とする放射線検出素子。
【請求項3】
700V以上の電圧を印加したときの素子抵抗率が2.90×10Ωcm以上8.56×10Ωcm以下であることを特徴とする請求項2に記載に記載の放射線検出素子。
【請求項4】
請求項2または3に記載の放射線検出素子と、
前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子にバイアス電圧を印加する電源と、
前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子から出力された電気信号を増幅する増幅部と、を備えたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
テルル化亜鉛カドミウムからなる化合物半導体単結晶の製造方法であって、
所定量のテルルおよび所定量のカドミウムを耐熱性の容器に充填し、
亜鉛および不純物であるインジウムを、単結晶中における亜鉛濃度が1.6原子%以上2.2原子%以下、インジウム濃度が0.04重量ppm以上0.25重量ppm以下となるようにそれぞれ量を調節して前記容器に入れ、
前記容器を炉の内部に載置し、前記容器を加熱して前記テルル、前記カドミウムおよび前記亜鉛を含む原料を溶融させて融液にするとともに、前記インジウムを不純物として前記融液中に拡散させ、
前記融液から単結晶を成長させていくことを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項6】
テルル化カドミウムからなる化合物半導体単結晶の製造方法であって、
所定量のテルルおよび所定量のカドミウムを耐熱性の容器に充填し、
不純物である塩素を、単結晶中における塩素濃度が0.5重量ppm以上3.0重量ppm以下となるように量を調節して前記容器に入れ、
前記容器を炉の内部に載置し、前記容器を加熱して前記テルルおよび前記カドミウムを溶融させて融液にするとともに、前記塩素を前記融液中に溶融拡散させ、
前記融液から単結晶を成長させていくことを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記融液に、表面から下方に向かって温度が上がっていくような温度勾配を持たせながら前記融液全体の温度を下げていくことにより、前記融液の表面から下方に向かって前記単結晶を成長させていくことを特徴とする請求項6に記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項8】
前記融液の上部における温度勾配を、前記融液の下部における温度勾配よりも小さくした状態で、前記単結晶を成長させることを特徴とする請求項7に記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項9】
前記融液の上部における温度勾配を0.05℃/cm以上1.0℃/cm以下にし、
前記融液の下部における温度勾配を1.0℃/cm以上5.0℃/cm以下にして、前記単結晶を成長させることを特徴とする請求項7または8に記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項10】
前記炉の内部に第1のグラファイト板を略水平に配置し、
前記容器を前記第1のグラファイト板の下方に位置するように載置して、前記単結晶を成長させ、
前記容器を前記第1のグラファイト板の下方に位置させたまま前記単結晶を熱処理することを特徴とする請求項6から9の何れか一項に記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項11】
前記炉の内部であって前記第1のグラファイト板の下方に、第2のグラファイト板を、前記第1のグラファイト板と対向するように略水平に配置し、
前記容器を、前記第1のグラファイト板の下方かつ前記第2のグラファイト板の上方に位置するように載置した状態で、前記単結晶を成長させ、
前記容器を前記第1のグラファイト板の下方かつ前記第2のグラファイト板の上方に位置させたまま前記単結晶を熱処理することを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
【請求項12】
前記カドミウムの蒸気圧を印加しながら、前記熱処理を行うことを特徴とする請求項10または11に記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体単結晶からなる半導体ウエハ、この半導体ウエハから切り出された基板を備える放射線検出素子、この放射線検出素子を備える放射線検出器、および化合物半導体単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線検出素子の基板をなす各種の化合物半導体の開発が行われてきたが、その中でもII−VI族化合物半導体であるテルル化カドミウム(CdTe)やテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)が、近年の結晶開発における技術革新により有力な材料として注目されている。
CdTeやCdZnTeは、原子番号が比較的大きい元素からなるので、放射線(硬X線やγ線)の検出効率が高い。このため、CdTeやCdZnTeを用いた放射線検出器(以下CdTe系検出器)は、他の化合物半導体を用いたものよりも小型かつ高性能なものとすることができる。
また、CdTe系検出器は、放射線を直接電流に変換する仕組みなので、ヨウ化ナトリウム(NaI)に代表されるルミネッセンスを介した間接的な動作機構のシンチレータ検出器に比べ、検出効率およびエネルギー分解能において優れている。
また、CdTeやCdZnTeは、バンドギャップが大きいので、熱の影響を受けにくく、動作時の漏れ電流が小さい。このため、CdTe系検出器は、室温で動作可能となり、動作させるために冷却装置が必要なシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)を用いた検出器に比べ、装置を小型化でき、更に、高いバイアス電流を印加することで高いエネルギー分解能を発揮することができる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0186788号明細書
【特許文献2】特開昭63−185898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、CdTe系検出器は、上記のような多くの利点を有する反面、ポラリゼーションと呼ばれる、時間経過とともに検出素子の検出感度が低下する現象を発生させてしまうという問題がある。
このポラリゼーションについての研究を続けてきた結果、発生するポラリゼーションの程度は、基板の抵抗率と相関していることを見出した。すなわち、基板の抵抗率が高いほど発生するポラリゼーションが大きくなり、抵抗率が低いほど小さくなるという傾向があることが分かった。
一般に、CdTeやCdZnTeの単結晶基板は、製造が容易でなく、部位毎の抵抗値にばらつきが生じ易い。このため、一つの検出素子の中には、ポラリゼーションの発生する程度が大きいピクセルと小さいピクセルが生じることになる。CdTe系検出器は、各ピクセルから出力される各電離電流を合わせて一つの放射線スペクトル(電気信号)を得るようにしているので、各ピクセルの検出感度に差が出ることは、その検出素子を備える放射線検出器の放射線検出性能の低下に繋がってしまう。
一方、基板の抵抗率を全体的に低くすることで、局所的に大きなポラリゼーションが発生するのを防ぐことは可能である。しかしながら、基板全体の抵抗率が低すぎると、検出素子から漏れ出すリーク電流(暗電流)が大きくなって検出素子全体の検出感度が低下(得られるスペクトルが劣化)するので、やはり放射線検出器の放射線検出性能は低いものとなってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、CdZnTe単結晶またはCdTe単結晶を基板とする放射線検出素子を備えた放射線検出器において、放射線の検出性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、半導体ウエハにおいて、亜鉛濃度が1.6原子%以上2.2原子%以下で、インジウム濃度が0.04重量ppm以上0.25重量ppm以下のテルル化亜鉛カドミウム単結晶または塩素濃度が0.5重量ppm以上3.0重量ppm以下のテルル化カドミウム単結晶からなり、抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下であり、前記単結晶から切出されたウエハから取得される矩形基板における面内の抵抗率の相対標準偏差が20%以下となることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、放射線検出素子において、請求項1に記載の半導体ウエハから主面が矩形となるように切り出された基板と、前記基板の一方の主面に形成された共通電極と、前記基板の他方の主面に行列状に複数形成されたピクセル電極と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載に記載の放射線検出素子において、700V以上の電圧を印加したときの素子抵抗率が2.90×10Ωcm以上8.56×10Ωcm以下であることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、放射線検出器において、請求項2または3に記載の放射線検出素子と、前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子にバイアス電圧を印加する電源と、前記放射線検出素子に接続され、前記放射線検出素子から出力された電気信号を増幅する増幅部と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、テルル化亜鉛カドミウムからなる化合物半導体単結晶の製造方法において、所定量のテルルおよび所定量のカドミウムを耐熱性の容器に充填し、亜鉛および不純物であるインジウムを、単結晶中における亜鉛濃度が1.6原子%以上2.2原子%以下、インジウム濃度が0.04重量ppm以上0.25重量ppm以下となるようにそれぞれ量を調節して前記容器に入れ、前記容器を炉の内部に載置し、前記容器を加熱して前記テルル、前記カドミウムおよび前記亜鉛を含む原料を溶融させて融液にするとともに、前記インジウムを不純物として前記融液中に溶融拡散させ、前記融液から単結晶を成長させていくことを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載の発明は、テルル化カドミウムからなる化合物半導体単結晶の製造方法であって、所定量のテルルおよび所定量のカドミウムを耐熱性の容器に充填し、不純物である塩素を、単結晶中における塩素濃度が0.5重量ppm以上3.0重量ppm以下となるように量を調節して前記容器に入れ、前記容器を炉の内部に載置し、前記容器を加熱して前記テルルおよび前記カドミウムを溶融させて融液にするとともに、前記塩素を前記融液中に溶融拡散させ、前記融液から単結晶を成長させていくことを特徴としている。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、前記融液に、表面から下方に向かって温度が上がっていくような温度勾配を持たせながら前記融液全体の温度を下げていくことにより、前記融液の表面から下方に向かって前記単結晶を成長させていくことを特徴としている。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、前記融液の上部における温度勾配を、前記融液の下部における温度勾配よりも小さくした状態で、前記単結晶を成長させることを特徴としている。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、前記融液の上部における温度勾配を0.05℃/cm以上1.0℃/cm以下にし、
前記融液の下部における温度勾配を1.0℃/cm以上5.0℃/cm以下にして、前記単結晶を成長させることを特徴としている。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9の何れか一項に記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、前記炉の内部に第1のグラファイト板を略水平に配置し、前記容器を前記第1のグラファイト板の下方に位置するように載置して、前記単結晶を成長させ、前記容器を前記第1のグラファイト板の下方に位置させたまま前記単結晶を熱処理することを特徴としている。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、前記炉の内部であって前記第1のグラファイト板の下方に、第2のグラファイト板を、前記第1のグラファイト板と対向するように略水平に配置し、前記容器を、前記第1のグラファイト板の下方かつ前記第2のグラファイト板の上方に位置するように載置した状態で、前記単結晶を成長させ、前記容器を前記第1のグラファイト板の下方かつ前記第2のグラファイト板の上方に位置させたまま前記単結晶を熱処理することを特徴としている。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項10または11に記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、前記カドミウムの蒸気圧を印加しながら、前記熱処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、単結晶中において濃度が所定範囲に収まるよう添加量が調節された原料の一部(CdZnTe単結晶の場合はZnおよびIn、CdTe単結晶の場合はCl)の作用により、抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下と高く、かつ複数の基板に分割した場合に、各基板から得られる抵抗率の相対標準偏差(変動係数)が20%以内と小さい半導体ウエハを得ることができる。このため、このウエハから切り出された基板を備える放射線検出素子を用いれば、高いバイアス電圧を印加しても、多量のリーク電流や、局所的に大きなポラリゼーションが発生するのを抑制することができる。
従って、CdZnTe単結晶またはCdTe単結晶を基板とする放射線検出素子を備えた放射線検出器において、放射線の検出性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る放射線検出器の構成図である。
図2図1の放射線検出素子の基板となる化合物半導体単結晶を製造するための単結晶成長炉の縦断面図である。
図3】同実施形態の製造方法で製造した化合物半導体単結晶から切り出した基板(実施例2)の局所抵抗率の分布図である。
図4】同実施形態に係る基板(実施例3)の局所抵抗率の分布図である。
図5】同実施形態に係る基板(実施例4)の局所抵抗率の分布図である。
図6】従来の製造方法で製造した化合物半導体単結晶から切り出した基板(比較例1)の局所抵抗率の分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
〔放射線検出器および放射線検出素子の構成〕
まず、本実施形態の放射線検出器および放射線検出素子の概略構成について説明する。
本実施形態の放射線検出器1は、図1に示すように、放射線検出素子2、コンデンサ3、増幅部4等で構成されている。
【0022】
放射線検出素子2を構成する基板21は、II−VI族化合物半導体単結晶であるテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)単結晶またはテルル化カドミウム(CdTe)単結晶で、主面が矩形の薄い板状に形成されている。また、基板21の主面は、所定の結晶面(例えば(111)面)と平行になっている。以下、CdZnTeとCdTeを区別しない場合は、Cd(Zn)Teと表記する。
共通電極22は、金属(例えば白金(Pt))の薄膜で、基板21の一方の主面(以下B面21b)全体を覆うように形成されている。ピクセル電極23は、金属の薄膜で基板21の他方の主面(以下A面21a)に複数設けられるとともに、マトリクス(行列)状に配列されている。以下、共通電極22とピクセル電極23を区別しない場合は、両電極を合わせて電極22,23と表記する。
【0023】
放射線検出素子2は、共通電極22がグランドに接続(接地)され、各ピクセル電極23が電源(制御部)5に接続されることにより所定のバイアス電圧が印加されるようになっている。また、ピクセル電極23は、コンデンサ3および増幅部4に接続されている。なお、図1では、右端のピクセル電極のみコンデンサ3、増幅部4に接続されている様子が示されているが、他のピクセル電極23も同様にコンデンサ3および増幅部4に接続されている。
放射線検出器1は、このような構成により、放射線検出素子2に放射線(硬X線やγ線)を受けると、基板21内に電子正孔対を生成し、これを放射線検出素子2に印加されているバイアス電圧により電離電流としてピクセル電極23から出力する。そして、この電離電流を、コンデンサ3、増幅部4を経て電気信号に変換し、データ生成部6に出力する。
【0024】
〔単結晶成長炉の構成〕
次に、上記基板21を形成するCd(Zn)Te単結晶を製造するための単結晶成長炉9の構成について説明する。
本実施形態の単結晶成長炉9は、垂直温度勾配凝固(VGF:Vertical Gradient Freezing)法に用いられるもので、図2に示すように、外側の単結晶成長炉本体、蒸気圧印加用のカドミウム充填部91、ヒーター92、石英アンプル93等で構成されている。
ヒーター92a、92bは、本体の内部に縦列し、それぞれが複数段の発熱部を有する構成で配置されている。各ヒーター92a、92bはそれぞれ独立して加熱温度を設定可能となっている。
【0025】
石英アンプル93は、円筒状のるつぼ収納部93aとるつぼ収納部93aの下部から下方に向かって延びるカドミウム蒸気圧制御用の管状のリザーバ部93bからなる。石英アンプル93は、炉本体内に配置され、るつぼ収納部93aが上部ヒーター92aに囲まれ、リザーバ部93bが下部ヒーター92bに囲まれるようになっている。
また、るつぼ収納部93aの内側底面には、グラファイト製の円盤94aが配置されている。るつぼは、この円盤94aの上に載置される。また、るつぼ収納部93aの内側空間の上部には、グラファイト製の円盤94bが、下方の円盤94aと対向するように配置されている。るつぼがアンプル93の所定位置に配置されると、図2に示すように、るつぼが上下の両円盤94a,94bに挟まれることとなる。該上下の円盤94a,94bはるつぼの径方向の均熱板94として機能するものである。
【0026】
〔化合物半導体単結晶および半導体ウエハの製造方法〕
次に、上記単結晶成長炉9を用いて本実施形態の化合物半導体単結晶であるCd(Zn)Te単結晶を製造する方法と、Cd(Zn)Te単結晶から本実施形態の半導体ウエハであるCd(Zn)Teウエハを製造する方法について説明する。
本実施形態のCd(Zn)Te単結晶の製造方法は、準備工程、結晶育成工程、熱処理工程からなり、Cd(Zn)Teウエハの製造方法は、切断工程、ラッピング工程、鏡面研磨工程からなる。
【0027】
初めの準備工程では、まず、るつぼ内に原料の充填を行う。製造しようとする単結晶がCdZnTe単結晶である場合には、純度6N(99.9999%)のCd、6NのTe、Znおよびドーパント材(不純物)であるInを所定量充填する。なお、ZnとInは、単結晶中におけるZnの濃度が1.6〜2.2at%、Inの濃度が0.04〜0.25wtppmとなるように、それぞれ量を調節して加える。
一方、製造しようとする単結晶がCdTe単結晶の場合には、純度6NのCd、6NのTe、ドーパント材であるClを所定量充填する。なお、Clは、単結晶におけるClの濃度が0.5〜3.0wtppmとなるように量を調節して加える。
【0028】
そして、石英アンプル93のリザーバ部93bにCdを入れ、原料が充填されたるつぼを石英アンプル93内に載置する。そして、石英アンプルを真空封止し、ヒーター91a、91bで炉内を加熱して、るつぼに入った原料を合成する。その後、炉内を更に加熱して原料を融解させて融液にするとともに、ドーパントを融液中に拡散させる。このとき、下部ヒーター92bの温度を調節することによりCdの蒸気圧を調整し、融液からのCdの蒸発を抑制する。
【0029】
るつぼ内の原料が融液となり安定化した後は、結晶育成工程に移る。結晶育成工程では、上部ヒーター92aの縦列に複数段で構成された各発熱部の出力を調整して、融液の下端から上端に向かって低くなるような温度勾配が生じるようにする。なお、温度勾配は、融液の上部においては0.05〜1.0℃/cmとなるように、また、融液の下部においては、単結晶の成長時の降温工程で、るつぼ内の原料融液が一気に固化することを避けるために1.0〜5.0℃/cm程度と上部よりも大きな温度勾配となるように各ヒーターの出力を調節する。
【0030】
なお、本発明で定義する融液の上部領域とは、一概に定義できるものではないが、単結晶の成長領域を基準に、温度勾配が0.05〜1.0℃/cmの範囲に制御できればよく、たとえば、融液表面を基準として、原料融液の深さ方向に対して1/2となる深さ位置から融液表面に達する領域をAとし、また、原料融液深さの1/3となる深さ位置から融液表面に達する領域をBとし、A〜Bを外れない範囲で適宜調整する。
同様に、融液の下部領域とは、原料融液の深さ方向に対して1/2となる深さ位置から融液底部に至る領域をCとし、また、原料融液の深さ方向に対して、2/3となる深さ位置から融液底部に至る領域をDとすると、C〜Dの深さ範囲で適宜調整する。
【0031】
そして、融液に温度勾配を持たせたまま炉内の温度を徐々に下げていくと、最も温度が低くなる融液の表面に単結晶が生成し、それが下方に向かって成長していく。詳細なメカ二ズムは不明であるが、上記の成長条件とすることによって、単結晶の成長界面を含む融液の上部では、縦方向の温度勾配が小さいことから、融液の対流が小さく安定した状態となり、一方、融液の下部では温度勾配を大きいことから、融液の対流が大きくなり、融液下部の熱が対流によって上部に均等に伝播しやすくなり、この上下で異なる融液の対流が、単結晶の径方向の温度勾配を平坦化していると考えられる。なお、実際の温度分布測定の結果より、径方向の温度分布が平坦化に寄与していることを確認している。このように単結晶の径方向の温度勾配を平坦化することで、Cd(Zn)Teウエハ中の不純物の分布を低減していると考えられる(ストリエーションパターンの低減)。
【0032】
単結晶を所定長まで成長させた後は、熱処理工程に移る。熱処理工程では、まず、成長したCd(Zn)Te単結晶を石英アンプル内に保持したまま、上部ヒーター92aの複数段からなる各発熱部の温度を調節することにより、また下部ヒーター92bの温度を制御することでCdの蒸気圧を所定圧力に維持したまま、炉内温度を上記単結晶の成長終了時の温度から930〜970℃(好ましくは940〜960℃、より好ましくは945〜955℃)まで低下させる。そして、その状態でCdZnTe単結晶またはCdTe単結晶を17〜23時間(好ましくは18〜22時間、より好ましくは19〜21時間)熱処理(アニール)する。このとき、るつぼの上側および下側においてそれぞれ水平方向に設置されたグラファイトの円盤が均熱板として機能し、単結晶の径方向(水平方向)の温度勾配が低減される。これにより、単結晶中の径方向に均等に熱処理温度が付与され、適切なCd蒸気圧が印加されているため、単結晶中に生成されたCdの空孔欠陥の分布を均一化することができる。Cdの空孔欠陥はアクセプター型の欠陥とされており、本発明ではドナー型の不純物(In、Cl等)を単結晶中に添加することで、高抵抗化を実現しているが、上述のように単結晶の径方向の温度勾配を平坦化することで同心円状からなる不純物元素の濃度縞(ストリエーションパターン)を低減し、さらに、本熱処理工程による径方向のCdの空孔欠陥の分布を均一化して、該単結晶の径方向の抵抗率分布を均一化している。
熱処理が終わった後は、炉内の温度を室温まで下げて単結晶を冷却し、るつぼから取り出す。
以上の工程を経ることにより、本実施形態のCd(Zn)Te単結晶のインゴットが製造される。
【0033】
単結晶を熱処理した後は、切断工程に移る。切断工程では、Cd(Zn)Te単結晶のインゴットを所定の結晶面に沿って切断し、複数のウエハを切り出す。
ウエハを切り出した後は、ラッピング工程に移る。ラッピング工程では、切り出したウエハの切断面をラッピング用の研磨材で研磨して凹凸を取り除く。
切断面を平坦化した後は、鏡面研磨工程に移る。鏡面研磨工程では、ウエハの研磨面を鏡面研磨用の研磨材で研磨して鏡面に仕上げる。
以上の工程を経ることにより、本実施形態のCd(Zn)Teウエハが製造される。
【0034】
このCd(Zn)Teウエハは、単結晶中の不純物の濃度分布のばらつきやCd空孔欠損分布のばらつきが少ないため、抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下と高く、複数の基板に分割した場合に、各基板から得られる抵抗率の相対標準偏差が20%以下と低いものとすることができる。
【0035】
〔放射線検出素子の製造方法〕
次に、上記Cd(Zn)Teウエハを基板とする放射線検出素子2の製造方法について説明する。本実施形態の放射線検出素子2は、電極形成工程、ダイシング工程、素子抵抗率測定工程を経て製造される。
初めの電極形成工程では、まず、上記のCd(Zn)Teウエハを洗浄し、表面に付着していた異物を除去する。そして、Cd(Zn)Teウエハの研磨面にフォトレジストを塗布し、ピクセル電極パターンが描かれたフォトマスクを用いてフォトレジストを露光する。そして、現像することにより感光したフォトレジストを除去する。そして、Cd(Zn)Teウエハをめっき液に浸漬し、Cd(Zn)Teウエハの研磨面21a,21bのうちフォトレジストの除去された箇所に金属を析出させ薄膜層を形成する。この薄膜層が所定の膜厚まで成長したものが電極22,23となる。電極22,23が形成された後は、不要になったフォトレジストを除去し、Cd(Zn)Teウエハを洗浄し、乾燥させる。
【0036】
電極22,23を形成した後はダイシング工程に移る。ダイシング工程では、研磨面21a,21bに電極22,23が形成されたCd(Zn)Teウエハを切断して複数の基板21に分割するとともに、個々の放射線検出素子2をCd(Zn)Teウエハから切り出す。
素子抵抗率測定工程では、切り出した素子の中から評価用のサンプルを取得し、そのサンプルに電圧を印加してその素子抵抗率を測定する。そして、素子抵抗率が規定の範囲に入らないものを除外する。本実施形態のCd(Zn)Teウエハは、不純物濃度のばらつきが少ないので、この工程で除外される素子は従来よりも少なくなる。従って、放射線検出素子2の歩留まりの向上に繋がる。
以上の各工程を経ることにより、本実施形態の放射線検出素子2が複数製造される。
【0037】
前述したように、Cd(Zn)Teウエハは、抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下であるので、この放射線検出素子2の検出性能は良好なものとなる。また、Cd(Zn)Teウエハを複数の基板に分割した場合に、各基板から得られる抵抗率の相対標準偏差が20%以下となるので、1枚のCd(Zn)Teウエハから、均一な検出性能の放射線検出素子2が数多く切り出すことができる。
【0038】
〔本発明と従来技術との比較〕
次に、本実施形態の基板および放射線検出素子2と、従来製法による基板および放射線検出素子との特性の差異について説明する。
説明に際し、まず、上記製造方法で3本のCdZnTe単結晶のインゴット(実施例1〜3)と1本のCdTe単結晶のインゴット(実施例4)を製造し、さらに、従来の製造方法で1本のCdZnTe単結晶のインゴット(比較例1)を製造した。そして、各インゴットを(111)面に沿って切断して円盤状のウエハを切り出し、さらに各ウエハから正方形の基板を切り出し、各基板の抵抗率等を測定した。具体的には、SEMIMAP SCIENTIFIC INSTRUMENTS社製のCOREMA-WT(contactless resistivity mapping)という測定装置で、基板を、主面に沿って行列状に配列される複数の細かい部分(ピクセル)に分け、部分毎の抵抗率(以下局所抵抗率)を測定した。そして、局所抵抗率の平均値(以下基板の平均抵抗率)や、各局所抵抗率の相対標準偏差(変動係数)を得た。なお、測定した局所抵抗率のうち、平均値よりも30%以上高い数値および30%以上低い数値は、測定結果には含めていない。
【0039】
次に、この各基板のB面にPtで共通電極を形成するとともに、A面にPtでピクセル電極を形成し、各基板をダイシングしてオーミック型の放射線検出素子を製造した。そして、各素子に徐々に電圧を印加していくことで各素子のI−V特性を調べ、I−V特性曲線を描画した。そして、I−V特性曲線から微小電圧(0.1V程度)を印加したときの平均抵抗率(以下0V抵抗率)、700Vの電圧を印加したときの平均抵抗率(以下700V抵抗率)、および900Vの電圧を印加したときの平均抵抗率(以下900V抵抗率)を算出した。表1は、各インゴットの製造条件および各インゴットから得られたウエハの特性を纏めたもの、表2は各ウエハから切り出した基板および各基板から製造した放射線検出素子の特性を纏めたもの、図3〜6は実施例1を除く各基板における局所抵抗率の分布を視覚化したものである。なお、図の色が薄いほど局所抵抗率が高く、濃いほど低いことを示しており、図中のH,Lは、局所抵抗率が高すぎる或いは低すぎることにより測定結果に含めなかった部分を示している。
【0040】
【0041】
【0042】
(実施例1)
実施例1では、In濃度が0.3wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例1のインゴットの上部(固化率0.26)から、主面が18.7mm×18.7mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が2.10at%、In濃度が0.04wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。また、この基板を縦26×横26(合計676)の領域に分けて測定を行ったところ、表2に示すように、局所抵抗率の最小値は6.93×10Ωcm、最大値は1.29×1010Ωcm、基板の平均抵抗率は9.90×10Ωcm、局所抵抗率の相対標準偏差は19.0%であった。
次に、この実施例1の基板から、主面が4mm×4mmの正方形をした放射線検出素子を製造した。そして、この放射線検出素子のI−V特性曲線を描画して計算したところ、0V抵抗率は2.30×1010Ωcm、700V抵抗率は8.56×10Ωcm、900V抵抗率は6.50×10Ωcmであった。
【0043】
(実施例2)
実施例2では、In濃度が0.9wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例2のインゴットの上部(固化率0.25)から、主面が23mm×23mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が2.20at%、In濃度が0.12wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。また、この基板を縦32×横32(合計1024)の領域に分けて測定を行ったところ、表2に示すように、局所抵抗率の最小値は2.00×1010Ωcm、最大値は3.71×1010Ωcm、基板の平均抵抗率は2.85×1010Ωcm、局所抵抗率の相対標準偏差は9.3%であった。また、図3に示すように、実施例2の基板は、一部に抵抗率が低すぎる部位L(図の左下部)が存在しているものの、残りの殆どの領域は局所抵抗率のばらつきが少なくなっていることが分かる。
次に、この実施例2の基板から、実施例1と同形状の放射線検出素子を製造した。そして、この放射線検出素子のI−V特性曲線を描画して計算したところ、0V抵抗率は2.00×1010Ωcm、700V抵抗率は3.60×10Ωcm、900V抵抗率は3.00×10Ωcmであった。
【0044】
(実施例3)
実施例3では、In濃度が0.9wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例3のインゴットの下部(固化率0.68)から、主面が28mm×28mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が1.62at%、In濃度が0.25wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。また、この基板を縦64×横64(合計4096)の領域に分けて測定を行ったところ、表2に示すように、局所抵抗率の最小値は4.05×10Ωcm、最大値は7.52×10Ωcm、基板の平均抵抗率は5.79×10Ωcm、局所抵抗率の相対標準偏差は15.9%であった。また、図4に示すように、実施例3の基板は、一部に局所抵抗率が低すぎる領域L(図の左上部)と高すぎる領域H(図の中央部、右側部、右下部)が存在しているものの、残りの大部分の領域は局所抵抗率のばらつきが少なくなっていることが分かる。
次に、この実施例2の基板から、実施例1,2と同形状の放射線検出素子を製造した。そして、この放射線検出素子のI−V特性曲線を描画して計算したところ、0V抵抗率は2.30×1010Ωcm、700V抵抗率は3.80×10Ωcm、900V抵抗率は2.90×10Ωcmであった。
【0045】
(実施例4)
実施例4では、Cl濃度が100wtppmのCdTe融液からCdTe単結晶のインゴットを製造した。そして、実施例4のインゴットの上部(固化率0.29)から、主面が23mm×23mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Cl濃度が1.4wtppmとなっており、本発明の範囲に収まっていた。また、この基板を縦32×横32(合計1024)の領域に分けて測定を行ったところ、表2に示すように、局所抵抗率の最小値は9.64×10Ωcm、最大値は1.79×10Ωcm、基板の平均抵抗率は1.38×10Ωcm、局所抵抗率の相対標準偏差は6.9%であった。また、図5に示すように、実施例3の基板は、ほぼ全体的に局所抵抗率のばらつきが少なくなっていることが分かる。
次に、この基板から実施例1〜3と同形状の放射線検出素子を製造した。そして、この放射線検出素子のI−V特性曲線を描画し計算したところ、0V抵抗率は1.30×1010Ωcm、700V抵抗率は6.70×10Ωcm、900V抵抗率は5.40×10Ωcmであった。
【0046】
(比較例1)
比較例1では、In濃度が2.0wtppmのCdZnTe融液からCdZnTe単結晶のインゴットを製造した。そして、比較例1のインゴットの上部(固化率0.29)から、主面が18.7mm×18.7mmの正方形で厚さが1.4mmの基板を切り出した。この基板の組成を調べたところ、表1に示すように、Znの割合が2.95at%、In濃度が0.27wtppmとなっており、本発明の範囲を外れていた。また、この基板を縦26×横26(合計676)の領域に分けて測定を行ったところ、表2に示すように、局所抵抗率の最小値は1.65×10Ωcm、最大値は3.07×10Ωcm、基板の平均抵抗率は2.36×10Ωcm、局所抵抗率の相対標準偏差は25.1%であった。また、図6に示すように、比較例1の基板は、抵抗率が高すぎる領域H(図の下部)と低すぎる領域L(図の右上部、下部)が実施例2〜4の基板よりはるかに多く、それ以外の領域においては、右上の領域から左下の領域に向かって局所抵抗率が上昇する傾向にあり、ばらつきが大きくなっていることが分かる。
次に、この基板から実施例1〜4と同形状の放射線検出素子を製造した。そして、この放射線検出素子のI−V特性曲線を描画し計算したところ、0V抵抗率は3.60×10Ωcm、700V抵抗率は4.00×1010Ωcm、900V抵抗率は2.80×1010Ωcmであった。
【0047】
上記実施例1〜4、比較例1の基板における抵抗率の相対標準偏差を比較してみると、比較例1の基板は25.1%であるのに対し、実施例1〜3の基板は、19.0%、9.3%、15,9%、6.9%と、何れも20%以下の低い値となった。このことは、本実施形態の製造方法で製造した基板は、従来の製造方法で製造した基板に比べて部位毎の抵抗率のばらつきが少ないことを示している。
また、上記実施例1〜4、比較例1の基板から製造した放射線検出素子の特性を検討してみると、比較例1の放射線検出素子は、700V抵抗率および900V抵抗率が2.8×1010Ωcm以上と極めて高くなっている。このように抵抗率が高いのは、局所抵抗率のばらつきが大きいことにより、基板61と電極との界面における抵抗が高まり、ポラリゼーションの影響が大きく出たためと考えられる。700V,900V抵抗率がここまで高くなってしまうと、電離電流が非常に流れにくくなってしまう。従って、比較例1の放射線検出素子は、実用レベルの放射線検出器に用いることはできない。これに対し、実施例1〜3の放射線検出素子は、700V抵抗率が3.60×10〜8.56×10Ωcm、900V抵抗率が2.90×10〜6.50×10Ωcmと、何れの電圧においても電離電流を流すのに適した値となっている。
【0048】
以上、説明してきたように、るつぼに原料を充填する際、原料の一部(CdZnTe単結晶の場合はZnおよびIn、CdTe単結晶の場合はCl)を、単結晶中における濃度が所定範囲(CdZnTeの場合はZnが1.6〜2.2at%、Inが0.04〜0.25wtppm、CdTeの場合はClが0.5〜3.0wtppm)となるように量を調節してるつぼに入れることにより、抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下と高く、かつ複数の基板に分割した場合に、各基板の抵抗率の相対標準偏差が20%以下と小さくなるCd(Zn)Teウエハを得ることができる。このため、このCd(Zn)Teウエハから切り出された基板21を備える放射線検出素子2を用いれば、高いバイアス電圧を印加しても、多量のリーク電流や、局所的に大きなポラリゼーションが発生するのを抑制することができる。
従って、Cd(Zn)Te単結晶を基板とする放射線検出素子2を備えた放射線検出器1において、放射線の検出性能を向上させることができる。
【0049】
また、上述したように、実施例2の基板はインゴットの上部から,実施例3の基板はインゴットの上部からそれぞれ切り出したものである。このことは、本実施形態の製造方法を用いて製造したCd(Zn)Te単結晶のインゴットであれば、部位に拘らず(上部であっても下部であっても)、抵抗率の平均値が1.38×10Ωcm以上2.85×1010Ωcm以下であり、複数の基板に分割した場合に、各基板から得られる抵抗率の相対標準偏差が20%以下となるCd(Zn)Teウエハ得ることができることを示している。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、基板21の主面形状を正方形としたが、長方形やその他の形状としてもよく、ピクセル電極23の数や配置は、主面21aの大きさや形状に合わせて決定すればよい。
また、本実施形態では、基板の主面21a,21bを(111)面としたが、これ以外の結晶面としてもよい。
また、本実施形態では、共通電極22、ピクセル電極23をいずれもPtで形成したが、金(Au)やその他の金属でも良いし、これらの金属を含む合金でもよい。更に、共通電極22とピクセル電極23のうち一方を他方と異なる金属で形成する(例えば、共通電極22をインジウム(In)で形成し、ピクセル電極23をPtで形成する)ようにしてもよい。
また、放射線検出素子2とデータ生成部6との間に設けられる回路は、所定の電気信号を得られさえすればその構成は任意である。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 放射線検出器
2 放射線検出素子
21 基板(半導体ウエハ、化合物半導体単結晶)
21a,21b 主面
22 共通電極
23 ピクセル電極
4 増幅部
5 電源
6 データ生成部
9 単結晶成長炉
91 カドミウム充填部
92 ヒーター
92a 上部ヒーター
92b 下部ヒーター
93 石英アンプル
93a るつぼ収納部の石英アンプル部
93b リザーバ部
94 るつぼの径方向の均熱板
94a 円盤(第2のグラファイト板)
94b 円盤(第1のグラファイト板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6