(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018533
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】高速・高温動作の直接変調レーザ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20161020BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/22
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-78782(P2013-78782)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-203960(P2014-203960A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 亘
(72)【発明者】
【氏名】三条 広明
【審査官】
吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−142037(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/101686(WO,A1)
【文献】
特開平10−144990(JP,A)
【文献】
特開平10−022574(JP,A)
【文献】
特開平11−097789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型基板と、前記n型基板上のMQW活性層と、前記MQW活性層上の導波路を形成するクラッド層と、前記クラッド層上のコンタクト層とを備える、リッジ型導波路構造を有する直接変調レーザであって、
前記導波路の両側の前記MQW活性層に、前記導波路の中心から一定の距離をもって直接接するように配置された放熱用金属と、
前記導波路の両側を囲む有機材料と、
前記コンタクト層及び前記有機材料上に形成されたp電極と
を備えることを特徴とする直接変調レーザ。
【請求項2】
前記有機材料は、BCBであることを特徴とする請求項1に記載の直接変調レーザ。
【請求項3】
前記導波路の中心と前記放熱電極との距離が4μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の直接変調レーザ。
【請求項4】
レーザ部共振器長が100μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の直接変調レーザ。
【請求項5】
n型基板上にInGaAlAs材料のMQW活性層をDH成長するステップと、
前記MQW活性層上にp型InPクラッド層を結晶再成長するステップと、
前記クラッド層上にp型InGaAsPコンタクト層を結晶再成長するステップと、
ドライエッチングにより、前記クラッド層及び前記コンタクト層を、導波路の部分を残して除去するステップと、
前記MQW活性層上及び前記導波路上に絶縁膜を形成するステップと、
前記導波路の両側の前記MQW活性層上の少なくとも一部の前記絶縁膜を除去するステップと、
前記導波路の両側の前記MQW活性層上及び前記絶縁膜上に、前記導波路の中心から一定の距離をもって前記MQW活性層に直接接するように放熱電極を形成するステップと、
前記導波路の周囲に有機材料を形成し導波路上部を平坦化するステップと、
を含むことを特徴とする直接変調レーザの製造方法。
【請求項6】
前記有機材料は、BCBであることを特徴とする請求項5に記載の直接変調レーザの製造方法。
【請求項7】
前記導波路の中心と前記放熱電極までの距離が4μm以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の直接変調レーザの製造方法。
【請求項8】
レーザ部共振器長が100μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の直接変調レーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接変調レーザに関し、より詳細には1.3μm帯の波長を出射する高速直接変調レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
高速変調動作が可能な直接変調レーザ(DML:Directly Modulated laser)として、InP基板上にInGaAlAs材料の活性層を形成し、導波路構造にリッジ導波路を採用した報告がある(非特許文献1)。非特許文献1において、リッジ導波路の構造を用いると、60℃において40Gb/sの直接変調動作が可能であることが報告されている。
【0003】
一方、高温での動作に優れた直接変調レーザの構造として、導波路構造に埋込型(BH型)構造を採用した直接変調レーザが知られている(非特許文献2)。非特許文献2において、InGaAlAs材料の多重量子井戸構造(MQW)をFeドープのInP材料で埋込むことにより、70℃においても40Gb/sの高速動作を実現したことが報告されている。この報告では、BH型構造を採用しているため、レーザ部活性層での温度上昇を抑制することができる。その結果、40Gb/sの動作を70℃において実現している。
【0004】
図11は、導波路構造の模式図を示しており、
図11(a)はリッジ型の導波路構造110、
図11(b)はBH型の導波路構造120の模式図を示している。リッジ型構造はInGaAlAs(レーザ部)活性層111がInP材料112および113で縦方向に挟まれており、横方向に対しては導波路部(InP材料113)の脇がBCB(ベンゾシクロロブテン)113で挟まれた構造を持つ。一方、BH型の導波路構造は、InGaAlAs(レーザ部)活性層121が四方にわたりInP材料(122、123及び124)で挟まれた構造を持つ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Nakahara et al “40-Gb/s direct modulation with high extinction ratio operation of 1.3-mm InGaAlAs multiquantum well ridge waveguide distributed feedback lasers” IEEE Photonics Technology Letters, Vol.19, No.19, pp.1436-1439,
【非特許文献2】T.Simoyama, M.Matsuda1, S.Okumura, A.Uetake, M.Ekawa, and T. Yamamoto, “40-Gbps Transmission Using Direct Modulation of 1.3-mm AlGaInAs MQW Distributed-Reflector Lasers up to 70℃” OSA/OFC/NFOEC 2011
【非特許文献3】John E.Bowers, B.Roe Hemenway, Alan H. Gnauck, and Daniel P.Wilt “High-speed InGaAsP Constricted-Mesa Lasers” IEEE Journal of Quantum Electronics, VOL.QE-22, NO.6, JUNE 1986 pp.833-844
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、半導体レーザの素子抵抗は、p側電極とp層の間のコンタクト抵抗が大部分である。そのため、直接変調レーザの駆動時においては、DML素子へ電流を印加(注入)すると、
図11(a)、(b)中のInGaAsPコンタクト層115または125で発熱が生じる。電流注入により投入されたエネルギーの大部分は素子の発熱になり、さらにその発熱の大部分は、主に図中のInGaAsPコンタクト層115または125の抵抗部分で発生する。発生した熱は、発熱箇所を取り巻く材料の熱伝導率に応じて散逸していく。
【0007】
【表1】
【0008】
表1は直接変調レーザに使用される各材料の熱伝導率を示している。また、
図12は直接変調レーザのInGaAsPコンタクト層115または125で発生した熱の流れを示す図であり、
図12(a)はリッジ型導波路構造110の、
図12(b)はBH型導波路構造120の熱の流れを示している。InP材料の熱伝導率に比べ、BCB材料の熱伝導率は200倍以上小さい。またInGaAlAs材料の熱伝導率は、InP材料の10分の1以下である。このような物性値から、InGaAsPコンタクト層115または125で発生した熱は、それぞれ12(a)、(b)のような流れをもって散逸していくと考えることができる。
図12(a)を見ると、リッジ型導波路構造110では熱がレーザ部活性層110を通りInP基板112に流れるのに対し、(b)を見ると、BH型導波路構造ではInP材料124を介して排熱することが可能である。しかしながら、リッジ型導波路構造はBH型導波路構造に比べ作製が容易だという利点がある。したがって、本発明では、リッジ型導波路構造においての高速動作について検討する。
【0009】
ここで、従来のリッジ型導波路構造を有する直接変調レーザのInGaAsPコンタクト層115で発生した熱の影響を説明するための図を
図13に示す。
【0010】
図13に示された従来構造では点線の方向で主に排熱される。
図13中の丸で囲まれた箇所は、レーザ部活性層であり、できるだけこの箇所の温度が動作時に上昇しないことが望ましい。なぜなら半導体レーザは、一般に温度上昇に応じて出力の劣化、動作帯域の減少が起こるからである。しかし従来のリッジ型導波路構造では、材料の熱伝導率と、その構造からして、レーザ部活性層の温度上昇が避けられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レーザ部活性層の多重量子井戸構造を、InGaAlAs系材料を用いて作製し、導波路構造はリッジ型を用いて、上記目的を達成するよう構成される。
【0012】
具体的には、本発明のリッジ型導波路構造を有する直接変調レーザは、n型基板と、前記n型基板上のMQW
活性層と、前記MQW
活性層上の導波路を形成するクラッド層と、前記クラッド層上のコンタクト層とを備え、
前記導波路構造の両側の前記MQW活性
層に、前記導波路中心から一定の距離をもって直接接するように配置された放熱用金属
と、前記導波路の
両側を
囲む有機材料
と、前記コンタクト層及び前記有機材料上に
形成されたp電極
とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の直接変調レーザの前記有機材料は、BCBであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の直接変調レーザは、導波路中心と放熱電極までの距離が4μm以上であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の直接変調レーザは、レーザ部共振器長が100μm以上200μm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明のリッジ型導波路構造を有する直接変調レーザの製造方法は、n型基板上にInGaAlAs材料のMQW活性層をDH成長するステップと
、前記
MQW活性層上にp型InPクラッド層を結晶再成長するステップと、前記クラッド層上にp型InGaAsPコンタクト層を結晶再成長するステップと、ドライエッチングにより、前記クラッド層及び前記コンタクト層を、導波路の部分を残して除去するステップと、前記MQW活性層上及び前記導波路上に絶縁膜を形成するステップと、
前記導波路の両側の前記MQW活性層上の少なくとも一部の前記絶縁膜を除去するステップと、
前記導波路の両側の前記MQW活性層上及び前記絶縁膜上に
、前記導波路中心から一定の距離をもって前記MQW活性層に直接接するように放熱電極を形成するステップと、前記導波路の周囲に有機材料を形成し導波路上部を平坦化するステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の直接変調レーザの製造方法の前記有機材料は、BCBであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の直接変調レーザの製造方法は、前記導波路の中心と前記放熱電極までの距離が4μm以上であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の直接変調レーザの製造方法は、レーザ部共振器長が100μm以上200μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
1.3μm帯の直接変調レーザに関して、高温下で25Gb/s以上の高速動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例にかかる直接変調レーザ100の断面構造を示す図である。
【
図2】直接変調レーザの周波数帯域の緩和振動周波数(fr)依存性の計算結果を示す図表である。
【
図3】直接変調レーザ素子抵抗の共振器長依存性を示す図表である。
【
図5】緩和振動周波数(fr)の共振器長依存性の測定結果を示す図表である。
【
図6】電流を注入していった際の、直接変調レーザの活性層の温度上昇について調べた結果を示す図表である。
【
図7】直接変調レーザ100の放熱経路を示す図である。
【
図8】直接変調レーザ100の活性層102の電流注入に対する温度上昇の計算結果示す図表である。
【
図9】直接変調レーザにおいて、放熱電極がない場合の導波路内の電界分布の計算結果を示す図である。
【
図10】
図9の電界分布の横方向の計算結果を示す図である。
【
図11】(a)はリッジ型の導波路構造110、(b)はBH型の導波路構造120の模式図を示している。
【
図12】(a)はリッジ型導波路構造110、(b)はBH型導波路構造120の熱の流れを示している。
【
図13】リッジ型導波路構造を有する直接変調レーザのコンタクト層で発生した熱の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明においては、リッジ型導波路構造を有する直接変調レーザの動作時の活性層の温度上昇を抑制するために、半導体に比べ大幅に熱伝導率が大きい電極を、温度上昇を抑制したい活性層の上に形成する。これにより活性層の温度上昇が抑制されるため、共振器が100μm〜200μmの短共振器長において本発明は有効になる。さらに電極が活性層に近づけば近づくほど、電極による光の電界吸収を生じて光出力の劣化を生じるため、活性層と電極の距離を4μm以上離すことにより効果を実現できる。すなわち、本発明のリッジ型導波路構造を有する直接変調レーザは、1.放熱用電極の形成、2.共振器長100μm〜200μm、3.放熱用電極と活性層の距離を4μm以上において実現される。
【0023】
上記要件を実現するための実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例にかかるリッジ型導波路を有する直接変調レーザ100の断面構造を示す図である。本発明の直接変調レーザ100は、1.3μm帯の直接変調レーザであり、基板としてn型InP基板101を用い、InGaAlAs材料のMQW活性層102、p型InPクラッド層103、p型InGaAsP材料のコンタクト層104、BCB膜105、n側電極106、p側電極107、放熱電極108、SiO
2絶縁膜109により構成される。
【0024】
次に、本発明の1の実施例である直接変調レーザ100の作成の手順について説明する。まず、n型InP基板101の上にInGaAlAs材料のMQW活性層102をDH成長する。その後共振器方向に回折格子を形成し、p型InPクラッド層103及びp型InGaAsP材料のコンタクト層104を結晶再成長する。その後、従来のドライエッチングを用いて、クラッド層103、コンタクト層104を導波路部分103−1を残してエッチングにより除去する。さらにその導波路構造にSiO
2絶縁膜109を形成し、放熱電極を形成する箇所だけ絶縁膜を除去しその箇所から放熱電極108を形成する。本実施例では放熱電極108と導波路中心の距離Wを4μmとした。さらにBCB膜105を
図1のように形成し、導波路の上のSiO
2絶縁膜109を除去し、そこにp側電極107を形成する。最後に研磨により基板を100μm程度に薄くし、n側電極106を形成する。
【0025】
続いて、本発明を実現するための設定条件について説明する。
【0026】
まず、共振器長と放熱用電極との関係について説明する。直接変調レーザの高速動作の性能指数は、その動作帯域で説明される。
図2は直接変調レーザの周波数帯域の緩和振動周波数(fr)依存性の計算結果を示す図表である。直接変調レーザの寄生容量Cを0.3[pF]、ダンピング係数γを40[1/ns]として計算した。
図2の計算に示されているように、直接変調レーザの動作帯域はfrが大きければ大きいほど高い値になる。入力した電気信号に対して光の応答が3dB劣化する周波数を周波数帯域(f
3dB)とすると、一般的に
f
3dB=1.55×fr
の関係が成り立つ(非特許文献3の式(10))。このため、直接変調レーザの高速動作を実現するためにfrを高めていくことが必須となる。
【0027】
ここで、frを高める方法としては、直接変調レーザの共振器を短くしてくことが有効であると考えられる。一般にfrは
【0031】
は微分利得、S
0は光子密度、τ
phは光子寿命である。
【0033】
光子寿命は式(2)であらわされる。n
rは等価屈折率、α
iは内部損失、R1(R2)は回折格子の前側(後側)の反射率と前端面(後端面)の反射率の合計、Lは共振器長である。
【0034】
これらの式から、frを高めるためにはτ
phを小さくすればよく、そのため共振器長Lを短くすることが有効であると考えられる。
【0035】
しかし、frを高めるためにLを短くすると、逆に素子の抵抗が上昇するという問題が生じる。
図3は、直接変調レーザ素子抵抗の共振器長依存性を示す図表である。一般的に、素子抵抗Rは素子長Lに対して、R∝L
−1の関係を持つ。例えばLが200μmから100μmとなった場合に、Rは倍になる。その結果発熱量(R×I
2)も増加する。
【0036】
上記の検討から、直接変調レーザの高速動作においては、frを高めるために共振器長Lを短くする必要があるが、Lを短くすると抵抗Rが上昇し発熱量が増えその結果レーザ活性層の温度が上昇し特性が劣化する、というトレードオフの関係があることが分かる。この関係を図示すると、
図4のようになる。
【0037】
本発明で用いる放熱用電極(実施例の108)が具体的に必要となる共振器長領域は、
図4における発熱が厳しくなる領域に相当する。従って、本発明においては、リッジ型導波路を有する直接変調レーザの放熱性の改善を行うことにより、fr値の最大値を増大させることが可能になる。
【0038】
では、実際の動作時に放熱の改善が必要となる共振器長について述べる。
図5はfrの共振器長依存性の測定結果を示す図表である。ただし本測定においては、本発明の放熱電極は用いていない。点線は光出力特性から外挿したfrの特性を示している。実際に直接変調レーザを駆動する領域において、放熱特製の改善を必要とするのが200μm以下の領域であることを示している。
【0039】
図6は、電流を注入していった際の、直接変調レーザの活性層の温度上昇について調べた結果を示す図表である。100μmの直接変調レーザにおいては電流注入に対して急激に温度が上昇する。共振器長が短くなっても、温度の上昇を抑制するために、本発明では
図1に示すように放熱電極(108)を形成した。
図7は、直接変調レーザ100の放熱経路を示す図である。
図1のように放熱電極108を形成することで、従来のリッジ構造の放熱経路(破線部分)に対して、さらに実線の排熱経路が追加される。そのため活性層(
図1の102)の温度上昇が抑制される。放熱電極108は一般的な電極材料(Au)で作製する。そのためAuの熱伝導率320[W/m/K]で熱を排熱することが可能となる。
【0040】
次に、放熱用電極と活性層の距離について説明する。
【0041】
図8は、
図1の放熱電極108と導波路中心の距離Wとの値を無限(つまり放熱電極無)、4μm、10μm、20μmとした場合の活性層102の電流注入に対する温度上昇の計算結果示す図表である。
図8において、Lは100μmとして計算されている。
図8を見ると放熱電極108が導波路中心に近づけば近づくほど、活性層102の温度上昇は抑制できていることが分かる。ここで実際の使用を考慮に入れると、活性層102の温度上昇は20℃以下であることが望ましい。よって、Wは20μm以下であることが望ましい。
【0042】
一方、放熱電極を導波路に近づけていく場合の問題点について説明する。
【0043】
図9は、直接変調レーザにおいて放熱電極がない場合の導波路内の電界分布の計算結果を示す図である。計算はリッジ型構造の右半分だけについて行い、白い部分ほど光の電界強度が大きいことを示している。なお、計算は導波路解析ソフトAPSS(アポロ社)を用いて行った。
【0044】
放熱電極を導波路中心に近づけていった場合、電極が近すぎると、電極金属による光吸収が起こる。
図9の計算結果から横方向(X方向)の電界分布をみると、
図10のようになる。
図9を見るとXが4μmの段階でX方向の電界強度はほぼ0になる。よって放熱電極による電界吸収を抑えるためには、Wを4.0μm以上取ればよいことが分かる。
【符号の説明】
【0045】
100、110 リッジ型導波路を有する直接変調レーザ
101、112、122 n型InP基板
102、111、121 InGaAlAs活性層
103、124 p型InPクラッド層
103−1、113、123 導波路
104、115、125 p型InGaAsPコンタクト層
105、114 BCB膜
106 n側電極
107 p側電極
108 放熱電極
109 SiO2絶縁膜
120 BH型導波路を有する直接変調レーザ