特許第6018541号(P6018541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018541推薦ルール生成装置、推薦ルール生成方法および推薦ルール生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018541
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】推薦ルール生成装置、推薦ルール生成方法および推薦ルール生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/30 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   G06F17/30 220Z
   G06F17/30 340B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-101376(P2013-101376)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-222398(P2014-222398A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】大橋 盛徳
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 明人
(72)【発明者】
【氏名】深津 真二
【審査官】 川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−039909(JP,A)
【文献】 特開2009−217852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推薦ルール生成装置であって、
ユーザのコンテンツ消費データを解析し、コンテンツ間の関連を示す複数のアソシエーションルールを生成するアソシエーション分析手段と、
前記コンテンツ消費データを用いて、各アソシエーションルールの希少度を算出する希少度算出手段と、
前記希少度を用いて前記アソシエーション分析手段が生成したアソシエーションルールを絞り込み、推薦ルールを生成する推薦ルール生成手段と、を備え、
前記希少度算出手段は、アソシエーションルール毎に、前記コンテンツ消費データから取得した、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部のコンテンツの合計数と、当該アソシエーションルールに該当するユーザ数と、当該アソシエーションルールに該当する各ユーザのコンテンツ消費数と、消費された全コンテンツ数と、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の各コンテンツを消費したユーザ数と、を用いて前記希少度を算出すること
を特徴とする推薦ルール生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の推薦ルール生成装置であって、
前記推薦ルール生成手段は、条件部が同じアソシエーションルール毎にグループ分けし、各グループ毎に希少度が大きい順に所定数のアソシエーションルールを抽出して、前記推薦ルールを生成すること
を特徴とする推薦ルール生成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の推薦ルール生成装置であって、
前記推薦ルールを、ルールベース推薦システムに提供する提供手段を、さらに備えること
を特徴とする推薦ルール生成装置。
【請求項4】
請求項3記載の推薦ルール生成装置であって、
前記提供手段は、希少度を設定したアソシエーションルールを分析者端末に提供すること
を特徴とする推薦ルール生成装置。
【請求項5】
コンピュータが行う推薦ルール生成方法であって、
ユーザのコンテンツ消費データを解析し、コンテンツ間の関連を示す複数のアソシエーションルールを生成するアソシエーション分析ステップと、
前記コンテンツ消費データを用いて、各アソシエーションルールの希少度を算出する希少度算出ステップと、
前記希少度を用いて前記アソシエーション分析ステップで生成したアソシエーションルールを絞り込み、推薦ルールを生成する推薦ルール生成ステップと、を行い、
前記希少度算出ステップは、アソシエーションルール毎に、前記コンテンツ消費データから取得した、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部のコンテンツの合計数と、当該アソシエーションルールに該当するユーザ数と、当該アソシエーションルールに該当する各ユーザのコンテンツ消費数と、消費された全コンテンツ数と、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の各コンテンツを消費したユーザ数と、を用いて前記希少度を算出すること
を特徴とする推薦ルール生成方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の推薦ルール生成装置としてコンピュータを機能させるための推薦ルール生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルールベース推薦における推薦ルールを生成する推薦ルール生成装置、推薦ルール生成方法および推薦ルール生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット回線を介してデジタルコンテンツをユーザに提供するコンテンツ配信サービスが行われている。コンテンツ配信サービスでは、価格やサービスを受ける端末の多様化とともに、コンテンツの豊富さもサービサー間の競争の一つとなっている。コンテンツの豊富さを保ちながら、ユーザにより楽にコンテンツを見つけて、楽しんでもらう方法として、検索や推薦システムの採用などがある。
【0003】
推薦システムで用いられるアルゴリズムの1つにルールベース推薦がある。ルールベース推薦は、「この商品が選ばれたらこれを薦める」というルールをあらかじめ作っておくものである。このルールの生成には、どの商品とどの商品が一緒に買われているかを分析するアソシエーション分析が用いられる。アソシエーション分析については、例えば、非特許文献1、2に記載されている。
【0004】
また、特許文献1に、相関ルールを用いたPOSデータ分析装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-258023号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岡田孝, 元田浩,“相関ルールとその周辺”, オペレーションズ・リサーチ9月号 pp.565-571 (2002)
【非特許文献2】Agrawal R. and Srikant R., ”Fast algorithms for mining association rules in large database”, Proc. VLDB, pp.487-499, Morgan Kaufmann(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アソシエーション分析によって得られるアソシエーションルールには、支持度、信頼度およびリフト値の指標を有する。支持度を低く設定した場合、少数のユーザに当てはまるアソシエーションルールも抽出される。しかしながら、抽出されるアソシエーションルールの数が多くなると、大量のアソシエーションルールの中から推薦や施策検討などに有益なルールを見つけ出すのは困難となる。
【0008】
一方で、支持度を高く設定した場合、抽出されるアソシエーションルールの数は減少するが、多くのユーザに当てはまるアソシエーションルールは、分析者にとって既知な(当たり前な)ルールが抽出されやすく、事実の確認には向いている反面、その中から推薦や施策検討のための意味あるルールを見つけ出すのは困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、大量のアソシエーションルールの中から有益なアソシエーションルールを抽出し、推薦ルールとする推薦ルール生成装置、推薦ルール生成方法および推薦ルール生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1の本発明は、推薦ルール生成装置であって、ユーザのコンテンツ消費データを解析し、コンテンツ間の関連を示す複数のアソシエーションルールを生成するアソシエーション分析手段と、前記コンテンツ消費データを用いて、各アソシエーションルールの希少度を算出する希少度算出手段と、前記希少度を用いて前記アソシエーション分析手段が生成したアソシエーションルールを絞り込み、推薦ルールを生成する推薦ルール生成手段と、を備え、前記希少度算出手段は、アソシエーションルール毎に、前記コンテンツ消費データから取得した、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部のコンテンツの合計数と、当該アソシエーションルールに該当するユーザ数と、当該アソシエーションルールに該当する各ユーザのコンテンツ消費数と、消費された全コンテンツ数と、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の各コンテンツを消費したユーザ数と、を用いて前記希少度を算出する。
【0011】
上記推薦ルール生成装置において、前記推薦ルール生成手段は、条件部が同じアソシエーションルール毎にグループ分けし、各グループ毎に希少度が大きい順に所定数のアソシエーションルールを抽出して、前記推薦ルールを生成する。
【0012】
上記推薦ルール生成装置において、前記推薦ルールを、ルールベース推薦システムに提供する提供手段を、さらに備える。
【0013】
上記推薦ルール生成装置において、前記提供手段は、希少度を設定したアソシエーションルールを分析者端末に提供する。
【0014】
第2の本発明は、コンピュータが行う推薦ルール生成方法であって、ユーザのコンテンツ消費データを解析し、コンテンツ間の関連を示す複数のアソシエーションルールを生成するアソシエーション分析ステップと、前記コンテンツ消費データを用いて、各アソシエーションルールの希少度を算出する希少度算出ステップと、前記希少度を用いて前記アソシエーション分析ステップで生成したアソシエーションルールを絞り込み、推薦ルールを生成する推薦ルール生成ステップと、を行い、前記希少度算出ステップは、アソシエーションルール毎に、前記コンテンツ消費データから取得した、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部のコンテンツの合計数と、当該アソシエーションルールに該当するユーザ数と、当該アソシエーションルールに該当する各ユーザのコンテンツ消費数と、消費された全コンテンツ数と、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の各コンテンツを消費したユーザ数と、を用いて前記希少度を算出する。
【0015】
第3の本発明は、前記推薦ルール生成装置としてコンピュータを機能させるための推薦ルール生成プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大量のアソシエーションルールの中から有益なアソシエーションルールを抽出し、推薦ルールとする推薦ルール生成装置、推薦ルール生成方法および推薦ルール生成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の一例を示すシステムの全体構成図である。
図2】本実施形態の推薦ルール生成部の構成図である。
図3】アソシエーションルール記憶部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態におけるシステム構成の一例を示す全体構成図である。図示するシステムは、コンテンツ配信システム1と、各ユーザが使用する端末2と、分析者が使用する分析者端末3を備える。
【0020】
コンテンツ配信システム1は、インターネットなどのネットワークを通じて、ビデオ、電子書籍、音楽などのコンテンツ(デジタルコンテンツ)を、ユーザの端末2に配信する。すなわち、端末2からのコンテンツ配信要求に応じて、要求されたコンテンツと、当該コンテンツに関連する推薦コンテンツの情報とを要求元の端末2に配信する。図示するコンテンツ配信システム1は、推薦ルール生成部11と、ログ蓄積DB12と、推薦部13と、送受信制御部14と、コンテンツ配信部15とを有する。
【0021】
送受信制御部14は、端末2からコンテンツ配信要求を受信し、当該要求で指定されたコンテンツ情報を、コンテンツ配信部15および推薦部13に送出する。
【0022】
コンテンツ配信部15は、送受信制御部14からコンテンツ情報を受け付け、当該コンテンツ情報に対応するコンテンツを、送受信制御部14を介して要求元の端末2にストリームまたはダウンロードで配信する。
【0023】
推薦部13は、ルールベース推薦部131と、推薦ルール記憶部132とを備える。ルールベース推薦部131は、推薦ルール記憶部132に記憶された推薦ルールを用いて、ユーザが要求したコンテンツに関連した推薦コンテンツを選択し、当該推薦コンテンツの推薦コンテンツ情報を、送受信制御部14を介して要求元の端末2に配信する。送受信制御部14は、要求されたコンテンツとともに、推薦コンテンツ情報を端末2に配信する。
【0024】
なお、推薦ルール記憶部132には、推薦ルール生成部11が生成した推薦ルールが記憶される。推薦ルールは、「この商品(コンテンツ)が選ばれたらこれを薦める」というルールである。
【0025】
ログ蓄積DB12には、コンテンツ配信システム1のコンテンツ配信サービスを利用したユーザが、配信されたコンテンツを好きなタイミングで端末2で消費したログ情報が記憶される。なお、コンテンツの消費は、例えば、映像コンテンツの場合はユーザが当該コンテンツを視聴すること、電子書籍コンテンツの場合はユーザが当該コンテンツを読むことなどを意味する。端末2は、コンテンツ配信システム1から配信されたコンテンツが消費されると、消費したコンテンツ情報およびユーザ情報を、コンテンツ配信システム1に通知・送信するものとする。コンテンツ配信システム1の送受信制御部14は、端末2からの通知を受信すると、通知されたコンテンツ情報およびユーザ情報をログ蓄積DB12に蓄積する。
【0026】
なお、送受信制御部14は、コンテンツ配信部15が端末2にコンテンツを配信したタイミングで、配信したコンテンツ情報およびユーザ情報を含む配信ログ情報を、ログ蓄積DB12に蓄積することとしてもよい。この場合、コンテンツを配信することにより、ユーザが当該コンテンツを消費したとみなすこととする。
【0027】
推薦ルール生成部11(推薦ルール生成装置)は、推薦部13に提供する推薦ルールを生成する。推薦ルール生成部11については後述する。
【0028】
コンテンツ配信サービスを利用するユーザは、端末2を用いてコンテンツ配信システム1から所望のコンテンツを取得し、好きなタイミングで取得したコンテンツを消費し、そのログがコンテンツ配信システム1のログ蓄積DB12に蓄積される。
【0029】
端末2は、ユーザの指示を受け付けて、コンテンツ配信要求をコンテンツ配信システム1に送信し、要求したコンテンツをコンテンツ配信システム1からダウンロードまたはストリーミングで受信する。また、端末2は、ユーザが配信されたコンテンツを消費したタイミングで、消費したコンテンツ情報およびユーザ情報を、コンテンツ配信システム1に通知する。なお、端末2には、TV、タブレット、PC、スマートフォン、フューチャーフォンなど、様々な形態の通信可能な装置を用いることができる。
【0030】
分析者端末3は、顧客分析やデータマイニングを行う分析者が使用する端末であって、推薦ルール生成部11が生成したアソシエーションルールが出力・送信される。分析者は、アソシエーションルールを用いて、どのコンテンツとどのコンテンツとが併視聴の関係にあるかなどの分析を行う。
【0031】
図2は、本実施形態の推薦ルール生成部11の構成を示す構成図である。図示する推薦ルール生成部11は、データ取得部111と、アソシエーション分析部112と、希少度算出部113と、推薦ルール生成部114と、推薦ルール提供部115と、データ記憶部116と、アソシエーションルール記憶部117と、推薦ルール記憶部118とを備える。
【0032】
データ取得部111は、ログ蓄積DB12から所定の期間のログ情報を読み出し、読み出したログ情報から、ユーザのコンテンツ消費データ(トランザクション)を生成し、データ記憶部116に記憶する。ユーザのコンテンツ消費データは、各ユーザが当該所定期間において消費したコンテンツのリストである。
【0033】
アソシエーション分析部112は、データ記憶部116に記憶されたコンテンツ消費データを解析し、コンテンツ間の関連を示す複数のアソシエーションルールを生成し、アソシエーションルール記憶部117に記憶する。
【0034】
希少度算出部113は、データ記憶部116に記憶されたコンテンツ消費データを用いて、各アソシエーションルールの希少度を算出する。具体的には、希少度算出部113は、アソシエーションルール毎に、コンテンツ消費データを用いて算出した、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部のコンテンツの合計数と、当該アソシエーションルールに該当するユーザ数と、当該アソシエーションルールに該当する各ユーザのコンテンツ消費数と、消費された全コンテンツ数と、当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の各コンテンツを消費したユーザ数と、を用いて希少度を算出する。
【0035】
推薦ルール生成部114は、希少度を用いてアソシエーション分析部112が生成したアソシエーションルールを絞り込み、推薦ルールを生成し、推薦ルール記憶部118に記憶する。推薦ルール提供部115は、推薦ルールを推薦部13に提供・送出するとともに、希少度が設定されたアソシエーションルールを分析者端末3に送信する。
【0036】
上記説明した推薦ルール生成部11は、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置などを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた推薦ルール生成部11用のプログラムを実行することにより、推薦ルール生成部11の各機能が実現される。また、推薦ルール生成部11用のプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD−ROMなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0037】
次に、本実施形態の推薦ルール生成部11が行う処理について、図2を参照して説明する。
【0038】
推薦ルール生成部11のデータ取得部111は、ログ蓄積DB12から所定の期間のログ情報を読み出し、読み出したログ情報から、ユーザのコンテンツ消費データ(トランザクション)を生成し、データ記憶部116に記憶する。指定期間は、例えば、「現在から過去3ヶ月」のようにシステム管理者が、推薦ルール生成部11に入力し、設定できるものとする。
【0039】
アソシエーション分析部112は、データ記憶部116に記憶されたコンテンツ消費データについて、例えばaprioriアルゴリズム(非特許文献2参照)などの所定のアルゴリズムを用いてアソシエーション分析を行う。
【0040】
アソシエーション分析は、どの商品(コンテンツ)とどの商品とが一緒に購入(併視聴)されているかを分析するものであり、ユーザ行動を明らかにし、推薦ルールを構築する上で有益なものである。アソシエーション分析は、各ユーザが購入した商品群のデータであるトランザクションから、頻出する商品の組み合わせ規則(相関ルール)を抽出し、商品間関連性を明らかにする分析方法であり、このアソシエーション分析によって得られた商品間の組み合わせ規則をアソシエーションルールと呼ぶ。
【0041】
例えば「パンを購入したユーザは、その80%が牛乳を購入しており、その2つの商品を購入した人は全ユーザの3%であり、パンを購入したユーザは全ユーザに比べて牛乳を購入する率が2倍になっている」というアソシエーションルールは、“[パン]=>[牛乳];支持度=3%、信頼度=80%、リフト値=2”と評価される。
【0042】
この例で [パン]に当たるものを条件部、[牛乳]に当たるものを帰結部と呼ぶ。条件部および帰結部に設定される商品は、複数であってもよい。このようにアソシエーション分析は、支持度、信頼度、リフト値の3つの値を指標として、アソシエーションルールを抽出する。支持度は、アソシエーションルール中のすべての商品(ここでは、パンと牛乳)が現れるようなトランザクションの割合を表す。信頼度は、条件部の商品を購入したユーザ中で帰結部の商品を購入したユーザの割合を表す。リフト値は、全ユーザのうち帰結部の商品を購入したユーザ割合をAとし、信頼度をBとした場合に、B/Aで算出される値である。
【0043】
なお、aprioriアルゴリズムを用いた場合、あらかじめ最小支持度および最小信頼度を指定することで、支持度が最小支持度以上で、信頼度が最小信頼度以上のアソシエーションルールのみが抽出される。本実施形態では、最小支持度および最小信頼度に、それぞれあらかじめ定めた所定の小さい値(例えば、最小値)を用いることで、大量のアソシエーションルールを抽出するものとする。
【0044】
アソシエーション分析部112は、アソシエーション分析を行うことにより抽出した各アソシエーションルールを、アソシエーションルール記憶部117に記憶する。
【0045】
図3は、アソシエーションルール記憶部117に記憶される、各アソシエーションルールを表形式に表したアソシエーションルールテーブルの一例である。図示するアソシエーションルールテーブルでは、アソシエーション分析で抽出された各アソシエーションルール毎に、条件部のコンテンツ情報と、帰結部のコンテンツ情報と、支持度と、信頼度と、リフト値とが設定される。希少度については、以下に説明する。
【0046】
そして、希少度算出部113は、各アソシエーションルールの希少度を算出する。すなわち、希少度算出部113は、各アソシエーションルールに対して、データ記憶部116に記憶されたデータを用いて、以下の5つのパラメータの値を算出・取得する。希少度は、当該アソシエーションルールの発生する確率(頻度)を表す指標である。
【0047】
パラメータ1:当該アソシエーションルールの条件部のコンテンツ数と、帰結部のコンテンツ数とを合計したコンテンツ数。
【0048】
パラメータ2:当該アソシエーションルールに該当するユーザ数(当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の全てのコンテンツを消費したユーザ数)。
【0049】
パラメータ3:当該アソシエーションルールに該当する各ユーザのコンテンツ消費数。
【0050】
パラメータ4:所定期間において消費された全コンテンツ数
パラメータ5:当該アソシエーションルールの条件部および帰結部の各コンテンツを消費したユーザ数
そして、希少度算出部113は、この5つのパラメータを用いて、アソシエーションルール毎に希少度を算出する。希少度は、例えば、以下の式1を用いて算出することができる。
【数1】
【0051】
式1の関数fは、パラメータ5(Wj)の関数として表される。例えば、式1の関数f(Wj)を、パラメータ5(Wj)の1次に比例する単項式の関数とすると、以下の式2となる。
【数2】
【0052】
上記式1および式2では、組み合わせ(例えば、Vx)使うことで、確率を計算している。偶然が重なるとそれは偶然ではなく、ユーザの意思が反映され、必然となると考え、そのため確率を計算し、確率が小さいものほど希少度が高くなるようにしている。
【0053】
なお、希少度と各パラメータとの関係は、以下のとおりである。
【0054】
パラメータ1(m)が大きくなると、Pは小さくなり、希少度は大きくなる。すなわち、条件部と帰結部のコンテンツの数が大きくなればなるほど、その組み合わせが抽出される確率は低くなるため、希少度は大きくなる。
【0055】
パラメータ2(u)が多くなると、Pは小さくなり、希少度は大きくなる。これは本来偶然であるものであるとの発想から来ており、それが重なれば重なるほど起こりにくいことになり、その本来起きにくい事象が起きているということで希少度が大きくなる。
【0056】
パラメータ3(V)が多くなると、Pは大きくなり、希少度は小さくなる。コンテンツを多く消費するユーザは、様々なコンテンツを視聴する確率が高くなるため、当該アソシエーションルールが抽出されやすくなると考えら、希少度は小さくなる。
【0057】
パラメータ4(C)が多くなると、Pは小さくなり、希少度は大きくなる。
【0058】
パラメータ5(W)が多くなると、Pが大きくなり、希少度は小さくなる。これは、消費したユーザが多ければ、その分、稀な関係でもルールとして抽出されやすいことを考慮している。
【0059】
そして、希少度算出部113は、上記5つのパラメータを用いて算出した各アソシエーションルールの希少度を、アソシエーションルール記憶部117に記憶する。これにより、各アソシエーションルールは、支持度、信頼度、リフト値、希少度の4つの指標を有することになる。
【0060】
そして、推薦ルール生成部114は、希少度を用いてアソシエーション分析部112が生成した大量のアソシエーションルールを絞り込み、推薦ルールを生成する。具体的には、推薦ルール生成部114は、条件部のコンテンツが同じアソシエーションルール毎にグルーピングし、各グループ毎に希少度が大きい順に所定数のアソシエーションルールを、抽出し、各グループ毎にそれぞれ抽出したアソシエーションルールを推薦ルールとして推薦ルール記憶部118に記憶する。
【0061】
すなわち、本実施形態では、希少度が大きいアソシエーションルールの帰結部のコンテンツは、希少度が小さいアソシエーションルールの帰結部のコンテンツと比較して、条件部のコンテンツの推薦コンテンツとしてより有益であるとみなす。なお、抽出するアソシエーションルールの所定数は、システム管理者があらかじめ指定しておくものとする。
【0062】
そして、推薦ルール提供部115は、生成した推薦ルールを、推薦部13に送出し、提供する。これにより、推薦部13の推薦ルール記憶部132には、推薦ルール生成部114が生成した推薦ルールが記憶され、ルールベース推薦部131は、当該推薦ルールを用いて、推薦コンテンツを決定する。
【0063】
なお、推薦ルールを用いて決定した推薦コンテンツをユーザに提示することにより、例えばパラメータ2またはパラメータ5の増加、パラメータ2が増加することによるパラメータ3の最大値や平均値の上昇など、パラメータ1〜5の変化が想定される。これにより希少度が変動し、推薦ルールとして抽出されるべきアソシエーションルールの入れ替え、や、推薦ルールとして抽出されるべき新たなアソシエーションルールが発生する。
【0064】
そのため、本実施形態の推薦ルール生成部11は、所定のタイミングで(例えば、1ヶ月に1回など定期的に)、ログ蓄積DB12から取得した直近の所定期間のログ情報を用いて、現状に合った推薦ルールを生成し、推薦部13に提供する。
【0065】
また、推薦ルール提供部115は、アソシエーションルール記憶部117に記憶された、希少度が設定された全アソシエーションルール(図3参照)を、分析者の要求に応じて分析者端末3に送信する。推薦ルール提供部115は、アソシエーションルールを、例えばCSVまたはTSV形式のファイルにして、ネットワークを介して分析者端末3に送信することが考えられる。
【0066】
分析者端末3に希少度が設定された全てのアソシエーションルールを送信することで、分析者は、より高度な顧客分析やデータマイニングを実施することができる。例えば、分析者は、どのコンテンツとどのコンテンツとの間に併視聴の関係があるのか(または、併視聴の関係ができ始めているか)を、希少度により把握にすることで、コンテンツの購入計画を立てたり、どのようなキャンペーンを実施するべきかを判断することができるようになる。
【0067】
次に、本実施形態のコンテンツ配信およびコンテンツ推薦処理について説明する。
【0068】
ユーザは、自身の端末2を用いて所望のコンテンツを選択する。端末2は、ユーザが選択したコンテンツのコンテンツ情報(例えば、コンテンツ名、コンテンツID)を含むコンテンツ配信要求を、ネットワークを介してコンテンツ配信システム1に送信する。
【0069】
コンテンツ配信システム1の送受信制御部14は、端末2からコンテンツ配信要求を受信すると、当該要求で指定されたコンテンツ情報を、コンテンツ配信部15および推薦部13に送出する。コンテンツ配信部15は、当該コンテンツ情報に対応するコンテンツを送受信制御部14に送出し、送受信制御部14は、当該コンテンツをストリームまたはダウンロードで配信する。なお、送受信制御部14は、コンテンツの配信をユーザのコンテンツ消費とみなして、配信ログ情報をログ蓄積DB12に蓄積することとしてもよい。
【0070】
また、推薦部13のルールベース推薦部131は、推薦ルール記憶部132の推薦ルールを用いて、ユーザが要求したコンテンツに対応する推薦コンテンツを選択し、当該推薦コンテンツの推薦コンテンツ情報を送受信制御部14に送出する。すなわち、ルールベース推薦部131は、要求されたコンテンツ情報を条件部に持つアソシエーションルールを、推薦ルールから抽出し、抽出した各アソシエーションルールの帰結部に設定されたコンテンツ情報を、推薦コンテンツ情報として決定する。送受信制御部14は、推薦コンテンツ情報を、要求されたコンテンツとともに端末2に配信する。
【0071】
以上説明した本実施形態では、アソシエーション分析で一般的に出力される支持度や信頼度、リフト値の他に、希少度という4つ目の指標を算出し、希少度に基づいてアソシエーションルールの選定を行う。具体的には、条件部のコンテンツが同じアソシエーションルールの中で、希少度が大きい帰結部を持つアソシエーションルールをより有益なアソシエーションルールとして選択・抽出し、ルールベース推薦の推薦ルールとする。
【0072】
これにより、本実施形態では、大量のアソシエーションルールの中から、有用なアソシエーションルールを選択し、推薦ルールを生成することができる。
【0073】
すなわち、支持度や信頼度に閾値を設定して、抽出するアソシエーションルールの数を絞る方法では、閾値以下のアソシエーションルールは排除されてしまう。このため、既知または当たり前のルールが抽出されやすく、未知の意味のあるアソシエーションルールが抽出されにくい。未知の意味のあるアソシエーションルールとしては、例えば、少数の人に当てはまるルールであるが、ある一定の必然性を有し、そこにユーザ自身の意図が潜在しているルール、稀に発生するルールであるが確実に発生するルール、現時点では明らかではない埋もれているルールなどが考えられる。
【0074】
本実施形態では、支持度などに閾値を設けてアソシエーションルールの数を絞り込むことなく、大量のアソシエーションルールの中から希少度を用いて、アソシエーションルールを選択し、推薦ルールを生成することで、支持度が低いアソシエーションルールであっても、推薦や施策検討などに有益なルールを抽出することができる。
【0075】
また、本実施形態により生成された推薦ルールを用いてコンテンツを推薦することで、ユーザに対して当たり前ではない目新しい推薦コンテンツ情報を提示でき、ユーザは意外性のあるコンテンツを見つける事ができる。
【0076】
また、本実施形態では、希少度が設定されたアソシエーションルールを分析者端末3に送信することで、数多くのアソシエーションルールの中から、当たり前ではない、施策検討に有益な意味のあるルールを見つけ出すことが容易となる。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 :コンテンツ配信システム
11:推薦ルール生成部
111:データ取得部
112:アソシエーション分析部
113:希少度算出部
114:推薦ルール生成部
115:推薦ルール提供部
116:データ記憶部
117:アソシエーションルール記憶部
118:推薦ルール記憶部
12:ログ蓄積DB
13:推薦部
131:ルールベース推薦部
131:推薦ルール記憶部
14:送受信制御部
15:コンテンツ配信部
2 :端末
3 :分析者端末
図1
図2
図3