(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を以下の実施例に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施例の形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
本実施例では、円柱形状の容器本体から円柱形状の容器栓を開栓する栓開閉装置の第一の例を説明する。
【0019】
図1に本発明の第一の実施例である栓開閉装置の詳細を、
図2は栓開閉装置の構成図を示す。
図1(a)は開栓吐出機構101と仕切り板113の上面図、(b)は開栓吐出機構101と容器保持吸引機構107と仕切り板113のA−A断面図、(c)は吐出部202をB−B線に沿って切断した円筒展開面を示す。また、
図2(a)は栓開閉装置の上面図、(b)は側面図である。
【0020】
開栓吐出機構101は、開栓吐出機構開閉モータ102で開閉可能であり、開栓吐出機構上下モータ103で上下に移動可能である。吐出ファン104が動作中に開栓吐出機構吐出バルブ105を開くと、装置外の気体が吐出ダクト106から吸引される。吸引された装置外の気体は開栓吐出機構101から吐出される。
【0021】
容器保持吸引機構107は、容器保持吸引機構開閉モータ108で開閉可能である。排気ファン109が動作中に容器保持吸引機構吸引バルブ110を開くと、気体が容器保持吸引機構107から吸引される。吸引された気体は排気フィルタ111を通って排気ダクト112から装置外へ排気される。
【0022】
仕切り板113は開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107の周囲に備えられている。仕切り板113は、仕切り板開閉モータ114で開閉可能である。排気ファン109が動作中に仕切り板吸引バルブ115を開くと、気体が仕切り板113から吸引される。仕切り板113から吸引された気体は排気フィルタ111を通って排気ダクト112から装置外へ排気される。
【0023】
開栓吐出機構101は、容器保持吸引機構107に上下に対向するように設けられていて、旋回流を吐出する吐出部202、および容器栓を保持する容器栓保持部203を備えている。吐出部202は羽根207を備え、その羽根207は旋回流を発生するための構造である。
【0024】
容器保持吸引機構107は、吸引部201および容器本体保持部211を備えている。吸引部201は旋回流を吸引するための構造である。
【0025】
仕切り板113は、仕切り板吸引部210を備えている。仕切り板吸引部210は旋回流を吸引するための構造である。本実施例では、吐出部202および容器栓保持部203および仕切り板113は二つ一組で機能する構造となっているが、二つに限定されるものではなく、例えば三つ一組等の様に複数個一組で機能する構造であってもよい。
【0026】
図3は開栓吐出機構101の吐出部202の詳細で、
図3(a)は吐出部202の上面図である。本実施例において開栓吐出機構101は、異なる径の筒を2等分した形状の部材が二重に配置された構成である。外径側の壁、すなわち吐出部外壁208と、内径側の壁、すなわち吐出部内壁209によって形成される空間から旋回流が吐出される。旋回流を生成するための構成として、羽根207が吐出部外壁208、および吐出部内壁209と接触するように設けられている。なお、上記仕切り板と同様に開栓吐出機構は本実施例では二つ一組となる構造で表現されているが、三つ以上を一組とする構成であっても良い。
【0027】
図3(b)は
図3(a)の吐出部外壁における羽根と接触する面で切断して、その断面における一つの羽根207を示したものである。吐出部内壁209との接触箇所を点線で示している。この羽根207は、吐出部外壁208との接触面では角度θoで、吐出部内壁209との接触面では角度θiで折れ曲がっている。すなわち、容器栓の側面に巻き付く様な旋回流を発生させるために、角度θoを角度θiよりも大きくしている。羽根207は1か所で直線状に折れ曲がった構造をしているが、複数箇所であっても、曲線状に湾曲した構造であってもよい。
【0028】
図4は開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107を動作して形成する旋回流を矢印で示した図である。
【0029】
図には開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107の側面図を示しており、
図2の吸引部201、吐出部202、容器栓保持部203、容器本体保持部211は省略している。旋回流204は、容器栓の側面206よりも高い位置から開栓吐出機構101により発生され、容器栓の側面206に巻き付く様に流れ、容器保持吸引機構107に吸引される。ここで容器栓の側面206は、容器本体が容器栓で封止されている時に容器本体と接触している容器栓の面を指す。
【0030】
図5−1、
図5−2に本発明の第一の実施例である栓開閉装置の動作を示す。
【0031】
栓開閉装置には、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113および容器栓205および容器本体501の側面図を示しており、
図2の吸引部201、吐出部202、容器栓保持部203、容器本体保持部211は省略している。
【0032】
図5−1(a)は初期配置を示しており、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107はそれぞれ開いた状態で、容器本体501が容器栓205で閉栓された状態でセットされている。
【0033】
次に、
図1に示す開栓吐出機構上下モータ103によって、開栓吐出機構101が容器栓205の高さまで下降して停止する(
図5−1(b))。
【0034】
図1に示す開栓吐出機構開閉モータ102および容器保持吸引機構開閉モータ108が動作し、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107が閉じ、容器栓205および容器本体501をそれぞれ保持する(
図5−1(c))。
【0035】
図1に示す仕切り板開閉モータ114が動作し、開いた状態の仕切り板113が閉じて開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107の周囲に設置される(
図5−1(d))。
【0036】
図1に示す開栓吐出機構吐出バルブ105および容器保持吸引機構吸引バルブ110を開き、開栓吐出機構101から旋回流204を吐出し、容器保持吸引機構107および仕切り板113で気体を吸引しながら(
図5−2(e)の矢印)、開栓吐出機構上下モータ103を動作して、開栓吐出機構101を上昇させ容器栓205を開く(
図5−2(f))。この時、吐出した気体を全て吸引するために、望ましくは吐出と吸引の開始と終了のタイミングを一致させる。更に望ましくは、吐出気体の量を吸引気体の量以下にする。また、気流はミストの飛散を防止する目的で発生させるため、ミスト発生前から気流を発生させておいても良い。そのため、気流吐出および吸引の開始を、栓本体保持のとき(
図5−1(c))または仕切り板を設置する(
図5−1(d))の前のタイミングで実施してもよい。
【0037】
容器から試料を分注するのに十分な高さだけ栓を持ち上げたら、一旦、
図1に示す開栓吐出機構吐出バルブ105および容器保持吸引機構吸引バルブ110および仕切り板吸引バルブ115を閉じ、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113からの吸引および吐出の動作を止めて気流を停止し、容器本体から液体の分注等の動作を行う(図示せず)。
【0038】
その後、再び開栓吐出機構吐出バルブ105および容器保持吸引機構吸引バルブ110および仕切り板吸引バルブ115を開き、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113からの吸引および吐出の動作を開始し(
図5−2(f))、
図1に示す開栓吐出機構上下モータ103を動作させることで開栓吐出機構101を下降させ、容器栓205で容器本体501を閉栓する(
図5−2(g))。
【0039】
閉栓後に、開栓吐出機構101による気体の吐出および容器保持吸引機構107および仕切り板113による気体の吸引を終了する(
図5−2(h))。
【0040】
開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113が開いて、開栓吐出機構101が上昇して、初期状態に戻る。必要に応じて次の容器を同様に処理する(
図5−1(a))。
【0041】
開栓前に容器本体501と容器栓205の境界近傍が血清で濡れていると、開栓直後は容器本体501と容器栓205の間にリング状の液膜が存在し、容器栓205が上昇するに従い液膜が1か所で切れ、その直後に液膜は表面張力で凝集しようとする。液膜の凝集は短時間で完了し、凝集した液には運動量が蓄積され、慣性力でミストとして飛散する。本実施例によれば、このように生じたミストは、開栓吐出機構101と容器保持吸引機構107との間に形成された旋回流があるために、周囲に飛散することなく容器保持吸引機構107の吸引部201から吸引されるので、周囲の汚染や、他の容器内に混入することによるコンタミネーション発生が防止される。
【0042】
旋回流にはコアンダ効果という、気体や液体のような流体が動いているところに、曲面を持った物体が接すると、流体はその表面に沿って流れる現象がある。身近な例としては、上下方向に流れる水にスプーンの凸面を触れさせた時に、水がスプーンに巻き付く様にして流れ出す現象がある。このコアンダ効果により旋回流は容器本体501および容器栓205に巻き付く様に流れるため、容器内から飛び出して飛散する飛散ミストだけでなく、容器栓205および容器本体501近傍に停滞して浮遊しており、徐々に周囲に移動するミストも旋回流により制御され、吸引部201から吸引される。そのため、あらゆるタイプのミストが周囲へ飛散・拡散することを防止できる。
【0043】
さらに望ましくは、初めは容器本体501と容器栓205の間の空間に停滞して浮遊しているが、時間をかけて周囲に移動する浮遊性ミストに対しては、容器栓205を開栓動作(
図5−2(f))後、一旦下降させてもよい。容器栓の下から吸引部へ向かう旋回流204により、容器本体501と容器栓205の間に浮遊しているミストが押し出され、吸引部201から吸引される。これにより、積極的に排除しにくい浮遊性のミストであっても取り除くことができ、周囲への拡散を防止できる。
【0044】
また、旋回流はコアンダ効果により容器栓205の段差の凹部に近づけることが容易である。そのため、凹部に停滞して浮遊しながら、徐々に周囲へ飛散するような浮遊性ミストがあった場合でも、容器栓205の段差の凹部へ旋回流が到達して浮遊性ミストを制御し、効率的に吸引部201から吸引することができる。
【0045】
また、旋回流の吐出と吸引の開始と終了のタイミングを一致させても良い。
【0046】
更に望ましくは、旋回流として吐出された気体の量を吸引された気体の量と同じもしくはこれよりも少なくすることで、吐出した気体を全て吸引部で吸引することができる。これによって、過剰な気体を周囲にまき散らさず、周囲へのミストの飛散を防止できる。
【0047】
また、処理対象の容器と隣接した他の容器との間に仕切り板113を設置することで、そのミストが仕切り板113に衝突し、ミストが他の領域に飛散して汚染することを防止できる。また、仕切り板113に気体を吸引するための吸引手段を備えることによって、旋回流の遠心力で気流の外側に偏ったミストを仕切り板113から効率よく吸い込むことができる。
【実施例2】
【0048】
本実施例では、円柱形状の容器本体から円柱形状の容器栓を開栓する栓開閉装置の第二の例を説明する。本実施例では
図1に示す構成に加え、第二吐出機構、第二吐出機構吐出バルブ、第二吐出機構上下モータを備えている(これらは
図1に示していない)。
【0049】
図6に本発明の第二の実施例である栓開閉装置の詳細を示す。(a)は開栓吐出機構101と仕切り板113と第二吐出機構601の上面図、(b)は開栓吐出機構101と容器保持吸引機構107と仕切り板113と第二吐出機構601の下はB−B矢視における側面図、(c)は容器保持吸引機構107と仕切り板113の下面図を示す。
第二吐出機構601は、気体を吐出する第二吐出部602を持つ。この第二吐出部602は、容器栓を貫通できるように先端が針状になっており、かつ、内部は気体を導入可能となるよう空洞である。
【0050】
開栓動作の初期状態において、第二吐出部602は開栓吐出機構101の上方にセットされている。開栓吐出機構101による容器栓205の開栓後に、第二吐出機構602が、上方から容器栓205を突き抜けるように下降する。その後、第二吐出部602が気体を吐出して、容器栓205の下から容器保持吸引機構107の吸引部201へ向かう気流を作り出す。
【0051】
図7−1〜
図7−3に本発明の第二の実施例である栓開閉装置の動作を示す。図には開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113および容器栓205および容器本体501および第二吐出機構601の側面図を示しており、
図2の吸引部201、吐出部202、容器栓保持部203、容器本体保持部211、仕切り板吸引部210、
図6の第二吐出機構吐出部602は省略してある。
【0052】
図7−1(a)は初期状態を示しており、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107はそれぞれ開いた状態で、容器本体501が容器栓205で封止された状態で、容器栓205の上に第二吐出機構601が静止した状態でセットされている。
【0053】
開栓吐出機構101が容器栓205の高さまで下降して停止する(
図7−1(b))。
【0054】
開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107が閉じ、容器栓205および容器本体501をそれぞれ保持する(
図7−1(c))。
【0055】
開いた状態の仕切り板113が閉じて、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107の周囲に設置される(
図7−1(d))。
【0056】
開栓吐出機構101から旋回流204を吐出し、容器保持吸引機構107および仕切り板113で気体を吸引しながら(
図7−2(e)の矢印)、開栓吐出機構101を上昇させ容器栓205を開く(
図7−2(f))。
【0057】
その後、第二吐出機構601は、容器栓205と容器本体501の間に第二吐出機構の吐出口が設置される位置まで、容器栓205を突き抜けて下降する(
図7−2(g))。
【0058】
開栓吐出機構101から気体を吐出し容器保持吸引機構107および仕切り板113で気体を吸引しながら、第二吐出機構601からも気体を吐出する(
図7−2(h)の矢印)。この時、吐出した気体を全て吸引するために、望ましくは吐出気体の量を吸引気体の量以下にする。また、第二吐出機構601を、気体の吸引を行う第二吸引機構としてもよい。
【0059】
一旦、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113および第二吐出機構601からの吸引および吐出の動作を止めて気流を停止する(
図7−3(i))。
【0060】
その後第二吐出機構601を初期位置まで上昇させる(
図7−3(j))。
【0061】
容器本体から液体の分注等の動作を行った後(図示せず)、再び開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113からの吸引および吐出の動作を開始し(
図7−3(k))、開栓吐出機構101を下降させ、容器栓205で容器本体501を閉栓する。閉栓が終了したあと、開栓吐出機構101による気体の吐出および容器保持吸引機構107および仕切り板113による気体の吸引を終了する(
図7−3(l))。
【0062】
その後、開栓吐出機構101および容器保持吸引機構107および仕切り板113が開いて、開栓吐出機構101が上昇して、初期位置に戻る。必要に応じて次の容器を処理する(
図7−1(a))。
【0063】
本実施例では、実施例1で述べた効果に加え、容器本体501と容器栓205の間の空間に停滞し、時間をかけて浮遊しながら徐々に周囲に拡散する浮遊性ミストであっても、容器本体501と容器栓205の間から第二吐出機構吐出部602が気体を吐出/吸引することで容器栓の下からミストを制御する気流を作り出し、その気流でミストが吸引部方向に押し出されて吸引部201から吸引することができる。これによって、浮遊性ミストが容器の周囲に拡散することを効率的に防止できる。
【実施例3】
【0064】
本実施例では、試料容器または分析容器を開栓して分析容器に分注するために、実施例1または実施例2に記載の栓開閉装置を備えた試料処理装置の例を説明する。
【0065】
図8は、本実施例における試料処理装置の上面図である。試料容器801は試料容器投入部802に投入され、試料容器搬送部803で搬送され、試料処理部804を通過し、試料容器保管部805で保管される。
【0066】
試料容器801の搬送方法としては、試料容器801を直接搬送する方式だけでなく、試料容器801を1本あるいは複数本ずつ搭載したラックやホルダごと搬送する方式であっても良い。また、
図8に示すリニア方式(直線的に移動する方式)だけでなく、ディスク方式(回転動作により移動する方式)等でもよく、容器の搬送方法は本実施例に限定するものではない。
【0067】
同様に、本実施例では、分析容器806は分析容器投入部807に投入され、分析容器搬送部808で搬送され、試料処理部804を通過し、分析容器保管部809で保管されるものであるが、ラックやホルダごとに搬送されていても良く、ディスク方式で搬送されていても良い。
【0068】
試料処理部804では、試料容器801内の試料が分注機1001(
図10)により一つ以上の分析容器806に分注される。分注機1001は分注機ガイド810に沿って分注機水平モータ811で移動し、分注機上下モータ812で上下に移動可能である。
【0069】
分注チップ813は分注チップ保持部814に保持され、分注チップ保持部ガイド815に沿って分注チップ保持部水平モータ816で移動する。分注機1001の駆動方式は、この方式に限定されず、軸を中心にして回転運動することにより、試料容器801から分析容器806に試料を分注するものであっても良い。
【0070】
図9は試料処理部804の詳細図で、
図9(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0071】
試料処理部804には、実施例1または実施例2の栓開閉装置が並列に二つ設置されている。本実施例では実施例1の栓開閉装置を二つ使用した例を示しているが、実施例2の栓開閉装置を二つ使用してもよい。または、実施例1の栓開閉装置と実施例2の栓開閉装置を一つずつ使用してもよい。また、これらの栓開閉装置を直列に配置していても良い。
【0072】
第一開栓吐出機構901は、第一開栓吐出機構開閉モータ902で開閉可能であり、第一開栓吐出機構上下モータ903で上下に移動可能であり、吐出機構ガイド904に沿って第一開栓吐出機構水平モータ905で水平方向に移動可能である。
【0073】
第二開栓吐出機構906は、第二開栓吐出機構開閉モータ907で開閉可能であり、第二開栓吐出機構上下モータ908で上下に移動可能であり、吐出機構ガイド904に沿って第二開栓吐出機構水平モータ910で水平方向に移動可能である。
【0074】
分注吐出機構911は、吐出機構ガイド904に沿って分注吐出機構水平モータ913で水平方向に移動可能である。
【0075】
試料容器保持吸引機構914は、試料容器保持吸引機構開閉モータ915で開閉可能である。
【0076】
分析容器保持吸引機構918は、分析容器保持吸引機構開閉モータ919で開閉可能である。
【0077】
第一仕切り板932は、第一開栓吐出機構901および試料容器保持吸引機構914の周囲に備えられている。この第一仕切り板932は、第一仕切り板開閉モータ933で開閉可能である。排気ファン109が動作中に第一仕切り板吸引バルブ934を開くと、気体が第一仕切り板932から吸引される。第一仕切り板932から吸引された気体は、排気フィルタ111を通って、排気ダクト112から装置外へ排出される。なお、第一仕切り板932は対象の試料容器から発生したミストが隣接した他の試料容器もしくは近傍に位置する分析容器に飛散・拡散してコンタミが生じるのを防ぐための部材である。そのため、少なくとも、対象の容器と、近傍にある他の容器との間には、仕切り板が位置できるように構成されていることが望ましい。
【0078】
第二仕切り板935は、第二開栓吐出機構906および分析容器保持吸引機構918の周囲に備えられている。第二仕切り板935は、第二仕切り板開閉モータ936で開閉可能である。排気ファン109が動作中に第二仕切り板吸引バルブ937を開くと、気体が第二仕切り板935から吸引される。第二仕切り板935から吸引された気体は、排気フィルタ111を通って、排気ダクト112から装置外へ排出される。なお、第二仕切り板935は、対象の分析容器から発生したミストが隣接した他の分析容器もしくは近傍に位置する試料容器に飛散・拡散してコンタミが生じるのを防ぐための部材である。そのため、少なくとも、対象の容器と、近傍にある他の容器との間には仕切り板が位置できるように構成されていることが望ましい。
【0079】
図10−1〜
図10−4に本発明の第三の実施例である試料処理部804の動作を示す。各図は試料処理部804の側面図を示しており、各吐出機構、吸引機構のバルブ、モータ、空気配管、ガイド等は省略してある。本実施例では第一仕切り板932、第二仕切り板935が動作しない場合を示しているが、どちらか一方または両方を動作させてもよい。また、本実施例では試料容器本体1002および分析容器1004の両方が初期位置で閉栓されているが、どちらか一方または両方が開栓されていてもよい。
【0080】
まず、試料容器内に保持されている試料を吸引する工程を説明する。
【0081】
図10−1(a)は初期状態を示しており、第一開栓吐出機構901および試料容器保持吸引機構914、第二開栓吐出機構906および分析容器保持吸引機構918は、それぞれ開いた状態である。試料容器本体1002は試料容器栓1003で閉栓され、分析容器1004は分析容器栓1005で閉栓されている。分注チップ廃棄吸引機構922の上には分注吐出機構911が位置し、分注チップ廃棄吸引機構922の下には分注チップ廃棄容器929が設けられている。分注機1001は分注チップ廃棄吸引機構922の横に待機しており、その下に分注チップ813がある。
【0082】
図9に示す第一開栓吐出機構上下モータ903によって、第一開栓吐出機構901が下降し、試料容器栓1003の高さで停止する(
図10−1(b))。
【0083】
図9に示す第一開栓吐出機構開閉モータ902および試料容器保持吸引機構開閉モータ915が動作し、第一開栓吐出機構901および試料容器保持吸引機構914が閉じ、試料容器栓1003および試料容器本体1002をそれぞれ保持する(
図10−1(c))。
【0084】
図9に示す第一開栓吐出機構吐出バルブ930および試料容器保持吸引機構吸引バルブ925を開き、第一開栓吐出機構901の吐出部から旋回流を吐出し、試料容器保持吸引機構914の吸引部で旋回流を吸引しながら(
図10−2(d)の矢印)、第一開栓吐出機構上下モータ903を動作して、第一開栓吐出機構901を上昇させ試料容器栓1003を開く。この時、吐出した気体は全て吸引するために、望ましくは吐出と吸引の開始と終了のタイミングを一致させる。更に望ましくは、吐出気体の量を吸引気体の量以下にする。もしくは、ミストが発生する可能性のある開栓動作の開始前から気流を発生させておいても良い。
【0085】
そのため、気流吐出および吸引の開始(
図10−2(d))を、試料栓本体保持(
図10−1(c))の前のタイミングで実施してもよい。同時に分注機上下モータ812(
図8)を動作させることで分注機1001を下降させ、分注機1001に分注チップ813を装着する(
図10−1(d))。
【0086】
次に一旦、
図9に示す第一開栓吐出機構吐出バルブ930および試料容器保持吸引機構吸引バルブ925を閉じ、第一開栓吐出機構901と試料容器保持吸引機構914との間の気流を停止する(図示せず)。
【0087】
図9に示す第一開栓吐出機構水平モータ905および分注吐出機構水平モータ913を動作させることで、第一開栓吐出機構901および分注吐出機構911を吐出機構ガイド904に沿って移動させ、分注吐出機構911を試料容器保持吸引機構914の真上、すなわち開栓された試料容器本体1002の真上で停止させる。
図9に示す分注吐出機構吐出バルブ926と試料容器保持吸引機構吸引バルブ925を開き、分注吐出機構911から試料容器保持吸引機構914への旋回流を発生させながら(
図10−2(e)の矢印)、分注機1001を試料容器本体1002に挿入し試料を吸引する(
図10−2(e))。
【0088】
試料の吸引が完了したら、分注機1001を上昇させ、気流を一旦停止する(図示せず)。
図9に示す第一開栓吐出機構水平モータ905および分注吐出機構水平モータ913を動作させることで、第一開栓吐出機構901および分注吐出機構911を吐出機構ガイド904に沿って移動させ、分注吐出機構911を分注チップ廃棄吸引機構922の真上へ、第一開栓吐出機構901を試料容器保持吸引機構914の真上へ移動させる。
図9に示す第一開栓吐出機構吐出バルブ930および試料容器保持吸引機構吸引バルブ925を開き、第一開栓吐出機構901で気体を吐出し試料容器保持吸引機構914で空気を吸引しながら、第一開栓吐出機構上下モータ903を動作させることで第一開栓吐出機構901を下降させ、試料容器栓1003で試料容器本体1002を閉栓する(
図10−2(f))。
【0089】
図9に示す第一開栓吐出機構開閉モータ902および試料容器保持吸引機構開閉モータ915を動作させることで、第一開栓吐出機構901および試料容器保持吸引機構914を開き、
図9に示す第一開栓吐出機構上下モータ903を動作させて第一開栓吐出機構901を上昇させる(
図10−3(g))。試料容器栓1003で閉栓された試料容器本体1002は、
図9に示す試料容器搬送部803により試料容器保管部805へ搬送される(図示せず)。
【0090】
次に、吸引した試料を分析容器1004に分注する工程を説明する。
【0091】
図9に示す第二開栓吐出機構上下モータ908を動作させて第二開栓吐出機構906を下降させ(図示せず)、第二開栓吐出機構開閉モータ907および分析容器保持吸引機構開閉モータ919を動作させて第二開栓吐出機構906および分析容器保持吸引機構918を閉じ、分析容器1004および分析容器栓1005をそれぞれ保持する(図示せず)。
図9に示す第二開栓吐出機構上下モータ908を動作させて、第二開栓吐出機構906を上昇させ分析容器栓1005を開栓する(
図10−3(h))。
【0092】
図9に示す第二開栓吐出機構水平モータ910および分注吐出機構水平モータ913を動作させることで、第二開栓吐出機構906および分注吐出機構911を吐出機構ガイド904に沿って移動させ、分注吐出機構911を分析容器保持吸引機構918の真上、すなわち開栓された分析容器1004の真上で停止させる。
図9に示す分注吐出機構吐出バルブ926と分析容器保持吸引機構吸引バルブ927を開き、分注吐出機構911から分析容器保持吸引機構918への旋回流を発生させながら(
図10−3(i)の矢印)、分注機1001を分析容器1004に挿入し試料を吐出する(
図10−3(i))。
【0093】
試料の吐出が完了したら、分注機1001を上昇させ、気流を一旦停止する(図示せず)。
図9に示す第二開栓吐出機構水平モータ910および分注吐出機構水平モータ913を動作させることで、第二開栓吐出機構906および分注吐出機構911を吐出機構ガイド904に沿って移動させ、分注吐出機構911を分注チップ廃棄吸引機構922の真上へ、第二開栓吐出機構906を分析容器保持吸引機構918の真上へ移動させる。
【0094】
図9に示す第二開栓吐出機構吐出バルブ931および分析容器保持吸引機構吸引バルブ927を開き、第二開栓吐出機構906で旋回流を吐出し分析容器保持吸引機構918で気体を吸引しながら、第二開栓吐出機構上下モータ908を動作させることで第二開栓吐出機構906を下降させ、分析容器栓1005で分析容器1004を閉栓する。同時に、
図9に示す分注吐出機構吐出バルブ926および分注チップ廃棄吸引機構吸引バルブ928を開き、分注吐出機構911で空気を吐出し分注チップ廃棄吸引機構922で空気を吸引しながら、分注機1001は分注チップ813を分注チップ廃棄容器929へ廃棄する(
図10−4(j))。
【0095】
全ての気流を停止し、
図9に示す第二開栓吐出機構開閉モータ907および分析容器保持吸引機構開閉モータ919を動作させることで第二開栓吐出機構906および分析容器保持吸引機構918を開き、第二開栓吐出機構906を上昇させる(図示せず)。分析容器1004は分析容器搬送部808により分析容器保管部809へ搬送される。次に、分注機1001は上昇して初期位置に戻る。第二開栓吐出機構906および分注吐出機構911も初期位置に戻り、必要に応じて同様の工程により次の試料容器を処理する(
図10−1(a))。
【0096】
本実施例には以下の効果がある。
【0097】
気流制御は本実施例で述べたタイミングだけでなく、任意のタイミングで実施してよい。例えば
図10−2(f)に示すように、分注機1001が分注チップ廃棄吸引機構922の真上にあるタイミングで、分注吐出機構911から分注チップ廃棄吸引機構922へ気流制御をすれば、制御された気流が分注チップ廃棄吸引機構の吸引部から吸引されるため、分注機1001および分注チップ813内に吸引されている試料からミストが発生したとしても、周囲に飛散・拡散することはない。
【0098】
また本実施例では、試料容器本体1002の開栓時(
図10−2(d))および閉栓時(
図10−2(f))、試料容器本体1002からの試料吸引時(
図10−2(e))、分析容器1004への試料吐出時(
図10−3(i))、分析容器1004の閉栓時および分注機1001の分注チップ廃棄容器929への分注チップ813の廃棄時(
図10−4(j))に気流制御を実施している。そうすることで、様々なタイミングで試料のミストが発生しても、吐出機構と吸引機構との間に形成された旋回流により周囲に飛散・拡散することを防止でき、容器保持吸引機構の吸引部から吸引されるので、ミストによる汚染やコンタミの心配はない。
【0099】
またコアンダ効果により、旋回流は試料容器本体1002および試料容器栓1003および分注機1001に巻き付く様に流れるため、周囲へ飛散する飛散ミストだけでなく、初めは試料容器本体1002および試料容器栓1003および分注機1001近傍に停滞しており、時間をかけて浮遊しながら周囲に拡散する様な浮遊性ミストも旋回流により制御され、吸引部から吸引される。
【0100】
また、浮遊性ミストへの対策としては、開栓動作後に、試料容器栓1003または分析容器栓1005を再度下降させる動作を行うようにしても良い。この動作により、容器栓1003または分析容器栓1005の下の気体が栓により押し出され、吸引部へ向かう気流が生成される。この気流により、試料容器本体1002と試料容器栓1003または分析容器1004と分析容器栓1005の間に浮遊している浮遊性ミストが吸引部方向に押し出されて吸引部から吸引される。
【0101】
また、旋回流はコアンダ効果により試料容器栓1003の段差の凹部に近づけることが容易で、試料容器栓1003の段差の凹部に浮遊性ミストがあった場合でも、ミストを制御し、吸引部から吸引することができる。
【0102】
また、ミスト制御の気流吐出と気流吸引の開始と終了のタイミングを一致させても良い。
【0103】
更に望ましくは、ミスト制御のために吐出される気体の量を、吸引される気体の量よりも少なくしても良い。これによって、周囲へ気体をまき散らさず、周囲へのミストの飛散を防止できる。
【0104】
なお、上記いくつかの実施例では、試料容器の開栓時におけるミスト制御について説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。例えば、試薬容器の栓開閉装置や試薬容器の栓開閉装置を備えた試料処理装置にあっては、試薬の開閉時に同様のミストが発生する可能性がある。このような場合においては、試薬の開栓・閉栓時に上記の如き制御を行うことによって、周囲の汚染を防ぐとともに、試薬間コンタミネーションの発生を抑止することができる。
【0105】
また、上記いくつかの実施例では、容器の栓の開栓動作と閉栓動作の両方を実施する装置において説明したが、開栓と閉栓は個別の機構で実施するようにしても良い。