(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給側圧力調整部は、前記供給側流路部の加圧及び減圧の双方向に駆動可能な供給側ポンプと、前記供給側流路部内の圧力を把握するための供給側圧力検出部とを備え、
前記回収側圧力調整部は、前記回収側流路部の加圧及び減圧の双方向に駆動可能な回収側ポンプと、前記回収側流路部内の圧力を把握するための回収側圧力検出部とを備える請求項1又は2に記載の液体供給装置。
前記制御部は、前記減圧動作を行う前に、前記気体室分割開閉機構を開いた状態で前記液体室を一度加圧し、前記弾性膜の変形により前記第1気体室の体積を減少させた後に前記気体室分割開閉機構を閉じることで前記第1気体室と前記第2気体室の間を閉塞した状態としてから減圧動作を実施する制御を行う請求項7に記載の液体供給装置。
前記ヘッド内減圧工程において、前記供給側流路部及び前記回収側流路部のうち、前記開いた側の流路部の圧力が、前記閉じたままの側の流路部の圧力と同等となるように減圧を行う請求項15に記載の液体充填方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録ヘッドにインクを充填する際に、ヘッド内流路に気泡を取り込んでしまうと印字品質が安定せず、描画性能の回復までには多くのインク排出や時間を要する。したがって、ヘッド交換などによって記録ヘッドにインクを充填する際には、ヘッド流路内に気泡が入り込まないようにインク充填を行うことが望まれる。
【0006】
特許文献1に示されたインクジェット記録装置においては、初期のインク充填時に、キャッピング手段に繋がるポンプを減圧(吸引)方向に作動させてインク循環系のインク排出流路に通常のインク排出方向と逆方向にインクを流すように構成されている。
【0007】
しかし、このような構成では、インク充填のために別途キャップ部材及び吸引ポンプが必要となる。このため、コスト増を招き、装置サイズが大きくなるという問題がある。また、充填時のインク排出量(廃液量)が多くなるという欠点があり、さらに、充填時におけるヘッド内流路への気泡の巻き込み(エア混入)の可能性があり、気泡混入防止という観点についても大きな改善が見込めない。
【0008】
一方、特許文献2に示された画像形成装置についても、通常のインク供給系の構成要素以外に、インク充填のために別途吸引ポンプ、負圧タンク、エア流路と弁、及びインク流路と弁とを装置に設ける必要があり、コストが高く、装置サイズが大規模化してしまうという問題がある。
【0009】
上記の問題は、印刷用途に用いられるインクジェット装置に限らず、液滴吐出ヘッドを用いる様々な液滴吐出装置について共通の問題として把握できる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、上記の課題を解決し、装置のコスト増加を抑え、装置の大型化を回避しつつ、ヘッド内流路への気泡の巻き込みを抑制して、良好な吐出性能を確保できる簡易な液体充填を可能とする液体供給装置、液滴吐出装置並びに液体充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、次の発明態様を提供する。
【0012】
(第1態様):第1態様に係る液体供給装置は、液体を貯留しておくタンクと、タンクから液体を液滴吐出ヘッドに供給する供給側流路部と、液滴吐出ヘッドから液体を回収する回収側流路部と、供給側流路部の液滴吐出ヘッドに繋がる第1流路を開閉可能な供給側開閉弁と、回収側流路部の液滴吐出ヘッドに繋がる第2流路を開閉可能な回収側開閉弁と、供給側流路部の圧力を調整する供給側圧力調整部と、回収側流路部の圧力を調整する回収側圧力調整部と、供給側開閉弁、回収側開閉弁、供給側圧力調整部、回収側圧力調整部を制御する制御部と、を備え、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる際に液滴吐出ヘッドに対して液体を循環供給する液体供給装置であって、供給側開閉弁及び回収側開閉弁をともに閉じた状態で供給側流路部と回収側流路部とに接続された液滴吐出ヘッドへの液体の初期充填を行う際に、液滴吐出ヘッドの液滴吐出口を閉塞部材によって閉塞した状態のもとで、制御部は、供給側開閉弁及び回収側開閉弁のうちいずれか一方の開閉弁を開き、他方の開閉弁は閉じたまま、開いた側の流路部及び圧力調整部を用いて液滴吐出ヘッド内を減圧し、その後、閉じていた側の他方の開閉弁を開き、当該他方の開閉弁が介在する流路を通じて液滴吐出ヘッド内に液体を流入させる制御を行う液体供給装置である。
【0013】
第1態様によれば、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる際に液滴吐出ヘッドに対して液体を循環供給するために用いられる供給側流路部、回収側流路部、供給側圧力調整部、回収側圧力調整部を活用して液滴吐出ヘッド内の減圧と、減圧後の液体充填と、を行うことができる。液滴吐出ヘッド内に液体を流入させる前に、供給側又は回収側のいずれかの流路を用いてヘッド内を減圧することにより、液滴吐出ヘッド内の空気を排出することができる。そして、ヘッド内の空気を排出した後に、他方の流路を通じて液滴吐出ヘッド内にインクを導き入れることにより、ヘッド内への気泡の混入が防止され、良好な液充填が可能である。この態様によれば、ヘッド内減圧のための流路等を別途設ける必要がなく、循環供給に用いる流路の構成の他に、追加的に要する閉塞部材は簡単な(安価な)構成であるため、コスト増を抑制でき、装置サイズも大型化しない。さらに、通常使用時の循環供給経路を用いて充填を行うため、充填時の無駄な液体廃液量を大幅に抑えることができる。
【0014】
(第2態様):第1態様に記載の液体供給装置において、初期充填を行う際に制御部は、供給側開閉弁及び回収側開閉弁をともに閉じた状態で、供給側圧力調整部と回収側圧力調整部とを用いて供給側流路部及び回収側流路部のそれぞれの圧力を負圧に設定し、その後、供給側開閉弁及び回収側開閉弁のうちいずれか一方の開閉弁を開く制御を行う構成とすることができる。
【0015】
この第2態様によれば、一方の開閉弁を開いたときに液滴吐出ヘッド内に液体が流入しない。
【0016】
(第3態様):第2態様に記載の液体供給装置において、制御部は、減圧を行う際に、供給側流路部及び回収側流路部のうち、開いた側の流路部の圧力が、閉じたままの側の流路部の圧力と同等となるように減圧する制御を行う構成とすることができる。
【0017】
ヘッド内減圧に用いる流路(減圧側の経路)と、ヘッド内減圧後の液体の充填に用いる流路(充填側の経路)の圧力をバランスさせてから、液滴吐出ヘッドに液体をゆっくりと流入させることが好ましい。
【0018】
なお、ここでいう「同等」とは、厳密に等しい場合に限らず、作用効果上、実質的に同程度と見なすことができる範囲の略同等の範囲を含む。
【0019】
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載の液体供給装置において、供給側圧力調整部は、供給側流路部の加圧及び減圧の双方向に駆動可能な供給側ポンプと、供給側流路部内の圧力を把握するための供給側圧力検出部とを備え、回収側圧力調整部は、回収側流路部の加圧及び減圧の双方向に駆動可能な回収側ポンプと、回収側流路部内の圧力を把握するための回収側圧力検出部とを備える構成とすることができる。
【0020】
供給側と回収側のそれぞれに、ポンプと圧力検出部とを備えることにより、供給側と回収側をそれぞれ独立に圧力制御することができる。
【0021】
(第5態様):第4態様に記載の液体供給装置において、初期充填を行う際に制御部は、一方の開閉弁を開いて減圧を行った後に、閉じていた側の他方の開閉弁を開いて液滴吐出ヘッド内に液体を流入させる際に、供給側ポンプと回収側ポンプを同一の速度にて、それぞれ液滴吐出ヘッドに対して逆方向に駆動させる制御を行う構成とすることができる。
【0022】
液滴吐出ヘッドに液体を入れる充填側の流路と、液滴吐出ヘッドのヘッド内減圧に用いた減圧側の流路とに圧力差を設けて液滴吐出ヘッドに液体を充填することも可能であるが、高精度の圧力制御が必要となる。ヘッド内減圧と充填側の流路内圧力の減圧とを独立で制御し、減圧側と充填側の両者の圧力バランスが取れた状態で充填側流路と液滴吐出ヘッドの内部流路とを開放(開通)し、その後はポンプの一定速度にて液滴吐出ヘッド内へ液体を充填することで、液体充填状態品質が安定する。
【0023】
なお、ここでいう「同一の速度」とは、厳密に等しい場合に限らず、作用効果上、実質的に同程度と見なすことができる範囲の略同一の範囲を含む。ポンプ速度(回転数)と流量とは相関があり、供給側ポンプ及び回収側ポンプの一方のポンプによる液体の送液量と他方のポンプによる吸液量とを概ねバランスさせるという意味において、両ポンプを同一の速度で逆方向に駆動させる。この態様によれば、液滴吐出ヘッド内に液体をゆっくりと流入させることができ、気泡抑制の効果を一層高めることができる。
【0024】
(第6態様):第4態様又は第5態様に記載の液体供給装置において、供給側ポンプと回収側ポンプの各ポンプは、複数のチューブを位相を変えて積層配置した構造を持つ多連チューブポンプである構成とすることができる。
【0025】
第6態様によれば、減圧能力が高く、耐久性に優れる。
【0026】
(第7態様):第4態様から第6態様に記載の液体供給装置において、供給側圧力調整部と回収側圧力調整部は、それぞれ、密閉容器内を弾性膜にて液体室と気体室とに区切った構造を有する圧力調整タンクを備えている構成とすることができる。
【0027】
第7態様によれば、液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出量の変動や供給側、回収側のポンプの脈動などによる圧力変動を、弾性膜と気体室の作用によって抑制することができ、安定した圧力調整が可能である。
【0028】
(第8態様):第7態様に記載の液体吐出装置において、圧力調整タンクは、気体室が第1気体室と第2気体室の二室構成となっており、第1気体室と第2気体室との間を開閉できる気体室分割開閉機構を備え、制御部は、気体室分割開閉機構の制御を行い、少なくとも初期充填の際における減圧動作時は、気体室分割開閉機構を閉じた状態とする構成とすることができる。
【0029】
この第8態様によれば、充填を行う際のヘッド内減圧と、通常の循環供給時における圧力制御とを比較的小型の調整タンクで両立できる。通常の循環供給時における圧力制御時は第1気体室と第2気体室の二室間が開放された状態とをすることにより、良好なダンパー性能が達成される。その一方、液滴吐出ヘッドへの液体の初期充填の際には二室間を閉塞して使用する。
【0030】
(第9態様):第8態様に記載の液体吐出装置において、制御部は、減圧動作を行う前に、気体室分割開閉機構を開いた状態で液体室を一度加圧し、弾性膜の変形により第1気体室の体積を減少させた後に気体室分割開閉機構を閉じることで第1気体室と第2気体室の間を閉塞した状態としてから減圧動作を実施する制御を行う構成とすることができる。
【0031】
この第8態様によれば、減圧動作時に弾性膜が液体室を狭めてしまう事態を防止することができ、流路内を高い負圧に設定することできる。
【0032】
(第10態様):第1態様から第9態様のいずれか1項に記載の液体供給装置において、液滴吐出ヘッドに対して供給側及び回収側のそれぞれの流路うち、少なくとも液滴吐出ヘッド内を減圧する際に用いる減圧側の流路には、流路内の気泡を排出するための気泡排出経路が設けられている構成とすることができる。
【0033】
第10態様によれば、充填後に気泡排出経路を利用した気泡排出動作を行うことで、ヘッド内減圧に利用した流路内の気泡を確実に除去することができる。
【0034】
(第11態様):第1態様から第10態様のいずれか1項に記載の液体供給装置において、供給側流路部は、複数の液滴吐出ヘッドが並列に接続される供給側マニホールドを含み、回収側流路部は、複数の液滴吐出ヘッドが並列に接続される回収側マニホールドを含み、複数の液滴吐出ヘッドのそれぞれに対して供給側開閉弁及び回収側開閉弁を備えている構成とすることができる。
【0035】
例えば、複数の液滴吐出ヘッドを並べて広幅のラインヘッドバーにおいて、交換が必要な一部の液滴吐出ヘッド(ヘッドモジュール)のみを交換し、その交換した液滴吐出ヘッドに対して容易に液体を充填することができる。
【0036】
(第12態様):第12態様に係る液滴吐出装置は、第1態様から第11態様のいずれか1項に記載の液体供給装置と、液滴吐出ヘッドと、を備えた液滴吐出装置である。
【0037】
第12態様によれば、低コストで高品質な液体充填品質を達成できる。
【0038】
(第13態様):第12態様に記載の液滴吐出装置において、液滴吐出ヘッドの液滴吐出口を閉塞する閉塞部材を備えており、閉塞部材は、ラバー製のシート部材である構成とすることができる。
【0039】
(第14態様):第12態様又は第13態様に記載の液滴吐出装置において、複数の液滴吐出ヘッドを繋ぎ合わせて長尺のラインヘッドバーが構成され、複数の液滴吐出ヘッドのそれぞれが独立して交換可能なヘッドモジュールであり、複数の液滴吐出ヘッドのうちの少なくとも1つの液滴吐出ヘッドを交換した際に、当該交換後の新規の液滴吐出ヘッドに対して初期充填の際の制御が行われる構成とすることができる。
【0040】
(第15態様):第14態様に記載の液滴吐出装置において、閉塞部材は、少なくとも交換後の新規の液滴吐出ヘッドの液滴吐出面を覆う大きさを有する部材である構成とすることができる。
【0041】
(第16態様):第16態様に係る液体充填方法は、液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドに供給する液体を貯留しておくタンクと、タンクから液体を液滴吐出ヘッドに供給する供給側流路部と、液滴吐出ヘッドから液体を回収する回収側流路部と、供給側流路部の液滴吐出ヘッドに繋がる第1流路を開閉可能な供給側開閉弁と、回収側流路部の液滴吐出ヘッドに繋がる第2流路を開閉可能な回収側開閉弁と、供給側流路部の圧力を調整する供給側圧力調整部と、回収側流路部の圧力を調整する回収側圧力調整部と、を備える液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドに対する初期の液体充填方法であって、供給側開閉弁及び回収側開閉弁をともに閉じた状態で液滴吐出ヘッドに対して供給側流路部と回収側流路部とが接続されるヘッド接続工程と、液滴吐出ヘッドの液滴吐出口を閉塞部材によって閉塞した状態のもとで、供給側開閉弁及び回収側開閉弁のうちいずれか一方の開閉弁を開き、他方の開閉弁は閉じたまま、開いた側の流路部及び圧力調整部を用いて液滴吐出ヘッド内を減圧するヘッド内減圧工程と、ヘッド内減圧工程の後、閉じていた側の他方の開閉弁を開き、当該他方の開閉弁が介在する流路を通じて液滴吐出ヘッド内に液体を流入させる充填工程と、を含む液体充填方法である。
【0042】
(第17態様):第16態様に記載の液体充填方法において、供給側開閉弁及び回収側開閉弁をともに閉じた状態で、供給側圧力調整部と回収側圧力調整部とを用いて供給側流路部及び回収側流路部のそれぞれの圧力を負圧に設定する流路内減圧工程を有し、流路内減圧工程の後に、ヘッド内減圧工程を実施する構成とすることができる。
【0043】
(第18態様):第17態様に記載の液体充填方法において、ヘッド内減圧工程において、供給側流路部及び回収側流路部のうち、開いた側の流路部の圧力が、閉じたままの側の流路部の圧力と同等となるように減圧を行う構成とすることができる。
【0044】
(第19態様):第16態様から第18態様のいずれか1項に記載の液体充填方法において、液滴吐出装置は、複数の液滴吐出ヘッドを備え、複数の液滴吐出ヘッドを繋ぎ合わせて長尺のラインヘッドバーが構成され、複数の液滴吐出ヘッドのそれぞれが独立して交換可能なヘッドモジュールであり、複数の液滴吐出ヘッドのうちの少なくとも1つの液滴吐出ヘッドを交換した際に、当該交換後の新規の液滴吐出ヘッドに対してヘッド内減圧工程と充填工程を実施して初期充填を行う構成とすることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、装置のコスト増や装置サイズの大型化を回避して、ヘッド交換時の液体充填の際にヘッド内流路への気泡の巻き込みを抑制し、良好な液体充填を実現することができ、安定した吐出性能を達成することができる。また、充填時の液体廃棄量を大幅に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0048】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
まず、本発明が適用されるインクジェット記録装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。図示のように、本実施の形態のインクジェット記録装置10は、主として、給紙部12、処理液付与部14、描画部16、乾燥部18、定着部20、及び排出部22を備えて構成される。
【0049】
〈給紙部〉
給紙部12は、記録媒体としての用紙24を処理液付与部14に供給する機構である。給紙部12には、枚葉紙である用紙24が積層されている。給紙部12には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から用紙24が一枚ずつ処理液付与部14に給紙される。
【0050】
記録媒体としての用紙24は、汎用の印刷用紙(セルロースを主体とする用紙)が用いられる。なお、記録媒体の種類は、これに限定されるものではない。また、本例では、枚葉紙(カット紙)を用いるが、ロール紙から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0051】
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙24の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部16で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0052】
図1に示すように、処理液付与部14は、給紙ドラム52、処理液ドラム54、及び、処理液塗布装置56を備えている。処理液ドラム54は、用紙24を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)55を備え、この保持手段55の爪と処理液ドラム54の周面の間に用紙24を挟み込むことによって用紙24の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム54は、その外周面に吸着穴を設けるとともに、吸着穴から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより用紙24を処理液ドラム54の周面に密着保持することができる。
【0053】
処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置56が設けられる。処理液塗布装置56は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム54上の用紙24に圧接されて計量後の処理液を用紙24に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置56によれば、処理液を計量しながら用紙24に塗布することができる。
【0054】
処理液付与部14で処理液が付与された用紙24は、処理液ドラム54から中間搬送部26を介して描画部16の描画ドラム70へ受け渡される。
【0055】
〈描画部〉
描画部16は、描画ドラム70、用紙抑えローラ74、及び、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yを備えている。描画ドラム70は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)71を備える。描画ドラム70に固定された用紙24は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェ
ットヘッド72M,72K,72C,72Yからインクが付与される。
【0056】
インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドとして機能する。インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、それぞれ用紙24の幅に対応する長さを有するラインヘッドで構成される。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、用紙24の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0057】
描画ドラム70上に密着保持された用紙24の記録面に向かって各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部14であらかじめ記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、用紙24上での色材流れなどが防止され、用紙24の記録面に画像が形成される。
【0058】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。たとえば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色インクジェットヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0059】
描画部16で画像が形成された用紙24は、描画ドラム70から中間搬送部28を介して乾燥部18の乾燥ドラム76へ受け渡される。
【0060】
〈乾燥部〉
乾燥部18は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、
図1に示すように、乾燥ドラム76、及び溶媒乾燥装置78を備えている。
【0061】
乾燥ドラム76は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)77を備え、この保持手段77によって用紙24の先端を保持できるようになっている。
【0062】
溶媒乾燥装置78は、乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置され、複数のIRヒータ(Infrared Radiation ヒータ:赤外線ヒータ)82と、各IRヒータ82の間に
それぞれ配置された温風噴出しノズル80とで構成される。
【0063】
各温風噴出しノズル80から用紙24に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各IRヒータ82の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。用紙24の裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。
【0064】
乾燥ドラム76の外周面に、用紙24の記録面が外側を向くように(すなわち、用紙24の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することにより、用紙24のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0065】
乾燥部18で乾燥処理が行われた用紙24は、乾燥ドラム76から中間搬送部30を介して定着部20の定着ドラム84へ受け渡される。
【0066】
〈定着部〉
定着部20は、定着ドラム84、ハロゲンヒータ86、定着ローラ88、及びインラインセンサ90で構成される。定着ドラム84は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)85を備え、この保持手段85によって用紙24の先端を保持できるようになっている。
【0067】
定着ドラム84の回転により、用紙24は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ86による予備加熱と、定着ローラ88による定着処理と、インラインセンサ90による検査が行われる。
【0068】
定着ローラ88は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性熱可塑性樹脂微粒子を溶着し、インクを皮膜化させるためのローラ部材であり、用紙24を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ88は、定着ドラム84に対して圧接するように配置されており、定着ドラム84との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、用紙24は、定着ローラ88と定着ドラム84との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。定着処理によって画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0069】
なお、
図1の実施形態では、定着ローラ88を1つだけ設けた構成となっているが、画像層厚みや熱可塑性樹脂微粒子のTg特性に応じて、複数段設けた構成でもよい。
【0070】
また、紫外線(UV)硬化型のインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ88に代えて、又はこれと組み合わせて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、紫外線(活性光線)を照射する手段が設けられる。乾燥部18で水分を充分に揮発させた後に、紫外線照射手段を備えた定着部で、画像に紫外線を照射することにより、インク中のUV硬化性モノマーを硬化重合させ、画像強度を向上させることができる。
【0071】
一方、インラインセンサ90は、用紙24に記録された画像(テストチャートを含む)について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0072】
〈排出部〉
図1に示すように、定着部20に続いて排出部22が設けられている。排出部22は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と定着部20の定着ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。用紙24は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
【0073】
〈その他の構成〉
図1には示されていないが、本例のインクジェット記録装置10には、上記構成の他、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yにインクを供給するインク供給部、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yのクリーニングを行うメンテナンス処理部などが備えられている。
【0074】
〈インクジェットヘッドの構成〉
次に、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの構成について説明する。本実施の形態のインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、用紙幅に対応する長さを有するラインヘッドで構成される。各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの構成は同じなので、ここではインクジェットヘッド72として、その構成について説明する。また、特に区別する場合を除いて、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはインクジェットヘッド72として説明する。
【0075】
図2は本実施形態に用いられるインクジェットヘッド72の斜視図である。
図2では、ヘッドの下方(斜め下方向)からノズル面(液滴吐出面)を見上げた様子が図示されている。また、
図3は、インクジェットヘッド72をノズル面側から見た部分拡大図である。図示のように、インクジェットヘッド72は、複数個のヘッドモジュール72−i(i=1,2…,n)を長手方向(用紙24の搬送方向と直交する用紙幅方向)に沿って繋ぎ合わせて長尺化したフルライン型のラインヘッドバー(シングルパス印字方式のページワイドヘッド)として構成されている。「i」はヘッドモジュールの配置順に対応したモジュール番号を表している。「n」は2以上の整数であり、ヘッドモジュールの数を表している。ここでは17個(n=17)のヘッドモジュール72−iを繋ぎ合わせた例を示しているが、ラインヘッドバーを構成するヘッドモジュールの個数及び配列形態、並びに各ヘッドモジュールの構造については、図示の例に限定されない。
図2中の符号73は、複数のヘッドモジュール72−iを固定するための枠体となるベースフレーム(バー状のラインヘッドを構成するためのハウジング)、符号75は、各ヘッドモジュール72−iに接続されたフレキシブル基板である。
【0076】
各ヘッドモジュール72−iは、ベースフレーム73に取り付けられて一体化され、1つのインクジェットヘッド72を構成する。各ヘッドモジュール72−iは、インクジェットヘッド72の短手方向の両側からヘッドモジュール支持部材72Bによって支持されて、ベースフレーム73に着脱自在に取り付けられる。各ヘッドモジュール72−iは、個別に交換することができる。各ヘッドモジュール72−i(i=1,2…,n)がそれぞれ「液滴吐出ヘッド」に相当する。
【0077】
図3に示すように、各ヘッドモジュール72−i(n番目のヘッドモジュール72−n)のノズル面72Aには、複数のノズルがマトリクス状に配列されている。
図3において符号151Aを付して図示した斜めの実線は、複数のノズルが一列に並べられたノズル列を表している。
【0078】
図4Aはヘッドモジュールの平面透視図である。また、
図4Bはその一部を拡大した拡大図である。用紙24上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッド72におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッドモジュール72−iは、
図4A、
図4Bに示すように、インク吐出口であるノズル151(「液滴吐出口」に相当)をマトリクス状に(二次元的に)配置させた構造を有し、これにより、インクジェットヘッド長手方向(用紙24の搬送方向と直交する方向;主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズルの間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0079】
図4A、
図4Bの例では、主走査方向に対して角度θの方向に沿ってノズル151を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影された(正射影された)ノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0080】
なお、ノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に一列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0081】
このようなヘッドモジュール72−iを用紙幅方向(主走査方向)に複数個繋ぎ合わせることにより(
図1参照)、用紙幅について全描画範囲をカバーするノズル列が形成され、1回の描画走査で所定の記録解像度(例えば、1200dpi)による画像記録が可能なフルライン型のヘッドが構成される。
【0082】
図5は、ヘッドモジュールの内部構造を示す縦断面図である。同図に示すように、圧力室152は、直方体形状の空間として形成されており、その底面の一角にノズル流路154が連通されている。ノズル流路154は、圧力室152から鉛直下向きに延びてノズル151に連通されている。
【0083】
圧力室152の天井壁面は、振動板155で構成されており、上下方向に撓み変形可能に形成されている。この振動板155の上には圧電素子(ピエゾ素子)156が取り付けられており、振動板155は、この圧電素子156によって上下方向に変形する。そして、この振動板155が上下方向に変形することにより、圧力室152の容積が膨縮(拡縮)し、ノズル151からインクが吐出される。
【0084】
なお、圧電素子156は、その上部に設けられた図示しない個別電極と、共通電極として作用する振動板155との間に所定の駆動電圧を印加することにより駆動され、これにより、振動板155が上下方向に変形する。
【0085】
圧力室152の天井壁面の一角には、圧力室152にインクを供給するための個別供給流路157Aが連通されている。この個別供給流路157Aは、共通供給流路158Aに連通されている。
【0086】
共通供給流路158Aは、用紙24の搬送方向に対して所定の傾きをもって並ぶノズル151の列単位で設けられている。各列に属するノズル151の圧力室152には、この共通供給流路158Aから個別供給流路157Aを介してインクが供給される。
【0087】
各列の共通供給流路158Aは、図示しないインク供給流路に連通されており、インク供給流路は、図示しないインク供給口に連通されている。インクタンクからのインクは、このインク供給口に供給される。そして、このインク供給口に供給されたインクが、インク供給流路を介して各列の共通供給流路158Aに供給され、さらに個別供給流路157Aを介して各圧力室152に供給される。
【0088】
ノズル流路154には、個別回収流路157Bの一端が連通されている。個別回収流路157Bは、ノズル151の近傍位置でノズル流路154に連通されている。個別回収流路157Bの他端は、共通回収流路158Bに連通されている。
【0089】
共通回収流路158Bは、共通供給流路158Aと同様に用紙24の搬送方向に対して所定の傾きをもって並ぶノズル151の列単位で設けられている。各列の共通回収流路158Bは、図示しないインク回収流路に連通されている。インク回収流路は、図示しないインク回収口に連通されている。
【0090】
各ノズル流路154を流れるインクは、一部が個別回収流路157Bに流れ、共通回収流路158Bに回収される。そして、各共通回収流路158Bからインク回収流路、インク回収口を介してインクタンクに回収される。すなわち、本実施の形態のインクジェットヘッドでは、各ヘッドモジュール72−iにインクが循環して供給される。
【0091】
〈インク供給部〉
次に、インク供給部の構成について説明する。インク供給部は、「液体供給装置」に相当しており、インクジェット記録装置10は「液滴吐出装置」に相当している。インク供給部は、インクジェットヘッド72にインクを供給するインク供給機能と、インクジェットヘッド72からインクを回収するインク回収機能とを備えたインク供給装置によって構成されており、インクジェット記録装置10における液体循環供給手段として機能する。
【0092】
図6は、本実施形態に係るインクジェット記録装置に適用される循環供給型のインク供給装置の構成図である。なお、同図は1つの(1色分の)インクジェットヘッドに対するインクの供給系を示している。すなわち、インク供給装置200は色別のインクジェットヘッドごとに設けられ、インクジェットヘッドごとに個別にインクの供給が行われる。
【0093】
上記のように、本実施の形態のインクジェットヘッド72は、複数のヘッドモジュール72−iを繋ぎ合わせて構成される。各ヘッドモジュール72−iは独立している。このため、それぞれのヘッドモジュール72−iへ均等(一定の圧力、一定の流量)にインクを供給するためのインク循環用配管路が形成されている。
【0094】
図6に示すように、ヘッドモジュール72−iには、インクが流入するインク供給口212Aと、インクを排出するインク回収口212Bとが設けられている。
【0095】
インク供給口212Aには、供給側マニホールド214から分岐した供給側分岐管216の先端が取り付けられ、インク回収口212Bには、回収側マニホールド218から分岐した回収側分岐管220の先端が取り付けられている。すなわち、供給側マニホールド214及び回収側マニホールド218には、ヘッドモジュール72−iの設置数分の分岐管(供給側分岐管216及び回収側分岐管220)が設けられ、複数のヘッドモジュール72−iがそれぞれ対応する分岐管(216,220)を介して供給側マニホールド214、回収側マニホールド218の間に並列に接続されている。
【0096】
インクジェットヘッド72からインクを吐出して描画を行う際には、供給側マニホールド214に供給されるインクをあらかじめ定められた圧力Pin、かつ、あらかじめ定められた流量でそれぞれのヘッドモジュール72−iへ供給し、さらには、ヘッドモジュール72−iへ供給されたインクをあらかじめ定められた圧力Pout、かつ、あらかじめ定められた流量でそれぞれヘッドモジュール72−iから回収側マニホールド218へ回収する構造となっている。
【0097】
供給側マニホールド214の圧力Pinと回収側マニホールド218の圧力Poutにより、ヘッドモジュール72−i部で差圧ΔPを発生させ、この結果、ヘッドモジュール72−i内ではインク供給口212Aとインク回収口212Bとの間にインクの流れが生じ、この流れにより常にフレッシュなインクがヘッドモジュール72−iに供給されることになる。インクの吐出口(噴射口)であるノズルには、当該供給側マニホールド214の圧力Pinと回収側マニホールド218の圧力Poutに依存する背圧Pnzlが付与されている。
【0098】
各供給側分岐管216には、それぞれ供給側バルブ222と供給側サブダンパ224とが介在されている。また、回収側分岐管220には、それぞれ回収側バルブ226と回収側サブダンパ227とが介在されている。供給側バルブ222及び回収側バルブ226は、ヘッドモジュール72−iを個別に動作させる必要があるときに開閉操作されるものであるとともに、ヘッドモジュール72−iへのインクの循環を開始する際あるいは終了する際に開閉操作されるものである。
【0099】
供給側分岐管216が「第1流路」に相当し、供給側バルブ222が「供給側開閉弁」に相当する。回収側分岐管220が「第2流路」に相当し、回収側バルブ226が「回収側開閉弁」に相当する。
【0100】
供給側サブダンパ224は、供給側マニホールド214から供給されるインクの流動時の圧力変動等を緩和する役目を有しており、回収側サブダンパ227は、回収側マニホールド218へ回収されるインクの流動時の圧力変動等を緩和する役目を有している。
【0101】
供給側マニホールド214には、その長手方向一端部(
図6の右端部)にインク循環配管系の供給管228の一端部が取り付けられる。一方、回収側マニホールド218には、その長手方向一端部(
図6の右端部)にインク循環配管系の回収管230の一端部が取り付けられる。
【0102】
また、供給側マニホールド214と回収側マニホールド218のそれぞれの他端部(
図6の左端部)の間には、第1バイパス流路232と第2バイパス流路234とが設けられている。第1バイパス流路232には、第1バイパスバルブ236が介在されている。また、第2バイパス流路234には、第2バイパスバルブ238が介在されている。この第1バイパス流路232及び第2バイパス流路234は、供給側マニホールド214と回収側マニホールド218との間の圧力、流量調整等に用いられる。
【0103】
さらに、供給側マニホールド214と回収側マニホールド218の他端部には、それぞれ供給側圧力センサ240及び回収側圧力センサ242が取り付けられており、供給側マニホールド214と回収側マニホールド218内のインクの圧力を監視している。供給側圧力センサ240が「供給側圧力検出部」に相当し、回収側圧力センサ242が「回収側圧力検出部」に相当する。
【0104】
供給側マニホールド214に連結された供給管228の他端部は、供給側メインダンパとして機能する供給側圧力調整タンク244に連結されている。供給側圧力調整タンク244は、密閉容器内を弾性膜244Aによってインク室244Bと気体室244Cとに区切った構造を有する。すなわち、供給側圧力調整タンク244は、弾性力を有する薄膜部材からなる弾性膜で仕切られて二室で構成されており、その1つがインク室244B、他の1つが気体室244C(「第1気体室」に相当)となっている。
【0105】
インク室244Bには、インクをバッファタンク246から引き込む(及びバッファタンク246へ回収する)ための供給側主管248の一端部が連結されている。供給側主管248の他端の開口はバッファタンク246に貯留されたインクに浸漬されている。
【0106】
供給側主管248には、バッファタンク246から供給側圧力調整タンク244にかけて順番に、脱気モジュール250、一方向弁252、供給側フィルタ254、供給側ポンプ256、インク温度調整器258がそれぞれ介在されている。インク温度調整器258は熱交換器を含んで構成され、チラー259に接続されている。
【0107】
バッファタンク246に貯留されているインクを供給側ポンプ256の駆動力で供給側圧力調整タンク244へ供給し、その途中でインク内から気泡を取り除き、かつ、ゴミを取り除き、インクの温度を管理している。
【0108】
供給側ポンプ256の入側は、供給側主管248とは別に分岐管253の一端部が接続され、この分岐管253の他方の開口は一方向弁255を介してバッファタンク246に貯留されたインクに浸漬されている。
【0109】
供給側ポンプ256には、供給側マニホールド214に向けてインクを送り出す加圧方向と供給側マニホールド214からインクを引き出す減圧方向の双方向に駆動制御可能なポンプが用いられている。ポンプの構成は特に限定されないが、本実施の形態で適用される供給側ポンプ256は、ステッピングモータを用いたチューブポンプ(弾性力をもつチューブをステッピングモータによる回転駆動でしごきながらチューブ内のインクを供給する)で構成される。供給側ポンプ256としては、小内径(例えば、内径3mm以下)で肉厚(例えば、チューブ厚1mm以上)なチューブを、位相を変えて積層配置した構造を有する多連タイプのチューブポンプ(多連チューブポンプ)を用いることが好ましい。供給側ポンプ256で液体を送出又は吸引することにより、供給側マニホールド214を含む供給側流路の加圧又減圧が行われる。
【0110】
供給側圧力センサ240によって供給側マニホールド214内の圧力を監視しながら供給側ポンプ256の駆動方向、速度(回転数)が制御される。このように正方向及び逆方向のいずれの方向についても精度よく駆動制御することが要求されるため、上述した多連タイプのチューブポンプが好適である。
【0111】
供給側圧力調整タンク244の気体室244Cには、開放管260が取り付けられている。開放管260には、エアコネクトバルブ262(「気体室分割開閉機構」に相当)と、エアタンク264(「第2気体室」に相当)と、大気開放バルブ266とが介在されている。
【0112】
また、インク室244Bは、ドレイン管268の一端が連結されている。ドレイン管268の他端の開口は、バッファタンク246に貯留されたインクに浸漬されている。ドレイン管268には、供給側ドレインバルブ270が介在されている。
【0113】
供給側圧力調整タンク244は、気体室244Cと弾性膜244Aの作用により、インク室244B内の圧力を所望の値に調整・維持する役目を有している。
【0114】
一方、回収側マニホールド218に連結された回収管230の他端部は、回収側メインダンパとして機能する回収側圧力調整タンク272に連結されている。回収側圧力調整タンク272の構造は、供給側圧力調整タンク244の構造と同様であり、密閉容器内が弾性膜272Aによって仕切られ、弾性膜272Aによってインク室272Bと気体室272Cとに区切った構造を有する。インク室272Bは「液体室」に相当し、気体室272Cは「第1気体室」に相当する。
【0115】
インク室272Bには、インクをバッファタンク246から引き込む(及びバッファタンク246から引き込む)ための回収側主管274の一端部が連結されている。
【0116】
回収側主管274の他端部は、分岐管275に連結されており、この分岐管275を介してバッファタンク246に接続されている。回収側主管274には、一方向弁276が介在されており、回収側ポンプ280の駆動力で回収側圧力調整タンク272内のインクをバッファタンク246へ回収している。
【0117】
回収側ポンプ280には、供給側ポンプ256と同様に、回収側マニホールド218に向けてインクを送り出す加圧方向と回収側マニホールド218からインクを引き出す減圧方向の双方向に駆動制御可能なポンプが用いられている。本例の回収側ポンプ280は、供給側ポンプ256と同様の多連チューブポンプで構成されている。回収側ポンプ280で液体を送出又は吸引することにより、回収側マニホールド218を含む供給側流路の加圧又減圧が行われる。
【0118】
回収側圧力調整タンク272の気体室272Cには、開放管282が取り付けられている。開放管282には、エアコネクトバルブ284(「気体室分割開閉機構」に相当)と、エアタンク286(「第2気体室」に相当)と、大気開放バルブ288とが介在されている。
【0119】
また、インク室272Bは、回収側ドレイン管290の一端が連結されている。回収側ドレイン管290の他端は、回収側ドレインバルブ292を介して供給側圧力調整タンク244のドレイン管268に接続されている。
【0120】
回収側圧力調整タンク272は、気体室272Cと弾性膜272Aの作用により、インク室272B内の圧力を所望の値に調整・維持する役目を有している。
【0121】
インクジェットヘッド72を使用して画像の記録(印刷)を行う場合など、通常のインク供給(循環供給)の際における供給側ポンプ256及び回収側ポンプ280による圧力は、供給側マニホールド214の圧力Pin>回収側マニホールド218の圧力Poutであるが、それぞれ負圧とされている。すなわち、供給側ポンプ256の供給圧力は負圧であるが、回収側ポンプ280の回収圧力がさらに低圧の負圧であるため、インクは、供給側マニホールド214から回収側マニホールド218へ流れ、かつ、ヘッドモジュール72−iのノズル151の背圧Pnzlが負圧に維持されるようになっている。したがって、ヘッドモジュール72−iのノズル151ではインクがメニスカス保持されつつ、ノズル151に対してインクが循環するようになっている。
【0122】
なお、ノズル151においてインクをメニスカス保持できる背圧Pnzlの圧力範囲は、ヘッドモジュール72−iの仕様やインク種によって異なる。本実施の形態のものでは、約−3000Pa(G)である(「(G)」はゲージ圧(大気圧基準圧、相対圧力)を意味する)。
【0123】
本実施の形態のインク供給部202では、回収側ポンプ280の入側と供給側主管248における脱気モジュール250の出側との間に両者の間を連結する加圧パージ用配管294が設けられている。
【0124】
加圧パージ用配管294には、脱気モジュール250から回収側ポンプ280にかけて順番に一方向弁296、回収側フィルタ298が介在されている。ヘッドモジュール72−i内を加圧して、一気にインクを排出することで気泡等を排除するとき、供給側ポンプ256の駆動に加え、回収側ポンプ280の駆動方向を通常時に対して逆転させ、バッファタンク246から回収側マニホールド218へインクを供給するようにしている。なお、排出時はドレイン管268を用いる。
【0125】
バッファタンク246は、補充管302を介してメインタンク300と連結されている。バッファタンク246には、インクを循環させるために必要なインク量が貯留されており、インク消費に応じて、メインタンク300からインクが補充される構成となっている。バッファタンク246が「タンク」に相当し、又は、バッファタンク246とメインタンク300の組み合わせが「タンク」に相当する。
【0126】
補充管302は、一端部がメインタンク300に貯留されたインクに浸漬されており、他端部が回収側主管274に接続されている。メインタンク300中のインクに浸漬された補充管302の一端開口にはフィルタ304が取り付けられている。補充管302には、補充ポンプ306が介在されている。補充ポンプ306を駆動することにより、バッファタンク246へインクが補充される。
【0127】
なお、バッファタンク246とメインタンク300との間には、オーバーフロー管308が設けられ、過剰補充時にインクがメインタンク300へ戻されるようになっている。
【0128】
また、オーバーフロー管308には、回収側リリーフ管312の一端部が連結されている。回収側リリーフ管312の他端部は、回収側ポンプ280と回収側圧力調整タンク272との間の回収側主管274に連結されている。
【0129】
回収側リリーフ管312には、回収側リリーフバルブ316が介在されている。回収側リリーフバルブ316は、管路内を流れるインクが、あらかじめ設定された圧以上になると開き、インクジェットヘッドや管路に高圧がかかるのを防止する。
【0130】
バッファタンク246には液面センサ318が設けられており、この液面センサ318によってバッファタンク246内のインク量の情報が得られる。同様に、メインタンク300にも液面センサ320が設けられており、この液面センサ320によってメインタンク300内のインク量の情報が得られる。
【0131】
〔モジュール交換作業に伴うインク充填処理について〕
次に、上記構成のインクジェット記録装置におけるヘッドモジュールの交換作業に伴うインクの初期充填方法を説明する。
図7は、ヘッドモジュール交換作業に伴う初期充填時の手順を示すフローチャートである。
【0132】
(手順1)まず、交換しようとするヘッドモジュールに対応した供給側バルブ222と回収側バルブ226を共に閉じて、交換すべきヘッドモジュールをラインバーから取り外し、新しいヘッドモジュール(新規ヘッド)に取り替える(ステップS12、「ヘッド接続工程」)。
【0133】
図8は、ヘッドモジュール交換時の様子を示した模式図である。
図8では3つのヘッドモジュール72−1,72−2,72−3が示されており、図中、最右のヘッドモジュール72−3が交換された新しいヘッドモジュールである。
【0134】
ヘッドモジュールを交換する場合、対象となるヘッドモジュールに対応した供給側バルブ222と回収側バルブ226を閉じて、古いヘッドモジュールを取り外し、新しいヘッドモジュールに取り替える。
図8は、新品のヘッドモジュールに取り替えられた後の状態を示している。図面中におけるバルブの表記おいて、白抜きのものは「開」状態であることを表し、黒塗りのものは「閉」状態であることを表す。他の図面も同様である。なお、新しいヘッドモジュール72は内部の流路中に空気が入っている。
【0135】
ヘッドモジュールの交換作業の終了後、作業者(オペレータ)がユーザインターフェースを介して作業終了を指示すると、初期充填の処理が実施される。初期充填の処理は、以下の手順2〜4で行われる。
【0136】
(手順2)次に、少なくとも交換後の対象ヘッドの噴射口(ノズル穴)を閉塞部材によって閉塞した状態で、同一経路に接続されている全てのヘッドモジュールの全バルブ(供給側バルブ222と回収側バルブ226)を閉じ、供給側流路および回収側流路を負圧に設定する(
図7のステップS14、「流路内減圧工程」に相当、
図9参照)。
【0137】
図9は、流路内減圧工程の様子を示した模式図である。
図9では、符号72−3で示した新規のヘッドモジュール(交換対象ヘッド)についてのみ、そのノズル面に閉塞部材330が取り付けられている。閉塞部材330には、例えば、ラバー製のシート部材(ラバーシート)が用いられる。ラバーシートは安価であり、ノズル面の密閉性に優れている。
【0138】
閉塞部材330は、ヘッドモジュールに対して着脱可能なキャップ構造に構成することができ、作業者が対象ヘッドのノズル面に装着することができる。或いはまた、閉塞部材330は、新規ヘッドモジュールにおけるノズル面の保護部材として兼用される部材とすることができる。この場合、新品のヘッドモジュールには閉塞部材330として機能する保護部材(保護カバー)が予め取り付けられており、ヘッドモジュールの交換作業時(
図7のステップS12で説明したヘッド接続工程)においては、保護部材を付けたまま新しいヘッドモジュールが取り付けられる。
【0139】
図9に示したとおり、交換したヘッドモジュール72−3が接続されている供給側マニホールド214及び回収側マニホールド218に接続されている全てのヘッドモジュールの供給側バルブ222と回収側バルブ226を全て閉じた状態で、供給側ポンプ256及び回収側ポンプ280(
図6参照)を駆動して供給側流路及び回収側流路を減圧する。この流路内減圧工程によって、供給側マニホールド214と回収側マニホールド218の内部圧力が負圧になるため、次のヘッド内減圧工程(
図7のステップS16)において供給側バルブ222又は回収側バルブ226を開いた際にインクがヘッドモジュール内に流入することはない。
【0140】
(手順3)ステップS14にて、供給側流路と回収側流路を一定の負圧に減圧した状態で、交換対象ヘッドモジュールに対応する供給側又は回収側のどちらか一方のバルブを開き、開いた側の圧力が、閉じたままの側の圧力とほぼ同じになるように減圧する(ステップS16)。
【0141】
図10では、交換対象のヘッドモジュール72−3に対応する回収側バルブ226を開く場合を例示した。
図10のように、交換したヘッドモジュール72−3の回収側バルブ226を開くと、ヘッドモジュール72−3内のエアが回収側流路(回収側マニホールド218)に排出される。回収側ポンプ280の駆動により回収側マニホールド218内を減圧して、供給側マニホールド214の圧力とほぼ等しい所定の圧力(負圧)となるようにヘッドモジュール72−3内を減圧する。
【0142】
(手順4)次に、交換対象ヘッドモジュール72−3の閉じていた側のバルブ(ここでは、供給側バルブ222)を開き、最初に開いた側の圧力は初期設定の負圧にコントロールし続け、後から開いた側の流路から徐々にインクを充填していく(ステップS18)。
【0143】
図11では、交換対象のヘッドモジュール72−3に対応する供給側バルブ222を開き、供給側分岐管216からヘッドモジュール72−3内にインクを充填する例が示されている。
【0144】
図10のステップS16にて、供給側及び回収側の圧力がそれぞれ所定の負圧になった状態で、交換対象のヘッドモジュール72−3の供給側バルブ222を開く(
図11参照)。本例においては、供給側及び回収側の圧力を概ね同程度の負圧にしてあるため、供給側バルブ222を開いても直ちにインクがヘッドモジュール72−3内に入っていくわけではなく、供給側バルブ222を開けてから供給側ポンプ256と回収側ポンプ280(
図6参照)を駆動してインクをヘッドモジュール72−3内へ流入させる。
【0145】
例えば、供給側ポンプ256と回収側ポンプ280をほぼ同一の速度にて、ヘッドモジュール72−3に対して、供給側ポンプ256を加圧方向(インクの送り出し方向)、回収側ポンプ280を減圧方向(インクの吸引方向)で制御する。このように、供給側ポンプ256と回収側ポンプ280を一定速度で逆方向に制御することによって、ヘッドモジュール72−3内にインクをゆっくりと充填していくことができる。
【0146】
なお、供給側バルブ222を開く前に、供給側流路の圧力と回収側流路の圧力とに圧力差を設けておくことにより、供給側バルブ222を開いただけで、その差圧によりインクをヘッドモジュール72−3内に流入させることも可能である。
【0147】
上述した手順1〜4によれば、交換後の新規のヘッドモジュール72−3内のエアを抜いてから、当該ヘッドモジュール72−3内にインクを入れることができるため、気泡の巻き込み無くインクを満たすことができる。
【0148】
交換したヘッドモジュールに対するインクの充填が完了した後に閉塞部材330が取り外され、通常のインク循環が開始される。
【0149】
本実施形態において、供給側マニホールド214を含む供給側の流路が「供給側流路部」に相当し、回収側マニホールド218を含む回収側の流路が「回収側流路部」に相当する。また、供給側ポンプ256、供給側圧力調整タンク244、供給側圧力センサ240の組み合わせが「供給側圧力調整部」に相当し、回収側ポンプ280、回収側圧力調整タンク272、回収側圧力センサ242の組み合わせが「回収側圧力調整部」に相当する。
【0150】
<圧力調整タンクの構成について>
図12は、供給側圧力調整タンク244並びに回収側圧力調整タンク272の構成を示した模式図である。供給側圧力調整タンク244と回収側圧力調整タンク272とは構造が共通しているため、ここでは供給側圧力調整タンク244を例に説明する。
【0151】
供給側圧力調整タンク244は、密閉容器340内が弾性膜244Aによってインク室244Bと気体室244Cに区画される構造を有する。気体室244Cは、エアコネクトバルブ262を介してエアタンク264に接続されている。エアコネクトバルブ262を閉じると、気体室244C(第1気体室)とエアタンク264(第2気体室)とが分離され、エアコネクトバルブ262を開くと気体室244Cとエアタンク264とが繋がり、一体的な気体室となる。このように、エアコネクトバルブ262によって開閉可能な気体室244Cとエアタンク264の二室構成となっており、エアコネクトバルブ262は気体室分割開閉機構として機能する。
【0152】
供給側圧力調整タンク244には気体室244Cの気体圧力を検知する気体圧力センサ342が設けられている。気体圧力センサ342によって気体室244Cの圧力をモニタリングしながら、供給側ポンプ256(
図12において不図示、
図6参照)の駆動が制御される。供給側ポンプ256とインク室244Bに繋がる流路にはリリーフバルブ(安全弁)344が設けられている。
【0153】
インク室244Bへ流入したインクの体積に応じて弾性膜244Aが変形する。このような構造の背圧タンク(244、272)を利用したインク循環方式は、ポンプ(256、280)やインクジェットヘッド72のインク吐出動作による急峻な圧力変動を各背圧タンク(244,272)の可撓性を有する弾性膜(244A、272A)の弾性力と気体室(244C,272C)の圧縮性による適度な弾性力の作用によって減衰させることができる。このため、インクジェットヘッドの内圧変動を低く抑えることができ、インクジェットヘッドの吐出安定性を向上させることができる。
【0154】
なお、
図12の(1)で示すような、弾性膜244Aの弾性力を無視できる領域(例えば、膜に張力が殆どかからず、膜が弛んでいる状態となる領域)では、主に気体室244Cの弾性力が寄与する。この場合、弾性力の小さい箇所で使用することができるため、ポンプの脈動を効率的に抑えることができる。
【0155】
逆に、
図12の(2)で示すような膜の弾性力が支配的に効いてくる領域(膜に張力がかかり、膜が伸びて張られている状態となる領域)では、弾性膜244Aが弾性変形しており膜弾性力が大きくなる。
図7のステップS14,S16で説明した減圧動作を行う際には、
図12の(2)で示したように、弾性膜244A(272A)を弾性変形させ、気体室244C(272C)の体積を減少させた状態でエアコネクトバルブ262(284)を閉じてから減圧動作が行われる。
【0156】
<減圧動作時の工夫について>
図7のステップS14で説明した流路内減圧時やステップS16で説明したヘッド内減圧時には、圧力調整タンク(244,272)の弾性膜(244A、272A)を密閉容器340の内壁に貼り付けて固定した状態にしてから減圧を行う。
【0157】
つまり、流路内を負圧に引く前に、まず、エアコネクトバルブ262と大気開放バルブ266を開け、インク室244Bを加圧してインク室244B内にインクを満たし、気体室244C(第1気体室)の壁面に弾性膜244Aを貼り付ける。その後、エアコネクトバルブ262を閉じて、気体室244Cとエアタンク264とを分離し、インク室244Bを負圧に減圧する。こうすることで、弾性膜244Aは気体室244Cの内壁に固定された状態となり、インク室244Bを高い負圧に引くことができる。
【0158】
回収側の流路を減圧する場合も同様に、回収側圧力調整タンク272の弾性膜272Aを気体室272Cの内壁に貼り付けて固定した状態にしてから回収側を負圧に引く。
【0159】
<液体充填時のヘッド内減圧レベルについて>
印刷時など通常のインク循環時には、供給側の流路と回収側の流路とを異なる圧で制御し、その差圧により、常時液体が循環しており、この循環状態にてインクジェットヘッドからインクの吐出が行われる。循環時の圧力制御例としては、供給側を0Pa(G)、回収側を−5000Pa(G)でヘッド部のノズル面に相当するところで、水頭圧で−2500Paになるようにコントロールしている。
【0160】
これに対し、ヘッドモジュール交換に伴うインクの初期充填時のヘッド内減圧レベルは、大気圧に対して−50kPa以下が好ましく、より好ましくは−70kPa以下である。本実施形態では、
図7のステップS16にて、交換対象のヘッドモジュール72−3内を大気圧に対して−80kPaに減圧した。
【0161】
〔流路内気泡排出動作について〕
図7〜
図11で説明したインク充填終了後に、ヘッド側のバルブ(222、226)を全て閉とし、第1バイパスバルブ236を開けて、供給側及び回収側流路をバイパスして流路内の気泡を排出する工程が実施される。このインク充填後の流路内気泡排出工程は、以下に説明する第1の工程(「流路内気泡排出動作(その1)」)と、第2の工程(「流路内気泡排出動作(その2)」)の2段階で行われる。このような流路内気泡排出動作(その1、その2)を実施した後に、通常のインク循環が開始される。
【0162】
<流路内気泡排出動作(その1)>
図13は、流路内気泡排出動作(その1)時におけるインクの流れを示す図である。
図7〜
図11で説明したように、回収側バルブ226を開けてヘッドモジュール72−3内を減圧した後に供給側バルブ222を開けてヘッドモジュール72−3内にインクを充填した場合の流路内気泡排出動作(その1)について示している。
【0163】
図13のように、第1バイパスバルブ236を開け、各ヘッドモジュール72−iに繋がる供給側バルブ222及び回収側バルブ226は全て閉じた状態とする。供給側圧力調整タンク244のドレインバルブ270は閉じられ、回収側圧力調整タンク272のドレインバルブ292は開状態とする。供給側圧力調整タンク244の気体室244Cに繋がるエアコネクトバルブ262は開状態とし、エアタンク264の大気開放バルブ266は閉状態(ノーマルクローズ)である。
【0164】
同様に、回収側圧力調整タンク272の気体室272Cに繋がるエアコネクトバルブ284は開状態とし、エアタンク286の大気開放バルブ288は閉状態(ノーマルクローズ)である。
【0165】
かかる状態のもとで、供給側ポンプ256を加圧方向(供給側マニホールド214にインクを送り出す方向)に駆動する。供給側マニホールド214から第1バイパス流路232を介して回収側マニホールド218へとインクが流れ、回収側圧力調整タンク272のインク室272Bからドレインバルブ292を経由してバッファタンク246にインクが戻る。こうして、図中の矢印で示したインクの流れにより、流路内の気泡はバッファタンク246に排出される。
【0166】
〔流路内気泡排出動作(その2)〕
次に、気泡排出工程の第2の動作(「気泡排出動作(その2)」という。)について説明する。
図14は、流路内気泡排出動作(その2)時におけるインクの流れを示す図である。
【0167】
図13で説明した流路内気泡排出動作(その1)の場合、回収側圧力調整タンク272から回収側ポンプ280までの流路内にエア(気泡)が入っている可能性がある。したがって、当該流路部におけるエアを抜くために、
図14に示す流路内気泡排出動作(その2)を行う。
図14に示したように、第1バイパスバルブ236を閉じた状態とし、回収側圧力調整タンク272のドレインバルブ292は、
図13の場合と同様に、開いた状態とする。この状態で、回収側ポンプ280を回収側圧力調整タンク272に向けてインクを押し出す方向(加圧方向)に駆動する。
【0168】
回収側ポンプ280から回収側圧力調整タンク272のインク室272Bに送り出されたインクは、インク室272Bからドレインバルブ292、ドレイン管268を通ってバッファタンク246へと戻る。こうして、
図14中の矢印で示したインクの流れによって、回収側ポンプ280から回収側圧力調整タンク272までの間の流路部内のエアがバッファタンク246へと排出される。
【0169】
上述した流路内気泡排出動作(その1)、(その2)を実施した後に、通常のインク循環のための供給側ポンプ256および回収側ポンプ280の駆動制御を行い、各ヘッドモジュール72−iの供給側バルブ222及び回収側バルブ226を全て開いてインク循環を開始する。こうして、通常のインク循環が開始されたら、描画可能な状態となる。
【0170】
なお、供給側ドレインバルブ270、回収側ドレインバルブ292、並びにドレイン管268が「気泡排出経路」に相当する。
【0171】
<インク供給部の制御系について>
図15は、本例に示すインク供給装置200の制御系の概略構成を示すブロック図である。インク供給装置200は、制御系を統括制御するインク供給制御部350と、インク供給制御部350から送られる制御信号に基づいて供給側ポンプ256の制御を行う供給側ポンプ制御部352と、供給側のバルブ類(供給側バルブ222、ドレインバルブ270、エアコネクトバルブ262、大気開放バルブ266など)の開閉を制御する供給側バルブ制御部354と、インク供給制御部350から送られる制御信号に基づいて回収側ポンプ280の制御を行う回収側ポンプ制御部362と、回収側のバルブ類(回収側バルブ226、ドレインバルブ292、エアコネクトバルブ284、大気開放バルブ288など)の開閉を制御する回収側バルブ制御部364と、第1バイパスバルブ236及び第2バイパスバルブ238を制御するバイパスバルブ制御部366と、装置各部に異常が発生した場合にその旨を報知するなどの各種の情報を提示する手段としての表示装置375と、を備えている。
【0172】
また、インク供給装置200は、パラメータ記憶部380と、プログラム格納部382と、供給側圧力センサ240と、回収側圧力センサ242と、を具備している。
【0173】
パラメータ記憶部380は、インク供給装置200の制御に用いられる各種パラメータや、制御の際に参照されるデータテーブルが格納されている。
【0174】
プログラム格納部382は、インク供給装置200の制御に使用されるプログラムが格納されている。インク供給制御部350は、プログラム格納部382に格納されている各種制御プログラムを読み出して実行し、パラメータ記憶部380に格納されている各種パラメータやデータテーブルを参照して、インク供給装置200を統括して制御する。
図7〜
図14で説明した初期充填処理や流路内気泡排出動作は、プログラムにしたがって実行される。
【0175】
インク供給制御部350は、供給側圧力センサ240、回収側圧力センサ242の検出結果に基づいて、供給側流路及び回収側流路の内部がそれぞれ所定の圧力(設定圧力)に調整されるように供給側ポンプ256及び回収側ポンプ280の駆動を制御する。
【0176】
印字中にインクジェットヘッド72にインクを供給する際には、供給側マニホールド214の内部圧力が回収側マニホールド218の内部圧力よりも相対的に高くなるように、所定の圧力差が設定され、且つ、各ヘッドモジュール72‐1,12‐2,…,12‐nのノズル内部のインクに所定の背圧(負圧)が付与されるように、インク供給制御部350によって供給側ポンプ256及び回収側ポンプ280の駆動が制御される。
【0177】
なお、
図15では、供給側と回収側とでそれぞれ個別に、バルブ制御部及ポンプ制御部を設ける構成を示したが、供給側と回収側とで制御部が共通化されていてもよい。
【0178】
<インクジェット記録装置の制御系について>
図16はインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース440、システム制御部442、搬送制御部444、画像処理部446、インクジェットヘッド駆動部448を備えるとともに、画像メモリ450、ROM(Read Only Memory)452を備えている。
【0179】
通信インターフェース440は、ホストコンピュータ454から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース440は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース440は、通信を高速化するためバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0180】
システム制御部442は、中央演算処理装置(CPU(Central Processing Unit))及
びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御手段として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。また、画像メモリ450及びROM452のメモリコントローラとして機能する。すなわち、システム制御部442は、通信インターフェース440、搬送制御部444等の各部を制御し、ホストコンピュータ454との間の通信制御、画像メモリ450及びROM452の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0181】
ホストコンピュータ454から送り出された画像データは通信インターフェース440を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像処理部446によって所定の画像処理が施される。
【0182】
画像処理部446は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データをインクジェットヘッド駆動部448に供給する。画像処理部446において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、インクジェットヘッド駆動部448を介してインクジェットヘッド72の吐出液滴量(打滴量)や、吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0183】
なお、
図16に示すインクジェットヘッド駆動部448には、インクジェットヘッド72の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0184】
インクジェットヘッド駆動部448は、駆動波形を生成する駆動波形生成部と、該駆動波形を増幅して駆動電圧を生成する増幅部と、所定の駆動波形を有する駆動電圧をインクジェットヘッドへ供給する駆動電圧供給部と、を含んで構成されている。システム制御部から送られる画像データ(デジタルデータ)に基づいて駆動波形が生成され(又は、あらかじめ記憶されている駆動波形の中から対応する駆動波形が選択され)、当該駆動波形を有する駆動電圧が生成される。
【0185】
搬送制御部444は、画像処理部446により生成された印字制御用の信号に基づいて
用紙24の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。搬送駆動部456は、各部の搬送ドラムを回転させるモータや中間搬送体を回転させるモータなどが含まれ、搬送制御部444は上記のモータのドライバーとして機能している。
【0186】
画像メモリ450は、通信インターフェース440を介して入力された画像データを一旦格納する一次記憶手段としての機能や、ROM452に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部446の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ450には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0187】
ROM452は、システム制御部442のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部442を通じてデータの読み書きが行われる。ROM452は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0188】
さらに、このインクジェット記録装置10は、処理液付与制御部460、乾燥処理制御部462、定着処理制御部464、メンテナンス制御部486、インク供給制御部350等を備えており、システム制御部442からの指示に従って、それぞれ処理液付与部14、乾燥部18、定着部20、メンテナンス処理部170、インク供給部202の各部の動作を制御する。
【0189】
処理液付与制御部460は、画像処理部446から得られた印字データに基づいて、処理液付与部14による処理液付与のタイミングの制御を制御するとともに、処理液の付与量を制御する。
【0190】
乾燥処理制御部462は、乾燥部18に含まれる溶媒乾燥装置78を制御し、処理温度、送風量等を制御する。
【0191】
定着処理制御部464は、定着部20に含まれるハロゲンヒータ86の温度を制御するとともに、定着ローラ88の押圧を制御する。
【0192】
本例に示すインクジェット記録装置10は、ユーザインターフェース470を具備する。ユーザインターフェース470は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置472と、表示部(ディスプレイ)474を含んで構成される。入力装置472には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置472を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部374の表示を通じて確認することができる。この表示部474はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
【0193】
パラメータ記憶部480は、インクジェット記録装置10の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部442は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0194】
プログラム格納部482は、インクジェット記録装置10を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部442(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部482から必要な制御プログラムを読み出すとともに、該制御プログラムを適宜実行する。
【0195】
なお、パラメータ記憶部480、プログラム格納部482は、
図15で説明したパラメータ記憶部380、プログラム格納部382と兼用することができる。
【0196】
図16のメンテナンス制御部486は、システム制御部442から送られてくる指令信号に基づき、メンテナンス処理部170の動作を制御する制御ブロックである。インクジェット記録装置10の制御がメンテナンスモードに移行すると、インクジェットヘッド72を描画ドラム70の真上の印刷位置からメンテナンス位置に移動させるとともに、インクジェットヘッド72の移動に対応して、メンテナンス処理部170の各部を動作させる。
【0197】
インク供給制御部350は、システム制御部442から送られてくる指令信号に基づき、インク供給部202の動作を制御する。上記のように、本実施の形態のインクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド72に対してインクを循環して供給する。インク供給制御部350は、画像記録中、インクジェットヘッド72にインクが循環して供給されるように、インク供給部202の各部を動作させる。
【0198】
インク供給制御部350とインク供給部202の組み合わせが
図15で説明したインク供給装置200に相当している。インク供給制御部350の機能はシステム制御部442に統合することも可能である。インク供給制御部350、又はシステム制御部442、若しくはこれらの組み合わせが「制御部」に相当する。
【0199】
<実施形態の変形例1>
図8〜
図11の説明では、交換対象としたヘッドモジュールのみについて閉塞部材330を装着した例を説明したが、交換対象としたヘッドモジュールを含む複数のヘッドモジュールについてノズルを閉塞する構成も可能である。
【0200】
図17には、交換したヘッドモジュールを含む複数のヘッドモジュールのノズルを閉塞する閉塞部材の例を示している。例えば、
図17において、3つのヘッドモジュール72−1,72−2,72−3のうち、交換したヘッドモジュールは中央のヘッドモジュール72−2のみであり、他のヘッドモジュール72−1,72−3は交換対象外(非交換)であるとする。
【0201】
この場合、中央のヘッドモジュール72−2を交換した後、当該交換対象のヘッドモジュール72−2と、これに隣接する非交換のヘッドモジュール72−1,72−3を含む複数のヘッドモジュールのノズル面を閉塞部材390で一体的に封止する構成も可能である。ヘッドバーを構成する全てのヘッドモジュールのノズル面を共通の閉塞部材390で閉塞する構成であってもよいし、交換対象を含む一部の(複数個の)ヘッドモジュールのノズルを閉塞する構成であってもよい。閉塞部材390は、少なくとも交換対象のヘッドモジュールのノズルを閉塞できる大きさを有していればよい。
【0202】
ラインヘッドバーを構成するヘッドモジュールは、一度に複数個を交換することが可能であり、複数個のヘッドモジュールを交換した場合には、交換後のインク充填処理は1つずつ行うことも可能であるし、複数個同時に行うことも可能である。なお、交換した複数個のヘッドモジュールに対して、1つずつインク充填を行う場合、流路内気泡排出工程については、まとめて行うこともできる。すなわち、充填工程は、順番に1つずつ実施し、最後に流路内気泡除去工程をまとめて実施することもできる。
【0203】
<変形例2>
図7のステップS14で説明した流路内減圧工程は省略することができる。流路内減圧工程を省略する場合、ヘッド内減圧工程にて供給側バルブ222又は回収側バルブ226のいずれか一方を開けた際にヘッド内にインクが流入しないように、開く側の流路内を負圧に設定しておくことが望ましい。
【0204】
<変形例3>
上述の実施形態では、充填処理の際にヘッド内減圧を行うための減圧経路として回収側流路を利用し、ヘッド内減圧後のインク充填を行うためのインク充填経路として供給側流路を利用する例を説明したが、これとは逆に、減圧経路として供給側流路を利用し、インク充填経路として回収側流路を利用する形態も可能である。
【0205】
図6で説明したインク供給装置200の構成は、供給側と回収側とで概ね同等の(対称的な)構成となっており、供給側、回収側の関係を入れ替えても、同様の動作が可能である。
【0206】
<変形例4>
上述の例では、供給側マニホールド214、回収側マニホールド218のそれぞれの内部の圧力を検知する圧力センサ(240、242)を用いたが、これに代えて、またはこれと組み合わせて、気体室244C、272Cの気体圧力を監視するセンサ(気体圧力センサ)を用い、気体室244C、272Cの気体圧力の情報からインク室244B、272Bの圧力(つまり、供給側流路部の圧力と回収側流路部の圧力)を間接的に把握することも可能である。
【0207】
<変形例5>
複数個のヘッドモジュールから構成されるラインヘッドバーの形態は
図2〜
図3で例示した形態に限らない。例えば、複数個のヘッドモジュールが千鳥状に配置された構造を持つラインヘッドについても本発明を適用することができる。
【0208】
<変形例6>
上記実施形態では、記録媒体124に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型のインクジェット記録装置についても本発明を適用することができる。
【0209】
<他の応用例について>
上記の実施形態では、液滴吐出装置の一形態として、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置に広く適用できる。
【0210】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。