(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突き当て部は、前記曲面部分の両端の少なくとも一方に配設され、前記直線部を形成するために前記平面部と共に前記中途部を挟み込む平面部分をさらに有していることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ側方入出力装置。
【背景技術】
【0002】
側方入出力技術とは、光ファイバの側方から、例えば、光信号を光ファイバに入力可能または光ファイバから出力可能とする技術である。この技術が実施されるためには、光ファイバにおける全反射条件が緩和され、光信号が入出力する曲げ部が光ファイバに付与される必要がある。このため光ファイバは、一時的に曲げを付与されている。このような技術は、例えば、特許文献1と非特許文献1とに開示されている。
側方入出力技術において、
図9Aに示すように、被覆付き光ファイバ101は、円筒部103によって曲げられる。そして、光信号は、曲げ部105から外部に入出力される。
図9Aに示すように、例えば出力される光信号は、屈折率整合剤107を経由してレンズ付きファイバ109などで取得されている。
【0003】
この技術の利用用途としては、例えば、以下の3種類、漏洩光モニタと試験光入力ツールと短瞬断切替器とが提案されている。
用途1・漏洩光モニタ:通信に影響を与えず、例えばカバー付き光ファイバからレンズ付き光ファイバへの光信号の挿入損失が保たれるように、曲げ部の曲げ具合が調整される。そして漏洩光モニタは、曲げ部から外部に出力される光信号を、レンズ付き光ファイバを通じて取得し、この光信号における信号をモニタする。
用途2・試験光入力ツール:用途1に示した光信号の進行方向における光結合効率と、用途1とは逆の光信号の進行方向(光信号がレンズ付き光ファイバからカバー付き光ファイバに進むことを示す)における光結合効率とは、入力及び出力のファイバ径が同じ場合、互いに等しい。よって試験光入力ツールにおいて、通信に影響を与えず、例えばレンズ付き光ファイバからカバー付き光ファイバへの光信号の挿入損失が保たれるように、曲げ部の曲げ具合が調整される。そして試験光入力ツールは、光信号を外部からレンズ付き光ファイバを通じて入力する。
用途3・短瞬断切替器:短瞬断切替器は、曲げ部にて光信号が入出力されると共に、光を遮断し光の経路を切り替える。
用途1乃至用途3は、例えば非特許文献2乃至非特許文献4に開示されている。
【0004】
次に
図9Bを参照して、光信号が曲げ部223から外部に出力される現象を幾何光学的に説明する。曲げ部223の曲率半径が例えば略2.5mm、光ファイバ200の曲げ角度が例えば略150度であることを一例に説明する。
曲げ部223において、コア200aを伝搬する光信号の一部は、コア200aの屈折率とクラッド層200bの屈折率との差によって決まる臨界角未満の角度でクラッド層200bに入力される。次に、光信号は、クラッド層200bから出力されて、クラッド層200bを覆う被覆層200cに入力する。そして光信号は、被覆層200cの最外層に達する。外界が空気の場合、光信号は最外層と空気との界面で全反射される。しかしながら、外界が例えば屈折率1.5程度の屈折率整合剤やガラスの場合、光信号は最外層から外部に出力される。この外部に出力された光信号を、1次出力光と称する。
【0005】
また、コア200aとクラッド層200bとの界面において臨界角以上となり全反射されてクラッド層200bへ到達しなかった光信号はコア200a内を全反射しながら伝搬する。そして光信号は、曲げ部223において臨界角未満となったところで次々にクラッド層200bに入力される。前記したように、この光信号は最外層から外部に出力される。この外部に出力された光信号を、2次出力光と称する。以後、同様に外部に出力された光信号を、3次出力光、4次出力光と称する。
【0006】
外部に出力される光信号の強度は、1次出力光において最大となり、2次出力光において少なくなり、3次出力光においてさらに少なくなり、4次出力光においてまた更に少なくなるといったように、徐々に減少する。この現象は、被覆層200cの屈折率が屈折率整合剤の屈折率と同程度であれば、被覆層200cの厚さにほとんど依存しない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお一部の図面では図示の明瞭化のために部材の一部の図示を省略している。
[第1の実施形態]
[構成]
図1Aと
図1Bと
図2Aと
図2Bと
図2Cと
図2Dとを参照して第1の実施形態について説明する。
【0016】
[光ファイバ側方入出力装置]
図1Aと
図1Bとに示すように、光ファイバ側方入出力装置(以下、入出力装置10)は、光ファイバ20の側方から光信号を光ファイバ20に入出力する。
【0017】
[入出力装置10の構成]
図1Aと
図1Bとに示すように、入出力装置10は、曲面部31と曲面部31の両端に配設されている平面部33とを有する固定
治具30と、曲面部31と共に光ファイバ20の一部である中途部21を挟み込むように曲面部31とは反対側から中途部21に突き当たり、突き当りによって曲面部31と共に中途部21に曲げ部23を形成する突き当て部40とを有している。また入出力装置10は、固定
治具30に配設され、光信号が側方から光ファイバ20に入出力されるように、光信号を入出力する入出力光学系50をさらに有している。
【0018】
[固定
治具30]
曲面部31と平面部33と含む固定
治具30は、
図1Aに示すように光ファイバ20から出力された光信号が透過可能で、さらに
図1Bに示すように光信号が光ファイバ20に入力するように透過可能な部材によって形成されている。このような部材は、例えばガラスやアクリルなどの透明な部材を有している。
【0019】
図1Aと
図1Bとに示すように、平面部33は、光ファイバ20の軸方向において曲面部31の両端に配設されており、曲面部31と連接している。平面部33は、曲面部31と同一平面に配設されることとなる。曲面部31は突き当て部40に向かうように曲がっている。このため一方の平面部33aは、他方の平面部33bに対して起上するように傾斜している。
【0020】
図1Aと
図1Bとに示すように、曲面部31は直線状の光ファイバ20の中途部21に曲げ部23を形成するために配設されており、曲面部31には中途部21が載置される。中途部21が載置されていない状態で、曲面部31は、突き当て部40と当接可能となっている。
図1Aと
図1Bとに示すように、平面部33には、中途部21が載置される。平面部33は、中途部21に直線部25を形成するために配設されている。
中途部21は、曲面部31と平面部33とに同時に載置される。
【0021】
[突き当て部40]
図1Aと
図1Bとに示すように、突き当て部40は、曲面部31と共に中途部21を挟み込む曲面部分41を有している。突き当て部40は例えば円筒部を有しており、曲面部分41は円筒部の周面の一部に配設されている。
【0022】
図1Aに示すように、曲面部分41と曲面部31とは、光ファイバ20の軸方向に直交する方向から、言い換えると中途部21の側方から、中途部21を挟み込む挟み込み部として機能する。曲面部分41は、中途部21を曲面部31に向かって押し付け、例えば中途部21を曲面部31の曲がり具合に沿わせる。
曲面部31の曲がり具合と、曲面部分41の曲がり具合とは、曲げ部23の曲がり具合に対応し、互いに同一である。
【0023】
[光信号の入出力]
図1Aと
図1Bとに示すように、本実施形態では、光信号の入出力が曲げ部23から直線部25にずれ、光信号が直線部25から入出力する。このため本実施形態では、光信号が側方から光ファイバ20に入出力される際、光信号が直線部25から入出力されるように、突き当て部40と曲面部31とは曲げ部23を形成する。この条件については、下記にまとめる。
【0024】
[光信号が直線部25から出力される条件]
曲げ部23の曲率半径と光ファイバ20の曲げ角度とを様々に変えて、光ファイバ20から出力された光信号を追跡し観察した結果を下記にまとめる。
なお、曲率半径と曲げ角度とがいずれであっても、曲げ部23の曲げ開始位置から例えば略5mmの位置にて光ファイバ20から出力された光信号(以下、出力光)を観察するものとする。
【0025】
一例として、条件を、例えば、以下のように設定する。
条件A:
図2Aに示すように、曲げ部23の曲率半径が略2.5mmで、光ファイバ20の曲げ角度が略150度。
条件B:
図2Bに示すように、曲げ部23の曲率半径が略2.5mmで、光ファイバ20の曲げ角度が略170度。
図2Bに示す条件Bの曲げ角度は、
図2Aに示す条件Aの曲げ角度よりも大きい。このため、条件Bにおける曲げ部23は条件Bにおける曲げ部23よりも急峻となり、条件Bにおける曲げ部23の長さは条件Aにおける曲げ部23の長さよりも短くなる。
【0026】
図2Aに示す条件Aにおいて、出力光を追跡し観察した結果は、以下の通りである。例えば、光ファイバ20を伝播する光信号の略38%が1次出力光として側方に出力され、光ファイバ20を伝播する光信号の略19%が1次出力光以外の出力光(例えば、2次出力光、3次出力光、4次出力光)として側方に出力され、光ファイバ20を伝播する光信号の略43%が光ファイバ20を伝播する。条件Aでは、光信号の略57%が出力光として出力されたこととなる。これら出力光は、曲げ部23から出力される。
【0027】
図2Bに示す条件Bにおいて、光信号を追跡し観察した結果は、以下の通りである。例えば、光ファイバ20を伝播する光信号の略38%が1次出力光として側方に出力され、光ファイバ20を伝播する光信号の略62%が光ファイバ20を伝播する。なお1次出力光以外の出力光として側方に出力された光信号は、観察されなかった。このため、条件Aでは、光信号の略38%が出力光として出力されたこととなる。これら出力光は、直線部25から出力される。
【0028】
なお条件A,Bにおいて、曲げ角度の大小にかかわらず、光信号における1次出力光の割合(言い換えると、特定方向の光の強度)は、略38%と同一である。
【0029】
条件Aでは、光信号は曲げ部23から出力されることがわかり、光信号は複数回出力されることがわかり、出力光全体の発散角度が大きいことがわかった。
つまり条件Aのように曲げ角度が小さいと、光信号は曲げ部23から出力されて光信号は複数回に分けて出力されるため、出力光すべてを効率よく集光することを困難となり、出力光を他の光ファイバ20へ効率よく入力させることは困難となる。また出力光全体の発散角度が大きくなるため、1次出力光と、1次出力光以外の出力光とを、1つの入出力光学系50に集光することは困難となる。また1次出力光以外の出力光(光信号の略19%)は、漏洩光となり、無駄な光となる、迷光となる。
【0030】
これに対して条件Bでは、光信号は直線部25から出力されることがわかり、光信号は1回のみ出力されることがわかり、出力光全体つまり1次出力光の発散角度が小さいことがわかった。
つまり条件Bのように曲げ角度が大きいと、光信号は直線部25から出力されて光信号は1回のみ側方に出力されるため、出力光すべてを効率よく容易に集光でき、出力光を他の光ファイバ20へ効率よく容易に入力できることとなる。また光信号は1回のみ出力され、出力光全体の発散角度が小さくなるため、1つの入出力光学系50に容易に集光できることとなる。また1次出力光以外の出力光の発生を抑制でき、光信号が無駄に出力されることを防止でき、迷光を防止できることとなる。
【0031】
そこで、曲率半径を略1.7mm、略2.0mm、略2.5mm、略4mm、曲げ角度を略170度、略165度、略160度、略150度、略90度とし、これら条件における1次出力光として側方に出力された光信号の割合A1(%)と、これら条件における光ファイバ20を伝播する光信号の割合B1(%)とを、
図2Cにまとめる。
【0032】
割合A1において、曲げ角度が同一であるならば、曲率半径が小さいほど、割合が高い、つまり光信号の多くが側方に出力される。また曲率半径が同一であるならば、曲げ角度が小さいほど、割合が高い、つまり光信号の多くが側方に出力される。
【0033】
割合B1において、曲げ角度が同一のであるならば、曲率半径が大きいほど、割合が高い、つまり光信号の多くが伝播する。また曲率半径が同一であるならば、曲げ角度が大きいほど、割合が高い、つまり光信号の多くが伝播する。
【0034】
この結果を基に、光信号が直線部25から出力された結果を
図2Dにまとめる。曲率半径が略2.5mm以下で、曲げ角度が略165度以上略170度以下に緩やかな条件で、および、曲率半径4mmでは170度の条件で、光信号は、直線部25から1次出力光として出力されることがわかった。好適には曲率半径が略1.7mm以上略2.5mm以下で、曲げ角度が略165度以上略170度以下に緩やかな条件で、および、曲率半径4mmでは170度の条件で、光信号は、直線部25から1次出力光として出力されることがわかった。残りは、曲げ部23から出力されることがわかった。
なお前記において光信号が出力されることを一例として説明したが、
図1Bに示すように光信号が入力される場合についても略同様である。
【0035】
このように光信号が直線部25から入出力されるために、曲げ部23の曲率半径が略1.7mm以上略2.5mm以下で、光ファイバ20の曲げ角度が略165度以上略170度以下となるように、突き当て部40と曲面部31とは曲げ部23を形成する。
【0036】
光信号が直線部25から出力される最大条件において、曲率半径は2.5mm、曲げ角度は170度となっており、スクリーン上のサイズ0.15mm(FWHM)、発散角度2.2度(NA=0.02)(FWHM)であった。これは例えば直径0.25mmのレンズを用いて開口数0.1の光ファイバ20には十分結合可能である。この点は、直線部25から出力される条件である、曲げ角度170度で、曲率半径1.7mm乃至4.0mm、曲げ角度165度で曲率半径1.7mm乃至2.5mmにおいても同様に成り立つ。
【0037】
[入出力光学系50]
図1Aと
図1Bとに示すように、入出力光学系50は、光ファイバ20の軸方向において固定
治具30の少なくとも一端部に配設されている。入出力光学系50には、
図1Aに示すように光ファイバ20の直線部25から側方に出力され、
図1Bに示すように固定
治具30を透過した光信号が入力する。また入出力光学系50は、固定
治具30を透過し、側方から直線部25を介して光ファイバ20に入力されるように、光信号を出力する。
【0038】
[作用]
図1Aに示すように、例えば、光信号は、直線部25から、光ファイバ20の側方に出力される。この場合、光信号を1回のみ出力され、言い換えると、1次出力光のみが出力される。光信号は、固定
治具30を透過して、入出力光学系50に入力される。
【0039】
[効果]
このように、本実施形態では、光信号が直線部25から入出力されるために、曲げ部23の曲率半径が略1.7mm以上略2.5mm以下で、光ファイバ20の曲げ角度が略165度以上略170度以下となるように、突き当て部40と曲面部31とは曲げ部23を形成する。言い換えると、本実施形態では、光信号の入出力位置を、曲げ部23から直線部25にずらしている。
これにより本実施形態では、光信号を直線部25から出力でき、光信号を1回のみ出力でき、出力光全体つまり1次出力光の発散角度を小さくできる。
よって本実施形態では、出力光すべてを効率よく容易に集光でき、出力光を他の光ファイバ20へ効率よく容易に入力できる。また本実施形態では、1つの入出力光学系50に容易に集光でき、迷光を防止できる。なお前記において光信号が出力されることを一例として説明したが、
図1Bに示すように光信号が入力される場合についても略同様である。また本実施形態では、前記によって、入力における光結合効率を、出力における光結合効率と同程度にできる。
【0040】
また本実施形態では、曲面部31と平面部33との両方を研磨加工する必要はなく、直線部25を形成する平面部33のみ研磨加工すればよいため、加工費用を安価にできる。
【0041】
また本実施形態では、円筒部を有する突き当て部40を容易且つ安価に製作できる。
【0042】
なお本実施形態と異なり、光信号が曲げ部23から外部に出力される場合において、外部へ出力される光信号の強度が弱く、被覆付きファイバとレンズ付きファイバとの光結合効率が低いと、光信号が外部に配設される入出力光学系50に入力されず、入力エラーが引き起こる。
しかしながら本実施形態では、光信号は直線部25から出力されて光信号は1回のみ側方に出力されるため、出力光すべてを効率よく容易に集光でき、出力光を他の光ファイバ20へ効率よく容易に入力できる。よって本実施形態では、光信号を入出力光学系50に確実に入力でき、入力エラーが引き起こることを防止できる。
【0043】
また本実施形態とは異なり、光信号が外部から曲げ部23に入力される場合において、前記した光結合効率が低いと、光アンプ等によって光信号を増幅する必要があり、入出力装置10が高価となる。
しかしながら本実施形態では、光信号は直線部25から出力されて光信号は1回のみ側方に出力されるため、出力光すべてを効率よく容易に集光でき、出力光を他の光ファイバ20へ効率よく容易に入力できる。この点は、入力についても同様である。よって本実施形態では、光アンプ等を不要にでき、入出力装置10が高価となることを防止できる。
【0044】
なお、外部に出力される光信号の総量は、曲げ部23の曲率半径が小さくなるほど、また、光ファイバ20の曲げ角度が大きい急にするほど、増える。このことは非特許文献1乃至非特許文献4に開示されるように、一般的に知られている。
しかし、単純に、曲率半径が小さくなり、曲げ角度が大きくなることには、以下のような欠点がある。
欠点1:挿入損失が通信に影響を与えてしまうレベルに達してしまうおそれがある。
欠点2:曲率半径が小さくなると、光ファイバ20が破断する確率が上昇する。例えば、非特許文献2においては、曲率半径は1.7mmを適用可能限界としている。
欠点3:光ファイバ20の曲げ角度が大きくなるほど、出力される光信号の発散角も大きくなる。これは集光効率の低下を招く。
しかしながら本実施形態では、曲げ部23の曲率半径が略1.7mm以上略2.5mm以下で、光ファイバ20の曲げ角度が略165度以上略170度以下となることで、このような欠点を防止できる。
【0045】
また例えば、光通信線路の保守において、光信号をモニタする際に、光信号の損失は最小に抑えることが望ましい。前記したような1次出力光以外の光である2次出力光と3次出力光と4次出力光とは、漏洩光であり、通信に使用されずかつモニタにも使用されない無駄な光であり、迷光である。この光は、異なる光路長の別な経路で遅延してモニタに入力されモニタ信号に悪影響を及ぼす。
しかしながら本実施形態では、曲げ部23の曲率半径が略1.7mm以上略2.5mm以下で、光ファイバ20の曲げ角度が略165度以上略170度以下となるように形成される曲げ部23によって、光信号を1回のみ側方に出力でき、1次出力光以外の出力光の発生を抑制でき、光信号が無駄に出力されることを防止でき、迷光を防止できる。よって本実施形態では、光通信線路の保守において、光信号がモニタ信号に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0046】
また一般的に、出力される光信号のサイズが大きいほど、光信号を例えばレンズによって小さく集光できない。また1次出力光の発散角度が広いと、例えば受光側の光ファイバ20の開口数(約0.1)で制限されるため、受光側の光ファイバ20のコアへの光結合において損失が生じる。このため、外部に出力された光信号の一部しか取得できず、光信号の取得は非効率となることが知られている。また光信号が曲げ部23から出力されると、曲げ部23の曲面に起因して光信号の発散角度が広がり、集光効率が低下する。
しかしながら本実施形態では、光信号を直線部25から出力でき、光信号を1回のみ出力でき、出力光全体つまり1次出力光の発散角度を小さくできる。よって本実施形態では、出力される光信号のサイズが大きくなることが防止され、光信号を例えばレンズによって容易に小さく集光できる。また本実施形態では、光信号の取得が非効率となることを防止できる。また本実施形態では、集光効率が低下することを防止できる。
【0047】
[第2の実施形態・
図3]
以下に、前記した実施形態とは異なる点のみ記載する。
第1の実施形態では固定
治具30全体は、光信号が透過可能な部材によって形成されているが、これに限定される必要はない。
【0048】
図3に示すように、本実施形態の固定
治具30は、一方の平面部33aを有する第1の部材30aと、曲面部31と他方の平面部33bとを有する第2の部材30bとを有している。第1の部材30aは、第2の部材30bと別体である。第1の部材30aは、第1の部材30aが曲面部31と同一平面上に配設され、第1の部材30aが曲面部31と連続するように、第2の部材30bに隣接している。第1の部材30aは、入出力光学系50と接している。
【0049】
第1の部材30aは、例えば、光ファイバ20から出力された光信号が透過可能で、さらに光信号が光ファイバ20に入力するように透過可能な部材によって形成されている。このような部材は、例えばガラスやアクリルなどの透明な部材を有している。
このように、光信号が入出力する光ファイバ20の直線部25が接する平面部33と入出力光学系50との間に介在する固定
治具30の一部分である第1の部材30aが、光信号が透過する透過部材を有していればよい。
【0050】
第2の部材30bは、例えば、金属などによって形成されている。第2の部材30bは、不透過性を有している。
【0051】
このように本実施形態では、突き当て部40が突き当り、突き当て部40から圧力を受ける曲面部31を含む第2の部材30bが金属によって形成されている。よって、本実施形態では、金属で形成される曲面部31において、曲面部31がガラスやアクリルで形成されるよりも、繰り返し耐久性を向上させることができ、摩耗による表面品質の低下やこれに伴う結合損失の低下を防止できる。また本実施形態では、ガラスやアクリルなどの第1の部材30aに曲面部31を加工するよりも、金属である第2の部材30bに曲面部31を加工するほうが容易に加工を実施できる。また本実施形態では、第2の部材30bが金属によって形成されているため、曲面部31に研磨も不要にできる。よって本実施形態では、安価にできる。
また本実施形態では、研磨が必要な部分は平面部33aのみであるため、平面部33aに対して素早く安価に研磨できる。
【0052】
[第3の実施形態・
図4]
以下に、前記した各実施形態とは異なる点のみ記載する。
図4に示すように、本実施形態の固定
治具30は、例えば第2の実施形態の固定
治具30と略同一である。
本実施形態の曲面部分41は、第2の部材30bに配設されている曲面部31と共に中途部21を挟み込む。
【0053】
図4に示すように、本実施形態の突き当て部40は、直線部25を形成するために固定
治具30の第2の部材30bに配設されている平面部33bと共に中途部21を挟み込む第1の平面部分43aをさらに有している。第1の平面部分43aは、光ファイバ20の軸方向において曲面部分41の一端部と連接している。
【0054】
また突き当て部40は、例えば突き当て部40の上面に配設され、突き当て部40を固定
治具30に押し付ける押し付け力が直接印加する印加平面部45を有している。押し付け力は、印加平面部45の略中央部分に印加する。
【0055】
本実施形態では、固定
治具30の曲面部31と平面部33bと、突き当て部40の曲面部分41と第1の平面部分43aとによって、中途部21をずれることなく、挟み込むことができる。また本実施形態では、固定
治具30の曲面部31と平面部33bと、突き当て部40の曲面部分41と第1の平面部分43aとによって、光ファイバ20を所望の形状に正確かつ容易に制御できる。また本実施形態では、印加平面部45によって、押しつけ力を無駄なく突き当て部40に印加できる。
【0056】
[第4の実施形態・
図5]
以下に、前記した各実施形態とは異なる点のみ記載する。
図5に示すように、本実施形態の固定
治具30は、例えば、第2の実施形態の固定
治具30と略同一である。
【0057】
図5に示すように、本実施形態の突き当て部40は、直線部25を形成するために固定
治具30の第1の部材30aに配設されている平面部33aと共に中途部21を挟み込む第2の平面部分43bをさらに有している。第2の平面部分43bは、光ファイバ20の軸方向において曲面部分41の他端部と連接している。よって曲面部分41は、第1の平面部分43aと第2の平面部分43bとに挟まれている。
【0058】
第3の実施形態と第4の実施形態と考慮すると、突き当て部40は、曲面部分41の両端の少なくとも一方に配設され、直線部25を形成するために固定
治具30の平面部33a,33bと共に中途部21を挟み込む平面部分43a,43bをさらに有していればよい。
【0059】
本実施形態では、固定
治具30の曲面部31と平面部33a,33bと、突き当て部40の曲面部分41と第1の平面部分43aと第2の平面部分43bとによって、中途部21をずれることなく、より確実に挟み込むことができる。また本実施形態では、固定
治具30の曲面部31と平面部33a,33bと、突き当て部40の曲面部分41と第1の平面部分43aと第2の平面部分43bとによって、光ファイバ20を所望の形状により正確かつより容易に制御できる。
【0060】
[第5の実施形態・
図6]
以下に、前記した各実施形態とは異なる点のみ記載する。
通常、短瞬断切替器は、曲げ部23にて光が入出力されると共に、光信号を遮断する機能を求められている。
図2Dに示す光ファイバ20を伝播する光信号の割合B1が少なくなる条件は、曲率半径が略1.7mmで、曲げ角度が略90度以上であることがわかる。
【0061】
よって、
図6に示すように、本実施形態では、曲げ部23は、例えば2つ配設されている。一方の曲げ部23は緩やかに曲がり、光信号が直線部25から入出力される。また他方の曲げ部23は略90度以上に曲がり、光信号が遮断される。一方の曲げ部23は光ファイバ20の軸方向において他方の曲げ部23に対して異なる位置に配設されている。
このため、曲面部31は2つ配設されており、一方の曲面部31は光ファイバ20の軸方向において他方の曲面部31に対して異なる位置に配設されている。
また円筒形状の突き当て部40は2つ配設されており、一方の突き当て部40は光ファイバ20の軸方向において他方の突き当て部40に対して異なる位置に配設されている。一方の突き当て部40は、他方の突き当て部40とは別体である。突き当て部40同士は、例えば棒状の連結部材47によって連結されている。連結部材47の一端部は一方の突き当て部40の中心部と連結しており、連結部材47の他端部は他方の突き当て部40の中心部と連結している。一方の突き当て部40は、他方の突き当て部40と隣り合うように配設されている。
【0062】
突き当て部40を固定
治具30に押し付ける押し付け力は、連結部材47を通じて突き当て部40に間接的に掛かる。
【0063】
本実施形態では、連結部材47によって、2つの曲げ部23を一度に形成できる。また本実施形態では、光信号の入出力と光信号の遮断とを同時に高効率に実施できる。
【0064】
[第6の実施形態・
図7]
以下に、前記した各実施形態とは異なる点のみ記載する。
第5の実施形態において、短瞬断切替器のために、突き当て部40は、2つ配設されていたが、これに限定される必要はない。
図7に示すように、突き当て部40は、1つのみ配設されている。そして、突き当て部40は、略長円形状を有している。なお突き当て部40は、第1の平面部43aと第2の平面部43bとを有している。
【0065】
本実施形態では、第1の平面部43aと第2の平面部43bとによって押しつけ力を無駄なく突き当て部40に印加できると共に、突き当て部40によって2つの曲げ部23を一度に形成でき、平面部33と突き当て部40とによって2つの曲げ部23を一度に均等の力で形成できる。
【0066】
[第7の実施形態・
図8]
以下に、前記した各実施形態とは異なる点のみ記載する。
図8に示すように、前記した入出力装置10は、光通信線路切替装置60に組み込まれてもよい。光通信線路切替装置60は、入出力装置10と、光一時遮断機構61と、光モニタ機構63と、光スイッチング機構65と、光増幅機構67とを有している。
【0067】
光一時遮断機構61は、突き当て部40と隣り合うように配設されている。光一時遮断機構61は、光ファイバ20を例えば持ち上げるように曲げることによって、光ファイバ20を切断することなく、光信号の伝播を遮断する。つまり消光が実施される。
【0068】
光モニタ機構63は、入出力光学系50と接続しており、光一時遮断機構61とは異なる系統となっている。光スイッチング機構65は光モニタ機構63と接続しており、光増幅機構67は光スイッチング機構65と接続している。
【0069】
光モニタ機構63は、迂回路用光ファイバに光信号が伝播しているか否かをモニタする。
光スイッチング機構65は、光一時遮断機構61と連動して、入出力光学系側における迂回路光ファイバ27における光信号の伝播を遮断・開通する。光スイッチング機構65は、光一時遮断機構61が遮断した際に、開通する。また光スイッチング機構65は、光一時遮断機構61が遮断しなかった際に、遮断する。
光増幅機構67は、迂回路光ファイバ27における光信号の損失を補てんするために、出力光を増幅する。
【0070】
光ファイバ20から迂回路光ファイバ27への切り替えが実施される前に、入出力装置10は光信号を迂回路光ファイバ27側に出力する。そして光一時遮断機構61は遮断し、同時に光ファイバ20から迂回路光ファイバ27への切り替えが実施される。
【0071】
本実施形態では、光モニタ機構63でモニタするため、光信号が迂回路用光ファイバに伝播していることを確認してから切り替えることができる。また入出力装置10は消光専門となるため、切り替えを最適化でき高速化できる。光スイッチング機構の既存製品では3ミリ秒程度で切り替えが実施されるため、本実施形態では追加開発を不要にできる。また光スイッチング機構65における開通と消光との時間差を制御することで、実質的な切り替え時間を短縮できる。
【0072】
また本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば第3乃第6の実施形態では、光に対して第2の部材30bは不透過性を有しているが、これに限定する必要はなく、第2の部材30bは透過性を有していてもよい。
また、光ファイバ20の図示しないカバー部材の屈折率は、カバー部材に接している透明な部材の屈折率と略同一である。このため、光信号の出力パターンまたは光信号の入力パターンは、カバー部材の厚さに依存しない。よってカバー部材の厚さが異なる光ファイバ20でも、各実施形態は成り立つ。