(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019058
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解質及びそれを備えたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20161020BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20161020BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20161020BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20161020BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/62 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-96251(P2014-96251)
(22)【出願日】2014年5月7日
(62)【分割の表示】特願2011-538574(P2011-538574)の分割
【原出願日】2010年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-160676(P2014-160676A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年6月3日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0016357
(32)【優先日】2009年2月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0017589
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ス‐ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、スン‐フーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジョン‐ホ
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−293962(JP,A)
【文献】
特開2006−261024(JP,A)
【文献】
特開平11−003728(JP,A)
【文献】
特開平06−163078(JP,A)
【文献】
特開2003−168479(JP,A)
【文献】
特開2008−130571(JP,A)
【文献】
特開2007−179864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質塩及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用非水電解質であって、
前記非水電解質が、
(a)ネオペンチルグリコールジメタクリレートと、及び、
(b)
ボレート化合物
による陰イオン受容体とを含んでな
り、
前記ボレート化合物が、下記化学式2で表される化合物であり、
前記電解質塩が、リチウム塩であり、
前記リチウム塩が、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、CF
3SO
3Li 、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
4BO
8からなる群より選択される何れか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、リチウム二次電池用非水電解質。
【化1】
[上記化学式2において、
R
4ないしR
6は、それぞれ相互に独立して、水素
又は炭素数1ないし6のアルキル基
である。]
【請求項2】
前記(a)成分及び(b)成分の含量が、非水電解質の総重量を基準にそれぞれ0.05ないし10重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項3】
前記有機溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートからなる群より選択された環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びメチルプロピルカーボネートからなる群より選択された線状カーボネート、又はこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項4】
リチウム二次電池であって、
負極と、正極と、及び非水電解質とを備えてなり、
前記非水電解質が、請求項1〜3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解質であることを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項5】
前記負極が、水系バインダーを含むことを特徴とする、請求項4に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記水系バインダーが、スチレン‐ブタジエンラバーであることを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に使用される非水電解質及びそれを備えたリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2009年02月26日出願の韓国特許出願第10−2009−0016357号及び2010年02月26日出願の韓国特許出願第10−2010−0017589号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー、及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、このような電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化に対する要求が高くなっている。リチウム二次電池は、このような要求に最も応えられる電池であって、これに対する研究が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、負極、正極、及びこれらの間でリチウムイオンの移動経路を提供する非水電解質を備え、リチウムイオンが正極及び負極で挿入(intercalation)/脱離(deintercalation)されるときの酸化及び還元反応によって電気エネルギーを生成する。このようなリチウム二次電池は、水溶液電解質を使用するNi‐MH、Ni‐Cd、硫酸‐鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高くエネルギー密度が格段に大きいという長所から脚光を浴びている。しかし、このようなリチウム二次電池は充放電が繰り返されるにつれて性能が劣化する問題がある。このような問題は電池の容量密度を増加させるほどさらに深刻になる。
【0005】
上記の問題点を解決するために、多様な化合物を非水電解質に添加して負極表面上に固体電解質界面(SEI)膜を形成する方法が提示された。例えば、特許文献1にはビニレンカーボネート(VC)を用いる方法が開示されている。しかし、VCが形成するSEI膜は抵抗が多少高く、高温下で崩壊され易いと知られている。
【0006】
したがって、安定したSEI膜を形成するとともに寿命特性も著しく改善するなど、リチウム二次電池に最適な非水電解質に対する研究が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−45545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、リチウム二次電池に適用されて負極に安定したSEI膜を形成し、形成されたSEI膜内のLiFの量を制御して電池の寿命特性を改善することができる非水電解質及びそれを備えたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、水系バインダーを使用した特定の負極に適用されて上記の目的を達成することができるリチウム二次電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明によって電解質塩及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用非水電解質は、(a)官能基を2つ以上含み、前記官能基のうち少なくとも1つはアクリル基である多官能性化合物;及び(b)ボラン化合物、ボレート化合物及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか一種の陰イオン受容体を含む。
【0011】
本発明の非水電解質において、前記多官能性化合物は2つ以上のアクリル基を含む化合物を使用することが望ましい。例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、分子量が50ないし20,000のポリエチレングリコールジアクリレート、分子量が100ないし10,000のビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス[2‐(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートなどをそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用し得る。
【0012】
また、本発明の非水電解質において、ボラン化合物は下記化学式1で表される化合物を、ボレート化合物は下記化学式2で表される化合物を使用することが望ましい。
【化1】
化学式1において、R
1ないしR
3はそれぞれ相互独立して水素またはハロゲンであるか、若しくは炭素数1ないし6のアルキル基またはシリル基である。
【化2】
化学式2において、R
4ないしR
6はそれぞれ相互独立して水素またはハロゲンであるか、若しくは炭素数1ないし6のアルキル基またはシリル基である。
【0013】
本発明の非水電解質において、前記(a)成分及び(b)成分の含量は非水電解質の総重量を基準にそれぞれ0.05ないし10重量%であり得る。
【0014】
本発明の非水電解質は、負極、正極、及び非水電解質を含む通常のリチウム二次電池に適用される。望ましくは、前記負極を形成するバインダーが水系バインダー、例えばスチレン‐ブタジエンラバー(SBR)を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるリチウム二次電池用非水電解質は次のような効果を奏する。
【0016】
第一、非水電解質に含有されたアクリル基含有多官能性化合物は、負極表面に安定したSEI膜を形成する。また、ボラン化合物またはボレート化合物からなる陰イオン受容体は、SEI膜内のLiFを溶出させてSEI膜内のLiF含量を制御する。これにより、SEI膜の抵抗が制御されて電池の寿命特性が改善する。
【0017】
第二、負極のバインダーとして水系バインダーを使用すると、SEI膜内のLiF含量が通常の溶剤系バインダーを使用するときより大きく増加する。本発明の陰イオン受容体は、このような水系バインダーの使用による問題点を効率的に制御することができる。よって、水系バインダーの使用による長所、すなわち経済的であって環境にやさしく、結着効果の増大という長所を生かして、高容量化されたリチウム二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1及び比較例1による電池をそれぞれ0.1Cで充電した後、その負極表面でXPS(x−ray photoelectron spectroscopy)分析した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0020】
本発明による電解質塩及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用非水電解質は、(a)官能基を2つ以上含み、前記官能基のうち少なくとも1つはアクリル基である多官能性化合物;及び(b)ボラン化合物、ボレート化合物及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか一種の陰イオン受容体を含む。
【0021】
官能基を2つ以上含み、前記官能基のうち少なくとも1つはアクリル基である多官能性化合物は、初期充電時に溶媒より低い電位で重合反応して負極表面にSEI膜を形成する。
【0022】
このような(a)成分による多官能性化合物は、2つ以上のアクリル基を含む化合物を使用することが望ましい。例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、分子量が50ないし20,000のポリエチレングリコールジアクリレート、分子量が100ないし10,000のビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス[2‐(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートなどをそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用し得るが、これに限定されることはない。
【0023】
上記のような(a)成分から形成されたSEI膜は、安定性は高いものの、膜に含まれたLiFの量が増加して充放電時大きい抵抗として作用する。特に、負極バインダーとして水系バインダーを使用する場合、PVdFのような溶剤系バインダーと違って、負極の水分含量が高くなる。これにより、非水電解質内のフッ酸含量が著しく増加するため、(a)成分でSEI膜を形成するときはLiFの量も増加する。
【0024】
本発明は非水電解質に(b)ボラン化合物、ボレート化合物及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つの陰イオン受容体を添加することでこのような問題を解決した。すなわち、非水電解質に含有されたボラン化合物またはボレート化合物からなる陰イオン受容体は、SEI膜内のLiFを溶出させ、これによってSEI膜内のLiF含量が低く制御されるため、SEI膜の抵抗が低下して電池の寿命特性が改善する。
【0025】
本発明の非水電解質において、非水電解質に添加されたボラン化合物としては下記化学式1で表される化合物を、ボレート化合物としては下記化学式2で表される化合物を使用することが望ましい。
【化3】
化学式1において、R
1ないしR
3はそれぞれ相互独立して水素またはハロゲンであるか、若しくは炭素数1ないし6のアルキル基またはシリル基である。
【化4】
化学式2において、R
4ないしR
6はそれぞれ相互独立して水素またはハロゲンであるか、若しくは炭素数1ないし6のアルキル基またはシリル基である。
【0026】
前述した(a)成分及び(b)成分は、電池の寿命向上効果及び性能を考慮して、例えば非水電解質の総重量を基準にそれぞれ0.05ないし10重量%を添加することが望ましい。
【0027】
本発明の非水電解質において、非水電解質は有機溶媒を含む。前記有機溶媒は通常非水電解質用有機溶媒として使用されるものであれば特に制限されず、環状カーボネート、線状カーボネート、ラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、及び/またはケトンを使用し得る。
【0028】
前記環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。前記線状カーボネートの例としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びメチルプロピルカーボネート(MPC)などが挙げられ、これらをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用し得る。前記ラクトンの例としてはγ‐ブチロラクトン(GBL)があり、前記エーテルの例としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、1,2‐ジメトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタンなどがある。前記エステルの例としては、メチルフォーメート、エチルフォーメート、プロピルフォーメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、メチルピバレートなどがある。また、前記ラクタムとしてはN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)などがあり、前記ケトンとしてはポリメチルビニルケトンがある。また、前記有機溶媒のハロゲン誘導体も使用可能であるが、これに限定されない。これら有機溶媒は単独でまたは2種以上を混合して使用し得る。
【0029】
また、本発明の非水電解質において、非水電解質は電解質塩を含むが、前記電解質塩は通常非水電解質用電解質塩として使用されるものであれば特に制限されない。
【0030】
前記電解質塩は、(i)Li
+、Na
+、K
+からなる群より選択された陽イオンと、(ii)PF
6−、BF
4−、Cl
−、Br
−、I
−、ClO
4−、AsF
6−、CH
3CO
2−、CF
3SO
3−、N(CF
3SO
2)
2−、C(CF
2SO
2)
3−からなる群より選択された陰イオンとの組合せであり得るが、これに限定されない。これら電解質塩は単独でまたは2種以上を混合して使用し得る。特に、前記電解質塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、CF
3SO
3Li 、 LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
4BO
8などのリチウム塩を使用することが望ましい。
【0031】
一方、本発明のリチウム二次電池はリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマ二次電池またはリチウムイオンポリマ二次電池など、通常のリチウム二次電池を全て含む。
【0032】
本発明のリチウム二次電池は当技術分野で周知の通常の方法によって製造できる。例えば、正極と負極との間に多孔性のセパレーターを介在させ、前述した組成の非水電解質を注入して製造し得る。
【0033】
リチウム二次電池の電極は当技術分野で周知の通常の方法で製造できる。例えば、電極活物質に溶媒、必要に応じてバインダー、導電材、分散材を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し圧縮してから乾燥して電極を製造し得る。
【0034】
正極活物質としては、LiM
xO
y(M=Co、Ni、Mn、Co
aNi
bMn
c)のようなリチウム遷移金属複合酸化物(例えば、LiMn
2O
4などのリチウムマンガン複合酸化物、LiNiO
2などのリチウムニッケル酸化物、LiCoO
2などのリチウムコバルト酸化物、これら酸化物のマンガン、ニッケル、コバルトの一部を他の遷移金属などで置換したもの、リチウムを含む酸化バナジウムなど)などを使用し得るが、これに限定されない。
【0035】
負極活物質としては従来リチウム二次電池の負極に使用できる通常の負極活物質が使用可能であり、非制限的な例としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できるリチウム金属、リチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。他にもリチウムを吸蔵及び放出でき、リチウムに対する電位が2V未満のTiO
2、SnO
2などのような金属酸化物を使用し得るが、これに限定されない。特に、黒鉛、炭素繊維、活性化炭素などの炭素材が望ましい。
【0036】
金属材料の集電体は伝導性の高い金属であって、前記電極活物質のスラリーが接着し易く電池の電圧範囲で反応性のないものであれば、限定されることなく使用し得る。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0037】
リチウム二次電池の負極には、活物質粒子を結着させて成形体を保持するためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン‐ブタジエンラバー(SBR)などのようなバインダーが使用される。バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVdF)で代表される溶剤系バインダー(すなわち、有機溶剤を溶媒にするバインダー)と、スチレン‐ブタジエンラバー(SBR)で代表される水系バインダー(すなわち、水を溶媒にするバインダー)とに分けられる。水系バインダーは溶剤系バインダーと違って経済的であって環境にやさしく、作業者の健康にも無害である。また、溶剤系バインダーに比べて結着効果が大きく、同一体積当りの活物質の比率を高めることで高容量化が可能である。本発明のリチウム二次電池は特定の非水電解質を使用することで、水系バインダーの使用による上記のような問題点を解消することができ、高容量化がさらに容易になる。水系バインダーはスチレン‐ブタジエンラバー(SBR)であることが望ましく、周知のようにカルボキシメチルセルロース(CMC)のような増粘剤とともに水に分散させて負極に適用し得る。
【0038】
導電材は電気化学素子において化学変化を起こさない電子伝導性物質であれば特に制限されない。一般に、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、有機導電材などを使用し得る。現在導電材として市販されている商品には、アセチレンブラック系列(Chevron Chemical CompanyまたはGulf Oil Company製など)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)EC系列(Armak Company製)、バルカン(Vulcan)XC−72(Cabot Company製)及びスーパーP(MMM社製)などがある。
【0039】
電極を形成するための溶媒には、N‐メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒または水などがあり、これら溶媒は単独でまたは2種以上を混合して使用し得る。ただし、負極を形成する場合は溶媒として水を使用する。溶媒の使用量はスラリーの塗布厚さ、製造歩留りを考慮して、前記電極活物質、バインダー、導電材を溶解及び分散できる程度であれば十分である。
【0040】
本発明のリチウム二次電池はセパレーターを含み得る。前記セパレーターには特に制限がないが、多孔性セパレーターを使用することが望ましい。非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、またはポリオレフィン系多孔性セパレーターなどが挙げられる。
【0041】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ型、またはコイン型などであり得る。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0043】
実施例1
非水電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(体積比)の組成を有する有機溶媒に、LiPF
6を1M濃度になるように溶解した後、前記溶液に下記化学式3のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びトリプロピルボレートを、非水電解質の総重量を基準にそれぞれ0.5重量%及び0.1重量%添加して非水電解質を製造した。
【化5】
【0044】
リチウム二次電池の製造
正極としてLiCoO
2、負極として人造黒鉛、負極バインダーとしてSBRを使用して電極を製造した後、上記の方法で用意した非水電解質を注入する通常の方法でバイセル構造のパウチ型電池を製造した。
【0045】
実施例2
トリプロピルボレートの代わりにトリプロピルボランを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0046】
実施例3
下記化学式4で表されるフルオロエチレンカーボネート1重量%をさらに添加したことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【化6】
【0047】
実施例4
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりにネオペンチルグリコールジメタクリレートを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0048】
実施例5
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりにジペンタエリスリトールペンタアクリレートを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0049】
比較例1
トリプロピルボレートを添加しないことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0050】
比較例2
トリプロピルボランを添加しないことを除き、実施例3と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0051】
比較例3
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを添加しないことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0052】
比較例4
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを添加しないことを除き、実施例2と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0053】
比較例5
トリプロピルボレートを添加しないことを除き、実施例4と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0054】
比較例6
トリプロピルボレートを添加しないことを除き、実施例5と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0055】
比較例7
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びトリプロピルボレートを添加しないことを除き、実施例1と同様の方法で非水電解質及びリチウム二次電池を製造した。
【0056】
寿命特性の評価
実施例1ないし5及び比較例1ないし7によるパウチ型電池を0.5Cで200回充放電し、初期容量対比容量維持率を測定してその結果を下記表1に示した。
【表1】
【0057】
表1から、本発明によってアクリル基含有多官能性化合物及び陰イオン受容体を同時に含む非水電解質を、水系バインダーを使用した負極に適用したリチウム二次電池は、アクリル基含有多官能性化合物及び陰イオン受容体を両方とも含まないかまたはそれぞれ単独で使用する場合より寿命が大幅に向上したことが確認できる。
【0058】
SEI膜のLiF含量の評価
実施例1及び比較例1による電池を0.1Cで充電した後、負極を脱離してXPSで表面分析を行い、その結果を
図1に示した。
【0059】
図1を参照すれば、本発明によってアクリル基含有多官能性化合物及び陰イオン受容体を同時に含む非水電解質を、水系バインダーを使用した負極に適用した実施例1のリチウム二次電池は、アクリル基含有多官能性化合物のみを単独で含む非水電解質を、水系バインダーを使用した負極に適用した比較例1の電池よりSEI膜内のLiF含量が大幅に減少したことが分かる。これは陰イオン受容体が負極表面のSEI膜の成分中のLiFを溶出させたからであり、これによって充放電し易いSEI膜が形成されることが確認できる。