(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理体がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記処理室内に配置され前記被処理体が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、
連続放電の場合におけるプラズマの生成が困難となる高周波電力の範囲と連続放電の場合におけるプラズマの生成が容易となる高周波電力の範囲をそれぞれ予め求めるとともに前記予め求められた、連続放電の場合におけるプラズマの生成が困難となる高周波電力の範囲の高周波電力をオンとオフを繰り返すパルスにより変調させる制御部をさらに備え、
前記パルスのオン期間の高周波電力は、前記予め求められた、連続放電の場合におけるプラズマの生成が容易となる高周波電力の範囲の値にされ、
前記パルスのデューティー比は、前記パルスの一周期あたりの平均高周波電力が前記予め求められた、連続放電の場合におけるプラズマの生成が困難となる高周波電力の範囲の値となるような値にされていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に、本発明を実施するためのプラズマエッチング装置の一例から図を参照しながら説明する。
図1は、プラズマ生成手段にマイクロ波と磁場を利用したマイクロ波ECRプラズマエッチング装置の概略断面図である。
【0022】
マイクロ波ECRプラズマエッチング装置は、内部を真空排気できるチャンバ101と被処理物であるウエハ102を配置する試料台103とチャンバ101の上面に設けられた石英などのマイクロ波透過窓104と、その上方に設けられた導波管105、マグネトロン106と、チャンバ101の周りに設けられたソレノイドコイル107と、試料台103に接続された静電吸着電源108、高周波電源109とから成る。
【0023】
ウエハ102はウエハ搬入口110からチャンバ101内に搬入された後、静電吸着電源108によって試料台103に静電吸着される。次にプロセスガスがチャンバ101に導入される。チャンバ101内は、真空ポンプ(図示省略)により減圧排気され、所定の圧力(例えば、0.1Pa〜50Pa)に調整される。次に、マグネトロン106から周波数2.45GHzのマイクロ波が発振され、導波管105を通してチャンバ101内に伝播される。マイクロ波とソレノイドコイル107によって発生された磁場との作用によって処理ガスが励起され、ウエハ102上部の空間にプラズマ111が形成される。一方、試料台103には、高周波電源109によってバイアスが印加され、プラズマ111中のイオンがウエハ102上に垂直に加速され入射する。また、高周波電源109は、連続的な高周波電力または、時間変調された間欠的な高周波電力を試料台103に印加することができる。
【0024】
プラズマ111からのラジカルとイオンの作用によってウエハ102が異方的にエッチングされる。また、マグネトロン106にはパルスジェネレータ112が取り付けられており、これによりマイクロ波を
図2に示すように任意に設定可能な繰り返し周波数でパルス状にパルス変調することができる。
【0025】
また、マイクロ波ECRプラズマエッチング装置がウエハ102をプラズマ処理する時は、制御部113が、上記のマグネトロン106、パルスジェネレータ112、ソレノイドコイル107、高周波電源109、静電吸着電源108をそれぞれ制御している。
【0026】
本発明に係る以下説明する実施例で使用したマイクロ波ECRプラズマエッチング装置は、直径300mmのウエハを処理するマイクロ波ECRプラズマエッチング装置であり、チャンバ101の内径は44.2cm、ウエハ102とマイクロ波透過窓104との距離は24.3cm(プラズマが発生する空間の体積37267cm
3)である。
【0027】
次に、一つ目の課題である、プラズマ密度を下げるためにマイクロ波電力を小さくすると、プラズマの生成が困難になるという課題を解決するための本発明を実施例1及び実施例2にて説明する。
[実施例1]
図1に示すマイクロ波ECRプラズマエッチング装置を用いて、表1に示す条件にてデューティー比とマイクロ波の時間平均出力によるプラズマの着火性について調べた。尚、表1のVppは、試料台103に印加される高周波電圧のピーク値からピーク値までの電圧差のことである。
【0028】
また、表2にプラズマ生成の調査結果を示す。尚、表2の“○”はプラズマを安定して生成できたことを示し、“×”はプラズマを生成できなかったことを示す。
【0031】
表2から連続放電の場合、マイクロ波の時間平均出力をチャンバ101内壁の体積で除した値が0.011W/cm
3(約400W)以上だとプラズマが安定に生成され、未満だとプラズマが生成されなくなる。プラズマが生成されなくなる理由は自由電子がエッチングガスの分子を電離させるのに必要なエネルギーが供給されないからである。しかし、パルスマイクロ波による放電の場合、マイクロ波の時間平均出力をプラズマが生成される体積で除した値が0.011W/cm
3より小さくてもプラズマが生成される。
【0032】
この連続放電とパルスマイクロ波放電でのプラズマ生成の違いは、以下の理由によるものである。
【0033】
マイクロ波がオンの期間の数μsecの間に、自由電子はマイクロ波から獲得したエネルギーで他の原子、分子を電離、または解離させ、プラズマ111を生成させる。そしてマイクロ波がオフの期間になると、自由電子は数μsecの間に殆どが原子、分子に捕縛され、プラズマ111はその大部分が陰イオンと陽イオンになる。陰イオンと陽イオンは電子に比べ質量が大きいので衝突して中和し、プラズマ111が消失するまでに数10msの時間がかかってしまう。従って、マイクロ波のオフの時間が10msより短ければ、プラズマ111が消失する前にマイクロ波のオンの期間が始まり、プラズマ111が維持される。
【0034】
従って、表2に示された結果を言い換えると、パルスマイクロ波のオンの期間の出力を連続放電でプラズマを安定に生成させるのに最低限必要な出力以上(すなわち0.011W/cm
3以上)にすると、パルスマイクロ波の時間平均出力が0.011W/cm
3以下でも安定して放電を生成させることができると言える。さらに、パルスマイクロ波のオフの期間を10ms以下にすれば、パルスマイクロ波の時間平均出力が0.011W/cm
3以下の領域でも上述のプラズマ処理方法よりさらに安定して放電を生成させることができると言える。
【0035】
さらに、アルゴンガス(Ar:イオン化エネルギー1520.6kJ/mol)、窒素ガス(N
2:イオン化エネルギー1402kJ/mol)などの不活性なガスを添加したり、上の不活性なガス以外のイオン化し易いガスを添加することにより安定して放電を生成し易い。その他のガスの種類や、各ガスの流量、処理圧力、RFバイアス値などは、本実施例の効果に特別な制限を与えない。
【0036】
次に、表面全体がポリシリコン膜のウエハと表面全体がシリコン酸化膜のウエハを表1の条件でエッチング処理し、それぞれの削れ量の比から選択比を求めた。その結果を
図3に示す。なお、
図3の「%」は、パルス放電した場合のデューティー比を意味する。
【0037】
図3より、デューティー比を50%以下にしてマイクロ波時間平均出力を400W(0.011W/cm
3)以下にすると、連続放電より選択比が増大することがわかる。この理由は、マイクロ波の時間平均出力が小さいとチャンバ101内の自由電子の個数が減り、この減った分の電子は原子や分子を励起するため、ラジカル種の密度があがり、選択比が向上したものと考えられる。
【0038】
また、表1条件の酸素ガスを1ml/min以上10ml/min以下に制御することでさらに選択比が増大する。
【0039】
また、本実施例は、マイクロ波ECRプラズマエッチング装置に適用した例であったが、容量結合方式あるいは誘導結合方式プラズマエッチング装置にも同様に適用できる。以上、上述した通り、本発明のプラズマ処理方法は、パルス放電のオンの期間の高周波電力を連続放電のプラズマが安定に生成できる高周波電力とするとともに、パルス放電のオフの期間を10ms以下にしたパルス放電により、被処理物を処理する方法である。このような本発明のプラズマ処理方法により、プラズマを安定に生成させることが困難であるプラズマ生成用電力が小さい領域でも安定にプラズマを生成させることができる。
【0040】
さらに、本発明のプラズマ処理方法において、パルス放電のデューティー比を50%以下にすると、連続放電時より、シリコン酸化膜に対するポリシリコン膜のエッチングレートの選択比を向上させることができる。
[実施例2]
次に、実施例1において説明した本発明の他の実施例について説明する。
【0041】
表3に示す条件にてパルス放電のプラズマ処理を行うと、連続放電より、炭素系堆積物の除去や、レジストの除去の性能が向上する。
【0043】
表3に示す条件にアルゴンガスを5ml/min添加してアルゴンの発光強度に対する酸素の発光強度の比を測定した結果を
図4に示す。
【0044】
図4よりマイクロ波の時間平均出力をプラズマが発生する体積で除した値である0.011W/cm
3を下回るところから酸素原子の発光強度が強くなっていることがわかる。
【0045】
つまり、表3に示す条件にて本発明のパルス放電を行うと、酸素ラジカル密度が高くなり、炭素系堆積物の除去やレジスト除去の効果が向上したものである。
【0046】
次に、二つ目の課題である、マイクロ波の電力を変えて放電試験を行った際、マイクロ波電力に依存してプラズマの発光が目視あるいはフォトダイオードなどの測定において、ちらついて見える不安定領域が存在するという課題を解決するための本発明を実施例3ないし実施例5にて説明する。
[実施例3]
本実施例のプラズマエッチング処理は、
図1に示すマイクロ波ECRプラズマエッチング装置を用いた。次に、ポリシリコン膜302をエッチングする条件の例を表4に示す。本条件によりポリシリコン膜302を下地の酸化膜303に対して高選択比でエッチングできる。
【0048】
表4に示す条件でプラズマを発生させるためのマイクロ波を変えて、プラズマ111からの発光をフォトダイオードにて検出してそのちらつきを測定した結果を表5に示す。マイクロ波の電力は連続放電させた場合とマイクロ波のオンの期間の電力を1500Wにして繰り返し周波数1KHzでオンオフ変調し、デューティー比を変えることで電力制御した場合を比較している。表5で“○”は放電ちらつき無し、“X”は放電ちらつきありを示す。放電がちらつく状態ではエッチングを行うことができない。
【0050】
連続放電では、900Wから1100Wでちらつきが生じるが、マイクロ波のオンオフ制御により、放電のちらつきを解消することができる。原因は瞬時の電力で発生するプラズマ111は安定領域になるよう設定されており、さらに、ハロゲンガスのように負イオンになりやすいガスのプラズマ111でパルス放電をすると、オフ時に電子は数十μsで消滅しその後数msの間負イオンと正イオンが放電維持に関与するため、チャンバ壁とプラズマ111の界面に生成されるプラズマ111のシースの状態が連続放電とは異なり、ちらつきが解消されると推定される。
【0051】
プラズマ111が消失するまでの時間は、数10msなので、オフ時間を10ms以下にすればプラズマ111が消失する前にオンが始まり、プラズマが維持される。
【0052】
プラズマ111のちらつく電力領域は、条件に依存する。従って、別条件のエッチングでは、まず連続放電にてマイクロ波電力を変えて、表5と同様に、放電がちらつく領域を確認して、マイクロ波のオンの期間の電力をちらつきが生じる電力よりも十分大きく設定して、かつ、オフ時間が10ms以下になる周波数でマイクロ波をオンオフのパルス変調すれば、ちらつきを解消できる。
【0053】
なお、表5に示すマイクロ波の電力はチャンバ101の大きさが変わると、その体積に応じて変わり、1500Wは単位体積当たりのマイクロ波電力に換算すると約0.04W/cm
3に相当する。
【0054】
なお、放電に不安定領域が存在することは、マイクロ波プラズマエッチング装置に限らず、誘導結合型あるいは容量結合型のプラズマエッチング装置でも同様の課題があり、これらの装置でも本発明にて放電不安定を回避できる。
[実施例4]
次に、プラズマ111のオンオフ変調により可能になるエッチング加工寸法(以後、「CD」と呼ぶ。)の制御方法に関する実施例を述べる。
図5は、プラズマ111の発光強度あるいは発光強度の変化から求まるエッチング処理終了時間などを測定して、このモニタ値をもとに処理中のウエハ102あるいは次に処理するウエハ102のエッチング条件を変える仕組みが、
図1に示すマイクロ波ECRプラズマエッチング装置に付加されたプラズマエッチング装置の概略図を示す。
【0055】
図5に示す受光部202、CD演算部203、レシピ演算部205、第一のデータベース206、第二のデータベース204、エッチング制御用PC207は、通信手段を介して通信可能に連結されている。
図6は、加工対象であるウエハ102上の微細パタンの断面図で、シリコン基板304と下地の酸化膜303上にあるポリシリコン膜302を微細パタン状に加工された窒化シリコンなどのマスク301と同じパタン状にエッチングする様子を表している。
【0056】
ドライエッチングでは、通常、
図6に示すような加工を1ロット(25枚)連続処理する。加工された線幅(以後「CD」と呼ぶ。)は連続処理中、ある許容値内に収まる必要
がある。しかし、エッチングの反応生成物などがチャンバ101内に付着するなどして時間とともにプラズマ状態が変化してCDの変動が許容値内に収まらない場合がある。
【0057】
この実施例では、プラズマ111をオンオフ変調して、そのデューティー比をウエハ毎に変えることでCDの変動を許容値内に抑える。通常、CDはウエハ102に印加するバイアス電力やプラズマ密度すなわちマイクロ波電力に依存して変化するので、マイクロ波電力を変化させることでCDを変えることができる。
【0058】
次に、具体的な方法を述べる。
図6に示すポリシリコン膜302のエッチングの終点は、プラズマ111中の反応生成物の発光、例えば、シリコンの426nmの光を光ファイバー201と受光部202で検出される。エッチングの終了時間とCDには相関があり、エッチング終了時間とCDの関係が第二のデータベース204に格納されている。CD演算部203はエッチング終了時間からこのウエハ102のCDの推定値を算出する。算出されたCDとCD目標値の差分を計算して、この差分の値はレシピ演算部205に送られる。
【0059】
レシピ演算部205は、
図7に示すマイクロ波電力(デューティー比)とCDの相関関係のデータが格納された第一のデータベース206を有しており、CDの目標値からの差分をゼロにするのに必要なマイクロ波電力の変量を算出する。例えば、
図7のように目標CDが30nmでn枚目のCDが30+a(nm)であったとすると、n+1枚目は目標CDにするために、すなわちa(nm)細くするために、平均マイクロ波の電力をすなわちデューティー比をd(%)だけ増加させる。
【0060】
第一のデータベース206から算出されたデューティー比は、エッチング制御用PC207に送られて、次のウエハ102を処理する際に、この値に設定してエッチングを行う
。この際、プラズマ111を連続放電していると、CD差分がゼロになるように修正されたマイクロ波電力値が、表5に示すプラズマ111の不安定領域に入ってしまうことがあり、エッチングに支障をきたす。実施例3で述べたように、プラズマ111をオンオフ変調して、そのデューティー比を変えることによりマイクロ波電力を制御するとプラズマ111の不安定の課題を解消できる。
[実施例5]
次に、放電不安定を防止するために、本発明と併用するとより安定のマージンが広がる方法を
図8により説明する。まず、プラズマ111の電位を安定させるために、直流電流が流れるアース面401をプラズマ111と接する部分に設けることが望ましい。
【0061】
通常、チャンバ101の内壁は、アルマイトやイットリウム酸化物などの安定化処理がされているが、これらの材料は絶縁物なので、直流電流が流れない。プラズマ111と接する部分を一部これらの絶縁膜を剥がす、あるいは導体を挿入するなどして、さらに導体部分をアース電位にすることでプラズマ111の電位が安定するので放電がより安定する。直流的アース面401の面積は10cm
2以上が望ましい。
【0062】
つぎに、プロセスガスの圧力は0.1〜10Paの間に設定することが望ましい。圧力
が低すぎると、電子の平均自由行程が長くなり、電離を生じる前に壁で消失する機会が増えてプラズマ111の不安定の原因となる。また、圧力が高すぎると、着火性が悪くなり不安定を生じやすい。
【0063】
さらに、チャンバ101および試料台103の形状は、局所的に電界が強くなる部分を極力減らすことが望ましい。すなわち、鋭利な凹凸を設けず、角部分402は半径5mm以上の曲線にするとよい。
【0064】
次に、三つ目の課題である、高マイクロ波電力側(高密度領域)に高選択比領域が存在するが、高マイクロ波電力側では、プラズマ密度の上昇に伴いカットオフ現象が生じて、プラズマ密度のチャンバ内での分布が変化するモードジャンプが発生するという課題を解決するための本発明を実施例6及び実施例7にて説明する。
【0065】
尚、実施例6及び実施例7におけるプラズマエッチング処理は、
図1に示すマイクロ波ECRプラズマエッチング装置を用いて行った。
[実施例6]
図3に示すようにポリシリコンとシリコン酸化膜選択比は平均マイクロ波電力が大きい(800W以上)の領域でも増加する。この理由を説明するために
図9にマイクロ波電力と、O(酸素)とBr(臭素)の発光強度比の関係を示す。
図9からわかるように高マイクロ波側ではO(酸素)の発光強度、すなわちOラジカルの密度が上がる。このためシリコン酸化膜の削れが抑制され選択比が向上すると考えられる。
【0066】
しかしながら、マイクロ波電力値を更に上げると、
図9に示すように、CW(連続放電)では、マイクロ波電力値900W以上で、発光強度の急激な変化、すなわち、前記のモードジャンプ現象(CW時)500が発生する。このため、連続放電では高マイクロ波領域を使用できない。
【0067】
そこで、本発明では、マイクロ波をパルス化し、オン時のピーク電力をモードジャンプが発生する電力値より十分高く設定して、デューティー比を制御する。デューティー65%以下では、発光強度比(
図9)は急激な変化がなく、すなわちモードジャンプを回避していることがわかる。
【0068】
この理由を次のように推定する。CW(連続放電)では、マイクロ波電力値とともに電子密度が上昇し、プラズマ111の振動と電磁波の周波数が共鳴する密度に達する電力値からモードが変化する。一方、パルス化したマイクロ波では、オフ時に自由電子は数μsecの間に殆どが原子、分子に捕縛され、プラズマ111は、その大部分が陰イオンと陽イ
オンになる。このため、オンオフを繰り返すパルスマイクロ波では、電子密度の上昇が起こらない。
【0069】
図10に、表1の条件を用いて、高マイクロ波電力側を評価した選択比結果を示す。CW(連続放電)ではマイクロ波電力値900W以上でモードジャンプの影響から選択比が低下する(不安定になる)のに対し、マイクロ波をパルス化することで、高マイクロ波電力側が使用となり、高選択比を得ることができる。
【0070】
一般に、パルス放電では、電力オフ後50μsで電子密度は1桁以上減衰することが知られている。従って、放電をパルス化して、そのオフ時間が50μs以上になるようにパルスの繰り返し周波数とデューティー比を設定すれば、十分にモードジャンプを回避できる。
【0071】
以上、本発明では、マイクロ波をパルス変調することで、高マイクロ波電力側で発生するモードジャンプを回避でき、エッチングに有効なプロセス領域を拡大できる。
[実施例7]
次に、このモードジャンプ領域を自動的に回避する方法および装置に付いて述べる。モードジャンプは
図9に示すように、およそマイクロ波電力900W以上の高電力領域で生じるが、ガスの圧力やガスの種類によりプラズマ111の密度は異なるので、モードジャンプが生じる電力もこれらの条件に依存して異なる。
【0072】
これを回避する方法はまず、あらかじめ使用する条件でモードジャンプが生じる電力値を測定しておき、装置はエッチング条件とその条件でモードジャンプが生じる電力を記憶しておき、その条件を使用するときは、自動的にマイクロ波電力をパルス変調する機能を備えるようにする。この機能がある装置では、誤ってモードジャンプ領域を使用する誤操作を防ぐことができる。
【0073】
さらに、あらかじめモードジャンプが生じる電力の測定を自動化する装置について述べる。
図11にモードジャンプが生じる電力の測定を自動化する装置の処理の流れ図を示す。通常、エッチングはロット(25枚)単位で処理をするが、ロットを処理する前にダミーウエハ処理501をこれから処理する条件と同じ条件で行う。
【0074】
その後、ロット処理502、酸素のプラズマ111などによるチャンバ101のクリーニング503と続く。ダミーウエハ処理501は、マイクロ波電力を設定した値、例えば800Wから1200Wまで自動でスキャンしてこの期間のプラズマ111の発光強度をホトダイオード等で測定するステップであるマイクロ波電力自動スキャン測定504を含む。
【0075】
次に、エッチング装置制御用パソコン507は、このデータから発光強度が急激に変わる領域を抽出、記憶するモードジャンプ電力識別505を行って、さらにレシピを入力した際にマイクロ波電力がモードジャンプする領域に相当した場合に自動的にパルス変調をする、自動レシピ生成506を行う機能を備える。この機能により、作業者はモードジャンプ領域に煩わされることなく、エッチングを行うことができる。
【0076】
また、マイクロ波電力をスキャンした際に測定する物理量は発光強度に限らず、バイアス電圧のピーク値(Vpp)などモードジャンプに対応して急激に変化する量ならば同じ機能を果たせる。また、本発明で述べたマイクロ波電力の絶対値は主にチャンバ101の大きさすなわち処理対象のウエハ102の直径に応じて大きく変わる。目安としてはチャンバ101の体積で規格化した値を用いるとチャンバ101の体積に依存しない量に変換することができる。例えば、以上の実施例では900Wは0.024W/cm
3に相当する。