特許第6019595号(P6019595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019595
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 25/13 20060101AFI20161020BHJP
   C07C 25/18 20060101ALI20161020BHJP
   C07C 17/14 20060101ALI20161020BHJP
   C07C 17/32 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C07C25/13CSP
   C07C25/18
   C07C17/14
   C07C17/32
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-18902(P2012-18902)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-155156(P2013-155156A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】東條 健太
(72)【発明者】
【氏名】楠本 哲生
(72)【発明者】
【氏名】高津 晴義
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1733676(CN,A)
【文献】 特表2009−512646(JP,A)
【文献】 特開2011−098942(JP,A)
【文献】 特開2009−161530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
C07C 25/13
C07C 17/14
C07C 17/269
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、Rは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し
、A及びAはそれぞれ独立して、環を構成する一つ以上のメチレン基が酸素原子又は硫黄原子により置換されていても良いトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は環上の一個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、
、Z及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−(CH−、−CHO−又は−OCH−を表し、
l、m及びnはそれぞれ独立して、0又は1を表し、
は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)において、が臭素原子を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、A,A及びAがそれぞれ独立して、
【化2】
のいずれかを表す請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、Z,Z及びZが単結合を表す請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(II)
【化3】
(式中、Rは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し
、A及びAはそれぞれ独立して、環を構成する一つ以上のメチレン基が酸素原子又は硫黄原子により置換されていても良いトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は環上の一個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、
、Z及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−(CH−、−CHO−又は−OCH−を表し、
l、m及びnはそれぞれ独立して、0又は1を表す。)で表されるジフルオロメタン誘導体のジフルオロベンジル基を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化することにより、一般式(I)
【化4】
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、R、A、A、A、Z、Z、Z、l、m及びnは、一般式(II)と同じである。)で表される化合物を製造することを特徴とする、化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化剤として、N−ブロモスクシンイミド、臭素、又は塩素を用いる請求項5に記載の化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(III)
【化5】
(式中、Rは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し
、A及びAはそれぞれ独立して、環を構成する一つ以上のメチレン基が酸素原子又は硫黄原子により置換されていても良いトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は環上の一個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、
、Z及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−(CH−、−CHO−又は−OCH−を表し、
l、m及びnはそれぞれ独立して、0又は1を表す。)で表されるハロゲン化ベンゼン誘導体に塩基を作用させて得られるカルボアニオンと、一般式(IV)
【化6】
(式中、X及びXは、それぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表されるジフルオロメタン誘導体とを反応させることにより、一般式(I)
【化7】
(式中、Xは、前記一般式(IV)と同じであり、R、A、A、A、Z、Z、Z、l、m及びnは、前記一般式(III)と同じである。)で表される化合物を製造することを特徴とする、化合物の製造方法。
【請求項8】
前記塩基として、リチウムアミドを用いる請求項7に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
前記一般式(IV)において、X及びXが共に臭素原子である請求項7又は8に記載の化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、液晶材料等の化成品等の製造中間体として有用なジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフルオロメチルエーテル骨格を有する化合物は、フッ素原子と酸素原子の相互作用による特異な電子配置から、医薬、農薬等の有効成分となる生理活性物質や、液晶材料等の機能材料として極めて有用である。特に、1−(ジフルオロ(p−トリルオキシ)メチル) −2,3−ジフルオロ−4−メチルベンゼンに代表される、ジフルオロメチルエーテル骨格に隣接した芳香環にフッ素原子を導入した骨格(下記式(A)で表される骨格、以下、骨格(A))を有する化合物は、液晶材料の構成部材として特に有用である。例えば、正の誘電率異方性を有する液晶材料に骨格(A)を有する化合物を含有させることは、誘電率異方性の絶対値の向上に有効である。
【0003】
【化1】
(式中、P及びPは、任意の基を表す。)
【0004】
骨格(A)を有する化合物の製造方法としては、下記に示すように、安息香酸エステルを経由して製造する方法があった(例えば、特許文献1参照。)。当該製造方法では、エステル化する際に用いるアルコール類の構造に応じて、最終目的物の構造が決定されてしまう。つまり、目的の化合物の構造ごとに、それぞれの構造に応じたアルコール類を必要とする。このため、複数の骨格(A)を有する化合物を製造する場合、多くの製造中間体を用意する必要があり、製造効率の低下、保管の手間等の問題がある。
【0005】
【化2】
【0006】
一方で、4−ハロゲノジフルオロベンジルブロミド誘導体及びその製造方法は知られている(特許文献2,3及び非特許文献1参照)。しかしながら、4−ハロゲノジフルオロベンジルブロミド誘導体から骨格(A)を有する化合物を効率よく製造する方法は、現在までに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−139511号公報
【特許文献2】特開昭61−180727号公報
【特許文献3】独国特許発明第1518857号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Yoshida,Y.Morinaga,M.Ueda,N.Kamigata and M.Iyoda,Chemistry Letters,227−230,1992.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、骨格(A)を有する化合物の製造中間体として有用なジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体、及び当該ジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体を効率的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため種々のジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体を鋭意検討した結果、4位に置換基を有するジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体の製造に成功し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Rは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し
、A及びAはそれぞれ独立して、環を構成する一つ以上のメチレン基が酸素原子又は硫黄原子により置換されていても良いトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は環上の一個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、
、Z及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−(CH−、−CHO−又は−OCH−を表し、
l、m及びnはそれぞれ独立して、0又は1を表し、
は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物、及び当該化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、フッ素置換を有するベンゼン環の1位がジフルオロハロメチル基で置換されているジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体であり骨格(A)を有する化合物の製造中間体として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<一般式(I)で表される化合物>
本発明の化合物は、一般式(I)で表される化合物である。
【0016】
【化4】
【0017】
一般式(I)中、Rは、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は、炭素数1〜15のアルキル基を表す。当該アルキル基中の相隣接しない1個以上のメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、又は−CH=CH−で置換されていてもよい。また、当該アルキル基中の任意の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。当該アルキル基は、分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよい。本発明においては、Rが炭素数1〜15のアルキル基である場合、相隣接しない1個以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、又は−CH=CH−で置換されていてもよく、かつ任意の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明においては、Rは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であることが好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基であることがより好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0019】
一般式(I)中、Xは、フッ素原子以外のハロゲン原子、すなわち、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。本発明においては、Xは臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがより好ましい。
【0020】
一般式(I)中、Z、Z及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−(CH−、−CHO−又は−OCH−を表す。本発明においては、Z、Z及びZはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−CHO−又は−OCH−が好ましく、単結合がより好ましい。
【0021】
一般式(I)中、A、A及びAはそれぞれ独立して、環を構成する一つ以上のメチレン基が酸素原子又は硫黄原子により置換されていても良いトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は環上の一個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていても良い1,4−フェニレン基を表す。本発明においては、A、A及びAはそれぞれ独立して、下記の5種の環状構造を有する2価の基のいずれかであることが好ましい。なお、以下、これら5種の環状構造を有する2価の基をまとめて「2価の環構造含有基群B」ということがある。
【0022】
【化5】
【0023】
一般式(I)中、l、m及びnはそれぞれ独立して、0又は1を表す。本発明においては、l、m及びnの全てが0であるか、又はl、m及びnのうち、2つが0であり、1つが1であることが好ましい。
【0024】
本発明の化合物は、ベンゼン環の1位に「−CF」で表されるジフルオロハロメチル基(ジフルオロメチル基の水素原子がハロゲン原子で置換された基)を有するジフルオロベンジルハロゲン化物誘導体である。当該ジフルオロハロメチル基に、塩基の存在下でフェノール性水酸基又はアルコール性水酸基を有する化合物を反応させることにより、骨格(A)を有する化合物を合成することができる。すなわち、本発明の化合物は、骨格(A)を有する化合物の合成中間体として有用である。
【0025】
<一般式(I)で表される化合物の製造方法>
一般式(I)で表される化合物は、公知の化合物を出発原料とし、公知の有機合成反応を適宜組み合わせて合成することができる。特に、下記の製造方法1及び2によれば、一般式(I)で表される化合物を効率よく製造し得る。
【0026】
[製造方法1]
下記一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体のジフルオロベンジル基を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化することにより、一般式(I)で表される化合物を効率よく製造することができる。一般式(II)中、R、A、A、A、Z、Z、Z、l、m及びnは、いずれも一般式(I)と同じである。
【0027】
【化6】
【0028】
製造方法1において用いられるハロゲン化剤としては、ハロゲン化アルキル基中の水素原子をハロゲン化し得るものであれば特に限定されるものではないが、ラジカル反応を利用したハロゲン化剤であることが好ましい。当該ハロゲン化剤としては、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。本発明においては、ハロゲン化剤として、N−ブロモスクシンイミド、臭素、又は塩素を用いることが好ましい。
【0029】
N−ブロモスクシンイミド又はN−クロロスクシンイミドを用いる場合には、例えば、一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体とN−ブロモスクシンイミド等をラジカル開始剤と共に加熱還流することによって、一般式(I)で表される化合物を合成することができる。加熱還流時に光照射してもよい。当該ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。また、一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体に、塩素や臭素のハロゲンガス存在下で紫外線等の光を照射することによっても、一般式(I)で表される化合物を合成することができる。
【0030】
それぞれの反応において反応溶媒として用いられる有機溶媒は、反応に不活性であり、かつ反応に使用する各化合物の溶解性が良好な公知の有機溶媒の中から適宜選択して用いられる。1種類の有機溶媒であってもよく、2種類以上の混合溶媒であってもよい。製造方法1において用いられる有機溶媒としては、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の脂肪族エーテル化合物、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等であることが好ましい。
【0031】
[製造方法2]
下記一般式(III)で表されるハロゲン化ベンゼン誘導体に塩基を作用させて得られるカルボアニオンと、下記一般式(IV)で表されるジフルオロメタン誘導体とを反応させることにより、一般式(I)で表される化合物を効率よく製造することができる。一般式(III)中、R、A、A、A、Z、Z、Z、l、m及びnは、いずれも一般式(I)と同じである。一般式(IV)中、X及びXは、それぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。当該製造方法においては、一般式(IV)中のXは、Xと同じであることが好ましく、X及びXが共に臭素原子であることがより好ましい。
【0032】
【化7】
【0033】
製造方法2において用いられる塩基としては、2又は3のハロゲン原子によって置換されているベンゼン環にカルボアニオンを発生させられるものであれば特に限定されるものではない。当該塩基としては、例えば、リチウムアミド、アルキルリチウム、アルカリ金属、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属アルコラート等が挙げられる。リチウムアミドとしては、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムジイソプロピルアミド等が挙げられる。アルキルリチウムとしては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、2,2−ジメチルプロピルリチウム等が挙げられる。本発明においては、一般式(III)で表されるハロゲン化ベンゼン誘導体の末端のジフルオロベンゼン環の4位をより選択的にカルボアニオン化できるため、リチウムアミドを用いることが好ましく、リチウムテトラメチルピペリジド又はリチウムジイソプロピルアミドを用いることがより好ましく、リチウムテトラメチルピペリジドを用いることがさらに好ましい。リチウムテトラメチルピペリジドは、常法により合成することができ、例えば、n−ブチルリチウム等のアルキルリチウムとテトラメチルピペリジンとを反応させて得られる。
【0034】
まず、反応に不活性であり、かつ反応に使用する各化合物の溶解性が良好な有機溶媒中で、一般式(III)で表されるハロゲン化ベンゼン誘導体と塩基を混合し、当該ハロゲン化ベンゼン誘導体の末端のジフルオロベンゼン環の4位にカルボアニオンを発生させる。当該有機溶媒としては、前記と同様のものが挙げられる。得られたカルボアニオンに一般式(IV)で表されるジフルオロメタン誘導体を反応させることにより、一般式(I)で表される化合物を合成することができる。
【0035】
各反応の反応温度は、−45℃以下が好ましく、−65℃以下がより好ましく、−70℃以下がさらに好ましい。一般式(III)で表されるハロゲン化ベンゼン誘導体と塩基の反応における反応温度を前記上限値以下とすることにより、より選択的に、当該ハロゲン化ベンゼン誘導体の末端のジフルオロベンゼン環の4位にカルボアニオンを発生させることができる。また、カルボアニオンと一般式(IV)で表されるジフルオロメタン誘導体の反応における反応温度を前記上限値以下とすることにより、前記ハロゲン化ベンゼン誘導体の末端のジフルオロベンゼン環の4位に「−X」が導入された副生成物の生成が抑制され、より高い効率で、一般式(I)で表される化合物を合成できる。
【0036】
[一般式(III)で表されるハロゲン化ベンゼン誘導体]
一般式(III)で表されるジフルオロメタン誘導体は、公知の化合物を出発原料とし、公知の有機合成反応を適宜組み合わせて合成することができる。一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体のうち、末端のジフルオロベンゼン環に直接1,4−フェニレン基が結合している誘導体(例えば、nが1であり、Zが単結合であり、Aが1,4−フェニレン基である誘導体)については、例えば、下記一般式(V)で表される化合物に、塩基及びパラジウム触媒存在下で、2,3−ジフルオロフェニルホウ酸を反応させることにより、合成することができる。
【0037】
【化8】
【0038】
[一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体]
一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体は、公知の化合物を出発原料とし、公知の有機合成反応を適宜組み合わせて合成することができる。例えば、後記実施例1の(1−1)〜(1−3)の反応において、2,3−ジフルオロブロモベンゼンに代えて前記一般式(III)で表される化合物を用いることにより、一般式(II)で表されるジフルオロメタン誘導体を合成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0040】
実施例中の化合物記載に下記略号を使用する。
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DBH:1,3−ジブロモ−3,3−ジメチルヒダントイン
NBS:N−ブロモスクシンイミド
BPO:過酸化ベンゾイル
Et:エチル基
Bu:n−ブチル基
【0041】
(実施例1)ジフルオロメチルベンゼン誘導体を経由する、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ブロモジフルオロメチル)ベンゼンの製造
(1−1)
窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン(25.2g)をTHF(130mL)に溶解させ、−70℃以下に冷却した。当該溶液に、1.6Mブチルリチウム/ヘキサン溶液(130mL)を、内温が−65℃以上にならない速度で滴下し、引き続き−70℃以下にて30分間撹拌した。続いて、撹拌後の反応液に、2,3−ジフルオロブロモベンゼン(40g)をTHF(150mL)に溶解させた溶液を、内温が−65℃以上にならない速度で滴下し、−70℃以下にて1時間撹拌した。続いて、DMF(22.7g)をTHF(220mL)に溶解させた溶液を、内温が−65℃以上にならない速度で滴下し、引き続き−70℃以下にて1時間撹拌し、その後ゆっくりと室温まで昇温させた。当該反応液に10%塩酸及びトルエンを加えて有機層を分取し、当該有機層を飽和食塩水にて洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた後、溶媒を減圧留去することにより、4−ブロモ−2,3−ジフルオロベンズアルデヒドの粗製物(44.9g)を得た。
【0042】
【化9】
【0043】
(1−2)
4−ブロモ−2,3−ジフルオロベンズアルデヒドの粗製物(44.9g)、1,3−プロパンジチオール(23.1g)、p−トルエンスルホン酸一水和物(1.9g)をトルエン(220mL)に溶解させ、80℃にて3時間撹拌した。撹拌後の反応液を室温まで冷却させた後、当該反応液の有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、さらに飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、2−(4−ブロモ−2,3−ジフルオロフェニル)−1,3−ジチアン(59.2g)を得た。
【0044】
【化10】
【0045】
(1−3)
2−(4−ブロモ−2,3−ジフルオロフェニル)−1,3−ジチアン(59.2g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、−60℃以下に冷却した。当該溶液に、内温が−50℃以上にならない速度でトリエチルアミン三フッ化水素錯体(41.4g)、続いてDBH(81.6g)を加え、室温までゆっくりと昇温した。ゆっくりと10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて有機層を分取し、飽和食塩水にて当該有機層を洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ジフルオロメチル)ベンゼン(42.6g)を得た。
【0046】
【化11】
【0047】
(1−4)
窒素雰囲気下、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ジフルオロメチル)ベンゼン(42.6g)、NBS(31.2g)及びBPO(20mg)を四塩化炭素(450mL)に懸濁させ、加熱還流下6時間撹拌した。撹拌後の反応液を放冷させた後、水を加えて分液させて有機層を分取し、飽和食塩水にて当該有機層を洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ブロモジフルオロメチル)ベンゼン(46.0g)を微黄色液体として得た。
【0048】
【化12】
【0049】
得られた4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ブロモジフルオロメチル)ベンゼンの質量分析及びNMR解析の結果を以下に示す。
MS m/z:324,322,320
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ(ppm)=7.06(1H,d,j=6.9Hz),6.70(1H,d,j=6.9Hz)
13CNMR(CDCl)δ(ppm)=152.8,150.6,131.4,129.4,127.2,124.6,112.2
【0050】
(実施例2)ジフルオロジブロモメタンを用いる、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ブロモジフルオロメチル)ベンゼンの製造
(2−1)
窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン(5.8g)をTHF(30mL)に溶解させ、−70℃以下に冷却した。当該溶液に、1.6Mブチルリチウム/ヘキサン溶液(32mL)を、内温が−65℃以上にならない速度で滴下し、引き続き−70℃以下にて30分間撹拌した。続いて、撹拌後の反応液に、2,3−ジフルオロブロモベンゼン(10g)をTHF(50mL)に溶解させた溶液を、内温が−65℃以上にならない速度で滴下し、−70℃以下にて1時間撹拌し、フェニルリチウム類を調製した。別の反応容器に、ジフルオロジブロモメタン(16.3g)をTHF(160mL)に溶解させた溶液を−70℃以下に冷却しておき、当該溶液に、先に調製したフェニルリチウム類の溶液をキャニュラーを用いて加えた後、引き続き−70℃以下で1時間撹拌した後、室温まで昇温させた。当該反応液に水及びヘキサンを加えて有機層を分取し、当該有機層を飽和食塩水にて二回洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ブロモジフルオロメチル)ベンゼンと1,4−ジブロモ−2,3−ジフルオロベンゼンの混合物(14.5g)を得た。ガスクロマトグラフィーを用いて、当該混合物中の各化合物の比率を測定したところ、4−ブロモ−2,3−ジフルオロ−(ブロモジフルオロメチル)ベンゼンは78.5%、1,4−ジブロモ−2,3−ジフルオロベンゼンは21.5%であった。
【0051】
【化13】
【0052】
(実施例3)2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)−1−(ジフルオロブロモメチル)ベンゼンの合成
(3−1)
窒素雰囲気下、4−プロピルブロモベンゼン(400g)、2M炭酸カリウム水溶液(1100mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(11.6g)をTHF(1200mL)に溶解させ、加熱還流させた。還流下、2,3−ジフルオロフェニルホウ酸(317g)をTHF(950mL)に溶解させた溶液を加えた後、還流下さらに4時間撹拌した。還流終了後に反応液を放冷した後、ヘキサンを加えて有機層を分取した。残った水層にヘキサンを加えて分液して再度有機層を分取し、先に分取された有機層と併せた。得られた有機層を飽和食塩水にて二回洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、エタノールから再結晶することにより、2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)ベンゼン(427g)を得た。
【0053】
【化14】
【0054】
(3−2)
乾燥窒素下、ジイソプロピルアミン(26.1g)をTHF(130mL)に溶解させ、−40℃に冷却した。当該溶液に、1.6Mブチルリチウム/ヘキサン溶液(150mL)を、内温が−30℃以上にならない速度で加え、さらに−40℃にて30分間撹拌した。続いて、撹拌後の反応液に、2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)ベンゼン(50g)をTHF(250mL)に溶解させた溶液を、内温が−30℃以上にならない速度で加え、−40℃にてさらに1時間撹拌した。続いて、ジブロモジフルオロメタン(67.8g)をTHF(200mL)に溶解させた溶液を、内温が−30℃以上にならない速度で加え、さらに−40℃にて1時間撹拌した後、室温まで昇温させた。当該反応液に水とヘキサンを加えて分液し、有機層を分取した。残った水層にヘキサンを加えて抽出し、再度有機層を分取し、先に分取された有機層と併せた。得られた有機層を飽和食塩水にて二回洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)−1−(ジフルオロブロモメチル)ベンゼンと、2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)ブロモベンゼンの混合物(56.3g)を得た。ガスクロマトグラフィーを用いて当該混合物中の各化合物の比率を測定したところ、2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)−1−(ジフルオロブロモメチル)ベンゼンは73.8%、12,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)ブロモベンゼンは26.2%であった。
【0055】
【化15】