(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体レーザ装置は、前記半導体レーザ素子から光が入射される光学部品と、前記光学部品を保持し前記半導体レーザ素子を封止するキャップと、を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、高い放熱効果を有し、高出力でレーザ光を出射可能な半導体レーザ装置を提供することを目的とするものであって、当該文献では言及されていない上記半導体レーザ装置の流用の問題に対する解決策としては、不十分なものである。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、半導体レーザ装置の取り外しが困難な光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る光源装置は、ステムを有する半導体レーザ装置と、前記半導体レーザ装置を保持する保持部材と、前記半導体レーザ装置を前記保持部材に接着させる第1の接着部材と、を備え、前記ステムは、半導体レーザ素子が実装される素子実装部と、前記半導体レーザ素子と電気的に接続される端子と、前記素子実装部を上面側に保持し且つ前記端子を下面側に露出させて保持するベース部と、を有し、前記保持部材は、前記第1の接着部材と接する面に鍍金が施されており、前記第1の接着部材は、金属を含み、前記ベース部の下面を前記保持部材に接着させて
おり、さらに前記半導体レーザ装置は、前記半導体レーザ素子を前記ステムに接着させる第2の接着部材を備え、前記半導体レーザ装置を前記保持部材に接着させた後における前記第1の接着部材の軟化点は、前記半導体レーザ素子を前記ステムに接着させた後における前記第2の接着部材の軟化点以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光源装置は、以下のように構成することができる。
【0009】
前記第1の接着部材は、前記ベース部の側面を前記保持部材に接着させていることが好ましい。
【0010】
前記ステムは、前記ベース部の下面及び/又は側面に窪みが設けられており、前記第1の接着部材は、前記窪みに入り込んで設けられていることが好ましい。
【0011】
前記保持部材は凹部を有し、前記第1の接着部材は、前記凹部内において、前記ベース部の下面を前記保持部材に接着させていることが好ましい。
【0012】
前記光源装置は、前記保持部材に接続される放熱部材を備え、前記第1の接着部材は、前記ベース部の上面を前記放熱部材に接着させていることが好ましい。
【0014】
前記半導体レーザ装置は、前記半導体レーザ素子から光が入射される光学部品と、前記光学部品を保持し前記半導体レーザ素子を封止するキャップと、を備えることが好ましい。
【0015】
前記保持部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体レーザ装置を保持部材に強固に接着して、半導体レーザ装置の取り外しを困難にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する光源装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0019】
<実施の形態1>
図1及び
図2はそれぞれ、実施の形態1に係る光源装置の外観及び構成を示す概略斜視図である。
図3(a)は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置を示す概略上面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるA−A断面を示す概略断面図である。
図4は、実施の形態1に係る光源装置の一部の構造を拡大して示す概略断面図である。
【0020】
なお以下、光源装置の光軸に沿う方向(光軸方向)における、主として光が出射される側を前方、その反対側を後方とする。また、主として、各部材における、光源装置の前方となる側を上方、光源装置の後方となる側を下方とする。
【0021】
実施の形態1に係る光源装置100は、
図1,2に示すように、半導体レーザ装置10を保持する保持部材30,31を備えている。より詳細には、光源装置100は、複数の半導体レーザ装置10を各々保持する、第1の保持部材30上に、第2の保持部材31が設けられ、その前方及び後方に第1の放熱部材50と第2の放熱部材51が接続されて構成されている。なお、半導体レーザ装置及びそれを保持する保持部材の数は任意に変更可能である。すなわち、保持部材は1つの半導体レーザ装置を保持していればよく、光源装置は1つの保持部材を備えていればよい。
【0022】
図3に示すように、半導体レーザ装置10は、ステム20を有している。ステム20は、半導体レーザ素子15が実装される素子実装部21と、半導体レーザ素子15と電気的に接続される端子22と、素子実装部21を上面24側に保持し且つ端子22を下面25側に露出させて保持するベース部23と、を有する。なお、ベース部23は、素子実装部21を、自身と一体化して保持していてもよい。
【0023】
また、
図3に示すように、半導体レーザ装置10は、半導体レーザ素子15から光が入射される光学部品27と、この光学部品27を保持し半導体レーザ素子15を封止するキャップ28と、を備えている。このような半導体レーザ装置10は、予め光学調整された光を出射可能なユニットとして別の光源装置に流用しやすいため、その取り外しを困難にする意義が大きい。また、半導体レーザ装置10の放熱性を高めることにより、半導体レーザ素子15と光学部品27の相対的な位置関係を保ち、優れた光学特性を維持しやすい。
【0024】
そして、
図4に示すように、光源装置100は、半導体レーザ装置10を保持部材30,31に接着させる接着部材40(第1の接着部材)を備えている。より詳細には、第1の接着部材40は、各半導体レーザ装置10に対応して設けられている。また、第1の接着部材40は、金属を含み、半導体レーザ装置10のステムのベース部の下面25を保持部材30に接着させている。第1の接着部材40の厚さは、ステムの端子22をショートさせることがなければ、特に制限されない。
【0025】
ここで、保持部材30,31は、第1の接着部材40と接する面に鍍金が施されていることが好ましい。保持部材30,31は、表面の酸化や母材の材質により、半田などの接着部材との接合性が悪い場合がある。そこで、保持部材30,31の第1の接着部材40と接する面に鍍金を施すことで、第1の接着部材40との接合性を改善し、半導体レーザ装置のステム20を保持部材30,31に安定して接着することができる。特に、アルミニウムやアルミニウム合金は、熱伝導性に優れる反面、表面が酸化されやすく半田などの接着部材との接合性が非常に悪い。このため、保持部材30,31がアルミニウム又はアルミニウム合金を母材とする場合に、特に好適である。
【0026】
なお、保持部材30,31の鍍金は、金、錫、ニッケル、銀、パラジウム、銅などの単層膜又はこれらの多層膜で構成することができる。特に、少なくとも最表面に錫又は銀を有することが、接合性の観点で好ましい。この鍍金は、保持部材30,31の外面のほぼ全域に施されていてもよいし、第1の接着部材40と接する部位付近に限って施されていてもよい。
【0027】
このように、半導体レーザ装置10と保持部材30,31を、第1の接着部材40を介して(より好ましくは金属接合させ)、強固に接着させることにより、半導体レーザ装置10の取り外しを困難にすることができる。また、第1の接着部材40を介することで、半導体レーザ装置10と保持部材30,31との密着性を高め、半導体レーザ装置10から発生する熱を保持部材30,31に効率良く伝導することができ、半導体レーザ装置10の放熱性を高めることができる。
【0028】
以下、光源装置100の好ましい構成について記述する。
【0029】
図4に示すように、第1の保持部材30において、第1の接着部材40は、半導体レーザ装置10のステムのベース部の下面25に加え、側面26を保持部材30に接着させている。これにより、半導体レーザ装置10をより強固に保持部材30に接着させることができ、半導体レーザ装置10の取り外しをより困難にすることができる。また、半導体レーザ装置10から発生する熱を第1の接着部材40を介して保持部材30により効率良く伝導しやすく、半導体レーザ装置10の放熱性をより高めることができる。
【0030】
図4に示すように、第1の保持部材30、第2の保持部材31はそれぞれ、複数の凹部35を有している。そして、第1の接着部材40は、凹部35内において、半導体レーザ装置10のステムのベース部の下面25を保持部材30,31に接着させている。これにより、半導体レーザ装置10の保持部材30,31との接着面積を増大させやすく、半導体レーザ装置10を保持部材30,31に強固に接着させやすい。また、半導体レーザ装置10の露出を抑えて、半導体レーザ装置10に外力を掛け難くすることにより、半導体レーザ装置10の取り外しをより困難にすることができる。
【0031】
なお、凹部35は、半導体レーザ装置10のステムのベース部23の少なくとも一部を収容できればよいが、半導体レーザ装置10の取り外しをより困難にするために、ベース部23の全部を収容することが好ましい。さらに、凹部35は、半導体レーザ装置10のステムのベース部23とキャップ28と、の全部を収容してもよい。また、凹部35の形状は、半導体レーザ装置10を精度良く設置するために、ステムのベース部23の形状にほぼ沿っていることが好ましい。凹部35の底面は、平面が良い。凹部35の側面は、底面に対して略垂直でよいが、上方側の開口径が大きい傾斜面(例えば傾斜角5°以上45°以下)であってもよい。
【0032】
図4に示すように、光源装置100は、保持部材30,31に接続される放熱部材50,51を備えている。そして、第1の接着部材40は、半導体レーザ装置10のステムのベース部の上面24を放熱部材51に接着させている。これにより、半導体レーザ装置10のステムのベース部23が、保持部材31と放熱部材51に挟まれて両部材に接着されるので、半導体レーザ装置10の取り外しをよりいっそう困難にすることができる。また、半導体レーザ装置10から発生する熱を第1の接着部材40を介して放熱部材51によりいっそう効率良く伝導することができ、半導体レーザ装置10の放熱性をさらに高めることができる。
【0033】
図4に示すように、半導体レーザ装置10は、半導体レーザ素子15をステム20に接着させる第2の接着部材16を備えている。そして、半導体レーザ装置10を保持部材30,31に接着させた後における第1の接着部材40の軟化点(軟化温度)は、半導体レーザ素子10をステム20に接着させた後における第2の接着部材16の軟化点以上であることが好ましい。これにより、保持部材30,31に接着された半導体レーザ装置10を、第1の接着部材40が軟化するまで加熱した場合、半導体レーザ装置10の損傷や特性の劣化を伴う虞がある。したがって、半導体レーザ装置10を取り外して流用することをより困難にすることができる。
【0034】
なお、ここでいう「軟化」は、軟化させる前の接着部材が固形状であってもペースト状であっても、構成材料の溶融、ガラス転移などにより液状化又は粘度の低下を起こすこと、として定義することができる。接着部材の構成材料によっては、融点とすることもできる。
【0035】
図5(a)は、実施の形態1に係る光源装置の一部の構造を拡大して示す概略上面図である。また、
図5(b)は、一変形例に係る光源装置の一部の構造を拡大して示す概略断面図である。
【0036】
図5(a)に示すように、半導体レーザ装置10のステム20は、ベース部の側面26に窪み291が設けられており、第1の接着部材40は、その窪み291に入り込んで設けられている。この窪み291に入り込んだ第1の接着部材40のアンカー効果により、半導体レーザ装置10が保持部材30により強固に接着されるので、半導体レーザ装置10の取り外しをより困難にすることができる。
【0037】
また、
図5(b)に示す変形例のように、半導体レーザ装置10のステムのベース部の下面25に窪み292が設けられてもよく、第1の接着部材40は、その窪み292に入り込んで設けられていてもよい。この場合も、窪み292に入り込んだ第1の接着部材40のアンカー効果により、半導体レーザ装置10を保持部材30により強固に接着させることができる。上述の側面の窪み291と下面の窪み292の両形態を組み合わせてもよい。
【0038】
なお、窪み291,292の平面形状は、点状、直線状、折れ線状、曲線状、環状などであってよく、断面形状は、矩形状、三角形状、半円形状、半楕円形状などであってよい。また、下面の窪み292の深さは、例えばステムのベース部23の厚さの半分以下とすることができる。窪み291,292は、1つでもよいが、複数設けられることで半導体レーザ装置の保持部材への接着強度をより高めやすいので好ましい。複数の窪み291,292は、半導体レーザ装置10を精度良く設置するために、ステムのベース部23の中心軸を基準として、ほぼ回転対称となる位置に設けられることが好ましい。
【0039】
(光源装置の製造方法)
実施の形態1において、光源装置100は、例えば、次のように半導体レーザ装置10を保持部材30,31に接着して製造することができる。
【0040】
まず、保持部材30,31の半導体レーザ装置10の接着予定位置に、軟化させる前の第1の接着部材40を設置する。このとき、第1の接着部材40は、固形状であればコレットやピンセットなどを用いて配置し、ペースト状であればディスペンサなどを用いて塗布すればよい。
【0041】
次に、設置した第1の接着部材40上に、半導体レーザ装置10を載置する。このとき、半導体レーザ装置10を適度に押圧することで、第1の接着部材40をステムのベース部の側面、又は側面と上面に接するように設けることができる。また、半導体レーザ装置10を載置した後、軟化させる前の第1の接着部材40を更に追加してもよい。
【0042】
最後に、第1の接着部材40を、加熱装置などにより加熱して軟化させた後、冷却して固化させる(以降、「軟化-固化」と記す場合がある)ことで、半導体レーザ装置10を保持部材30,31に接着させることができる。
【0043】
半導体レーザ装置10を保持部材30,31に接着させる前における第1の接着部材40の軟化点は、半導体レーザ素子15をステム20に接着させた後における第2の接着部材の軟化点より低いことが好ましい。これにより、半導体レーザ装置10の損傷や特性の劣化を防止しながら、半導体レーザ装置10を保持部材30,31に接着させることができる。
【0044】
なお、1つの保持部材30,31に複数の半導体レーザ装置10を接着させる場合、各半導体レーザ装置に対応して設置した第1の接着部材40を熱処理により一括して軟化-固化させ、複数の半導体レーザ装置を同時に保持部材30,31に接着させることができる。これにより、少ない工数で安価に光源装置を製造することができる。
【0045】
以下、本発明の光源装置の各構成要素について説明する。
【0046】
(半導体レーザ素子15)
半導体レーザ素子は、各種の半導体で構成される素子構造を含むものでよい。なかでも、紫外光や短波長の可視光を発光可能な窒化物半導体(主として、一般式In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表される)を用いたレーザ素子は、比較的高価であって、また指向性に優れるが、熱が比較的溜まりやすいため、本発明にとって特に好適である。なお、半導体レーザ素子(又は半導体レーザ装置)を複数備える光源装置の場合、各半導体レーザ素子(又は各半導体レーザ装置)の発光波長(発光色)は、互いに略同じであってもよいし、例えば赤、緑、青など互いに異なっていてもよい。
【0047】
(第2の接着部材16)
第2の接着部材は、半導体レーザ素子をステムに接着させる部材である。第2の接着部材は、軟化させる前においては、固形状とペースト状のどちらでもよい。第2の接着部材は、金、錫、銀、ビスマス、銅、インジウム、アンチモンなどの金属を主成分とすることが好ましいが、少なくとも軟化させる前においては樹脂や有機溶剤を含んでいてもよい。具体的には、錫-ビスマス系、錫-銅系、錫-銀系、金-錫系などの各種の半田や金属ペーストが挙げられる。なお、第2の接着部材は、例えばサブマウントのように、窒化アルミニウムや炭化珪素などの基板を介して、その基板の上面及び下面に設けられたものでもよい。
【0048】
(ステム20)
ステムは、半導体レーザ素子が接着される部材である。ステムの素子実装部及びベース部は、熱伝導性の観点から、端子を電気的に絶縁する部位を除いて、銅、鉄鋼(炭素鋼など)、アルミニウム、金、又はこれらの合金などの金属を主成分として構成されることが好ましい。また、ステムは、最表面が金となる鍍金が施されていることが好ましい。ステムは、ベース部の上面視形状がほぼ円形に沿ったものや、その一部がカットされたもの(「I-cutステム」又は「D-cutステム」と呼ばれるもの)などを使用できる。また、端子は、主として棒状のリード端子であるが、ベース部のスルーホール、ビアなどを介して形成された膜状又は柱状の電極であってもよい。
【0049】
(光学部品27)
光学部品は、レンズ、ミラー、プリズム、光学フィルタ、拡散板、カバーガラスなどの光学素子のほか、これらの光学素子又は透光性部材に蛍光物質を配合した波長変換部材、若しくはレーザロッドや波長変換用の非線形光学結晶などの光学結晶、若しくは光ファイバなどを、単体で又は組み合わせて用いることができる。光学部品がコリメータレンズである又はそれを含むことで、平行光を出射可能となり、半導体レーザ装置の汎用性が高まるため、その取り外しを困難にする意義が特に大きい。加えて、光源装置の光学特性に殆ど影響を及ぼさずに半導体レーザ装置の光軸方向の設置位置を変えることができ、半導体レーザ装置の放熱性に優れる配置を取りやすい。なお、光学部品は、キャップの内面に設けられた位置決め用の突起に当接され、接着部材(第3の接着部材)の塗布、熱圧着、圧入などによりキャップに固定される。
【0050】
なお、蛍光物質は、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al
2O
3−SiO
2)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr、Ba)
2SiO
4)などを用いることができる。例えば、青色光を発光する半導体レーザ素子と、その青色光の一部を吸収して黄色光を発光する蛍光物質と、の組み合わせにより、白色光を発光する光源装置とすることができる。
【0051】
(キャップ28)
キャップは、ステムのベース部に接続され、光学部品を保持し、半導体レーザ素子を封止して保護する部材であるが、光源装置の構成や用途により省略することができる。キャップは、光学部品からの出射光を光軸方向に透過可能な構造を有していればよい。キャップは、後述の保持部材と同様の材料を用いて構成することができる。キャップの形状は、筒状又は箱状が良く、上面視では、ステムのベース部の上面の周縁部を露出させ、該ステムのベース部の形状にほぼ沿っていることが好ましい。
【0052】
(保持部材30,31)
保持部材は、半導体レーザ装置を保持する部材である。保持部材は、種々の形状を有するものでよく、板状、ブロック状、箱状、筒状、L字状、T字状などが挙げられる。保持部材の母材は、上述のアルミニウム又はアルミニウム合金のほか、ステンレス鋼(オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系)、鉄鋼(機械構造用炭素鋼、一般構造用圧延鋼)、スーパーインバー、コバールなどを用いることができる。なかでも、鉄鋼は、安価であるが、半田などの接着部材との接合性が比較的悪いので、鍍金を施す構成が好適である。このほか、銅又は銅合金も熱伝導性の観点では好ましい。また、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化珪素などのセラミックを用いることもできる。さらに、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ABS、ASA、PBTなどの樹脂材料を用いることができ、これらの樹脂材料に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化珪素、グラファイト、酸化チタンなどの充填材が添加されたものを用いてもよい。また、保持部材は、その外面にフィンが形成されたものでもよい。
【0053】
(第1の接着部材40)
第1の接着部材は、半導体レーザ装置を保持部材に接着させる部材である。第1の接着部材は、軟化させる前においては、固形状とペースト状のどちらでもよい。第1の接着部材は、金、錫、銀、ビスマス、銅、インジウム、アンチモンなどの金属を含み、少なくとも軟化させる前においては樹脂や有機溶剤を含んでいてもよいが、軟化-固化後においては上記金属を主成分とすることが好ましい。具体的には、錫-ビスマス系、錫-銅系、錫-銀系、金-錫系などの各種の半田や金属ペーストが挙げられる。第1の接着部材は、一度加熱されて軟化-固化すると、軟化点が軟化させる前のそれより高くなるものが好ましい。特に、その軟化点の差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがよりいっそう好ましい。このような接着部材(軟化させる前)としては、銅粉末を添加した錫系半田(例えば千住金属工業社製RAMシリーズ)や、銀粒子とアルコール等の有機溶剤を含む焼結型のペースト(固化後は主として多孔質の銀粒子の焼結体となる;例えばWO2009/090915公報参照)などが挙げられる。
【0054】
(放熱部材50,51)
放熱部材は、保持部材に接続され、保持部材ひいては半導体レーザ装置からの放熱を促進可能な部材である。放熱部材は、放熱器又は放熱板であって、効果的に放熱するために、フィンを有することが好ましい。フィンの形状は、板状、剣山状、円筒状、螺旋状などが挙げられる。放熱部材は、前述の保持部材と同様の材料を用いて構成することができる。なお、放熱部材は、その近隣にファンが設けられることで、より効果的に放熱可能である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0056】
<実施例1>
実施例1の光源装置は、
図1,2に示す例の構成を有する、プロジェクタ用の光源であって、以下のように構成されている。
【0057】
実施例1の光源装置は、互いに重ねられてネジで固定された、2つの保持部材(LDホルダ)を備えている。2つの保持部材はそれぞれ、アルミニウム合金製の母材の外面に錫の鍍金が施されたものである。
【0058】
後方の保持部材は、厚さ12.5mmの略板状の部材であって、直径9.1mmの円形開口、深さ7mmの凹部と、その凹部の底面に設けられた、リード端子を通すための楕円形開口の貫通穴と、の対からなる穴を8つ有する。この穴は、4行4列に配置され、各行における2つの穴の中心間距離は15mm、各行の間隔は7.5mmであり、奇数行目と偶数行目において穴の配置は同じで、奇数行目と偶数行目の穴は横方向に7.5mmずれている。また、後方の保持部材は、前方の保持部材に保持される半導体レーザ装置のリード端子に接続される導線を通すための楕円形状の貫通穴を8つ有する。なお、後方の保持部材は、各半導体レーザ装置のリード端子と電気的に接続される回路基板を横方向に延出させて保持している。
【0059】
前方の保持部材は、厚さ8.5mmの略板状の部材であって、直径9.1mmの円形開口、深さ2mmの凹部と、その凹部の底面に設けられた、リード端子を通すための楕円形開口の貫通穴と、の対からなる穴を8つ有する。この穴は、後方の保持部材の穴と交互になるように4行4列に配置されている。また、前方の保持部材は、後方の保持部材に保持される半導体レーザ装置のキャップの一部が挿入され且つその半導体レーザ装置からの光を通過させるための貫通穴(窓部)を8つ有する。この貫通穴は、前方(上方)側の直径5.3mm、長さ(深さ)3.5mmの幅狭部と、後方(下方)側の直径7.5mmの幅広部と、からなっている。
【0060】
半導体レーザ装置は、ステムに、半導体レーザ素子が実装され、並びに光学部品を保持したキャップが固定されて、構成されている。ステムは、それぞれ銅合金の母材の表面に金の鍍金が施された、ブロック状の素子実装部と、2本のリード端子と、直径9mm、厚さ1.5mmの円盤状のベース部と、を有する。ステムの素子実装部には、窒化アルミニウム基板の上面及び下面に金-錫系の共晶半田(第2の接着部材;軟化-固化させる前の軟化点は約305℃)を有するサブマウントを介して、発光中心波長455nm、定格出力3Wの窒化物半導体レーザ素子が接着されている。キャップは、ステンレス製で直径6.85mmの円筒状の部材であって、その下端の鍔状部がステムのベース部の上面に溶接されている。キャップの上部には、NAが0.5のBK7製のコリメータレンズである光学部品が圧入により固定されている。なお、ステムのベース部の側面には、上面から下面に貫通する、上面視で略三角形状の窪み(切り欠き)が設けられている。
【0061】
そして、2つの保持部材の各凹部には、上述の半導体レーザ装置のステムのベース部が収容されており、半導体レーザ装置のベース部の下面及び側面と、それに各々対向する凹部の底面及び側面と、が、その間に介在する第1の接着部材により接着されている。また、第1の接着部材は、ステムのベース部の側面の窪みにも入り込んでいる。なお、第1の接着部材は、錫-ビスマス系の半田(軟化-固化させる前の軟化点は約170℃)である。
【0062】
放熱部材は、重ねられた2つの保持部材を、前方と後方から挟むように、2つ設けられている。2つの放熱部材はそれぞれ、アルミニウム合金製で、外側に突出する板状のフィンが配列して設けられた放熱板であって、保持部材にネジで固定されている。なお、前方の放熱部材の中央部は、フィンがなく、各半導体レーザ装置からの光を装置外部に出射するための16の円形開口の貫通穴が設けられている。また、そのうちの半分の貫通穴には、前方の保持部材に保持される半導体レーザ装置のキャップの一部が挿入されている。
【0063】
以上のような光源装置においては、半導体レーザ装置は、保持部材に固着され、容易に取り外すことができない。また、光源装置を長時間駆動させても、半導体レーザ装置の温度上昇を抑え、安定した光出力及び光軸などの光学特性を維持することができる。