特許第6019775号(P6019775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019775
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】調光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/19 20060101AFI20161020BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G02F1/19
   G02B5/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-129288(P2012-129288)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-254079(P2013-254079A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 靖
(72)【発明者】
【氏名】森下 芳伊
(72)【発明者】
【氏名】東田 修
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−028306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15−1/19
G02F 1/13
G02F 1/1334
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂マトリックス、及び前記樹脂マトリックス中に分散し且つ光調整粒子を含有する光調整懸濁液を含む調光層と、
前記調光層の光入射方向の上流及び下流側の少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光透過層と、
を含み、前記光透過層全体としての光透過率が、350nm〜450nmの波長域において60%以下であり、
前記光調整粒子が、ポリヨウ化物を含む調光装置。
【請求項2】
前記光透過層が、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下である色調調整層を含む請求項1記載の調光装置。
【請求項3】
前記光透過層が、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下である樹脂フィルムを含む請求項1又は請求項2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記光透過層が、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下であるガラスを含む請求項1〜請求項のいずれか1項記載の調光装置。
【請求項5】
前記調光層と前記光透過層とを含む積層体を、減圧下で一体化することを含む請求項1〜請求項のいずれか1項記載の調光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界を印加していない状態では、懸濁液中に分散されている光調整粒子のブラウン運動により、入射光の大部分が光調整粒子により反射、散乱又は吸収され、ごく一部分だけが透過し、一方、電界を印加した状態では、光調整粒子が分極を起こし、電場に対して平行に配列され、光調整粒子と光調整粒子の間を光が透過するライトバルブすなわち調光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ロバート・エル・サックス(Robert.L.Saxe)らは、実用上の使用が可能な調光フィルムを提案している(例えば、特許文献2、3参照)
上記文献に記載の光調整粒子を光調整に用いる調光フィルムは、調光層の反射光及び透過光の波長ピークが350nm〜450nmにあるために外観上、濃紺色を呈している。例えば、この調光フィルムを複数のガラス板の間に介在させて接着一体化した合わせガラス(調光ガラス)を製造した場合、この調光ガラスも同じく濃紺色となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第1,955,923号明細書
【特許文献2】米国特許第6,114,405号明細書
【特許文献3】米国特許第6,900,923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この調光ガラスを、例えば住居窓や室内間仕切り、もしくは自動車用窓ガラスに用いた場合、調光ガラスを通して外光が差し込むことになるため、自然光が差し込む場合と比較して自然な色合いが得られない。
即ち、電界を印加していない状態(遮光時)では、光調整粒子の光吸収波長に応じた濃紺色の透過光が差し込むことになるため、室内もしくは車内の色調が変化し、内装材などの色調の調和が維持されない場合があった。
【0005】
従って、本発明は、遮光時において色調バランスが良好な調光装置を提供することに目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
[1] 樹脂マトリックス、及び前記樹脂マトリックス中に分散し且つ光調整粒子を含有する光調整懸濁液を含む調光層と、前記調光層の光入射方向の上流及び下流側の少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光透過層と、を含み、前記光透過層全体としての光透過率が、350nm〜450nmの波長域において60%以下である調光装置。
[2] 前記光調整粒子が、ポリヨウ化物を含む[1]に記載の調光装置
[3] 前記光透過層が、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下である色調調整層を含む[1]又は[2]に記載の調光装置。
[4] 前記光透過層が、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下である樹脂フィルムを含む[1]〜[3]のいずれかに記載の調光装置。
[5] 前記光透過層が、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下であるガラスを含む[1]〜[4]のいずれかに記載の調光装置
[6] 前記調光層と前記光透過層とを含む積層体を、減圧下で一体化することを含む[1]〜[5]のいずれかに記載の調光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遮光時おいて色調バランスが良好な調光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明にかかる調光装置の概略断面図である。
図2】本発明にかかる他の調光装置の概略断面図である。
図3】本発明にかかる他の調光装置の概略断面図である。
図4】(A)及び(B)は、本発明にかかる調光装置の製造方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかる調光装置は、樹脂マトリックス、及び前記樹脂マトリックス中に分散し且つ光調整粒子を含有する光調整懸濁液を含む調光層と、前記調光層の光入射方向の上流及び下流側の少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光透過層と、を含み、前記光透過層全体としての光透過率が、350nm〜450nmの波長域において60%以下である調光装置である。
本発明にかかる調光装置は、調光層以外の光透過層の全体としての光透過率が、350nm〜450nmの波長域において60%以下であるため、前記調光層を備えた調光装置全体の透過光の反射率(吸収率)が、可視光領域において均質化する。この結果、遮光時に、調光装置を通過する可視光域の透過光が無彩色に近くなる。これにより、遮光時に、良好な色調バランスの透過光が得られる。
【0010】
また、本発明にかかる調光装置の製造方法は、前記調光層と前記光透過層とを含む積層体を、減圧下で一体化することを含む。これにより、各層間に例えば気泡等が介在することがなく、各層間の密着性をより向上させて、透過光のムラの発生を抑制し、耐久性に優れた調光装置を提供することができる。
【0011】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0012】
[調光装置]
本発明にかかる調光装置は、樹脂マトリックス、及び前記樹脂マトリックス中に分散し且つ光調整粒子を含有する光調整懸濁液を含む調光層と、前記調光層の光入射方向の上流及び下流側の少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光透過層と、を含み、前記光透過層全体としての光透過率が、350nm〜450nmの波長域において60%以下である調光装置である。
【0013】
前記光透過層の全体としての350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%を超えると、調光装置の透過光の可視光全体における光透過率が均質化されず、透過光の色調バランスが損なわれる。光透過層の全体としての光透過率が350nm〜450nmの波長域で上述した範囲内であれば、前記調光装置の可視領域の透過光が、所謂グレー又は黒に近い無彩色の色調に近くなり、色調バランスがより良好になる傾向がある。
【0014】
ここで光透過層の全体としての光透過率とは、前記調光装置に含まれる光透過層すべてを、前記調光装置の光入射方向に積層して組み合わせたときの光透過率を意味する。
また、本発明における光透過層の光透過率は、自記分光光度計U−3410((株)日立製作所製)により測定した光透過率とする。
【0015】
前記光透過率が60%以下となる350nm〜450nmの波長域は、350nm〜450nmの全波長域としてもよく、350nm〜450nmの一部の波長域であってもよい。350nm〜450nmの全波長域の光透過率を上記範囲とすることによって、前記調光装置全体の透過光について、より広範囲の波長の光を均質化することができる。また、350nm〜450nmの一部の波長域の光透過率を上記範囲とすることにより、より効率よく前記調光装置の透過光の均質化を図ることができる。前記光透過率となる波長域を350nm〜450nmの一部の波長域とする場合には、得られる透過光の色調バランスの観点から、少なくとも380nm〜450nmの波長域が前述した光透過率の範囲内となること好ましく、少なくとも400nm〜450nmの波長域が前述した光透過率の範囲内となること好ましい。
【0016】
遮光時における透過光の光透過率の均質化は、国際照明委員会が定めた赤、青、緑の各中心波長700nm(赤)、546.1nm(緑)、435.8nm(青)の光透過率の差により評価することができる。前記調光装置における透過光は、赤、青、緑の各中心波長700nm(赤)、546.1nm(緑)、及び435.8nm(青)の3点の光透過率の差が、+5%〜−5%以内の範囲内であることが好ましく、+3%〜−3%以内の範囲内であることがより好ましく、+1%〜−1%の範囲内であることがより好ましい。このような3点の中心波長の光透過率の差がこれらの範囲内となることにより、色調バランスがより良好な透過光となる。
【0017】
本発明の調光装置は、前記調光装置に含まれる光透過層の少なくとも1つについて光透過率を制御することにより、前記光透過層全体としての光透過率を、350nm〜450nmの波長域において60%以下とすることができる。前記光透過層全体の光透過率としては、色調バランスの観点から1%以上60%以下が好ましく、10%以上50%以下がより好ましく、15%以上40%以下が特に好ましい。
【0018】
前記調光装置に含まれる光透過層は、入射光のうち350nm〜450nmの波長域の光を部分的に吸収又は反射する少なくとも1つの色調調整層を含むことが好ましい。前記色調調整層を含むことにより、可視光領域のうち350nm〜450nmの波長域の光透過率のみを所定の範囲内に調整し、前記調光装置の光透過率を簡便に制御することができる。
【0019】
<色調調整層>
前記色調調整層としては、前記調光層の入射光上流側及び下流側のいずれか、又は双方に配置可能であり、前記調光装置における前記色調調整層の位置は、前記調光装置の層構成によって適宜選択可能である。また、前記色調調整層は、前記調光装置内に単数又は複数備えることができる。
【0020】
前記色調調整層は、入射光のうち350nm〜450nmの波長域の光を部分的に吸収又は反射することにより、前記調光装置の透過光の波長350nm〜450nmにおける光透過率を、60%以下とすることができる。「部分的に吸収又は反射する」とは、入射光の350nm〜450nmの波長域の光の一部を吸収又は反射させることにより、色調が調整された光を透過させることを意味する。
【0021】
前記色調調整層は、波長350nm〜450nmにおける光の光透過率が60%以下の層であることが好ましく、1%以上60%以下であることがより好ましく、10%以上50%以下であることが更に好ましく、15%以上40%以下であることが特に好ましい。色調調整層の光透過率がこの範囲内であれば、前記調光装置全体の透過光を、所謂グレー又は黒に近い無彩色の色調により近くすることができ、色調バランスがより良好な透過光を得ることができる。
【0022】
前記色調調整層を複数備える場合には、個々の色調調整層が、60%以下の350nm〜450nmの波長域における光透過率を備えるものであってもよく、これらの総和として、上記光透過率となるものであってもよい。
例えば、複数の色調調整層を有する場合、一部の色調調整層が、350nm〜450nmの波長域の一部の波長域における光透過率を上記の範囲内とし、他の色調調整層が350nm〜450nmの波長域中の他の波長域における光透過率を上記の範囲内とする形態、全ての色調調整層が350nm〜450nmの波長域中、同一又は重複する波長域の光透過率を上記の範囲内とする形態、350nm〜450nmの波長域の光透過率が同一又は重複する範囲内で異なる複数の色調調整層が組み合わせて、全体として、350nm〜450nmの波長域の光透過率を上記の範囲内とする形態等とすることができる。これにより、前記光透過層全体としての光透過率を、350nm〜450nmの波長域において60%以下とすることができる。
【0023】
前記色調調整層としては、前記調光層以外の層(例えば、色調調整フィルム)を、前記調光層以外に存在する他の層の代わりに、又は、前記調光層以外に存在する他の層に加えて、前記調光装置に含むことができる。また、前記色調調整層は、前記調光層以外に存在する他の層に、入射光のうち波長350nm〜450nmの波長域の光を吸収又は反射する機能、好ましくは、入射光のうち波長350nm〜450nmの波長域の光を吸収し、且つ波長350nm〜450nmにおける光の光透過率を60%以下とする機能を付加させたものとすることができる。
前記色調調整層としての機能を付加可能な他の層としては、例えば、後述する調光フィルムにおける導電性樹脂基材、プライマー層、中間膜等を挙げることができる。
【0024】
前記色調調整層としては、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下である樹脂フィルム(以下、色調調整フィルム)、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下であるガラス(以下、色調調整ガラス)等を挙げることができる。
【0025】
前記色調調整フィルムとしては、波長350nm〜450nmの光透過率が60%以下となるように染色されたポリエステルフィルムを挙げることができ、例えば、色温度変換フィルタAシリーズ(株式会社東京舞台照明製)やポリカラー(株式会社東京舞台照明製)、色補正フィルタCC−Yフィルタ(富士フィルム株式会社)などを用いることができる。
前記色調調整フィルムの厚みは、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下であれば特に制限されない。
【0026】
前記色調調整ガラスとしては、例えば、ガラス板、有機ガラス板等を挙げることができる。有機ガラス板としては、アクリル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板等を挙げることができる。
ガラス板及び有機ガラス板等を前記色調調整ガラスとするには、例えば、波長350nm〜450nmの波長域の光を吸収可能な光吸収物質をガラス成分に含有させる等を行えばよい。
前記色調調整ガラスの厚みは、350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下であれば特に制限されない
【0027】
なお、前記色調調整層としての色調調整フィルム及び/又は色調調整ガラスが複数存在する場合には、これらの全体として350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下とすることができる。また、前記色調調整フィルム及び色調調整ガラスを併用してもよい。
【0028】
<<調光フィルム>>
前記調光装置における前記調光層は、2つの導電性樹脂基材に挟持されて、調光フィルムとして前記調光装置に含まれていることが好ましい。前記調光装置において、2つの導電性基材とその間に挟持された調光層とは、これらを一体として調光フィルムと称する。
<調光層>
前記調光層は、樹脂マトリックスと該樹脂マトリックス中に分散し且つ光調整粒子を含有する光調整懸濁液と、必要に応じてその他の成分を含む調光材料を用いて形成される。なお、樹脂マトリックスは、高分子媒体から形成される。光調整懸濁液は、流動可能な状態で分散媒中に分散した光調整粒子を含む。高分子媒体及び分散媒(光調整懸濁液中の分散媒)としては、高分子媒体及びその硬化物と分散媒とが、少なくともフィルム化したときに互いに相分離しうるものを用いる。互いに非相溶又は部分相溶性の高分子媒体と分散媒とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0029】
前記高分子媒体は、エネルギー線照射により硬化可能な高分子媒体の少なくとも1種を含む。エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線により硬化する高分子化合物、及び光重合開始剤を含む高分子組成物が挙げられる。
【0030】
前記高分子組成物としては、例えば、(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂及び(B)光重合開始剤を含む高分子組成物が挙げられる。(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が合成容易性、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
これらの樹脂は、置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基をさらに有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
【0031】
シリコーン系樹脂として、具体的には、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報等に記載の高分子化合物を挙げることができる。
前記シリコーン系樹脂は、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物等を、2−エチルヘキサン錫等の有機錫系触媒の存在下で、脱水縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。
【0032】
シリコーン系樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましい。すなわち、樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。
シリコーン系樹脂の調製における(3−アクリロキシプロピル)メトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物の使用量は、原料シロキサン及びシラン化合物総量の2質量%〜30質量%とすることが好ましく、5質量%〜18質量%とすることがより好ましい。
【0033】
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン等の主鎖形成モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和結合導入用官能基含有モノマー等を共重合して、プレポリマーを一旦合成する。次いで、このプレポリマーのエチレン性不飽和基導入用官能基に応じて選択されるエチレン性不飽和基含有モノマーを前記プレポリマーに付加反応させることにより得ることができる。
前記エチレン性不飽和基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
また、前記ポリエステル樹脂は、特に制限はなく、公知の方法で容易に製造できるものが挙げられる。
【0034】
これら(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって得られるポリスチレン換算の重量平均分子量は、20,000〜100,000であることが好ましく、30,000〜80,000であることがより好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂のエチレン性不飽和結合濃度は、好ましくは0.3モル/kg〜0.5モル/kgとされる。この濃度が0.3モル/kg以上の場合、調光フィルム端部の処理が容易に行うことができ、相対する透明電極間がショートしにくくなり、電気的信頼性が高まる傾向がある。一方この濃度が0.5モル/kg以下の場合、硬化した高分子媒体が、光調整懸濁液の液滴を構成する分散媒に溶け込み難くなり、調光性能の低下を招きにくくなる傾向がある。
(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂のエチレン性不飽和結合濃度は、NMRの水素の積分強度比から求められる。また、仕込み原料の樹脂への転化率がわかる場合は、計算によっても求められる。
【0035】
前記調光材料が高分子媒体として、前記エチレン性不飽和基を有する置換基を持つ高分子化合物を含む場合、エネルギー線に露光するとラジカル重合を活性化する光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
(B)光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始し得るものであればよい。具体的には、光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン等を挙げることができる。
(B)光重合開始剤の使用量は、上記の(A)樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
【0036】
また、上記の(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を有する高分子化合物に加えて、エチレン性不飽和結合を持たない有機溶剤可溶型樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも1種を含んでもよい。具体的には例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜100,000のポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等も高分子媒体の構成材料として併用することができる。
また、高分子媒体中には、ジブチル錫ジラウレート等の着色防止剤等の添加物を必要に応じて添加してもよい。さらに、高分子媒体には、必要に応じて溶剤が含まれていてもよく、溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。
【0037】
(光調整懸濁液)
本発明における光調整懸濁液は、分散媒と光調整粒子とを含む。
(分散媒)
光調整懸濁液中の分散媒としては、上記高分子媒体及びその硬化物である樹脂マトリックスと相分離するものが用いられる。好ましくは、光調整粒子を流動可能な状態で分散させる役割を果たし、また、光調整粒子に選択的に付着被覆し、高分子媒体との相分離の際に光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用する分散媒が好ましい。また、導電性がなく、高分子媒体とは親和性がなく、調光フィルムとした際に高分子媒体から形成される樹脂マトリックスとの屈折率が近似した分散媒が好ましい。このような性質を有する分散媒として、液状共重合体を使用する。
【0038】
分散媒としては、例えば、フルオロ基及び水酸基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような共重合体を使用すると、フルオロ基、水酸基のどちらか1つを有する構成単位は光調整粒子に親和性があり、残りの構成単位は高分子媒体中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持するために働くことから、光調整懸濁液内に光調整粒子が分散しやすく、相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に誘導されやすい。
【0039】
このようなフルオロ基及び水酸基の少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシプロピル/フマル酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、フルオロ基及び水酸基の両方を有することがより好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。
【0040】
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となるフルオロ基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総量の6モル%〜12モル%であることが好ましく、より効果的には7モル%〜8モル%である。フルオロ基含有モノマーの使用量が12モル%以下の場合には、屈折率の上昇が抑えられ、光透過率に優れる傾向がある。
【0041】
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となる、水酸基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総質量の0.5モル%〜22.0モル%であることが好ましく、より効果的には1モル%〜8モル%である。水酸基含有モノマーの使用量が22.0モル%以下の場合には、屈折率の上昇が抑えられ、光透過率に優れる傾向がある。
分散媒の屈折率は、前記高分子媒体から形成される樹脂マトリックスの屈折率と近似していることが好ましい。分散媒の屈折率は、具体的には、1.467〜1.477であることが好ましく、1.469〜1.475であることがより好ましく、1.470〜1.474であることが更に好ましい。
【0042】
(光調整粒子)
ピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、ピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群の中から選ばれた少なくとも1つの物質とヨウ素とヨウ化物とを反応させて作ったポリヨウ化物が好ましい。
光調整粒子は、高分子媒体、又は高分子媒体中の樹脂成分(即ち上記の(A)(メタ)アクリロイル基を有する置換基をもつ樹脂等と親和力がなく、また光調整粒子の分散性を高めることができる高分子分散剤の存在下で調製される。
使用し得る高分子分散剤としては、例えば、ニトロセルロース等が挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。
【0043】
このようにして得られるポリヨウ化物としては、例えば、下記一般式
CaI(C)・xHO (x:1〜2)
CaI(C・cHO (a:3〜7、b:1〜2、c:1〜3)
で表されるものが挙げられる。これらのポリヨウ化物は針状結晶であることがより好ましい。
【0044】
また、調光フィルム用光調整懸濁液に用いる光調整粒子として、米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書に開示されている光調整粒子も、使用することができる。これらの特許によって公知とされたポリヨウ化物の結晶は、ピラジンカルボン酸、又はピリジンカルボン酸の1つを選択して、ヨウ素、塩素又は臭素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
【0045】
サックスが開示しているように、光調整粒子を合成する過程において、均一な大きさの光調整粒子を形成させるため、及び、特定の懸濁媒体内での光調整粒子の分散性を向上させるため、上述したように高分子分散剤としてニトロセルロースのような高分子物質を使用することが好ましい。しかしながら、ニトロセルロースを用いると、ニトロセルロースで被覆された結晶が得られ、このような結晶を光調整粒子として用いる場合、光調整粒子は相分離の時に分離される液滴内に浮遊せず、樹脂マトリックス内に残存することがある。これを防ぐためには、高分子媒体の(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂として、エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つシリコーン系樹脂を用いることが好ましく(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系樹脂を用いることが好ましい。
シリコーン系樹脂を用いた場合には、フィルム製造の際に光調整粒子が相分離により形成された微細な液滴内へ容易に分散、浮遊し、その結果、より優れた可変能力を得ることができる。
【0046】
上記の光調整粒子の他、例えば、炭素繊維等の無機繊維、τ型無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン等のフタロシアニン化合物等を使用することもできる。フタロシアニン化合物において、中心金属としては、銅、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、チタン、ベリリウム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、クロム等が挙げられる。
【0047】
前記光調整粒子の大きさは1μm以下であることが好ましく、0.1μm〜1μmであることがより好ましく、0.1μm〜0.5μmであることがさらに好ましい。光調整粒子の大きさが1μm以下であれば、光散乱が生じたり、電界が印加された場合に光調整懸濁液中での配向運動が低下する等、透明性が低下する問題の発生を抑制できる傾向がある。なお、光調整粒子の大きさは、サブミクロン粒子アナライザ(例えば、N4MD(ベックマン・コールタ社製)で測定した光子相関分光分析法による体積平均粒径の値とする。
【0048】
本発明における光調整粒子は、光調整懸濁液の全質量中に、1質量%〜15質量%含有することが好ましく、2質量%〜10質量%含有することがより好ましい。1質量%以上の場合には、調光フィルムとした際の遮光効果が大きくなり好適である。また、15質量%以下の場合には、調光フィルム製造の際に、エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂のエネルギー線による硬化の阻害が抑えられる。
【0049】
また前記光調整粒子の光調整懸濁液の全質量における含有率は、後述する色調調整層における波長350nm〜450nmの波長域における光透過率に応じて、適宜調整することが好ましい。即ち、色調調整層における波長350nm〜450nmの波長域における光透過率と同程度の光透過率となるように光調整粒子の含有率を調整することにより、前記調光装置全体における可視領域全体の光透過率をより均質化することができる。例えば、後述する色調調整層における波長350nm〜450nmの波長域における光透過率を10%程度高くする場合には、光調整粒子の光調整懸濁液全質量における含有率を2質量%〜3質量%少なくすることができる。
【0050】
また、本発明における分散媒は、光調整懸濁液の全質量中に、30質量%〜99質量%含有することが好ましく、50質量%〜96質量%含有することがより好ましい。30質量%以上の場合にはエチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂の硬化の阻害が抑制される傾向があり、一方、99質量%以下の場合には、遮光効果が大きくなる傾向がある。
【0051】
また、前記調光材料は、光調整懸濁液を、高分子媒体100質量部に対して、1質量部〜100質量部含有することが好ましく、好ましくは6質量部〜70質量部含有することがより好ましく、6質量部〜60質量部含有することがさらに好ましく、8質量部〜50質量部含有することが特に好ましい。光調整懸濁液の含有量が1質量%以上の場合には、遮光効果に優れ、100質量部以下の場合にはエチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂の硬化の阻害が抑えられる。
【0052】
本発明における高分子媒体の屈折率と分散媒の屈折率は近似していることが好ましい。具体的には、本発明における高分子媒体と分散媒との屈折率の差は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下である。高分子媒体の屈折率と分散媒の屈折率との差が0.005以下の場合には、調光フィルムの濁度が低くなり、透明性に優れた調光フィルムとなる。
【0053】
<導電性樹脂基材>
本発明による導電性樹脂基材としては、一般的に、透明樹脂基材に、光透過率が80%以上の透明導電膜(ITO、SnO、In、有機導電膜等の膜)がコーティングされている表面抵抗値が3Ω/□〜3000Ω/□の導電性樹脂基材を使用することができる。
透明樹脂基材の光透過率はJIS K7105の全光線光透過率の測定法に準拠して測定することができる。また、透明樹脂基材としては、例えば、高分子フィルム等を使用することができる。
【0054】
上記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム,ポリエーテルサルフォンフィルム,ポリアリレートフィルム,ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
【0055】
透明樹脂基材にコーティングされる透明導電膜の厚みは、10nm〜5,000nmであることが好ましい。透明樹脂基材の厚みは特に制限はない。例えば、高分子フィルムの場合には10μm〜200μmが好ましい。
【0056】
前記調光層を挟持する2枚の透明樹脂基材間の間隔が狭い場合には、透明導電膜の上に数nm〜1μm程度の厚さの透明絶縁層が形成されている透明樹脂導電性基材を使用してもよい。これにより、異物質の混入等により発生する短絡現象が防止可能となる。また、前記調光フィルムを反射型の調光窓に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー等)は、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
【0057】
<プライマー層>
前記調光フィルムは、調光層との密着性を向上させるためのプライマー層を有する2枚の導電性樹脂基材に挟持されているか、あるいはプライマー層を有する導電性樹脂基材とプライマー層を有さない導電性樹脂基材の2枚の導電性樹脂基材に挟持されていてもよい。
【0058】
前記プライマー層は、ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタンアクリレートを含有する材料、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する材料、金属酸化物微粒子を有機バインダー樹脂に分散させた材料、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル、アミノ基を有するシランカップリング剤等からなる薄膜で形成されるのが好ましい。必要に応じて、硬化処理を行ってもよい。
【0059】
本発明における導電性樹脂基材のプライマー処理(プライマー層の形成)は、例えば、プライマー層を形成する材料を、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独又は組み合わせて用いて、導電性樹脂基材に塗布することにより行うことができる。
【0060】
なお、塗布する際は必要に応じて適当な溶剤で希釈し、プライマー層を形成する材料の溶液を用いてもよい。溶剤を用いた場合には、導電性樹脂基材上に塗布した後乾燥を要する。尚、プライマー層となる塗膜は必要に応じて導電性樹脂基材の片面のみ(透明導電膜側)に形成してもよいし、含浸法やディップコート法によって両面に形成してもよい。
【0061】
プライマー層形成に用いる溶剤としては、プライマー層を形成する材料を溶解あるいは分散し、プライマー層形成後に乾燥等により除去できるものであればよく、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコール、ジメチルジグリコール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができ、これらの混合溶媒でもよい。
【0062】
<調光フィルムの作製方法>
調光フィルムを得るためには、まず、液状の光調整懸濁液を、高分子媒体と均質に混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液からなる調光材料を調製する。
具体的には、以下のようにして調光材料を調製する。光調整粒子を溶媒に分散した液と光調整懸濁液の分散媒を混合し、ロータリーエバポレーター等で溶媒を留去し、光調整懸濁液を作製する。
次いで、光調整懸濁液及び高分子媒体を混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液(調光材料)とする。調光材料は、前記高分子媒体100質量部に対して、前記光調整懸濁液を通常1質量部〜100質量部、好ましくは6質量部〜70質量部、より好ましくは6質量部〜60質量部含有する。
【0063】
この調光材料を、前記導電性樹脂基材の透明導電層上に一定の厚さで塗布し、塗布層を形成する。調光材料の塗布には、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工手段を用いることができる。
【0064】
前記調光材料は、プライマー層が存在する場合には、導電性樹脂基材上に設けたプライマー層面に塗布してもよく、又は、一方にプライマー層を有さない導電性樹脂基材を用いる場合には、基材に直接塗布することもできる。なお、塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、導電性樹脂基材上に塗布した後に乾燥することが好ましい。
【0065】
調光材料の塗布に用いる溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。液状の光調整懸濁液が、固体の樹脂マトリックス中に微細な液滴形態で分散されている調光層を形成するためには、調光材料をホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合して高分子媒体中に光調整懸濁液を微細に分散させる方法、高分子媒体中の樹脂成分の重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用することができる。
【0066】
調光材料を塗布した後、又は必要に応じて調光材料に含有される溶剤を乾燥除去した後、高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射し高分子媒体を硬化させる。その結果、硬化した高分子媒体からなる樹脂マトリックス中に、光調整懸濁液が液滴状に分散されている調光層が形成される。高分子媒体と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、調光層の光透過率を調節することができる。
【0067】
樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、通常0.5μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜20μm、より好ましく、1μm〜5μmである。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及び高分子媒体の粘度、光調整懸濁液中の分散媒の高分子媒体に対する相溶性等により決められる。
【0068】
平均液滴径は、例えば、SEMを用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出することができる。また、調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。
【0069】
このようにして形成された調光層の上に、もう一方の導電性樹脂基材を密着させることにより、調光フィルムが得られる。
【0070】
また、前記調光材料は、基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて調光材料中の溶剤を乾燥除去した後、もう一方の導電層を有する導電性樹脂基材でラミネートした後に紫外線を照射し、高分子媒体を硬化させてもよい。
更には、2枚の導電性樹脂基材の両方の透明導電層上に調光層を形成し、その調光層同士が密着するようにして積層してもよい。プライマー層が存在する場合には、調光材料を、プライマー層を設けた導電性樹脂基材上に塗布した塗布してラミネートして製造することもできる。
前記調光層の厚みは、5μm〜1,000μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましい。
【0071】
<調光フィルムによる調光>
前記調光フィルムは、電場の形成により任意に光透過率を調節できる。前記調光フィルムは、電界が印加されていないときには、光調整懸濁液内の光調整粒子のブラウン運動のため、光調整粒子の光吸収、2色性効果による鮮明な着色状態を示す。一方、電界が印加されると、液滴の中の光調整粒子が電場に平行に配列され、透明な状態に転換される。
【0072】
調光フィルムを作動させるための使用電源は交流で、10ボルト〜100ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。本発明における調光フィルムは、電界に対する応答時間を、消色時には1秒〜50秒以内、着色時には1秒〜100秒以内とすることができる。
【0073】
また、紫外線耐久性は、750W紫外線等を利用した紫外線照射試験の結果、250時間が経過した後にも安定な可変特性を示し、−50℃〜90℃で長時間放置した場合にも、初期の可変特性を維持することが可能である。
【0074】
<中間膜>
前記調光装置は、調光装置を構成する各層の接着などを目的として、中間膜を備えてもよい。中間膜としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系中間膜やポリビニルブチラール(PVB)中間膜などを用いることができる。EVA系中間膜としては、S−LEC EN UT(積水化学工業株式会社製)、メルセンG−7055などを用いることができる。PVB中間膜としては、TROSIFOL SOLOR((株)クラレ)、S−LEC CLEAR Film(積水化学工業株式会社製)などを用いることができる。なお、この中間膜の厚さは取り扱い性、加工性、接着性等の面から250μm〜400μm程度であることが好ましい。
【0075】
<調光装置の構造>
前記調光装置は、上述した各層を積層した構造を有する。
図1には、本発明の調光装置の一実施形態にかかる調光装置10の概略断面図が示されている。
調光装置10は、高分子媒体から形成された樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とからなる調光材料を、導電層を有する2枚の導電性樹脂基材に挟持した調光フィルム1と、色調調整層としてのフィルタ材料3a、3bを備えており、調光フィルム1の入射光上流側から、ガラス4a、中間膜2c、色調調整層としてのフィルタ材料3a、中間膜2a、調光フィルム1、中間膜2b、色調調整層としてのフィルタ材料3a、中間膜2d、及びガラス4bがこの順で積層されて、調光装置10を構成している。
フィルタ材料3a、3bは、それぞれ350nm〜450nmの波長域における光透過率が60%以下である。これら2枚を含む調光装置10を透過した光の350nm〜450nmの波長域における光透過率は60%以下となる。
【0076】
調光装置10に、図1上方より光が入射すると、ガラス4a、中間膜2c、フィルタ材料3aの順に光が入射する。フィルタ材料3aに光が入射すると、フィルタ材料3aによって350nm〜450nmの波長域の光が吸収され、光の色調が調整される。色調が調整された光は、その後、調光フィルム1に入射する。調光フィルム1は、電界の印加状態に応じて光を透過する。調光フィルム1を透過した光は、中間膜2bを介してフィルタ材料3bに入射する。フィルタ材料3bに入射した光は、波長350nm〜450nmの波長域について再度吸収されて、光の色調が調整されてフィルタ材料3bを透過する。色調調整された光は、その後、中間膜2d及びガラス4bに介して、調光装置10を透過する。
この結果、調光装置10の光透過率は、遮光時に、350nm〜450nmの波長域について60%以下となる。このような調光装置10を透過した光の色調バランスが良好となる。調光装置10を透過した光は、好ましくは、遮光時に、赤、青、緑の各中心波長700nm(赤)、546.1nm(緑)、及び435.8nm(青)の3点の光透過率の差が+5%〜−5%以内の範囲内の光となる。
【0077】
また、図2には、本発明の他の実施形態にかかる調光装置20の概略断面図が示されている。調光装置20は、色調調整層としてフィルタ材料3cのみを備えている。なお図2において、調光装置10と同一機能を有する部材には同一符合を付して、説明を省略する。
フィルタ材料3cは、単独で、60%以下の350nm〜450nmの波長域における光透過率を有する。
調光装置20では、調光装置10と同様に光が入射した場合に、フィルタ材料3cに光が透過することにより、350nm〜450nmの波長域における光透過率が調整される。
この結果、調光装置20の光透過率は、遮光時に、350nm〜450nmの波長域について60%以下となる。このような調光装置20を透過した光の色調バランスが良好となる。調光装置20を透過した光は、好ましくは、遮光時に、赤、青、緑の各中心波長700nm(赤)、546.1nm(緑)、及び435.8nm(青)の3点の光透過率の差が+5%〜−5%以内の範囲内の光となる。
【0078】
図3には、本発明の他の実施形態にかかる調光装置30の概略断面図が示されている。調光装置30は、色調調整層として作用可能なガラス板8a、8bを備えている。なお図3において、調光装置10と同一機能を有する部材には同一符合を付して、説明を省略する。
ガラス板8a,8bは、それぞれ、60%以下の350nm〜450nmの波長域における光透過率を有する。
調光装置30では、調光装置10と同様に光が入射した場合に、ガラス板8a,8bに光が透過する際に、波長350nm〜450nmにおける波長域の光の光透過率が調整される。
この結果、調光装置30の光透過率は、遮光時に、350nm〜450nmの波長域について60%以下となる。このような調光装置30を透過した光の色調バランスが良好となる。調光装置30を透過した光は、好ましくは、遮光時に、赤、青、緑の各中心波長700nm(赤)、546.1nm(緑)、及び435.8nm(青)の3点の光透過率の差が+5%〜−5%以内の範囲内の光となる。
【0079】
[調光装置の製造方法]
次に、図面を参照して、調光装置10を例に、本発明の調光装置の製造方法について説明する。
【0080】
図1に示すように、高分子媒体から形成された樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とからなる調光材料を、導電層を有する2枚の導電性樹脂基材に挟持した調光フィルム1の両面に中間膜2a、2bをそれぞれ配して、この中間膜2a、2bの調光フィルムに接していない面の両面にフィルタ材料3a、3bを配し、更にこのフィルタ材料3a、3bに中間膜2c、2dを配したものを2枚のガラス板4a、4cの間に介在させて積層体5とする。
【0081】
その後、図4に示すように、この積層体5を可とう性シートからなる袋6に封入して
図4(A)参照)、袋6内部を真空ポンプで真空吸引して、減圧状態で所定時間保持して真空バッグ封入体7(図4(B)参照)の形態とする。その後、この真空バッグ封入体7を、加熱・冷却して調光装置(調光ガラス)を得る。
真空バッグ封入体7を得るための減圧条件としては、減圧度を0.5kPa〜50kPaとすることが好ましく、1kPa〜10kPaとすることがより好ましい。0.5kPa以上であれば、良好な生産性が得られる傾向があり、50kPa以下であれば各構成層がより均一に積層が調光装置が得られるとなる傾向がある。
加熱条件としては、通常の条件であればよく、例えば、80℃〜120℃とすることができる。
【0082】
前記調光装置の製造方法に使用可能な、真空バッグ用の可とう性シートからなる袋6としては、真空吸引により容易に弾性変形し、袋内部の減圧度が均一となるような軟質な材料であって、加熱処理時に熱による変質が生じず、繰り返し使用できるものであれば良く、一般的には例えばクロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ブチルゴム当のゴムシートや、Al/ナイロン、Al/PET、ポリプロピレン(PP)/6−ナイロン、PP/ポリエステル等のプラスチック積層フィルム等よりなる、厚さ0.1mm〜0.2mm程度のものを用いることができる。
【0083】
本発明にかかる調光装置は、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業および映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告および案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。これらの各用途において、遮光時に、色調が良好に調整されて、色調バランスのよい透過光を得ることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
【0085】
(光調整粒子の製造例)
光調整粒子を製造するために、撹拌機及び冷却管を装着した500mlの四つ口フラスコに、ニトロセルロース1/4LIG(商品名、ベルジュラックNC社製)15質量%の酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)希釈溶液87.54g、酢酸イソアミル44.96g、脱水CaI(化学用、和光純薬工業(株)製)4.5g、無水エタノール(有機合成用、和光純薬工業(株)製)2.0g、精製水(精製水、和光純薬工業(株)製)0.6gの溶液に、ヨウ素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)4.5gを溶解し、光調整粒子の基盤形成物質であるピラジン−2,5−ジカルボン酸2水和物(PolyCarbon Industries製)3gを添加した。45℃で3時間撹拌して反応を終了させた後、超音波分散機で2時間分散させた。このとき、混合液の色相は、茶色から暗紺色に変化した。
【0086】
次に、反応溶液から一定な大きさの光調整粒子を取り出すために、遠心分離機を用いて光調整粒子を分離した。反応溶液を750Gの速度で10分間遠心分離して沈殿物を取り除き、更に7390Gで2時間遠心分離して、浮遊物を取り除き、沈殿物粒子を回収した。この沈殿物粒子は、サブミクロン粒子アナライザ(製品名:N4MD、ベックマン・コールタ社製)で測定した平均粒径が0.36μmを有する針状結晶であった。この沈殿物粒子を光調整粒子とした。
【0087】
(光調整懸濁液の製造例)
前記の(光調整粒子の製造例)で得た光調整粒子45.5gを、光調整懸濁液の分散媒としてのアクリル酸ブチル(和光特級、和光純薬工業(株)製)/メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(工業用、共栄社化学工業(株)製)/アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光1級、和光純薬工業(株)製)共重合体(モノマーモル比:18/1.5/0.5、重量平均分子量:2,000、屈折率1.4719)50gに加え、撹拌機により30分間混合した。次いで酢酸イソアミルをロータリーエバポレーターで133Paの真空で80℃、3時間減圧除去し、光調整粒子の沈降及び凝集現象のない安定な液状の光調整懸濁液を製造した。
【0088】
(エネルギー線硬化型シリコーン系樹脂の製造例)
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(試薬、チッソ(株)製)17.8g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(試薬、チッソ(株)製)62.2g、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(試薬、チッソ(株)製)20g、2−エチルヘキサン錫(和光純薬工業(株)製)0.1gを仕込み、100℃のヘプタン中で3時間リフラックスし、反応を行った。
【0089】
次いで、トリメチルエトキシシラン(試薬、チッソ(株)製)25gを添加し、2時間リフラックスし、脱アルコール反応させ、ヘプタンをロータリーエバポレーターを用いて100Paの真空で80℃、4時間減圧除去し、重量平均分子量35000、屈折率1.4745のエネルギー線硬化型シリコーン系樹脂を得た。NMRの水素積分比からこの樹脂のエチレン性不飽和結合濃度は、0.31モル/kgであった。なお、エチレン性不飽和結合濃度は下記の方法により測定した。
【0090】
[エチレン性不飽和結合濃度の測定方法]
エチレン性不飽和結合濃度(モル/kg)は、NMRの水素積分比から算出した(エチレン性不飽和結合の水素の6ppm近傍の積分値、フェニル基の水素の7.5ppm近傍の積分値、及びメチル基の水素の0.1ppm近傍の積分値を使用)。測定溶媒はCDClとした。上記で製造した樹脂においては、NMRの水素積分比から算出した質量比率がメチル基:フェニル基:エチレン性不飽和結合基=11:6.4:1、全体の中のエチレン性不飽和結合基の割合は5.4%、各々の分子量から1分子あたりのエチレン性不飽和結合基の数は9.35、よって、1kgあたりのモル数は0.31モル/kgと算出した。
【0091】
(調光材料の製造例)
前記(エネルギー線硬化型シリコーン系樹脂の製造例)で得たエネルギー線硬化型シリコーン系樹脂10g、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製)0.2g、着色防止剤としてのジブチル錫ジラウレート0.3gに、前記(光調整懸濁液の製造例)で得た光調整懸濁液2.5gを添加し、1分間機械的に混合し、調光材料を製造した。
【0092】
(プライマー層付き導電性樹脂基材の製造例)
ITO(インジウム錫の酸化物)透明導電膜(厚み3000nm)がコーティングされている表面電気抵抗値が200〜400Ω/□のPETフィルム(300R、東洋紡績(株)製、厚み125μm)からなる透明導電性樹脂基材の透明導電膜上に、UV硬化型シリコーン樹脂コーティング剤(商品名:AY42−151、東レ・ダウコーニング(株)製)をイソプロピルアルコール:1−メトキシ−2−プロパノール=1:1混合溶剤に1.0質量%となるように溶解した溶液を、マイクログラビア法(メッシュ#150)を用いて、全面塗布した。50℃/30s、60℃/30s、70℃/1minで乾燥後、UV照射1、000mJ/cm(メタルハライドランプ)で光硬化してプライマー層を形成した。なお、AY42−151には光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)が含有されている。瞬間分光光度計F−20(フィルメトリクス(株)製)を用いて測定したプライマー層の厚みは、73nmであった。
【0093】
[実施例1]
導電性樹脂基材の上に、前記調光材料を全面塗布し、次いでもう一方の透明導電性樹脂基材を、導電層が調光材料の塗布層に向くようにして積層して密着させ、メタルハライドランプを用いて3,000mJ/cmの紫外線を、前記積層した透明導電性樹脂基材のポリエステルフィルム側から照射し、厚み315μmの調光フィルムを製造した。調光フィルムは、光調整懸濁液が球形の液滴として紫外線硬化した樹脂マトリックス内に分散形成されたフィルム状の厚み65μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟持されている。この時、調光フィルムの濃紺濃度を低下させる目的で、前記調光材料に含まれる光調整懸濁液における光調整粒子の濃度を3質量%に調整した。
【0094】
得られた調光フィルムを用いて、図1に示す調光装置10(以下、「調光ガラス」という場合がある)を製造した。
中間膜2a、2b、2c、2dにはS−LEC EN UT(厚さ400μm、積水化学工業株式会社製)を用い、フィルタ材料3a、3bには色温度変換フィルタA−3(波長350nm〜450nmにおける光透過率45.9%、株式会社東京舞台照明製)を用い、ガラス板4a、4bは厚さ2mmのフロートガラス(波長350nm〜450nmにおける光透過率88.4%)を用いて、積層体5を得た。
【0095】
上記のパネル構成材料からなる積層体5を可とう性シートからなる袋6(PP/6−ナイロン)に封入して、減圧度3.5kPaとし、この状態のまま15分間保持した後、真空バッグ封入体7を90℃に温度調整された恒温槽(DKM600、ヤマト科学株式会社)に30分間投入し加熱する。その後、恒温槽温度を100℃に変化させて更に15分間加熱した。
【0096】
その結果、得られた調光ガラス10の透過光の350nm〜450nmの波長域における光透過率は、遮光時で1.9%であり、光透過時で13.4%であった。また、調光ガラス10の各波長の光透過率は、遮光時において、波長700nmの光透過率は2.49%、波長546.1nmの光透過率は1.81%、波長435.8nmの光透過率は1.58%であり、黒に近似した調光ガラスであることが確認できた。なお、調光ガラス10の光透過時における透過光の色調バランスは、許容できる範囲であった。
【0097】
[無彩色度合いの判定方法]
本発明における無彩色は、国際照明委員会が定めた赤、青、緑の各中心波長700nm(赤)、546.1nm(緑)、435.8nm(青)の光透過率の差が、+1%〜−1%以内の範囲内であることと定めた。
700nm、546.1nm、435.8nmの各波長の光透過率は、自記分光光度計U−3410((株)日立製作所製)を用いて分光スペクトルを測定して、そのスペクトル上の各波長の光透過率を読み取った。
【0098】
[調光ガラスの光透過率の測定方法]
遮光時及び光透過時における調光ガラス10の350nm〜450nmの波長域における光透過率は、自記分光光度計U−3410((株)日立製作所製)を用いて、350nm〜450nmの全範囲の光透過率として測定した。
【0099】
[実施例2]
使用する調光フィルム及びフィルタ材料が異なる以外は実施例1と同様の調光装置(以下、「調光ガラス」という場合がある)を作製した。
即ち、透明導電性樹脂基材の上に、前記調光材料を全面塗布し、次いでもう一方の透明導電性樹脂基材を、導電層が調光材料の塗布層に向くようにして積層して密着させ、メタルハライドランプを用いて3,000mJ/cmの紫外線を前記積層した透明導電性樹脂基材のポリエステルフィルム側から照射し、厚み345μmの調光フィルムを製造した。この調光フィルムでは、光調整懸濁液が球形の液滴として紫外線硬化した樹脂マトリックス内に分散形成されたフィルム状の厚み95μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟持されている。この時、調光フィルムの濃紺濃度を低下させる目的で、前記調光材料に含まれる光調整懸濁液における光調整粒子の濃度を2質量%に調整した。
【0100】
中間膜にはS−LEC EN UT(厚さ400μm、積水化学工業株式会社製)を用い、フィルタ材料には色温度変換フィルタA−2(波長350nm〜450nmにおける光透過率59.69%、株式会社東京舞台照明製)を用い、ガラス板には厚さ2mmのフロートガラス(波長350nm〜450nmにおける光透過率88.4%)を用いて、積層体を得た。
上記のパネル構成材料からなる積層体を可とう性シートからなる袋(PP/6−ナイロン)に封入して、減圧度3.5kPaとし、この状態のまま15分間保持した後、真空バッグ封入体7を90℃に温度調整された恒温槽に30分間投入し加熱した。その後、恒温槽温度を100℃に変化させて更に15分間加熱した。
【0101】
その結果、得られた調光ガラスの透過光の350nm〜450nmの波長域における光透過率は、遮光時で4.3%であり、光透過時で34.9%であった。また、調光ガラスの各波長の光透過率は、遮光時において、波長700nmの光透過率は7.21%、波長546.1nmの光透過率は7.33%、波長435.8nmの光透過率は8.80%であり、灰色に近似した調光ガラスであることが確認できた。なお、調光ガラス10の光透過時における透過光の色調バランスは、許容できる範囲であった。
【0102】
[比較例1]
フィルタ材料3a、3bを使用しなかった以外は実施例1と同様の調光装置(以下、「調光ガラス」という場合がある)を作製した。
即ち、調光フィルムには実施例1で作製したものを用いた。中間膜にはS−LEC EN UT(厚さ400μm、積水化学工業株式会社製)を用い、ガラス板には厚さ2mmのフロートガラス(波長350nm〜450nmにおける光透過率88.4%)を用いた。
上記のパネル構成材料からなる積層体を可とう性シートからなる袋(PP/6−ナイロン)に封入して、減圧度3.5kPaとし、この状態のまま15分間保持した後、真空バッグ封入体7を90℃に温度調整された恒温槽に30分間投入し加熱する。その後、恒温槽温度を100℃に変化させて更に15分間加熱した。
【0103】
その結果、得られた調光ガラスの透過光の波長350nm〜450nmにおける光透過率は、遮光時で18.25%であり、光透過時で63.44%であった。また、調光ガラスの各波長の光透過率は、遮光時において、波長700nmの光透過率は5.88%、波長546.1nmの光透過率は8.73%、波長435.8nmの光透過率は18.68%であり、濃紺色を呈した調光ガラスであることが確認できた。なお、調光ガラスの光透過時における透過光は、遮光時と同様に、青みがかった透過光であった。
【0104】
[比較例2]
比較例1と同様の構造となるよう調光装置(以下、「調光ガラス」という場合がある)を製造した。
調光フィルムには実施例2で作製したものを用いた。中間膜にはS−LEC EN UT(厚さ400μm、積水化学工業株式会社製)を用い、ガラス板には厚さ2mmのフロートガラスを用いた。
上記のパネル構成材料からなる積層体を可とう性シートからなる袋(PP/6−ナイロン)に封入して、減圧度3.5kPaとし、この状態のまま15分間保持した後、真空バッグ封入体7を90℃に温度調整された恒温槽に30分間投入し加熱する。その後、恒温槽温度を100℃に変化させて更に15分間加熱した。
【0105】
その結果、得られた調光ガラスの透過光の波長350nm〜450nmにおける光透過率は、遮光時で10.60%であり、光透過時で55.98%であった。また、調光ガラスの各波長の光透過率は、遮光時において、波長700nmの光透過率は17.09%、波長546.1nmの光透過率は20.14%、波長435.8nmの光透過率は31.45%であり、紺色を呈した調光ガラスであることが確認できた。なお、調光ガラスの光透過時における透過光は、遮光時と同様に、青みがかった透過光であった。
【0106】
このように本発明によれば、遮光時において色調バランスが良好な調光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 調光フィルム
2a、2b、2c、2d 中間膜
3a、3b フィルタ材料
4a、4b ガラス板
5 積層体
8a,8b ガラス板
10、20、30 調光装置
図1
図2
図3
図4