(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクリル樹脂(A)が、ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体とグリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体とを含有する重合性不飽和二重結合を有する単量体混合物(a)を重合して得られるものであって、前記グリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体が、前記重合性不飽和二重結合を有する単量体混合物(a)の全量に対して10質量%〜70質量%の範囲で含まれるものである請求項1に記載の繊維集束剤。
前記ポリオキシアルキレン構造が、ポリオキシエチレン構造、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン構造、及び、それらの末端の水酸基がアルキル基によって封止された構造からなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の繊維集束剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ポリオキシアルキレン構造とグリシジル基とを有するアクリル樹脂(A)、水性媒体(B)及び必要に応じてその他の成分を含有するものであることを特徴とする。
前記アクリル樹脂(A)としては、ポリオキシアルキレン構造とグリシジル基とを組み合わせ有するものを使用する。
ここで、前記アクリル樹脂(A)の代わりに、ポリオキシアルキレン構造を有さないアクリル樹脂を使用した場合、前記樹脂組成物の保存安定性が低下や、ガラス繊維や炭素繊維の集束性の低下や、最終的に得られる成形品の強度の低下等を引き起こす場合がある。
また前記アクリル樹脂(A)の代わりに、グリシジル基を有さないアクリル樹脂を使用した場合、最終的に得られる成形品の強度の低下等を引き起こす場合がある。
前記ポリオキシアルキレン構造としては、アクリル樹脂(A)の良好な水分散安定性と、優れた集束性や成形品の高強度化との両立を図るうえで、オキシエチレン構造を有するものであることが好ましい。
前記ポリオキシアルキレン構造としては、例えばポリオキシエチレン構造や、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとから構成される共重合体からなるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシエチレンとポリオキシブチレンとから構成される共重合体からなるポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン構造、ポリオキシエチレンとポリオキシテトラメチレンとから構成される共重合体からなるポリオキシエチレン−ポリオキシテトラメチレン構造や、それらの末端に存在し得る水酸基がアルキル基等によって封止された構造等が挙げられる。
また、前記ポリオキシアルキレン構造は、オキシエチレン単位と、その他のオキシアルキレン単位とからなるランダム構造であってもよいが、アクリル樹脂(A)の良好な水分散安定性と、優れた集束性や成形品の高強度化との両立を図るうえで、ポリオキシエチレンと、その他のポリオキシアルキレンとから構成されるブロック構造であることが好ましい。
前記ポリオキシアルキレン構造は、前記アクリル樹脂(A)の全量に対して5質量%〜40質量%の範囲で存在することが好ましい。また、前記ポリオキシアルキレン構造は、前記アクリル樹脂(A)の良好な水分散安定性と、優れた集束性や成形品の高強度化との両立を図るうえで、前記ポリオキシアルキレン構造の全体に対して、75質量%〜100質量%の範囲のポリオキシエチレン構造を有するものであることが好ましい。
また、前記アクリル樹脂(A)が有するグリシジル基は、炭素繊維等の優れた集束性と成形品の高強度化との両立を図るうえで、前記アクリル樹脂(A)全体に対して200g/当量〜1500g/当量の範囲で存在することが好ましい。
前記アクリル樹脂(A)としては、より一層優れた強度を備えた成形品を得るうえで、5,000〜150,000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定された値を指す。
前記アクリル樹脂(A)は、例えばポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体とグリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体とを含有する重合性不飽和二重結合を有する単量体混合物(a)を、ラジカル重合することによって製造することができる。なお、本発明において「(メタ)アクリル」の表記は、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれか一方または両方を表すものである。
前記ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルと、ポリオキシアルキレングリコールとをエステル化反応して得られるものや、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルと、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとをエステル化反応して得られるもの等を使用することができる。
具体的には、前記ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体としては、メトキシポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリオキシエチレン−ポリオキシテトラメチレン)グリコール(メタ)アクリレート等を使用することができる。なかでもメトキシポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレートを使用することが、アクリル樹脂(A)の良好な水分散安定性と、優れた集束性や成形品の高強度化との両立を図ることが可能な樹脂組成物を得るうえで好ましい。
前記ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体は、前記単量体混合物(a)の全量に対して10〜40質量%の範囲で使用することが、前記した所定量のポリオキシアルキレン構造をアクリル樹脂(A)に導入し、その結果、アクリル樹脂(A)の良好な水分散安定性と、優れた集束性や成形品の高強度化との両立を図ることが可能な樹脂組成物を得るうえで好ましい。
また、前記グリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル等を使用することができる。
前記グリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体は、前記単量体混合物(a)の全量に対して10〜70質量%の範囲で使用することが、前記した所定量のグリシジル基をアクリル樹脂(A)に導入し、その結果、優れた集束性や成形品の高強度化とを付与可能な樹脂組成物を得るうえで好ましい。
前記ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体と前記グリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体とは、その質量割合[前記ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体/前記グリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体]が0.1〜4となる範囲で使用することが、前記アクリル樹脂(A)の良好な水分散安定性と、優れた集束性や成形品の高強度化との両立を図るうえで好ましい。
前記アクリル樹脂(A)の製造に使用可能な単量体混合物(a)は、前記したポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリル単量体及びグリシジル基を有する(メタ)アクリル単量体の他に、必要に応じてその他の重合性不飽和二重結合を有する単量体を使用することができる。
前記その他の重合性不飽和二重結合を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することができる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等を使用することができる。なかでも、より一層優れた集束性と強度を備えた成形品を得る観点から、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルは、前記単量体混合物(a)の全量に対して、0質量%〜80質量%の範囲で使用することが好ましく、2質量%〜40質量%の範囲で使用することがより好ましい。
また、前記その他の単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル単量体を使用することができる。
また、前記その他の単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、等を使用することができる。
【0014】
前記アクリル樹脂(A)は、前記単量体混合物(a)を、例えば有機溶剤中で、概ね60℃〜140℃の温度で加熱しラジカル重合することによって製造することができる。
【0015】
前記有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンのような芳香族系溶剤類、シクロへキサノンのような脂環族溶剤類、ノルマル酢酸ブチル、酢酸エチルのようなエステル系溶剤類、イソブタノール、ノルマルブタノール、イソプロピルアルコール、ソルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなセロソルブ類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等を使用することができる。
【0016】
また、前記単量体混合物(a)をラジカル重合する際には、必要に応じて有機過酸化物を使用することができる。
【0017】
前記有機過酸化物としては、炭素原子を骨格に有する過酸化物、たとえばケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アルキルパーオキシカーボネート、アゾビス系触媒、過硫酸化合物等を使用することができる。
【0018】
前記方法で得られたアクリル樹脂(A)は、溶媒を含まないものであってもよいが、前記有機溶剤を溶媒として含有するものや、水性媒体(B)を溶媒として含有するものであってもよい。
【0019】
前記アクリル樹脂(A)を水性媒体(B)と混合し本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、転相乳化法による方法が挙げられる。
【0020】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、良好な塗工作業性等を付与する観点から、前記樹脂組成物の全量に対して前記アクリル樹脂(A)を2質量%〜80質量%の範囲で含有するものを使用することが好ましく、5質量%〜70質量%の範囲で含有するものを使用することがより好ましい。
また、前記樹脂組成物は、良好な塗工作業性等を付与する観点から、前記樹脂組成物の全量に対して前記水性媒体(B)を15質量%〜95質量%の範囲で含有するものを使用することが好ましく、25質量%〜90質量%の範囲で含有するものを使用することがより好ましい。
【0021】
前記樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、顔料を併用することができる。
【0022】
また、前記樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス、更には、ポバールやセルロース類等の水溶性樹脂等と組み合わせ使用することもできる。
【0023】
前記方法で得られた本発明の樹脂組成物は、もっぱら炭素繊維やガラス繊維の繊維集束剤に使用することができる。
【0024】
前記繊維集束剤を用いて処理可能な炭素繊維としては、一般にポリアクリロニトリル系、ピッチ系等の炭素繊維を使用することができる。なかでも、前記炭素繊維としては、優れた強度を付与する観点から、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維を使用することが好ましい。
【0025】
また、前記炭素繊維としては、より一層優れた強度等を付与する観点から、概ね0.5μm〜20μmの単糸径を有するものを使用することが好ましく、2μm〜10μmのものを使用することがより好ましい。
【0026】
前記炭素繊維としては、例えば撚糸、紡糸、紡績加工、不織加工したものを使用することができる。また、前記炭素繊維としてはフィラメント、ヤーン、ロービング、ストランド、チョップドストランド、フェルト、ニードルパンチ、クロス、ロービングクロス、ミルドファイバー等のものを使用することができる。
また、前記ガラス繊維としては、含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等を用いて形成されるガラス繊維を使用することができる。
【0027】
前記炭素繊維やガラス繊維を前記繊維集束剤を用いて集束化し、前記繊維束の表面に、前記繊維集束剤に含まれる前記アクリル樹脂(A)からなる皮膜を形成する方法としては、例えば、前記繊維集束剤をキスコーター法、ローラー法、浸漬法、スプレー法、刷毛などその他公知の方法で、前記繊維表面に均一に塗布し、次いで常温または加熱下で乾燥等することによって形成する方法が挙げられる。前記繊維集束剤に含まれる水性媒体(B)は、前記塗布後に加熱ローラーや熱風、熱板等を用いて、加熱乾燥することが好ましい。
【0028】
前記繊維材料の表面に形成された皮膜の付着量は、集束化され表面処理の施された繊維束の全質量に対して概ね0.1質量%〜3質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
【0029】
前記方法で得られた集束化され表面処理の施された炭素繊維またはガラス繊維は、後述するマトリックス樹脂(C)等と組み合わせ使用することによって、高強度な成形品を製造するための成形材料に使用することができる。
【0030】
特に、本発明の炭素繊維集束剤によって表面処理の施された炭素繊維は、マトリックス樹脂(C)と組み合わせ使用し成形品等を形成した際に、前記炭素繊維とマトリックス樹脂(C)との界面の密着性を著しく向上できるため、成形品の強度を向上することが可能である。
【0031】
前記マトリックス樹脂(C)としては、例えば熱硬化性樹脂(C1)または熱可塑性樹脂(C2)を使用することができる。前記熱硬化性樹脂(C1)としてはフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。前記熱可塑性樹脂(C2)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、6−ナイロン、6,6−ナイロン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアセタール等を使用することができるが、なかでもフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、及びポリアミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。前記ポリアミドとしては、具体的には、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂に使用することが好ましい。
【0032】
本発明の繊維集束剤を用いて集束化等された繊維束は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂のマトリックス樹脂と組み合わせ使用することが、高強度な成形品を得る上でより好ましい。
【0033】
前記表面処理の施された繊維束と前記マトリックス樹脂(C)と、必要に応じて重合性単量体等とを含む成形材料としては、例えばチョップドストランド溶融混錬法や、プリプレグやシートモールディングコンパウンド(SMC)等が挙げられる。
【0034】
前記プリプレグは、例えば前記マトリックス樹脂(C)を離型紙上に塗布し、その塗布面に表面処理の施された繊維を載置し、必要に応じてローラー等を用いて押圧含浸する方法が挙げられる。
【0035】
前記プリプレグを製造する際には、前記マトリックス樹脂(C)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
また、前記シートモールディングコンパウンドは、例えば前記マトリックス樹脂(C)と、スチレン等の重合性不飽和単量体との混合物を、前記表面処理の施された繊維に十分含浸し、シート状に加工等することによって製造することができる。前記シートモールディングコンパウンドを製造する際には、前記マトリックス樹脂(C)として、不飽和ポリエステル樹脂を使用することが好ましい。
【0037】
前記成形材料の硬化は、例えば加圧または常圧下、加熱または光照射によってラジカル重合させることによって進行する。かかる場合には、公知の熱硬化剤や光硬化剤等を組み合わせ使用することができる。
【0038】
また、前記成形材料としては、例えば前記熱可塑性樹脂(C2)と前記表面処理の施された繊維束とを加熱下で混練等したものが挙げられる。かかる成形材料は、例えば射出成形法等による二次加工に使用することができる。
【0039】
前記成形材料を用いて得られた成形品は、高強度であることから、炭素繊維強化プラスチック等として、例えば自動車部材や航空機部材、産業用部材等に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、より具体的に説明する。
【0041】
〔実施例1〕
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにメチルエチルケトン45質量部、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)30質量部を仕込み80℃に昇温した。
次いで、メタクリル酸グリシジル50質量部、スチレン10質量部、メタクリル酸n−ブチル10質量部、メチルエチルケトン15質量部、V−59(和光純薬工業株式会社製の触媒、2,2’−アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.6質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、80℃〜85℃の範囲で反応を行った。
【0042】
その後、80℃で120分間ホールドした後、反応容器の温度を70℃に下げ、イオン交換水200質量部を添加し、水分散を行った。
【0043】
次いで、60℃減圧(0.080〜0.095MPa)下で約60分かけて脱溶剤した後、冷却し、イオン交換水を用いて不揮発分を調整することによって、重量平均分子量4万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(I)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0044】
〔実施例2〕
メタクリル酸グリシジルの使用量を50質量部から8質量部に変更し、スチレンの使用量を10質量部から20質量部に変更し、かつ、メタクリル酸n−ブチル10質量部の代わりにアクリル酸2−エチルヘキシルを42質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量4.5万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(II)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0045】
〔実施例3〕
メタクリル酸グリシジルの使用量を50質量部から75質量部に変更し、スチレンの使用量を10質量部から0質量部に変更し、かつ、メタクリル酸n−ブチルの使用量を10質量部から5質量部に変更し、かつ、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)の使用量を30質量部から20質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量2.5万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(III)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0046】
〔実施例4〕
メタクリル酸グリシジルの使用量を50質量部から40質量部に変更し、スチレンの使用量を10質量部から5質量部に変更し、かつ、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)の使用量を30質量部から45質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量3.5万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(IV)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0047】
〔実施例5〕
スチレンの使用量を10質量部から12質量部に変更し、メタクリル酸n−ブチルの使用量を10質量部から30質量部に変更し、かつ、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)の使用量を30質量部から8質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量6.6万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(V)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0048】
〔実施例6〕
メタクリル酸グリシジルの使用量を50質量部から60質量部に変更し、スチレンの使用量を10質量部から5質量部に変更し、メタクリル酸n−ブチルの使用量を10質量部から0質量部に変更し、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)の使用量を30質量部から20質量部に変更し、メタクリル酸n−ブチルを15質量部使用し、かつ、V−59(和光純薬工業株式会社製の触媒、2,2’−アゾビス(2-メチルブチロニトリル)の使用量を1.6質量部から3.2質量部に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量2万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(VI)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0049】
〔比較例1〕
メタクリル酸グリシジルの使用量を50質量部から0質量部に変更し、スチレンの使用量を10質量部から20質量部に変更し、かつ、メタクリル酸n−ブチルの使用量を10質量部から50質量部に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量6万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(I’)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0050】
〔比較例2〕
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにメチルエチルケトン45質量部を仕込み80℃に昇温した。
次いで、メタクリル酸グリシジル40質量部、スチレン20質量部、メタクリル酸n−ブチル40質量部、メチルエチルケトン15質量部、V−59(和光純薬工業株式会社製の触媒、2,2’−アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.6質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、80℃〜85℃の範囲で反応を行った。
【0051】
次いで、80℃で120分間ホールドした後、反応容器の温度を50℃に下げ、プルロニックF−88((株)ADEKA製、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)10質量部とイオン交換水90質量部の溶解混合物を添加し、ホモジナイザーを用いて水分散を行った後、イオン交換水100質量部を添加した。
【0052】
次いで、60℃減圧(0.080〜0.095MPa)下で約60分かけて脱溶剤した後、冷却し、イオン交換水を用いて不揮発分を調整することによって、重量平均分子量7万のビニル重合体を含む樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤(II’)〔不揮発分23重量%〕を得た。
【0053】
[重量平均分子量の測定]
ビニル重合体の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0054】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
【0055】
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0056】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0057】
[前記樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤の保存安定性の評価方法]
前記樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤の保存安定性を沈殿等の有無に基づいて評価した。
前記炭素繊維集束剤を、容量140mlのガラス瓶に100ml入れ、密栓した状態で23℃の環境下に3ヶ月間放置した。
前記放置後、容器内の炭素繊維集束剤を目視で観察し、沈殿や凝集物が確認されたものを「×」、沈殿は確認されるが攪拌により容易に分散できたものを「△」、沈殿や凝集物が確認されなかったものを「○」と評価した。
【0058】
[前記樹脂組成物からなる炭素繊維集束剤の評価方法]
ポリアクリロニトリル系炭素繊維(直径7μm/6000本)のノーサイズ糸を束ね、前記で得た炭素繊維集束剤を浸漬法で含浸し、ローラーで絞ることで有効成分の付着量を1質量%に調整し、ついで、150℃で30分間熱処理することによって、前記炭素繊維集束剤によって表面処理の施された(集束された)炭素繊維束(炭素繊維ストランド)を得た。
【0059】
〔炭素繊維の集束性の評価方法1〕
TM式摩擦抱合力試験機TM−200(大栄科学精機社製)を用い、ジグザグに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力で、炭素繊維ストランドを1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、炭素繊維ストランドの毛羽たちの状態を下記の基準で目視判定した。
【0060】
◎:擦過前と同じく毛羽発生が全く見られなかった。
○:数本の毛羽は見られたものの、実用上問題ないレベルであった。
△:毛羽立ちが確認でき、糸切れも若干見られた。
×:毛羽立ち及び単糸の糸切れが非常に多く確認できた。
【0061】
〔炭素繊維の集束性の評価方法2〕
前記炭素繊維ストランドを、約5mmの長さに裁断することによって炭素繊維チョップドストランドを作製した。
【0062】
前記炭素繊維チョップドストランド50個を抽出し、それらを目視で観察した。具体的には、50個全ての炭素繊維チョップドストランドで、炭素繊維のほぐれや毛羽立ち等がみられなかったものを「◎」、1個〜5個の炭素繊維チョップドストランドで、炭素繊維のほぐれや毛羽立ち等がみられたものを「○」、6個〜30個の炭素繊維チョップドストランドで、炭素繊維のほぐれや毛羽立ち等がみられたものを「△」、31個〜50個の炭素繊維チョップドストランドで、炭素繊維のほぐれや毛羽立ち等がみられたものを「×」と評価した。
【0063】
〔炭素繊維強化プラスチックの機械的強度(曲げ強度)の評価方法〕
前記で得た炭素繊維ストランドを、6−ナイロン樹脂ペレット(汎用射出成型グレード)とを、炭素繊維質量含有率が30質量%となるように二軸押し出し混錬機にてコンパウンドし、3mmΦ×3mm長のコンパウンドペレットに加工した。
【0064】
コンパウンドペレットを射出成型し、150mm各×3.1mm厚の平板からなる炭素繊維強化プラスチックを作成した。前記平板から10mm幅×90mm長×3.1mm厚の曲げ試験板を5つ切り出し、JIS K7171に準拠して3点曲げ試験(スパン/厚さ比=20、試験速度5mm/分)を実施し、曲げ強度を測定した。前記曲げ強度は、概ね80MPa以上であることが好ましく、95MPaであることが特に好ましい。
【0065】
〔炭素繊維強化プラスチックの層間せん断強度の評価方法〕
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂〔エピクロン850S、DIC(株)製〕100質量部にジシアンジアミド4質量部とN−(3,4−ジクロロフェニル)−N’,N’−ジメチルウレア4質量部を調合し離型紙上に塗布する。塗布した樹脂フィルム上に前記で得た炭素繊維ストランドを等間隔で一方向に引き揃え並べた後、加熱してエポキシ樹脂を含浸し、炭素繊維含有率が60質量%のプリプレグを作製した。作製したプリプレグを積層しながら金型に充填した後、150℃加圧下で1時間、続いて140℃で4時間処理することによって炭素繊維強化プラスチックを作製した。
【0066】
前記炭素繊維強化プラスチックの厚さ2.5mm、幅6.0mmの試験板について、ASTM D−2344に準拠した方法で層間せん断強度を測定した。前記層間せん断強度は、概ね90MPa以上であることが好ましく、95MPa以上であることが特に好ましい。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1及び2中の「GMA」はメタクリル酸グリシジルを表す。「ST」はスチレンを表す。「BA」はアクリル酸n−ブチルを表す。「BMA」はメタクリル酸n−ブチルを表す。「EHA」はアクリル酸2−エチルヘキシルを表す。「M230G」は、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)を表す。「V−59」は、V−59(和光純薬工業株式会社製の触媒、2,2’−アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を表す。「F−88」はプルロニックF−88((株)ADEKA製、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)を表す。
「重量平均分子量」は、アクリル樹脂の重量平均分子量を表す。